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特許7143067杭構造、杭構造の構築方法、および掘削撹拌装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】杭構造、杭構造の構築方法、および掘削撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20220920BHJP
   E02D 5/56 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D5/56
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017192029
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019065579
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀一
(72)【発明者】
【氏名】菅 将憲
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-108335(JP,A)
【文献】特開平09-268554(JP,A)
【文献】特開2014-066010(JP,A)
【文献】特開2003-321846(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0139739(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 5/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された基礎杭の地表側に柱状改良体を形成する杭構造の構築方法であって、
地表から前記基礎杭の長さより短い深さまで前記基礎杭の周囲の地盤を掘削するとともに、掘削により生成される土砂を地中で撹拌しつつ、セメント系固化剤を供給することにより、前記土砂と前記セメント系固化剤を混合して、前記基礎杭の周囲に前記柱状改良体を成形するものであり、
前記基礎杭は、鋼管の下部に先端翼が取付けられた鋼管杭であり、前記基礎杭は地盤に貫入しながら前記地中に埋設されるものであり、
前記柱状改良体となる前記地盤が掘削される範囲の直径は、前記先端翼の直径より大きく、
前記先端翼は、前記鋼管の直径よりも大きい直径を有し
地中に前記基礎杭を埋設したあと、前記柱状改良体の成形を行うことを特徴とする杭構造の構築方法。
【請求項2】
地中に埋設された基礎杭の地表側に柱状改良体を形成する杭構造の構築方法に用いる掘削撹拌装置であって、
前記掘削撹拌装置は、地表から前記基礎杭の長さより短い深さまで前記基礎杭の周囲の地盤を掘削するとともに、掘削により生成される土砂を地中で撹拌しつつ、セメント系固化剤を供給することにより、前記土砂と前記セメント系固化剤を混合して、前記基礎杭の周囲に前記柱状改良体を成形するものであり、
前記掘削撹拌装置は、前記基礎杭の杭頭部を覆い、掘削時および撹拌時に、前記基礎杭の軸線まわりに回転する円筒状のケーシングと、
前記ケーシングの外周面から、前記ケーシングの径方向に延在し、前記ケーシングに固着された掘削刃と、をえ、
前記ケーシングは、前記基礎杭の杭頭部を覆う内管と、前記内管との間に前記セメント系固化剤が流下する隙間が形成されるように、前記内管と同軸に配置された外管と、を備えた二重管式の円筒状のケーシングであり、
前記内管と前記外管と隙間の下端開口は封止されており、前記外管の外周には、前記隙間を流下する前記セメント系固化剤が吐出する吐出口が形成されていることを特徴とする掘削撹拌装置。
【請求項3】
地中に埋設された基礎杭の地表側に柱状改良体を形成する杭構造の構築方法に用いる掘削撹拌装置であって、
前記掘削撹拌装置は、地表から前記基礎杭の長さより短い深さまで前記基礎杭の周囲の地盤を掘削するとともに、掘削により生成される土砂を地中で撹拌しつつ、セメント系固化剤を供給することにより、前記土砂と前記セメント系固化剤を混合して、前記基礎杭の周囲に前記柱状改良体を成形するものであり、
前記掘削撹拌装置は、前記基礎杭の杭頭部を覆い、掘削時および撹拌時に、前記基礎杭の軸線まわりに回転する円筒状のケーシングと、
前記ケーシングの外周面から、前記ケーシングの径方向に延在し、前記ケーシングに固着された掘削刃と、をえ、
前記ケーシングは、前記基礎杭の前記杭頭部を覆った状態で、前記基礎杭の外周面との間に前記セメント系固化剤が流下する隙間が形成されるような内径を有しており、
前記ケーシングの下部の内周面には、前記基礎杭の外周面と前記ケーシングの内周面の間の隙間を流下したセメント系固化剤の漏れ出しを封止するリング材が設けられており、
前記ケーシングの外周には、前記隙間を流下する前記セメント系固化剤が吐出する吐出口が形成されていることを特徴とする掘削撹拌装置。
【請求項4】
