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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】蒸発装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 1/22 20060101AFI20220920BHJP
   B01D 5/00 20060101ALI20220920BHJP
   B01D 3/00 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
B01D1/22 A
B01D5/00 Z
B01D3/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019525447
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2018022367
(87)【国際公開番号】W WO2018230550
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2017116517
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390006264
【氏名又は名称】関西化学機械製作株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】向田 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】山路 寛司
(72)【発明者】
【氏名】野田 秀夫
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143776(WO,A1)
【文献】特開2000-271404(JP,A)
【文献】特開2000-308816(JP,A)
【文献】国際公開第02/026374(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00- 5/00
B01J 4/00- 4/04
B01F 27/00-27/96
B01F 35/00-35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料液が供給されかつ揮発成分出口および濃縮液出口を備える、撹拌槽と、
該撹拌槽内に設けられておりかつ該撹拌槽内の発熱部分に原料液を流下する、散液部とを備える、蒸発装置であって、
(a)該撹拌槽が、該撹拌槽の底部と該内壁とで囲まれておりかつ該流下した原料液を一時的に貯留する、少なくとも1つの貯留部を備え、
(b)該散液部が、
回転軸;
一方の端部を含む受液部が該貯留部内に挿入されるように配置されており、かつ該回転軸の回転に伴って該貯留部に一時的に貯留された該原料液を、該受液部を通じて該撹拌槽の下方から上方に向かって流動する流路を備える、少なくとも1つのチャネル部材;および
該回転軸と該チャネル部材とを連結する、取付具;
から構成されており、そして
(c)該チャネル部材が、該一方の端部の水平方向において、
原料液導入部分であって、該回転軸の回転によって形成される該チャネル部材の回転軌跡の最外周を構成する基点から該回転による進行方向側の先端に位置する原料液導入縁部まで延び、かつ該原料液導入縁部および該基点を含む仮想直線と該基点における該最外周の接線との交差角θの絶対値が、該最外周の該接線を基準として0°から10°である、原料液導入部分
流路形成部分であって、該最外周の該基点から該回転による該進行方向と反対側に位置する流路形成縁部まで延びている、流路形成部分;および
該原料液導入部分が設けられた側の該流路形成縁部に配置された、該流路内で広がった該原料液を堰き止めて下方から上方への流動を促す流路拡張部;
から構成されている、蒸発装置。
【請求項2】
前記撹拌槽の前記発熱部分が該撹拌槽の内壁であり、そして該内壁が該撹拌槽の外周に設けられたジャケットにより加熱される、請求項に記載の蒸発装置。
【請求項3】
前記チャネル部材の前記原料導入部分が、前記一方の端部の前記水平方向において、前記回転軸の回転による進行方向に対して該回転軸側に押し広げられている、請求項1または2に記載の蒸発装置。
【請求項4】
前記チャネル部材の前記原料導入部分が、前記一方の端部の前記水平方向において、前記撹拌槽の前記内壁と略平行となるように設計されている、請求項またはに記載の蒸発装置。
【請求項5】
前記濃縮液出口が前記撹拌槽の底部に設けられている、請求項1からのいずれかに記載の蒸発装置。
【請求項6】
前記揮発成分出口が前記撹拌槽の底部に設けられており、前記撹拌槽の中央にコンデンサーが設けられており、そして前記原料液から蒸発した揮発成分が該コンデンサーにて凝縮し、該揮発成分出口を介して排出される、請求項2からのいずれかに記載の蒸発装置。
【請求項7】
原料液を含む原料タンクと、
該原料タンクから供給される該原料液を処理する請求項2からのいずれかに記載の蒸発装置と、
該蒸発装置の揮発成分出口から排出される揮発成分を凝縮するコンデンサーと、
を備える、蒸発システム。
【請求項8】
原料液を含む原料タンクと、
該原料タンクから供給される該原料液を処理する請求項に記載の蒸発装置と、
を備える、蒸発システム。
【請求項9】
撹拌槽内の貯留部に一時的に貯留された原料液を、回転により撹拌槽の下方から上方に向かって流動させ、かつ該上方から散液することにより、該原料液を該撹拌槽内の発熱部分に流下して蒸発させる、蒸発装置内に設けられる散液部であって、
回転軸;
一方の端部を含む受液部が該貯留部内に挿入されるように配置されており、かつ該回転軸の回転に伴って該貯留部に一時的に貯留された該原料液を、該受液部を通じて該撹拌槽の下方から上方に向かって流動する流路を備える、少なくとも1つのチャネル部材;および
該回転軸と該チャネル部材とを連結する、取付具;
から構成されており、そして
該チャネル部材が、該一方の端部の水平方向において、
原料液導入部分であって、該回転軸の回転によって形成される該チャネル部材の回転軌跡の最外周を構成する基点から該回転による進行方向側の先端に位置する原料液導入縁部まで延び、かつ該原料液導入縁部および該基点を含む仮想直線と該基点における該最外周の接線との交差角θの絶対値が、該最外周の該接線を基準として0°から10°である、原料液導入部分
流路形成部分であって、該最外周の該基点から該回転による該進行方向と反対側に位置する流路形成縁部まで延びている、流路形成部分;および
該原料液導入部分が設けられた側の該流路形成縁部に配置された、該流路内で広がった該原料液を堰き止めて下方から上方への流動を促す流路拡張部;
から構成されている、散液部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発装置に関し、より詳細には液体から効率的に溶媒回収や濃縮を行うことのできる蒸発装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、食品工業や化学工業の分野において、夾雑物や不純物を含む液体からの溶媒の回収または濃縮のために、「流下薄膜蒸発装置」と呼ばれる蒸発装置が使用されている。
【0003】
図13は、従来の流下薄膜蒸発装置を備える蒸発システムを模式的に表す図である。
【0004】
蒸発システム900は、原料となる原料液を含む原料タンク910と、流下薄膜蒸発装置800と真空ポンプ920とコンデンサー930とを備える。原料液は原料タンク910からポンプ902の駆動により管904を通って予熱器906で一旦予熱され、蒸発装置800に送給される。
【0005】
図14は、図13に示す蒸発システムを構成する蒸発装置800の断面の一部を模式的に表した図である。
