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特許7143003芳香成分揮発装置、および芳香成分揮発装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】芳香成分揮発装置、および芳香成分揮発装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/00 20060101AFI20220920BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20220920BHJP
   A61L 9/03 20060101ALN20220920BHJP
   A61L 9/01 20060101ALN20220920BHJP
【FI】
B65D85/00 A
B65D83/00 F
A61L9/03
A61L9/01 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022533324
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2021020517
(87)【国際公開番号】W WO2022070506
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2020167646
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517153136
【氏名又は名称】株式会社ベルコード
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】230110397
【弁護士】
【氏名又は名称】田中 雅敏
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】大西 将也
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-145848(JP,A)
【文献】特開2003-220088(JP,A)
【文献】特開2019-24924(JP,A)
【文献】実開昭58-105337(JP,U)
【文献】実開平2-51534(JP,U)
【文献】登録実用新案第3125679(JP,U)
【文献】特開2016-78906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/00
B65D 83/00
A61L 9/03
A61L 9/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気に触れると発熱する発熱体が内包された袋体を備え、
該袋体の内層は熱伝導材料が基材に蒸着された熱伝導シートであり、前記袋体の外層は通気性のある保持シートである芳香成分揮発装置において、
前記熱伝導シートと前記保持シートとの間に空気の層が形成されるように所定の間隔で点在するスポット結合により内外層が連結された
芳香成分揮発装置。
【請求項2】
前記熱伝導シートは、シート状に形成された樹脂製の基材にアルミニウムが蒸着されている
請求項1に記載の芳香成分揮発装置。
【請求項3】
前記熱伝導シートは、該熱伝導シートが穿設されるにあたって融解した樹脂が当該保持シートに固着して結合されている
請求項1または請求項2に記載の芳香成分揮発装置。
【請求項4】
樹脂からなる基材に熱伝導材料が蒸着された熱伝導シートを、通気性のある保持シートの上層に積層する工程と、
前記基材を融解できる程度の温度に熱せられた穿設部材を用いて前記熱伝導シートから前記保持シートに向けて貫通孔を穿設する工程と、
前記貫通孔を穿設する工程により融解した前記基材の一部が固着したスポット結合により、前記熱伝導シートと前記保持シートとの間に空気の層が形成されるように、前記熱伝導シートと前記保持シートとを連結して積層シートを生成する工程と、
前記熱伝導シートが内側となるように、前記積層シートの略中心を折り線として折り畳む工程と、
折り畳んだ前記積層シートの周縁辺を結合する工程と、を備える
芳香成分揮発装置の製造方法。
【請求項5】
前記保持シートに芳香成分である精油を滴下する工程を有する
請求項4に記載の芳香成分揮発装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱により揮発性の芳香成分の揮発を促進する芳香成分揮発装置、および芳香成分揮発装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車内や室内等で利用されている芳香成分揮発装置は、化学反応による反応熱を発生可能な発熱体が袋体に内包されて構成されており、発熱体により袋体の近傍に配置された香水、精油等の芳香成分が加温され、その揮発が促進されることにより、芳香を漂わせることが可能となっている。このような芳香成分揮発装置において酸化反応を利用する発熱体が使用されているものは、電気、火、水等を必要としないため、取り扱いが簡便かつ使用可能な場所の選択肢が広いことから高い利便性を誇る。この種の芳香成分揮発装置として、例えば、特許文献1に示される芳香成分揮発装置がある。
