(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】縦列型機械式駐車装置及び縦列型機械式駐車装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
E04H6/18 601G
E04H6/18 601A
(21)【出願番号】P 2017238695
(22)【出願日】2017-12-13
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 隼人
(72)【発明者】
【氏名】原 和也
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 和也
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-284372(JP,A)
【文献】特開平07-293023(JP,A)
【文献】特開2000-345726(JP,A)
【文献】特開2005-200892(JP,A)
【文献】特開2001-063971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式駐車装置が入庫方向に複数並び、複数の該機械式駐車装置の入庫口が共有される縦列型機械式駐車装置であって、
前記機械式駐車装置は、車両が搭載されるパレットと、前記パレットを搬送する搬送機が昇降する昇降路と、前記搬送機によって搬送された前記パレットを格納する格納棚と、を有し、
前記入庫口が設けられた前記機械式駐車装置が有する前記パレットは、前記入庫口から前記入庫口が設けられていない前記機械式駐車装置である奥側機械式駐車装置までの車路に用いることができ、
前記パレットを前記車路として用いている状態で、前記パレット上の前記車両の重量を測定する重量測定手段
と、
前記搬送機を昇降させる駆動部と、
前記重量測定手段が測定した重量に基づいて、前記車両が搭載された前記奥側機械式駐車装置が有する前記パレットを搬送する前記搬送機の搬送速度を変更するように、前記駆動部を制御する駆動部制御手段とを備えている縦列型機械式駐車装置。
【請求項2】
前記重量測定手段が測定した重量が、前記奥側機械式駐車装置における制限重量に基づいた閾値を超えているか否かを判断する判断手段を備える請求項
1に記載の縦列型機械式駐車装置。
【請求項3】
前記パレットを前記車路として用いている状態で、前記車両の前後方向の全長を測定する全長測定手段を備える請求項1
または請求項2に記載の縦列型機械式駐車装置。
【請求項4】
前記パレットを前記車路として用いている状態で、前記車両の車幅を測定する車幅測定手段を備える請求項1から請求項
3のいずれかに記載の縦列型機械式駐車装置。
【請求項5】
機械式駐車装置が入庫方向に複数並び、複数の該機械式駐車装置の入庫口が共有される縦列型機械式駐車装置の制御方法であって、
前記機械式駐車装置は、車両が搭載されるパレットと、前記パレットを搬送する搬送機が昇降する昇降路と、前記搬送機によって搬送された前記パレットを格納する格納棚と、を有し、
前記入庫口側の前記機械式駐車装置に設けられた前記パレットは、前記入庫口から前記入庫口が設けられていない前記機械式駐車装置である奥側機械式駐車装置までの車路に用いることができ、
前記パレットを前記車路として用いている状態で、前記車両の重量を測定する重量測定工程
と、
前記搬送機を昇降させる駆動工程と、
前記重量測定工程において測定した重量に基づいて、前記駆動工程において前記車両が搭載された前記奥側機械式駐車装置が有する前記パレットを搬送する前記搬送機の搬送速度を変更するように制御する駆動部制御工程とを備えている縦列型機械式駐車装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦列型機械式駐車装置及び縦列型機械式駐車装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置として、入庫する車の進行方向にエレベータ式駐車装置を複数列連なって配置する縦列型エレベータ式駐車装置が知られている(例えば、特許文献1)。このような、縦列型エレベータ式駐車装置では、1つのエレベータ式駐車装置のみに入出庫口を設け、入出庫口が設けられていないエレベータ式駐車装置(以下、「奥側機」という。)には、入出庫口を設けたエレベータ式駐車装置(以下、「手前側機」という。)を通過して入庫する構造とされる。
【0003】
エレベータ式駐車装置には、機能上、床面にピット開口を設ける必要がある。このため、奥側機に入庫する際には、手前機を車両が通過できるように、手前側機の床面に形成されたピット開口を、移動床等の特別な装置を用いて塞ぎ、車路を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、エレベータ式駐車装置に用いられる様々な機械が大型化してきたことにより、移動床等の車路形成用の特別な装置の設置スペースが不足してきたことや、コスト低減を図るとの観点から、移動床等の車路形成用の特別な装置を用いずに、奥側機への車両進入を可能とすることが望まれている。
【0006】
特許文献1に開示された装置では、奥側機への入出庫の際に必要となる車路を、これまでの昇降床装置による昇降床に代えて車路用パレットを用い、これを車両格納棚の1つに格納しておき、入出庫の際にエレベータケージに搭載して乗入れ部に設置することで車路を確保するようにしている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された装置では、パレットを奥側機への入庫の際の車路としてのみ用いており、奥側機への入庫前に車両の状態等を確認することはできない。
