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特許7143068同期装置用のシンクロナイザリングとシンクロナイザリングを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】同期装置用のシンクロナイザリングとシンクロナイザリングを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 23/06 20060101AFI20220920BHJP
   B21D 53/28 20060101ALI20220920BHJP
   B21D 22/30 20060101ALN20220920BHJP
【FI】
F16D23/06 D
B21D53/28
B21D22/30 A
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017211962
(22)【出願日】2017-11-01
(65)【公開番号】P2018076964
(43)【公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-13
(31)【優先権主張番号】10 2016 121 174.5
(32)【優先日】2016-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515314177
【氏名又は名称】ヘルビガー・アントリーブシュテクニク・ホールディング・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HOERBIGER Antriebstechnik Holding GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・ヴァイアー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・キーズ
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0354638(US,A1)
【文献】特開2012-055903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00-23/14
B21D 53/28
B21D 22/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動変速機の同期装置(12)用のシンクロナイザリングであって、
ぼ一様なリング厚(t)を有し、リング軸(A)を中心とするリング状の薄板金属円錐体(14)を有しており、
前記リング状の薄板金属円錐体(14)は、半径方向外側面(16)と、円錐形の摩擦表面(18)を備える反対側の半径方向内側面と、を有し、
前記リング状の薄板金属円錐体(14)は、第1の軸方向円錐端(20)から第2の軸方向円錐端(22)へ前記リング軸(A)の方向に先細りしており、
前記薄板金属円錐体(14)は、
前記同期装置(12)のシンクロナイザハブ(30)に対してシンクロナイザリング(10)を半径方向にセンタリングするために、前記半径方向外側面(16)上に一体成形された、円周方向に連続または不連続のセンタリングカラー(28)を有し、
記センタリングカラー(28)の領域で変形させられ、前記センタリングカラー(28)の領域において、前記リング厚(t)に比べて薄い残厚(t)を有する第1の薄板部(34)と、前記リング厚(t)以上のカラー厚(t)を有し、かつ、軸方向において、前記第1の薄板部(34)に隣接した第2の薄板部(36)と、を備え、
記第2の軸方向円錐端(22)と前記第1の薄板部(34)の間で軸方向に伸びる段部(40)を備えており
前記段部(40)の半径方向外側面(42)は、前記第1の薄板部(34)の半径方向外側面(38)に対して、前記リング軸(A)に向かってずれている、シンクロナイザリング。
【請求項2】
前記段部(40)の前記半径方向外側面(42)と前記第1の薄板部(34)の前記半径方向外面(38)とは前記リング軸(A)とほぼ平行に広がる、又は、前記段部(40)の前記半径方向外側面(42)と前記第1の薄板部(34)の前記半径方向外面(38)とのいずれか一方が前記リング軸(A)とほぼ平行に広がることを特徴とする請求項1に記載のシンクロナイザリング。
【請求項3】
