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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】カバー部材、及び部材の加工方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/20 20180101AFI20220920BHJP
   B05D 1/32 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
B05B12/20
B05D1/32 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017060441
(22)【出願日】2017-03-27
(65)【公開番号】P2018161621
(43)【公開日】2018-10-18
【審査請求日】2020-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】川南 和洋
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-115068(JP,A)
【文献】登録実用新案第3114801(JP,U)
【文献】特開2002-116339(JP,A)
【文献】特開平05-116971(JP,A)
【文献】特開2002-001176(JP,A)
【文献】WAKI ワイドフェルトキャップ特集,2010年04月30日,http://www.rakuten.ne.jp/gold/japan-ds/feature/isu-cover.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B12/00-12/14
13/00-13/06
B05D 1/00- 7/26
B44C 1/16- 1/175
B65C 1/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理又は塗装を含む加工が施されることを防止するために、切断平面における外周面の連続形状が多角形である部材の部分に装着され、前記部材の部分の外周面を覆うカバー部材であって、
前記部材の部分の外周面全体に接する内周面と、
前記内周面の形状を保持する外周部と、を備え、
前記内周面と前記外周部とを含む切断平面を想定したとき、
前記切断平面における前記内周面の連続形状は、前記部材の部分の切断平面における外周面の連続形状と同じであり、
前記切断平面における前記外周部の外周面の連続形状は、円状であることを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
前処理又は塗装を含む加工が施されることを防止するために、切断平面における外周面の連続形状が多角形である部材の部分に装着され、前記部材の部分の外周面を覆うカバー部材であって、
前記部材の部分の外周面全体に接する内周面と、
前記内周面の形状を保持する外周部と、を備え、
前記内周面と前記外周部とを含む切断平面を想定したとき、
前記切断平面における前記内周面の連続形状は、前記部材の部分の切断平面における外周面の連続形状と同じであり、
前記切断平面における前記外周部の外周面の連続形状は、前記外周部が外側から荷重を受けたときの応力を分散させる形状であり、かつ楕円状および多角形状のいずれかであることを特徴とするカバー部材。
【請求項3】
前記外周部の外周面には、前記外周部の外周面に沿った形状の固定部材が固定される固定部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のカバー部材。
【請求項4】
前記外周部と連続する蓋部を更に備えることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のカバー部材。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のカバー部材を用いた、部材の加工方法であって、
前記カバー部材で前記部材の外周面を覆った状態で、前記部材の前処理又は塗装を行うことを特徴とする部材の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー部材、及び部材の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柱等の部材を、塗料が貯められた塗装用プール(以下単に「プール」ともいう。)に沈めて塗装する技術において、部材の一部は塗装したくない場合がある。従来、部材の表面を覆うカバー部材において、例えば特許文献1、2に開示されたものがある。