したがって、奥側機へ入庫しようとする車両、または、奥側機へ入庫した車両に対して、車両の状態に応じた対応をとることができない可能性があった。また、車両の状態に応じた対応をとることができないことで、装置全体の円滑性が低減する可能性があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、円滑性を向上させることができる縦列型機械式駐車装置及び縦列型機械式駐車装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の縦列型機械式駐車装置及び縦列型機械式駐車装置の制御方法は以下の手段を採用する。
本発明の一態様に係る縦列型機械式駐車装置は、機械式駐車装置が入庫方向に複数並び、複数の該機械式駐車装置の入庫口が共有される縦列型機械式駐車装置であって、前記機械式駐車装置は、車両が搭載されるパレットと、前記パレットを搬送する搬送機が昇降する昇降路と、前記搬送機によって搬送された前記パレットを格納する格納棚と、を有し、前記入庫口が設けられた前記機械式駐車装置が有する前記パレットは、前記入庫口から前記入庫口が設けられていない前記機械式駐車装置である奥側機械式駐車装置までの車路に用いることができ、前記パレットを前記車路として用いている状態で、前記パレット上の前記車両の重量を測定する重量測定手段を備えている。
【0010】
入庫口側のエレベータ式駐車装置(以下、「手前側機」という。)と奥側エレベータ式駐車装置(以下、「奥側機」という。)との入庫口が共有されている構造においては、奥側機に入庫するためには、手前側機を通過する必要がある。通常、機械式駐車装置には、パレットを搬送する搬送機械や車両を旋回するための旋回装置等を設ける関係で、床面にピットが形成されている。したがって、手前側機を通過するためには、ピットを塞ぐ必要がある。
上記構成では、パレットを車路に用いることができるので、奥側機に入庫するために車両が手前側機を通過する際に、パレットを用いてピットを塞ぐことができる。これにより、手前側機を通過させるための特別な装置(例えば、移動床装置等)を設けることなく、車両を奥側機へ入庫させることができる。したがって、特別な装置を設ける構成と比較して、建設コストを低減することができる。
【0011】
また、上記構成では、パレットを車路として用いている状態で、車両の重量を測定する重量測定手段を備えている。これにより、車両が奥側機へ入庫する前段階である手前側機の通過時に車両の重量を測定することができるので、車両が奥側機に入庫するよりも前に、車両の重量に応じた対応をとることができる。したがって、縦列型機械式駐車装置において、円滑性を向上させることができる。
車両の重量に応じた対応とは、例えば、奥側機において車両重量に応じた対応を準備する対応や、制限重量よりも重い車両に対して迅速に通知する対応等である。
【0012】
本発明の一態様に係る縦列型機械式駐車装置は、前記搬送機を昇降させる駆動部と、前記重量測定手段が測定した重量に基づいて、前記車両が搭載された前記パレットを搬送する前記搬送機の搬送速度を変更するように、前記駆動部を制御する駆動部制御手段と、を備えてもよい。
【0013】
搬送機の搬送速度は、車両の重量にかかわらず、定格重量(最も重い重量)により決定された固定値であるため、車両重量の軽い車両に対しては、搬送機を昇降させる駆動部の性能に余裕があり、駆動部の性能を有効に使用していなかった。
上記構成では、車両重量に基づいて、搬送機の搬送速度を変更するように駆動部を制御しているので、該駆動部の性能を有効に活用することができる。また、その結果、搬送機の昇降時間を短縮することができる。
また、奥側機に車両が入庫するよりも前である手前側機で車両重量を計測しているので、駆動部制御手段が車両重量に基づいて搬送速度を変更する準備をすることができる。したがって、奥側機に入庫した車両を迅速に車両重量に基づいた搬送速度で搬送することができ、縦列型機械式駐車装置において、円滑性を向上させることができる。
【0014】
本発明の一態様に係る縦列型機械式駐車装置は、前記重量測定手段が測定した重量が、前記奥側機械式駐車装置における制限重量に基づいた閾値を超えているか否かを判断する判断手段を備えていてもよい。
【0015】
上記構成では、奥側機に入庫する車両の重量が、奥側機における制限重量に基づいた閾値を超えているか否かを、奥側機に車両が入庫する前(すなわち、運転者が乗車した状態時)に判断することができる。これにより、車両が奥側機に入庫するよりも前に、車両が制限重量に基づいた閾値よりも重いか否かを把握することができる。したがって、搬送機において制限重量よりも重い車両を搬送する事態を防止することができ、安全性を向上させることができるとともに、搬送機の故障を抑制することができる。
また、例えば、閾値超えた重量の車両に対して、運転者が乗車した状態で、運転者にその旨を通知する通知手段を設けた場合には、縦列型機械式駐車装置において、円滑性を向上させることができる。すなわち、運転者が降車した状態で車両重量を測定する場合には、制限重量よりも車両重量が重い際に、再度運転者の乗車が必要となる等、対処が煩雑となるが、運転者が乗車した状態において、車両重量が制限重量を超えている旨を通知することで、運転者が乗車した状態を維持したまま処理を行うことができるので、簡易に対処することができる。したがって、縦列型機械式駐車装置において、円滑性を向上させることができる。
【0016】
本発明の一態様に係る縦列型機械式駐車装置は、前記パレットを前記車路として用いている状態で、前記車両の前後方向の全長を測定する全長測定手段を備えていてもよい。
【0017】