【0006】
図14に示すように蒸発装置800は、撹拌槽810と、該撹拌槽810内で鉛直方向に延びかつ水平方向に回転可能な第1の回転軸820と、撹拌槽810内の上方および下方においてそれぞれ第1の回転軸820から水平方向に延びる複数の支柱822と、当該支柱822から下方に延び、かつ撹拌槽810の内壁と接触するように設けられたローラー826とを備える。第1の回転軸820の外周は第2の回転軸821で覆われており、第1の回転軸820および第2の回転軸821は駆動モーター部840とそれぞれ独立して回転自在に接続されている。また、従来の他の蒸発装置では、上記第1の回転軸820および第2の回転軸821が一体的に構成され同じ回転数で回転するものも多い。
【0007】
原料タンクから送給された原料液834は、第2の回転軸821から水平方向に延びる供給口832を通じ、駆動モーター部840の駆動により回転しながら撹拌槽810の内壁上方に供給される。その後、原料液834は当該撹拌槽810の内壁に沿って下方に濡れ面を形成しながら流下する。一方、撹拌槽810の外周は、例えばスチームにより加熱可能なジャケット812で覆われており、ジャケット812を通じた加熱により、流下の間に当該原料液に含まれる揮発成分が蒸発する。蒸発した揮発成分は蒸発出口860を通じて蒸発装置800の外に設けられたコンデンサー930(図13)に送給され、当該コンデンサー930において冷却後、蒸留液として回収される。一方、図14において、原料液に含まれる上記揮発成分以外の成分は、撹拌槽810の内壁をそのまま流下し、撹拌槽810の底部に設けられた排出口880を通じて蒸発装置800の外部に排出される。
【0008】
このような撹拌槽810内での原料液の流下において、支柱822に設けられたローラー826は、駆動モーター部840の駆動により撹拌槽810の内壁を接触しながら周回する。
【0009】
図15は、図14に示す従来の蒸発装置800におけるA-A方向の断面を模式的に
表した図である。蒸発装置800では、ジャケット812により加熱された撹拌槽810の内壁にローラー826が接触かつ周回することによって当該内壁の伝熱面に存在する原料液を強制的に表面更新し、蒸発効率を高めることができる。図15では、ローラー826が設けられているが、従来の蒸発装置では、ローラー826の代わりにワイパーが設けられていてもよい。
【0010】
しかし、このような蒸発装置には、いくつかの懸念すべき事項が指摘されている。
【0011】
1つは、供給された原料液は、撹拌槽内の内壁(伝熱面)をいわゆる「ワンパス」による1回の流下で通過する点である。原料液に大量の揮発成分が含まれている場合や、内壁を流下するまでの間に充分に揮発成分が蒸発し得ない場合も、残存する成分はそのまま排出口980から排出されることが考えられる。このため、充分な濃縮が求められる原料液には使用することが困難とされていた。
【0012】
また、図14に示すようなローラーまたはワイパーは、常に伝熱面に接触しているために摩耗が生じ易い点である。このため、定期的な交換が必要となり、メンテナンスのための作業時間、労力およびコストが増大することが指摘されていた。
【0013】
さらに、当該蒸発装置を停止する場合、内壁の温度が液温よりも高いため、原料液の供給をそのまま停止すると、内壁と接触するローラーまたはワイパーが高熱により変形または劣化する点である。このため、当該蒸発装置の停止において、内壁の温度が低下するまで、原料液の供給を継続することが必要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、原料液から揮発成分をより効率的に蒸発させることができ、メンテナンスおよび修理の煩雑さから解放され得る蒸発装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、原料液が供給されかつ揮発成分出口および濃縮液出口を備える、撹拌槽と、
該撹拌槽内に設けられておりかつ該撹拌槽内の発熱部分に原料液を流下する、散液部とを備える、蒸発装置であって、
(a)該撹拌槽が、該撹拌槽の底部と該内壁とで囲まれておりかつ該流下した原料液を一時的に貯留する、少なくとも1つの貯留部を備え、
(b)該散液部が、
回転軸;
一方の端部を含む受液部が該貯留部内に挿入されるように配置されており、かつ該回転軸の回転に伴って該貯留部に一時的に貯留された該原料液を、該受液部を通じて該撹拌槽の下方から上方に向かって流動する流路を備える、少なくとも1つのチャネル部材;および
該回転軸と該チャネル部材とを連結する、取付具;
から構成されており、そして
(c)該チャネル部材が、該一方の端部の水平方向において、
原料液導入部分であって、該回転軸の回転によって形成される該チャネル部材の回転軌跡の最外周を構成する基点から該回転による進行方向側の先端に位置する原料液導入縁部まで延び、かつ該原料液導入縁部および該基点を含む仮想直線と該基点における該最外周の接線との交差角θの絶対値が、該最外周の該接線を基準として0°から10°である、原料液導入部分;および
流路形成部分であって、該最外周の該基点から該回転による該進行方向と反対側に位置する流路形成縁部まで延びている、流路形成部分;
から構成されている、蒸発装置である。
【0016】
1つの実施形態では、上記撹拌槽の上記発熱部分は該撹拌槽の内壁であり、そして該内壁は該撹拌槽の外周に設けられたジャケットにより加熱される。
【0017】
1つの実施形態では、上記チャネル部材の上記原料導入部分は、上記一方の端部の上記水平方向において、上記回転軸の回転による進行方向に対して該回転軸側に押し広げられている。
【0018】
さらなる実施形態では、上記チャネル部材の上記原料導入部分は、上記一方の端部の上記水平方向において、上記撹拌槽の上記内壁と略平行となるように設計されている。
【0019】
1つの実施形態では、上記濃縮液出口は上記撹拌槽の底部に設けられている。
【0020】
さらなる実施形態では、上記揮発成分出口は上記撹拌槽の底部に設けられており、上記撹拌槽の中央にコンデンサーが設けられており、そして上記原料液から蒸発した揮発成分は該コンデンサーにて凝縮し、該揮発成分出口を介して排出される。
【0021】
本発明はまた、原料液を含む原料タンクと、
該原料タンクから供給される該原料液を処理する上記蒸発装置と、
該蒸発装置の揮発成分出口から排出される揮発成分を凝縮するコンデンサーと、
を備える、蒸発システムである。
【0022】
本発明はまた、原料液を含む原料タンクと、
該原料タンクから供給される該原料液を処理する上記蒸発装置と、
を備える、蒸発システムである。
【0023】
本発明はまた、撹拌槽内の貯留部に一時的に貯留された原料液を、回転により撹拌槽の下方から上方に向かって流動させ、かつ該上方から散液することにより、該原料液を該撹拌槽内の発熱部分に流下して蒸発させる、蒸発装置内に設けられる散液部であって、
回転軸;
一方の端部を含む受液部が該貯留部内に挿入されるように配置されており、かつ該回転軸の回転に伴って該貯留部に一時的に貯留された該原料液を、該受液部を通じて該撹拌槽の下方から上方に向かって流動する流路を備える、少なくとも1つのチャネル部材;および
該回転軸と該チャネル部材とを連結する、取付具;
から構成されており、そして
該チャネル部材が、該一方の端部の水平方向において、
原料液導入部分であって、該回転軸の回転によって形成される該チャネル部材の回転軌跡の最外周を構成する基点から該回転による進行方向側の先端に位置する原料液導入縁部まで延び、かつ該原料液導入縁部および該基点を含む仮想直線と該基点における該最外周の接線との交差角θの絶対値が、該最外周の該接線を基準として0°から10°である、原料液導入部分;および
流路形成部分であって、該最外周の該基点から該回転による該進行方向と反対側に位置する流路形成縁部まで延びている、流路形成部分;