前記段部(40)の前記半径方向外側面(42)と前記摩擦表面(18)の間の半径方向距離(t)が、前記段部(40)に沿って軸方向に一定であることを特徴とする請求項1に記載のシンクロナイザリング。
【請求項4】
前記第1の薄板部(34)の前記残厚(t)が、ほぼ一定であることを特徴とする請求項に記載のシンクロナイザリング。
【請求項5】
前記薄板金属円錐体(14)が前記第2の軸方向円錐端(22)に底部(26)を有し、
前記底部(26)は前記薄板金属円錐体(14)から始まり、前記リング軸(A)に向かって半径方向に伸びることを特徴とした請求項1、2若しくは4のいずれかに記載のシンクロナイザリング。
【請求項6】
前記段部(40)の前記半径方向外側面(42)と前記第1の薄板部(34)の前記半径方向外側面(38)の間の距離(d)が、前記リング厚(t)と前記残厚(t)とのうち少なくとも一方より大きいことを特徴とする請求項5に記載のシンクロナイザリング。
【請求項7】
前記段部(40)が、前記底部(26)より軸方向に短いことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のシンクロナイザリング。
【請求項8】
前記段部(40)が、前記リング軸(A)に垂直な断面でほぼU字型であること特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のシンクロナイザリング。
【請求項9】
前記第1の薄板部(34)に面する軸端で、前記段部(40)が壁(50)を備え、
前記壁(50)にアンダーカットが形成され、
及び/又は、
前記壁(50)が前記リング軸(A)から半径方向に離れるにつれて、前記第2の軸方向円錐端(22)の方へ傾けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のシンクロナイザリング。
【請求項10】
前記薄板金属円錐体(14)が、前記第1の軸方向円錐端(20)で半径方向外側に曲げられており、前記第1の軸方向円錐端(20)に係止歯(24)を有している請求項1から9のいずれかに記載のシンクロナイザリング。
【請求項11】
前記センタリングカラー(28)が前記シンクロナイザハブ(30)に対して半径方向当接面(32)を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のシンクロナイザリング。
【請求項12】
前記センタリングカラー(28)が円周方向に不連続であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のシンクロナイザリング。
【請求項13】
前記センタリングカラー(28)が、円周方向に間隔をあけて配置された複数のセンタリングカラー部(44、44.1、44.2)を有する請求項1から12のいずれかに記載のシンクロナイザリング。
【請求項14】
前記センタリングカラー部(44、44.1、44.2)がそれぞれ、前記シンクロナイザハブ(30)に対する半径方向当接面(32)を有し、
すべての前記半径方向当接面(32)が仮想円筒上にある請求項13に記載のシンクロナイザリング。
【請求項15】
少なくとも3つの前記センタリングカラー部(44、44.1、44.2)が備えられている請求項13又は請求項14に記載のシンクロナイザリング。
【請求項16】
前記センタリングカラー部のうち、第1のセンタリングカラー部(44.1)が、前記第2の軸方向円錐端(22)までの第1の軸距離(a1)を有し、
前記センタリングカラー部のうち、第2のセンタリングカラー部(44.2)が、前記第1の軸距離(a1)とは異なる、前記第2の軸方向円錐端(22)までの第2の軸距離(a2)を有する、ことを特徴とする請求項13から15のいずれかに記載のシンクロナイザリング。
【請求項17】
前記第1の軸方向円錐端(20)から前記第2の軸方向円錐端(22)の方へ前記リング軸(A)方向に円錐のように先細りしており、
前記センタリングカラー(28)をまだ有していない前記リング状の薄板金属円錐体(14)を設け、前記第2の軸方向円錐端(22)に前記段部(40)を一体成形するために、第1の工具(46)を望ましい第1の半径方向位置に調整し、
前記薄板金属円錐体(14)の前記摩擦表面(18)とほぼ平行又は、前記リング軸(A)とほぼ平行に、第1の軸方向円錐端(20)の方へ材料を成形しながら前記第1の工具(46)を移動する、
行程からなる請求項1から16のいずれかに記載の前記シンクロナイザリング(10)を製造する方法。