上記構成では、パレットを車路として用いている状態で、車両の全長を測定する全長測定手段を備えている。これにより、奥側機に入庫する車両の全長を、奥側機に車両が入庫する前に測定することができる。したがって、例えば、入庫する前に測定した全長を用いることで、奥側機における車両の停止位置を、車長に応じた適切な位置とすることに利用することができる。
【0018】
本発明の一態様に係る縦列型機械式駐車装置は、前記パレットを前記車路として用いている状態で、前記車両の車幅を測定する車幅測定手段を備えていてもよい。
【0019】
上記構成では、パレットを車路として用いている状態で、車両の車幅を測定する車幅測定手段を備えている。これにより、奥側機に入庫する車両の車幅を、奥側機に車両が入庫する前に測定することができる。したがって、例えば、入庫する前に測定した車幅を用いることで、奥側機における車両の停止位置を、車幅に応じた適切な位置とすることに利用することができる。また、例えば、ドアミラーの畳み忘れ等を運転者が乗車した状態で通知することに利用することができる。
【0020】
本発明の一態様に係る縦列型機械式駐車装置の制御方法は、機械式駐車装置が入庫方向に複数並び、複数の該機械式駐車装置の入庫口が共有される縦列型機械式駐車装置の制御方法であって、前記機械式駐車装置は、車両が搭載されるパレットと、前記パレットを搬送する搬送機が昇降する昇降路と、前記搬送機によって搬送された前記パレットを格納する格納棚と、を有し、前記入庫口側の前記機械式駐車装置に設けられた前記パレットは、前記入庫口から前記入庫口が設けられていない前記機械式駐車装置である奥側機械式駐車装置までの車路に用いることができ、前記パレットを前記車路として用いている状態で、前記車両の重量を測定する重量測定工程を備えている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、縦列型機械式駐車装置の円滑性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る縦列型機械式駐車装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の縦列型機械式駐車装置における乗入階の平面図である。
【
図3】
図1の縦列型機械式駐車装置の模式的な縦断面図であって、パレットを車路として用いている状態を示した図である。
【
図4】
図1の縦列型機械式駐車装置における制御装置等のブロック構成図である。
【
図5】
図1の縦列型機械式駐車装置における乗入階を模式的に示した斜視図であって、車両の全長を測定している状態を示した図である。
【
図6】
図1の縦列型機械式駐車装置における乗入階を模式的に示した斜視図であって、車両の車幅を測定している状態を示した図である。
【
図7】
図1の縦列型機械式駐車装置における乗入階を模式的に示した斜視図であって、車両の重量を測定している状態を示した図である。
【
図8】
図1の縦列型機械式駐車装置が行う奥側機入庫時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図1の縦列型機械式駐車装置における第1センサ部での車両の計測方法を示した模式的な側面図である。
【
図10】
図1の縦列型機械式駐車装置における第1センサ部での車両の計測方法を示した模式的な側面図である。
【
図11】
図1の変形例を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る縦列型機械式駐車装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る縦列型機械式駐車装置は、乗入階の上方に格納棚19が設けられているエレベータ式駐車装置が、車両2の入出庫方向に複数並び、入出庫口(入庫口)3を共有している縦列型エレベータ式駐車装置1である。すなわち、縦列型エレベータ式駐車装置1は、入出庫口3を有する手前側のエレベータ式駐車装置(以下、「手前側機4」という。)及び、入出庫口3を有していないエレベータ式駐車装置(奥側機械式駐車装置。以下、「奥側機5」という。)で構成される。本実施形態に係る縦列型エレベータ式駐車装置1は、一例として、2つのエレベータ式駐車装置が前後に並んでいる。以下の説明において、手前側機4では、入出庫口3を有する階を乗入階と称呼し、奥側機5では、手前側機4の乗入階と同じ高さに位置する階を乗入階と称呼する。また、入出庫口3には上下スライド式の入出庫扉6(
図3参照)が設けられている。
【0024】
図2及び
図3に示すように、手前側機4及び奥側機5の乗入階は、乗降室となっており、その床面7には、主に車両2の方向を転換させる目的のターンテーブル8が設置されている。ターンテーブル8は、乗入階の床面7に形成された凹状の開口ピット9内に旋回板10と旋回駆動部11が設けられた構成である。旋回駆動部11が旋回板10を150mm~200mm程度持ち上げつつ、旋回板10を旋回させることで、ターンテーブル8上に載置された後述するパレット18を旋回させる。なお、手前側機4及び奥側機5の乗降室の詳細については後述する。
【0025】
図3に示すように、手前側機4及び奥側機5の中心部には、垂直な昇降路13が形成されており、この中に搬送機(エレベータ状のパレット搬送機)14が上下に昇降可能に設けられている。搬送機14は、手前側機4及び奥側機5の上部に設けられたウインチ15(
図7参照)から下方に延びるワイヤロープ16(
図7参照)に吊持されている。搬送機14は、モータ(駆動部)17(
図7参照)によってウインチ15が駆動することにより昇降路13内を上下に昇降する。また、モータ17には、モータ17の負荷を検出するモータ部センサ20(
図4参照)と、モータ17の負荷を後述する制御装置(判断手段)34に送信するとともに、制御装置34からの上方により、モータ17の出力を制御するモータ制御部(駆動部制御手段)23(
