(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】葉茎菜類の下葉処理機
(51)【国際特許分類】
A23N 15/00 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
A23N15/00 Z
(21)【出願番号】P 2022041949
(22)【出願日】2022-03-16
【審査請求日】2022-07-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100166073
【氏名又は名称】松本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】薬師寺 輝敏
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-274914(JP,A)
【文献】登録実用新案第3198695(JP,U)
【文献】実開昭58-164494(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 1/00 - 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に離間した左右一対の回転基板の中心部を回転軸により連結した構造をそれぞれ有する上下一対の回転ローラと、
前記左右一対の回転基板の外周縁に、それぞれ周方向へ所定ピッチで平行に張架された線状弾性体からなる複数本の切断刃と、
前記上下一対の回転ローラを、互いに反対方向へ回転させる回転モータとを備えた葉茎菜類の下葉処理機において、
上下どちらか一方の回転ローラの軸線方向の長さを、他方の前記回転ローラの軸線方向の長さより短くするとともに、
該軸線方向から視て、これらの回転ローラの回転範囲を一部重複させたことを特徴とする、葉茎菜類の下葉処理機。
【請求項2】
前記上下どちらか一方の回転ローラの軸線方向の長さを、他方の回転ローラの軸線方向の長さより短くした回転ローラに配された前記各回転基板の外周縁のうち、各前記切断刃の配置部分には、これらの切断刃を、対応する回転基板の外周縁から、前記回転軸を中心とした放射方向へ離反させる複数のスペーサを配設したことを特徴とする、請求項1に記載の葉茎菜類の下葉処理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、三つ葉などの葉茎菜類の茎部分に付いた下葉や根を除去する葉茎菜類の下葉処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水耕栽培された三つ葉の下葉取りや根切りを行う下葉処理機(葉茎菜類の下葉処理機)として、例えば非特許文献1に記載された三つ葉下葉取機が知られている。
【0003】
図7および
図8に示すように、この従来処理機100は、平行に離間した左右一対の回転基板101の中心部を回転軸102により連結した構造を有する上下一対の回転ローラ103,104と、左右一対の回転基板101の外周縁に、それぞれ周方向へ所定ピッチで平行に張架された輪ゴムからなる複数本の切断刃105と、上下一対の回転ローラ103,104を、図示しない回転力伝達部を介して、互いに反対方向へ回転させる回転モータ106とを備えたものである。
【0004】
この従来処理機100の運転時には、回転モータ106により各々反対方向へ回転中の回転ローラ103,104間に、作業者が三つ葉の茎部分を挿入する。
【0005】
これにより、両回転ローラ103,104の輪ゴムからなる各切断刃105により、三つ葉の下葉や根が掻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】株式会社指浪製作所の三つ葉下葉取機(T-11N)、URL:http://sashinami.com/2016/04/03/%e4%b8%89%e3%81%a4%e8%91%89%e4%b8%8b%e8%91%89%e5%8f%96%e6%a9%9f-t-11m/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来処理機100にあっては、両回転ローラ103,104の軸線方向の長さが同一であった。
