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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】歩行補助器
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/00 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
A61H3/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018233362
(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2020092881
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-09-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会出展による公開/展示日:平成30年10月10~12日 展示会名、開催場所:第45回 国際福祉機器展 東京都江東区有明3-11-1 東京ビッグサイト 東展示ホール
(73)【特許権者】
【識別番号】502020168
【氏名又は名称】ユーバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】長竹 善弘
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202654373(CN,U)
【文献】特開2002-173031(JP,A)
【文献】登録実用新案第3184475(JP,U)
【文献】登録実用新案第3075015(JP,U)
【文献】登録実用新案第3140199(JP,U)
【文献】特開2012-010801(JP,A)
【文献】特開2003-126192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に離間配置される一対の側枠と、これら側枠の前部を回転可能に連結して前記側枠を開閉可能にする前枠を備えた歩行補助器であって、
前記側枠と前記前枠との間に斜めに橋渡しされる連結杆を備え、
前記連結杆の両端が前記側枠と前記前枠に対して相対回転可能に枢支されるとともに、
前記連結杆における前記前枠がわの端が、前記前枠に設けられた固定部に枢支され、
前記連結杆における前記側枠がわの端が、前記側枠に設けられたスライダに枢支されて前記スライダを介してスライド可能に保持され、
前記スライダに、前記側枠を開いた状態で前記連結杆との相対位置を固定するロック手段が設けられた
歩行補助器。
【請求項2】
前記前枠が前記側枠の上下方向の中間部に設けられるとともに、
前記連結杆における前記側枠がわの端が、前記側枠の上部に備えられるハンドルよりも下のハンドル下枠に連結された
請求項1に記載の歩行補助器。
【請求項3】
前記前枠が、上下方向に離間配置された複数本の横杆を有する
請求項1または請求項2に記載の歩行補助器。
【請求項4】
前記横杆のうち少なくとも1本の前記横杆の断面形状が、円形以外の異形断面である
請求項に記載の歩行補助器。
【請求項5】
前記前枠に前記横杆同士の間で突っ張る突っ張り手段が設けられた
請求項に記載の歩行補助器。
【請求項6】
前記側枠の上下方向の中間部に、前記側枠の脚部の間隔を保持する間隔保持部が着脱可能に設けられた
請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の歩行補助器。
【請求項7】
前記側枠の上下方向の中間部に、前記側枠の脚部の間隔を保持する間隔保持部が設けられ、
前記間隔保持部が、上に向けて凸の湾曲形状である
請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の歩行補助器。
【請求項8】
前記間隔保持部に、補助グリップが形成された
請求項または請求項に記載の歩行補助器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば病人や身体障がい者、歩行困難者などの使用者が身体を支えて歩行等の助けにする歩行補助器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような歩行補助器として、身体の左右両側と前を枠で囲む形態のものが好適に使用されている。このタイプの歩行補助器として、下記特許文献1に開示されているものを案出した。