【請求項18】
前記第1の工具(46)が移動された後、前記センタリングカラー(28)を一体成形するために、前記第2の軸方向円錐端(22)で、第2の工具(46)が望ましい第2の半径方向位置にあわせられ、
材料を成形しながら、前記薄板金属円錐体(14)の前記摩擦表面(18)とほぼ平行又は、前記リング軸(A)とほぼ平行に前記第1の軸方向円錐端(20)の方へ、第2の工具(46)が移動されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の工具(46)と前記第2の工具(46)が同一であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手動変速機の同期装置のためのシンクロナイザリングに関する。そのリングは、リング中心軸と、ほぼ一定のリング厚を有するリング状の薄板金属円錐体を有する。そのリング状の薄板金属円錐は半径方向外側面と、円錐形の摩擦表面を備えた反対側の半径方向内側面を有し、リング状の薄板金属円錐体は第1の軸方向円錐端から第2の軸方向円錐端に向かって、リング中心軸の方向に先細りになっている。薄板金属円錐体は、同期装置のシンクロナイザハブに対してシンクロナイザリングを半径方向にセンタリングするために、一体成形されたセンタリングカラーを半径方向外側面に備える。そこでは、薄板金属円錐体はセンタリングカラーの領域で変形され、リング厚と比べて薄くされた残厚を有する第1の薄板部と、少なくともリング厚と一致するカラー厚を有する軸方向に隣接した第2の薄板部を含む。
【0002】
さらに、本発明はそのようなシンクロナイザリングを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
同期装置の安全性と低摩耗稼働を保証するために、そのようなシンクロナイザリングは、手動変速機のシンクロナイザハブに対して中心に置かれなければならない。シンクロナイザハブに対するシンクロナイザリングの半径方向のセンタリングは、シンクロナイザハブに接することができるセンタリングカラーによって行われる。
【0004】
そのようなシンクロナイザリングは一般的に、圧縮成形と、続いて起こる成形工程における絞り加工方法によって、平らな板から製造される。センタリングカラーは成形工程によってのみ形成される。すなわち、薄板金属円錐体において、第1の薄板部は工具によって一体成形され、それにより第2の薄板部において、材料を成形しながらセンタリングカラーが得られる。
【0005】
センタリングカラーに常に効果的なセンタリングを保証させるため、センタリングカラーは少なくとも第2の薄板部で、十分なカラー厚を有していなければならない、言い換えると、センタリングカラーは十分に高くなければならない。しかしながら、センタリングカラーを成形するための材料は主に第1の薄板部から取り除かれるので、第1の薄板部で薄板金属円錐体を脆くし過ぎることなく、カラー厚を厚くし、センタリングカラーを増やすことは容易にはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、同期装置用のシンクロナイザリングを提供することとシンクロナイザリングを製造する方法を提供することが本発明の目的である。そして本発明では、第1の薄板部で薄板金属円錐体が極端に脆くされることなく、高いカラー厚を有する第2の薄板部が確実に設計される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、幾何学的なシンクロナイザリングによって解決される。そこでは第2の軸方向円錐端と第1の薄板部の間で、薄板金属円錐体が軸方向に伸びる段部を備えており、段部の半径方向外側面は、リング中心軸に向かって第1の薄板部の半径方向外側面に対してずれている。段部は第1の薄板部と第2の軸方向円錐端の両方、又はそれらのいずれか一方と軸方向に隣り合う。このようにして、シンクロナイザリングの製造では、第1の薄板部をさらに脆くすることなく、第1の薄板部の領域からの材料だけでなく、段部を形成するために取り除かれる材料もまた使われ得る。結果として、第2の薄板部分のセンタリングカラー又はカラー厚は、薄板金属円錐体に付加的な材料を付けることなく、段部を付けない場合に得られる高さよりも大きくできる。結果として、シンクロナイザリングは平坦な薄板からもなお効果的に製造されうる。
【0008】