から構成されている、散液部である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ローラーやワイパーなどの部材を用いることなく、原料液から揮発成分を効率良く蒸発することができる。これにより、原料液からより濃縮された濃縮液を調製することができる。さらに本発明によれば、撹拌槽内での部材の焼き付きが発生する可能性を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の蒸発装置の一例を示す概略端面図である。
図2】本発明の蒸発装置を構成する散液部に使用され得るチャネル部材の一例を模式的に表す図であって、取付具に取り付けられた当該チャネル部材の斜視図である。
図3図2に示す取付具に取り付けられたチャネル部材の底面図であって、チャネル部材の回転軌跡の最外周Cを構成する基点Kを通る接線Lと、当該原料液導入部分の原料液導入縁部Hおよび基点Kを含む仮想直線Lとで構成される交差角θを説明するための図である。
図4図2に示す取付具に取り付けられたチャネル部材の中間部の構造を説明するための図であって、(a)は、図2のB-B方向における取付具とチャネル部材との断面に配置された、軸芯O、チャネル部材の回転軌跡の最外周Cを構成する基点K、および流路拡張部の縁部Hの位置関係を示す図であり、そして(b)は、当該軸芯O、基点K、および流路拡張部の縁部Hによって決定される、チャネル部材の回転軌跡の最外周Cを構成する基点Kを通る接線LK2と、流路拡張部の縁部Hおよび基点Kを含む仮想直線LH2とで構成される交差角θK2を説明するための図である。
図5】本発明の蒸発装置の別の例を示す概略端面図である。
図6】本発明の蒸発装置のさらに別の例を示す概略端面図である。
図7】本発明の蒸発装置のさらに別の例を示す概略端面図である。
図8】本発明の蒸発装置のさらに別の例を示す概略端面図である。
図9】本発明の蒸発装置を備える蒸発システムを模式的に表す図である。
図10】本発明の蒸発装置のさらに別の例を示す概略端面図であって、撹拌槽内にコンデンサーを備える蒸発装置の概略端面図である。
図11図10に示す本発明の蒸発装置を用いた蒸発システムの構成を模式的に表す図である。
図12】本発明の蒸発装置のさらに別の例を示す概略端面図であって、撹拌槽内にコンデンサーを備える蒸発装置の概略端面図である。
図13】従来の流下薄膜蒸発装置を備える蒸発システムを模式的に表す図である。
図14図13に示す蒸発システムを構成する蒸発装置800の断面の一部を模式的に表した図である。
図15図14に示す従来の蒸発装置におけるA-A方向の断面を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の蒸発装置を、添付の図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明の蒸発装置の一例を示す概略端面図である。図1の蒸発装置100Aは、原料液の供給が行われる撹拌槽110と、撹拌槽110の内壁111を加熱するジャケット112と、撹拌槽110内に設けられており、かつ撹拌槽110の内壁111に原料液を流下する散液部120とを備える。
【0028】
撹拌槽110は、揮発成分出口113および濃縮液出口115を備える密閉可能な槽であり、水溶液、スラリーなどの液体を収容して撹拌することができる槽である。図1において、揮発成分出口113は撹拌槽110の上方に設けられており、後述する原料液の構成成分が蒸発して生じた揮発成分を、当該出口113を通じて外部に排出し得る。一方、図1において、濃縮液出口115は撹拌槽110の底部、好ましくは底部中央に設けられており、後述する原料液の構成成分が蒸発させた後に残存する濃縮液を、当該出口115を通じて外部に排出し得る。
【0029】
撹拌槽110の大きさ(容量)は、蒸発装置100Aの用途(供される原料液の種類)や、原料液の処理量などによって適宜設定され得るため、必ずしも限定されないが、例えば、0.1リットル~100,000リットルである。撹拌槽110を構成する材質は特に限定されないが、例えば、種々の原料液に対して安定であり、熱伝導性に優れ、かつ入手および加工が容易であるとの理由から、鉄、ステンレススチール、チタン、ハステロイまたは銅のような金属で構成されていることが好ましい。撹拌槽110の内壁は、耐薬品性を高めるために、テフロン(登録商標)やグラスライニング、ゴムライニングのような当該分野において公知のコーティングが付与されていてもよい。
【0030】
撹拌槽110には、内壁111を加熱するためのジャケット112が設けられている。ジャケット112は、例えば、内壁111に沿って撹拌槽110の側面の外周全体を覆うように配置されている。あるいは、ジャケット112は、撹拌槽の110の底部から内壁111の側面外周までを覆うものであってもよい。ジャケット112の形状およびその種類は、内壁111に付与した原料液を蒸発させる温度にまで内壁111を加熱し得るものである限り、特に限定されない。ジャケット112には、例えば、蒸気や熱媒を導入することができるように設計されたものが挙げられる。このようなジャケットは、さらにケーブル状ヒーターのような熱源が組み合わせて使用されてもよい。
【0031】
図1に示す蒸発装置100Aにおいて、撹拌槽110はまた、内壁111から流下した原料液を一時的に貯留するための貯留部117を備える。本発明において、貯留部は、撹拌槽の底部と内壁とが囲まれて形成され得るドーナツ状の領域から構成される。1つの実施形態では、図1に示すように、貯留部117は、撹拌槽110の底部と内壁111と隔壁部118とによって囲まれて形成され得る領域、すなわち撹拌槽110の底部の一部と内壁111の一部と隔壁部118とで囲まれた領域である。貯留部117は、最大で、原料液が隔壁部118からオーバーフローするまでの体積(図1において参照番号129で示される高さまでの体積)に相当する原料液を一時的に貯留することができる。図1に示す実施形態では、貯留部117は上方が開放されているため、内壁111から流下した原料液の液面が隔壁部118の高さを超えるとオーバーフローし、オーバーフローした原料液は濃縮液とし濃縮液出口115を通じて外部に排出可能である。このように、図1に示す実施形態では、隔壁部118は撹拌槽110の底部に設けられた濃縮液出口115の周囲に設けられている。なお、本発明において、貯留部は必ずしも上記のような隔壁部を有していなくてもよい。例えば、貯留部は、図1のうち、隔壁部118が取り除かれ、撹拌槽の底部と内壁とが囲まれて形成され得る領域から構成されてもよい。このような場合、貯留部の下方に設けられた濃縮液出口(例えば、図1の参照番号115に相当)には、濃縮液の排出を制御するバルブが別途設けられており、当該バルブの開放により、貯留部から濃縮液出口を通じて外部に濃縮液を排出することができる。
【0032】
図1に示す蒸発装置100Aにおいて、撹拌槽110の上部はまた、例えば、蓋体またはメンテナンス・ホールのような開閉可能な構造を有していてもよい。
【0033】
撹拌槽110の内部には、貯留部117に収容された原料液を撹拌槽110の内壁111に散布するための散液部120が設けられている。散液部120は、回転軸121と、当該回転軸121に装着されたチャネル部材123とから構成されている。散液部120は、回転軸121の回転により、貯留部117に収容された原料液を、チャネル部材123の長さ方向に沿って設けられた流路126を通じて撹拌槽110の下方から上方に向かって流動させ、このようにして貯留部117から汲み上げられた原料液を、撹拌槽110の内壁111に向かって散布することができる。その結果、散布された原料液が加熱された内壁110を再び流下して、内壁110上に濡れ面を形成し、その際に揮発成分の蒸発を促すことができる。
【0034】
