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特許7143090呈味改善剤、呈味改善剤を含有する飲食品及び飲食品の呈味改善方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】呈味改善剤、呈味改善剤を含有する飲食品及び飲食品の呈味改善方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20220920BHJP
   A23L 2/56 20060101ALN20220920BHJP
   A23F 3/16 20060101ALN20220920BHJP
   C12C 5/02 20060101ALN20220920BHJP
   A23G 1/48 20060101ALN20220920BHJP
   A23G 1/56 20060101ALN20220920BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L2/56
A23F3/16
C12C5/02
A23G1/48
A23G1/56
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018038151
(22)【出願日】2018-03-05
(65)【公開番号】P2018157811
(43)【公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2017056801
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】島田 正輝
(72)【発明者】
【氏名】内山 嵩雄
(72)【発明者】
【氏名】草柳 純一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠一郎
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-136968(JP,A)
【文献】特開2014-079753(JP,A)
【文献】実開昭61-083890(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23F
C12C
A23G 1/00
A21D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シルバースキン抽出物を含有する、飲食品(ただし、コーヒーを除く)用苦味増強剤。
【請求項2】
飲食品にシルバースキン抽出物を添加することを特徴とする、飲食品(ただし、コーヒーを除く)の苦味を増強する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呈味改善剤、呈味改善剤を含有する飲食品及び飲食品の呈味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
苦味料は、飲食品に苦味を付与する目的で使用されることが多いが、乳幼児の誤飲、誤食を防止する目的で使用されることもある。例えば、乳幼児用の冷却用シートを乳幼児が誤食することを防止するために、冷却用シートに塗布される外用剤に苦味料を添加することがある。しかしながら、誤食を防ぐのに十分な苦味を冷却用シートに付与するためには、苦味料を相当量添加する必要があり、そのことによって冷却用シートに皮膚刺激性が生じたり、経時により冷却用シートが変色することがある。そこで、上記の課題を解決するために、苦味料を増量せずに苦味を増強する方法の開発が望まれていた。
【0003】
特許文献1には、苦味を付与する物質に甘味を付与する物質を配合することにより、苦味を付与する物質の苦味を増強する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-335303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法では、苦味を付与する物質の苦味を増強する効果が十分ではないという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、飲食品の苦味等の呈味を、効率良く改善する呈味改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の従来技術が有する課題を解決するべく鋭意検討したところ、以下の本発明に想到した。