例えば、段部の半径方向外側面と第1の薄板部の半径方向外側面の両方、又はそれらいずれか一方は、リング中心軸とほぼ平行に伸びる。そのため、製造品はさらに簡易化される。
【0009】
本発明のある実施形態では、段部の半径方向外側面と摩擦表面の間の半径方向距離は、段部に沿って軸方向に一定である。それにより、シンクロナイザリングはとりわけ安定に設計される。
【0010】
第1の薄板部で、薄板金属円錐体の残厚はほぼ一定であることが望ましく、それため、第1の薄板部で薄板金属円錐体もまた非常に安定に設計される。
【0011】
本発明のある態様では、薄板金属円錐体は第2の軸方向円錐端に底部を有する。そしてそれは、薄板金属円錐体から始まり、リング中心軸に向かって半径方向に伸びる。底部は、第2の軸方向円錐端を完全に閉じ得る。段部は底部の領域に設けられる。このようにして、段部による材料損失がシンクロナイザリングの重大な弱化に至らないように、シンクロナイザリングは底部によって安定させられる。
【0012】
例えば、段部の半径方向外側面と第1の薄板部の半径方向外側面の間の半径方向の距離は、リング厚又は残厚より厚くなっており、そのため、センタリングカラーの高さをさらに高くために、とりわけ大量の材料を設けることができる。
【0013】
軸方向に段部は底部より短くもできる。それにより、シンクロナイザリングの安定性がさらに改良される。
【0014】
本発明のある態様では、段部はリング中心軸と垂直な断面でほぼU字型であるので、段部で取り除かれた材料は効果的に第2の薄板部に移動される。
【0015】
ある別の設計では、段部は、第1の薄板部に面している軸方向末端で壁を有する。壁にはアンダーカット(切り込み)が形成されていて、かつ/又は、壁が第2の軸方向円錐端に向かって傾けられる。それにより、段部から取り除かれた材料の移動はさらに良くなる。
【0016】
例えば、薄板金属円錐体は第1の軸方向円錐端で半径方向外側に曲げられ、係止歯を有する。このようにして、係止歯を伴うシンクロナイザリングもまた容易に実現されうる。
【0017】
本発明の1つの態様で、センタリングカラーはシンクロナイザハブに対する半径方向の当接面を備える。それにより、シンクロナイザリングの位置が正確に定められ得る。
【0018】
例えば、センタリングカラーは円周方向に途切れているので、シンクロナイザリングの製造は簡易化される。
【0019】
本発明のある別の設計では、センタリングカラーは、円周方向に間隔をおいて配置された、複数のセンタリングカラー部を構成する。センタリングカラー部はリング状の薄板金属円錐体の周りに一様に配置されうる。このようにして、必要なセンタリングカラー部の数を減らすことができる。
【0020】
センタリングカラー部はそれぞれ、シンクロナイザハブに対する半径方向当接面を備えており、すべての半径方向の接合面は円柱面上にあることが好ましく、それにより、シンクロナイザハブに対するシンクロナイザリングの位置が正確にあわせられる。
【0021】
例えば、少なくとも3つのセンタリングカラー部が設けられるので、シンクロナイザリングのセンタリングはさらに改善される。
【0022】
ある別の設計で、第1のセンタリングカラー部は、第2の軸方向円錐端まで第1の軸距離を有し、第2のセンタリングカラー部は、第2の軸方向円錐端まで、第1の軸距離とは異なった第2の軸距離を有する。盛り上がったセンタリングカラー部は、円周方向へ互いに直接移動し、センタリングカラーは円周方向に波形形状に広がる。このようにして、シンクロナイザハブに対するシンクロナイザリングの異なった軸位置で、シンクロナイザリングのセンタリングは常時保証される。
【0023】
さらに本発明の目的は、上述したようなシンクロナイザリングを製造する方法によって解決される。その方法は以下の工程からなる。
第1の軸方向円錐端から第2の軸方向円錐端に向かってリング中心軸の方向に、同軸上で先細りしており、まだセンタリングカラーを有しないリング状の薄板金属円錐体を設けること、
第2の軸方向円錐端に段部を一体成形するために、望ましい第1の円周方向位置に第1の工具を合わせること、
薄板金属円錐体の摩擦表面にほぼ平行、又は、リング中心軸にほぼ平行に第1の軸円錐端の方へ、材料を成形しながら第1の工具を移動する。
【発明の効果】
【0024】
このようにして、段部分からの材料は第1の軸円錐端に向けて軸方向に移動される。そしてそれは、センタリング部を生成するために利用できるので、センタリング部はより高く形成される。