回転軸121は、鉄、ステンレススチール、ハステロイ、チタンなどの剛性を有する金属で構成されたシャフトであり、例えば、円筒状または円柱状の形状を有する。回転軸121は、撹拌槽110内で、通常、鉛直方向に配置されている。回転軸121の太さは、必ずしも限定されないが、例えば、8mm~200mmである。回転軸121の長さは、使用する撹拌槽110の大きさ等によって変動し、当業者によって適切な長さが選択され得る。
【0035】
回転軸121の一端は、撹拌槽110の上部でモーター140などの回転手段に接続されている。図1において、回転軸121の他端は、撹拌槽110の底部に接続されておらず、撹拌槽110の底部から一定の間隔を開けた位置に配置されている。
【0036】
図1に示す蒸発装置100Aでは、散液部120を構成する回転軸121の軸周りには、2つのチャネル部材123が回転軸121を介して対称的に配置されている。2つのチャネル部材123は、回転軸121に対して垂直な方向に指向した取付具122によって、回転軸121と固定されている。また、図1において、取付具122には、回転軸121を中心にして2つのチャネル部材123が所定の角度(取付傾斜角ともいう)θで傾斜するように取付けられている。ここで、本明細書における「取付傾斜角θ」とは、回転軸121の軸方向に平行な直線とチャネル部材123の軸方向に平行な直線とが交差して形成される角度のうち、鋭角なものを言う。本発明においては、チャネル部材123は、取付具122に対し、チャネル部材123の両方の端部のうち、上方の端部が下方の端部よりも内壁111に近くなる方向に傾斜して取り付けられる。取付傾斜角θは、例えば、1.5°~60°である。さらに、チャネル部材123は、撹拌槽110内において、その一方の端部(すなわち、下方の端部)が該貯留部117内に挿入された位置に配置されている。
【0037】
図1において、2つのチャネル部材123は、その下端から上端にかけて略直線状に延びる形状(V文状)に記載されているが、本発明はこのような形状のみに限定されない。例えば、2つのチャネル部材は、それぞれ下端から上端にかけて緩やかな曲線を描くような撓んだ形状(例えば、対向する2つのチャネル部材が一緒になって逆放物線の一部を構成するような形状)を有していてもよい。
【0038】
本発明の蒸発装置において、回転軸には例えば、複数の(すなわち、1つまたはそれ以上)、好ましくは2つ~8つ、より好ましくは2つ~6つのチャネル部材が装着されて得る。本発明において、これらのチャネル部材は、それぞれ回転軸の周りに略均等な角度で装着されていることが好ましい。
【0039】
図2は、本発明の蒸発装置を構成する散液部に使用され得るチャネル部材の一例を模式的に表す図である。
【0040】
図2に示すように、チャネル部材123では、上方部分が、例えば、半円筒状、半角筒状、V字状などの、いわゆるハーフパイプの形態を有し、かつ下方部分が当該ハーフパイプの一部を押し広げた形態を有するように構成されている。そして、当該上方部分と下方部分との間の中央部分は、下方部分においてハーフパイプの一部が押し広げられた側のハープパイプを構成する壁面の一部が拡張するように構成されている。より具体的には、チャネル部材123は、回転により貯留部内の原料液を汲み上げて流路126に導入する原料液導入部分124a、および原料液導入部分124aから導入された原料液を、流路126を通じて上方に流動する流路形成部分124bから構成されている。また、図2に示す実施形態では、チャネル部材123の中央部分において、原料液導入部分124aが設けられた側の流路の縁を構成する領域の一部が広げられた流路拡張部127が設けされている。
【0041】
図3は、図2に示す取付具に取り付けられた当該チャネル部材の底面図である。
【0042】
本発明の蒸発装置では、矢印で示した方向に回転軸が回転することによって、チャネル部材123の底部(すなわち、底面側の端部)が回転軌跡を形成する。ここで、回転軸の軸心Oから最も離れたチャネル123の底部上の点(以下、基点Kという)は、図3の参照番号Cに示すようなチャネル部材123の回転軌跡の最外周を描く。したがって、基点Kは、チャネル部材123の回転軌跡の最外周C上に配置される。図3において、チャネル部材123を構成する原料液導入部分124aおよび流路形成部分124bは、当該基点Kを介して区分される。
【0043】
本発明において、原料液導入部分124aは、基点Kから回転軸の回転による進行方向側の先端に位置する原料液導入縁部Hまで延びるように設計されている。さらに、原料液導入部分124aの押し広げられた形状は、原料液導入縁部Hおよび基点Kを含む仮想直線Lが基点Kにおけるチャネル部材123の回転軌跡の最外周Cの接線Lに対して所定範囲内の交差角θで交差するように設計されている。なお、本明細書において、「仮想直線Lと接線Lとの交差」には、交差角θが0°の場合、すなわち仮想直線Lと接線Lとが重なる場合も包含される。
【0044】
本発明において、このような交差角θは鋭角であり、交差角θの絶対値は最外周の接線Lを基準として0°~10°、好ましくは0°~8°、より好ましくは0°~5°の範囲内である。さらに、本発明においては、チャネル部材123の進行方向に対し、原料液導入縁部Hは、接線Lよりも内側(軸心Oに近づく方向)または接線Lよりも外側(軸心Oから遠ざかる方向)のいずれの方向を指向するように傾斜していてもよい。しかし、チャネル部材123の回転を通じて原料液導入部分124aが過剰の原料液と接触し、これが抵抗となってチャネル部材123の回転自体の妨げとなることを回避するためには、チャネル部材123の進行方向に対し、原料液導入縁部Hは、接線Lよりも内側(軸心Oに近づく方向)に指向するように設計されていることが好ましい。
【0045】
さらに、本発明の蒸発装置では、上記に加えて、チャネル部材123の原料導入部分124aは、チャネル部材123の底部(底面側の端部)の水平方向において、撹拌槽110の内壁111と略平行となるように(例えば、内壁111の形状に合わせて湾曲して)設計されていることが好ましい。
【0046】
チャネル部材123の大きさは、特に限定されず、撹拌槽110の内壁111の大きさに応じて当業者によって適宜選択され得る。チャネル部材123は、例えば、鉄、ステンレススチール、ハステロイ、チタンなどの金属およびこれらの組合せでなる材料から構成されている。このようなチャネル部材123について、耐薬品性を高めるために、テフロン(登録商標)やグラスライニング、ゴムライニングのような当該分野において公知のコーティングが付与されていてもよい。
【0047】
このように、本発明においては、撹拌槽の貯留部に挿入されるチャネル部材の底部(底面側の端部)が水平方向において上記のような関係を有していることにより、散液部は、より少ないトルクで、貯留部に一時的に貯留された原料液をチャンバ部材の下方から上方への移動を通じて、撹拌槽の下方から上方に向かって流動させることができる。
【0048】
より具体的に説明すると、仮に上記交差角θの範囲を超えかつ当該交差角θ自体が負の角度となるように原料液導入部分が湾曲している場合(例えば、原料液導入部分および流路形成部分が水平方向において半円の形状を構成しているような場合)は、原料液導入部分が原料液に接触し易くなるため、チャネル部材の回転により、原料液導入部分が原料液による抵抗をより多く受けることになる。このため、所定の回転数でチャネル部材を回転した場合は、流路形成部分に導入される原料液の体積は必ずしも充分とはいえず、チャネル部材123の流路に沿って上方に向かって移動する原料液の体積も充分とは言い難い。その結果、一定量の原料液を貯留部から掬い上げるためには、チャネル部材をより大きな回転数で回転させなければならないことがわかる。また、仮に上記交差角θの範囲を超えかつ当該交差角θ自体が正の角度となるように原料液導入部分が湾曲している場合、原料液導入部分においてより多くの原料液と接触するため、原料液の量が多すぎてチャネル部材の途中から原料液が溢れ出ることがある。