【0008】
すなわち、三つ葉の下葉処理時、上側の回転ローラ103の両回転基板101と、下側の回転ローラ104の両回転基板101とは、互いの外周縁を突き合わせた状態で、下葉の掻き取り作業を行っていた。
そのため、
図8に示すように、この軸線方向から視て、両回転ローラ103,104の切断刃105による下葉の掻き取り部分は点でしかなく、下葉や根の掻き取り作業に時間がかかり、その作業効率は十分とは言えなかった。
【0009】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、両回転ローラのどちらか一方の回転ローラの軸線方向の長さを、他方の回転ローラの軸線方向の長さより短くするとともに、その軸線方向から視て、両回転ローラ103,104の回転範囲が一部重複するように構成すれば、上述した問題は全て解消されることを知見し、この発明を完成させた。
【0010】
本発明は、葉茎菜類の下葉や根の掻き取り効率を高められる葉茎菜類の下葉処理機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1、
平行に離間した左右一対の回転基板の中心部を回転軸により連結した構造をそれぞれ有する上下一対の回転ローラと、前記左右一対の回転基板の外周縁に、それぞれ周方向へ所定ピッチで平行に張架された線状弾性体からなる複数本の切断刃と、前記上下一対の回転ローラを、互いに反対方向へ回転させる回転モータとを備えた葉茎菜類の下葉処理機において、
上下どちらか一方の回転ローラの軸線方向の長さを、他方の回転ローラの軸線方向の長さより短くするとともに、該軸線方向から視て、これらの回転ローラの回転範囲を一部重複させたことを特徴とする葉茎菜類の下葉処理機である。
【0012】
葉茎菜類の種類は、任意である。
例えば、三つ葉、セリ、イタリアンパセリ、水菜、パクチー、ディルなどを採用することができる。
【0013】
ここでいう“線状弾性体”とは、紐やテープを含む細長い線状の弾性体を意味する。
弾性体の種類は限定されない。
例えば、各種のゴム(輪ゴム、ゴム紐を含む)、各種の樹脂ばね、各種の金属ばねなどを採用することができる。
【0014】
各回転基板の直径は、任意であるが、同一直径である方が好ましい。
各回転基板の外周縁に、それぞれ周方向へ配される切断刃のピッチは、任意である。
例えば、10°ピッチ~180°ピッチなどでもよい。
切断刃の使用本数は、複数本であれば任意である。
回転モータの種類は、任意である。
例えば、電動モータ、エアモータ、水圧モータ、油圧モータなどを採用することができる。
【0015】
上下一対の回転ローラの軸線方向の長さは、一方の回転ローラの方が、他方の回転ローラより短ければ任意である。
例えば、下側の回転ローラのその長さは、上側の回転ローラの長さの20%~80%でもよい。
また、上側の回転ローラのその長さは、下側の回転ローラの長さの20%~80%でもよい。
【0016】
回転ローラの軸線方向から視て、上下一対の回転ローラの回転範囲を重複させる割合は、任意である。
例えば、その割合は、上側の回転ローラの半径の10%~50%でもよい。
【0017】
第2、
前記上下どちらか一方の回転ローラの軸線方向の長さを、他方の回転ローラの軸線方向の長さより短くした回転ローラに配された前記各回転基板の外周縁のうち、各前記切断刃の配置部分には、これらの切断刃を、対応する回転基板の外周縁から、前記回転軸を中心とした放射方向へ離反させる複数のスペーサを配設したことを特徴とする第1に記載の葉茎菜類の下葉処理機である。
【0018】
スペーサの素材は、限定されない。
例えば、各種の金属(鉄、ステンレス等)、各種のプラスチック(ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS樹脂、繊維強化プラスチック等)でもよい。