例えば、特許文献1は、H形鋼における水平鋼、垂直鋼を覆うマスキング用具の断面形状を、コ字状としたものである。特許文献1において、H形鋼とマスキング用具との密着度合は十分ではないと見受けられる。さらに、クリップでマスキング用具とH形鋼を固定することが考えられるが、手間がかかる。
特許文献2は、マースキングキャップの構造を、被マースキング部品の細径となる傾斜円錐部に対応して係止凹部を穿設して抜け止めがなされる構造としたものである。マースキングキャップの内周形状と外周形状とは、円状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平2-121162号公報
【文献】実開平7-3751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、部材の表面とカバー部材の内周面との間に隙間が生じてしまい、部材の表面が塗装されてしまう可能性があった。
【0005】
そこで本発明は、部材の表面に塗装等の加工が施されてしまうことを確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の一態様は、前処理又は塗装を含む加工が施されることを防止するために、切断平面における外周面の連続形状が多角形である部材の部分に装着され、前記部材の部分の外周面を覆うカバー部材であって、前記部材の部分の外周面全体に接する内周面と、前記内周面の形状を保持する外周部と、を備え、前記内周面と前記外周部とを含む切断平面を想定したとき、前記切断平面における前記内周面の連続形状は、前記部材の部分の切断平面における外周面の連続形状と同じであり、前記切断平面における前記外周部の外周面の連続形状は、円状であることを特徴とする。
本発明の一態様は、前処理又は塗装を含む加工が施されることを防止するために、切断平面における外周面の連続形状が多角形である部材の部分に装着され、前記部材の部分の外周面を覆うカバー部材であって、前記部材の部分の外周面全体に接する内周面と、前記内周面の形状を保持する外周部と、を備え、前記内周面と前記外周部とを含む切断平面を想定したとき、前記切断平面における前記内周面の連続形状は、前記部材の部分の切断平面における外周面の連続形状と同じであり、前記切断平面における前記外周部の外周面の連続形状は、前記外周部が外側から荷重を受けたときの応力を分散させる形状であり、かつ楕円状および多角形状のいずれかであることを特徴とする。
本発明の一態様は、前記外周部の外周面には、前記外周部の外周面に沿った形状の固定部材が固定される固定部が設けられていることを特徴とする。
本発明の一態様は、前記外周部と連続する蓋部を更に備えることを特徴とする。
本発明の一態様は、前記切断平面における前記内周面の連続形状は、矩形状であることを特徴とする。
本発明の一態様は、前記カバー部材を用いた、部材の加工方法であって、前記カバー部材で前記部材の外周面を覆った状態で、前記部材の前処理又は塗装を行うことを特徴とする。
なお、本願明細書に記載の「部材の表面」は、請求項に記載の「部材の部分の外周面」を含む(以下同じ)。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、切断平面における外周部の外周面の連続形状が円状であることで、外周部が外側から締め付けられた場合、外周部の周方向に均等に力がかかるため、部材の表面とカバー部材の内周面とを密着させることができる。したがって、部材の表面に塗装等の加工が施されてしまうことを確実に防止することができる。なお、加工には、部材の洗浄処理、エッチング処理等の前処理が含まれる。加えて、切断平面における外周部の内周面の連続形状が円状ではなく、切断平面における外周部の外周面の連続形状が円状であることで、部材の外周形状が円状以外の場合に広く適用することができる。加えて、部材の表面をマスキングテープで覆う場合と比較して、マスキングテープを巻回したり、塗装後に剥がしたりする手間がかからないため、作業性を向上することができる。また、作業者の技量に影響しないため、好適である。加えて、カバー部材をクリップで固定する場合と比較して、手間がかからないため、作業性を向上することができる。
本発明の一態様によれば、カバー部材の外周面には前記外周面に沿った形状の固定部材が固定される固定部が設けられていることで、前記固定部に前記固定部材を固定した場合に外周部の周方向全体にわたって均等に力をかけることができるため、部材の表面とカバー部材の内周面との密着性を高めることができる。したがって、部材の表面に塗装等の加工が施されてしまうことをより確実に防止することができる。