【0025】
第1の工具が移動された後、第2の軸方向円錐端でセンタリングカラーを一体成形するために、第2の工具は、望ましい第2の半径方向の位置に調整され、材料を成形しながら、薄板金属円錐体の摩擦表面とほぼ平行又はリング中心軸とほぼ平行に、第1の軸方向円錐端の方へ移動される。それによりセンタリングカラーは生成され、第2の半径方向位置は第1の半径方向位置よりリング中心軸から離れる。このようしてセンタリングカラーは効率的かつ低コストで製造される。
【0026】
第1の工具は第2の工具と同一であり得る。それによりとりわけ低価格で効果的なシンクロナイザリングの製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のさらなる特徴と効果は、以下の説明と、参照が付けられた添付図面から理解され得る。図面において、
図1図1は、本発明によるシンクロナイザリングの透視図を示している。
図2図2は、図1に係るシンクロナイザリングの部分断面図を示している。
図3図3は、手動変速機のシンクロナイザハブと図2に係るシンクロナイザリングの断面図を示している。
図4a図4aは、本発明に係る方法の様々な工程中のシンクロナイザリングの部分断面図を示している。
図4b図4bは、本発明に係る方法の様々な工程中のシンクロナイザリングの部分断面図を示している。
図4c図4cは、本発明に係る方法の様々な工程中のシンクロナイザリングの部分断面図を示している。
図5図5は、本発明によるシンクロナイザリングの第2の実施形態の部分断面を示している。
図6図6は、本発明によるシンクロナイザリングの第3の実施形態の側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
図1から3は、手動変速機の同期装置12のためのシンクロナイザリング10を示す。そのシンクロナイザリングは、リング中心軸Aを有しており、ほぼ一定のリング厚tを有するリング状の薄板金属円錐体14から形成される。
【0029】
リング状の薄板金属円錐体14は、円錐形状の半径方向外側面16、並びに、円錐形状の摩擦表面18を有する反対側の半径方向内側面を有する。そこでは、リング厚tは摩擦表面18に垂直な方向の薄板金属円錐体14の寸法と一致する。
【0030】
薄板金属円錐体14は、第1の軸方向円錐端20から第2の軸方向円錐端22に向かって先細になっている。
【0031】
第1の軸方向円錐端20で、薄板金属円錐体14は半径方向外側に曲げられており、係止歯14を備えている。
【0032】
第2の円錐端22に、薄板金属円錐体14は端面底部26を有する。その端面底部26は、第2の軸方向円錐端22で、薄板金属円錐体14からリング中心軸Aに向かって放射状に伸びている。
【0033】
図1から3に示される実施形態で、底部26は閉じるように設計されておらず、開口部を有する。
【0034】
さらに、同期装置12のシンクロナイザハブ30(図3)に対してシンクロナイザリング10を半径方向にセンタリングするために、金属薄板円錐14は、半径方向外側面16上に一体成形されたセンタリングカラー28を有する。
【0035】
センタリングカラー28は、薄板金属円錐体14から外方に向いている面上に、シンクロナイザハブ30に対する、平坦で、放射状の当接面32を有する。
【0036】
センタリングカラー28の領域において、薄板金属円錐体14が変形されて、第1の薄板部34と第2の薄板部36が形成されている。
【0037】
第1の薄板部34で、薄板金属円錐体14は、リング厚tに比べて薄い残厚tと、図示された実施形態ではリング中心軸Aとほぼ平行に伸びる半径方向外側面38を有する。
【0038】
第2の薄板部36は、第1の軸方向円錐端20に向かって第1の薄板部34に隣接する。第2の薄板部36において、薄板金属円錐体14はカラー厚tを有する。カラー厚tは少なくともリング厚tに対応しているが、特にそのリング厚tよりも大きい。カラー厚tは、センタリングカラー28の高さにおける測定値である。
【0039】
第2の軸方向円錐端22に面する第1の薄板部34の面上に、薄板金属円錐体14は、第2の軸方向円錐端22から伸びる段部40を有する。
【0040】
図示された実施形態では、段部40は第1の薄板部34まで伸びる。これは、この実施形態で第1の薄板部34が段部40に隣接することを意味する。
【0041】
軸方向に関して、段部40は底部26より短い。
【0042】
