(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】空調機試験装置
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20220920BHJP
F24F 11/49 20180101ALI20220920BHJP
F24F 3/14 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
F25B49/02 A
F24F11/49
F24F3/14
(21)【出願番号】P 2019050361
(22)【出願日】2019-03-18
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】近藤 昭久
(72)【発明者】
【氏名】山本 健嗣
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-078132(JP,A)
【文献】特開平07-144138(JP,A)
【文献】特開平04-003829(JP,A)
【文献】特開2016-109682(JP,A)
【文献】特開2016-176626(JP,A)
【文献】特開2004-169966(JP,A)
【文献】特開平05-133560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
F24F 11/00-11/89
F24F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吸込むための吸込口、及び、空調された空気を吹出すための吹出口を有してなる被試験空調機に対する能力試験を行うための空調機試験装置であって、
空気が通る空気流路を有する装置本体と、
前記空気流路に設置され、該空気流路を通る空気を加熱する加熱手段と、
前記空気流路に設置され、所定の加湿動作を行うことにより該空気流路を通る空気を加湿する加湿手段と、
端部開口が前記吸込口及び前記吹出口のうちの一方に対応して配置される第一ダクトと、
端部開口が前記吸込口及び前記吹出口のうちの他方に対応して配置される第二ダクトとを備え、
前記第一ダクトの内部空間、前記空気流路及び前記第二ダクトの内部空間が直列的に連通した状態とされており、
前記被試験空調機に対する能力試験時には、前記吹出口から吹出された空気が前記第一ダクト及び前記第二ダクトのうちの一方に入り、前記空気流路にて前記加熱手段及び前記加湿手段により加熱及び加湿され、その後、前記第一
ダクト及び前記第二ダクトのうちの他方を通って前記吸込口へと供給されるように構成され、
前記加湿手段は、前記空気流路における空気の流れ方向に沿って前記加熱手段を間に置く位置に設けられた第一加湿手段及び第二加湿手段を有し、
前記第一加湿手段及び前記第二加湿手段のうちの一方によって空気の加湿が行われるように、前記加湿動作を行うものを前記第一加湿手段又は前記第二加湿手段に切換可能な加湿位置切換手段を有することを特徴とする空調機試験装置。
【請求項2】
前記加湿動作は、所定の供給源から供給される蒸気を前記空気流路に放出する動作であり、
前記供給源から前記第一加湿手段及び前記第二加湿手段に対する蒸気の供給量を調節するための蒸気量調節手段を備え、
前記加湿位置切換手段は、前記蒸気量調節手段により供給量が調節された蒸気の供給対象を、前記第一加湿手段及び前記第二加湿手段のうちの一方に切換可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の空調機試験装置。
【請求項3】
前記加熱手段及び前記第一加湿手段をこの順序で経た空気の温度情報を取得するための第一温度情報取得手段と、
前記加熱手段及び前記第一加湿手段をこの順序で経た空気の湿度情報を取得するための第一湿度情報取得手段と、
前記加熱手段及び前記第二加湿手段をこの順序で経た空気の温度情報を取得するための第二温度情報取得手段と、
前記加熱手段及び前記第二加湿手段をこの順序で経た空気の湿度情報を取得するための第二湿度情報取得手段と、
入力された温度情報に基づき、前記加熱手段を制御する加熱制御手段と、
入力された湿度情報に基づき、前記蒸気量調節手段を制御する加湿制御手段と、
前記加熱制御手段へと入力される温度情報を、前記第一温度情報取得手段により取得されたもの又は前記第二温度情報取得手段により取得されたものに切換可能な入力温度情報切換手段と、
前記加湿制御手段へと入力される湿度情報を、前記第一湿度情報取得手段により取得されたもの又は前記第二湿度情報取得手段により取得されたものに切換可能な入力湿度情報切換手段と、
切換操作が行われることによって、所定の第一モード又は所定の第二モードとなるように、前記加湿位置切換手段、前記入力温度情報切換手段及び前記入力湿度情報切換手段のそれぞれにおける動作を一括して制御可能なモード切換手段とを有し、
前記第一モードでは、蒸気の供給対象が前記第一加湿手段となり、前記第一温度情報取得手段により取得された温度情報が前記加熱制御手段に入力され、かつ、前記第一湿度情報取得手段により取得された湿度情報が前記加湿制御手段に入力される状態となり、
前記第二モードでは、蒸気の供給対象が前記第二加湿手段となり、前記第二温度情報取得手段により取得された温度情報が前記加熱制御手段に入力され、かつ、前記第二湿度情報取得手段により取得された湿度情報が前記加湿制御手段に入力される状態となることを特徴とする請求項2に記載の空調機試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験空調機に対し試験を行うための空調機試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室外機と室内機とに大きく装置構成が分かれる、冷凍サイクルの蒸発器や凝縮器を直膨コイルとして空気を温調するタイプの空調機は、水を熱媒として介さないので扱いやすく大型の乗り物の室内を温調する空調機として多用される。乗り物は室内が居住域で乗り物外郭外はすぐに外気なので室内機と室外機との距離があまり必要ではない点もその理由ではある。
