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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】柱・梁接合部の補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20220920BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
E04B1/58 508P
E04B1/30 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019105834
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020200586
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】594169640
【氏名又は名称】鈴与建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】會田 和広
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智也
(72)【発明者】
【氏名】八木 茂治
(72)【発明者】
【氏名】船橋 健吾
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-222770(JP,A)
【文献】特開平06-272304(JP,A)
【文献】特開平07-197523(JP,A)
【文献】特開2016-176216(JP,A)
【文献】実開平05-078701(JP,U)
【文献】特開2018-031143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38-1/61
E04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート柱と、鉄骨梁部材と、上下端が開放する筒状のふさぎ板と、で構成される柱・梁接合部の補強構造であって、
前記鉄骨梁部材は、前記ふさぎ板の内側及び外側に配され、上フランジと、下フランジと、ウエブとを有するH形鋼が用いられ、
前記ふさぎ板の内面と前記ふさぎ板の内側に配される前記鉄骨梁部材の前記ウエブとを接合する内補強部材有し
前記ふさぎ板の内側に配される前記鉄骨梁部材の前記ウエブは、平面視において十字状に形成され、
前記内補強部材が、前記ふさぎ板の内側に配される前記鉄骨梁部材の、平面視において、直交するL字状の前記ウエブ部分と、L字状の前記ウエブ部分と接する、二か所の前記ふさぎ板の内面と、をつなぐように接合されていることを特徴とする柱・梁接合部の補強構造。
【請求項2】
前記ふさぎ板の外面と前記ふさぎ板の外側に配される前記鉄骨梁部材の前記ウエブとを接合する外補強部材を有していることを特徴とする請求項1記載の柱・梁接合部の補強構造。
【請求項3】
前記内補強部材、又は/及び、前記外補強部材が、上下方向に沿って複数配設されていることを特徴とする請求項2記載の柱・梁接合部の補強構造。
【請求項4】
記内補強部材は、上下方向からみて、前記ふさぎ板の内側に配される前記鉄骨梁部材の前記上フランジ及び前記下フランジから突出しないように配設されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の柱・梁接合部の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート柱と、鉄骨梁部材と、筒状のふさぎ板と、で構成される柱・梁接合部の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の柱・梁接合部の補強構造として、特許文献1に記載されるものがあった。これによれば、鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁との接合部の周囲を囲み板(本願におけるふさぎ板)により取り囲んだ構造とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平07-197523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の柱・梁接合部の補強構造では、図5の矢印で示す斜め方向の力が加わり、耐力に問題があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、耐力を確保することができる柱・梁接合部の補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明では、鉄筋コンクリート柱と、鉄骨梁部材と、上下端が開放する筒状のふさぎ板と、で構成される柱・梁接合部の補強構造であって、
前記鉄骨梁部材は、前記ふさぎ板の内側及び外側に配され、上フランジと、下フランジと、ウエブとを有するH形鋼が用いられ、
前記ふさぎ板の内面と前記ふさぎ板の内側に配される前記鉄骨梁部材の前記ウエブとを接合する内補強部材有し
前記ふさぎ板の内側に配される前記鉄骨梁部材の前記ウエブは、平面視において十字状に形成され、
前記内補強部材が、前記ふさぎ板の内側に配される前記鉄骨梁部材の、平面視において、直交するL字状の前記ウエブ部分と、L字状の前記ウエブ部分と接する、二か所の前記ふさぎ板の内面と、をつなぐように接合されている。
【0007】
