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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】移動体の管理システム
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/04 20060101AFI20220920BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20220920BHJP
【FI】
B60C23/04 140D
H04W64/00 171
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019219635
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021088275
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390003816
【氏名又は名称】株式会社ユーエイ
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】雄島 耕太
(72)【発明者】
【氏名】羽田 智樹
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-296906(JP,A)
【文献】特開2002-183896(JP,A)
【文献】特開2019-192157(JP,A)
【文献】特表2019-536696(JP,A)
【文献】特開2019-198574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/04
H04W 64/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用車輪(2)を有する移動体(9)の管理システムに於て、
上記車輪(2)の内部に、車輪識別情報が予め記憶されている車輪記憶部(10)と、上記車輪(2)の回転によって発電する発電部(15)と、該発電部(15)によって発電した車輪内発生電力にて作動する車輪回転数センサ(16)と、上記車輪内発生電力にて作動する加速度センサ(17)と、上記車輪回転数センサ(16)にて検出した回転数情報と上記加速度センサ(17)にて検出した加速度情報とを上記車輪識別情報に関連付けて上記車輪内発生電力にて無線送信する車輪送信部(12)とを、備え、
上記車輪(2)から送信された上記回転数情報と上記加速度情報と上記車輪識別情報とに基づいて上記移動体(9)の位置情報を算出すると共に稼動状況を演算処理する管理用情報処理装置(6)と、該管理用情報処理装置(6)が算出した上記移動体(9)の位置情報及び稼動状況を表示する表示手段(7)とを、備え
上記車輪(2)の内部に、上記車輪内発生電力にて作動するジャイロセンサ(18)を有し、該ジャイロセンサ(18)にて検出した角速度情報を上記車輪識別情報に関連付けて上記車輪送信部(12)から送信するよう構成したことを特徴とする移動体の管理システム。
【請求項2】
走行用車輪(2)を有する移動体(9)の管理システムに於て、
上記車輪(2)の内部に、車輪識別情報が予め記憶されている車輪記憶部(10)と、上記車輪(2)の回転によって発電する発電部(15)と、該発電部(15)によって発電した車輪内発生電力にて作動する車輪回転数センサ(16)と、上記車輪内発生電力にて作動する加速度センサ(17)と、上記車輪回転数センサ(16)にて検出した回転数情報と上記加速度センサ(17)にて検出した加速度情報とを上記車輪識別情報に関連付けて上記車輪内発生電力にて無線送信する車輪送信部(12)とを、備え、
上記車輪(2)から送信された上記回転数情報と上記加速度情報と上記車輪識別情報とに基づいて上記移動体(9)の位置情報を算出すると共に稼動状況を演算処理する管理用情報処理装置(6)と、該管理用情報処理装置(6)が算出した上記移動体(9)の位置情報及び稼動状況を表示する表示手段(7)とを、備え、
さらに、上記車輪(2)が走行する走行予定路(G)に設けられタグ座標情報を有する複数のIDタグ(4)と、上記車輪(2)の内部に設けられて上記車輪内発生電力にて作動するIDタグ読取部(14)と、を備え、