【0003】
例えば各種鉄道車両(新幹線など)に使用される空調機の空調能力などを試験・検証すべく、空調機試験装置を用いて、試験室内に設置された試験の対象となる空調機(被試験空調機)に対し負荷試験を行うことがある。試験室としては室内機用試験室と、室外機用試験室とを備え、室内機用試験室側では室内機が温調対象とする例えば居室内の室内負荷を再現し、室外機用試験室側では室内機側で直膨コイルを介して熱負荷を熱交換したフロン冷媒の熱の捨て場としての室外機がその熱交換対象としての外気温湿度を再現するように備えられるのが基本である。前述のように大型の乗り物では、車両外郭にて居室と外気とが隔てられるだけであり、空調機を車両表面外側に設置することで居室スペースを拡大できるので室外機と室内機とが一体化される場合がある。このような室外機室内機一体型の空調機の負荷試験に向く空調機試験装置としては、被試験空調機(室内機)の吹出口から吹出される空気(空調済の空気)の流路となる第一ダクトと、該第一ダクトを通って流入した空気に対し加熱及び加湿を行うことで、該空気を室内熱負荷に模した所定の温湿度条件を満たすように調節する温湿度調節装置と、該温湿度調節装置により温湿度の調節された空気を被試験空調機における空気の吸込口へと供給するための第二ダクトとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。この場合、室内機の吹出口と吸込口との各々にダクトでつなぐので、ダクト外の環境を外気条件にできるから室内機室外機一体型の空調機の負荷試験に向くのである。温湿度調節装置は、空気を加熱するための加熱手段及び空気を加湿するための加湿手段を備えており、加熱手段により空気を加熱した上で、加湿手段により空気の加湿を行う。加熱後の空気に加湿を行うのは、室内に潜熱を発生する人間などが多数いる場合などを再現すべく、空気の湿度を十分に増大させるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、室内機室外機一体型の空調機の場合、被試験空調機における吹出口及び吸込口のそれぞれの位置は、室内機側だけでなく室外機側の外気吸い込み及び吐き出しに係る口の相互関係を考慮しなければならない場合があるから、常に一定ということはなく、空調機の機種やバージョンなどによって異なることがある。例えば、あるバージョンに係る被試験空調機と、その次のバージョンに係る被試験空調機とでは、吹出口及び吸込口のそれぞれの位置がほぼ逆(例えば左右反対)になっているといったことがある。そのため、被試験空調機によっては、吹出口に対応して第一ダクトを配設し、吸込口に対応して第二ダクトを配設するために、両ダクトを無理な姿勢(例えば交差状態など)で配設する必要が生じてしまい、結果的に、両ダクトの配設作業に多大な時間や手間を要してしまうおそれがある。これは、特に室内機室外機一体型の空調機の場合、ダクト外の外気条件再現側での室外機の外気吸い込み及び吐き出しに係る口の関係が変えられない場合に特に顕著となる。
【0006】
これに対し、例えば被試験空調機の向きを変えることによって、第一ダクト及び第二ダクトをさほど無理な姿勢とすることなく、吹出口に対応して第一ダクトを配設し、吸込口に対応して第二ダクトを配設するといったことが考えられる。しかしながら、大型の被試験空調機の向きを変えること自体が困難なケースもあり、また、向きを変えた場合に、試験室内に被試験空調機が収まらない等の不具合が生じてしまうこともある。それ故、被試験空調機の向きを変えることによる対応が難しい場合もある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、試験に係る作業性を向上させることができる空調機試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.空気を吸込むための吸込口、及び、空調された空気を吹出すための吹出口を有してなる被試験空調機に対する能力試験を行うための空調機試験装置であって、
空気が通る空気流路を有する装置本体と、
前記空気流路に設置され、該空気流路を通る空気を加熱する加熱手段と、
前記空気流路に設置され、所定の加湿動作を行うことにより該空気流路を通る空気を加湿する加湿手段と、
端部開口が前記吸込口及び前記吹出口のうちの一方に対応して配置される第一ダクトと、
端部開口が前記吸込口及び前記吹出口のうちの他方に対応して配置される第二ダクトとを備え、
前記第一ダクトの内部空間、前記空気流路及び前記第二ダクトの内部空間が直列的に連通した状態とされており、
前記被試験空調機に対する能力試験時には、前記吹出口から吹出された空気が前記第一ダクト及び前記第二ダクトのうちの一方に入り、前記空気流路にて前記加熱手段及び前記加湿手段により加熱及び加湿され、その後、前記第一ダクト及び前記第二ダクトのうちの他方を通って前記吸込口へと供給されるように構成され、
前記加湿手段は、前記空気流路における空気の流れ方向に沿って前記加熱手段を間に置く位置に設けられた第一加湿手段及び第二加湿手段を有し、
前記第一加湿手段及び前記第二加湿手段のうちの一方によって空気の加湿が行われるように、前記加湿動作を行うものを前記第一加湿手段又は前記第二加湿手段に切換可能な加湿位置切換手段を有することを特徴とする空調機試験装置。