同様に、段部40は半径方向の外側面42を有する。そこでは段部40の半径方向外側面42が、第1の薄板部34の半径方向外側面38に対して、リング中心軸Aに向かって距離dだけずれている。言い換えると、段部40は第1の薄板部34から始まり、第2の軸方向円錐端22に向かって下向きの階段を形成する。
【0043】
段部40の半径方向外側面42と第1の薄板部34の半径方向外側面38の間の距離dは、リング厚さtと残厚tの両方、又はそのいずれか一方よりも大きくしてもよい。
【0044】
リング中心軸Aに垂直な断面で、段部40は、第2の軸方向円錐端22でほぼU字型に形作られ得る。この場合、段部40の半径方向外側面42は、U字の脚部間の領域である。
【0045】
図示された実施形態では、段部40の半径方向外側面42はリング中心軸Aとほぼ平行である。それゆえ、この実施形態では、段部40の外側面42と第1の薄板部の外側面38もまた同様に互いに平行である。
【0046】
図示された実施形態では、薄板金属円錐体14のセンタリングカラー28は連続しておらず、円周方向に途切れている。そのため、円周方向に間隔をあけて配置された複数のセンタリングカラー部44が形成され、それらは、リング状の金薄板金属円錐体14の周りに割り振られていうる。図1に示される実施形態では、6個のセンタリングカラー部44が設けられている。
【0047】
図1で、2つのセンタリングカラー部44の集まりがそれぞれ、薄板金属円錐体14の周りに、均一に配置される。しかしながら、センタリングカラー部44が個々に、薄板金属円錐体14の円周周りに均一に配置されることもまた考えられる。
【0048】
センタリングカラー部44はそれぞれ、シンクロナイザハブ30に対する半径方向の当接面32を有する。センタリングカラー部44の当接面32はすべて、仮想円筒上にある。
【0049】
図3は、手動変速機の同期装置12の一部としてのシンクロナイザリング10と、同期装置12のシンクロナイザハブ30を示している。
この図は、センタリングカラー28の当接面32が、シンクロナイザハブ30の内側に対して寄りかかっているので、シンクロナイザリング10は半径方向に中心を合わせた状態で固定される。ことをはっきりと示している。
【0050】
シンクロナイザリング10を製造するために、平らな薄板は最初に深絞り加工される。その結果、図4aに示されるように、薄板金属円錐体14が底部26と共に形成される。このとき、薄板金属円錐体14は、まだセンタリングカラー28を有していない。
【0051】
同時に、係止歯24もまた深絞り加工時に組み込まれ得る。
【0052】
続いて、段部40並びにセンタリングカラー28が、工具46を使って作られる。
【0053】
そのために、工具46が第2の軸方向円錐端22に配置され、望ましい第1の半径方向位置、つまりリング中心軸Aまでの第1の距離の位置に調整される。
【0054】
その後、工具46は、リング中心軸Aと平行に、第1の軸方向円錐端20に向かって移動される。薄板金属円錐体14は形成され、その材料が第2の軸方向円錐端22から第1の軸方向円錐端20の方向に圧縮される。このようにして段部40は形成される。
【0055】
材料を成形することにより、薄板金属円錐体14の材料は、第1の薄板部34の領域において、薄板金属円錐体14の半径方向外側面上で盛り上がる。図4bにおいて、変形していない薄板金属円錐体14の半径方向外側面が破線で示されている。
【0056】
次の工程で、工具46は、第2の軸方向円錐端22で、第2の望ましい半径方向の位置、つまりリング中心軸Aまで第2の距離の位置に配置される。
【0057】
第2の半径方向の位置は、第1の半径方向位置よりもリング中心軸Aから離れている。つまり、第2の半径方向の位置において、工具46は、第1の半径方向の位置よりリング中心軸Aまで長い距離を有する。
【0058】
次に、工具46はリング中心軸Aに平行に、第1の円錐端20に向かって移動される。元々の薄板金属円錐体14の部分とその上に積み上げられた材料の部分が、第1の円錐端20の方向にさらに動かされる。これにより、センタリングカラー28が形成される。
【0059】
当接面32は、工具46との境界面48によって形成される。(図4c)
【0060】
この工程で、センタリングカラー28は第1の薄板部34と第2の薄板部36とともに形成される。続いて、工具46はまた、第2の軸方向円錐端22の方向へ再び移動させられ、それによりシンクロナイザリング10が完成する。