上記IDタグ読取部(14)にて上記IDタグ(4)から読み取ったタグ座標情報を、上記車輪識別情報に関連付けて上記車輪送信部(12)から送信するよう構成したことを特徴とする移動体の管理システム。
【請求項3】
走行用車輪(2)を有する移動体(9)の管理システムに於て、
上記車輪(2)の内部に、車輪識別情報が予め記憶されている車輪記憶部(10)と、上記車輪(2)の回転によって発電する発電部(15)と、該発電部(15)によって発電した車輪内発生電力にて作動する車輪回転数センサ(16)と、上記車輪内発生電力にて作動する加速度センサ(17)と、上記車輪回転数センサ(16)にて検出した回転数情報と上記加速度センサ(17)にて検出した加速度情報とを上記車輪識別情報に関連付けて上記車輪内発生電力にて無線送信する車輪送信部(12)とを、備え、
上記車輪(2)から送信された上記回転数情報と上記加速度情報と上記車輪識別情報とに基づいて上記移動体(9)の位置情報を算出すると共に稼動状況を演算処理する管理用情報処理装置(6)と、該管理用情報処理装置(6)が算出した上記移動体(9)の位置情報及び稼動状況を表示する表示手段(7)とを、備え、
さらに、上記車輪(2)と無線通信可能な複数の中継器(5)を備え、
上記中継器(5)は、予め記憶されている中継器座標情報と、上記車輪(2)から送信された車輪識別情報を有する電波を受信した際の電波強度情報とを、受信した車輪識別情報に関連付けて、上記管理用情報処理装置(6)へ送信するように構成したことを特徴とする移動体の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管理対象物としての移動体の位置情報を取得するために、識別情報を有するIDタグと、所定位置情報を有するIDタグ読取器(送受信器)と、を備え、IDタグ読取器からの電波を受信したIDタグが、識別情報を有する反射波(反射信号)をIDタグ読取器に送信することで、管理対象物(移動体)の位置を取得するシステムが公知である(例えば、特許文献1参照)。
また、移動体が車輪を備えている場合に、その車輪において発電を行って、移動体の位置等を演算可能な信号を発信する車輪は知られていない。従来公知の発電機能を備えた車輪は、移動体に付設の照明ライトを点燈するためのものに過ぎなかった(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-116583号公報
【文献】特許第4977690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電池を内蔵したアクティブ型のIDタグを用いたシステムは、電池交換作業や電池の劣化(消費)確認作業等の保守点検作業に手間と時間がかかるという問題があった。また、電池を内蔵しないパッシブ型のIDタグを用いたシステムは、通信距離が短くなるためIDタグ読取器の数や設置位置を工夫しないと正確な位置情報を得ることが困難で汎用性に欠けるといった問題があった。さらに、多数の移動体について、位置情報のみならず、各移動体の総走行距離,稼動状況等を管理するうえで、従来のシステムは、不十分であった。
また、従来の(特許文献2記載の)発電機能付車輪は、耐久性の面で問題があり、走行路面からの衝撃に弱く、強度も不足し、防水性の点から見ても内部に水が浸入し易い等の問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、保守点検作業が容易であって、高精度に移動体の位置情報を得ることが可能であり、しかも、複数の(ショッピングカートや台車等の)車輪付の移動体に関する位置情報を得るのみならず、各移動体の稼動状況を目視確認できる管理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走行用車輪を有する移動体の管理システムに於て;上記車輪の内部に、車輪識別情報が予め記憶されている車輪記憶部と、上記車輪の回転によって発電する発電部と、該発電部によって発電した車輪内発生電力にて作動する車輪回転数センサと、上記車輪内発生電力にて作動する加速度センサと、上記車輪回転数センサにて検出した回転数情報と上記加