【0049】
これに対し、本発明の蒸発装置では、図3に記載のように、原料液導入部分124aが、チャネル部材123の回転による進行方向(接線L)に対して、上記交差角θの範囲内で同一または僅かに傾斜した角度に指向している。このような交差角θによって、チャネル部材123が回転しても、原料液導入部分124a自体が原料液による抵抗をほとんど受けないまま、チャネル部材123の回転により、原料液は流路形成部分124bに導入され、効率良く掬い上げられる。さらに、掬い上げられた原料液は、当該回転によって遠心力がかかり、チャネル部材123の流路に沿って上方に向かって移動することになる。その結果、チャネル部材123を少ない回転数で回転させたとしても、原料液を効率良く貯留部から掬い上げ、撹拌槽の下方から上方に向かって流動させることが可能となる。なお、このようにチャネル部材123の回転に伴って原料液が撹拌槽の下方から上方に向かって流動する際、原料液が当該回転の影響により流路126内で広がることがある。このため、流路拡張部127は、原料液の一部が流路126の回転方向に沿って流路126からこぼれ出ることを防止するように、流路126内で広がった原料液を堰き止めで下方から上方への流動を促す役割を果たす。
【0050】
このように、本発明の蒸発装置は、チャネル部材123のより少ない回転に伴って運転コストを低下させることが可能となるだけでなく、従来と比較してより短時間での蒸発操作をも可能にする。
【0051】
図4は、図2に示す取付具に取り付けられたチャネル部材の中間部の構造を説明するための図である。
【0052】
本発明の蒸発装置では、矢印で示した方向に回転軸が回転することによって、チャネル部材の中間部が図4の(a)に示すような回転軌跡を形成する。ここで、図4の(a)における回転軸の軸心Oから最も離れたチャネル部材123の流路127外側上の点(以下、基点Kという)は、参照番号Cに示すようなチャネル部材123の回転軌跡の最外周を描く。したがって、基点Kは、チャネル部材123の回転軌跡の最外周C上に配置される。また、図4の(a)において、流路拡張部127の縁部Hは、回転軌跡の最外周Cの内側に位置するように設けられている。
【0053】
次に、図4の(b)を参照すると、流路拡張部127は、流路拡張部127の縁部Hおよび基点Kを含む仮想直線LH2が基点Kにおけるチャネル部材の回転軌跡の最外周Cの接線LK2に対して所定範囲内の交差角θK2で交差するように設計されている。
【0054】
本発明において、このような交差角θK2は鋭角であり、交差角θK2は最外周の接線LK2を基準として0°~30°、好ましくは1°~20°、より好ましくは2°~15°の範囲内である。交差角θK2がこのような範囲内に設定されることにより、チャネル部材123の回転を通じて原料液導入部分から汲み上げられた原料液が、流路126内を通る際、チャネル部材123の中間部にて流路拡張部127からオーバーフローすることをさらに低減可能である。
【0055】
本発明において、このような交差角θK2を満たす流路拡張部127が設けられるチャネル部材123上の位置は、必ずしも限定されないが、例えば、チャネル部材123の鉛直方向における取付具122と略同じ高さとなるような位置が選択され得る。
【0056】
上記のような構造を有するチャネル部材123を備える散液部120は、例えば図1に示すような蒸発装置100だけでなく、様々なタイプの蒸発装置に取り付けて使用することができる。すなわち、当該蒸発装置は、撹拌槽内の貯留部に一時的に貯留された原料液を、回転により撹拌槽の下方から上方に向かって流動させ、かつ該上方から散液することにより、該原料液を該撹拌槽内の発熱部分に流下して蒸発させることができる装置であればいずれのものをも包含する。ここで、本明細書中に用いられる用語「発熱部分」には、例えば、図1のジャケット112によって加熱される撹拌槽110の内壁111;ならびに国際公開公報第2017/043368号公報に記載されるような、撹拌槽の内部にて撹拌槽の上方から散液された原料液が直接接触するように設けられた熱源およびコイルヒーター;が包含される。
【0057】
再び図1を参照すると、本発明の蒸発装置100Aにおいては、貯留部117を構成する底部および/または内壁111の一部に、バッフル板、短軸のピンなどのバリア部材(図示せず)が設けられていてもよい。貯留部117に一時的に貯留された原料液は、回転軸121の回転を通じたチャネル部材123による汲み上げの際に、当該回転軸121の回転方向と順方向に貯留部117内で渦流を生じることがある。原料液の渦流は、チャネル部材123による原料液の汲み上げの効率を低下させることが懸念され得る。バリア部材は、貯留部117内の原料液と接触し、このような渦流の発生を抑制または防止する役割を果たす。バリア部材の形状および材質は当業者によって任意に選択され、そしてバリア部材は、貯留部117を構成する内壁111の一部および/または貯留部117の内側底面のうち、チャネル部材123の移動を妨げない位置に取り付けられ得る。
【0058】
さらに、図1に示す撹拌槽110内の上方において、回転軸121の周囲には第2回転軸121’が設けられている。さらに当該第2回転軸121’には、原料液供給口131を備えた供給パイプ130が取り付けられており、撹拌槽110の外部に取り付けられた原料タンク(図示せず)から供給された原料液を、第2回転軸121’の回転を通じて、撹拌槽110の内壁111に供給し、原料液を内壁111に沿って流下させて濡れ面を形成することができる。なお、図1に示す蒸発装置100Aにおいて、回転軸121と第2回転軸121’は例えば、互いに独立しており、回転軸121および第2回転軸121’がそれぞれ異なる回転速度で撹拌槽110内を回転していてもよく、あるいは回転軸121と第2回転軸121’とは連結されており、同様の回転速度で回転するものであってもよい。
【0059】
本発明の蒸発装置100Aにおいて、撹拌槽110内の液体を汲み上げるために好適な回転軸121の回転数(すなわち、散液部120の回転数)は、液体の粘性、撹拌槽110の大きさ、撹拌槽110内の液体の残量などによって異なるため、必ずしも限定されないが、例えば、30rpm~500rpmmである。
【0060】
図1に示す蒸発装置100Aにおいて、原料液供給口131から供給された原料液は、撹拌槽110の内壁111を流下し、その際に、ジャケット112によって内壁111に加えられた熱によって揮発成分が蒸発し、揮発成分出口113から排出される。一方、原料液のうち揮発しなかった成分はそのまま内壁111を流下し、貯留部117内に収容される。
【0061】
さらに、本発明においては、散液部120がモーター140などの回転手段によって回転し、回転による遠心力を利用して撹拌槽110の貯留部117内に収容された原料液をチャネル部材123の下端から汲み上げ、当該チャネル部材123の流路126を介して、当該チャネル部材123の上端側から撹拌槽110の内壁111に向かって原料液が散布される。散布された原料液は、撹拌槽110の内壁111に衝突し、内壁111を再び流下する。その際、ジャケット112によって内壁111に加えられた熱によって、散布された原料液の揮発成分は蒸発し、上記揮発成分出口113に移動する。一方、内壁111を流下する多くの原料液は再び貯留部117内に収容される。
【0062】
このように、本発明においては、内壁111を流下する際の揮発成分の蒸発と、残りの成分の貯留部117への収容、散液部120による貯留部117から内壁111への原料液の移動、および散液部120から内壁111への原料液の流下を順次行うことにより、これらの部材の間で原料液が循環し、循環中の揮発成分の蒸発によって原料液が徐々に濃縮される。一方、原料供給口131から流下する新たな原料液も加わって貯留部117の液面が徐々に上昇する。その後、貯留部117に貯留した原料液の液面が隔壁部118を超えると、貯留部117内に収容された原料液はオーバーフローし、濃縮液として濃縮液出口115から外部に排出される。