これによれば、ふさぎ板の内面とふさぎ板の内側に配される鉄骨梁部材のウエブとを接合する内補強部材を配しているので、ふさぎ板の内面とふさぎ板の内側に配される鉄骨梁部材のウエブとの接合を強固なものとし耐力を確保することができる。また、図4に参照するように、例えば、上側から力Pが加わったときに、符号90、90aに示されるコンクリート部分の支圧によって応力が伝達されることが期待でき、この効果により、接合部耐力の上昇につなげることができる。
【0008】
また、前記ふさぎ板の外面と前記ふさぎ板の外側に配される前記鉄骨梁部材の前記ウエブとを接合する外補強部材を有している。
【0009】
これによれば、ふさぎ板の外面とふさぎ板の外側に配される鉄骨梁部材のウエブとを接合する外補強部材を配しているので、ふさぎ板の外面とふさぎ板の外側に配される鉄骨梁部材との接合を強固なものとし耐力を確保できる。
【0010】
また、前記内補強部材、又は/及び、前記外補強部材を、上下方向に沿って複数配設すれば、補強部分が複数となるので、柱・梁接合部の耐力の確保に寄与する。
【0011】
また、前記内補強部材を、上下方向からみて、前記ふさぎ板の内側に配される前記鉄骨梁部材の前記上フランジ及び前記下フランジから突出しないように配設すれば、鉄筋コンクリート柱を形成するときに、ふさぎ板内へのコンクリートの充填が妨げられることを抑制できるので、施工不良を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の柱・梁接合部の補強構造の斜視図である。
図2図1のII-II線矢視断面図である。
図3図2のIII-III線矢視図である。
図4】コンクリート部分の支圧によって応力が伝達されることを示す概略説明図である。
図5】従来の柱・梁接合部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の柱・梁接合部の補強構造の一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では、各図面の矢印の、Fを前、Bを後ろ、Rを右、Lを左、Uを上、Dを下、とする。
【0014】
補強構造10は、概略的には、図1、2、3に示すように、鉄骨梁部材20と、筒状のふさぎ板30と、鉄筋コンクリート柱40と、で構成される柱・梁接合部1に適用されるものである。
【0015】
鉄骨梁部材20は、上フランジ21と、下フランジ22と、ウエブ23とを有するH形鋼が用いられ、ふさぎ板30の内側及び外側に配されている。
【0016】
鉄骨梁部材20は、ふさぎ板30の内側に配される内鉄骨梁部材25と、ふさぎ板30の外側に配される外鉄骨梁部材26と、で構成されている。
【0017】
内鉄骨梁部材25は、左右方向に延びてふさぎ板30の左右の内面31どうしを接合する内鉄骨梁部材25aと、内鉄骨梁部材25aとふさぎ板30の後の内面31を接合する内鉄骨梁部材25b1と、内鉄骨梁部材25aとふさぎ板30の前の内面31を接合する内鉄骨梁部材25b2とで前後左右方向に直交する略十字状に形成されている。
【0018】
本実施形態では、左右方向に沿って延びる一本のH形鋼に、前後方向に二本のH形鋼を溶接して略十字状に形成している。なお、内鉄骨梁部材25は、内鉄骨梁部材25b1及び内鉄骨梁部材25b2の、上フランジ21と、下フランジ22を切り欠いて、内鉄骨梁部材25aの、上フランジ21と、下フランジ22に接合させている。
【0019】
ふさぎ板30は、鋼製プレートで、上下端が開放する四角筒状に形成されている。本実施形態では、ふさぎ板30は、製作効率を考慮して、内鉄骨梁部材25及び外鉄骨梁部材26と接合される部分を構成する平板状の接合部33と、L字板状に形成され角部分を構成する角部34と、で分割構成とし、接合部33と角部34とを接合して形成されている。なお、接合部33は、上下方向からみて、内鉄骨梁部材25及び外鉄骨梁部材26の上フランジ21と、下フランジ22より幅広に形成されている。
【0020】
本実施形態では、ふさぎ板30の接合部33の内面31と、ふさぎ板30内に配される内鉄骨梁部材25の、上フランジ21と、下フランジ22と、ウエブ23の端面とを当接させてそれぞれ溶接することで、ふさぎ板30の内面31と、内鉄骨梁部材25とが接合されている。
【0021】
また、ふさぎ板30の接合部33の外面32と、外鉄骨梁部材26の、上フランジ21と、下フランジ22と、ウエブ23の端面とを当接させてそれぞれ溶接することで、ふさぎ板30の外面32と外鉄骨梁部材26とが接合され、ふさぎ板30の各外面32から外鉄骨梁部材26が、前後左右方向にそれぞれ延設されている。
【0022】
ふさぎ板30の接合部33の内側に内鉄骨梁部材25、ふさぎ板30の接合部33の外側に外鉄骨梁部材26を配設するとともに、ふさぎ板30の接合部33の内側に配される内鉄骨梁部材25を、ふさぎ板30の接合部33の外側に配される外鉄骨梁部材26に対応して配設し、ふさぎ板30内に、異径鉄筋41を配するとともに、コンクリート42を打設することで、鉄筋コンクリート柱40、柱・梁接合部1が形成される。
【0023】
本発明の要部を以下に説明する。補強構造10は、内補強部材50と、外補強部材70と、を有している。
【0024】
内補強部材50は、鋼製プレートで、ふさぎ板30の内面31とふさぎ板30の内側に配される内鉄骨梁部材25のウエブ23とを接合可能な略L字状に形成されている。
【0025】