速度センサにて検出した加速度情報とを上記車輪識別情報に関連付けて上記車輪内発生電力にて無線送信する車輪送信部とを、備え;上記車輪から送信された上記回転数情報と上記加速度情報と上記車輪識別情報とに基づいて上記移動体の位置情報を算出すると共に稼動状況を演算処理する管理用情報処理装置と、該管理用情報処理装置が算出した上記移動体の位置情報及び稼動状況を表示する表示手段とを、備え上記車輪の内部に、上記車輪内発生電力にて作動するジャイロセンサを有し、該ジャイロセンサにて検出した角速度情報を上記車輪識別情報に関連付けて上記車輪送信部から送信するよう構成したものである。
【0007】
また、走行用車輪を有する移動体の管理システムに於て;上記車輪の内部に、車輪識別情報が予め記憶されている車輪記憶部と、上記車輪の回転によって発電する発電部と、該発電部によって発電した車輪内発生電力にて作動する車輪回転数センサと、上記車輪内発生電力にて作動する加速度センサと、上記車輪回転数センサにて検出した回転数情報と上記加速度センサにて検出した加速度情報とを上記車輪識別情報に関連付けて上記車輪内発生電力にて無線送信する車輪送信部とを、備え;上記車輪から送信された上記回転数情報と上記加速度情報と上記車輪識別情報とに基づいて上記移動体の位置情報を算出すると共に稼動状況を演算処理する管理用情報処理装置と、該管理用情報処理装置が算出した上記移動体の位置情報及び稼動状況を表示する表示手段とを、備え;上記車輪が走行する走行予定路に設けられタグ座標情報を有する複数のIDタグと、上記車輪の内部に設けられて上記車輪内発生電力にて作動するIDタグ読取部と、を備え;上記IDタグ読取部にて上記IDタグから読み取ったタグ座標情報を、上記車輪識別情報に関連付けて上記車輪送信部から送信するよう構成したものである。
【0008】
また、走行用車輪を有する移動体の管理システムに於て;上記車輪の内部に、車輪識別情報が予め記憶されている車輪記憶部と、上記車輪の回転によって発電する発電部と、該発電部によって発電した車輪内発生電力にて作動する車輪回転数センサと、上記車輪内発生電力にて作動する加速度センサと、上記車輪回転数センサにて検出した回転数情報と上記加速度センサにて検出した加速度情報とを上記車輪識別情報に関連付けて上記車輪内発生電力にて無線送信する車輪送信部とを、備え;上記車輪から送信された上記回転数情報と上記加速度情報と上記車輪識別情報とに基づいて上記移動体の位置情報を算出すると共に稼動状況を演算処理する管理用情報処理装置と、該管理用情報処理装置が算出した上記移動体の位置情報及び稼動状況を表示する表示手段とを、備え;上記車輪と無線通信可能な複数の中継器を備え;上記中継器は、予め記憶されている中継器座標情報と、上記車輪から送信された車輪識別情報を有する電波を受信した際の電波強度情報とを、受信した車輪識別情報に関連付けて、上記管理用情報処理装置へ送信するよう構成したものである
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る移動体の管理システムによれば、車輪で発電した電力(車輪内発生電力と呼ぶ)を用いて、各センサが検出した情報(データ)や車輪識別情報を、送信でき、電力源としての電池が不要で、電池交換や電池消耗確認といった保守点検作業を省略できる。発電した電力にて通信距離を長くできる。また、廃棄電池を無くすことができる。
ショッピングカートやストレッチャー、台車等の移動体に、車輪を取替えるだけで、センサ及び発電機能の付設が行え、配線等の複雑な作業が不要で、電気に関する知識や技能を有していない者であっても容易に付設作業を行うことができる。移動体の現在位置情報に限らず、店内や病院や工場等の施設内での走行ルート(動線)の分析や、ホットスポット(エリア)の分析等の稼動状況等を知って、施設の改善や管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の一形態を示す全体構成図である。
図2】本発明の実施の一形態を示すブロック図である。
図3図2に一体に接続されるべきブロック図であって、※1,※2,※3は各々図2の対応する※1,※2,※3に接続状として構成されるブロック図である。
図4】車輪の一実施形態を示す断面図である。