【0003】
特許文献1に示される芳香成分揮発装置は、空気との接触による酸化反応で発熱する粉末状の発熱体が、シーラント材を含む単層または積層されたシートで形成された袋体の中に収容されており、袋体の一方の面には、芳香成分が付与された保持シートが被覆されている。これにより、発熱体が酸素と反応して発熱することで芳香成分が加温され、保持シートに含まれる芳香成分が揮発するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-22405号公報(第3,4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の芳香成分揮発装置は、袋体を介して発熱する発熱体により芳香成分が加温されて揮発成分を揮発させることができるものの、袋体内において発熱体が偏ると、その近傍に位置する袋体の一部ばかりが加温され、他の部分が加温され難いため、長時間に亘って略一定量の芳香成分を揮発させ続けることが困難であった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、長時間に亘って略一定量の芳香成分を揮発させ続けることができる芳香成分揮発装置、および芳香成分揮発装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の芳香成分揮発装置は、空気に触れると発熱する発熱体が内包された袋体を備え、該袋体の内層は熱伝導材料が基材に蒸着された熱伝導シートであり、前記袋体の外層は通気性のある保持シートであることを特徴とする。この特徴によれば、発熱体が偏っても、発生した熱が熱伝導シートの全体に行き渡り、保持シートをむらなく加温することができるため、長時間に亘って略一定量の芳香成分を揮発させ続けることができる。
【0008】
前記熱伝導シートおよび前記保持シートは、点在するスポット結合により結合されていることを特徴とする。この特徴によれば、熱伝導シートと保持シートとの間に空気の層が形成されるため、芳香成分が過度に加熱されることを防止することができる。
【0009】
前記熱伝導シートは、シート状に形成された樹脂製の基材にアルミニウムが蒸着されていることを特徴とする。この特徴によれば、可撓性を有するアルミシートとなるため、保管や持ち運びにおいて好適である。
【0010】
前記熱伝導シートは、該熱伝導シートが穿設されるにあたって融解した樹脂が当該保持シートに固着して結合されていることを特徴とする。この特徴によれば、熱伝導シートから保持シートへの熱伝達が過度に阻害されることを防止することができる。
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明の芳香成分揮発装置の製造方法は、樹脂からなる基材に熱伝導材料が蒸着された熱伝導シートを、保持シートの上層に積層する工程と、前記基材を融解できる程度の温度に熱せられた穿設部材を用いて前記熱伝導シートから前記保持シートに向けて貫通孔を穿設する工程と、前記穿設部材により融解し、前記保持シートまで流出した前記基材の一部が固着することで前記熱伝導シート、および前記保持シートを一体化して積層シートを生成する工程と、前記熱伝導シートが内側となるように、前記積層シートの略中心を折り線として折り畳む工程と、折り畳んだ前記積層シートの周縁辺を結合する工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
この特徴によれば、発熱体が偏っても、発生した熱が熱伝導シートの全体に行き渡り、保持シートをむらなく加温することができるため、長時間に亘って略一定量の芳香成分を揮発させ続けることができる芳香成分揮発装置を容易に製造することができる。
【0013】
前記積層シートを一体化する工程は、前記貫通孔を所定の間隔で形成して、隣接する貫通孔間に小区画からなる空気層を形成する工程を有することを特徴とする。この特徴によれば、積層シートに一定間隔で空気層を形成することができるため、保持シートに滴下した精油が過度に加熱されることを防止し、長時間にわたって精油の芳香効果を持続させることができる。
【0014】
前記保持シートに芳香成分である精油を滴下する工程を有することを特徴とする。この特徴によれば、保持シートに滴下した精油の芳香成分を上昇気流に乗って広範囲に拡散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施例1の芳香成分揮発装置としての芳香成分揮発体を示す斜視図である。
図2】実施例1の芳香成分揮発体が外袋に封入された様子を示す斜視図である。
図3】実施例1の芳香成分揮発体を示す断面図である。