本発明の一態様によれば、部材の表面を覆う蓋部を更に備えることで、部材をプールに沈めた場合に、部材の内側に塗料が入り込むことを阻止することができる。
本発明の一態様によれば、切断平面における内周面の連続形状が矩形状であることで、以下の効果を奏する。ところで、矩形筒状の柱部材を、矩形枠状の溝部を有するカバー部材で覆い、柱部材とカバー部材との密着部分をクリップで固定する構造がある。しかし、クリップで固定していない部分においては、柱部材の表面とカバー部材の内周面との間に隙間が生じてしまい、柱部材の表面に塗装等の加工が施されてしまう可能性がある。これに対し、本発明の一態様によれば、切断平面における内周面の連続形状が矩形状であっても、切断平面における外周部の外周面の連続形状が円状であることで、外周部が外側から締め付けられた場合、外周部の周方向に均等に力がかかるため、部材の表面とカバー部材の内周面とを密着させることができる。したがって、部材の表面に塗装等の加工が施されてしまうことを確実に防止することができる。すなわち、切断平面における内周面の連続形状が矩形状である場合は、切断平面における内周面の連続形状が円状である場合と比較して、部材の表面とカバー部材の内周面とを密着させることが困難であるため、部材の表面に塗装等の加工が施されてしまうことを確実に防止する上で実益が大きい。
本発明の一態様によれば、切断平面における外周部の外周面の連続形状が外側から荷重を受けたときの応力を分散させる形状であることで、外周部が外側から締め付けられた場合、外周部の局所に応力が集中しないため、部材の表面とカバー部材の内周面とを密着させることができる。したがって、部材の表面に塗装等の加工が施されてしまうことを確実に防止することができる。加えて、切断平面における外周部の内周面の連続形状が円状ではなく、切断平面における外周部の外周面の連続形状が外側から荷重を受けたときの応力を分散させる形状であることで、部材の外周形状が円状以外の場合に広く適用することができる。
本発明の一態様によれば、上記カバー部材で部材の表面を覆った状態で部材の前処理又は塗装を行うことで、部材の表面が前処理又は塗装されてしまうことを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るカバー部材及び固定部材の分解斜視図である。
図2】実施形態に係るカバー部材を柱部材に組付けた状態を示す斜視図である。
図3】実施形態に係るカバー部材の平面図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5】実施形態の第一変形例に係るカバー部材の図4に相当する断面図である。
図6】実施形態の第二変形例に係るカバー部材の平面図である。
図7図6のVII-VII断面図である。
図8】実施形態の第三変形例に係るカバー部材の図4に相当する断面図である。
図9】実施形態の塗装忌避部の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明では、本発明のカバー部材を、鉄骨部材を構成する柱部材に適用した例を挙げて説明する。ここで、柱部材は、請求項に記載の「部材」に相当する。
【0010】
<柱部材>
図1に示すように、柱部材2は、一方向に長手を有する矩形筒状をなしている。本実施形態のカバー部材1が適用されることによって、柱部材2の外面には、錆止め用の塗装が施される部分20(以下「塗装部20」ともいう。)と、前記塗装が施されない部分21(以下「塗装忌避部21」ともいう。)と、が設けられている。塗装忌避部21は、柱部材2の長手方向の端部に設けられている。図中において、符号2cは柱部材2の中心軸線(以下「柱軸線」ともいう。)、符号2sは柱部材2の内部空間をそれぞれ示す。
【0011】
<カバー部材>
図2に示すように、カバー部材1は、柱部材2の塗装忌避部21(図1参照)を覆っている。図3に示すように、カバー部材1は、塗装忌避部21の外周面21f(図1参照)に接する内周面11と、内周面11の形状を保持する外周部12と、外周部12に連なる蓋部13と、を備えている。ここで、塗装忌避部21の外周面21f(図1参照)は、請求項に記載の「部材の部分の外周面」に相当する。図2に示すように、外周部12の外周面12f(以下「カバー側外周面12f」ともいう。)には、外周部12を外側から固定する固定部材3が設けられている。
【0012】
カバー部材1は、ゴム等の弾性部材で形成されている。実施形態において、カバー部材1の材料は、シリコン樹脂である。
【0013】
柱軸線2cに沿う方向から見て、カバー部材1の外形は、円状をなしている。実施形態において、カバー部材1の外形は、実質的に真円である。図中において、符号1cはカバー部材1の中心軸線(以下「カバー軸線」ともいう。)を示す。実施形態において、カバー軸線1cは、柱軸線2cと一致している。以下、カバー軸線1cに平行な方向を「軸線方向」、カバー軸線1cと直交する方向を「径方向」、カバー軸線1cの回りの方向を「周方向」ともいう。
