(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】電動アシスト自転車のアシスト力の算出方法、電動アシスト自転車用制御装置、電動アシスト自転車用パワーユニットおよび電動アシスト自転車
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20220920BHJP
【FI】
B62M6/45
(21)【出願番号】P 2018034953
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金原 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】中林 雄介
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/142199(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/101944(WO,A1)
【文献】特開平11-059558(JP,A)
【文献】特開2000-072080(JP,A)
【文献】特開2012-162174(JP,A)
【文献】米国特許第05922035(US,A)
【文献】中国実用新案第202295200(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/45-6/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動補助自転車のアシスト力の算出方法であって、
ペダルに入力される瞬時踏力を踏力センサから取得し、
クランク軸のクランク進角を、分解能が90°未満である進角センサから取得し、
前記瞬時踏力の極大点をピーク踏力として設定し、
前記ピーク踏力となる前記クランク軸の角度からの進角量を前記クランク進角として定義し、
前記瞬時踏力と前記ピーク踏力と前記クランク進角とに基づいて仮想踏力を求め、
前記仮想踏力に基づいて前記アシスト力を決定する、アシスト力の算出方法。
【請求項2】
電動補助自転車のアシスト力の算出方法であって、
ペダルに入力される瞬時踏力を踏力センサから取得し、
クランク軸のクランク進角を、分解能が90°未満である進角センサから取得し、
前記瞬時踏力が極大点となる前記クランク軸の角度からの進角量を前記クランク進角として定義し、
前記瞬時踏力の極大点をピーク踏力として設定し、
前記ピーク踏力と前記クランク進角から参照踏力を求め、
前記瞬時踏力と前記参照踏力とに基づいて仮想踏力を求め、
前記仮想踏力に基づいて前記アシスト力を決定する、
アシスト力の算出方法。
【請求項3】
今回の前記瞬時踏力が前記参照踏力を上回ったら前記ピーク踏力を今回の前記瞬時踏力で更新する処理を繰り返す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ピーク踏力が高いほど、前記仮想踏力における前記参照踏力に依存する程度を高くする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ピーク踏力が高いほど、前記仮想踏力における前記参照踏力に依存する程度を低くする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ケイデンスが低いほど、前記仮想踏力における前記瞬時踏力に依存する程度を高くする、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
ケイデンスが低いほど、前記仮想踏力における前記瞬時踏力に依存する程度を低くする、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
電動モータによってアシスト力を発生させる電動補助自転車用の制御装置であって、
前記制御装置は、
踏力センサから瞬時踏力を取得し、
クランク軸のクランク進角を取得する、分解能が90°未満である進角センサからクランク進角を取得し、
前記瞬時踏力の極大点をピーク踏力として設定し、
前記ピーク踏力となる前記クランク軸の角度からの進角量を前記クランク進角として定義し、
前記瞬時踏力と前記ピーク踏力と前記クランク進角とに基づいて仮想踏力を求め、
前記仮想踏力に基づいて前記アシスト力を決定する、ように構成されている電動補助自転車用制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の制御装置と、
前記制御装置で決定された前記アシスト力を駆動輪に発生させる前記電動モータと、を備えた電動補助自転車用のパワーユニット。
【請求項10】
請求項
9に記載の前記パワーユニットと、
前記パワーユニットにより前記アシスト力が付与される前記駆動輪とを備えた、電動補助自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アシスト自転車のアシスト力の算出方法、電動アシスト自転車用制御装置、電動アシスト自転車用パワーユニットおよび電動アシスト自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