項1.シルバースキン抽出物を含有する呈味改善剤。
項2.項1に記載の呈味改善剤を含有する飲食品。
項3.飲食品に、項1に記載の呈味改善剤を添加することを特徴とする、飲食品の呈味改善方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の呈味改善剤を用いることにより、飲食品の苦味を、効率良く増強することができる。また、本発明の呈味改善剤は、飲食品の苦みだけでなく、焦げ感・香ばしさ、口の中への広がり、香りや味の力強さ、苦味の後引きや余韻、複雑味等を増強し、酸味を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
シルバースキンとは、コーヒー果実内の種子(コーヒー豆)を包み込んでいる薄皮のことをいう。コーヒー果実は、外側から中心に向かって、外皮、果肉、ミューシレージ(粘液質)、パーチメント(内果皮)、シルバースキン、種子(コーヒー豆)で構成されている。シルバースキンは、コーヒーにエグ味を付与してしまうため、通常はコーヒー豆の精製工程で取り除かれる。シルバースキンを取り除いたものが、コーヒー豆の生豆になる。
【0010】
シルバースキン抽出物とは、溶媒等を用いてシルバースキンから抽出された、シルバースキン中の溶媒可溶成分のことをいう。シルバースキン抽出物を得る方法について特に制限はなく、例えば、シルバースキンを溶媒に浸漬する方法が挙げられる。
【0011】
溶媒としては、水、低級アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、2-プロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、低級ケトン(アセトン、エチルメチルケトン等)、炭化水素(ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等)、エーテル(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル等)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン等)、食用油脂等が挙げられる。溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。溶媒のうち好ましいのは、水、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、2-プロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、エチルメチルケトン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、ジクロロメタン及び食用油脂からなる群から選ばれる1種以上である。
【0012】
シルバースキンを溶媒に浸漬する時間に特に制限はなく、好ましくは30分間~24時間である。シルバースキンを溶媒に浸漬した後、ろ過、デカンテーション等の方法でシルバースキンを除去することにより、シルバースキン抽出物を得ることができる。シルバースキン抽出物を効率的に得るために、溶媒を加熱してもよい。溶媒の加熱温度は、好ましくは30~150℃である。
【0013】
シルバースキン抽出物は、抽出に用いた溶媒をそのまま含有してもよいが、溶媒を除去することも可能である。シルバースキン抽出物から溶媒を除去する方法としては、シルバースキン抽出物を加熱する方法が挙げられる。シルバースキン抽出物の加熱温度に特に制限はなく、溶媒の種類に応じて適宜調整すればよい。シルバースキン抽出物を加熱する際の雰囲気は、常圧下、減圧下、加圧下のいずれであってもよいが、シルバースキン抽出物の濃縮効率の観点から、常圧下又は減圧下が好ましい。
【0014】
シルバースキン抽出物は、抽出に用いた溶媒を除去した後、抽出に用いた溶媒以外の溶媒に溶解させて使用することも可能である。シルバースキン抽出物を溶解させる溶媒としては、抽出に用いる溶媒として例示したものと同様のものが挙げられる。シルバースキン抽出物を沸点の高い溶媒に溶解させて使用する場合には、抽出に用いた溶媒を含有するシルバースキン抽出物に、あらかじめ沸点の高い溶媒を投入し、抽出に用いた溶媒を上記の方法で除去し、沸点の高い溶媒に溶解させたシルバースキン抽出物を得てもよい。