【0014】
図3に示すように、カバー部材1は、円柱状をなす本体部10の軸線方向一側の径方向中央部に、角丸を有する矩形状(角丸四角形)の凹部10aが形成されたものである(図4参照)。ここで、カバー部材1において、内周面11と外周部12とを含む切断平面を想定する。切断平面は、カバー軸線1cと直交する仮想平面でカバー部材1を切断した面である。切断平面におけるカバー部材1の形状は、図3に示すカバー部材1の平面視形状に相当する。
【0015】
図3に示すように、切断平面におけるカバー部材1の内周面11の連続形状(以下「内周面形状」ともいう。)は、円状ではない。実施形態において、内周面形状は、角丸を有する矩形状(角丸四角形)をなしている。言い換えると、内周面形状は、正方形の4つの角部を、径方向外方に凸の湾曲形状とした形状をなしている。内周面形状は、塗装忌避部21の外周面21f(図1参照)の形状と実質的に同じである。
【0016】
切断平面におけるカバー部材1の外周面12fの連続形状(以下「外周面形状」ともいう。)は、円状である。実施形態において、外周面形状は、実質的に真円である。外周面形状の直径1dは、内周面形状の最大幅1wよりも大きい。ここで、内周面形状の最大幅1wは、対角に位置する2つの角部を結んだ直線の長さを意味する。
【0017】
外周部12は、塗装忌避部21の角部25(図1参照)を径方向外方から保持する角保持部15と、塗装忌避部21の辺部26(図1参照)を径方向外方から保持する辺保持部16と、を備えている。
【0018】
図1に示すように、角保持部15は、塗装忌避部21の4つの角部25に対応して4つ設けられている。角保持部15の厚みは、固定部材3の締付け圧に耐え得る厚みとされている。すなわち、角保持部15の厚みは、固定部材3の締付けによって割れ等が生じないように厚くされている。ここで、角保持部15の厚みは、径方向における角保持部15の長さである。角保持部15の厚みは、内周面形状の最大幅1wの延長線上において最小となっている。図3において符号15tは、角保持部15の最小厚みを示している。
【0019】
加えて、角保持部15の厚みは、図2に示すカバー部材1の組付状態において複数本の柱部材2をプールに沈める場合に、柱部材2の本数を最大限確保し得る厚みとされている。すなわち、角保持部15の厚みは、図2に示すカバー部材1の組付状態において、隣接する2つの柱部材2の間隔を可及的に小さくし得るように薄くされている。
【0020】
図1に示すように、辺保持部16は、塗装忌避部21の4つの辺部26に対応して4つ設けられている。図3に示すように、辺保持部16の厚みは、周方向全体において角保持部15よりも厚い。ここで、辺保持部16の厚みは、径方向における辺保持部16の長さである。辺保持部16の厚みは、周方向における辺保持部16の中央部において最大となっている。周方向における辺保持部16の中央部は、塗装忌避部21の辺部26(図1参照)の中点に対応する部分である。図3において符号16tは、辺保持部16の最大厚みを示している。
【0021】
図1に示すように、蓋部13は、軸線方向の外方から塗装忌避部21の端部を覆っている。蓋部13は、外周部12に連なっている。蓋部13と外周部12とは、同一の部材で一体に形成されている。実施形態において、蓋部13と外周部12とは、同一のシリコン樹脂で一体に形成されている。
【0022】
<固定部材>
図2に示すように、固定部材3は、カバー側外周面12fに沿う環状をなしている。具体的に、固定部材3は、カバー側外周面12fに沿う環状をなすバンド部30と、バンド部30をカバー側外周面12fに締め付ける締付部31と、を備えている。ここで、カバー側外周面12fのうち固定部材3(バンド部30)が固定される部分は、請求項に記載の「固定部」に相当する。
【0023】
例えば、固定部材3は、ホースクランプである。バンド部30は、金属製のベルトである。締付部31は、バンド部30の両端部に連結されている。図2に示すカバー部材1の組付状態において、締付部31は、辺保持部16の外周面16fに設けられている。具体的に、締付部31は、辺保持部16の外周面16fの周方向中央部に設けられている。これにより、辺保持部16の厚肉部(図3に示す最大厚み16tを含む部分)において、締付部31の径方向内方への移動が十分に許容されている。
【0024】
図1に示すように、締付部31は、ボルト32と、ボルト32を回動自在に支持するとともに、バンド部30の両端部に連結される連結部33と、を備えている。例えば、ボルト32を時計回りに回動させることで、バンド部30によって径方向外方から外周部12を締め付け可能とされている。