本実施形態では、内補強部材50は、ふさぎ板30の接合部33の内面31及びふさぎ板30の接合部33の内側に配される内鉄骨梁部材25のウエブ23と対向する面を、ふさぎ板30の接合部33の内面31及びふさぎ板30の接合部33の内側に配される内鉄骨梁部材25のウエブ23と、溶接することで、ふさぎ板30の内面31とふさぎ板30の内側に配される内鉄骨梁部材25のウエブ23とをそれぞれ接合している。
【0026】
そして、内補強部材50は、内鉄骨梁部材25のウエブ23の上下方向における中央部に配設されている。また、内補強部材50は、取り付けられた状態において、上下方向からみて、内鉄骨梁部材25の上フランジ21及び下フランジ22から突出しないように設定、配置されている。
【0027】
外補強部材70は、鋼製プレートで、ふさぎ板30の接合部33の外面32とふさぎ板30の外側に配される外鉄骨梁部材26のウエブ23とを接合可能な長尺帯状に形成されている。
【0028】
本実施形態では、外補強部材70は、ふさぎ板30の接合部33の外面32及びふさぎ板30の接合部33の外側に配される外鉄骨梁部材26のウエブ23と対向する面を、ふさぎ板30の接合部33の外面32及びふさぎ板30の接合部33の外側に配される外鉄骨梁部材26のウエブ23と、溶接することで、ふさぎ板30の外面32とふさぎ板30の外側に配される外鉄骨梁部材26のウエブ23とをそれぞれ接合している。
【0029】
そして、外補強部材70は、外鉄骨梁部材26のウエブ23の上下方向に沿って二か所配設されている。また、外補強部材70は、製造コストを抑制するため、取り付けられた状態において、上下方向からみて、外鉄骨梁部材26の上フランジ21及び下フランジ22から突出しないように設定、配置されている。
【0030】
上記構成の補強構造10では、鉄筋コンクリート柱40と、鉄骨梁部材20と、上下端が開放する筒状のふさぎ板30と、で構成される柱・梁接合部1の補強構造であって、
鉄骨梁部材20は、ふさぎ板30の内側及び外側に配され、上フランジ21と、下フランジ22と、ウエブ23とを有するH形鋼が用いられ、
ふさぎ板30の内面31とふさぎ板30の内側に配される鉄骨梁部材20(内鉄骨梁部材25)のウエブ23とを接合する内補強部材50と、
ふさぎ板30の外面32とふさぎ板30の外側に配される鉄骨梁部材20(外鉄骨梁部材26)のウエブ23とを接合する外補強部材70と、の少なくとも一方を有している。
【0031】
これによれば、ふさぎ板30の内面31とふさぎ板30の内側に配される鉄骨梁部材20(内鉄骨梁部材25)のウエブ23とを接合する内補強部材50を配して、ふさぎ板30の内面31とふさぎ板30の内側に配される鉄骨梁部材20(内鉄骨梁部材25)のウエブ23との接合を強固なものとし耐力を確保できる。また、ふさぎ板30の外面32とふさぎ板30の外側に配される鉄骨梁部材20(外鉄骨梁部材26)のウエブ23とを接合する外補強部材70を配しているので、ふさぎ板30の外面32とふさぎ板30の外側に配される鉄骨梁部材20(外鉄骨梁部材26)との接合を強固なものとし耐力を確保できる。
【0032】
また、ふさぎ板30の内側に配される鉄骨梁部材20(内鉄骨梁部材25)は、平面視において十字状に形成されている。
【0033】
これによれば、図4に参照するように、例えば、上側から力Pが加わったときに、符号90、90aに示されるコンクリート42部分の支圧によって応力が伝達されることが期待でき、この効果により、接合部耐力の上昇につなげることができる。なお、図4では、理解を容易にするため、異径鉄筋41、内補強部材50、外補強部材70を省略してある。
【0034】
また、外補強部材70を、上下方向に沿って複数配設しているので、補強部分が複数となり、柱・梁接合部1の耐力の確保に寄与する。
【0035】
また、内補強部材50を、上下方向からみて、ふさぎ板30の内側に配される鉄骨梁部材20(内鉄骨梁部材25)の上フランジ21及び下フランジ22から突出しないように配設しているので、鉄筋コンクリート柱40を形成するときに、ふさぎ板30内へのコンクリート42の充填が妨げられることを抑制できるので、施工不良を低減することが可能となる。
【0036】
本発明の補強構造10は、上記構成に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない限り各種の設計変更等が可能である。
【0037】
例えば、内補強部材50、外補強部材70のいずれか一方のみ配設することも可能である。
【0038】
また、内補強部材50、外補強部材70の数、配置位置、形状等は、実施態様に応じて適宜変更することができる。このようにすることで、耐力を適宜設定することができる。
【0039】
また、上記実施形態では、外鉄骨梁部材26は、ふさぎ板30の各外面32から外鉄骨梁部材26が、上下方向からみて、前後左右方向にそれぞれ延設されている柱・梁接合部に適用されていたが、前後左右方向の内、二つの方向にそれぞれ延設するL字状の柱・梁接合部、三つの方向にそれぞれ延設するT字状の柱・梁接合部、に適用することが可能である。
【0040】
また、上下方向から直交する方向からみて、L字状、トの字状、十字状となる柱・梁接合部、に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 柱・梁接合部
10 補強構造
20 鉄骨梁部材
21 上フランジ
22 下フランジ
23 ウエブ
25 内鉄骨梁部材
26 外鉄骨梁部材
30 ふさぎ板
31 内面
32 外面
40 鉄筋コンクリート柱
50 内補強部材
70 外補強部材
図1
図2
図3
図4
図5