また、スペーサの形状も限定されない。
例えば、平板形状、L字形状、U字形状、コの字形状などでもよい。
さらに、スペーサのサイズも任意である。
【0019】
このスペーサにより、切断刃を回転基板の外周縁から、回転軸を中心とした放射方向へ離反させる長さ(幅)は任意である。
例えば、数mm~数cmでもよい。
スペーサは、対応する回転基板の外周縁に固定状態(一体形成)でも、着脱可能に取り付けてもよい。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、葉茎菜類(例えば三つ葉など)の下葉処時、回転モータにより回転中の回転ローラ間に、例えば、葉茎菜類の茎部分を挿入すれば、両回転ローラのそれぞれ左右一対の回転基板間に所定ピッチで張架された各切断刃(線状弾性体)により、その下葉や根が掻き取られる。
【0021】
このとき、この下葉処理機は、一方の回転ローラの軸線方向の長さの方が、他方の回転ローラの軸線方向の長さに比べて短く、かつその軸線方向から視て、両回転ローラの回転範囲が一部重複するように構成されている。
その結果、この軸線方向から視て、両回転ローラの切断刃による下葉の掻き取り部分が点から線となり、葉茎菜類の下葉や根の掻き取り効率を高めることができる。
【0022】
第2の発明によれば、他方の回転ローラの軸線方向の長さより短くした回転ローラに配された左右一対の回転基板の外周縁のうち、各切断刃が配置された部分には、各切断刃を、対応する回転基板の外周縁から、回転軸を中心とした放射方向へ離反させる複数のスペーサを配設している。
【0023】
これにより、スペーサが配設された回転ローラについては、各切断刃が配置された部分の回転半径が、通常の回転ローラの外周縁より大きくなる。
【0024】
その結果、回転ローラの軸線方向から視て、両回転ローラの各切断刃による葉茎菜類の下葉の掻き取り部分が点から波線となり、葉茎菜類の茎部分に対する各切断刃の摩擦力が増大し、葉茎菜類の下葉や根の掻き取り効率をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施例1に係る葉茎菜類の下葉処理機の使用状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る葉茎菜類の下葉処理機の一部を構成する一対の回転ローラの模式正面図である。
【
図3】
図2に示す一対の回転ローラをY2方向から見た模式側面図である。
【
図4】
図2に示す一対の回転ローラによる三つ葉の下葉処理作業中の要部拡大説明図である。
【
図5】本発明の実施例2に係る葉茎菜類の下葉処理機の要部拡大斜視図である。
【
図6】本発明の実施例2に係る葉茎菜類の下葉処理機による三つ葉の下葉処理作業中の要部拡大説明図である。
【
図7】従来技術に係る葉茎菜類の下葉処理機の一部を構成する一対の回転ローラの模式正面図である。
【
図8】従来技術に係る葉茎菜類の下葉処理機の一部を構成する一対の回転ローラの模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。
ここでは、葉茎菜類の一種である水耕栽培された三つ葉の下葉処理を行う葉茎菜類の下葉処理機を例とする。
【0027】
説明の都合上、X1方向を処理機の前方向、X2方向をその後方向、Y1方向をその左方向、Y2方向をその右方向、Z1方向を上方向、Z2方向を下方向とする。
【0028】
図1および
図2において、10はこの発明の実施例1に係る葉茎菜類の下葉処理機(以下、下葉処理機)である。
【0029】
下葉処理機10は、各々Y1-Y2方向へ平行に離間した左,右一対の上側回転基板11,下側回転基板12の各中心部同士を、対応するY1-Y2方向へ延びた長尺な上側回転軸13,下側回転軸14によりそれぞれ連結した上下一対の上側回転ローラ15,下側回転ローラ16と、対応する一対の上側回転基板11,一対の下側回転基板12の外周縁に、それぞれ周方向へ所定ピッチで平行に張架された輪ゴム(線状弾性体)からなる複数本の上側切断刃17,下側切断刃18と、上側回転ローラ15,下側回転ローラ16を、各々反対方向へ回転させる1台の電動モータ(回転モータ)Mを備えている。