【0003】
特許文献1の歩行補助器は、左右両側に離間配置される一対の側枠と、これら側枠の前端を連結する前枠からなる。使用に際しては、左右の側枠の上端のハンドルを掴んで身体を支える。
【0004】
このような使用態様がとられるので、使用する者の体格や使用場所に合わせて高さや左右の幅を調節できる機構が備えられている。また、使用しないときのコンパクト化のために折りたたみ機構も備えられている。
【0005】
折りたたみ機構は、側枠の前端に位置する縦杆を前枠に対して回転可能に保持する構造と、側枠の前部を左右方向橋渡しする連結杆で構成されている。連結杆は連結伸縮可能であり、長手方向の中間部に長さを固定するロック機構を有している。また連結杆の端部は、側枠の前端寄りの部位に回転可能に連結されている。
【0006】
つまり、連結杆のロック機構のロックを外して連結杆を伸縮できるようにしたのち、側枠を閉じる、すなわち側枠を前枠に重ねるように回転すると、これに伴って連結杆が縮んで、折りたたみ状態が得られるというものである。
【0007】
このように使用者の体格等に応じて高さや幅を調節できるように構成しているものの、近年は身長の高い使用者もあり、長身者用に高さを高くしたい要求がある。
【0008】
高さを高くすることは、理論上は容易であるが、実際にはがたつきが生じやすくなる傾向がある。特に、連結杆の両端の連結位置が側枠の前端に近い構成であるので、安定性が懸念されることになる。
【0009】
しかも、連結杆の両端部を側枠に連結する部分にはアルミダイカスト製の部材を用いているが、この部材の位置は前述のように回転のための軸に近いので、大きな負荷がかかりやすい。このため、過大な荷重がかかると損傷するおそれが生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】登録実用新案第3198827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこでこの発明は、長身の使用者でも好適に使用できるように高さを高くしてもがたつきなく安定して使用できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのための手段は、左右に離間配置される一対の側枠と、これら側枠の前部を回転可能に連結して前記側枠を開閉可能にする前枠を備えた歩行補助器であって、前記側枠と前記前枠との間に斜めに橋渡しされる連結杆を備え、前記連結杆の両端が前記側枠と前記前枠に対して相対回転可能に枢支されるとともに、前記連結杆における前記前枠がわの端が、前記前枠に設けられた固定部に枢支され、
前記連結杆における前記側枠がわの端が、前記側枠に設けられたスライダに枢支されて前記スライダを介してスライド可能に保持され、前記スライダに、前記側枠を開いた状態で前記連結杆との相対位置を固定するロック手段が設けられた歩行補助器である。
【0013】
この構成では、左右の側枠は前枠に対して斜めに橋渡しされる連結杆で開いた状態に固定される。折りたたみ時には、連結杆の側枠がわの端に設けられたスライダがロック手段の解除によって側枠に沿って移動し、側枠と前枠の連結状態を維持しつつ、側枠を閉じる動作を許容する。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、開閉可能な側枠は前枠に対して斜めに橋渡しされる連結杆で連結する構成であるので、連結杆の側枠に対する枢支位置を、側枠の前端から後方側に離すことができる。このため、荷重のかかる部位を分散させることができ、安定性を高めることが可能である。特に、歩行補助器の高さを高くした場合でも、がたつきのない安定した使用を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】歩行補助器の斜視図。
図2】歩行補助器の折りたたみ態様を示す平面図。
図3】前枠の平面図。
図4】横杆と突っ張り手段の一部の断面図。
図5】突っ張り手段の非矯正時の正面図と断面図。
図6】突っ張り手段の矯正時の正面図と断面図。
図7】ハンドル部材の分離状態を示す一部断面側面図。
図8】間隔保持部の分離状態の一部断面側面図。
図9】連結杆の装着構造を示す一部断面側面図。
図10】スライダの側面図。
図11】スライダを後方から見た断面図。
図12】ロック手段を構成する操作穴の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0017】