【0061】
図示された実施形態で、段部40を一体成形するために、また、センタリングカラー28を一体成形するために同じ工具46が使われる。しかしながら、段部40を一体成形するために第1の工具が使われ、センタリングカラー28を一体成形するために第2の工具が使われることもまた考えられる。
【実施例2】
【0062】
図5と6は、シンクロナイザリング10のさらなる実施形態を示している。それらの実施形態は、本質的に第1の実施形態と一致する。それゆえ、以下では、その違いだけが説明される。そこでは同一で機能的に同等の部分は同じ参照数字が付けられる。
【0063】
第2の実施形態のシンクロナイザリング10は、図5に示すように底部が無く、半径方向内側面の全域に摩擦表面18を設けている。
【0064】
第2の実施形態では、段部40と第1の薄板部34の外側面42、38はリング中心軸Aと平行ではなく、摩擦表面18と平行に伸びる。それゆえ、段部40の半径方向外側面42と摩擦面18の間の半径方向の距離tは、段部40に沿って軸方向に一定である。
【0065】
従って、薄板金属円錐体14の残厚tもまた、第1の薄板部34においてほぼ一定である。
【0066】
さらに、段部40は第1の薄板部34に接している末端に壁50を有する。従って、壁50で、第1の薄板部34から段部40に又、逆に段部40から薄板部34に移行する。
【0067】
壁50は、第2の軸方向円錐端22に向かって傾けられている。壁50は切り込み(アンダーカット)を有することも考えら得る。
【0068】
この第2の実施形態において、センタリングカラー28もまた、第1の薄板部34の方に向けられたアンダーカット52を有する。その他の部分では、センタリングカラー28は第1の薄板部34に向かって垂直である。
【0069】
第2の実施形態のシンクロナイザリング10の製造は、第1の実施形態のシンクロナイザリング10の製造とは異なる。
【0070】
一方で、2つの異なった工具46,つまり第1の工具と第2の工具が、段部40とセンタリングカラー28を形成するために使われる。
【0071】
一方で、第2の軸方向円錐端22から始まり、摩擦表面18と平行に第1の軸方向円錐端20に向かって、第1の工具と第2の工具が移動される。
【実施例3】
【0072】
図6は、シンクロナイザリング10の第3の実施形態を示す。そこでは、分かりやすくするために、段部40の表示が省略されている。
【0073】
この実施形態で、センタリングカラー部44は第2の円錐端22から距離を違えて配置されている。
【0074】
例えば、第1のセンタリングカラー部44.1は、第2の軸方向円錐端22から第1の軸距離a1の間をあけて配置される。
【0075】
第2のセンタリングカラー部分44.2は、第2の軸円錐端22から第2の距離a2の間をあけて配置されている。その距離a2は第1の軸距離a2とは異なる。例えば、第1の軸距離a1は第2の軸距離a2より短い。
【0076】
図6に示された第3の実施形態において、隣り合ったセンタリングカラー部分44.1と44.2は互いに直接移行する。そのため、円周方向に波形形状に伸びた連続したセンタリングカラー28が得られる。その結果、センタリングカラー28の軸方向寸法は大きくすることができる。
【0077】
第3の実施形態に係るセンタリングカラー部44の設計は、第1又は第2の実施形態の段部40の設計と組み合わせられる。
【0078】
図示された実施形態の残りの特徴も当然に、適宜互いに組み合わせられる。例えばアンダーカット又は角度をつけられた壁50もまた、第1の実施形態のシンクロナイザリング10に設けられる。
【符号の説明】
【0079】
10:シンクロナイザリング、12:同期装置、14:薄板金属円錐体、
16:半径方向外側面、18:摩擦表面、20:第1の軸方向円錐端、
22:第2の軸方向円錐端、24:係止歯、26:底部、28:センタリングカラー、
30:センタリングハブ、32:当接面、34:第1の薄板部、36:第2の薄板部、
38:半径方向外側面、40:段部、42:半径方向外側面、
44:センタリングカラー部、44.1:センタリングカラー部、
44.2:センタリングカラー部、46:第1/第2の工具、50:壁、
A:リング中心軸、a1:第1の軸距離、a2:第2の軸距離、
d:距離、t:リング厚、t:カラー厚、t:残厚、tS:半径方向距離
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6