図5】車輪の分解斜視図である。
図6】車輪の要部の分解斜視図である。
図7】表示手段に表示される稼動状況の一例を示すグラフ図である。
図8】表示手段に表示される稼動状況の他の例を示す図であって、多数の移動体(カート)の一日の時刻毎の稼動状況を可視化して表示したグラフ図である。
図9】表示手段に表示される展示会場等に於ける移動体の「置き場」(エリア)を示した図である。
図10】表示手段に表示される稼動状況を可視化して表示した図であって、図9の各「置き場」(エリア)に於て、移動体(カート)が偏って置かれているか、均等に置かれているかを判別することを容易としたグラフ図である。
図11】表示手段に表示される稼動状況を可視化して表示した図であって、図9の各「置き場」(エリア)毎に置かれている移動体(カート)が、(横軸で示した)時刻毎に、次々と増減変化する状況を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示の実施の一形態に基づき本発明を詳説する。
本発明に係る移動体の管理システムは、ショッピングカートやストレッチャー、台車等の車輪を有する(多数の)移動体を管理するためのシステムである。
【0012】
本発明は、図1に示すように、多数の(管理対象物としての)移動体9の各々に付設の各車輪2からの情報を受信可能な複数の中継器5を設け、さらに、中継器5からの情報を受信する管理用情報処理装置6を備え、かつ、管理用情報処理装置6の演算結果を表示可能な表示手段7と、及び、管理用情報処理装置6を操作可能な操作入力手段8を、備えている。
【0013】
本発明の車輪2は、移動体9に新たに付設しても良いが、既存の移動体9の下部に、既設の車輪を交換して取付けても良い。つまり、既設の車輪に対して、本発明に係る車輪2を交換自在な形状・寸法等に設定する。
【0014】
図2図3は、※1,※2,※3を相互に接続状として構成されるべき一枚のブロック図であって、この図2図3とを合体した一つの図として説明すれば、車輪2の内部には、数字・記号・文字等による識別情報が、予め記憶されているフラッシュメモリやRAMやROM等からなる車輪記憶部10が、設けられている。また、車輪2が走行回転することによって発電する発電部15が、車輪2の内部に設けられている。
【0015】
そして、発電部15によって発電した電力(本発明では、「車輪内発生電力」と呼ぶこともある)にて作動するCPUやマイコン等の車輪演算処理部11と、上記車輪内発生電力によって作動する車輪回転数センサ16と、上記車輪内発生電力によって作動する加速度センサ17・ジャイロセンサ18と、上記車輪内発生電力によって作動して上記各センサ16,17,18の検出情報(データ)と識別情報を、中継器5及び/又は管理用情報処理装置6へ無線送信する車輪送信部12と、上記車輪内発生電力にて作動して,中継器5又は管理用情報処理装置6からの命令信号や確認信号等の管理信号を,無線受信する車輪受信部13とを、備えている。
なお、図2に於ては、車輪送信部12と車輪受信部13とを、まとめて、「車輪送受信部」として表示している。
【0016】
図1に於て、移動体9の走行する走行予定路Gには、タグ座標情報が予め記憶されているパッシブ型(内蔵電池無し型)のIDタグ4を、複数設けている。タグ座標情報とは、IDタグ4が配設(埋設)されている位置を示す情報である。
【0017】
複数のIDタグ4は、所定間隔(ピッチ)毎に配設したり、あるいは、走行予定路Gの曲り部や分岐部や合流部といった所定要所毎に、配設される。
なお、IDタグ4を走行予定路Gに設けるとは、図例のように、走行予定路Gの走行面よりも下方位置にIDタグ4を埋設する場合に限らず、走行予定路Gの走行面上にIDタグ4を敷設や貼設(貼着)するも自由である。車輪2内のIDタグ読取部14がIDタグ4を読み取り可能な位置であれば良い。
【0018】
そして、車輪2の内部に、IDタグ4のタグ座標情報を読み取る(得る)ことが可能なIDタグ読取部(読取器)14を設けている。IDタグ読取部14は、発電部15によって発電した電力にて作動する。
このように、走行予定路GにIDタグ4を設けると共に、走行予定路Gに接する(近い)車輪2にIDタグ読取部14を設けたので、通信距離が短く、僅かな電力で十分かつ確実にIDタグ4のタグ座標情報を読み取ることができる。