電動アシスト自転車のアシスト力の算出方法として、特許文献1の技術が知られている。特許文献1に記載の算出方法では、入力トルクに平滑化処理を施して平滑化トルクを得て、この平滑化トルクに基づいてアシスト力を算出している。入力トルクから平滑化トルクを算出するに際しては、入力トルクの1周期に相当する可変期間における入力トルクのトルク値の移動平均を平滑化トルクとしている。
【0003】
ところで、走行シーンに応じて、入力トルクの変動に応じて素早くアシストトルクを変動させたい場合と、入力トルクが変動しても滑らかにアシストトルクを変動させたい場合とがある。そこで特許文献1は、入力トルクの変動に対してどの程度機敏にアシストトルクを変動させるかを、平滑度という度合いで調整している。特許文献1は、移動平均を算出する際に用いる入力トルクのトルク値の個数を減らすことによって、平滑化率を小さくしている。例えば平滑化率が大きい場合は、入力トルクの1周期のうちの4点のトルク値から求めた移動平均を平滑化トルクとして算出する。また、平滑化率が小さい場合は、入力トルクの1周期のうちの24点のトルク値から求めた移動平均を平滑化トルクとして算出する。
【0004】
つまり、特許文献1の算出方法は、移動平均を算出するための入力トルクのサンプリング時間を変動させることにより平滑化率を変更している。ペダル負荷に応じてこのサンプリング時間を変動させることにより、乗員にとって快適なアシストフィーリングを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、ペダル負荷に応じて平滑化率が制御されている。例えば、ペダル負荷が小さいときには平滑化率が小さく設定されている。これにより、ペダル負荷が小さい状態において加速するために入力トルクが急激に増加した場合に、アシスト力を入力トルクの変化に追従させやすい。これにより、応答性がよい乗員の意思に沿った適切なアシスト力が得られる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の算出方法においては、シーンごとにシーンに適した算出モードを設定する必要がある。例えば、平坦路を走行中に急に加速したい場合には、上記したように、ペダル負荷が低いほど平滑化率が低い方が好ましい。一方で、ペダル負荷が低いほど平滑化率が低いと、ペダル負荷が高い上り坂を登坂中にペダルの上死点と下死点で弱まるペダル負荷に応じてアシスト力も弱まってしまう。この場合には、ペダル負荷が高いほど平滑化率が高い方が好ましい。
【0008】
このように、乗員のアシストフィーリングを高めるためには、シーンに応じてペダル負荷が高いほど平滑化率を高くするか、低くするか、平滑化率をどのくらいに設定したらよいか、といったモードを細かく設定する必要がある。あらゆるシーンを想定してあらゆるモードを設定することは煩雑である。
【0009】
そこで本発明は、簡易な制御方法で複数の異なるシーンに応じて好ましいアシスト力が得られる、電動アシスト自転車のアシスト力の算出方法、電動アシスト自転車用制御装置、電動アシスト自転車用パワーユニットおよび電動アシスト自転車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
電動アシスト自転車のアシスト力の算出方法であって、
ペダルに入力される瞬時踏力(instant pedaling force)を踏力センサから取得し、
クランク軸のクランク進角を、分解能が90°未満である進角センサから取得し、
少なくとも前記瞬時踏力と前記クランク進角に基づいて前記アシスト力を決定する、アシスト力の算出方法が提供される。
また、上記方法を実行可能な電動アシスト自転車用制御装置、電動アシスト自転車用パワーユニットおよび電動アシスト自転車が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な制御方法で複数の異なるシーンに応じて好ましいアシスト力が得られる、電動アシスト自転車のアシスト力の算出方法、電動アシスト自転車用制御装置、電動アシスト自転車用パワーユニットおよび電動アシスト自転車が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動アシスト自転車の側面図である。
【
図2】実施形態に係る電動アシスト自転車の機能を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る制御装置が出力する仮想踏力の走行シーンに応じた変動を表す概念図である。
【
図4】実施形態に係る制御装置が実行する処理のフローチャートである。
【
図5】クランク進角補正係数の一例を示すグラフである。(a)は本実施形態において用いるクランク進角補正係数を示し、(b),(c),(d)は変形例に係るクランク進角補正係数を示す。
【
図6】上り坂から平坦路にかけて走行する際に出力されるアシスト力を示す図であり、(a)は従来例に係る制御方法により算出されるアシスト力を示し、(b)は本実施形態に係る制御方法により算出されるアシスト力を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、
図1を参照しながら説明する。なお、図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものとは限らない。
【0014】
以下の説明において、前方、後方、左方及び右方は、ハンドル23を握りつつ電動アシスト自転車のシート24に着座した運転者から見た前方、後方、左方及び右方を意味する。