図4】袋体の形成について説明するための図である。
図5】熱伝導シートと保持シートとの結合について説明するための図である。
図6】芳香成分揮発体の要部を拡大して示す断面図である。
図7】本発明に係る実施例2の芳香成分揮発装置を示す斜視図である。
図8】実施例2の芳香成分揮発装置における他の使用例を示す斜視図である。
図9】芳香成分揮発装置の変形例1を示す斜視図である。
図10】芳香成分揮発装置の変形例2を示す斜視図である。
図11】芳香成分揮発装置の変形例3を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る芳香成分揮発装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0017】
実施例1に係る芳香成分揮発装置につき、図1から図6を参照して説明する。
【0018】
図1に示されるように、芳香成分揮発装置としての芳香成分揮発体1は、例えば玄関等の室内空間Rに配置して使用され、香水や精油の芳香成分を揮発させるものである。尚、図1では、皿の上に載置されて使用される芳香成分揮発体1が示されているが、床、下駄箱やテーブルの天板等の面上に直接載置されていてもよい。
【0019】
また、図2に示されるように、芳香成分揮発体1は、未使用時において外袋2内に真空状に密封されている。尚、ここでいう真空とは、完全な真空状態に限られず、芳香成分揮発体1が空気に触れにくい状態を含む。
【0020】
図3に示されるように、芳香成分揮発体1は、例えば鉄粉等の空気に触れると発熱する粉末状の発熱体3と、発熱体3が内包される袋体5と、から構成されている。なお、発熱体3としては、例えば、鉄粉、水、活性炭、バーミキュライト、吸水性樹脂、塩類等から適宜選択して利用することができる。
【0021】
袋体5は、発熱体3が内包される収容空間S1を画成している熱伝導シート6と、熱伝導シート6を外装している保持シート7により形成されており、芳香成分である精油Lが保持シート7に滴下される積層されたシート状の芳香面部5Aと、皿に載置される同シート状の載置面部5Bを対向配置させた扁平状となっている。尚、図3図6では、熱伝導シート6、保持シート7の厚みを誇張して図示している。
【0022】
ここで、図4乃至図6を参照して、袋体5の製造、および製造工程について説明する。尚、本説明では、発熱体3に関する説明および図示については省略する。袋体5は、互いに結合され上面視長方形状に形成された保持シート7に熱伝導シート6を積層した状態から(図4(a)参照)、熱伝導シート6が内側となるように折り畳んだ後(図4(b)参照)、重ね合わされた三方の側端部5C,5D,5EがヒートシールHによって結合されて製造される(図4(c)参照)。これにより、熱伝導シート6および保持シート7を積層してなる積層シートの芳香面部5Aおよび載置面部5Bを簡素に形成することができる。
【0023】
図5を参照して、熱伝導シート6には、シート状に形成された高い可撓性を有する樹脂製の基材61の片面全体にアルミニウムが蒸着されてアルミニウム層60が形成されている。アルミニウム層60は、粒子状のアルミニウムが基材61に付着したものであり、基材61の可撓性を保つことができるため、熱伝導シート6は、アルミニウムを圧延することで形成されるアルミ箔と比較して高い可撓性を有している。尚、図5図6では、アルミニウム層60、基材61を誇張して図示している。
【0024】
保持シート7は、通気性のある素材、例えば不織布から形成されている。尚、本実施例では、外袋2から取り出した後、精油Lを保持シート7に滴下して付与する構成であるが、外袋2内に芳香成分揮発体1が封入されている時点で、精油Lが保持シート7に付与されていてもよい。
【0025】
熱伝導シート6および保持シート7は、所定間隔置きに点在するスポット結合により連結されている。スポット結合について詳しくは、保持シート7に連結される前の熱伝導シート6の基材61が、土台上に載置された保持シート7に対向配置されて重ね合わせられ(図5(a)参照)、アルミニウム層60側から保持シート7に向かって針状の穿設部材により穿設される(図5(b)参照)。
【0026】
この穿設では、穿設部材が熱せられた状態で穿設されるため、穿設される部分の基材61が融解する。また、押し込まれる穿設部材によって融解した基材61、すなわち融解した樹脂が押し出されることによって保持シート7の外面7aまで流出する(図5(b)参照)。そして、穿設部材の過熱が停止されることで融解した樹脂の温度が下がり固着した後、穿設部材が貫通孔8から引き抜かれる(図5(c)参照)。
【0027】