前記掘削刃は、上下方向に間隔を空けて前記ケーシングに固着された上段掘削刃と下段掘削刃とを備えており、
前記上段掘削刃と前記下段掘削刃との間の位置に、前記吐出口が形成されていることを特徴とする請求項またはに記載の掘削撹拌装置。
【請求項5】
前記上段掘削刃と前記下段掘削刃との間において、前記ケーシングに対して回転自在に取り付けられた共回り防止翼が、前記ケーシングに取り付けられていることを特徴とする請求項に記載に記載の掘削撹拌装置。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか一項に記載の掘削撹拌装置を用いて、前記柱状改良体の成形を行う杭構造の構築方法であって、
前記地盤に前記基礎杭を貫入しながら前記柱状改良体の成形を行うことを特徴とする杭構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建造物で用いられる杭構造に係り、特に、基礎杭の周囲にセメント系固化剤で地盤改良した柱状改良体を備える杭構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の杭構造では、鋼管杭の先端部に、側方に張り出す掘削刃と、同じく側方に張り出す撹拌部と、が設けられた鋼管杭が用いられる。この杭構造を構築する際には、鋼管杭を回転させながら地中に打ち込んでいく過程で、セメントミルク(セメント系固化剤)と、掘削刃で削られた土砂とを撹拌部によって混合し、鋼管杭を地中に打ち込んだまま、杭鋼管の周囲のセメントミルクと土砂との混合物を固化させる。これにより、鋼管杭の全長にわたって、鋼管杭の周囲に、地盤改良された柱状改良体が成形される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-105747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記構築方法で成形された柱状改良体は、地表から鋼管杭の全長にわたって形成されているため、セメント系固化剤を多量に使用し、杭構造の構築時間も長くなるという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、構成が簡単で、セメント系固化剤の使用量を抑えつつ、より短い時間で構築できる杭構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明に係る杭構造は、地中に埋設された基礎杭と、前記基礎杭の周囲に形成された、土砂をセメント系固化剤で固めた柱状改良体とを備える杭構造であって、前記柱状改良体は、地表から前記基礎杭の長さより短い深さまで形成されていることを特徴とする。柱状改良体は、基礎杭が埋設された周囲の土砂を撹拌しつつ、セメントミルクなどの液状のセメント系固化剤と混合し、セメント系固化剤で土砂を固化して円柱状に形成したものである。
【0007】
本発明の杭構造では、例えば支持層まで到達した長い基礎杭に対して柱状改良体を地表から短い長さに形成している。このため、柱状改良体の下の部分は基礎杭だけが地中に埋設された状態となり、柱状改良体を成形するためのセメント系固化剤の量を大幅に削減することができる。これにより、杭構造の構築時間を大幅に短縮することができる。また、基礎杭により、杭構造の垂直支持力を確保し、基礎杭を地中に埋設する際に撹拌した土砂の表層部分の周囲を柱状改良体で補強するため、杭構造の水平抵抗力を大幅に向上することができる。
【0008】
ここで、基礎杭としては、金属製の杭やコンクリート製の杭等、適宜の杭を用いることができるが、より好ましい態様としては、前記基礎杭は、鋼管の下部に先端翼が取付けられた鋼管杭であり、前記柱状改良体の直径は、前記先端翼の直径より大きい。
【0009】
この態様によれば、先端翼で掘削して鋼管杭を地中に貫入させることができ、先端翼で
掘削された土砂の直径に対して柱状改良体の直径が大きくなるため、これまでのものに比べて杭構造の剛性が増し、水平抵抗力をさらに高めることができる。
【0010】
また、本発明に係る杭構造の構築方法は、地中に埋設された基礎杭の地表側に柱状改良体を形成する杭構造の構築方法であって、地表から前記基礎杭の長さより短い深さまで前記基礎杭の周囲の地盤を掘削するとともに、掘削により生成される土砂を地中で撹拌しつつ、セメント系固化剤を供給することにより、前記土砂と前記セメント系固化剤を混合して、前記基礎杭の周囲に前記柱状改良体を成形することを特徴とする。
【0011】
このように構成された杭構造の構築方法によれば、地表から基礎杭の長さより短い深さまで基礎杭の周囲の地盤を掘削するとともに、掘削により生成される土砂を地中で撹拌しつつ、これにセメント系固化剤を供給し、土砂とセメント系固化剤とを混合する。このため、これまでよりも少ないセメント系固化剤を用いることで、より短時間に、土砂をセメント系固化剤で固め、地表から基礎杭の長さより短い深さまで柱状改良体を成形することができる。
【0012】