【0010】
従来では、加熱手段側から加湿手段側へと空気を流して、加熱後の空気を加湿するために、第一ダクト及び第二ダクトを吹出口及び吸込口のうちの予め決められた側に対応して配設する必要がある。これに対し、上記手段1によれば、空気流路における空気の流れ方向に沿って加熱手段を間に置く位置に、第一加湿手段及び第二加湿手段が設けられており、両加湿手段のうちの一方によって空気の加湿を行うように、加湿動作を行うものを第一加湿手段又は第二加湿手段に切換えることが可能とされている。従って、空気流路における空気の流れ方向が正方向であっても逆方向であっても、両加湿手段のうち空気の流れ方向に沿って加熱手段よりも下流に位置するものが加湿動作を行うように設定することで、加熱手段により加熱された後の空気を加湿することができる。そのため、第一ダクト及び第二ダクトを吹出口及び吸込口のどちらに対応して配設してもよいこととなり、両ダクトを交差状態などの無理な姿勢で配設しなくて済む。その結果、両ダクトの配設に関する利便性を高めることができ、試験に係る作業性を向上させることができる。
【0011】
手段2.前記加湿動作は、所定の供給源から供給される蒸気を前記空気流路に放出する動作であり、
前記供給源から前記第一加湿手段及び前記第二加湿手段に対する蒸気の供給量を調節するための蒸気量調節手段を備え、
前記加湿位置切換手段は、前記蒸気量調節手段により供給量が調節された蒸気の供給対象を、前記第一加湿手段及び前記第二加湿手段のうちの一方に切換可能に構成されていることを特徴とする手段1に記載の空調機試験装置。
【0012】
上記手段2によれば、気流方向によって択一されるものの、求められる加湿能力は同じである第一加湿手段及び第二加湿手段に関し、これらに供給される蒸気量の双方について1つの手段(蒸気量調節手段)で調節することができる。従って、装置の複雑化をより確実に防止することができ、コストの低減やメンテナンスの容易性向上を図ることができる。
【0013】
手段3.前記加熱手段及び前記第一加湿手段をこの順序で経た空気の温度情報を取得するための第一温度情報取得手段と、
前記加熱手段及び前記第一加湿手段をこの順序で経た空気の湿度情報を取得するための第一湿度情報取得手段と、
前記加熱手段及び前記第二加湿手段をこの順序で経た空気の温度情報を取得するための第二温度情報取得手段と、
前記加熱手段及び前記第二加湿手段をこの順序で経た空気の湿度情報を取得するための第二湿度情報取得手段と、
入力された温度情報に基づき、前記加熱手段を制御する加熱制御手段と、
入力された湿度情報に基づき、前記蒸気量調節手段を制御する加湿制御手段と、
前記加熱制御手段へと入力される温度情報を、前記第一温度情報取得手段により取得されたもの又は前記第二温度情報取得手段により取得されたものに切換可能な入力温度情報切換手段と、
前記加湿制御手段へと入力される湿度情報を、前記第一湿度情報取得手段により取得されたもの又は前記第二湿度情報取得手段により取得されたものに切換可能な入力湿度情報切換手段と、
切換操作が行われることによって、所定の第一モード又は所定の第二モードとなるように、前記加湿位置切換手段、前記入力温度情報切換手段及び前記入力湿度情報切換手段のそれぞれにおける動作を一括して制御可能なモード切換手段とを有し、
前記第一モードでは、蒸気の供給対象が前記第一加湿手段となり、前記第一温度情報取得手段により取得された温度情報が前記加熱制御手段に入力され、かつ、前記第一湿度情報取得手段により取得された湿度情報が前記加湿制御手段に入力される状態となり、
前記第二モードでは、蒸気の供給対象が前記第二加湿手段となり、前記第二温度情報取得手段により取得された温度情報が前記加熱制御手段に入力され、かつ、前記第二湿度情報取得手段により取得された湿度情報が前記加湿制御手段に入力される状態となることを特徴とする手段2に記載の空調機試験装置。
【0014】
上記手段3によれば、モード切換手段に対する切換操作を行うことで、空調機試験装置における動作モードが空気流路における空気の流れ方向に対応した適切なモードとなるように、加湿位置切換手段、入力温度情報切換手段及び入力湿度情報切換手段を一括して制御することができる。つまり、加熱後の空気に加湿が行われるとともに、加熱及び加湿後の空気に関する温度情報及び湿度情報が取得されるモードとなるように、各切換手段を一括して制御することができる。そのため、試験に係る作業性を一層向上させることができる。
【0015】
尚、第一モードは、加熱手段側から第一加湿手段側へと空気が流れる場合に対応するモードである。第一モードでは、加熱手段による空気の加熱が行われた後、第一加湿手段による空気の加湿が行われ、また、第一温度情報取得手段及び第一湿度情報取得手段により取得された、加熱及び加湿後の空気に関する温度情報及び湿度情報が、加熱制御手段及び加湿制御手段へと入力される状態となる。そして、加熱制御手段によって、第一温度情報取得手段により取得された温度情報に基づき、例えば加熱後の空気温度が試験条件に合う適切な温度となるように、加熱手段が制御される。また、加湿制御手段によって、第一湿度情報取得手段により取得された湿度情報に基づき、例えば加湿後の空気湿度が試験条件に合う適切な湿度となるように、蒸気量調節手段が制御される。
【0016】