図4参照)と、が設けられている。
【0026】
昇降路13の両側には格納棚19が設けられている。この格納棚19は、昇降路13を挟むようにして上下に多階層状に設けられており、それぞれの格納棚19にはパレット18が1枚ずつ収容されている。すべての階層において、昇降路13の一側に配置された格納棚19と、昇降路13の他側に配置された格納棚19とは、それぞれ略同一の高さ位置に配置されている。なお、格納棚19は、支柱等によって支持されているが、支柱等は図示が省略されている。
【0027】
また、パレット18は、搬送機14により把持され格納棚19と、乗入階とを往復する。パレット18は、乗入階に降ろされたときに、開口ピット9を塞ぐように、降ろされる。本実施形態に係るパレット18は、格納棚19に格納される車両2が載置されるとともに、入出庫口3から奥側機5までの車路の一部となる。
【0028】
パレット18は、鋼板を折曲し形成されており、その幅方向中央部に形成されたセンターガイド凸部と、両側の側縁部に立設された左右一対の車輪誘導壁と、センターガイド凸部と車輪誘導壁との間に形成されて車両2の車輪をパレット18の長手方向(載置される車両2の前後方向)に沿わせて誘導する2本の車輪誘導溝と、を有する。センターガイド凸部、車輪誘導壁及び車輪誘導溝は、パレット18の長手方向の略全域に亘って設けられている。
【0029】
次に、乗降室について詳細に説明する。
図5~
図7は、手前側機4及び奥側機5の乗降室を示す斜視透視図であって、車両2が、手前側機4の乗降室21を通過して、奥側機5へと入庫する様子を示している。
手前側機4の乗降室21には、
図5~
図7に示すように、外側から見て、入出庫口3に向かって左側に非常用出入口25があり、入出庫口3の上部に青と赤のランプを備えた入庫管制灯26が設けられている。また、入出庫口3に向かって右側に操作盤27が設けられている。操作盤27は、利用者が各自で機械操作を行う入力部である。
乗降室21の内部には、中央部にパレット18(
図5~
図7では、図示の関係上パレット18を省略している)が配置されるスペースがあり、パレット18の配置スペースを挟んだ乗降室21の両側面の壁には、車両2の車速、車長及び前後位置等を検知するための第1センサ部(全長測定手段)28が設けられている。また、乗降室21の内部には、車両2の車幅を検知するための第2センサ部(車幅測定手段)33(
図4参照)が設けられている。
さらに、乗降室21の内部に、主に手前側機4の制御を行う手前側機制御装置29が設置されている。手前側機制御装置29は、入出庫口3、ターンテーブル8、搬送機14等による一連の入出庫動作(機械操作)の実行等を行う装置である。
【0030】
第1センサ部28は、
図9及び
図10に示すように、複数(本実施形態では、一例として6つ)の光電管センサにより構成されている(
図5~
図7では図示の関係上2つのみを図示している)。光電管センサは、入庫した車両2の前後方向と交差する方向に光軸が位置するように、所定の間隔で並んで配置されている。なお、以下では、複数の光電管センサを入出庫口3側から順番に、第1光電管センサ28a~第6光電管センサ28fと呼ぶ。第1光電管センサ28aと第2光電管センサ28bとは、比較的近距離に設置され、通過する車両の車速を計測する。第3光電管センサ28c~第6光電管センサ28fは、不等間隔で配置されており、この距離のずれを利用して車両2の全長を判定する。第3光電管センサ28cの光軸は、手前側機4における適正停車位置の入出庫口3側端部に位置し、第6光電管センサ28fの光軸は、手前側機4における適正停車位置の奥側機5側端部に位置する。第3光電管センサ28c及び第6光電管センサ28fによって、手前側機4に停車する車両2が適正な停車位置に停車しているかを判定する。
【0031】
第2センサ部33(
図5~
図7では図示省略)は、複数(本実施形態では、一例として2つ)の光電管センサにより構成されている。複数の光電管センサは、入庫した車両2の前後方向に光軸A(
図6参照)が位置するように、所定の間隔で並んで配置されている。第2センサ部33の光電管センサは、各々、光軸Aが、車路として用いられる状態のパレット18における2本の車輪誘導溝よりも車幅方向外側に位置するように配置されるとともに、2つの光電管センサがセンターガイド凸部を基準として同じ側にならないように配置される。
【0032】
なお、手前側機4においては、第1センサ部28及び第2センサ部33は、手前側機4の入庫時における対象車両2の全長が所定の全長以下かを判定する役割と、適正位置に停車しているか否かを判定する役割と、を有するとともに、奥側機5の入庫時における対象車両2の全長が所定の全長以下かを判定する役割も有する。
【0033】
奥側機5の乗降室22の内部には、中央部にパレット18(
図5~
図7では、図示の関係上パレット18を省略している)が配置されるスペースがあり、正面(すなわち、手前側機4と逆側)の壁には車両2の位置をドライバーが確認するための鏡30と、ドライバーに対して指示を行う電光式の表示装置31が設けられている。
さらに、乗降室22の内部に、主に奥側機5の制御を行う奥側機制御装置32が設置されている。奥側機制御装置32は、入出庫口3、ターンテーブル8、搬送機14等による一連の入出庫動作(機械操作)の実行等を行う装置である。
また、奥側機5の乗降室22にも手前側機4の乗降室21に設けられている第1センサ部28及び第2センサ部33と同じセンサが設けられている(図示では省略)。なお、第1センサ部28の各光電管センサの配置は、奥側機5の適正停車位置に基づいて配置されている。第1センサ部28及び第2センサ部33は、奥側機5の入庫時における対象車両2の全長が所定の全長以下かを判定する役割と、適正位置に停車しているか否かを判定する役割と、を有する。