【0015】
まず、本発明の実施形態に係る電動アシスト自転車について説明する。
<電動アシスト自転車の全体構成>
図1に示すように、電動アシスト自転車1は、ペダル33,34と電動モータ60とを有している。この電動アシスト自転車1は、運転者がペダル33,34を踏み込むことにより生じるペダルトルクと、電動モータ60から出力されるモータトルクとを合計した駆動トルクによって駆動される。電動モータ60のモータトルクが、運転者のペダル33,34の踏み込み動作をアシストするアシストトルクとなる。
【0016】
電動アシスト自転車1は、前後方向に延びる車体フレーム11を有する。また、電動アシスト自転車1は、前輪21、後輪22、ハンドル23、シート24及びパワーユニット40を有する。
【0017】
車体フレーム11は、ヘッドパイプ12、ダウンフレーム13、シートフレーム14、一対のチェーンステイ16及び一対のシートステイ17を有する。ヘッドパイプ12は、電動アシスト自転車1の前部に配置される。ヘッドパイプ12には、後方に延びるダウンフレーム13の前部が接続されている。シートフレーム14は、ダウンフレーム13の後部に接続されている。シートフレーム14は、ダウンフレーム13の後端部から上方且つ斜め後方に向かって延びている。
【0018】
ヘッドパイプ12には、ハンドルステム25が回転自在に挿入されている。ハンドルステム25の上端部には、ハンドル23が固定されている。ハンドルステム25の下端部には、フロントフォーク26が固定されている。フロントフォーク26の下端部には、前輪21が車軸27によって回転可能に支持されている。フロントフォーク26の下端部には、前輪21の回転から車速を検出する前輪車速センサ37が設けられている。
【0019】
円筒状のシートフレーム14の内方には、シートパイプ28が挿入されている。シートパイプ28の上端部には、シート24が設けられている。
【0020】
一対のチェーンステイ16は、後輪22を左右から挟むように設けられている。一対のチェーンステイ16は、ダウンフレーム13の後部から後輪22の回転中心に向かって延びている。一対のシートステイ17は、シートフレーム14の上部から後輪22の回転中心に向かって延びている。チェーンステイ16およびシートステイ17の後端部には、後輪22が回転可能に支持されている。
【0021】
シートフレーム14の後方には、パワーユニット40の電動モータ60に電力を供給するバッテリ35が配置されている。バッテリ35は、図示しない充放電可能な充電池及び電池制御部を有する。電池制御部は、充電池の充放電を制御するとともに、その出力電流及び残容量等を監視する。
【0022】
パワーユニット40は、ユニットケース50に、クランク軸41、クランク出力軸(不図示)、駆動スプロケット42、ペダルトルク検出部57、クランク回転検出部58、電動モータ60および補助スプロケット44を組み込み、ユニット化したものである。パワーユニット40は、車体フレーム11にボルトで結合されている。
【0023】
クランク軸41は、シートフレーム14の下方に回転可能に設けられている。クランク軸41はユニットケース50に左右方向に貫通して支持されている。クランク軸41の両端部にはクランクアーム31,32が取り付けられている。クランクアーム31,32の先端には、ペダル33,34が回転可能に取り付けられている。ペダルトルク検出部57は、運転者がペダル33,34を介してクランク軸41に入力したペダルトルクを検出する。クランク回転検出部58は、運転者がペダル33,34を回転させたときのクランク軸41の回転を検出する。クランク出力軸(不図示)はクランク軸41と同軸円筒状に形成され、図示せぬ一方向クラッチを介してクランク軸41と接続されている。
【0024】
駆動スプロケット42は、クランク出力軸(不図示)の右端に取り付けられている。この駆動スプロケット42はクランク軸41とともに回転する。従動スプロケット45は、後輪22の後輪軸29と同軸に設けられている。従動スプロケット45は、図示せぬ一方向クラッチを介して後輪22に連結される。
【0025】
無端状のチェーン46は、駆動スプロケット42と従動スプロケット45とに掛け渡されている。これにより、運転者がペダル33,34を踏み込むと、駆動スプロケット42が回転する。さらに駆動スプロケット42の回転はチェーン46を介して従動スプロケット45に伝達され、後輪22が駆動される。
【0026】
電動モータ60は、ユニットケース50内であって、クランク軸41の後方に配置されている。電動モータ60の出力軸には補助スプロケット44が設けられている。電動モータ60にはバッテリ35から電力が供給される。電動モータ60に電力を供給すると電動モータ60が回転する。電動モータ60の回転は、補助スプロケット44を介してチェーン46に伝達される。このように、電動モータ60に電力を供給すると、電動モータ60にモータトルクが生じる。このモータトルクはチェーン46を介して後輪22に伝達される。
【0027】
ハンドル23の左右の端部にはグリップ部63が設けられている。グリップ部63は略前後方向に延びている。運転者は、これらのグリップ部63を把持可能である。
【0028】
グリップ部63の近傍には、ブレーキレバー65が設けられている。運転者が右手で、右側のブレーキレバー65操作すると、前輪21に制動力が付与される。運転者が左手で、左側のブレーキレバー65を操作すると、後輪22に制動力が付与される。