これにより、融解した樹脂の一部が外面7aに固着することに加え、保持シート7を構成する不織布の繊維に絡んだ状態で固着するため、熱伝導シート6および保持シート7が連結される。尚、穿設に伴う熱伝導シート6および保持シート7を連結する方法については、適宜変更されてもよく、例えば、穿設部材先端が保持シート7に到達したところで融解した樹脂が保持シート7に流出し、アルミニウム層60と保持シート7表面とがスポット結合により結合されていてもよいし、穿設部材によりアルミニウム層60を穿設して樹脂を流出させ、該流出された樹脂が付着したアルミニウム層60と保持シート7を当接させることによりアルミニウム層60と保持シート7表面とが結合されるようにしてもよい。また、穿設部材が針状の例について説明したが、穿孔エネルギーを溶射させて開孔させることによりアルミニウム層60に貫通孔8を設けるようにしてもよい。
【0028】
また、この穿設によって、熱伝導シート6および保持シート7を貫通する複数の貫通孔8が、直径略75μmかつ1,786千個/mの割合で形成されている。
【0029】
加えて、図6を参照して、熱伝導シート6が保持シート7に圧接された状態で貫通孔8が形成されるため、貫通孔8周りに位置する保持シート7は熱伝導シート6に圧着されている。これにより、貫通孔8から離間するほどに、保持シート7が熱伝導シート6から離間する方向に撓んだ状態となっている。この撓みにより熱伝導シート6と保持シート7との間に空気の層S2が形成されている。尚、図6では、精油Lを誇張して図示している。
【0030】
以上説明したように、本実施例の芳香成分揮発体1は、外袋2から取り出されることで、袋体5に形成されている複数の貫通孔8を通じて収容空間S1内に空気が流入するため、発熱体3が酸素と反応して発熱する。また、発熱体3が偏っても、発生した熱が熱伝導シート6に行き渡り、保持シート7をむらなく加温することができるため、長時間に亘って略一定量の精油Lを揮発させ続けることができる。
【0031】
特に、精油Lのように流動性を有する芳香成分については、芳香成分揮発体1の傾き等の配置された状態、滴下された位置等に応じて、芳香成分の位置が変化する場合があるものの、芳香成分揮発体1は保持シート7をむらなく加温することができるため、好適である。
【0032】
また、芳香成分揮発体1は、熱伝導シート6と保持シート7との間に形成されている空気の層S2によって、精油Lが過度に加熱されることを防止することができるため、過度に加熱されることによる芳香の変質を防止することができる。
【0033】
加えて、不織布で形成されている保持シート7は通気性が高く、空気の層S2内の空気が昇温されて上昇しても新たな空気が供給されやすいため、上昇気流が生じやすくなっている。これにより、揮発した精油Lが上昇気流に乗って広範囲に拡散されやすくなっている。
【0034】
また、熱伝導シート6は、可撓性を有しているため、保管や持ち運びにおいて曲げ方向の力や引っ張り方向の力が作用しても破れ難く、好適である。
【0035】
また、熱伝導シート6は、高い疎水性を有する基材61によって、保持シート7に滴下された精油Lが浸透することによる発熱体3の濡れを防止することができるため、精油Lが直接発熱体3に熱せられることによる芳香の変質、発熱体3の発熱の妨げとなることを防止することができる。
【0036】
また、熱伝導シート6および保持シート7は、穿設されるにあたって融解した樹脂によって結合されているため、例えば熱伝導シート6および保持シート7の対向面同士が接着材により接合されている構成と比較して、熱伝導シート6から保持シート7への熱伝達が過度に阻害されること、加温によって接着材の臭いが混じることが防止されている。
【0037】
また、芳香成分揮発体1は、精油Lが保持シート7を伝って貫通孔8を通じて収容空間S1内に流入しようとしても、貫通孔8の直径が十分に小さく、精油Lの表面張力が働くため、収容空間S1内に流入することが防止されている。
【0038】
また、袋体5は、芳香面部5A、載置面部5B共に熱伝導シート6および保持シート7によって構成されていることから、載置面部5Bも芳香面部5Aと同様に精油Lの揮発に使用することができるため、精油Lの付与が容易である。
【0039】
加えて、袋体5は、芳香面部5A、載置面部5B共に熱伝導シート6および保持シート7によって構成されており、精油Lが滴下されていない載置面部5Bは、熱伝導シート6が直接皿に載置される構成と比較して、袋体5が皿に載置されても、上述したように高い通気性を有する保持シート7によって下方側の貫通孔8に連通する流路が確保されることから、発熱体3を安定して発熱させることができる。
【0040】
さらに、酸化反応は、載置面部5Bに近い発熱体3ほど酸素が供給されやすく、進行しやすくなっており、載置面部5B近傍で発生した熱は、載置面部5B側のアルミニウム層60から芳香面部5A側のアルミニウム層60に素早く伝達されることから、より確実に保持シート7全体をむらなくかつ短時間で加温することができる。
【0041】
また、熱伝導シート6は、アルミニウム層60が収容空間S1を画成しており、発熱体3が当接しやすいため、基材61が収容空間S1を画成している構成と比較して、保持シート7を素早く、かつむらなく加温することができる。加えて、穿設により融解した樹脂が保持シート7の外面7aまで届きやすいため、熱伝導シート6および保持シート7を結合する効率がよい。