一方、第二モードは、加熱手段側から第二加湿手段側へと空気が流れる場合に対応するモードである。第二モードでは、加熱手段による空気の加熱が行われた後、第二加湿手段による空気の加湿が行われ、また、第二温度情報取得手段及び第二湿度情報取得手段により取得された、加熱及び加湿後の空気に関する温度情報及び湿度情報が、加熱制御手段及び加湿制御手段へと入力される状態となる。そして、加熱制御手段によって、第二温度情報取得手段により取得された温度情報に基づいて加熱手段が制御され、加湿制御手段によって、第二湿度情報取得手段により取得された湿度情報に基づいて蒸気量調節手段が制御されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】空調機試験装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】被試験空調機の向きを変えた場合において、試験室内に被試験空調機が収まらないことを示すための平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1及び
図2に示すように、空調機試験システム1は、試験室2、室外機側給排気装置3及び空調機試験装置4を備えている。試験室2内には、試験対象となる被試験空調機7を設置可能な被試験体設置台21が設けられている。また、試験室2には、被試験空調機7等を搬入出するための搬入出口を開閉するスライドドア22(
図1参照)が設けられている。
【0019】
尚、試験対象となる被試験空調機7は、例えば各種鉄道車両(新幹線など)に使用することを目的とした空調機の製品や試作品などであり、内部に冷凍サイクルを形成する冷媒を循環させる循環パイプや該循環パイプを循環する冷媒などを備えている。また、被試験空調機7は、室外機としての機能を有する室外機ユニット71と、室内機としての機能を有する室内機ユニット72とを備えている。室外機ユニット71は、室外機側熱交換器、室外機側ファン、コンプレッサー及び膨張弁(それぞれ不図示)などを具備している。一方、室内機ユニット72は、車室内の空気との間で熱交換を行うための室内機側熱交換器、及び、車室内を対象として空気の吸込みや吹出しを行うための室内機側ファンなどを具備している。
【0020】
加えて、本実施形態において、室内機ユニット72は、空気の吹出口73aを気密に包含するよう能力試験時だけ取り付けられる吹出口ボックス73と、空気の吸込口74aを気密に包含するよう能力試験時だけ取り付けられる吸込口ボックス74とを備えている。室内機ユニット72は、前記室内機側ファンや前記室内側熱交換器などの動作により、吸込口74aから空気を吸込んだ上で、この吸込んだ空気の温度及び湿度を調節し、その後、吹出口73aから空調された空気を吹出すようになっている。尚、室内機側ファンとして、空気の吸込み用と空気の吹出し用とを別々に設けてもよい。
【0021】
また、本実施形態において、試験対象となる被試験空調機7は、上記の通り大型であるから、その向きを変えること自体が困難である。さらに、本実施形態では、試験室2のサイズが比較的小型とされており、仮に被試験空調機7の向きを変えること(例えば被試験空調機7の向きを反転させること)ができたとしても、次述するように室外機側給排気装置3による室外機ユニット71に対する吸排気を可能な状態で維持しようとすれば、試験室2内に被試験空調機7が収まらないという不具合が生じるようになっている(
図4参照)。
【0022】
室外機側給排気装置3は、被試験空調機7のうち特に室外機ユニット71を対象とした吸排気を行うためのものであり、室外機側給気管31及び室外機側排気管32を備えている。室外機側給気管31は、図示しない空気調和装置によって温度等の調節された空気を室外機ユニット71へと案内しながら主に室外機ユニット71へ吹き付けるものであるが、試験室2内の環境の温調も行う。室外機側排気管32は、室外機側給気管31から室外機ユニット71に供給されて、該室外機ユニット71を経た空気(例えば前記室外機側熱交換器により熱交換された空気)を試験室2外の図示しない室外機環境温調用空調機へと還気として案内する。
【0023】
次いで、空調機試験装置4について説明する。空調機試験装置4は、被試験空調機7の前記室内機ユニット72を対象として負荷試験を行うために用いられる。空調機試験装置4は、
図1及び
図3に示すように、第一ダクト41、第二ダクト42、装置本体43、加熱調節装置44、加湿調節装置45、加湿位置切換手段としての加湿位置切換部46及びモード切換手段としてのモード切換装置47を備えている。尚、図示の便宜上、
図1等では、第一ダクト41及び第二ダクト42を簡略化して太線で示しているが、実際には両ダクト41,42は比較的太いもの(例えば断面円形状部分の外径が約φ300mm以上のもの)である。また、
図1等では、加熱調節装置44等の図示を省略している。
【0024】
第一ダクト41及び第二ダクト42は、それぞれ少なくとも一部が伸縮変形自在なフレキシブルダクトにより構成されてなる柔軟に変形可能な通気管である。両ダクト41,42は、例えばアルミニウム等からなる筒状のコアの外周に所定の保温材(例えば、グラスウール等からなる保温材)及びカバーなどが巻き付けられたものであり、内部を通る空気の保温機能を備えている。
【0025】
また、両ダクト41,42のそれぞれの中間部分には、両ダクト41,42の断面形状を矩形状から円形状へと徐々に変化させるための形状変化部(図示せず)が設けられている。両ダクト41,42は、装置本体43側に位置する部位が断面矩形状をなす一方、各ボックス73,74側に位置する部位が断面円形状をなしている。
【0026】
さらに、第一ダクト41には、その内部空間(空気の流路)の開閉状態を切換えることで、両ダクト41,42を通った空気の流通の可否を切換えるための開閉バルブ41aが設けられている。また、空気の流通の可否は開閉バルブ41aがONOFF動作することにより決定されるが、ON動作するときに開閉バルブ41aを任意の開度に調整する機構を設けることで、被試験空調機7のうち室内機ユニット72の風量を調整可能としてもよい。尚、開閉バルブ41aを第二ダクト42に対応して設置してもよい。