【0034】
なお、手前側機4の乗降室21と、奥側機5の乗降室22とは、車両2が通過可能に連通しており、鏡30及び表示装置31は、手前側機4の乗降室21からも視認可能となっている。
【0035】
手前側機制御装置29及び奥側機制御装置32は、各々、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
手前側機制御装置29及び奥側機制御装置32は、互いに情報の送受信を行い、縦列型エレベータ式駐車装置1全体の制御を行う制御装置34を構成している。
制御装置34は、
図4に示すように、第1センサ部28、第2センサ部33及びモータ部センサ20からデータを受信し、受信したデータに基づいて、モータ制御部23及び表示装置31を制御する。
【0036】
次に、本実施形態における奥側機5への入庫方法について
図3を用いて説明する。
奥側機5に車両2を格納する際には、まず、手前側機4において、車両2が搭載されていないパレット18を検索する。この検索は、複数段の格納棚19の下段から検索を行う。検索により、車両2が搭載されていないパレット18を検出すると、当該パレット18を車路とすることを決定する。車路とすることが決定されたパレット18は、当該パレット18が格納されている格納棚19から、搬送機14によって、乗降室21に搬送される。
図3に示すように、乗降室21に搬送された、パレット18は、開口ピット9を塞ぐように配置される。このとき、パレット18は、乗入階の床面7上には載置されずに、床面7から僅かに浮かせるように、モータ17の駆動力によって維持されている(
図3では、図示の関係上浮いている状態は図示していない)。なお、床面7には、パレット18を車路に用いる際に、パレット18の車輪誘導溝が、床面7と同レベルになるように、パレット18が収納される開口を形成してもよい。このような開口を形成することで、車両2がパレット18状に載り易くすることができる。
また、手前側機4において、車路とするパレット18が乗降室21に搬送されるのと平行して、奥側機5では、車両2が載置されていないパレット18が、収容されている格納棚19から、搬送機14によって乗降室22に降ろされる。
次に、
図2に示すように、入出庫口3から手前側機4に入庫した車両2が、パレット18の上を通過し、奥側機5に入庫する。このパレット18の上を車両2が通過する際に、後述する奥側機入庫処理を行う。
奥側機5に入庫した車両2は、乗降室22に待機しているパレット18に載置される。このとき、車両2は、第1センサ部28及び表示装置31からの指示によって、適正停車位置に停車する。次に、車両2が載置されたパレット18ごとターンテーブル8によって90°方向転回される。そして、搬送機14によって昇降路13を上昇し、車両2がパレット18ごと格納棚19に格納される。
なお、車両2を格納棚19から出庫させる場合には、この逆の運用が行われる。ただし、出庫時には、車両2がパレット18の上を通過する際に、奥側機入庫処理は行われない。
【0037】
次に、本実施形態の制御装置34が行う奥側機入庫処理について
図8のフローチャートを用いて説明する。
まず、制御装置34は、第1光電管センサ28aが車両2を検出したか否かを判定する(S1)。第1光電管センサ28aが車両2を検出したと判定した場合には、次に制御装置34、第2光電管センサ28bが車両2を検出したか否かを判定する(S2)。S1において、第1光電管センサ28aが車両2を検出していないと判定した場合には、S1を繰り返す。
【0038】
S2において、第2光電管センサ28bが車両2を検出したと判定した場合には、制御装置34は、第1光電管センサ28a及び第2光電管センサ28bの検出データに基づいて車長及び車速の確認(測定)を行う(S3)。なお、S2において、第2光電管センサ28bが車両2を検出していないと判定した場合には、S2を繰り返す。
【0039】
S3で車長及び車速の確認を行うと、次に制御装置34は、S3で確認した車長が所定の閾値よりも長いか否かを判定する(S4)。車長が所定の閾値以下と判定した場合には、S3で確認した車長及び車速に基づいて、表示装置31に表示をする適切なタイミングを算出するとともに、算出したタイミングで表示装置31に正常に停止する旨を表示する(S5)。車長が所定の閾値よりも長いと判定した場合には、表示装置31に車長オーバーの表示を表示する(S6)。表示装置31に車長オーバーの表示を表示すると、制御装置34は、第1光電管センサ28aが車両2を検出したか否かを判定する(S1)処理に戻る。なお、表示装置31に表示をする適切なタイミングとは、奥側機5の適切な停車位置に車両2が停車できるように、車両2を導くタイミングであり、例えば、車速の速い車両2には早いタイミングで表示をし、車速の遅い車両2には遅いタイミングで表示をする。
【0040】
また、制御装置34は、車長が所定の閾値よりも長いか否かを判定する処理(S4)と並行して、S3で確認した車速が所定の閾値より速いか否かを判定する(S7)。車速が所定の閾値以下と判定した場合には、S3で確認した車長及び車速に基づいて、表示装置31に表示をする適切なタイミングを算出するとともに、算出したタイミングで表示装置31に、正常に停止する旨を表示する(S5)。車速が所定の閾値よりも早いと判定した場合には、表示装置31に車速オーバーである旨の表示をする(S8)。表示装置31に表示する車速オーバーである旨の表示とは、例えば、減速を促す「減速!」という表示や、停車を促す「停車」という表示である。表示装置31に車速オーバーの表示をすると、制御装置34は、第1光電管センサ28aが車両2を検出したか否かを判定する(S1)処理に戻る。なお、収納可能な車重及び車長の車両である場合には、