図1に歩行補助器11の斜視図を示す。この歩行補助器11は使用者の左右両側と前を囲む形態であり、使用者が左右の上端を手で握って身体を支えて使用するものである。
【0018】
まず、歩行補助器11の概略構造について説明すると、歩行補助器11は、左右に離間配置される一対の側枠13と、これら側枠13の前部を連結する前枠15を備えている。前枠15は側枠13の上下方向の中間部に設けられる。側枠13と前枠15は基本的にアルミ等の軽量の金属パイプで構成されている。
【0019】
側枠13は使用時において前後に配置される2本の伸縮可能な脚部31,32を有し、脚部31,32の上端はハンドル杆33で連結されている。一対の脚部31,32は、下方が開くように若干傾斜している。そしてこれら一対の脚部31,32の長手方向の中間部には、脚部31,32同士を連結して脚部31,32の間隔を保持する間隔保持部34が設けられている。
【0020】
ハンドル杆33を有する脚部31,32の上端部は、一対の側枠13が相対向する方向に若干傾斜している。ハンドル杆33には、手に対する接触を和らげる弾性と柔軟性と防滑性を兼ね備えたグリップ35が一体形成されている。
【0021】
前枠15は、上下方向に離間配置された複数本、具体的には2本の横杆51,52を有しており、これら横杆51,52は長手方向に伸縮可能である。前枠15の平面視形状は、長手方向の中間部に前方へせり出した直線状の直線部51a,52aを有し、直線部51a,52aの両側に、直線部51a,52aに対して斜めの傾斜部51b,52bを有した形状である。
【0022】
2本の横杆51,52のうち上側に位置する一方の横杆51は断面形状が円形であり、他方の横杆52の断面形状は円形以外の異形断面、図示例では長円形である。2本の横杆51,52同士は、横杆51,52と直交する方向に延びる金属パイプ製の縦杆53で一体に結合されている。縦杆53のほか、横杆51,52を保持するとともに、横杆51,52同士の間に突っ張ってそれらの間隔を矯正する突っ張り手段54を備えている。
【0023】
前枠15の長手方向の両端には、側枠13の前側の脚部31を回転可能に保持する保持筒部55が形成されている。保持筒部55は、直線部51a,52aの長手方向に対して交差する上下方向に延びるものであるが、前述のように側枠13の脚部31,32に前後方向の傾きを付けたことと、一対の側枠13に下部が若干開く左右方向の傾きを付けるために、直線部51a,52aの長手方向に対して適宜の傾斜が付されている。
【0024】
概略構造が以上のとおりである歩行補助器11は、側枠13の脚部31,32の長さを変更することで高さを調節でき、前枠15の長さを変更することで左右方向の幅を調節できる(図1の仮想線参照)。これらの調節機構に加えて、側枠13を前枠15の保持筒部55で保持することによって、図2に示したように、左右の側枠13を前枠15に重ね合わせるように変形する折りたたみも可能である。
【0025】
つぎに、各部の詳細について説明する。
【0026】
長さ調節が可能な側枠13の脚部31,32と前枠15の横杆51,52は、中空の管体からなる外筒36,56に、外筒36,56より若干小径の内筒37,57を入れ子式に内蔵して構成されている。
【0027】
側枠13の脚部31,32と前枠15の横杆51,52うち前枠15を例に図示すると、図3に示したように、2本の横杆51,52のうちの断面形状が円形である一方の横杆51は、内筒57に板ばね58を内蔵しており、板ばね58の先端には突起部58aが形成されている。突起部58aは内筒57より外周側に突出する構造である。この突起部58aを貫通させる位置調節穴59は、外筒56の長手方向に沿って複数形成されている。位置調節穴59の形成位置は、横杆51,52の周面のうちの内側面、つまり使用者の前面に対向する面である。
【0028】
側枠13における脚部31,32の長さ調節構造も、前述の横杆51と同様の構造である。脚部31,32の場合には、位置調節穴59の位置は、周面のうちの、前後に対向する一対の脚部31,32が相対向する方向の面である。
【0029】
前枠15の横杆51,52のうち、断面形状が長円形である他方の横杆52は、一方の横杆51と異なって、長さを固定するための板ばねや位置調節穴が不要である。
【0030】
前枠15の縦杆53は、横杆51,52における内筒57の直線部51a,52aの端部に形成されている。また、前枠15の突っ張り手段54は、横杆51,52における外筒56の先端部に固定されている。
【0031】