【0029】
このような電動アシスト自転車1は、制御装置100によって電動モータ60を制御し、後輪22にモータトルクを作用させる。
【0030】
図2は、電動アシスト自転車1の機能を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置100は、ペダルトルク算出部101、モータ制御部95、モータ駆動部105、変速段推定部97及びメモリ98を備えている。
【0031】
<動力の伝達経路>
次に、動力の伝達経路について説明する。
運転者がペダル33,34を踏み込んでクランク軸41を回転させると、そのクランク軸41の回転が一方向クラッチ55を介してチェーン46に伝達される。一方向クラッチ55は、クランク軸41の順回転のみをチェーン46に伝達し、クランク軸41の逆回転はチェーン46に伝達させない。
【0032】
チェーン46の回転は後輪22側の従動スプロケット45に伝達される。従動スプロケット45の回転は、変速機構91および一方向クラッチ92を介して後輪22に伝達される。
【0033】
変速機構91は運転者によって操作される変速操作器93に応じて変速段を変更できる機構である。一方向クラッチ92は、従動スプロケット45の回転速度が後輪22の回転速度よりも速い場合にのみ、従動スプロケット45の回転を後輪22に伝える。従動スプロケット45の回転速度が後輪22の回転速度よりも遅い場合には、一方向クラッチ92は従動スプロケット45の回転を後輪22に伝えない。
【0034】
電動モータ60の回転は、減速機82を介して一方向クラッチ85に伝達される。一方向クラッチ85は、減速機82がチェーン46を順回転させる方向の回転のみをチェーン46に伝達し、減速機82がチェーン46を逆回転させる方向の回転はチェーン46に伝達させない。
【0035】
このように本実施形態に係る電動アシスト自転車1においては、クランク軸41に入力されるペダルトルクと電動モータ60のモータトルクは、チェーン46で合成される。
【0036】
<信号の経路>
次に、信号の経路を説明する。
運転者がクランク軸41を回転させると、車両に設けられたペダルトルク検出部57が、クランク軸41に入力されたペダルトルクに応じた信号を発生させる。ペダルトルク検出部57は、その信号をペダルトルク算出部101に入力する。
【0037】
ペダルトルク算出部101は、ペダルトルク検出部57からの信号を運転者がペダル33,34に与えたペダルトルクに換算する。ペダルトルク算出部101は、そのペダルトルクの値をモータ制御部95に入力する。
【0038】
クランク回転検出部58は、クランク軸41の位相を検出するセンサである。クランク回転検出部58は、クランク軸41の位相に応じた信号を発生させる。クランク回転検出部58は、その信号をモータ制御部95に入力する。
【0039】
前輪車速センサ37は、変速段推定部97に前輪21の回転速度の信号を送信する。変速段推定部97は、前輪21の回転速度から変速段を推定し、その情報をモータ制御部95へ送信する。
【0040】
電動モータ60には、モータ回転センサ99が設けられている。このモータ回転センサ99は、電動モータ60の回転数を検知し、変速段推定部97及びモータ駆動部105へ送信する。
【0041】
モータ制御部95は、後述する制御方法により適切なアシスト力を付与するための指令値を算出し、モータ駆動部105へ送信する。
【0042】
モータ駆動部105は、モータ制御部95からの指令値に基づいて、その指令値に応じた電力をバッテリ35から電動モータ60に供給する。これにより、電力が供給された電動モータ60が駆動し、所定のモータトルクを発生させる。
【0043】
本実施形態に係る電動アシスト自転車1は、
図2に示したように、進角センサ56を備えている。進角センサ56は、クランク軸41の回転角度のある時間からある時間までの変化量(角度)を検出する。進角センサ56は、分解能が90°未満であるものを採用できる。進角センサ56の分解能は60度以下が好ましく、30°以下、15°以下、10°以下、5°以下、1°以下がさらに好ましい。進角センサ56はモータ制御部95にクランク軸41の回転角度の変化量を出力する。
【0044】
図3は実施形態に係る制御装置100が出力する仮想踏力の走行シーンに応じた変動を表す概念図である。
図3は走行シーンに応じた仮想踏力の概念図である。
図5の(a)はクランク進角補正係数の一例を示すグラフである。
図3と
図5の(a)を用いて制御装置100が実行する電動アシスト自転車のアシスト力の算出方法を説明する。
【0045】
図3を用いて本実施形態に係る制御装置100が出力する仮想踏力の概要を説明する。制御装置100のモータ制御部95は、アシスト力の算出に先だって仮想踏力を算出する。モータ制御部95は、例えば仮想踏力に比例するなど仮想踏力に応じたアシスト力が電動モータ60から出力されように、モータ駆動部105へ指令値を出力するように構成されている。
【0046】
モータ制御部95は、進角センサ出力θ[t]、クランク進角ω[t]と、瞬時踏力A[t]、参照踏力B[t]、ピーク踏力Cに基づいて、仮想踏力D[t]を算出する。ここで、進角センサ出力θ[t]、クランク進角ω[t]と、瞬時踏力A[t]、参照踏力B[t]、仮想踏力D[t]は時刻に応じて変動する値である。