【0042】
また、袋体5は、芳香面部5Aおよび載置面部5Bそれぞれに複数の貫通孔8が形成されていることから、下方側の貫通孔8を通じて収容空間S1に流入した空気が、発熱体3によって熱せられた後、芳香面部5Aの貫通孔8を通じて流出するため、上昇気流が発生しやすくなっている。これにより、揮発した精油Lが上昇気流に乗って広範囲に拡散されやすくなっている。
【0043】
また、時間の経過に伴う芳香成分揮発体1の保持シート7の温度変化について実験を行った。この実験では、直径略75μmの貫通孔8を1,786千個/mの割合で所定間隔置きに形成し、4mgの発熱体3を封入した40mm×40mmの大きさの芳香成分揮発体1を使用しており、外袋2を開封した時点で時間の測定を開始した後、約1分毎に保持シート7の温度を測定した。尚、実験に使用した部屋の室温は略20度とし、発熱体3の酸化反応を促進するために芳香成分揮発体1を振る・揉む等を行うことなく皿上に載置した。
【0044】
その結果、約8分で保持シート7の温度が40度に到達した後、4時間を超えて40度以上の温度を継続して保てることが分かった。また、その間における最高温度は50.3度であった。この約40~50度の温度範囲というものは、かねてからの実験により精油Lを揮発させるうえで、単位時間あたりに揮発される分量と、加熱による芳香の変化とのバランス(芳香の濃さと香しさとのバランス)が最もよく、この範囲より温度が低ければ芳香の濃さと香しさ共に物足りなさを感じ、同範囲より温度が高ければ芳香が濃すぎる上に香りの質が低下することが判明している。
【0045】
尚、約40~50度の温度範囲を保つことが可能であれば、貫通孔の直径および単位面積当たりの個数は適宜変更されてもよいが、同温度範囲を保つことが可能な時間の観点、発熱体3の流出防止や精油Lの収容空間S1内への進出を防止する観点から、直径10μmかつ101,000千個/m~直径120μmかつ1,200千個/m程度で貫通孔が形成されていることが好ましい。なお、商品種類によっては、より高温の温度範囲を保つように孔径や孔数を適宜変更してもよい。
【0046】
上記の実験結果を踏まえて、同じ条件で作成した芳香成分揮発体1により精油Lを揮発させた時間と部屋の広さとの対応関係を知るべく30人を対象に官能試験を行った。その結果、約30mの室内で4時間に亘って精油Lを揮発させたところ、21人から概ね満足できるとの評価を頂戴することができた。
【0047】
これらの結果により、約40~50度の温度を4時間以上に亘って保つことができれば、室内の広さや芳香の濃度の好みに合わせて滴下する精油Lの質量を調整することにより、幅広いユーザーに楽しんでいただけることが分かった。
【実施例2】
【0048】
次に、実施例2に係る芳香成分揮発装置につき、図7図11を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0049】
図7に示されるように、芳香成分揮発装置50は、前記実施例と同一の芳香成分揮発体9と、皿、天板等の面上に立設される支持体10によって構成されている。支持体10は、薄板状のプラスチック、厚紙等で折り畳み可能に下向きV字状に形成されており、芳香成分揮発体9が載置される平板状の載置部11と、載置部11の厚み方向に連通する開口12と、芳香成分揮発体9を把持する上下一対の係支片13を備えている。これにより、芳香成分揮発体9が載置部11に載置された状態において、開口12により載置面部5B(図3参照)への通気性が確保されることから、面上に芳香成分揮発体9が直接載置される場合よりも、より好適に発熱体3を発熱させることができる。
【0050】
また、支持体10は、折り畳み可能であるため、未使用時においては係支片13によって芳香成分揮発体9が把持され、かつ支持体10が折り畳まれた状態で外袋2内に真空状に密封されていてもよい(図2参照)。この場合、コンパクトに収納することができるとともに、外袋2から支持体10を取出し、展開して面上に立設させるだけで、簡便に芳香成分揮発装置50を設置することができる。
【0051】
また、支持体10は、薄板状のプラスチック、厚紙等を折り曲げ、載置部11の中央を切り抜いて開口12を形成した後、開口12の上端部側または下端部側に位置する載置部11から係支片13を切り起こすことで形成されているため、簡素に構成することができる。
【0052】
また、支持体10は、下向きV字状に形成されているため、図8に示されるように、紐、ワイヤ等の架設部材30に吊支することができる。
【0053】