前記のように構成された杭構造の構築方法において、地中に前記基礎杭を埋設したあと、前記柱状改良体の成形を行う。この構成によれば、あらかじめ地中に基礎杭を埋設し、この基礎杭の軸線に沿わせて、後述する掘削撹拌装置を旋回し、下降させ、基礎杭の周囲の地盤を掘削するとともに、掘削により地盤から生成される土砂を地中で撹拌することができる。この撹拌した土砂にセメント系固化剤を供給し、これらを混合したあと、セメント系固化剤を固化する。このようにして、予め埋設された基礎杭を基準として、柱状改良体を簡単に形成することができるため、杭構造を容易に構築することができる。
【0013】
また、前記の杭構造の構築方法において、前記基礎杭は、下部に先端翼が取付けられた鋼管杭であり、前記地盤に前記基礎杭を貫入しながら前記柱状改良体の成形を行う。この構成によれば、鋼管杭の下部に取付けられた先端翼で地盤を掘削しながら、鋼管杭を地盤に貫入し、鋼管杭が柱状改良体を形成するべき所定の深さに達したとき、鋼管杭の周囲の地盤を掘削しつつこの周囲の土砂を撹拌しながら、この土砂とセメント系固化剤と混合し、鋼管杭をさらに地盤に貫入することができる。このように、基礎杭の貫入と柱状改良体の成形を同時に行うため、短時間で杭構造を構築することができる。
【0014】
本発明に係る掘削撹拌装置は、上述した構築方法で使用されるものであり、前記基礎杭の周囲の地盤を掘削するとともに、掘削により地盤から生成される土砂を地中で撹拌するための掘削撹拌装置であって、前記基礎杭の杭頭部を覆い、掘削時および撹拌時に、前記基礎杭の軸線まわりに回転する円筒状のケーシングと、前記ケーシングの外周面から、前記ケーシングの径方向に延在し、前記ケーシングに固着された掘削刃と、を備える。
【0015】
このように構成された掘削撹拌装置によれば、基礎杭の上端の杭頭部を円筒状のケーシングの下方開口に挿入して杭頭部を覆い、基礎杭に沿わせて地盤を掘削刃で掘削しつつ、地盤から生成された土砂を地中で撹拌できるため、基礎杭の周囲に均等の直径で効率よく柱状改良体を形成することができる。
【0016】
より好ましい態様としては、前記掘削刃は、前記ケーシングに固着された上段掘削刃および下段掘削刃と、を少なくとも備え、前記掘削撹拌装置は、前記上段掘削刃と前記下段掘削刃との間に、前記上段掘削刃および前記下段掘削刃よりも、前記ケーシングの外周面から径方向に長く延在し、前記ケーシングに対して回転自在に取り付けられ、前記掘削時および撹拌時に前記ケーシングに対して共回りを防止する共回り防止部材を備える。
【0017】
この態様によれば、掘削時および撹拌時に、上段掘削刃および下段掘削刃は、ケーシン
グの回転と共に回転(旋回)する。これに対して、上段掘削刃と下段掘削刃との間に取付けられた共回り防止部材は、ケーシングの外周面から径方向に長く延在し、ケーシングに対して回転自在に取り付けられているため、地盤に食い込み、掘削時および撹拌時に、ケーシングに対して共回りしない。したがって、上段掘削刃および下段掘削刃の間の土砂がこれらと共に回転することを抑え、土砂とセメント系固化剤の混合を効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の杭構造によれば、基礎杭の上部の水平方向の支持力を大幅に向上させることができ、少量のセメント系固化剤を用いて短時間で杭構造を構築することができる。基礎杭が鋼管杭の場合には、柱状改良体が周りに形成された鋼管杭の部分の錆びの影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る杭構造の一実施形態の断面図である。
図2】(a)は図1に示す杭構造において柱状改良体を形成するための掘削撹拌装置の実施形態1の断面図、(b)は鋼管杭の杭頭部の断面図である。
図3図2に示す掘削撹拌装置の寸法を示すための断面図である。
図4】(a)は図2(a)に示す掘削撹拌装置の平面図、(b)は図2(a)のA-A線断面図である。
図5】(a)は図1に示す杭構造において柱状改良体を形成するための掘削撹拌装置の実施形態2の断面図、(b)は鋼管杭の杭頭部の断面図である。
図6】(a)は図5に示す掘削撹拌装置の平面図、(b)は図4のB-B線断面図である。
図7】実施形態1の掘削撹拌装置を使用して柱状改良体を形成し、杭構造を構築する構築方法の実施形態1の工程を示す断面図である。
図8図7に示す工程の後工程を示す断面図である。
図9図8に示す工程の後工程を示し、柱状改良体を形成した杭構造の断面図である。
図10】実施形態2の掘削撹拌装置を使用して柱状改良体を形成し、杭構造を構築する構築方法の実施形態2の工程を示す断面図である。
図11】本発明に係る杭構造の構築方法の他の実施形態を示す断面図である。
図12図5,6で示した掘削撹拌装置で用いたゴムリングの変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[杭構造]