【0015】
本発明の呈味改善剤には、呈味改善効果に影響を与えない範囲において、各種添加物や食品原料を添加してもよい。各種添加物や食品原料としては、香料、甘味料、酸味料、着色料、苦味料、乳化剤、ビタミン類、ミネラル類、機能性素材、果肉、植物の種実、根茎、木皮、葉、花及びこれらからの抽出物、動物性油脂、植物性油脂、動物性タンパク質、植物性タンパク質、デンプン、デンプン分解物(デキストリン)、水溶性食物繊維、難溶性食物繊維、ポリフェノール類、ペプチド、アミノ酸、アルコール等が挙げられる。
【0016】
本発明の呈味改善剤中のシルバースキン抽出物の含有率は、呈味改善剤の重量に対して、好ましくは0.01~100質量%である。含有率が0.01質量%以上であれば、十分な呈味改善効果が得られるため好ましい。
【0017】
本発明の呈味改善剤の性状に特に制限はなく、液状、粉末状、顆粒状、タブレット状、カプセル状等の形状にすることが可能である。例えば液状の呈味改善剤として、シルバースキン抽出物を上記の溶媒に溶解したものが挙げられる。
【0018】
本発明の呈味改善剤の製造方法に特に制限はなく、任意の方法で製造することができる。呈味改善剤が液状である場合の製造方法の一例として、上記のシルバースキン抽出物を得る工程において、シルバースキン抽出物中の溶媒を除去せずに、シルバースキン抽出物を、抽出に使用した溶媒に溶解させておく方法が挙げられる。あるいは、シルバースキン抽出物中の抽出に使用した溶媒を除去した後、シルバースキン抽出物を別の溶媒に溶解する方法が挙げられる。
【0019】
次に、本発明の呈味改善剤を含有する飲食品について説明する。本発明の呈味改善剤を含有する飲食品としては特に制限はなく、一般的な飲食品が挙げられる。本発明の呈味改善剤を、飲食品の苦味を増強する目的で使用する場合には、飲食品としては苦味を有する飲食品が挙げられる。苦味を有する飲食品としては、原材料に由来する苦味を有する飲食品、苦味料を添加して苦味を付与した飲食品が挙げられる。
【0020】
原材料に由来する苦味を有する飲食品としては、グレープフルーツ、オレンジ、レモン等の柑橘果実又はこれら果実から得られる果汁;トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス等の野菜又は野菜から得られる野菜汁若しくは野菜ジュース;ソース、醤油、味噌、唐辛子、うま味調味料等の調味料;豆乳等の大豆食品;クリーム、ドレッシング、マヨネーズ、マーガリン等の乳化食品;魚肉、すり身、魚卵等の水産加工食品;ピーナツ等のナッツ;納豆等の発酵食品;食肉又はその加工食品;ビール、コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、烏龍茶、清涼飲料、機能性飲料等の飲料;漬物;麺類;粉末スープを含むスープ;チーズ、牛乳等の乳製品;パン・ケーキ;スナック、ビスケット、米菓、チューインガム、チョコレート、キャンディー等の菓子;等が挙げられる。
【0021】

苦味料を添加して苦味を付与した飲食品としては、上記の原材料に由来する苦味を有する飲食品以外の飲食品に、苦味料を添加した飲食品が挙げられる。苦味料としては、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、ナリンジン、クワシン、イソα酸、テトライソα酸、キニーネ、モモルデシン、クエルシトリン、テオブロミン、カフェイン、ボラペット、メチルチオアデノシン、センブリ茶、苦丁茶、オリーブ茶、ヨモギ抽出物、ニガヨモギ抽出物、ゲンチアナ抽出物、キナ抽出物、カワラタケ抽出物、キナ抽出物、キハダ抽出物、ゲンチアナ抽出物、香辛料抽出物、酵素処理ナリンジン、ジャマイカカッシア抽出物、ニガキ抽出物、ヒキオコシ抽出物、ヒメマツタケ抽出物、レイシ抽出物、ダイダイ抽出物、ホップ抽出物等が挙げられる。
【0022】
本発明の呈味改善剤を、飲食品の苦味を増強する目的で使用する場合の呈味改善剤の添加量は、飲食品中の苦味成分又は苦味料の種類、量に応じて適宜調整することができ、呈味改善剤中のシルバースキン抽出物の固形分換算で、飲食品に対して好ましくは0.0005~0.1質量%である。
【0023】