【0063】
本発明の蒸発装置によれば、運転を停止する場合、撹拌槽内に原料液が収容されている限り、原料液の循環を行うことができ、内壁の温度がある程度低下するまで当該循環を行うことにより、撹拌槽の内壁における焼き付きを回避することができる。この点で、撹拌槽内の内壁を「ワンパス」による1回の流下で通過させる従来の蒸発装置と比較して、撹拌槽の冷却の際の所望でない原料液の使用量を低減することができる。
【0064】
本発明では、チャネル部材の液体流動方向の上方端部において、原料液が内壁と衝突して生じる飛沫の量を撹拌槽内で低減することができる。ここで、本明細書中において「原料液が内壁と衝突して生じる飛沫の量を撹拌槽内で低減する」とは、チャネル部材から汲み上げられた原料液が、撹拌槽の内壁に散布する際に原料液が内壁に衝突して飛沫を生じること自体を抑制し、撹拌槽内に拡散する実質的な飛沫の量を低減すること、および撹拌槽の内壁に散布する際に原料液が内壁に衝突して発生した飛沫を撹拌槽内に拡散する前に回収して、撹拌槽内に拡散する実質的な飛沫の量を低減することの両方を包含して言う。本発明において、これは、チャネル部材の原料液の流動方向の上方端部に、飛沫防止具を設けることによって達成され得る。
【0065】
図5は、本発明の蒸発装置の別の例を示す概略端面図である。
【0066】
図5に示す蒸発装置100Bにおいて、前述の図面と同様の参照番号を付した構成は、当該図面に示したものと同様である。
【0067】
図5に示す本発明の蒸発装置100Bでは、チャネル部材123の液体流動方向の先端部から延設された飛沫防止具としてのミストセパレータ142を備える。ミストセパレータ142は、チャネル部材123の流路126を介してチャネル部材123の下端から上端にまで汲み上げられた原料液を、先端部を通じて撹拌槽110の内壁111に向かって散布することができる。ここで、図5に示す実施形態では、ミストセパレータ142は、接合部分125においてチャネル部材123の軸方向から(例えば、内壁111に対して略平行な方向に)屈曲していることにより、原料液はミストセパレータ142の先端部から内壁111に対して略平行な方向(すなわち、撹拌槽110の上方)に向かって吐出される。この吐出は、チャネル部材123から汲み上げられた液体の勢いを接合部分125の通過後に弱めたことにより行われる。その結果、吐出された原料液は、撹拌槽110の上方に向かって飛び出すことなく、原料液はミストセパレータ142の先端部から内壁111側に向かって穏やかに供給され得る。これにより、内壁111に衝突する原料液の激しい衝突は抑制され、内壁111を跳ね返って発生する飛沫の量を低減することができる。
【0068】
なお、本実施形態において「内壁111に対して略平行な方向」とは、流路126を構成する軸が、内壁111を構成する平面に対して平行となる方向だけでなく、当該内壁111を構成する平面に対して、例えば、-5°~+5°の範囲内、好ましくは-3°~+3°の範囲内で傾斜している場合も包含して言う。
【0069】
さらに、ミストセパレータ142と内壁111とは、互いに接触しない程度に適度な間隔を有していることが好ましい。ミストセパレータ142と内壁111との間の最も近接する部分の距離は、例えば5mm~200mmである。この近接する部分の距離が5mmを下回ると、回転の際、回転軸に僅かな歪みが生じると、ミストセパレータ142の先端部が内壁111と接触して、内壁111やミストセパレータ142を破損するおそれがある。
【0070】
なお、図5では、ミストセパレータ142は接合部分125においてチャネル部材123に対して屈曲した例を説明したが、本発明はこのような形態にのみ限定されない。当該屈曲に代えて、接合部分の周辺において任意の曲率で湾曲したものであってもよい。
【0071】
本発明において、ミストセパレータ142の長さ(接合部分125から先端部までの長さ)は、回転軸121の回転速度;チャネル部材123の取付傾斜角θ、長さおよび幅;液体の種類および粘度;等の種々の条件によって変動するため必ずしも限定されないが、例えば、10mm~200mm、である。ミストセパレータ142は当該分野において周知のものが使用され得る。
【0072】
図6は、本発明の蒸発装置のさらに別の例を示す概略端面図である。
【0073】
図6に示す蒸発装置100Cにおいて、前述の図面と同様の参照番号を付した構成は、当該図面に示したものと同様である。
【0074】
図6に示す本発明の蒸発装置100Cでは、飛沫防止具が、内壁と衝突して生じる飛沫を回収する部材を備え、具体的には以下の板状部材146を備える。
【0075】
図6では、チャネル部材123における流路126の上方端部の近傍において、チャネル部材123に沿ってチャネル部材123の回転方向に対してチャネル部材123の背後側に板状部材146が設けられている。図6に示す板状部材146は、長方形の1つの頂点部分を切り欠いた五角形の形状を有し、回転軸121の半径方向において、チャネル部材123の上方端部の背後から回転軸121の近傍にまで延びている。
【0076】
本発明において、板状部材146の大きさおよび厚みは特に限定されず、回転軸121の回転に耐え得る剛性を有する材料から構成されていることが好ましい。板状部材146を構成する材料の例としては、鉄、ステンレススチール、ハステロイ、チタンなどの金属およびこれらの組合せが挙げられる。
【0077】
図7は、本発明の蒸発装置のさらに別の例を示す概略端面図である。
【0078】
図7に示す蒸発装置100Dにおいて、前述の図面と同様の参照番号を付した構成は、当該図面に示したものと同様である。
【0079】
図7に示す蒸発装置100Dは、撹拌槽110内に、上下方向に3層の散液部120c,120d,120eを備える。さらに、蒸発装置100Dでは、撹拌槽110の底部に設けられた貯留部117以外に、内壁111の途中から延びる第2貯留部117dおよび第3貯留部117eがそれぞれ、貯留部117と同様にドーナツ状の領域を構成するように設けられている。第2貯留部117dおよび第3貯留部117eもまた、撹拌槽110の内壁111から流下した原料液を収容可能であり、いずれも上方が開放されているため、収容される原料液の液面が上昇し、隔壁部118d,118eを超えると、原料液はオーバーフローしてその下段に位置する他の貯留部(貯留部117または第2貯留部117d)に収容される。隔壁部118、第2隔壁部118dおよび第3隔壁部118eは、撹拌槽110の上方から下方に向かって(すなわち、図7においては第3隔壁部118e、第2隔壁部118dおよび隔壁部118の順に)徐々に撹拌槽110の略中央に設けられた濃縮液出口115に近づくような位置に設けられている。
【0080】
ここで、回転軸121の最下部に設けられた取付具122cには、一対の第1チャネル部材123cが回転軸121を中心として軸対象となるように設けられている。また、第1チャネル部材123cの下端は、貯留部117内に収容された原料液内に挿入可能な位置まで延びている。回転軸121の中段に設けられた取付具122dには、一対の第2チャネル部材123dが回転軸121を中心として軸対象となるように設けられている。また、第2チャネル部材123dの下端は、第2貯留部117d内に収容された原料液内に挿入可能な位置まで延びている。回転軸121の最上部に設けられた取付具122eには、一対の第3チャネル部材123eが回転軸121を中心として軸対象となるように設けられている。また、第3チャネル部材123eの下端は、第3貯留部117e内に収容された原料液内に挿入可能な位置まで延びている。なお、これらの第1チャネル部材123c、第2チャネル部材123d、および第3チャネル部材123eは、図1に示すチャネル部材123と同様に構成されている。