以下、本発明に係る杭構造の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る杭構造の一実施形態を示す鉛直方向の断面図である。
【0021】
図1において、本実施形態の杭構造1は、地中に埋設された基礎杭として鋼管杭2と、鋼管杭2の周囲に形成され、土砂をセメントミルクなどのセメント系固化剤で固めた柱状改良体3とを備える。鋼管杭2は、直径d1が100~300mm程度の鋼管で形成され、地表から支持層4に到達する長さを有しており、深い支持層4の場合には6~10m程度の鋼管を溶接等で連結して必要な長さとしている。支持層4の深さL1は10~30m程度の深さが一般的である。
【0022】
基礎杭としての鋼管杭2には、下部に掘削刃として先端翼2Aが溶接等で固着されている。先端翼2Aは側面から見て傾斜した鋼板で螺旋状に形成され、その直径d2は500~800mm程度に設定されている。先端翼2Aは、鋼管杭2の地盤への貫入時に、地盤
の掘削を行うとともに、地盤に対して鋼管杭2を支持するものである。鋼管杭2は、杭打ち機(図示せず)で地表に対して垂直に設置され、その先端は支持層4に達している。設置の際には、鋼管杭2を旋回させ、先端翼2Aで土砂を掘削しながら地中に鋼管杭2を貫入させ、必要に応じて鋼管杭2を溶接等で継ぎ足し、支持層4まで、先端翼2Aを含むその先端を到達させる。鋼管杭2により、杭構造1は、垂直方向の支持力を得ることができる。支持層4まで到達した状態の鋼管杭2の周囲は、先端翼2Aで掘削された土砂5で外周が覆われており、掘削された土砂5は先端翼2Aの直径で、地面から支持層4までの範囲に存在する。なお、土砂5のうち、深さL2に存在する一部が、セメントミルクで固めた柱状改良体3の一部を構成する。
【0023】
柱状改良体3は鋼管杭2の周囲に円筒状に形成され、その直径Dは0.6~1.5m程度で深さL2は4m程度となっている。柱状改良体3は、鋼管杭2の周囲の土砂を先端翼2Aで掘削し、掘削された土砂5の地表に近い部分(地表から深さL2までの部分)に、先端翼2Aの直径d2より大きい範囲で、さらに地盤を掘削し、掘削により生成された土砂にセメントミルクを混合して、混合した土砂を固化したものである。したがって、柱状改良体3は、地表から鋼管杭2の長さL1より短い深さL2まで形成されている。また、柱状改良体3の直径Dは先端翼2Aの直径d2より大きく設定されている。たとえば、直径D/直径d2は、1.2~2.0の範囲にあることが好ましい。
【0024】
このように構成された杭構造1では、基礎杭としての鋼管杭2は支持層4まで到達しているため、鋼管杭2を介して鉛直方向の支持力を支持層4で受けることができるので、鉛直方向に十分な強度を有している。一方、本実施形態の杭構造1では、鋼管杭2の上部の地表部分にセメントミルクで固化した柱状改良体3が形成されており、掘削された土砂5部分より大きな外径で補強されているため剛性が大きく、水平力が鋼管杭2に作用しても、柱状改良体3で十分に対抗することができる。また、柱状改良体3の長さが鋼管杭2の長さに比べて短いため、構成が簡単となり、後述する杭構造1の構築時に、セメントミルクの使用量をこれまでに比べて減らすことができるため、短時間で柱状改良体3を成形し、コストの低減も図ることができる。
【0025】
[掘削撹拌装置の実施形態1]
つぎに、図1に示す杭構造1を構築するため、鋼管杭2の周囲に柱状改良体3を成形するのに適した掘削撹拌装置10について、図2~4を参照して以下に説明する。図2(a)は掘削撹拌装置10の実施形態1の断面図であり、図2(b)は鋼管杭2の杭頭部の断面図、図3は掘削撹拌装置10の寸法を示す断面図、図4(a)は図2(a)に示す掘削撹拌装置10の平面図、図4(b)は図2(a)のA-A線断面図である。なお、図4(a)および図4(b)は、共回り防止翼17が、図3の位置から回転した状態の図である。
【0026】
図2~4において、掘削撹拌装置10は、以下に述べる二重管式の実施形態1と、後述する一重管式の実施形態2とがある。先ず、二重管式の掘削撹拌装置10について詳細に説明する。この掘削撹拌装置10は、地中に埋設された基礎杭としての鋼管杭2の、地上に露出する上端部(杭頭部)に合わせて設置され、鋼管杭2に沿って旋回して下降され、鋼管杭2の周囲の地盤を掘削して撹拌するとともに、セメントミルクを撹拌された土砂5に供給して混合し、混合されたセメントミルクで土砂を固化して柱状改良体3を形成するための装置である。
【0027】
掘削撹拌装置10は、内管11Aと外管11Bとが隙間を有して同軸に配置された二重管式の円筒状のケーシング11を備えている。内管11Aと外管11Bとはボルトナット等の連結具(図示せず)により隙間が一定の状態になるように連結固定されている。内管11Aの上端部は上蓋12で閉じられており、その下端部は開口している。外管11Bの
上端部は貫通孔13aが形成された上蓋13で閉じられており、その下端部は開口している。外管11Bの上蓋13には、貫通孔13aに連通するように円筒状のジョイント14が固定されている。ジョイント14は、掘削撹拌装置10を旋回させるための杭打ち機等の駆動源が装着されるとともに、セメントミルクを供給するための中心孔が形成されている。