図8の破線で示すように、表示装置31に車速オーバーの表示をした後に、本処理を終えてもよい。
【0041】
S2において、第2光電管センサ28bが車両2を検出したと判定した場合には、制御装置34は、第1光電管センサ28a及び第2光電管センサ28bの検出データに基づいて車長及び車速の確認(測定)を行う処理(S3)と並行して、第2センサ部33が車両2を検出したか否かを判定する(S9)。第2センサ部33が車両2を検出したと判定した場合には、車幅の確認(測定)を行う(S10)。第2センサ部33が車両2を検出していないと判定した場合には、S10を繰り返す。
【0042】
S10で、車幅の確認を行うと、次に制御装置34は、車幅が所定の閾値よりも長いか否かを判定する(S11)。車幅が所定の閾値以下と判定した場合には、S3で確認した車長及び車速に基づいて、表示装置31に表示をする適切なタイミングを算出するとともに、算出したタイミングで表示装置31に、正常に停止する旨を表示する(S5)。車幅が所定の閾値よりも長いと判定した場合には、表示装置31に車幅オーバーである旨を表示するか、もしくは、車両2の車幅方向の位置を正常な位置へと誘導する表示を行う(S12)。表示装置31に表示する正常な位置へと誘導する表示とは、例えば、車両2を検知していない光電管センサ側に車両2を誘導する「右へ」もしくは「左へ」という表示である。表示装置31に表示装置31に車幅オーバーである旨を表示するか、もしくは、車両2の車幅方向の位置を正常な位置へと誘導する表示をすると、制御装置34は、第1光電管センサ28aが車両2を検出したか否かを判定する(S1)処理に戻る。なお、収納可能な車重及び車長の車両である場合には、
図8の破線で示すように、表示装置31に正常な位置へと誘導する表示をした後に、本処理を終えてもよい。
【0043】
S2において、第2センサ部33が車両2を検出したと判定した場合には、制御装置34は、第1光電管センサ28a及び第2光電管センサ28bの検出データに基づいて車長及び車速の確認を行う処理(S3)と並行して、モータ部センサ20が車両2を検出したか否かを判定する(S13)。モータ部センサ20が車両2を検出したと判定した場合には、車重の確認(測定)を行う(S14)。モータ部センサ20が車両2を検出していないと判定した場合には、S13を繰り返す。
【0044】
S14で、車重の確認を行うと、次に制御装置34は、車重が所定の閾値(本実施形態では、奥側機5の制限重量であって、例えば2500kg)よりも重いか否かを判定する(S15)。車重が所定の閾値以下と判定した場合には、S3で確認した車長及び車速に基づいて、表示装置31に表示をする適切なタイミングを算出するとともに、算出したタイミングで表示装置31に、正常に停止する旨を表示する(S5)。車重が所定の閾値よりも重いと判定した場合には、表示装置31に車重オーバーの表示を表示する(S16)。表示装置31に車重オーバーの表示を表示すると、制御装置34は、第1光電管センサ28aが車両2を検出したか否かを判定する処理(S1)に戻る。表示装置31に表示する車重オーバーである旨の表示とは、例えば、「重量オーバー!」という表示や、後退を促す「後退!」という表示である。
【0045】
S12で、車重の確認を行うと、制御装置34は、車重が所定の閾値よりも重いか否かを判定する処理(S15)と並行して、車重に基づいて、奥側機5の昇降速度及び加速度の設定を行う(S17)。
【0046】
S5で、表示装置31を正常に表示した場合には、制御装置34は、本処理を終了する。
【0047】
次に、S3で、車長及び車速を確認(測定)する方法について説明する。車長及び車速の確認(測定)は、主に制御装置34で行われる。
第1光電管センサ28a及び第2光電管センサ28bは、
図9及び
図10に示すように、比較的短い間隔で配置されている。車両2が手前側機4の乗降室21に入庫し、奥側機5に向かう際には、
図9及び
図10に示すように、第1光電管センサ28a、第2光電管センサ28bの順番で、車両2を検知する。
車速は、第1光電管センサ28aと第2光電管センサ28bとの離間距離と、第1光電管センサ28aが車両2を検知してから、第2光電管センサ28bが車両2を検知するまでの時間と、に基づいて算出される。
【0048】
車長は、第3光電管センサ28cから第6光電管センサ28fによって測定される。第3光電管センサ28cから第6光電管センサ28fは、不等間隔に配置されている。したがって、4つの光電管センサは、各々、他の光電管センサとの離間距離が相違している。本実施形態では、この相違を利用して、車長を測定している。
具体的には、
図9に示すように、最も長い離間距離のペアである第3光電管センサ28c及び第6光電管センサ28fが車両2を検知しない瞬間がある場合には、当該車両2の全長は、第3光電管センサ28cと第6光電管センサ28fとの離間距離よりも短いことが判断できる。なお、
図9では、図示の関係上、第4光電管センサ28dと第5光電管センサ28eを省略している。
また、
図10に示すように、第3光電管センサ28c及び第5光電管センサ28eが車両2を検知しない瞬間がある場合には、当該車両2の全長は、第3光電管センサ28cと第5光電管センサ28eとの離間距離よりも短いことが判断できる。当該車両2がさらに前進をし、仮に、第4光電管センサ28d及び第5光電管センサ28eが車両2を検知しない瞬間がある場合には、当該車両2の全長は、第4光電管センサ28dと第5光電管センサ28eとの離間距離よりも短いことが判断できる。
【0049】
次に、S11で、車幅を確認(測定)する方法について説明する。車幅の確認は、主に制御装置34で行われる。
上述したように、手前側機4の乗降室21には、2つの光電管センサを有する第2センサ部33が設けられている。両方の光電管センサが車両2を検知した場合には、車幅が閾値よりも長いと判断する。