【0025】
<柱部材の加工方法>
次に、柱部材2の加工方法の一例について説明する。
柱部材2の加工方法は、カバー部材11で柱部材2の塗装忌避部21を覆った状態で行う。
柱部材2の加工方法は、柱部材2を塗装する前の前処理工程と、柱部材2を塗装する塗装工程と、塗装後の柱部材2を乾燥する乾燥工程と、を含む。
【0026】
まず、カバー部材1で塗装忌避部21を覆った状態で、柱部材2の前処理を行う。すなわち、カバー部材1が組み付けられた柱部材2(以下「カバー部材組付体5」ともいう。図2参照)に対して前処理を行う。前処理には、柱部材2の脱油、水洗等を行う洗浄処理と、洗浄処理後に柱部材2の表面をあらすエッチング処理と、が含まれる。
【0027】
次に、柱部材2を塗装する。例えば、カバー部材組付体5をプールに沈めて塗装する。例えば、複数本のカバー部材組付体5をまとめてプールに浸漬させる。実施形態において、前記塗装は、電着塗装である。
【0028】
その後、塗装後の柱部材2を乾燥する。例えば、複数本のカバー部材組付体5を、高温ガス(常温よりも高温のガス)の雰囲気中を移動するライン上に流す。
そして、乾燥後にカバー部材1を柱部材2から取り外すことにより、塗装忌避部21が塗装されていない柱部材2を得ることができる。すなわち、塗装部20のみが塗装された柱部材2を得ることができる。
【0029】
以上説明したように、上記実施形態は、塗装忌避部21の外周面21fを覆うカバー部材1であって、塗装忌避部21の外周面21fに接する内周面11と、内周面11の形状を保持する外周部12と、を備え、内周面11と外周部12とを含む切断平面を想定したとき、内周面形状は円状ではなく、外周面形状は円状である。
この構成によれば、カバー部材1の外周面形状が円状であることで、外周部12が外側から締め付けられた場合、外周部12の周方向に均等に力がかかるため、塗装忌避部21の外周面21fとカバー部材1の内周面11とを密着させることができる。したがって、塗装忌避部21の外周面21fに塗装等の加工が施されてしまうことを確実に防止することができる。なお、加工には、柱部材2の洗浄処理、エッチング処理等の前処理が含まれる。加えて、内周面形状が円状ではなく、外周面形状が円状であることで、柱部材2の外周形状が円状以外の場合に広く適用することができる。
加えて、塗装忌避部21の外周面21fに付着した塗膜をグラインダー等で削る必要がないため、作業効率を向上することができる。
加えて、塗装忌避部21の外周面21fをマスキングテープで覆う場合と比較して、マスキングテープを巻回したり、塗装後に剥がしたりする手間がかからないため、作業性を向上することができる。また、作業者の技量に影響しないため、好適である。
加えて、カバー部材をクリップで固定する場合と比較して、手間がかからないため、作業性を向上することができる。
ところで、建物の構造躯体を構築する鉄骨部材は、錆等による局所的な強度劣化を確実に防止する必要がある。このため、鉄骨部材の表面には、錆止め用の塗装が施される。このような塗装は、鉄骨部材の表面全体に施す必要がある。例えば、2つの鉄骨部材を溶接する場合、それぞれの溶接部に塗装が施されていると、2つの鉄骨部材を溶接できないことがある。これに対し、この構成によれば、鉄骨部材の溶接部(塗装忌避部21)が塗装されてしまうことを確実に防止することができるため、2つの鉄骨部材を溶接することができる。
【0030】
また、上記実施形態では、カバー側外周面12fにはカバー側外周面12fに沿った形状の固定部材3が固定される固定部が設けられていることで、前記固定部に固定部材3を固定した場合に外周部12の周方向全体にわたって均等に力をかけることができるため、塗装忌避部21の外周面21fとカバー部材1の内周面11との密着性を高めることができる。したがって、塗装忌避部21の外周面21fに塗装等の加工が施されてしまうことをより確実に防止することができる。
【0031】
また、上記実施形態では、柱部材2の表面を覆う蓋部13を更に備えることで、カバー部材組付体5をプールに沈めた場合に、柱部材2の内側(内部空間2s)に塗料が入り込むことを阻止することができる。
【0032】
また、上記実施形態では、カバー部材1の材料がシリコン樹脂であることで、カバー部材1の材料がフッ素ゴムである場合と比較して、加工性に優れる。加えて、カバー部材1の材料がウレタンゴムである場合と比較して、耐熱性に優れる。加えて、カバー部材1の材料がウレタンゴムである場合と比較して、耐薬品性(具体的には、有機酸、高濃度アルカリ及び低濃度アルカリに対する耐性)に優れる。
【0033】