【0027】
加えて、第一ダクト41及び第二ダクト42は、それぞれ一端部が装置本体43(後述する筐体431)に対し接続されており、第一ダクト41の内部空間、装置本体43の後述する空気流路431a及び第二ダクト42の内部空間が直列的に連通した状態とされている。また、被試験空調機7の能力試験時には、第一ダクト41の他端部開口が前記吸込口ボックス74又は前記吹出口ボックス73を介して前記吸込口74a及び前記吹出口73aのうちの一方に対応して配置され、第二ダクト42の他端部開口が前記吸込口74a及び前記吹出口73aのうちの他方に対応して配置されるようになっている。
【0028】
特に
図1等にて示す例では、被試験空調機7の試験を行うにあたって、第一ダクト41の他端部が吸込口ボックス74に接続されてその他端部開口が前記吸込口74aに対応して配置される一方、第二ダクト42の他端部が吹出口ボックス73に接続されてその他端部開口が前記吹出口73aに対応して配置されている。本実施形態では、両ダクト41,42をこのような態様で接続することにより、両ダクト41,42を無理のない姿勢で配設することが可能である。
【0029】
尚、試験対象となる被試験空調機7の機種などによっては、吸込口74a及び吹出口73aの位置が異なる(例えば逆になる)ことがあり、このような場合には、両ダクト41,42を無理のない姿勢で配設するために、第一ダクト41の他端部開口を前記吹出口ボックス73を介して吹出口73aに対応して配置し、第二ダクト42の他端部開口を前記吸込口ボックス74を介して吸込口74aに対応して配置してもよい。すなわち、両ダクト41,42は、吸込口74a及び吹出口73aのうちの一方のみに対応するものではなく、吸込口74a及び吹出口73aの双方に対応して設置することが可能である。
【0030】
装置本体43は、前記室外機側排気管32を跨ぐようにして設置された試験装置設置台23に設置・固定されており、筐体431、加熱手段としての加熱部432及び加湿手段としての加湿部433を有している。
【0031】
筐体431は、全体として直方体形状をなしており、一側面から該一側面と相対向する面へと貫通する空気流路431aを内部に有している。被試験空調機7の能力試験時において、前記吹出口73aから吹出された空気は、第一ダクト41及び第二ダクト42のうちの一方(本実施形態では第一ダクト41)に入り、空気流路431aにて加熱部432及び加湿部433により加熱及び加湿され、その後、第一ダクト41及び第二ダクト42のうちの他方(本実施形態では第二ダクト42)を通って吸込口74a側へと供給される。尚、被試験空調機7の能力試験時には、前記吹出口73aからの空気の吹出力や吸込口74aにおける空気の吸込力を利用することによって、両ダクト41,42内や空気流路431a等にて空気が循環して流れるようになっている。つまり、本実施形態における装置本体43は、空気に動圧を加えて空気を流すための手段(例えばファンなど)を有していないものである。室内機ユニット72が実際に車載された場合、室内機ユニット72は、各座席など居住域で小径のダクトにより空気を分配したり吹出したり吸い込んだりするので、装置本体43や両ダクト41,42の圧力損失を賄うだけの静圧を自身のファンで有するのが普通だからである。勿論、室内機ユニット72のファンの静圧が不足するなら、このようなファン等の手段を装置本体43に設けて能力試験の送風側の条件を実際に合わせてもよい。
【0032】
加熱部432は、空気流路431aに配置されており、本実施形態では電気ヒータにより構成されている。尚、加熱部432を、熱媒をチューブ内に流す加熱コイル等により構成してもよい。加熱部432は、図示しない所定の加熱部用電源から電力が供給されることで発熱し、被試験空調機7の能力試験時には、空気流路431aを流れる空気を加熱する。
【0033】
加湿部433は、空気流路431aに配置されており、被試験空調機7の能力試験時には、所定の加湿動作を行うことによって空気流路431aを通る空気を加湿する。また、加湿部433は、空気流路431aにおける空気の流れ方向に沿って加熱部432を間に置く位置に設けられた、第一加湿手段としての第一加湿部433a及び第二加湿手段としての第二加湿部433bを有している。本実施形態において、両加湿部433a,433bはそれぞれ例えば加湿管により構成されており、前記加湿動作として、図示しない所定の供給源から供給される蒸気を空気流路431aに放出する動作を行うようになっている。尚、詳しくは後述するが、被試験空調機7の能力試験時には、第一加湿部433a及び第二加湿部433bのうちの一方のみで加湿動作が行われる。
【0034】
加熱調節装置44は、加熱部432により加熱された空気の温度を計測するとともに、計測した温度に基づき、加熱後の空気温度が予め設定された設定温度となるように、加熱部432における加熱能力(出力)を調節するためのものである。加熱調節装置44は、
図3に示すように、第一温度情報取得手段としての第一温度センサ441、第二温度情報取得手段としての第二温度センサ442、入力温度情報切換手段としての入力温度情報切換部443、サイリスタ444及び加熱制御手段としての加熱制御部445を備えている。
【0035】
両温度センサ441,442は、空気温度を計測し、計測温度実測値を電気的信号として加熱制御部445側に送信する機能を有しており、例えば温度計測用の熱電対や測温抵抗体を有している。第一温度センサ441は、第一ダクト41に介在設置されており、加熱部432及び第一加湿部433aをこの順序で経た、第一ダクト41内の空気の温度情報を取得するためのものである。第二温度センサ442は、第二ダクト42に介在設置されており、加熱部432及び第二加湿部433bをこの順序で経た、第二ダクト42内の空気の温度情報を取得するためのものである。