突っ張り手段54は、図1に示したように、一方の横杆51の外筒56の先端部に嵌合する短筒状の上側嵌合部61と、他方の横杆52の外筒56の先端部に嵌合する短筒状の下側嵌合部62と、これらを連結する連結部63を有している。
【0032】
突っ張り手段54の下側嵌合部62と、これが嵌る他方の横杆52との間には、図4に示したように、横杆52の内筒57が外筒56から抜けるのを防止するための抜け止め防止構造が形成されている。すなわち、下側嵌合部62の背面から横杆52に対して、抜け止めのためのねじ部材64が螺合されている。ねじ部材64の長さは、ねじ部材64の頭を下側嵌合部62の表面と面一にしたときに、横杆52の外筒56から内筒57まで達する長さである。
【0033】
ねじ部材64には、タッピングねじが用いられ、外筒56にはねじ部材64が螺合している。一方、内筒57には、所望の伸縮長さを得る範囲にわたって、ねじ部材64の先端との干渉を防ぐ凹溝65が、内筒57の長手方向沿って形成されている(図5(a)の破線参照)。
【0034】
凹溝65の幅は、ねじ部材64よりも幅広であり、ねじ部材64は、非矯正時において、凹溝65の幅方向の下方に位置するように設けられている。これは、横杆51,52同士の間に突っ張る突っ張り手段54を機能させるためである。
【0035】
すなわち、突っ張り手段54の上側嵌合部61と下側嵌合部62は、図5に示したように、外筒56の先端に位置して内筒57が嵌る内筒嵌合面61a,62aを有する先端側部66と、先端側部66との間に間隔を設けて形成され、外筒56が嵌るとともに外筒56を一対の横杆51,52の相反する方向に若干移動可能にする長穴面61b,62bを有する基端側部67を有している。
【0036】
上側嵌合部61における先端側部66と基端側部67の間には、回動可能なレバー68が設けられる。レバー68は、一方の横杆51に挿嵌される回動軸筒68aと、回動軸筒68aの周面から回動軸筒68aの長手方向と直交する方向に延びる平行な2本のレバー片68bと、レバー片68b同士を連結する覆い部68cを有している。
【0037】
下側嵌合部62における先端側部66と基端側部67の間には、作用部材69が設けられる。作用部材69は、他方の横杆52に挿嵌される保持筒69aと、保持筒69aの周面から上側嵌合部61に向けて突出して、前述したレバー68における2本のレバー片68bと同一平面上に並ぶ2枚の突片69bを有している。保持筒69aの大きさは、外筒56に嵌合対応する大きさである。
【0038】
そしてレバー片68b間と、突片69b間に、リンク部材70が相対回動可能に枢支されている。リンク部材70の長さやその両端の枢支位置などは、図5の(a),(b)に示したようにレバー68を引き起こして、横杆51,52の中心線位置を内筒嵌合面61a,62aを有する部分の中心線位置に一致させた状態の非矯正状態とした位置から、図6の(a)に示したようにレバー68を傾倒させて覆い部68cで先端側部66と基端側部67の間の空間を閉じた状態の矯正状態としたときに、図6の(b)に示したように上側嵌合部61と下側嵌合部62の間において、一対の横杆51,52を相反する方向に付勢して若干押し広げる、つまり突っ張ることができる位置関係になるように設定されている。
【0039】
なお、図5図6の(a)は正面図であり、(b)はその側面図である。
【0040】
側枠13の上端部には、グリップ35を交換可能にするため、図1に示したように、側枠13の上部に備えられるハンドル、つまりハンドル杆33又はグリップ35よりも下に、ハンドル下枠38が設けられている。ハンドル下枠38は金属パイプで構成され、水平に延びる横棒部38aと、横棒部38aの先端から上に延びる縦棒部38bを有している。横棒部38aの基端は、後側に位置する脚部32に結合一体化されている。縦棒部38bの上端はハンドル杆33に対して下から結合一体化されている。
【0041】
ハンドル杆33におけるハンドル下枠38の縦棒部38bの上端の結合位置よりも後方には、図7に示したように、それより前方の部位よりも小径で嵌合対応する太さの接合用小径部39が形成されている。一方、脚部32におけるハンドル下枠38の横棒部38aの後端の結合位置より上方には、雄ねじ部40が形成されている。
【0042】
グリップ35が一体形成されたハンドル部材41は、金属パイプで形成されており、ハンドル部材41は、一端に、接合用小径部39に差し込まれる差込部41aを有し、他端に、雄ねじ部40に当接する当接部41bが形成されている。差込部41aを含む外周には、グリップ35が一体形成されている。グリップ35の先端は、差込部41aの端よりも突出している。当接部41bには、内周面に雌ねじ(図示せず)を有する連結筒部材42が備えられている。