次に、芳香成分揮発装置の変形例1について説明する。変形例1の芳香成分揮発装置100は、支持体110における載置部111に設けられた粘着層に芳香成分揮発体9の載置面部5B(図3参照)が貼着されており、支持体110に形成されたかぎ状のフック112によって架設部材30に吊支されている。このように、載置部111に載置面部5Bが貼着されていても、開口12ばかりでなく(図7図8参照)、載置面部5Bを構成する保持シート7および空気の層S2によって貫通孔8への通気性を確保することができる(図6参照)。尚、芳香成分揮発体9の載置面部5Bに粘着層が設けられていてもよい。また、支持体110に芳香成分揮発体9が支持される構成については、係支片、両面テープ、面ファスナ等、適宜変更されてもよく、粘着層に限定されるものではない。
【0054】
次に、芳香成分揮装置の変形例2について説明する。変形例2の芳香成分揮装置200は、支持体210における載置部211の粘着層に芳香成分揮発体9の載置面部5B(図3参照)が貼着されており、一方の端部に形成された係止孔212に、他方の端部に形成された抜け止めを有する挿通片213が挿通されることによって、ベルト31に吊支されている。これにより、芳香成分揮発体9を身に着けた状態で部屋間の移動や外出することができる。尚、ベルト31に限らず、鞄の把手等、吊支する場所は適宜変更されてもよい。
【0055】
次に、芳香成分揮発装置の変形例3について説明する。変形例3の芳香成分揮発装置300は、下向きコ字状に形成されている支持体310における載置部311の粘着層に芳香成分揮発体9の載置面部5B(図3参照)が貼着されており、支持体310は精油Lが収容されているボトル15を跨いで立設されている。また、濾紙で形成された棒状部材16の上端部が開口312を通じて載置面部5Bに当接され、棒状部材16の下端部はボトル15内に挿入されていることで、棒状部材16を伝って精油Lが芳香成分揮発体9に供給され続けるため、より長時間に亘って確実に精油Lを揮発させることができる。
【0056】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例1,2に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0057】
例えば、前記実施例では、袋体は、芳香面部および載置面部を備える扁平状である構成として説明したが、これに限らず、4以上の面部を備える四面体、六面体等の多面体であってもよく、円錐状や円柱状であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0058】
また、芳香面部および載置面部は、シート状であるとして説明したが、これに限らず、板状であってもよく、袋状の袋体を形成可能であればよい。
【0059】
また、熱伝導シートは、シート状に形成された樹脂製の基材の片面全体にアルミニウムが蒸着されることで形成されている構成として説明したが、これに限らず、アルミ箔であってもよく、アルミニウムで形成されたメッシュであってもよく、さらにアルミニウム以外の熱伝導性を有する材料であれば適宜変更されてもよい。また、基材の両面全体にアルミニウムが蒸着されていてもよい。
【0060】
また、熱伝導シートは、基材が保持シートに対向配置されている構成として説明したが、これに限らず、アルミ層が保持シートに対向配置されていてもよい。
【0061】
また、熱伝導シートおよび保持シートは、穿設することで結合されている構成として説明したが、これに限らず、ヒートシール、接着材、縫合等によりスポット結合されていてもよい。
【0062】
また、熱伝導シートおよび保持シートは、袋体のすべての面部を構成している構成として説明したが、これに限らず、少なくとも一の面部のみを構成してもよい。
【0063】
また、保持シートは、不織布の素材から構成されている必要はなく、一定の通気性を有し、液体や粘体を保持することができる素材であれば、特に限定されるものではない。
【0064】
また、芳香成分は、精油である構成として説明したが、これに限らず、同じ液状である香水や、液状と同様に流動性のあるクリーム状、ジェル状、粉末状等であってもよい。また、流動性のあるものに限らず、芳香成分を保持シートに付与可能であれば、カプセル状、板状等であってもよい。
【0065】
また、貫通孔は、複数形成されている構成として説明したが、これに限らず、一つだけ形成されていてもよく、例えば細長くかつ渦巻き状の貫通孔が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 芳香成分揮発体(芳香成分揮発装置)
3 発熱体
5 袋体
5A 芳香面部
5B 載置面部
6 熱伝導シート
7 保持シート
8 貫通孔
9 芳香成分揮発体
10 支持体
11 載置部
12 開口
13 係支片
50 芳香成分揮発装置
60 アルミニウム層
61 基材
100,200,300 芳香成分揮発装置
110,210,310 支持体
111,211,311 載置部
312 開口
L 精油(芳香成分)
S1 収容空間
S2 空気の層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11