【0036】
入力温度情報切換部443は、第一温度センサ441及び第二温度センサ442の双方から信号が入力されるように構成されており、両温度センサ441,442のうちの一方からの信号を加熱制御部445へと選択的に送るためのものである。すなわち、入力温度情報切換部443は、加熱制御部445へと入力される温度情報を、第一温度センサ441により取得されたもの又は第二温度センサ442により取得されたものに切換えるためのものである。入力温度情報切換部443は、例えばデータセレクタ素子などにより構成されており、モード切換装置47によってその動作が制御されるようになっている。
【0037】
サイリスタ444は、加熱部432に対する供給電力を調節するために用いられる素子である。サイリスタ444に対するゲート電流の供給・非供給を切換えることで、前記加熱部用電源から加熱部432に対する単位時間当たりの供給電力を調節し、ひいては加熱部432における加熱能力(出力)を変化させることが可能である。
【0038】
加熱制御部445は、例えばCPUや各種情報を記憶するROM、RAM等を備えたコンピュータシステムにより構成されている。加熱制御部445は、入力温度情報切換部443を経て第一温度センサ441からの信号(第一温度センサ441により取得された温度情報)又は第二温度センサ442からの信号(第二温度センサ442により取得された温度情報)が温度計測値として入力され、この温度計測値と温度設定値との偏差に基づき、例えばPID制御回路により演算された出力値に応じてサイリスタ444に供給するゲート電流のオン・オフを調節することで、加熱部432における加熱能力(出力)を制御する。
【0039】
加湿調節装置45は、加湿部433により加湿された空気の湿度を計測するとともに、計測した湿度に基づき、加湿後の空気湿度が予め設定された設定湿度となるように、加湿部433における加湿能力(蒸気の放出量)を調節するためのものである。加湿調節装置45は、第一湿度情報取得手段としての第一湿度センサ451、第二湿度情報取得手段としての第二湿度センサ452、入力湿度情報切換手段としての入力湿度情報切換部453、蒸気流路454、蒸気量調節手段としての流量制御弁455及び加湿制御手段としての加湿制御部456を備えている。
【0040】
両湿度センサ451,452は、空気湿度を計測し、計測湿度実測値を電気的信号として加湿制御部456側に送信する機能を有しており、例えば自身に内蔵された素子における抵抗値や静電容量値の変化に基づき湿度を計測する。第一湿度センサ451は、第一ダクト41に介在設置されており、加熱部432及び第一加湿部433aをこの順序で経た、第一ダクト41内の空気の湿度情報を取得するためのものである。第二湿度センサ452は、第二ダクト42に介在設置されており、加熱部432及び第二加湿部433bをこの順序で経た、第二ダクト42内の空気の湿度情報を取得するためのものである。
【0041】
入力湿度情報切換部453は、第一湿度センサ451及び第二湿度センサ452から信号が入力されるように構成されており、両湿度センサ451,452のうちの一方からの信号を加湿制御部456へと選択的に送るためのものである。すなわち、入力湿度情報切換部453は、加湿制御部456へと入力される温度情報を、第一湿度センサ451により取得されたもの又は第二湿度センサ452により取得されたものに切換えるためのものである。入力湿度情報切換部453は、前記入力温度情報切換部443と同様に、例えばデータセレクタ素子などにより構成されており、モード切換装置47によってその動作が制御されるようになっている。
【0042】
蒸気流路454は、上述した蒸気の供給源から加湿部433(第一加湿部433a及び第二加湿部433b)に対する蒸気の供給路を構成する。蒸気流路454は、共通蒸気流路454cと、それぞれ共通蒸気流路454cの最下流部に連なる分岐形成された第一蒸気流路454a及び第二蒸気流路454bとを備えている。第一蒸気流路454aは、第一加湿部433aに接続されており、第一加湿部433aに対する蒸気供給を担う。第二蒸気流路454bは、第二加湿部433bに接続されており、第二加湿部433bに対する蒸気供給を担う。被試験空調機7の能力試験時には、後述する第一蒸気流路開閉弁461及び第二蒸気流路開閉弁462における開閉状態がそれぞれ制御されることで、両蒸気流路454a,454bのうちの一方のみを通って、両加湿部433a,433bのうちの一方のみへと蒸気が供給される。
【0043】
流量制御弁455は、共通蒸気流路454cに設置されており、共通蒸気流路454cの開度を調節することで、第一加湿部433a及び第二加湿部433bに対する蒸気の供給量を調節するためのものである。本実施形態では、流量制御弁455によって両加湿部433a,433bに対する蒸気の供給量が一律に調節・変更されることとなる。
【0044】
加湿制御部456は、加熱制御部445と同様に、例えばCPUや各種情報を記憶するROM、RAM等を備えたコンピュータシステムにより構成されている。尚、加熱制御部445及び加湿制御部456を1のコンピュータシステムにより構成してもよい。加湿制御部456は、入力湿度情報切換部453を経て第一湿度センサ451からの信号(第一湿度センサ451により取得された湿度情報)又は第二湿度センサ452からの信号(第二湿度センサ452により取得された湿度情報)が計測湿度値として入力され、この計測湿度値と設定湿度値との偏差に基づき、例えばPID制御回路により演算された出力値に応じて、流量制御弁455を調節することで、加湿部433(第一加湿部433a及び第二加湿部433b)における加湿能力を制御する。