【0030】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
図1に示すように、この下葉処理機10は、右枠板19a,左枠板19が幅広な矩形枠19の四隅に、4本(図示は2本)の支柱20が垂設された架台21を有している。
【0031】
矩形枠19上には、上下面がそれぞれ解放された角筒状の本体ケーシング22が連結(溶接)されている。
本体ケーシング22の下方には、三つ葉aの茎部分から掻き落とした下葉や根を回収するダストボックスBが、X1方向へ引き出し自在に配されている。
本体ケーシング22は、その左右一対の側板22aが五角形状をしている。
この五角形状は、X1(前)側の上傾斜部が短尺で勾配が大きく、X2(後)側の上傾斜部が長尺で勾配が小さくなっている。
【0032】
本体ケーシング22には、上側の開口のうち、五角形状の頂上部からX2側の上傾斜部までを覆った、側面視してX1-X2方向に長い略三角形の蓋体24を有している。
蓋体24の左右一対の側板24aのうち、そのX2側の端部間には、Y1-Y2方向に延びた長尺な蓋軸25が横架されている。
【0033】
本体ケーシング22の両側板22aのX2側の端部には、この蓋軸25の両端部を挿通する左右一対の蓋軸孔22bがそれぞれ形成されている。
また、蓋体24の両側板24aのX1側の端部には、Y1-Y2方向へ延びて、蓋体24の開閉時に使用される左右一対の短尺なハンドル棒26がそれぞれ突設されている。
【0034】
さらに、両側板22aの各頂上部のX2側の部分には、各上縁から円弧状に切り込んだ左右一対のハンドル用切欠溝27がそれぞれ形成されている。
蓋体24の閉蓋時、蓋軸25を中心にして蓋体24を下方回動して行くと、左右一対のハンドル棒26が対応するハンドル用切欠溝27に差し込まれて閉蓋される。
このとき、蓋体24は、上側回転ローラ15の上部のみを被う。
【0035】
また、両側板22aのうち、各ハンドル用切欠溝27の下方部分には、上側回転軸13の長さ方向の両端部を挿通する一対の第1軸孔22cがそれぞれ形成されている。
一方、両側板22aのうち、各X1側の下端部付近には、下側回転軸14の両端部を挿通する一対の第2軸孔22dがそれぞれ形成されている。
【0036】
さらにまた、本体ケーシング22のX1側の端部には、X1方向へ上傾斜した幅狭なガイド板28が横架されている。
このガイド板28の上辺付近には、左右一対の軸支ブラケット29を介して、Y1-Y2方向へ延びた細長いガイドローラ30が軸支されている。
【0037】
このガイドローラ30は、作業者が握った三つ葉aの茎部を、上側回転ローラ15,下側回転ローラ16間に差し込む際に利用される。
閉蓋時、これらの蓋体24とガイドローラ30との間には、三つ葉aの下葉処理を行うための大きな矩形状の作業窓bが現出する。
【0038】
また、架台21の矩形枠19の上方には、右枠板19a,左枠板19bのX2側の両端部に立設された左右一対の短尺な支脚板31を介して、平面視してコの字状を有するコの字支持枠34が片持ち支持されている。
コの字支持枠34は、X1-X2方向へ延びる左右一対の側枠部32と、両側枠部32の基端部同士を連結するY1-Y2方向へ延びた中間枠部33とからなる。
【0039】
両側枠部32は、矩形枠19の右枠板19a,左枠板19bと上下に平行状態で、かつ平面視して、両先端が本体ケーシング22の頂上部付近まで達する長さを有している。
【0040】
両側枠部32の各基部には、蓋軸25の外方へ突出した両端部を軸支する左右一対の蓋用軸受35が配設されている。
一方、両側枠部32の各先端部には、上側回転軸13の外方へ突出した長さ方向の両端部を軸支する、左右一対の第1軸受36が配設されている。