【0081】
図7に示す蒸発装置100Dでは、供給パイプ130の原料液供給口131から排出された原料液は、まず撹拌槽110の内壁111を、濡れ面を形成しながら流下し、第3貯留部117eに収容される。この流下にあたり原料液に含まれる一部の揮発成分は蒸発し、揮発成分出口113より外部に排出される。
【0082】
さらに、回転軸121の回転により、第3貯留部117eに収容された原料液は、第3チャネル部材123eの流路126eを介して第3チャネル部材123eの下端から上端にまで汲み上げられ、第3チャネル部材123eの上方端部から内壁111に散布され流下される。この流下にあたり原料液に含まれる揮発成分は蒸発し、揮発成分出口113より外部に排出される。残った他の成分を含む原料液は、再び第3貯留部117eに収容され、第3チャネル部材123eによる汲み上げが繰り返される。
【0083】
その後、第3貯留部117eの液面が上昇して第3隔壁部118eを超えると、原料液はオーバーフローし、下段に位置する第2貯留部117dに収容される。
【0084】
第2貯留部117dに収容された原料液は、回転軸121の回転により、第2チャネル部材123dの流路126dを介してチャネル部材123dの下端から上端にまで汲み上げられ、第2チャネル部材123dの上方端部から内壁111に散布され流下される。この流下にあたり原料液に含まれる揮発成分は蒸発し、揮発成分出口113より外部に排出される。残った他の成分を含む原料液は、再び第2貯留部117dに収容され、第2チャネル部材123dによる汲み上げが繰り返される。
【0085】
その後、第2貯留部117dの液面が上昇して第2隔壁部118dを超えると、原料液はオーバーフローし、最下段に位置する貯留部117に収容される。
【0086】
貯留部117に収容された原料液は、回転軸121の回転により、第1チャネル部材123cの流路126cを介して第1チャネル部材123cの下端から上端にまで汲み上げられ、第1チャネル部材123cの上方端部から内壁111に散布され流下される。この流下にあたり原料液に含まれる揮発成分は蒸発し、揮発成分出口113より外部に排出される。残った他の成分を含む原料液は、再び貯留部117に収容され、第1チャネル部材123cによる汲み上げが繰り返される。
【0087】
その後、貯留部117の液面が上昇して隔壁部118を超えると、原料液はオーバーフローし、濃縮液として濃縮液出口115を通じて外部に排出される。
【0088】
図7に示す実施形態では、3層のチャネル部材を備える蒸発装置100Dについて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、2層のチャネル部材で構成されるもの(例えば、図7に示す蒸発装置から取付具122e、第3チャネル部材120e、第3貯留部117e、および第3隔壁部118eを取り除いたもの)、あるいは4層以上のチャネル部材が設けられていてもよい。さらに、図7に示す蒸発装置では、上記第2チャネル部材および第3チャネル部材が、それぞれ独立して回転軸に対し、例えば複数の(すなわち、1つまたはそれ以上)、好ましくは2つ~8つ、より好ましくは2つ~6つ装着されていてもよい。本発明において、第2チャネル部材および第3チャネル部材は、それぞれ独立して回転軸の周りに略均等な角度で装着されていることが好ましい。
【0089】
図7に示す蒸発装置100Dは、貯留部117、第2貯留部117dおよび第3貯留部117eがそれぞれ揮発成分の濃度が異なる原料液を収容するため、1つの貯留部を用いて濃縮するよりも蒸発効率を向上させることができる。
【0090】
図8は、本発明の蒸発装置のさらに別の例を示す概略端面図である。
【0091】
図8に示す蒸発装置200Aにおいて、前述の図面と同様の参照番号を付した構成は、当該図面に示したものと同様である。
【0092】
図8に示す蒸発装置200Aは、撹拌槽210の上方に原料液供給口148が外部に設けられた原料タンク(図示せず)と連通して設けられている。さらに蒸発装置200Aでは、上方から下方に向かって縮径する撹拌槽210を備える。さらにこのような縮径した形態に沿って撹拌槽210の側面部にはジャケット212が設けられている。
【0093】
原料液供給口148から供給された原料液は、撹拌槽210の内壁211に沿って下方の貯留部117まで流下し、その間にジャケット212からの加熱によって揮発成分が蒸発し、揮発成分出口113を介して外部に排出される。一方、その他の成分を含む原料液は、貯留部117に収容され、回転軸121の回転によりチャネル部材123の流路126を通じて再びチャネル部材123の下方から上方に移動し、内壁211に散布される。これにより原料液に含まれる揮発成分の蒸発が繰り返し行われる。
【0094】
一方、貯留部117の液面が上昇して隔壁部118を超えると、原料液はオーバーフローして、濃縮液として濃縮液出口115から外部に排出される。
【0095】
ここで、図8に示す蒸発装置200Aは、例えば図1に示すような蒸発装置と比較して、撹拌槽210の側面部がより緩やかに傾斜する。このような傾斜は、内壁211を流下する原料液の通過距離を増やすため、揮発成分の蒸発をより効果的に行うことができる。特に、図8に示す蒸発装置200Aは、例えば、比較的粘性の低い原料液を用いる場合であっても、有効に使用することができる。
【0096】
上記図1および図5図8に示したような蒸発装置は薄膜蒸発装置とも呼ばれ、従来の蒸発システムにおける蒸発装置の代わりに組み入れて使用することができる。
【0097】
図9は、上記本発明の蒸発装置を備える蒸発システムを模式的に表す図である。
【0098】
本発明の蒸発システム300は、原料となる原料液を含む原料タンク910と、本発明の蒸発装置100(例えば、図1または図5図8に示すような蒸発装置)と真空ポンプ920とコンデンサー930とを備える。
【0099】
原料液は、ポンプ920の駆動により、原料タンク910から管904を通って予熱器906で一旦予熱され、蒸発装置100に送給される。蒸留装置100は、管905に別途スチーム(STM)を通過させたジャケットにより加熱される。蒸発装置100にて蒸発した揮発成分は、蒸発装置100の揮発成分出口から管907を通ってコンデンサー930に供給される。次いで、揮発成分はコンデンサー930にて冷却後、液化される。一方、蒸発装置100の濃縮液出口から排出された濃縮液は、管908を通じて外部に排出される。
【0100】
図10は、本発明の蒸発装置のさらに別の例を示す概略端面図であって、撹拌槽内にコンデンサーを備える蒸発装置の概略端面図である。
【0101】
図10に示す蒸発装置400Aにおいて、前述の図面と同様の参照番号を付した構成は、当該図面に示したものと同様である。
【0102】
図10に示す蒸発装置400Aは、上方から下方に向かって縮径する(例えば、逆円錐型の)撹拌槽210内に、モーター140と連結する回転軸121に設けられた取付具122cがチャネル部材123を上方から吊り下げるようにして構成されている。チャネル部材123は、撹拌槽210の内壁211の斜面に略平行となるように傾けて配置されており、下端は原料液を収容する貯留部117から原料液を汲み上げ可能な位置まで延びている。また、図10の蒸発装置400Aにおいては、撹拌槽210の略中央にコンデンサー150が配置されている。コンデンサー150は、冷却水などの冷却媒体が撹拌槽210の外部から内部に向かって流動する冷却主管150aと、冷却主管150aから分岐して当該冷却媒体を撹拌槽210の内部から外部に向かって流動する冷却分岐管150b,150cとを備える。コンデンサー150は、例えば、撹拌槽の下部から挿入可能なサイズを有するか、あるいは撹拌槽の上蓋(図示せず)を通じて、例えば、チャネル部材123および取付具122cを備え付ける前に吊り下ろして配置することも可能である。コンデンサー150は、例えば、上方から下方にかけて縮径するような逆円錐型の外形を有し、例えば、冷却水が撹拌槽210の外部から当業者に周知の手法により供給される(図示せず)。撹拌槽210の内壁211を流下した原料液から蒸発した揮発成分は、コンデンサー150上で凝縮し、再び液化して撹拌槽210の底部中央に向かって液滴となって落下する。