【0019】
そして、車輪2の車輪演算処理部11は、車輪回転数センサ16にて検出した回転数情報(データ)と、加速度センサ17にて検出(測定)した加速度情報(データ)と、ジャイロセンサ18にて検出(測定)した角速度情報(データ)と、IDタグ読取部14にて読み取ったタグ座標情報とを、車輪記憶部10から読み出した車輪識別情報に関連付けて、車輪送信部12から中継器5又は管理用情報処理装置6へ送信する。
【0020】
ここで、中継器5又は管理用情報処理装置6へ送信される情報を、車輪情報と呼ぶ場合がある。例えば、車輪情報とは、車輪識別情報のみをもった情報、車輪識別情報に関連付けられた回点数情報や加速度情報、角速度情報等である。
【0021】
中継器5は、複数設けられ、車輪2及び管理用情報処理装置6と通信可能なものである。なお、中継器5は、管理用情報処理装置6と無線通信するのが好ましいが有線通信するも良い。
【0022】
中継器5は、中継器5の位置を意味する中継器座標情報が予め記憶されているフラッシュメモリやRAMやROM等の中継器記憶部50と、中継器5の受信や送信等の動作を司るCPUやマイコン等の中継器演算処理部51と、車輪2からの車輪情報を無線通信にて受信可能な中継器受信部53と、中継器座標情報や受信した車輪情報を無線又は有線にて管理用情報処理装置6へ送信可能な中継器送信部52と、を備えている。
図2において、中継器送信部52と中継器受信部53とをまとめて中継器送受信部として図示している。中継機器送受信部52,53は、無線接続用のアンテナや、有線接続用のシリアルインターフェース等である。
【0023】
なお、中継器座標情報は、緯度・経度や、施設基準点から距離、等の座標の座標数値そのもの、或いは、中継器座標情報は、(直接的な座標数値そのものに限らず、)中継器5の位置が分かるように作成された文字等の中継器識別情報であっても良い。
つまり、中継器記憶部50に中継器識別情報に関連付けた座標情報を予め入力して記憶させ、管理用情報処理装置6が中継器情報を受信することで、受信した中継器情報に対応する座標情報を読み出して、中継器5の位置が分かるように構成するも良い。
【0024】
中継器演算処理部51は、車輪2からの所定電波を受信した際に、電波受信強度情報を作成する。ここで、上記車輪2からの電波とは、例えば、車輪識別情報のみをもった電波や、車輪識別情報と測位用情報をもった電波、車輪識別情報に関連付けられた回転数情報等を有する電波等自由である。
【0025】
中継器演算処理部51は、受信した車輪情報(車輪識別情報)に、中継器座標情報と電波受信強度情報と電波受信時間情報とを関連付けて、中継器送信部52から管理用情報処理装置6へ送信する。
【0026】
管理用情報処理装置6は、ルータ機器やプロキシサーバー機器等であるゲートウェイ機器6A、ホストコンピュータやクラウドコンピューティング等であるサーバー機器6B、デスクトップパーソナルコンピュータ本体やラップトップ型パーソナルコンピュータ(ノートパソコン)の一部やタブレット型コンピュータの一部等である汎用コンピュータ6C、の内の複数種類の組み合わせ、又は、1種類で構成している。
【0027】
表示手段7は、デスクトップ型モニタや、ラップトップコンピュータやタブレット型コンピュータやスマートフォンの一部であるディスプレイ等である。
操作入力手段8は、キーボードやマウス、タッチパネル等である。
【0028】
管理用情報処理装置6は、中継器5と車輪2と通信可能な管理用送信部62及び管理用受信部63と、受信した情報や演算プログラム(アプリケーションソフト)等が記憶されるハードディスクやRAMやROM等の管理用記憶部60と、演算プログラムの実行や管理用送信部62と管理用受信部63の動作を司るCPUやMPU等の管理用演算処理部61と、を有している。
図3において、管理用送信部62と管理用受信部63とをまとめて管理用送受信部として図示している。管理用送受信部62,63は、無線接続用のアンテナや、有線接続用のシリアルインターフェース等である。
【0029】
管理用記憶部60は、移動体9が走行する可能性のある管理区域の地図情報(マップ情報)を予め記憶している。管理区域は、病院や介護施設、店舗やビル、工場や倉庫、小学校や大学、コンサート会場や展示会場等、空港や駅構内等様々である。