【0041】
この上側回転軸13のY2側の端部は、第1軸受36よりさらに外方へ突出しており、この突出部分に第1プーリ37が固着されている。
【0042】
また、左右一対の支脚板31には、Y1―Y2方向へ延びた左右一対の短尺なプーリ軸38が突設されている。
各プーリ軸38には、外側の第2プーリ39と、内側の第4プーリ40とがそれぞれ独立回転自在に軸支されている。
【0043】
一方、第3プーリ41は、下側回転軸14の長さ方向の両端部を軸支する左右一対の第2軸受42のうち、Y2側(右側)のものよりさらに外方へ突出した部分に固着されている。
これらの第2軸受42は、矩形枠19の右枠板19a,左枠板19bのX1側の端部に配設されている。
【0044】
これらの第1プーリ37,第2プーリ39,第3プーリ41,第4プーリ40には、
図1に示すように無端ベルト43が掛け渡されている。
すなわち、この無端ベルト43は、第1プーリ37、第2プーリ39、第3プーリ41、第4プーリ40を経て、第1プーリ37に戻るように配されている。
【0045】
なお、この無端ベルト43は、第1プーリ37,第2プーリ39間と、第3プーリ41,第4プーリ40間とにおいて、それぞれベルトの表裏面が反転するように捩じられている。
【0046】
また、電動モータMは、図示しないものの架台21の一部に固定されて、その出力軸には、駆動側スプロケットが固着されており、上側回転軸13のY1側の端部に固着された従動側スプロケットとの間に掛け渡された無端ベルトを介して、モータ回転力を上側回転軸13に伝達可能に構成されている。
【0047】
すなわち、電動モータMにより上側回転ローラ15の上側回転軸13を反時計回りに回転させると、その回転力が第1プーリ37、第2プーリ39、第3プーリ41、第4プーリ40を介して下側回転軸14に伝達され、この下側回転軸14を中心にして下側回転ローラ16が時計周りに回転する。
【0048】
次に、
図1~
図3を参照して、上側回転ローラ15,下側回転ローラ16を具体的に説明する。
まず、上側回転ローラ15について説明する。
該上側回転ローラ15は、上述したようにY1-Y2方向へ平行に離間した左右一対の上側回転基板11の中心部同士を、上側回転軸13により連結したものである。
【0049】
左右一対の回転基板11は、同一サイズの金属製の円板である。
上側回転ローラ15と上側回転軸13とは、互いのY1-Y2方向の中間位置を一致させて連結されている。
【0050】
上側回転ローラ15において、左右一対の回転基板11の外周縁には、それぞれ周方向へ22.5°ピッチで、Y1-Y2方向に延びた合計16本の輪ゴム製の切断刃17が、互いに平行状態で張架されている。
また、左右一対の回転基板11の外周部の外面には、周方向へ22.5°ピッチで各16本の掛止ピン44がそれぞれ突設されている(
図5も参照)。
【0051】
このとき、左右一対の回転基板11において、各対峙する掛止ピン44同士は、互いの軸線を一致させた状態で配されている。
これらの対峙する各掛止ピン44には、対応する切断刃17の両端部がそれぞれ引っ掛けられている。
【0052】
一方、下側回転ローラ16は、その左右一対の回転基板12の間隔(軸線方向の長さ)が、上側回転ローラ15の左右一対の回転基板11の間隔の約半分となっている。
また、下側回転ローラ16の左右一対の回転基板12の外周縁には、それぞれ周方向へ22.5°ピッチで、合計16本の輪ゴム製の切断刃18が、互いに平行に張架されている。
その他は、上側回転ローラ15と略同一構造であるため、説明を省略する。
【0053】
また、これらの上側回転ローラ15,下側回転ローラ16は、その軸線方向(Y1-Y2方向)から視て、上側回転ローラ15,下側回転ローラ16の回転範囲を一部重複するように配されている(
図3を参照)。
【0054】
これにより、
図2に示すように、回転中の下側回転ローラ16の左右一対の回転基板12の上部が、回転中の上側回転ローラ15のローラ下部に順次達した各切断刃17を、所定のテンションで上方へ押し上げている。