【0047】
瞬時踏力A[t]はペダルトルク算出部101がモータ制御部95に入力する値である。
【0048】
クランク進角ω[t]は、進角センサ出力θ[t]に応じて算出される角度である。クランク進角ω[t]は、瞬時踏力A[t]が極大点となるクランク軸41の角度からの進角量である。瞬時踏力A[t]が極大点となる度にクランク進角ω[t]は0°にリセットされる。例えば乗員が一定の脚力で平坦路を走行する場合、瞬時踏力A[t]が極大点となる点は、ペダル33の位置が上死点または下死点からおよそ90°回転した時点である。あるいは、乗員がペダル33を漕ぎ始めてすぐ漕ぐのを停止した場合、停止直前の瞬時踏力A[t]が極大点となることもある。
【0049】
参照踏力B[t]は仮想踏力D[t]の算出に用いるための値である。参照踏力B[t]はピーク踏力Cとクランク進角ω[t]で求まる値である。詳細は後に説明する。
【0050】
仮想踏力D[t]は、瞬時踏力A[t]とピーク踏力Cとクランク進角ω[t]とに基づいて求まる。仮想踏力D[t]は瞬時踏力A[t]と、ピーク踏力Cとクランク進角ω[t]から求まる参照踏力B[t]とに基づいて求まる。本実施形態において瞬時踏力A[t]と参照踏力B[t]の値を混ぜ合わせた値として出力される。
【0051】
図4に示すように、まず制御装置100のモータ制御部95は、瞬時踏力A[t]と進角センサ出力θ[t]を取得する(ステップS01)。モータ制御部95は、ペダルトルク算出部101から瞬時踏力A[t]を取得し、進角センサ56から進角センサ出力θ[t]を取得する。
【0052】
次にモータ制御部95は、瞬時踏力A[t]が前回の参照踏力B[t-1]より大きいか否かを判定する(ステップS02)。
瞬時踏力A[t]が前回の参照踏力B[t-1]より小さい場合(ステップS02:No)、モータ制御部95はクランク進角ω[t]を進めて(ステップS03)、ステップS06に移る。
一方、瞬時踏力A[t]が前回の参照踏力B[t-1]より大きい場合(ステップS02:Yes)、モータ制御部95はピーク踏力Cを瞬時踏力A[t]で更新する(C=A[t])(ステップS04)。さらにモータ制御部95はクランク進角ω[t]をリセットし(ω[t]=0)(ステップS05)、ステップS06に移る。
【0053】
ステップS06においてモータ制御部95は、クランク進角補正係数f(ω[t])とピーク踏力Cから参照踏力B[t]を求める。クランク進角補正係数f(ω[t])は、クランク進角ω[t]に応じた係数である。クランク進角補正係数fは、例えば
図5の(a)に示すように定めることができる。
図5の(a)に示すように、クランク進角補正係数f(ω[t])はクランク進角ω[t]が0°から第一の所定のクランク進角となるまで(図示の例では180°)1の値を維持し、それ以降は第二の所定のクランク進角(図示の例では360°)となるまで直線的に減少し、第二の所定のクランク進角以降は0となるように設定されている。つまり、参照踏力B[t]はクランク軸41が第一の所定のクランク進角になるまではピーク踏力Cの値を示し、それ以降は減少する値である。
【0054】
ステップS06で参照踏力B[t]を求めたら、モータ制御部95は、瞬時踏力A[t]と参照踏力B[t]から仮想踏力D[t]を算出する(ステップS07)。仮想踏力D[t]は、D[t]=α×A[t]+β×B[t]の式から算出される。α、βは任意の定数である。
【0055】
モータ制御部95は仮想踏力D[t]に基づいてアシスト力E[t]を決定する(ステップS08)。アシスト力E[t]は、E[t]=γ×D[t]の式から算出される。γは任意の定数である。モータ制御部95はステップS08まで実行したら次の時刻についてステップS01を繰り返し実行する。
【0056】
瞬時踏力A[t]は時々刻々と変動する値であり、乗員のペダル踏力の変動に対して仮想踏力D[t]を迅速に変動させる成分となる。これに対して参照踏力B[t]は、ある時刻の近傍の最大の瞬時踏力A[t]が一定期間キープされる値であり、乗員のペダル踏力の変動に対して仮想踏力D[t]を変動させない成分となる。仮想踏力D[t]はこれら瞬時踏力A[t]と参照踏力B[t]とを混ぜ合わせることにより、乗員のペダル踏力の変動に対して適度に追従して変動するアシスト力E[t]を出力することができる。
【0057】
図3に戻り、走行シーン毎に具体的に上記アシスト力の算出方法を説明する。
図3は、電動アシスト自転車1が平坦路で発進し、上り坂、平坦路、下り坂、平坦路と走行するときの瞬時踏力A[t]、参照踏力B[t]、ピーク踏力C、仮想踏力D[t]の変遷を示している。また、以降の説明においては、仮にα、βを0.5、γを1とする。
【0058】
<時刻a>
まず
図3における時刻aの場合を説明する。時刻aは平坦路で発進した直後を示している。
図4に示したように、ステップS01において、モータ制御部95は時刻aにおける瞬時踏力A[a]と進角センサ出力θ[a]を取得する。
ステップS02において、モータ制御部95は前回の参照踏力B[a-1]と瞬時踏力A[a]とを比較する。ここでは発進した直後なので前回の参照踏力B[a-1]はゼロである。したがって、瞬時踏力A[a]は前回の参照踏力B[a-1]より大きい(ステップS02:Yes)。
ステップS04において、モータ制御部95はピーク踏力Cを瞬時踏力A[a]で更新する。