【0043】
図示は省略するが、雄ねじ部40と当接部41bには、互いに嵌合する嵌合構造を形成するとよい。
【0044】
前述したグリップ35と同様の機能は、脚部31,32間の前述した間隔保持部34にも持たせている。つまり金属パイプからなる間隔保持部34には、図1に示したように、グリップ35と同様に弾力性と柔軟性と防滑性を有する補助グリップ43が一体形成されている。
【0045】
間隔保持部34の両端部は、下端ほど開く脚部31,32に対して直角の角度であり、両端部の間は、上に向けて凸の湾曲形状である。補助グリップ43は、上に向けて凸に湾曲している部分の略全体にわたって形成されている。
【0046】
この補助グリップ43についても交換を可能にするため、間隔保持部34は脚部31,32に対して着脱可能に設けられている。間隔保持部34を着脱可能にするための構造は、図8に示したように、脚部31,32に設けられるホルダ44と、ホルダ44の外側から脚部31,32を貫通して間隔保持部34に螺合するボルト45と、間隔保持部34の両端に備えられた雌ねじ46で構成される。ホルダ44には、脚部31,32を嵌める本体筒部44aと、本体筒部44aに直交して間隔保持部34の端部を嵌める補強筒部44bを有している。
【0047】
前枠15の保持筒部55に回転可能に保持された一対の側枠13は、前枠15に対して直角に開いて相対向する使用時の形態を保持しつつ、折りたたみを許容するため、図1に示したように、側枠13と前枠15との間に斜めに橋渡しされる連結杆81を備えている。連結杆81の両端は側枠13と前枠15に対して相対回転可能に枢支されるとともに、連結杆81の少なくとも一端が、側枠13又は前枠15に対してスライダ82を介してスライド可能に保持され、スライダ82に、側枠13を開いた状態で連結杆81との相対位置を固定するロック手段83が設けられている。
【0048】
図示例では、連結杆81の一端を側枠13に設けられたスライダ82に枢支し、他端を前枠15に設けられた固定部84に枢支している。
【0049】
連結杆81、スライダ82、ロック手段83及び固定部84の構造を、図9に示す。
【0050】
連結杆81は、金属製の中実の棒状体からなり、直線状の本体部81aの一端に、スライダ82に対して枢支されるスライダ側枢支部81bが本体部81aに対して適宜角度に折り曲げて形成されている。本体部81aの他端には、固定部84に対して枢支される固定部側枢支部81cが本体部81aに対して適宜角度に折り曲げて形成されている。スライダ側枢支部81bと固定部側枢支部81cは、おおよそ相反する方向に延びている。
【0051】
スライダ82は、ハンドル下枠38の横棒部38aにスライド可能に設けられ、固定部84は、前枠15における上側に位置する一方の横杆51の傾斜部51bに設けられている。ハンドル下枠38の横棒部38aと、前枠15における一方の横杆51は、歩行補助器11の高さ方向における高さに違いはあるものの、それぞれ前述のような構成であるためその差は比較的小さくできる。しかも両者は平面視においても近い位置にあって、特にハンドル下枠38は直線状に延びる横棒部38aを備えている。
【0052】
この横棒部38aに備えられるスライダ82は、横棒部38aの長手方向に沿ってスライド可能である。すなわち、スライダ82の側面図である図10と、スライダ82を後方からみた図である図11に示したように、横棒部38aにかぶさる逆U字形状のスライド保持部材85と、スライド保持部材85の下端部であって横棒部38aよりも下に位置する垂下片部85aに枢着されるレバー部材86を備えている。
【0053】
スライド保持部材85は、内面における横棒部38aの下部に相当する部位に、内方に張り出すガイド突部起85bを有しており(図11参照)、横棒部38aの表面での安定した移動を可能にしている。一対の垂下片部85aには枢着穴85cが形成されており、この枢着穴85cを利用して垂下片部85a間に、前述のレバー部材86が枢着される。
【0054】
レバー部材86は、軸部材87を介して枢着される支点作用部86aと、支点作用部86aから後方に延びる力点部86bを有している。支点作用部86aは、左右一対の起立壁88を有しており、起立壁88に軸部材87を挿通する貫通穴88aが形成されている。起立壁88の下端同士は、基板部89で連結されている。
【0055】
支点作用部86aの基板部89における枢着穴85c位置よりも前方には、連結杆81のスライダ側枢支部81bを挿通する長穴90が形成されている。