【0055】
このとき、押し上げられた上側回転ローラ15の各切断刃17のうち、それぞれの長さ方向の両端部を除く部分と、下側回転ローラ16の左右一対の回転基板12の上部に順次達した各切断刃18との間が、下葉処理機10における三つ葉aの差し込み口cとなる。
【0056】
次に、
図1~
図4を参照して、この発明の実施例1に係る下葉処理機10を用いて、水耕栽培された三つ葉aの下葉処理作業について説明する。
【0057】
図1に示すように、三つ葉aの下葉処時には、まず電動モータMにより上側回転軸13を反時計回りに回転させる。
これにより、上側回転軸13と連結された上側回転ローラ15および第1プーリ37がそれぞれ同一方向へ回転する。
【0058】
そして、上側回転ローラ15の左右一対の回転基板11が回転して、これらの外周縁間に所定ピッチで張られた16本の切断刃17が、互いに平行状態を維持しながら、上側回転軸13を中心にして反時計回りに周転する。
【0059】
一方、このように第1プーリ37が反時計回りに回転することで、無端ベルト43を介して、第2プーリ39,第3プーリ41が各時計回りに回転する一方、第4プーリ40が反時計回りに回転する。
そのため、第3プーリ41が固着された下側回転軸14と、この下側回転軸14に連結された下側回転ローラ16とが、それぞれ時計回りに回転する。
【0060】
これにより、下側回転ローラ16の左右一対の回転基板12が同期回転して、これらの外周縁間に所定ピッチで張られた16本の切断刃18が、互いの平行状態を維持しながら時計回りに回転する。
【0061】
このとき、
図2に示すように、回転中の下側回転ローラ16の左右一対の回転基板12の上部が、回転中の上側回転ローラ15のローラ下部に順次達した各切断刃17を、所定のテンションで各々上方へ押し上げる。
【0062】
その後、
図1に示すように、回転中の上側回転ローラ15,下側回転ローラ16間に現出した三つ葉aの差し込み口cに、下葉や根が付いた三つ葉aの茎部分を挿入する。
これにより、上側回転ローラ15の左右一対の回転基板11,下側回転ローラの左右一対の回転基板12間に、各々所定ピッチで張架された切断刃17,切断刃18により、その下葉や根が掻き取られる。
【0063】
このとき、下側回転ローラ16の軸線方向の長さの方が、上側回転ローラ15の軸線方向の長さに比べて短尺で、かつその軸線方向から視て、上側回転ローラ15,下側回転ローラ16の回転範囲が一部重複するように構成されている。
【0064】
その結果、
図4に示すように、軸線方向(Y1-Y2方向:
図1参照)から視て、上側回転ローラ15の切断刃17及び下側回転ローラ16の切断刃18による下葉の掻き取り部分が点から線となり、三つ葉aの下葉や根の掻き取り効率を高めることができる。
なお、
図4においては、説明の都合上、上側回転基板11に隠れる部分であっても、三つ葉aについては実線のままで示され、上側切断刃17及び下側切断刃18については他の部分と同様に示されている。
【0065】
次に、
図5および
図6を参照して、この発明の実施例2に係る葉茎菜類の下葉処理機を説明する。
【0066】
図5および
図6に示すように、実施例2の下葉処理機10Aの特徴は、下側回転ローラ16に配された左右一対の回転基板12の外周縁のうち、各切断刃18の配置部分に、これらの切断刃18を、対応する左右一対の回転基板12の外周縁から、下側回転軸14を中心とした放射方向へ5mm程度離反させる、各16個ずつのスペーサ50を配設した点である。
なお、実施例2の下葉処理機10Aのその他の構成は、実施例1の下葉処理機10と同様なので、説明は省略する。
【0067】
各スペーサ50は、略中央部に各ピン孔51aが穿設された長片板部51と、短片板部52とを有したL字状のステンレス部材である。
各短片板部52には、その幅方向の中間部に、輪ゴムの紐幅2本分の溝幅を有した、Y1-Y2方向へ延びる短尺なガイド溝53がそれぞれ形成されている。