ステップS05において、モータ制御部95はクランク進角ω[a]を0°にリセットする。
ステップS06において、モータ制御部95は参照踏力B[a]を算出する。ω[a]は0°であるから、
図5の(a)よりクランク進角補正係数f(ω[t])は1である。そこでB[a]=1×A[a]=A[a]となる。
ステップS07において、モータ制御部95は仮想踏力D[a]を算出する。D[a]=0.5×A[a]+0.5×B[a]=0.5×A[a]+0.5×A[a]=A[a]である。
ステップS08において、モータ制御部95はアシスト力E[a]を算出する。E[a]=1×D[a]=1×A[a]=A[a]となる。
つまり、発進時には乗員のペダル踏力の変動と同時に変動するアシスト力が得られる。
【0059】
<時刻b>
次に
図3における時刻bの場合を説明する。時刻bは平坦路で発進した後に瞬時踏力A[t]が極大点P1となった時刻である。時刻bは上死点または下死点からクランク軸41がおよそ90°回転した時点である。
図4に示したように、ステップS01において、モータ制御部95は時刻bにおける瞬時踏力A[b]=P1と進角センサ出力θ[b]を取得する。
ステップS02において、モータ制御部95は前回の参照踏力B[b-1]と瞬時踏力A[b]とを比較する。ここで、時刻bで瞬時踏力が極大点P1を示しているので、瞬時踏力A[b](値P1)は前回の参照踏力B[b-1]より大きい(ステップS02:Yes)。
ステップS04において、モータ制御部95はピーク踏力Cを瞬時踏力A[b](値P1)で更新する。すなわち、C=P1である。
ステップS05において、モータ制御部95はクランク進角ω[b]を0°にリセットする。
ステップS06において、モータ制御部95は参照踏力B[b]を算出する。ω[b]は0°であるから、
図5の(a)よりクランク進角補正係数f(ω[t])は1である。そこでB[b]=1×C=P1となる。
ステップS07において、モータ制御部95は仮想踏力D[b]を算出する。D[b]=0.5×A[b]+0.5×B[b]=0.5×P1+0.5×P1=P1である。
ステップS08において、モータ制御部95はアシスト力E[b]を算出する。E[b]=1×D[b]=1×P1=P1となる。
【0060】
<時刻b+1>
次に
図3における時刻b+1の場合を説明する。時刻b+1において、瞬時踏力A[t]は極大点P1を記録した後に減少している。時刻b+1は時刻tからクランク軸41がおよそ18°回転した時点である。すなわち、θ[b+1]=18[°]である。
図4に示したように、ステップS01でモータ制御部95は時刻b+1における瞬時踏力A[b+1]と進角センサ出力θ[b+1]=18[°]を取得する。
ステップS02において、モータ制御部95は前回の参照踏力B[b]と瞬時踏力A[b+1]とを比較する。ここでは前回の参照踏力B[b]はピーク踏力CのP1である。瞬時踏力A[b+1]は前回の参照踏力B[b]=P1より小さい(ステップS02:No)。
ステップS03において、モータ制御部95はクランク進角ω[t]を進める。すなわち、ω[b+1]=ω[b]+θ[b+1]=0+18=18[°]である。
ステップS06において、モータ制御部95は参照踏力B[b+1]を算出する。ω[b+1]は18°であるから、
図5の(a)よりクランク進角補正係数f(ω[t])は1である。そこでB[b+1]=1×C=P1となる。
ステップS07において、モータ制御部95は仮想踏力D[b+1]を算出する。D[b+1]=0.5×A[b+1]+0.5×B[b+1]=0.5×A[b+1]+0.5×P1である。
ステップS08において、モータ制御部95はアシスト力E[b+1]を算出する。E[b+1]=1×D[b+1]=0.5×A[b+1]+0.5×P1となる。
つまり、時刻b+1において、瞬時踏力A[t]と直前のピーク踏力Cとを混ぜ合わせたアシスト力が得られる。本実施形態においてはα=β=0.5であるので、瞬時踏力A[t]と直前のピーク踏力Cを平均したアシスト力が得られる。すなわち時刻b+1において、瞬時踏力A[t]が減少してもその減少にアシスト力は100%追従するわけではなく、滑らかな乗り心地のアシストフィーリングが得られる。瞬時踏力A[t]が極大点となった時点(=ピーク踏力)から第一の所定のクランク進角(本例では180°)の範囲内においては、このように瞬時踏力A[t]と直前のピーク踏力Cとを混ぜ合わせたアシスト力が得られる。
【0061】
<時刻c>
次に時刻cの場合を説明する。時刻cは上り坂から平坦路に移った後に瞬時踏力A[t]が極大点P1となった時である。時刻cはt=c-1のときのクランク軸41の位置から18°回転し、時刻c+1はt=cのときのクランク軸41の位置から18°回転したとする。すなわち、θ[c]=18[°]である。なお、時刻cより前にはピーク踏力Cが極大点P2を示しており、このP2を記録した時点から時刻c-1までの間にクランク軸41が162°回転したものとする。すなわち、ω[c-1]=162[°]である。
【0062】
図4に示したように、ステップS01でモータ制御部95は時刻cにおける瞬時踏力A[c]=P1と進角センサ出力θ[c]=18[°]を取得する。
ステップS02において、モータ制御部95は前回の参照踏力B[c-1]と瞬時踏力A[c]とを比較する。ここでは前回の参照踏力B[c-1]はピーク踏力CのP2である。瞬時踏力A[c]は参照踏力B[c-1]より小さい(ステップS02:No)。