次に、本発明の飲食品の呈味改善方法について以下に説明する。本発明の飲食品の呈味改善方法は、飲食品に本発明の呈味改善剤を添加することを特徴とする。本発明の飲食品の呈味改善方法を飲食品の苦味を増強する目的で使用する場合には、飲食品としては、上記の苦味を有する飲食品として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0024】
本発明の飲食品の呈味改善方法における呈味改善剤の添加量は、本発明の飲食品の呈味改善方法を飲食品の苦味を増強する目的で使用する場合には、本発明の呈味改善剤を飲食品の苦味を増強する目的で使用する場合の呈味改善剤の添加量と同様の範囲であればよい。
【実施例
【0025】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
[実施例1]
シルバースキン17質量部を75質量%エタノール水溶液323質量部に加え、82℃で4時間還流した。室温まで冷却後、ろ紙を用いてシルバースキンをろ別し、呈味改善剤(1)288質量部を得た。呈味改善剤(1)中のシルバースキン由来の固形分は、0.35質量%であった。
【0027】
[実施例2]
実施例1において、75質量%エタノール水溶液を50重量%エタノール水溶液に変更した以外は実施例1と同様の方法により、呈味改善剤(2)278質量部を得た。呈味改善剤(2)中のシルバースキン由来の固形分は、0.36質量%であった。
【0028】
[実施例3]
実施例1において、75質量%エタノール水溶液を92.8重量%エタノール水溶液に変更した以外は実施例1と同様の方法により、呈味改善剤(3)299質量部を得た。呈味改善剤(3)中のシルバースキン由来の固形分は、0.33質量%であった。
【0029】
[実施例4]
実施例1で得られた呈味改善剤(1)288質量部に、プロピレングリコール170質量部を投入し、減圧下60℃でエタノール及び水を留去して、呈味改善剤(4)171質量部を得た。呈味改善剤(4)中のシルバースキン由来の固形分は、0.58質量%であった。
【0030】
[実施例5]
実施例2で得られた呈味改善剤(2)278質量部に、プロピレングリコール170質量部を投入し、減圧下60℃でエタノール及び水を留去して、呈味改善剤(5)171質量部を得た。呈味改善剤(5)中のシルバースキン由来の固形分は、0.58質量%であった。
【0031】
[実施例6]
実施例3で得られた呈味改善剤(3)299質量部に、プロピレングリコール170質量部を投入し、減圧下60℃でエタノール及び水を留去して、呈味改善剤(6)171質量部を得た。呈味改善剤(6)中のシルバースキン由来の固形分は、0.58質量%であった。
【0032】
[参考例1]
水99.95質量部に、実施例4で得られた呈味改善剤(4)0.05重量を加えて均一になるまで撹拌して、呈味改善剤(7)(シルバースキン由来の固形分:2.9ppm)を得た。得られた呈味改善剤(7)について、苦味の有無を評価した。評価は、14名の評価員が行い、苦味があると感じた評価員の人数を集計した。評価結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1の評価結果から、呈味改善剤(7)は、苦味をもたないことがわかった。
【0035】
[実施例7~9]
市販のコーヒー飲料「いつものコーヒー無糖」[ユーシーシー上島珈琲(株)製]99.95質量部に、呈味改善剤(1)~(3)をそれぞれ0.1質量部加えて均一になるまで撹拌して、呈味改善剤入りコーヒー飲料を得た。得られた呈味改善剤入りコーヒー飲料について、苦味の増強の有無とその強度について評価した。評価は、14名の評価員が行い、最初に、呈味改善剤入りコーヒー飲料の苦味が、呈味改善剤を含まない市販のコーヒー飲料(無添加区)と比較して増強しているか否かについて評価し、苦味が増強していると感じた評価員の人数を集計した。次いで、苦味が増強したと感じた評価員が、その苦味の強度を4段階で評価し、それぞれの苦味の強度を感じた評価員の人数を集計した。評価結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2の評価結果から、コーヒー飲料に本発明の呈味改善剤を添加することにより、コーヒー飲料の苦味が大きく増強していることがわかる。
【0038】
[実施例10~12]