【0030】
本発明は上述のように、車輪回転数センサ16にて回転数情報が車輪識別情報と共に車輪送信部12から、管理用情報処理装置6(の演算処理部61)へ送信され、その車輪2毎の総走行距離(Km)は簡単に算出され、しかも、図7に示すように各車輪2が付設されている移動体9(カート)毎の総走行距離を、(図1に示す)表示手段7に表わされる。
【0031】
このようなグラフ図として、可視化されることで、移動体(カート)ナンバーがNo.2,No.15,No.8,No.30のものは、寿命が近づき交換時期であることを、簡単に判別できる。図7に於ては斜線をもって示した棒グラフのものは、走行距離が(例えば)100kmに近づいており交換時期であることが簡便に、かつ、見過ごすことなく、判別可能である。
また、車輪回転数センサ16からの情報も、同様に、車輪識別情報と共に管理用情報処理装置6へ送信されるので、移動体9が異常に高速で走行して、危険であることを、表示手段7に於て、速度表示グラフ等によって、知らせることも簡単に可能となる。
【0032】
次に、図8に示したように、複数のカート001~007の各々について、例えば、朝9時から夜8時までの分刻みの稼動状況も、本発明の図1図3で説明した構成によって、可視化できることを示す。
即ち、図8のグラフ図は、管理用演算処理部61と管理用記憶部60等を備えた管理用情報処理装置6によって、算出され、表示手段7に表現されたグラフ図の一例であって、各々のカートが、「移動中」「停止状態」「振動中」のいずれの状態(稼動状況)にあるか、一目瞭然である。
【0033】
例えば、カート006は、最も移動量が多いことが判る。また、カート002は、振動が極端に多く、車輪破損が疑われ、緊急に点検・修理を要する。
なお、カート001,カート003,カート004も、短い時間の振動発生を起こしている。これは、車輪損傷の可能性の他、走行路面の一部に、凹凸のある(荒れた)部位が存在している場合、あるいは、積み荷が不安定な状態で積込まれていたり、位置がずれている可能性が、想定される。
【0034】
この図8は、多数のカートの一部の表示を示したに過ぎず、全体の多数のカートを管理すれば、車輪破損に伴う人身事故や商品破損事故、あるいは、カート転倒事故を、未然に確実に防止できることを、示している。
【0035】
次に、図9は、管理区域20の一例を示し、図10と合わせて、表示手段7に表示することで、4箇所のエリアX1 ,X2 ,X3 ,X4 に移動体(カート)9が集中していることが判ると共に、移動体(カート)9の偏りが、一目瞭然である。
本発明では、図9図10に示したように、移動体(カート)9の偏りが(可視化にて)迅速に確認可能となり、迅速に対策案を立てることができる。
【0036】
さらに、図11は、横軸に(例えば)一時間毎の時間(時刻)を採り、縦軸に移動体の各停止場所等での台数を示したグラフ図であって、図9に示す所定管理区域20内の移動体(カート)9の偏りの遷移を、表示手段7(図1図3参照)に表示可能であることを示す。
なお、図11の各棒グラフに於て、第1エリアX1 ,第2エリアX2 ,第3エリアX3 ,第4エリアX4 以外の部位Zは、カート移動中、又は、それ以外のエリア(場所)にカートが停止中であることを示す。
【0037】
そして、図4図6は、本発明の管理システムに使用可能な車輪2の実施の一形態を示す図である。
図4の断面図、及び、図5図6の分解斜視図に於て、21は固定シャフトであり、このシャフト21に対して、第1軸受26と第2軸受27を介して回転自在に枢着された車輪本体25を、備える。
この車輪本体25は、シャフト21に枢着された状態で、円環状空間部22を形成する。かつ、この空間部22に発電部15が設けられている。
【0038】
車輪本体25は、第1軸受26が嵌着される孔部28を有する円形側壁面部31Aと、外周面29が(図1に示した走行予定路Gに接して転動する)接地転動面となる円筒壁面部31Bとから成る第1半体31を有する。
さらに、車輪本体25は、第2軸受27が嵌着される孔部33を有する円形蓋板状の第2半体32を有している。
【0039】
前述の第1半体31の円筒壁面部31Bの開口端内周面31Cに、Oリング等のシール材34を介して、上記第2半体32が(施蓋状として)嵌着される。