【0045】
加湿位置切換部46は、第一加湿部433a及び第二加湿部433bのうちの一方によって空気の加湿が行われるように、前記加湿動作の実行対象を第一加湿部433a又は第二加湿部433bに切換えるためのものである。加湿位置切換部46は、第一蒸気流路開閉弁461及び第二蒸気流路開閉弁462を備えている。
【0046】
第一蒸気流路開閉弁461は、第一蒸気流路454aに設置されており、第一蒸気流路454aにおける開閉状態(すなわち第一加湿部433aにて加湿動作を行うか否か)を切換えるためのものである。第二蒸気流路開閉弁462は、第二蒸気流路454bに設置されており、第二蒸気流路454bにおける開閉状態(すなわち、第二加湿部433bにて加湿動作を行うか否か)を切換えるためのものである。両開閉弁461,462を調節することで、流量制御弁455により供給量の調節された蒸気の供給対象が、第一加湿部433a及び第二加湿部433bのうちの一方に切換えられることとなる。尚、加湿位置切換部46(第一蒸気流路開閉弁461及び第二蒸気流路開閉弁462)は、モード切換装置47によってその動作が制御されるようになっている。
【0047】
モード切換装置47は、変位可能(例えば回動可能)に構成された所定の操作部471(例えば操作用のツマミ等)を有しており、該操作部471に対する操作に従い、加湿位置切換部46、入力温度情報切換部443及び入力湿度情報切換部453の動作を制御するように構成されている。操作部471は、所定の第一位置と該第一位置と異なる所定の第二位置とに配置可能とされている。
【0048】
操作部471が前記第一位置に配置されると、モード切換装置47によって、空調機試験装置4の動作モードが第一モードとなるように、加湿位置切換部46、入力温度情報切換部443及び入力湿度情報切換部453のそれぞれにおける動作が一括して制御される。第一モードでは、蒸気の供給対象が第一加湿部433aとなり、第一温度センサ441により取得された温度情報が加熱制御部445に入力され、かつ、第一湿度センサ451により取得された湿度情報が加湿制御部456に入力される状態となる。すなわち、動作モードとして第一モードが選択されると、モード切換装置47によって、第一蒸気流路454aが開状態となり第二蒸気流路454bが閉状態となるように加湿位置切換部46(前記両開閉弁461,462)が制御され、第一温度センサ441からの信号(第一温度センサ441により取得された温度情報)が加熱制御部445へと入力されるように入力温度情報切換部443が制御され、さらに、第一湿度センサ451からの信号(第一湿度センサ451により取得された湿度情報)が加湿制御部456へと入力されるように入力湿度情報切換部453が制御される。
【0049】
また、第一モードにおいては、加熱制御部445により、第一温度センサ441からの信号に基づき加熱部432の加熱能力(出力)が制御され、加湿制御部456により、第一湿度センサ451からの信号に基づき、加湿部433(特に第一加湿部433a)の加湿能力が制御される。第一モードは、被試験空調機7の能力試験時において、加熱部432から第一加湿部433a側へと空気が流れるように両ダクト41,42を配設する場合に利用される。
【0050】
一方、操作部471が前記第二位置に配置されると、モード切換装置47によって、空調機試験装置4の動作モードが第二モードとなるように、各切換部46,443,453のそれぞれにおける動作が一括して制御される。第二モードでは、蒸気の供給対象が第二加湿部433bとなり、第二温度センサ442により取得された温度情報が加熱制御部445に入力され、かつ、第二湿度センサ452により取得された湿度情報が加湿制御部456に入力される状態となる。すなわち、動作モードとして第二モードが選択されると、モード切換装置47によって、第一蒸気流路454aが閉状態となり第二蒸気流路454bが開状態となるように加湿位置切換部46(前記両開閉弁461,462)が制御され、第二温度センサ442からの信号が加熱制御部445へと入力されるように入力温度情報切換部443が制御され、さらに、第二湿度センサ452からの信号が加湿制御部456へと入力されるように入力湿度情報切換部453が制御される。
【0051】
また、第二モードにおいては、加熱制御部445により、第二温度センサ442からの信号に基づき加熱部432の加熱能力(出力)が制御され、加湿制御部456により、第二湿度センサ452からの信号に基づき、加湿部433(特に第二加湿部433b)の加湿能力が制御される。第二モードは、被試験空調機7の能力試験時において、加熱部432から第二加湿部433b側へと空気が流れるように両ダクト41,42を配設する場合に利用される。
【0052】
本実施形態では、両ダクト41,42を無理な姿勢とすることなく吹出口73a及び吸込口74aに対応して配置したときに、加熱部432から第二加湿部433b側へと空気が流れることとなる。そのため、被試験空調機7の能力試験時には、第二モードが選択されて利用される。尚、両ダクト41,42を無理な姿勢とすることなく吹出口73a及び吸込口74aに対応して配置したときに、加熱部432から第一加湿部433a側へと空気が流れる場合には、第一モードを選択して利用すればよい。
【0053】