【0028】
内管11Aの下端部の開口から鋼管杭2が挿入できるように、内管11Aの内径が設定されている。すなわち、鋼管杭2の直径d3に対して内管11Aの内径d4が大きくなっている。このように、下方に開口した円筒状のケーシング11は、鋼管杭2の杭頭部を覆うことができる形状となる。
【0029】
本実施形態では、掘削撹拌装置10は、ケーシング11の外管11Bの外周面から、ケーシング11の径方向(水平方向)に延在し、かつ、外管11Bに固着された第1掘削刃(下段掘削刃)15と、第2掘削刃(上段掘削刃)16と、をさらに備えている。第1掘削刃15は、ケーシング11の外管11Bの下部の外周面に、溶接等で固着されており、第2掘削刃16は、第1掘削刃15から上方に50cm~1mの間隔h1を空けて、外管11Bの外周面に溶接等で固着されている。
【0030】
本実施形態では、第1掘削刃15と第2掘削刃16との中間位置に、共回り防止翼(共回り防止部材)17が、ケーシング11の外管11Bに対して回転自在に取り付けられている。具体的には、共回り防止翼17には、ケーシング11の外管11Bに対して自由に回転できるように、リング部17aが形成されており、2本のアーム17cが水平方向(径方向)に延在して突出している。
【0031】
共回り防止翼17には、第1掘削刃15と第2掘削刃16に対向する位置に、撹拌刃(撹拌部)17bが形成されている。第1掘削刃15と第2掘削刃16とが旋回する際には、共回り防止翼17は、地盤に固定されるため、第1掘削刃15と第2掘削刃16の間の土砂を、共回り防止翼17の撹拌刃(撹拌部)17bと、後述する第1掘削刃15および第2掘削刃16の刃部15b,16bとにより、撹拌することができる。
【0032】
第1掘削刃15は、2本の固定アーム15a,15aを備えており、2本の固定アーム15a,15aは、ケーシング11に対して反対となる水平方向に延在し、これらは、ケーシング11の外管11Bに固着されている。各固定アーム15aには、上下方向に複数の刃部15b,15b…が突出して固着されている。
【0033】
第2掘削刃16も、2本の固定アーム16a,16aを備えており、2本の固定アーム16a,16aは、第1掘削刃15の固定アーム15a,15aが延在する方向と同じ水平方向に延在し(たとえば図4(a)参照)、これらも、ケーシング11の外管11Bに固着されている。各固定アーム16aには、上下方向に複数の刃部16b,16b…が突出して固着されている。刃部15b,16bは、鋼管杭2の周りの地盤を掘削するとともに、これにより生成された土砂を撹拌するもので、硬度の高い金属で先細に形成されている。
【0034】
なお、本実施形態では、第1掘削刃15の2本の固定アーム15a,15aと、第2掘削刃16の2本の固定アーム16a,16aとは、同じ方向に延在していたが、これらの延在する方向が、直交していてもよく、これらの方向が交差する角度が所定の角度を成していてもよい。
【0035】
第1掘削刃15および第2掘削刃16は、ケーシング11の中心から300~750mm程度の範囲で突出し、第1掘削刃15および第2掘削刃16は、その先端が0.6~1
.5mの直径d5の円周上を旋回するような長さに設定されている。この円周d5は、図1で示す柱状改良体3の外径Dを形成するものである。そして、ケーシング11の径方向において、第1掘削刃15と第2掘削刃16との間に位置する共回り防止翼17の長さは、第1掘削刃15、第2掘削刃16の長さより長く(例えば30~50mm程度長く形成され)、その先端が直径d6の円周上を回転するような長さに設定されている。また、ケーシング11の高さh2は4m程度に設定され、この高さh2が、柱状改良体3の高さに対応する。第1掘削刃15および第2掘削刃16のケーシング11の先端からの高さh1は、500~1000mmに設定されている。
【0036】
内管11Aと外管11Bとの間の隙間は、上部のジョイント14の中心孔から注入されたセメントミルクが抵抗なく通過できるように、50~100mm程度に設定された通過空間18となっている。そして、内管11Aと外管11Bの隙間(通過空間18)の下端開口は封止されている。外管11Bには外周方向にセメントミルクが吐出するような、吐出口18a,18a…が多数形成されている。吐出口18aの内径は50~100mm程度が好ましい。また、吐出口18aは、第1掘削刃15と第2掘削刃16との間に形成されると、撹拌された土砂とセメントミルクを効率良く混合できるので好ましい。
【0037】
ケーシング11を構成する内管11Aの上部の内周面には、鋼管杭2を固定するためのチャック19が取付けられている。このチャック19には、鋼管杭2の杭頭部の外周面に形成された突起(図示せず)に係合する、縦溝19bと横溝19cで構成されるT字状の係合溝19aが形成されている。鋼管杭2とケーシング11を連結する際には、T字状の係合溝19aの下方から、上下方向に沿って形成された縦溝19bに、鋼管杭2の上述した突起を挿入し、鋼管杭2とケーシング11とを相対的に回転することにより、この突起を、周方向に形成された横溝19cの端部に当接させる。