なお、S12で車幅オーバーである旨の表示を行うか、正常な位置へと誘導する表示を行うかは、車両2の両側に配置された光電管センサの両方が車両2を検知するか、片方の光電管センサのみが車両2を検知するかによって変更する。すなわち、両方の光電管センサが車両2を検知した場合には、車幅が閾値よりも長いと判断し、車幅オーバーの表示を行う。片方の光電管センサのみが車両2を検知した場合には、車両2が正常な位置から車幅方向にずれた位置にいると判断し、正常な位置へと誘導する表示を行う。
【0050】
次に、S12で、車重を確認(測定)する方法について説明する。車重の確認は、主に制御装置34で行われる。
上述したように、車路として用いられていているパレット18は、乗入階の床面7上には載置されずに、床面7から浮かせるように、モータ17の駆動力によって維持されている。また、モータ部センサ20が、モータ17の負荷を常に監視している。具体的には、所定時間に数回モータ部負荷を検出することで、モータ17の負荷を監視している。
モータ17は、モータ制御部23によって、パレット18の位置を常に略同一の状態に維持するように制御されている。したがって、車路として用いられているパレット18に車両2が載ると、車両2重量分だけモータ17の負荷が増大する。これをモータ部センサ20が検出すると、モータ部センサ20がモータ制御部23または制御装置34にデータを送信する。データを受信したモータ制御部23または制御装置34は、車両2が載っていない状態のモータ負荷と、車両2が載っている状態のモータ負荷との差に基づいて、車両重量を測定する。すなわち、本実施形態では、モータ17、モータ部センサ20及びモータ制御部23等が車両重量を確認(測定)する車両重量測定手段を構成している。
【0051】
次に、S17で、昇降速度を変更する方法について説明する。
モータ17等の車両重量測定手段によって確認された重量に基づいて、当該車両2の搬送速度を調整する。具体的には、搬送機14の昇降速度及び加速度を適切な速度に設定を行う。適切な速度の設定とは、例えば、車両2が重い場合には、昇降速度及び加速度を遅くし、車両2が軽い場合には、昇降速度及び加速度を速くする設定等である。
【0052】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、奥側機5に入庫するために、手前側機4を通過する際に、開口ピット9を塞ぐために、車両2を格納するためのパレット18を用いることができる。これにより、手前側機4を通過させるための特別な装置(例えば、移動床装置等)を設けることなく、車両2を奥側機5へ入庫させることができる。したがって、特別な装置を設ける構成と比較して、建設コストを低減することができるとともに、省スペース化することができる。
また、車路に用いるパレット18を、最下段から検索しているので、最も下段にある空きパレット(車両2が搭載されていないパレット18)を車路として用いることができるので、パレット18の移動時間を短縮し、円滑性を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、パレット18を車路として用いている状態で、車両2の重量を測定する重量測定手段を備えている。これにより、車両2が奥側機5へ入庫する前段階である手前側機4の通過時に車両2の重量を測定することができるので、車両2が奥側機5に入庫するよりも前に、車両2の重量に応じた対応をとることができる。したがって、縦列型エレベータ式駐車装置1において、円滑性を向上させることができる。
【0054】
また、一般的に、搬送機の搬送速度は、車両2の重量にかかわらず、定格重量(最も重い重量)により決定された固定値であるため、車両重量の軽い車両2に対しては、搬送機を昇降させる駆動部の性能に余裕があり、駆動部の性能を有効に使用していなかった。
本実施形態では、車両2の重量に基づいて、搬送機14の搬送速度を変更するようにモータ17を制御しているので、モータ17の性能を有効に活用することができる。また、その結果、搬送機14の昇降時間を短縮することができる。
【0055】
また、奥側機5に車両2が入庫するよりも前である手前側機4で車両2の重量を計測しているので、モータ制御部23が車両2の重量に基づいて搬送速度を変更する準備をすることができる。したがって、奥側機5に入庫した車両2を迅速に車両2の重量に基づいた搬送速度で搬送することができ、縦列型エレベータ式駐車装置1において、円滑性を向上させることができる。
【0056】
本実施形態では、奥側機5に入庫する車両2の重量が、奥側機5における制限重量を超えているか否かを、奥側機5に車両2が入庫する前(すなわち、ドライバーが乗車した状態時)に判断することができる。これにより、車両2が奥側機5に入庫するよりも前に、車両2が制限重量よりも重いか否かを把握することができる。したがって、搬送機14において制限重量よりも重い車両2を搬送する事態を防止することができ、安全性を向上させることができるとともに、搬送機14の故障を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、制限重量を超えた重量の車両2に対して、ドライバーが乗車した状態で、ドライバーにその旨を通知する表示装置31を設けているので、縦列型エレベータ式駐車装置1の運転において、円滑性を向上させることができる。すなわち、ドライバーが降車した状態で車両2の重量を測定する場合には、制限重量よりも車両2の重量が重い際に、再度ドライバーの乗車が必要となる等、対処が煩雑となるが、ドライバーが乗車した状態において、車両2の重量が制限重量を超えている旨を通知することで、ドライバーが乗車した状態を維持したまま処理を行うことができるので、簡易に対処することができる。このように、縦列型エレベータ式駐車装置1において、円滑性を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、パレット18を車路として用いている状態で、車両2の全長を測定する第1センサ部28を備えている。これにより、奥側機5に入庫する車両2の全長を、奥側機5に車両2が入庫する前に測定することができる。したがって、入庫する前に測定した全長を応じて、表示装置31の表示タイミング等を変更することで、奥側機5における車両2の停止位置を、車長に応じた適切な位置に誘導することができる。