以上詳述したように、本実施形態によれば、空気流路431aにおける空気の流れ方向が正方向であっても逆方向であっても、両加湿部433a,433bのうち空気の流れ方向に沿って加熱部432よりも下流に位置するものが加湿動作を行うように設定することで、加熱部432により加熱された後の空気を加湿することができる。そのため、第一ダクト41及び第二ダクト42を吹出口73a及び吸込口74aのどちらに対応して配設してもよいこととなり、両ダクト41,42を交差状態などの無理な姿勢で配設しなくて済む。その結果、両ダクト41,42の配設に関する利便性を高めることができ、試験に係る作業性を向上させることができる。
【0054】
また、1の流量制御弁455によって、第一加湿部433aへと供給される蒸気量及び第二加湿部433bへと供給される蒸気量の双方を調節することができる。従って、装置の複雑化をより確実に防止することができ、コストの低減やメンテナンスの容易性向上を図ることができる。
【0055】
さらに、モード切換装置47(操作部471)に対する切換操作を行うことで、空調機試験装置4における動作モードが空気流路における空気の流れ方向に対応した適切なモードとなるように、加湿位置切換部46、入力温度情報切換部443及び入力湿度情報切換部453を一括して制御することができる。つまり、加熱後の空気に加湿が行われるとともに、加熱及び加湿後の空気に関する温度情報及び湿度情報が取得されるモードとなるように、各切換部46,443,453を一括して制御することができる。そのため、試験に係る作業性を一層向上させることができる。
【0056】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0057】
(a)上記実施形態では、1の試験室2に室外機ユニット71及び室内機ユニット72の双方が配置されるようになっているが、隣接する2の試験室のうちの一方に室外機ユニット71を配置し、前記2の試験室のうちの他方に室内機ユニット72を配置することとしてもよい。この場合、各試験室間における伝熱や通気を防止可能に構成することで、各ユニット71,72に係る動作環境条件をより厳密に異なるものに設定することが容易となる。尚、このように各ユニット71,72を別々の試験室に配置する場合には、被試験空調機7の向きを変更することがより難しくなるため、上記実施形態に係る空調機試験装置4が好適に用いられる。
【0058】
(b)空気流路431a、第一ダクト41及び第二ダクト42のうちの少なくとも1つにおける空気の流れ方向(風向き)を計測可能な風向計測手段(例えば風向計など)と、該風向計測手段により計測された空気の流れ方向に基づき、第一加湿部433a及び第二加湿部433bのうち空気の流れ方向に沿って加熱部432よりも下流に位置するものが加湿動作の対象となっているか否かを判定する加湿位置正否判定手段とを備えることとしてもよい。この場合には、加湿位置正否判定手段による判定結果に基づき、加熱部432よりも下流の位置にて空気の加湿が行われているか否か(加湿位置が正しいか否か)を容易に把握することができる。
【0059】
尚、風向計測手段及び加湿位置正否判定手段に加え、加湿位置正否判定手段による判定結果に基づき加湿位置切換部46を制御することで、加湿動作の実行対象を第一加湿部433a及び第二加湿部433bのうちの一方から他方へと切換可能な加湿位置訂正手段を備えることとしてもよい。この場合には、仮に加熱部432の上流にて空気の加湿が行われるような誤った状態になっていたとしても、加熱部432よりも下流の位置にて空気の加湿が行われるように自動的に加湿動作の対象を切換えることができる。そのため、試験に係る利便性をより高めることができる。
【0060】
(c)上記実施形態において、被試験空調機7は、能力試験時において吹出口ボックス73及び吸込口ボックス74を備えており、これらボックス73,74は気密に吹出口73a及び吸込口74aを包囲して試験用両ダクト41,42とやり取りする空気が漏れないように設けられているが、吹出口73a及び吸込口74aを必ずしもボックス73,74に設ける必要はない。従って、例えば、被試験空調機7の本体外面に形成された開口によって、吹出口73aや吸込口74aが構成されていてもよい。
【0061】
(d)上記実施形態では、被試験空調機7として、鉄道車両(新幹線など)に使用することを目的とした空調機の製品などを挙げているが、被試験空調機7は、鉄道車両以外のもの(例えば大型の施設や船舶など)に使用することを目的とした空調機の製品などであってもよい。
【0062】
(e)上記実施形態では、空調機試験装置4を室内機側の試験装置として用い、被試験空調機7の室内機ユニット72と空調機試験装置4とを接続することを想定しているが、空調機試験装置4を室外機側の試験装置として用い、被試験空調機7の室外機ユニット71を試験対象として、冬季の外気条件を再現して能力試験することとしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
4…空調機試験装置、7…被試験空調機、41…第一ダクト、42…第二ダクト、43…装置本体、46…加湿位置切換部(加湿位置切換手段)、47…モード切換装置(モード切換手段)、73a…吹出口、74a…吸込口、431a…空気流路、432…加熱部(加熱手段)、433…加湿部(加湿手段)、433a…第一加湿部(第一加湿手段)、433b…第二加湿部(第二加湿手段)、441…第一温度センサ(第一温度情報取得手段)、442…第二温度センサ(第二温度情報取得手段)、443…入力温度情報切換部(入力温度情報切換手段)、445…加熱制御部(加熱制御手段)、451…第一湿度センサ(第一湿度情報取得手段)、452…第二湿度センサ(第二湿度情報取得手段)、453…入力湿度情報切換部(入力湿度情報切換手段)、454…蒸気量調節部(蒸気量調節手段)、456…加湿制御部(加湿制御手段)。