ステップS03において、モータ制御部95はクランク進角ω[t]を進める。すなわち、ω[c]=ω[c-1]+θ[c]=162+18=180[°]である。
ステップS06において、モータ制御部95は参照踏力B[c]を算出する。ω[c]は180°であるから、
図5の(a)よりクランク進角補正係数f(ω[t])は1である。そこでB[c]=1×C=P2となる。
ステップS07において、モータ制御部95は仮想踏力D[c]を算出する。D[c]=0.5×A[c]+0.5×B[c]=0.5×A[c]+0.5×P2である。
ステップS08において、モータ制御部95はアシスト力E[c]を算出する。E[c]=1×D[c]=0.5×A[c]+0.5×P2となる。
【0063】
<時刻c+1>
続いて時刻c+1の場合を説明する。
図4に示したように、ステップS01でモータ制御部95は時刻c+1における瞬時踏力A[c+1]と進角センサ出力θ[c+1]=18[°]を取得する。
ステップS02において、モータ制御部95は前回の参照踏力B[c]と瞬時踏力A[c+1]とを比較する。ここでは前回の参照踏力B[c]はP2である。瞬時踏力A[c+1]は前回の参照踏力B[c]=P2より小さい(ステップS02:No)。
ステップS03において、モータ制御部95はクランク進角ω[t]を進める。すなわち、ω[c+1]=ω[c]+θ[c+1]=180+18=198[°]である。
ステップS06において、モータ制御部95は参照踏力B[c+1]を算出する。ω[c+1]は198°であるから、
図5の(a)よりクランク進角補正係数f(ω[t])は0.9である。そこでB[c+1]=0.9×C=0.9×P2となる。
ステップS07において、モータ制御部95は仮想踏力D[c+1]を算出する。D[c+1]=0.5×A[c+1]+0.5×B[c+1]=0.5×A[c+1]+0.45×P2である。
ステップS08において、モータ制御部95はアシスト力E[c+1]を算出する。E[c+1]=1×D[c+1]=0.5×A[c+1]+0.45×P2となる。
【0064】
このように瞬時踏力A[t]が極大点となる時点からのクランク軸41の回転角度が第一の所定値(本例では180°)を上回ると、仮想踏力D[t]における参照踏力B[t]の影響度が低下していく。これにより、乗員がクランク軸41を回転させるにつれて乗員のペダル踏力の変動に適合するようなアシスト力を提供することができる。
【0065】
時刻c+1のシーンについてさらに詳しく説明する。
図6は、上り坂から平坦路を進むときの瞬時踏力A[t]の変動およびアシスト力の変動の様子を示す概念図である。
図6の(a)は特許文献1の方法により得られるアシスト力を示し、
図6の(b)は本実施形態の方法により得られるアシスト力Eを示している。
【0066】
図6の(a)の曲線F11,F12は、特許文献1において滑らかなアシストフィーリングを乗員に与えたいときに実行する方法で得られるアシスト力を示している。具体的には、平滑化率を低く設定して行う方法である。F11で示すように登り坂を登る際には滑らかなアシストフィーリングを与えることができるが、F12で示すように平坦路に移った際に瞬時踏力に対して過剰なアシスト力を出力する期間が長期間に亘ってしまう。
【0067】
図6の(a)の曲線F21,F22は、過剰なアシスト力が出力される期間を短くすることを狙って行われる方法で得られるアシスト力を示している。具体的には、平滑化率を高く設定して行う方法である。F22で示すように過剰なアシスト力が出力される期間を短くできるが、F21で示すように登り坂を登る際にアシスト力が過剰に瞬時踏力に追従してしまい、滑らかなアシストフィーリングを与えることができない。
【0068】
そこで特許文献1では、走行シーンに応じて異なる平滑化率を設定してアシスト力を算出しなければならない。具体的には、特許文献1の方法では、車両が登り坂を登っているのか、平坦路を走行しているのか、といった車両の走行状態を検出する各種センサの出力を取得し、これらの情報を考慮して平均化率を切り替える必要がある。つまり特許文献1の方法では、各種センサからの入力が必要であり、また、各種センサからの入力から走行シーンを特定する必要があり、さらには各走行シーンに応じた複数のモード(例えば平均化率)の設定が必要である。このような複雑な処理を実行するために高性能の処理装置が必要になることもある。
【0069】
これに対して
図6の(b)に示すように、本実施形態に係るアシスト力の算出方法によれば、瞬時踏力とクランク進角に基づいて仮想踏力が算出され、常に一定の計算式を用いながら走行シーンに応じて異なるアシストフィーリングを乗員に与えることができる。
すなわち、大きな力でペダルを踏み込む際にはペダル踏力の変動と同じように変動するアシスト力を提供し、大きなアシスト力が求められる際に即座にこの要求に応えることができる。
あるいは、平坦路を走行する際には瞬時踏力と参照踏力をαとβに応じて混ぜ合わせた値を取ることにより瞬時踏力の変動に対して適度に変動するアシスト力を与えることができ、滑らかなアシストフィーリングを乗員に与えることができる。