市販のコーヒー飲料「いつものコーヒー無糖」[ユーシーシー上島珈琲(株)製]99.95質量部に、呈味改善剤(4)~(6)をそれぞれ0.05質量部加えて均一になるまで撹拌して、呈味改善剤入りコーヒー飲料を得た。得られた呈味改善剤入りコーヒー飲料について、苦味の増強の有無とその強度について評価した。評価は、14名の評価員が行い、最初に、呈味改善剤入りコーヒー飲料の苦味が、呈味改善剤を含まない市販のコーヒー飲料(無添加区)と比較して増強しているか否かについて評価し、苦味が増強していると感じた評価員の人数を集計した。次いで、苦味が増強したと感じた評価員が、その苦味の強度を4段階で評価し、それぞれの苦味の強度を感じた評価員の人数を集計した。評価結果を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
表3の評価結果から、コーヒー飲料に本発明の呈味改善剤を添加することにより、コーヒー飲料の苦味が大きく増強していることがわかる。
【0041】
[実施例13]
市販のコーヒー飲料「いつものコーヒー」[ユーシーシー上島珈琲(株)製]99.95質量部に、実施例4で得られた呈味改善剤(4)0.05質量部を加えて均一になるまで撹拌して、呈味改善剤入りコーヒー飲料を得た。得られた呈味改善剤入りコーヒー飲料について、表4に示す呈味の増減について評価した。評価は、よく訓練された20名の評価員が行い、呈味の増減については、呈味改善剤入りコーヒー飲料の呈味が、呈味改善剤を含まない市販のコーヒー飲料(無添加区)と比較して、(1)呈味が増強した、(2)呈味が変わらない、(3)呈味が低減した、の3水準で官能評価した。3水準の評価のうち、最も多くの評価員が選択した水準を、その呈味の増減とした。評価結果を表4に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
表4の評価結果から、コーヒー飲料に本発明の呈味改善剤を添加することにより、コーヒー飲料の焦げ感・香ばしさ、口の中への広がり、香りや味の力強さ、苦味の後引きや余韻、複雑味、が増強されることがわかった。また、コーヒー飲料の酸味が低減することから、本発明の呈味改善剤により、コーヒー飲料の酸味を和らげることもわかった。
【0044】
[実施例14]
実施例3で得られた呈味改善剤(3)299質量部に、プロピレングリコール45質量部を投入し、減圧下60℃でエタノール及び水を留去し、不溶物をろ別して、呈味改善剤(8)38質量部を得た。呈味改善剤(8)中のシルバースキン由来の固形分は、2.50質量%であった。
【0045】
[実施例15]
市販の茶飲料「おーいお茶」[(株)伊藤園製]100質量部に、実施例14で得られた呈味改善剤(8)の0.2質量%プロピレングリコール溶液0.145質量部を加えて均一になるまで撹拌して、茶飲料1を得た。また、「おーいお茶」100質量部に、プロピレングリコール0.145質量部を加えて均一になるまで撹拌して、茶飲料2(無添加区)を得た。得られた茶飲料1について、表5、6に示す呈味を評価した。評価は、よく訓練された17名の評価員が、茶飲料2との相対比較により最適と判断する水準を選択し、最も多くの評価員が選択した水準をその呈味の評価とした。評価結果を表5、6に示す。
【0046】
表5、6から明らかなように、呈味改善剤(8)を添加した茶飲料1は、無添加の茶飲料1と比較して、苦味強度がやや強く、香りや味の力強さ、苦味の後引きや余韻、複雑味が増強した。一方、酸味に変化はなかった。
【0047】
[実施例16]
市販の紅茶飲料「午後の紅茶 おいしい無糖」[キリンビバレッジ(株)製]100質量部に、実施例14で得られた呈味改善剤(8)0.145質量部を加えて均一になるまで撹拌して、紅茶飲料1を得た。また、「午後の紅茶 おいしい無糖」100質量部に、プロピレングリコール0.145質量部を加えて均一になるまで撹拌して、紅茶飲料2(無添加区)を得た。得られた紅茶飲料1について、表5、6に示す呈味を評価した。評価は、よく訓練された17名の評価員が、紅茶飲料2との相対比較により最適と判断する水準を選択し、最も多くの評価員が選択した水準をその呈味の評価とした。評価結果を表5、6に示す。
【0048】
表5、6から明らかなように、呈味改善剤(8)を添加した紅茶飲料1は、無添加の紅茶飲料2と比較して、苦味強度がやや強く、苦味の後引きや余韻が増強した。一方、香りや味の力強さ、複雑味、酸味に変化はなかった。
【0049】
[実施例17]