また、上記実施形態では、内周面形状が矩形状であることで、以下の効果を奏する。ところで、矩形筒状の柱部材を、矩形枠状の溝部を有するカバー部材で覆い、柱部材とカバー部材との密着部分をクリップで固定する構造がある。しかし、クリップで固定していない部分においては、柱部材の表面とカバー部材の内周面との間に隙間が生じてしまい、柱部材の表面に塗装等の加工が施されてしまう可能性がある。これに対し、この構成によれば、内周面形状が矩形状であっても、外周面形状が円状であることで、外周部12が外側から締め付けられた場合、外周部12の周方向に均等に力がかかるため、塗装忌避部21の外周面21fとカバー部材1の内周面11とを密着させることができる。したがって、塗装忌避部21の外周面21fに塗装等の加工が施されてしまうことを確実に防止することができる。すなわち、内周面形状が矩形状である場合は、内周面形状が円状である場合と比較して、塗装忌避部21の外周面21fとカバー部材1の内周面11とを密着させることが困難であるため、塗装忌避部21の外周面21fに塗装等の加工が施されてしまうことを確実に防止する上で実益が大きい。
【0034】
また、上記実施形態では、締付部31が辺保持部16の外周面16fに設けられていることで、角保持部15よりも厚い辺保持部16によって締付部31を受けることができるため、角保持部15の耐久性を保つことができる。
【0035】
また、上記実施形態では、角保持部15の厚みは、カバー部材1の組付状態において、隣接する2つの柱部材2の間隔が小さくなるように薄くされていることで、複数本の柱部材2をプールに沈める場合に、柱部材2の本数を最大限確保することができる。また、複数本の柱部材2(カバー部材組付体5)の仮置きスペースを可及的に小さくすることができる。
【0036】
また、上記実施形態では、上記カバー部材1で塗装忌避部21の外周面21fを覆った状態で柱部材2の前処理及び塗装を行うことで、塗装忌避部21の外周面21fが前処理されたり塗装されたりしてしまうことを確実に防止することができる。
【0037】
<変形例>
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、以下の説明においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
上記実施形態では、カバー部材1の外周面形状が実質的に真円である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、外周面形状は、楕円又は正24角形等の多角形であってもよい。すなわち、外周面形状は、外周部12が外側から荷重を受けたときの応力を分散させる形状であればよい。これにより、外周部12が外側から締め付けられた場合、外周部12の局所に応力が集中しないため、塗装忌避部21の外周面21fとカバー部材1の内周面11とを密着させることができる。したがって、塗装忌避部21の外周面21fに塗装等の加工が施されてしまうことを確実に防止することができる。例えば、外周面形状は、外周部12が外側から荷重を受けたときの応力を塗装忌避部21の外周面21fに対して周方向に均等に分散させる形状であることが好ましい。
【0038】
また、上記実施形態では、カバー部材1の内周面形状が矩形状である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、内周面形状は、三角形、五角形、菱形、台形などの多角形であってもよい。すなわち、内周面形状は、円状でない形状であればよい。または、内周面形状は、外周面形状と異なっていればよい。
【0039】
また、上記実施形態では、カバー部材1が柱部材2を覆う蓋部13を備えた例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、カバー部材1は蓋部13を備えていなくてもよい。例えば、図5に示すように、カバー部材101は、円柱状をなす本体部10の径方向中央部を軸線方向に開口する矩形状(角丸四角形)の開口部10hが形成されたものであってもよい。