さらに上記のように走行シーンに応じて異なるアシストフィーリングを与えることを可能としながらも、上記特許文献1のように車両の走行状態を検出する各種センサの出力を取得する必要がなく、走行シーンを判別する必要がない。さらに走行シーンに応じた複数のモードの設定も不要である。このように、本実施形態のアシスト力の算出方法によれば、簡易な制御方法で複数の異なるシーンに応じて好ましいアシスト力が得られる。
【0070】
なお、
図5に示したクランク進角補正係数f(ω[t])によって、アシストフィーリングを調整することができる。
図5の(a)に示した例では、クランク進角補正係数を0とする第二の所定のクランク進角は360°としたが、例えば90°~1080°の範囲で任意に設定することができる。例えば第二の所定のクランク進角を1080°とすれば、登り坂から平坦路に移ってクランク軸41が3回転する前に過剰なアシスト力が出力されなくなる。
図5の(a)に示した例では、クランク進角補正係数を1から減少させ始める第一の所定のクランク進角は180°としたが、例えば90°~720°の範囲で任意に設定することができる。
【0071】
また、
図5の(a)に示した例では、クランク進角補正係数を1の値に維持する期間を設けたが、これに限られない。例えば
図5の(b)に示したように、クランク進角が0°の直後からクランク進角補正係数を減少させ、第一の所定のクランク進角から第二の所定のクランク進角まで、第一の所定のクランク進角までの勾配と異なる勾配でクランク進角補正係数を減少させてもよい。第一の所定のクランク進角までの勾配は、第一の所定のクランク進角から第二の所定のクランク進角までの勾配よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
あるいは
図5の(c)に示したように、クランク進角が0°の直後から滑らかな曲線を描くようにクランク進角補正係数が0の値になるように減少させてもよい。
さらには、例えば
図5の(d)に示したように、クランク進角が0°の直後からクランク進角補正係数が0の値になるように直線的に減少させてもよい。
図5の(b)~(d)において、クランク進角補正係数の値を0にする第二の所定のクランク進角は、上記したように90°~1080°の範囲で任意に設定することができる。
【0072】
また、仮想踏力D[t]=α×A[t]+β×B[t]の式におけるαとβの値を調整することでアシストフィーリングを調整することができる。例えばα/βの比率を大きくすると瞬時踏力の影響が大きくなる。すると、乗員のペダル踏力の変動に対して機敏に変動するアシスト力を出力できる。あるいはα/βの比率を小さくすると参照踏力の影響が大きくなる。すると、乗員のペダル踏力の変動に対して変動しにくく滑らかに変動するアシスト力を出力できる。電動アシスト自転車の商品性に応じて電動アシスト自転車の出荷時にα/βを調整したり、あるいは乗員の操作などに応じてα/βの比率を変更可能に電動アシスト自転車を構成してもよい。
あるいは、ピーク踏力Cに応じてα/βを調整してもよい。例えば、ピーク踏力Cが高いほど仮想踏力における参照踏力に依存する程度を高くしてもよいし、逆に、ピーク踏力Cが高いほど仮想踏力における参照踏力に依存する程度を低くしてもよい。あるいは、ケイデンスに応じてα/βを調整してもよい。例えば、ケイデンスが低いほど仮想踏力における参照踏力に依存する程度を高くしてもよいし、逆に、ケイデンスが低いほど仮想踏力における参照踏力に依存する程度を低くしてもよい。
また、車速、傾斜角度、ギア比、乗員重量、加速度、走行モード(アシストモード)、バッテリ残量、基板温度、の少なくとも一つに応じて、仮想踏力における参照踏力の依存割合(β/(α+β))を変動させてもよい。すなわち、係数αと係数βとの関係は、車速、傾斜角度、ギア比、乗員重量、加速度、走行モード(アシストモード)、バッテリ残量、基板温度、の少なくとも一つに応じて変動させてもよい。
【0073】
なお、上述した実施形態では、アシスト力が後輪22に付与される車両を説明したが、アシスト力が前輪21に付与されるように構成されていてもよい。
【0074】
また、上述した実施形態では、瞬時踏力A[t]とクランク進角θ[t]に基づいて仮想踏力D[t]を求め、仮想踏力D[t]からアシスト力E[t]を求める例を説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、瞬時踏力A[t]に係数を掛けて仮想モータ出力を求め、仮想モータ出力とクランク進角θ[t]に基づいてアシスト力を算出するように構成してもよい。
【0075】
なお、
図2に示した例では、進角センサ56とクランク回転検出部58とをそれぞれ設けた構成を説明したが、例えばクランク回転検出部58を搭載せず、進角センサ56からクランク軸41の回転速度を算出するように構成してもよい。なお、クランク軸41の回転速度を算出するクランク回転検出部58として分解能が90°以上の一般的なセンサを用いることができるが、進角センサ56としては少なくとも分解能が90°未満のセンサを用いる。したがって、進角センサ56とクランク回転検出部58とを共通のセンサで構成する場合には、分解能が90°未満のセンサを用いる必要があることに留意されたい。
【符号の説明】
【0076】
1,1A,1B:電動アシスト自転車、22:後輪(車輪)、56:進角センサ、60:電動モータ、95:モータ制御部(制御部)、A:瞬時踏力、B:参照踏力、C:ピーク踏力、D:仮想踏力、E:アシスト力、ω:クランク進角、θ:進角センサ出力