【0038】
鋼管杭2をチャック19の係合溝19aに係合させて、鋼管杭2とケーシング11と連動させれば、鋼管杭2を旋回させ、これを地中に貫入させながら、掘削撹拌装置10を旋回させることができる。なお、後述する鋼管杭2の貫入と柱状改良体3の成形を同時に行わない場合には、チャック19を省略することができる。
【0039】
[掘削撹拌装置の実施形態2]
つぎに、実施形態2の一重管式の掘削撹拌装置10Aについて、図5図6を参照して詳細に説明する。図5(a)は、実施形態2の掘削撹拌装置10Aの断面図、図5(b)は、鋼管杭2の杭頭部の断面図、図6(a)は、図5(a)に示す掘削撹拌装置10Aの平面図、図6(b)は、図5のB-B線断面図である。なお、図6(a)および図6(b)は、共回り防止翼17が、図5の位置から回転した状態の図である。なお、実施形態1の掘削撹拌装置と同じ部材は、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0040】
掘削撹拌装置10Aは、一重管式の円筒状のケーシング21を備えている。ケーシング21は鋼管等のパイプで構成され、その上端部は上蓋13で閉じられており、上蓋13の中心には貫通孔13aが形成されており、上蓋13には、貫通孔13aに連通したジョイント14が取付けている。ジョイント14にはセメントミルクをケーシング21内に供給するための中心孔が形成されている。ケーシング21の下端部は開口しており、下端部の開口から鋼管杭2が挿入できるように、ケーシング21の内径が設定されている。すなわち、鋼管杭2の直径d3に対してケーシング21の内径d4が大きくなっている。このため、下方に開口した円筒状のケーシング21は、鋼管杭2の杭頭部を覆うことができる形状となる。
【0041】
掘削撹拌装置10Aのケーシング21には、前記した掘削撹拌装置10と同様に、外周面には上下に第1掘削刃(下段掘削刃)15と、第2掘削刃(上段掘削刃)16が水平方
向に突出して固着され、ケーシング21の径方向に延在している。第1掘削刃15および第2掘削刃16の間に、共回り防止翼17がケーシング21に対して回転自在に取付けられている。第1掘削刃15および第2掘削刃16は、その先端が直径d5の円周上を旋回するような長さに設定され、共回り防止翼17は、直径d5よりも大きい直径d6の円周上を回転するような長さに設定されている。
【0042】
ケーシング21の下部の内周面には、断面形状が円弧状の円周溝が形成され、円周溝には、Oリング等のゴムリング27が装着されている。ゴムリング27は、ケーシングの下方開口に挿入された鋼管杭2の外周面との間の隙間を塞ぐ機能を有している。ゴムリング27は、ケーシング21内にセメントミルクが供給されたときに、セメントミルクがケーシング21の内周面と鋼管杭2の外周面との間の隙間から漏れ出ることを防止するものである。
【0043】
ケーシング21の天井部には、鋼管杭2を固定するためのチャック29が取付けられている。チャック29は、一対の爪部29a,29aを有しており、爪部29a,29aの間に鋼管杭2の杭頭部が嵌合するように構成されている。鋼管杭2を旋回させ地中に貫入させながら掘削撹拌装置10Aを旋回させるときに、チャック29に鋼管杭2の杭頭部を嵌合し、鋼管杭2をケーシング21に連結する。なお、後述する鋼管杭2の貫入と柱状改良体3の成形を同時に行わない場合には、チャック29を省略することができる。
【0044】
ケーシング21には、その周方向に、ケーシング21内に供給されたセメントミルクをケーシング外に吐出するための吐出口11aが複数形成されている。吐出口11aはゴムリング27の上方に形成されている。一重管式のケーシング21を備える掘削撹拌装置10Aでは、ケーシング21内にセメントミルクが供給されたときに、鋼管杭2内に入り込まないように杭頭には上蓋2Bが固着されている。なお、実施形態1の二重管式のケーシングを備える掘削撹拌装置10では、セメントミルクが杭頭から鋼管杭2の内部に侵入しないので、鋼管杭2の上部開口を塞ぐために、杭頭に上蓋が設けられていない(図2(b)参照)。
【0045】
[杭構造の構築方法の実施形態1]
前記の如く構成された本実施形態の杭構造1の掘削撹拌装置10を使用した構築方法の実施形態1について、図7~9を参照して以下に説明する。なお、本実施形態では、地中に鋼管杭2を埋設したあと、柱状改良体3の成形を行うので、この掘削撹拌装置10では、図2に示すチャック19を省略している。
【0046】
まず、本実施形態では、基礎杭としての鋼管杭2は、図示していない杭打ち機を用いて垂直状態に設置されて回転され、先端翼2Aで地盤を掘削して地中に貫入される。鋼管杭2は支持層4に到達するまで貫入される。これにより、杭構造1の鉛直方向の支持力が十分に得られる。鋼管杭2は、上端の杭頭部が地表から突出した状態で地中に埋設されている。