【0068】
各スペーサ50の使用時には、各掛止ピン44に各ピン孔51aを挿入した状態で、各長片板部51を対応する左右一対の回転基板12の外周部の外面にそれぞれ当接した状態で、各短片板部52を対応する左右一対の回転基板12の外周縁に掛止する。
【0069】
この状態で、各対峙する掛止ピン44に、輪ゴムからなる各切断刃18の両端部をそれぞれ所定のテンションで引っ掛けてセットする。
【0070】
その後は、実施例1と同様の下葉処理の操作を行って、三つ葉aの茎部分に付いた下葉や根などを掻き落とす。
【0071】
このように、下側回転ローラ16に配された左右一対の回転基板12の外周縁のうち、各切断刃18が配置された部分に、それぞれ16個ずつスペーサ50を掛止したため、下側回転ローラ16のうち、各切断刃18が配置された部分の回転半径が、見かけ上、下側回転ローラ16の通常部分の外周縁より、5mm程度大きくなる。
【0072】
その結果、
図6に示すように、軸線方向(Y1-Y2方向:
図5参照)から視て、上側回転ローラ15の切断刃17及び下側回転ローラ16の切断刃18による三つ葉aの下葉の掻き取り部分が点から波線となり、三つ葉aの茎部分に対する各切断刃17,切断刃18の摩擦力が増大し、これらの下葉や根の掻き取り効率をさらに高めることができる。
なお、
図6においても、説明の都合上、上側回転基板11に隠れる部分であっても、三つ葉aについては実線のままで示され、上側切断刃17及び下側切断刃18については他の部分と同様に示されている。
【0073】
また、ここでは、各スペーサ50の短片板部52に、輪ゴムの紐幅2本分の溝幅を有したガイド溝53を配設している。
そのため、各切断刃18の両端部付近は、対応するガイド溝53にガイドされることで、それぞれ見かけ上、紐幅2本分のゴム紐を並列に束ねた太い紐となる。
【0074】
その結果、下側回転ローラ16の各切断刃18が強靭となって、下葉等の除去作業中に切断刃(輪ゴム)18が切れにくくなるとともに、三つ葉aの下葉や根の掻き取り効率をより以上に向上させることができる。
その他の作用および効果は、実施例1と略同じであるため、説明を省略する。
【符号の説明】
【0075】
10,10A 葉茎菜類の下葉処理機
11 上側回転基板
12 下側回転基板
13 上側回転軸
14 下側回転軸
15 上側回転ローラ
16 下側回転ローラ
17 上側切断刃
18 下側切断刃
19 矩形枠
19a 右枠板
19b 左枠板
20 支柱
21 架台
22 ケーシング
22a 側板
22b 蓋軸孔
22c 第1軸孔
22d 第2軸孔
24 蓋体
24a 側板
25 蓋軸
26 ハンドル棒
27 ハンドル用切欠溝
28 ガイド板
29 軸支ブラケット
30 ガイドローラ
31 支脚板
32 側枠部
33 中間枠部
34 コの字支持枠
35 蓋用軸受
36 第1軸受
37 第1プーリ
38 プーリ軸
39 第2プーリ
40 第4プーリ
41 第3プーリ
42 第2軸受
43 無端ベルト
44 掛止ピン
50 スペーサ
51 長片板部
51a ピン孔
52 短片板部
53 ガイド溝
B ダストボックス
M 回転モータ
a 三つ葉
b 作業窓
c 差し込み口
【要約】
【課題】葉茎菜類の下葉や根の掻き取り効率が高まる葉茎菜類の下葉処理機を提供する。
【解決手段】三つ葉aの下葉処時、電動モータMにより回転中の上側回転ローラ15,下側回転ローラ16間に、三つ葉aの茎部分を挿入すると、上側回転ローラ15の左右一対の回転基板11,下側回転ローラの左右一対の回転基板12間に、各々所定ピッチで張架された切断刃17,切断刃18により、下葉や根が掻き取られる。このとき、下側回転ローラ16の長さが上側回転ローラ15の長さより短く、軸線方向から視て、上側回転ローラ15,下側回転ローラ16の回転範囲が一部重複している。そのため、上側回転ローラ15の切断刃17及び下側回転ローラ16の切断刃18による下葉の掻き取り部分が点から線となり、下葉や根の掻き取り効率が高まる。
【選択図】
図1