【0059】
また、本実施形態では、第1センサ部28によって、パレット18を車路として用いている状態で、車両2の車速を測定している。これにより、奥側機5に入庫する車両2の車速を、奥側機5に車両2が入庫する前に測定することができる。本実施形態では、入庫する前に測定した車速が適切でない場合には、表示装置31を用いて車両2のドライバーに通知しているので、奥側機5に入庫する際に、車両2の車速を、適切な速度とすることができる。
【0060】
また、本実施形態では、パレット18を車路として用いている状態で、車両2の車幅を測定する第2センサ部33を備えている。これにより、奥側機5に入庫する車両2の車幅を、奥側機5に車両2が入庫する前に測定することができる。したがって、入庫する前に測定した車幅に応じて、表示装置31の表示内容を変更することで、奥側機5における車両2の停止位置を、車幅に応じた適切な位置に誘導することができる。また、制限幅以上である原因がドライバーの対応で解消可能である場合(例えば、ドアミラーの畳み忘れ等)には、奥側機5に停車前(すなわち、ドライバーの降車前)に、表示装置31でドライバーに通知することができるので、迅速に対処し、制限幅以下とすることができる。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
例えば、手前側機4の乗降室21に、車両2の車高を検知するための車高センサを設けてもよい。車高センサが検知した車高が、制限高さ以上の場合には、車高オーバーである旨を表示装置31に表示することで、制限高さ以上の車両2の入庫を防止することができる。また、制限高さ以上である原因がドライバーの対応で解消可能である場合(例えば、アンテナの畳み忘れ等)には、ドライバーの降車前に、表示装置31でその旨をドライバーに通知することができるので、迅速に対処し、制限高さ以下とすることができる。
【0062】
また、モータ部センサ20が、モータ17の負荷を検出する回数を、第1センサ部28で検出した車速に基づいて変更してもよい。具体的には、車速が速いと判断した場合には、モータ17の負荷を検出する回数を増加させる。このようにすることで、車速が速い車両2であってもより正確に車両2の重量を測定することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、計測した車速が所定の閾値よりも早いと判定した場合には、表示装置31に車速オーバーである旨の表示をする例について説明したが、計測した車速に基づいて、表示装置31の表示タイミングを変更させてもよい。具体的には、例えば、車速が速い車両2には、早いタイミングで表示するようにしてもよい。
また、計測した車速に基づいて、停車を促す表示をしてから実際に車両2が停車するまでの時間を逆算し、奥側機5の乗降室22において適切な位置に停車可能と見込まれるタイミングで、停車を促す表示をしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、制御装置34は、奥側機5の制限重量である2500kgよりも重いか否かを判定していたが、判定の基準とする閾値は、これに限定されない。2500kgよりも重くてもよく、また、軽くてもよい。また、閾値として用いる値は制限重量に限らない。制限重量に基づいた重量であればよく、例えば、制限重量から所定重量余裕を持たせた重量としてもよい。また、ドライバーの体重等を考慮した重量としてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、縦列型エレベータ式駐車装置1に本発明を適用する例について説明したが、本発明は、これに限定されない。縦列型の機械式駐車装置なら適用可能であり、例えば、縦列型の循環式駐車装置に適用してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、乗入階に乗入れた際の車両2の向きと格納される車両2の向きとが異なる縦列型エレベータ式駐車装置1に本発明を適用する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図11に示すように、乗入階に乗入れた際の車両2の向きと格納される車両2の向きとが同一となる縦列型エレベータ式駐車装置100に本発明を適用してもよい。すなわち、本発明は、縦列型エレベータ式駐車場であれば、適用可能であり、乗入方式によっては限定されない。
【符号の説明】
【0067】
1 縦列型エレベータ式駐車装置(縦列型機械式駐車装置)
2 車両
3 入出庫口(入庫口)
4 手前側機
5 奥側機
6 入出庫扉
7 床面
8 ターンテーブル
9 開口ピット
10 旋回板
11 旋回駆動部
13 昇降路
14 搬送機
15 ウインチ
16 ワイヤロープ
17 モータ(駆動部)
18 パレット
19 格納棚
20 モータ部センサ
21 乗降室
22 乗降室
23 モータ制御部
28 第1センサ部(全長測定手段)
31 表示装置
33 第2センサ部(車幅測定手段)
34 制御装置(判断手段)
100 縦列型エレベータ式駐車装置(縦列型機械式駐車装置)