【0056】
レバー部材86の内側には、金属製の補助部材91が内蔵されている。補助部材91は、レバー部材86の相似形のような形状であり、レバー部材86と同様に支点作用部91aと、力点部91bを有している。補助部材91はレバー部材86の内側に嵌め込まれるとともに、軸部材87で枢着することによってレバー部材86と一体化する。
【0057】
補助部材91の支点作用部91aにおける基板部92の、レバー部材86の長穴90に対応する部位には、図12に示したような形状の貫通した操作穴93が形成されている。操作穴93は、レバー部材86の長穴90と同じ幅で円形をなす幅広部93aと、幅広部93aよりも幅狭の幅狭部93bを有している。
【0058】
幅広部93aの幅は、仮想線で示したように断面円形をなす前述した連結杆81のスライダ側枢支部81bの断面形状が嵌合対応する大きさである。幅狭部93bは、連結杆81のスライダ側枢支部81bに形成された小径部94が嵌合対応する大きさである。小径部94は、スライダ側枢支部81bの長手方向の中間部に補助部材91の基板部92の厚さよりも厚い適宜長さにわたって他の部位よりも細く形成された部位である。小径部94を有するため、小径部94の上端と下端には、段差部が形成されることになる。
【0059】
操作穴93の幅広部93aは基板部92における前方側に、幅狭部93bは後方側に連通状態で形成されている。
【0060】
また、図9図10に示したようにハンドル下枠38の横棒部38aの下面には、連結杆81の側枠13がわの端であるスライダ側枢支部81bが下から刺さって嵌る嵌合穴95が形成されている。嵌合穴95は、連結杆81の横断面形状に嵌合対応する大きさである。嵌合穴95の形成位置は、一対の側枠13を開いて相対向させ、連結杆81のスライダ側枢支部81bの軸心を補助部材91の基板部92の幅広部93aの中心に位置させたときに、スライダ82に保持された連結杆81のスライダ側枢支部81bに対応する位置である。
【0061】
補助部材91を一体にしたレバー部材86を枢支する軸部材87の周囲には、ばね部材96が保持されている。ばね部材96は、補助部材91とレバー部材86を前方が上に上がる方向に付勢している。ばね部材96にはトーションばねを使用でき、ばね部材96はレバー部材86内に備えられている。レバー部材86内のばね部材96は、ハンドル下枠38の横棒部38aとは非接触であり、スライダ82のスライド動作に支障はない。なお図11においては、便宜上、ばね部材96の図示を省略している。
【0062】
連結杆81の固定部側枢支部81cが枢支される固定部84は、図9に示したように、断面形状が円形の横杆51の傾斜部51bに嵌められる断面C字状の本体部84aと、本体部84aの両端に形成された突片84bを有している。一対の突片84bは、平面視三角形状であり、突片84b間には、横杆51に対する相対回転不可の遊びのない強固な固定を行わせるため、スペーサ84cが保持されている。突片84bとスペーサ84cには貫通穴84dが形成され、貫通穴84dには、連結杆81の固定部側枢支部81cを回転可能に挿通保持する金属パイプからなる介装部材97が内蔵される。介装部材97の長さは、貫通穴84dの長さよりもわずかに長く設定されている。
【0063】
連結杆81の固定部側枢支部81cには、雄ねじ98が形成されており、雄ねじ98には介装部材97を挟むようにナット99が螺合されて、固定部84に対する固定部側枢支部81cの回転可能な固定がなされる。
【0064】
以上のように構成された歩行補助器11は、次のように使用される。
【0065】
歩行補助器11を折りたたみ状態から側枠13を開いた使用形態に変形するには、側枠13を前枠15から離す方向回動して開く。側枠13の回動に伴って連結杆81と固定部84及びスライダ82との間で相対回転しながら、スライダ82はハンドル下枠38の横棒部38aを前方に移動し、連結杆81のスライダ側枢支部81bが横棒部38aの嵌合穴95に対応する位置に移動すると、ロック手段83のばね部材96の付勢力が作用して、補助部材91の操作穴93に押し上げられたスライダ側枢支部81bが嵌合穴95に嵌って、位置固定される。
【0066】
一方、使用状態から折りたたむ変形は、ロック手段83のレバー部材86における力点部86bを引き上げて、ロック手段83による位置固定を解除する。つまり、レバー部材86の力点部86bをばね部材96の付勢力に抗して引き上げることで、補助部材91の操作穴93の幅狭部93bが連結杆81のスライダ側枢支部81bに係合してこれを押し下げ、スライダ側枢支部81bを嵌合穴95から外す。これによって横棒部38a上を自由に移動できるようになったスライダ82は、側枠13を閉じる回動動作に伴って、横棒部38aの長さ方向の後方に向かって移動して、折りたたみ状態になる。