市販の果汁飲料「Squeeze オレンジ」[(株)ファミリーマート製]100質量部に、実施例14で得られた呈味改善剤(8)の0.2質量%プロピレングリコール溶液0.145質量部を加えて均一になるまで撹拌して、オレンジ果汁飲料1を得た。また、「Squeeze オレンジ」100質量部に、プロピレングリコール0.145質量部を加えて均一になるまで撹拌して、オレンジ果汁飲料2(無添加区)を得た。得られたオレンジ果汁飲料1について、表5、6に示す呈味を評価した。評価は、よく訓練された17名の評価員が、オレンジ果汁飲料2との相対比較により最適と判断する水準を選択し、最も多くの評価員が選択した水準をその呈味の評価とした。評価結果を表5、6に示す。
【0050】
表5、6から明らかなように、呈味改善剤(8)を添加したオレンジ果汁飲料1は、無添加のオレンジ果汁飲料2と比較して、苦味強度がわずかに感じられる程度であった。また、酸味は、低減した~変わらないという評価結果であり、香りや味の力強さ、苦味の後引きや余韻、複雑味に変化はなかった。
【0051】
[実施例18]
市販の果汁飲料「Squeeze グレープフルーツ」[(株)ファミリーマート製]100質量部に、実施例14で得られた呈味改善剤(8)の0.2質量%プロピレングリコール溶液0.145質量部を加えて均一になるまで撹拌して、グレープフルーツ果汁飲料1を得た。また、「Squeeze グレープフルーツ」100質量部に、プロピレングリコール0.145質量部を加えて均一になるまで撹拌して、グレープフルーツ果汁飲料2(無添加区)を得た。得られたグレープフルーツ果汁飲料1について、表5、6に示す呈味を評価した。評価は、よく訓練された17名の評価員が、グレープフルーツ果汁飲料2との相対比較により最適と判断する水準を選択し、最も多くの評価員が選択した水準をその呈味の評価とした。評価結果を表5、6に示す。
【0052】
表5、6から明らかなように、呈味改善剤(8)を添加したグレープフルーツ果汁飲料1は、無添加のグレープフルーツ果汁飲料2と比較して、苦味強度は、強い~やや強いという評価結果であり、苦味の後引きや余韻が増強した。一方、香りや味の力強さ、複雑味、酸味に変化はなかった。
【0053】
[実施例19]
市販のチョコレート飲料「GODIVA ミルクチョコレート」[森永乳業(株)製]100質量部に、実施例14で得られた呈味改善剤(8)の0.2質量%プロピレングリコール溶液0.145質量部を加えて均一になるまで撹拌して、チョコレート飲料1を得た。また、「GODIVA ミルクチョコレート」100質量部に、プロピレングリコール0.145質量部を加えて均一になるまで撹拌して、チョコレート飲料2(無添加区)を得た。得られたチョコレート飲料1について、表5、6に示す呈味を評価した。評価は、よく訓練された17名の評価員が、チョコレート飲料2との相対比較により最適と判断する水準を選択し、最も多くの評価員が選択した水準をその呈味の評価とした。評価結果を表5、6に示す。
【0054】
表5、6から明らかなように、呈味改善剤(8)を添加したチョコレート飲料1は、無添加のチョコレート飲料2と比較して、苦味の後引きや余韻、複雑味が増強した。一方、苦味強度は、わずかに感じる~感じないという評価結果であり、香りや味の力強さは、増強した~変わらないという評価結果であった。また、酸味に変化はなかった。
【0055】
[実施例20]
市販のビール「黒ラベル」[サッポロビール(株)製]100質量部に、実施例14で得られた呈味改善剤(8)の0.2質量%プロピレングリコール溶液0.145質量部を加えて均一になるまで撹拌して、ビール1を得た。また、「黒ラベル」100質量部に、プロピレングリコール0.145質量部を加えて均一になるまで撹拌して、ビール2(無添加区)を得た。得られたビール1について、表5、6に示す呈味を評価した。評価は、よく訓練された17名の評価員が、ビール2との相対比較により最適と判断する水準を選択し、最も多くの評価員が選択した水準をその呈味の評価とした。評価結果を表5、6に示す。
【0056】
表5、6から明らかなように、呈味改善剤(8)を添加したビール1は、無添加のビール2と比較して、苦味強度がかなり強くなり、香りや味の力強さ、苦味の後引きや余韻、複雑味が増強した。一方、酸味に変化はなかった。
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】