【0047】
この状態の鋼管杭2に、図7に示すように、杭頭部に掘削撹拌装置10のケーシング11を被せて、掘削撹拌装置10を地表に対して垂直に設置する。すなわち、ケーシング11の下方開口に鋼管杭2の杭頭部を挿入して設置する。そして、掘削撹拌装置10を旋回させ下降させることにより、第1掘削刃15と第2掘削刃16で鋼管杭2の周囲の地盤を掘削しつつ、地盤の掘削により生成された土砂を撹拌する。
【0048】
このとき、ケーシング11とともに旋回する第1掘削刃15と第2掘削刃16は、周囲の土砂を引き回すが、中間に位置する共回り防止翼17が外側の土砂に食い込んで旋回しない。このため、第1掘削刃15と第2掘削刃16の近傍の土砂が旋回し、共回り防止翼
17の近傍の土砂は旋回しないので、第1掘削刃15と第2掘削刃16との間の土砂を確実に撹拌することができる。さらに、掘削撹拌装置10を旋回させながら下降させると、土砂の撹拌範囲は下方に増え、図8に示すように、杭頭部がケーシング11の上蓋12に接近する。
【0049】
この掘削時および撹拌時に、図8に示すように、ジョイント14の中心孔から矢印Y1のようにセメントミルクを供給する。これにより、セメントミルクはケーシング11の内管11Aと外管11Bとの間の通過空間18を通り、下方に流下して吐出口18aから矢印Y2のようにケーシング11外に吐出される。吐出されたセメントミルクは、第1掘削刃15、第2掘削刃16、および共回り防止翼17で撹拌されている土砂5と混合される。このあと、第1掘削刃15および第2掘削刃16を旋回させながら鋼管杭2の杭頭部から掘削撹拌装置10を取り外すと、図9に示すように、地中に埋設された鋼管杭2の周囲には、柱状改良体3となる土砂とセメントミルクの混合物が存在する。柱状改良体3となる混合物は、地表から鋼管杭2の長さより短い深さまで形成される。
【0050】
掘削撹拌装置10を地中から引き抜き、セメントミルクが混合された土砂は、徐々に硬化(固化)して、地盤改良された柱状改良体3が成形される。固化した柱状改良体3は、地盤との食付きが良く、撹拌された土砂5の上部を柱状改良体3で補強するため、垂直方向の支持力とともに、水平方向の支持力を大幅に向上させることができる。そして、鋼管杭2の上部が柱状改良体3で補強され、鋼管杭2に水平方向の力が加わっても十分に対抗できる強度を有する杭構造1となる。
【0051】
[杭構造の構築方法の実施形態2]
つぎに、実施形態2の掘削撹拌装置10Aを使用して杭構造1を構築する方法について、図10を参照して説明する。図10は、実施形態2の掘削撹拌装置10Aを使用して柱状改良体3を形成し、杭構造1を構築する工程の一部を示す断面図である。この構築方法では、掘削撹拌装置10Aを鋼管杭2の杭頭部に設置する工程、掘削撹拌装置10Aを旋回する工程の図示を省略している。なお、本実施形態では、地中に鋼管杭2を埋設したあと、柱状改良体3の成形を行うので、この掘削撹拌装置10Aでは、図5に示すチャック29を省略している。
【0052】
本実施形態でも、図示していないが、鋼管杭2に対して、杭頭部に掘削撹拌装置10Aのケーシング21を被せて設置する。すなわち、ケーシング21の下方開口に鋼管杭2の杭頭部を挿入し、ケーシング21の内面に装着したゴムリング27の内部に杭頭を挿入し、鋼管杭2の杭頭部をケーシング21で覆って、掘削撹拌装置10Aを地表に対して垂直に設置する。ゴムリング27は鋼管杭2の外周面で圧縮される。そして、掘削撹拌装置10Aを旋回させるとともに下降させ、第1掘削刃15および第2掘削刃16で、鋼管杭2の周りの地盤を掘削し、共回り防止翼17とともに掘削により生成された土砂を撹拌する。
【0053】
図10では、掘削撹拌装置10Aが下降すると、ケーシング21内で鋼管杭2の周囲に隙間が形成される。この状態でセメントミルクをジョイント14の中心孔からケーシング21内に矢印Y1に示すように供給すると、セメントミルクは、ケーシング21内で鋼管杭2の周囲の隙間に入り込み、隙間内を流下して吐出口11aからケーシング21外に吐出される。この状態で、第1掘削刃15、第2掘削刃16および共回り防止翼17で、セメントミルクは撹拌されている土砂5と混合される。
【0054】
このあと、セメントミルクが固化する前に、第1掘削刃15および第2掘削刃16を旋回させながら掘削撹拌装置10Aを地中から引き抜き、セメントミルクと土砂が固化してセメントになると、柱状改良体3が地中の表層部に形成される。このように、掘削撹拌装
置10Aで柱状改良体3を形成した場合も、前記の場合と同じように、地盤との食付きが良く、撹拌された土砂5の上部を柱状改良体3で補強するため、鉛直方向の支持力とともに、水平方向の支持力を大幅に向上させることができる。
【0055】
[杭構造の構築方法の他の実施形態]