つまり、発電部15を内有する空間部22が、第1半体31と第2半体32によって、形成されている。さらに言えば、第1半体31と第2半体32によって中空殻構造に構成されている。
【0040】
ところで、第1半体31の円筒壁面部31Bの開口端内周面31Cと、円形蓋板状の第2半体32の外周面とは、ネジ結合、接着、熱融着等をもって、連結状に一体化される。
そして、固定シャフト21の中間部位には、緩衝機能のある合成樹脂やゴム材から成る円環状マウント部材35が、外嵌状に固着されている。
【0041】
発電部15を構成しているステータ36を、このマウント部材35に、外嵌状に取着している。
しかも、電子部品を搭載した通信用基板40を、上記マウント部材35の側面に取着している。
これによって、車輪走行時の路面等からの衝撃が直接に、ステータ36及び通信用基板40に伝わらず、十分に緩衝されて、故障発生を防ぎ、長寿命となる。
【0042】
そして、図4に示すように、通信用基板40は、第1半体31の円形側壁面部31A(の内面)と平行状に配設されると共に、ステータ36よりも、円形側壁面部31Aに接近した位置に設けられる。仮に、シール材34の密封不良発生時に、水や粉塵が空間部22へ浸入してきたとしても、重要な電子部品を搭載した通信用基板40は、空間部22の奥方部位に在ると共に、発電部15にて遮蔽されているので、十分に保護され、長寿命となる。
【0043】
ここで、発電部15の構造・構成について簡略説明すれば、ステータ36は、コイル部37を有するボビン38と、それ等を包囲するステータコア片39等から成り、まず、図6に示すように、円環状ステータ36の孔部に、マウント部材35を構成する第1マウント体35A・第2マウント体35Bを軸心両方向から押込んで結合し、かつ、シャフト21を挿入して、図5に示す中心ユニット体42を形成する。
また、図5に於て、43はマグネットであって、分解状態を示す同図の部品・ユニットを図4に示すように、組立てて、車輪を構成する。
【0044】
なお、図4に於て、44は複数個の小さなマグネット片であって、円形側壁面部31Aの内面に埋設され、同じラジアル位置で対向して、通信用基板40にホール素子45が配設され、車輪回転数を検出できる。
【0045】
ところで、(図示省略するが、)前述した管理システムに於て必要な電子部品の大半が、この車輪内の通信用基板40に搭載されている。即ち、通信用基板40には、車輪識別情報が記憶されている車輪記憶部10と、車輪回転数センサ16と、加速度センサ17とが、搭載され、さらに、車輪回転数センサ16にて検出した回転数情報と、上記加速度センサ17にて検出した加速度情報とを、上記車輪記憶部10からの車輪識別情報に関連付けて無線送信する車輪送信部12も、搭載され、コンパクトに、狭小な空間部22に、内有される。
【0046】
また、上記車輪回転数センサ16と上記加速度センサ17と上記車輪送信部12は、車輪2の内部に設けられている上記発電部15によって発電される車輪内発生電力にて、作動するように電気的に接続されている。電気的に接続とは、通信用基板40に於て、プリント配線やロウ付けにて接続する場合、あるいは、図4に於て図示した配線用孔部46に(図示省略の)配線を挿通して、接続する場合等が挙げ得る。
なお、図4では、図示省略したが、車輪本体25の円環状空間部に小型蓄電池を内有させるも好ましい。あるいは、車輪本体25の外部に於て、蓄電池を付加するも、望ましい。
【符号の説明】
【0047】
2 車輪
4 IDタグ
5 中継器
6 管理用情報処理装置
7 表示手段
9 移動体
10 車輪記憶部
11 車輪演算処理部
12 車輪送信部
14 IDタグ読取部
15 発電部
16 車輪回転数センサ
17 加速度センサ
18 ジャイロセンサ
21 固定シャフト
22 円環状空間部
25 車輪本体
26 第1軸受
27 第2軸受
29 外周面
31 第1半体
31A 円形側壁面部
31B 円筒壁面部
31C 開口端内周面
32 第2半体
34 シール材
35 マウント部材
36 ステータ
40 通信用基板
G 走行予定路(走行路面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11