【0103】
さらに蒸発装置400Aでは、撹拌槽210の底部の中央に、コンデンサー150から落下した液滴を外部に排出するための揮発成分出口113bが設けられている。揮発成分出口113bの一部には真空ポンプ(図示せず)に連結した枝管113aが設けられており、真空ポンプからの減圧によりコンデンサー150からの液滴が揮発成分出口113bから外部に排出される。
【0104】
またさらに、蒸発装置400Aでは、原料供給口148から供給された原料液が、撹拌槽210の内壁211を流下し、揮発成分が蒸発した後、残りの成分を含む原料液が貯留部117に収容される。次いで、貯留部117に収容された原料液が、回転軸121の回転によりチャネル部材123の流路126を通じて再びチャネル部材123の下方から上方に移動し、内壁211に散布される。これにより原料液に含まれる揮発成分の蒸発が繰り返し行われるとともに、原料液が徐々に濃縮され、貯留部117に収容される。
【0105】
図10に示す蒸発装置400Aでは、貯留部117の原料液は、隔壁部118を超える前に、貯留部117の底部に設けられた濃縮液出口115bを介して外部に排出することができる。濃縮液出口115bの外部には、図示しないバルブが設けられており、当該バルブの開閉により、貯留部117に収容された原料液を濃縮液として外部に排出することができる。
【0106】
上記図10に示したような蒸発装置は短工程蒸留装置とも呼ばれ、高真空下での原料液からの蒸発および凝縮を行うことが可能である。
【0107】
図11は、図10に示す本発明の蒸発装置を用いた蒸発システムの構成を模式的に表す図である。
【0108】
本発明の蒸発システム500は、原料となる原料液を含む原料タンク910と、本発明の蒸発装置400Aと真空ポンプ920とを備える。
【0109】
原料液は、ポンプ902の駆動により、原料タンク910から管904を通って予熱器906で一旦予熱され、蒸発装置400Aに送給される。蒸留装置400Aは、管905に別途スチーム(STM)を通過させたジャケットにより加熱される。蒸発装置400Aにて蒸発した揮発成分は、当該装置内のコンデンサーによって凝縮し、外部に設けられた真空ポンプ920により揮発成分出口を介して排出される。
【0110】
このように、図11に示す本発明の蒸発システム500は、システム中に別途コンデンサーを設ける必要がなく、より省スペースな構成とすることができる。
【0111】
図12は、本発明の蒸発装置のさらに別の例を示す概略端面図であって、撹拌槽内にコンデンサーを備える蒸発装置の概略端面図である。
【0112】
図12に示す蒸発装置400Bにおいて、前述の図面と同様の参照番号を付した構成は、当該図面に示したものと同様である。
【0113】
図12に示す蒸発装置400Bは、撹拌槽110内に、モーター140と連結する回転軸121に設けられた取付具122cがチャネル部材123を上方から吊り下げるようにして構成されている。チャネル部材123は、撹拌槽110の内壁111の斜面に略平行となるように傾けて配置されており、下端は原料液を収容する貯留部117から原料液を汲み上げ可能な位置まで延びている。さらに、チャネル部材123の上方端部には、ミストセパレータ142が設けられている。また、図12の蒸発装置400Bにおいては、撹拌槽110の略中央にコンデンサー150が配置されている。コンデンサー150は、冷却水などの冷却媒体が撹拌槽110の外部から内部に向かって流動する冷却主管150aと、冷却主管150aから分岐して当該冷却媒体を撹拌槽110の内部から外部に向かって流動する冷却分岐管150b,150cとを備える。コンデンサー150は、例えば、撹拌槽の下部から挿入可能なサイズを有するか、あるいは撹拌槽の上蓋(図示せず)を通じて、例えば、チャネル部材123および取付具122cを備え付ける前に吊り下ろして配置することも可能である。コンデンサー150は、例えば、上方から下方にかけて縮径するような逆円錐型の外形を有し、冷却水が撹拌槽110の外部から当業者に周知の手法により供給される。撹拌槽110の内壁111を流下した原料液から蒸発した揮発成分は、コンデンサー150上で凝縮し、再び液化して撹拌槽110の底部中央に向かって液滴となって落下する。
【0114】
さらに蒸発装置400Bでは、撹拌槽110の底部の中央に、コンデンサー150から落下した液滴を外部に排出するための揮発成分出口113bが設けられている。揮発成分出口113bの一部には真空ポンプ(図示せず)に連結した枝管113aが設けられており、コンデンサー150からの液滴が揮発成分出口113bから外部に排出される。
【0115】
またさらに、蒸発装置400Bでは、原料供給口148から供給された原料液が、撹拌槽110の内壁111を流下し、揮発成分が蒸発した後、残りの成分を含む原料液が貯留部117に収容される。貯留部117に収容された原料液は、回転軸121の回転によりチャネル部材123の流路126を通じて再びチャネル部材123の下方から上方に移動し、ミストセパレータ142を介して内壁111に散布される。これにより原料液に含まれる揮発成分の蒸発が繰り返し行われるとともに、原料液が徐々に濃縮され、貯留部117に収容される。
【0116】
図12に示す実施形態では、貯留部117に収容される原料液が徐々に増加し、液面が隔壁部118を超えると、当該原料液はオーバーフローし、濃縮液として濃縮液出口115cを介して外部に排出され得る。なお、本発明においては、撹拌部110の底部において、貯留部117を構成する隔壁部118のさらに内側(撹拌槽110のより中心側)に第2隔壁部119が設けられている。本発明においては、隔壁部118の上端が第2隔壁部119の上端よりも下方に位置するように配置されていることが好ましい。貯留部117から隔壁部118を超えてオーバーフローする原料液が、第2隔壁部119を超えて揮発成分出口113b内に入り、当該出口を通る揮発成分の液滴と混合することを回避するためである。
【0117】
本発明の蒸発装置は、例えば、不純物を含有する液体たとえばメチルエステル、乳酸、魚油、油脂、グリセリン、などの精製および濃縮;インク、塗料、化学品などの化学製品に含まれる水、エタノール、メチルエチルケトン(MEK)、N-メチルピロリドン(NMP)、ヘキサン、トルエン、アセトン、エチレングリコールなどの除去;塗料および樹脂製造分野に使用するモノマーおよびポリマーなどから揮発性の不純物の除去;において有用である。
【符号の説明】
【0118】
100A,100B,200A,400A 蒸発装置
110,210 撹拌槽
111,211 内壁
112,212 ジャケット
113,113b 揮発成分出口
115,115b,115c 濃縮液出口
117 貯留部
118 隔壁部
120 散液部
121 回転軸
122,122c,122d,122e 取付具
123,123c,123d,123e チャネル部材
124a 原料液導入部分
124b 流路形成部分
126 流路
127 流路拡張部
131,148 原料液供給口
140 モーター
142 ミストセパレータ
146 板状部材
150 コンデンサー
300,500 蒸発システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15