または、図6に示すように、カバー部材201は、円柱状をなす本体部10の径方向中央部を軸線方向に開口する矩形状(角丸四角形)の開口部10iが形成されるとともに、開口部10iの径方向外側において矩形枠状の凹部10mが形成されたものであってもよい。言い換えると、図7に示すように、カバー部材201は、外周部12の軸線方向における端部から径方向内方に延出した後に軸線方向内方に屈曲して延びて塗装忌避部21(図1参照)を径方向内方から保持する延出部14を更に備えていてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、蓋部13が外周部12に連なっている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、蓋部13は、外周部12に連なっていなくてもよく、外周部12と別体であってもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、カバー側外周面12fに固定部材3が設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、図8に示すように、カバー側外周面12fに環状のガイド溝12mが形成され、ガイド溝12mに固定部材3(図1参照)が設けられていてもよい。これにより、固定部材3が軸線方向にずれることを抑制することができるため、固定部材3によってカバー部材301を安定して固定することができる。
【0042】
また、上記実施形態では、カバー部材の材料がシリコン樹脂である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、カバー部材の材料は、天然ゴム、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロブレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等の他の材料であってもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、塗装が電着塗装のような浸漬塗装である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、塗装はスプレー塗装等の他の塗装であってもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、固定部材3がホースクランプである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、固定部材3は、結束バンド、輪ゴム又は環状のバネであってもよい。すなわち、固定部材3は、カバー側外周面12fに沿う環状をなしていればよい。
【0045】
また、上記実施形態では、柱部材2が一方向に長手を有する矩形筒状をなしている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、柱部材2は矩形柱状をなしていてもよい。すなわち、柱部材2は中空構造ではなく中実構造であってもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、塗装忌避部21が柱部材2の長手方向の端部に設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、図9に示すように、塗装忌避部21は、柱部材2の一部から径方向外方に突出する突起部6に設けられていてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、カバー部材1を、鉄骨部材を構成する柱部材2に適用した例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、カバー部材1を、鉄骨部材以外の金属部材を構成する部材に適用してもよい。また、カバー部材1を、鉄骨の柱以外の様々な部材に適用してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、塗装忌避部21が、2つの鉄骨部材を溶接する場合の溶接部である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、塗装忌避部21は、2つの鉄骨部材の当接面同士をボルト等の締結具で締結する場合の締結部(接合部分)であってもよい。
【0049】
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1,101,201,301…カバー部材
1c…カバー軸線
1d…外周面形状の直径
1w…内周面形状の最大幅
2…柱部材(部材)
2c…柱軸線
2s…内部空間
3…固定部材
5…カバー部材組付体
6…突起部
10…本体部
10a…凹部
10h…開口部
10i…開口部
11…内周面
12…外周部
12f…カバー側外周面(外周部の外周面)
12m…ガイド溝
13…蓋部
14…延出部
15…角保持部
16…辺保持部
16f…辺保持部の外周面
16t…辺保持部の最大厚み
20…塗装部
21…塗装忌避部
21f…塗装忌避部の外周面(部材の表面)
25…角部
26…辺部
30…バンド部
31…締付部
32…ボルト
33…連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9