つぎに、杭構造の構築方法の他の実施形態として、鋼管杭2を地中に貫入しながら柱状改良体3を形成する構築方法について、図11を参照して以下に説明する。図11は、杭構造の構築方法の他の実施形態を示す断面図である。なお、図11では、掘削撹拌装置10を使用した構築方法を説明し、セメントミルクの供給の構成を省略している。
【0056】
図11では、鋼管杭2は、所定の深さ、例えば支持層4まで到達していない状態であり、先端翼2Aでさらに地盤を掘削しながら鋼管杭2をさらに貫入することが必要な状態である。このため、掘削撹拌装置10は地表までは到達していない。
【0057】
鋼管杭2は、上述したようにチャック19により連結されており、鋼管杭2とケーシング11とは、一体的となって回転する。このため、杭打ち機の旋回力はジョイント14を介して掘削撹拌装置10のケーシング11に伝達され、ケーシング11を旋回させるとともに、チャック19を介して鋼管杭2に伝達される。これにより、先端翼2Aが地盤を掘削するように鋼管杭2を回転させながら下降させると、鋼管杭2が地中にさらに貫入される。
【0058】
この状態で、鋼管杭2および掘削撹拌装置10が下降を続け、掘削撹拌装置10の第1掘削刃15が地表に到達すると、掘削撹拌装置10が、鋼管杭2の周りの地盤を徐々に掘削し始め、鋼管杭2の地中への貫入と、柱状改良体3を形成するための地盤の掘削と、生成された土砂の撹拌とが同時に実施される。掘削撹拌装置10で柱状改良体3の深さに相当する位置まで貫入および掘削を続け、所定の深さまで鋼管杭2の貫入と柱状改良体3を形成するための地盤の掘削が完了する。
【0059】
このような撹拌時に、ジョイント14側からセメントミルクをケーシング11内に供給すると、セメントミルクは内管11Aと外管11Bとの間の通過空間18を通って吐出口18aからケーシング11外に吐出される。突出されたセメントミルクは、第1掘削刃15、第2掘削刃16および共回り防止翼17で撹拌されている土砂5に混合される。所定時間混合し、セメントミルクと土砂が均一に混合されたあと、チャック19による係合を解除し、掘削撹拌装置10を鋼管杭2から外し、掘削撹拌装置10を地中から引き上げると、柱状改良体3が形成される。
【0060】
この杭構造の構築方法では、前記した実施形態で示した効果の他に、先端翼2Aを備える鋼管杭2の貫入、柱状改良体3の地盤の掘削、土砂の撹拌、セメントミルクの供給、および土砂とセメントミルクの混合が一連の工程で実施でき、短時間で効率よく杭構造を構築することができる。
【0061】
前記した掘削撹拌装置の実施形態2で用いたゴムリングの変形例について図12を参照して説明する。掘削撹拌装置10Aで用いたゴムリング27は断面形状が円形のものであるが、断面形状が台形状のゴムリング27Aを用いることができる。このゴムリング29Aは、ケーシング21の内面に形成された矩形状の凹部の円周溝に嵌合されて装着されるものである。このゴムリング29Aでは、内周側に突出するエッジ部が鋼管杭2の外周面に接触して、セメントミルクの外部への漏れ出しを防止するものである。エッジ部で接触させることで、セメントミルクの切れを良くして漏れを確実に防止することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定される
ものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、基礎杭として、先端翼を有する鋼管杭の例を示したが、先端翼のないPHC杭等の他のコンクリート杭を用いることができる。
【0063】
柱状改良体として、セメントミルクを土砂に混合して固化した例を示したが、セメントミルクに限られるものでなく、他のセメント系固化剤を用いて柱状改良体を形成することができる。また、基礎杭は支持層に到達する長さを有するものを示したが、支持層まで到達せずに摩擦杭として用いるものでもよい。
【0064】
また、上述した実施形態では、掘削刃を、2種類の第1掘削刃と第2掘削刃により2段の掘削刃としたが、掘削刃は、1つまたは3つ以上であってもよく、上下に3つ以上備える場合には、これらの間に共回り防止翼をさらに設けてもよい。
【0065】
また、地盤の掘削と土砂の撹拌時に、これにセメントミルクを供給し、土砂とセメントミルクを混合してもよく、地盤の掘削後、第1掘削刃および第2掘削刃を降下させず定位置で旋回させながら、鋼管杭の周りの土砂を撹拌し、撹拌している土砂にセメントミルクを供給してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1:杭構造、2:鋼管杭(基礎杭)、2A:先端翼(掘削刃)、3:柱状改良体、4:支持層、5:掘削された土砂、10:掘削撹拌装置、11,21:ケーシング、11A:内管、11B:外管、15:第1掘削刃(下段掘削刃)、16:第2掘削刃(上段掘削刃)、17:共回り防止翼(共回り防止部材)、D:柱状改良体の直径、d2:先端翼の直径、L1:基礎杭の長さ、L2:柱状改良体の深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12