【0067】
このように、ロック手段83のレバー部材86を引き上げるだけで、容易に折りたたむことができる。しかもロック手段83のレバー部材86は、自転車等のブレーキレバーと同様の構造であり、単に握る動作をするだけで簡単に操作できる。
【0068】
また使用状態においては、左右の側枠13は前枠15に対して斜めに橋渡しされる連結杆81で開いた状態に固定される。このため、連結杆81の側枠13に対する枢支位置は、側枠13の前端ではなく後方側に離すことができる。この結果、荷重のかかる部位を分散させることができ、荷重を良好に支えられる構造となり、安定性が高まる。
【0069】
そのうえ、連結杆81のスライダ側枢支部81bはハンドル下枠38に差し込まれて位置固定されるので、固定強度が高い。
【0070】
したがって、歩行補助器11の高さを高くした場合でも、がたつきのない安定した使用を可能にすることができる。
【0071】
側枠13の上下方向の中間部に設けた間隔保持部34は、上に向けて凸の湾曲形状であるので、荷重を良好に支持でき、脚部31,32を長く形成した場合や長く伸ばした場合でも形態の安定性を良好に保てる。
【0072】
その間隔保持部34には、歩行動作を行うときに主に使用するグリップ35とは別に補助グリップ43を形成しているので、例えば起き上がったり立ち上がったりするときの支えなどに便利に使用でき、その場合でも使用者の安定した支持を実現できる。
【0073】
しかも、グリップ35を有するハンドル部材41と同様に、間隔保持部34は側枠13に対して着脱可能であるので、例えば補助グリップ43が劣化したり、歩行補助器11をレンタルしたりする場合に新たなものと交換することができる。
【0074】
脚部31,32と同様に長さ調節可能な前枠15は、複数本の横杆51,52を有しているので、高い強度が得られる。しかも、下側の横杆52の断面形状が異形断面であるので、この点からも強度を高めることができる。
【0075】
そのうえ、前枠15は2本の横杆51,52の間で突っ張って両者の間隔を広げる方向に矯正する突っ張り手段54を備えているので、歩行補助器11に荷重がかかった際のたわみの発生を積極的に防止できる。このため、使用時の形態安定性を得られ、がたつき防止効果とともに、安定性の良い使用に大いに貢献する。
【0076】
前枠15と側枠13の間に橋渡しする連結杆81については、その一端を側枠13に備えたスライダ82に枢支し、他端を前枠15に備えた固定部84に枢支したので、連結杆81の両端にスライダ82を備える場合に比して、構成を極めてコンパクトで簡素にすることができる。
【0077】
そのうえ、スライダ82は側枠13のハンドル杆33やグリップ35よりも下のハンドル下枠38に設けたので、歩行補助としての使用に際して邪魔になることはない。また連結杆81は、スライダ82に対しては下から枢支する一方、固定部84に対しては上から枢支したので、連結杆81を斜めに備えて枢支点を回動中心から離したことで平面的な空間の有効利用ができるうえに、上下方向における空間の有効利用もできる。
【0078】
しかも、グリップ35を着脱可能にするために設けたハンドル下枠38を有効利用できて、その上さらに、前枠15の上端位置とハンドル下枠38の上下方向の高さの差が小さいので、連結杆81による十分な連結強度を得ることもできる。
【0079】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態の構成であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【0080】
たとえば、連結杆81は左右一対のみではなく、上下方向に複数配設してもよい。
【0081】
連結杆81の端をスライド可能にするスライダ82は、前枠15に備えてもよく、前枠15と側枠13の双方に備えることもできる。
【符号の説明】
【0082】
11…歩行補助器
13…側枠
15…前枠
33…ハンドル杆
34…間隔保持部
35…グリップ
38…ハンドル下枠
43…補助グリップ
51,52…横杆
54…突っ張り手段
81…連結杆
82…スライダ
83…ロック手段
84…固定部
図1
図2
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図12