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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】経路表示装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/20 20060101AFI20220920BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20220920BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20220920BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20220920BHJP
   G08G 5/00 20060101ALN20220920BHJP
【FI】
G01C21/20
G09B29/00 F
G08B25/04 E
G09B29/10 A
G08G5/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018070288
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019179015
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 利彦
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-173709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/20
G09B 29/00
G08B 25/04
G09B 29/10
G08G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物を含む監視エリア内を移動する移動体の移動経路を表した経路画像を表示出力する経路表示装置であって、
前記監視エリアを3次元の仮想空間として表現した空間モデルと、前記移動経路とを記憶した記憶部と、
前記空間モデルを用いて、前記移動経路を分割して複数の区分経路を求め、当該区分経路上の位置から周囲に存在する障害物までの距離を前記区分経路ごとに求め、当該距離が小さいほど大きい移動困難度を算出する移動困難度算出手段と、
前記区分経路それぞれにおける前記移動困難度を識別可能に表した前記経路画像を表示出力する表示出力手段と、
を備えた経路表示装置。
【請求項2】
障害物を含む監視エリア内を移動する移動体の移動経路を表した経路画像を表示出力する経路表示装置であって、
前記監視エリアを3次元の仮想空間として表現した空間モデルと、前記移動経路とを記憶した記憶部と、
前記空間モデルを用いて、前記移動経路上の各位置について、当該位置の周囲に存在する障害物までの距離を求め、当該距離が小さいほど大きい移動困難度を算出する移動困難度算出手段と、
前記移動経路上の各位置における前記移動困難度を識別可能に表した前記経路画像を表示出力する表示出力手段と、を備え、
前記記憶部は、前記移動体が飛行可能か否かを示した飛行属性を更に記憶し、
前記移動困難度算出手段は、前記移動体が飛行不可能である場合、前記移動経路の鉛直下方向にある障害物を算出対象から除外して前記移動困難度を算出する経路表示装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記移動体の大きさ又は前記移動体の測位誤差の少なくとも一方の情報を更に記憶し、
前記移動困難度算出手段は、前記移動体の大きさが大きいほど、又は前記測位誤差が大きいほど、大きい前記移動困難度を算出する請求項1又は請求項2に記載の経路表示装置。
【請求項4】
前記移動困難度算出手段は、前記位置と周囲に存在する障害物との間の距離が、前記移動体の前記大きさ、前記測位誤差、又は前記大きさと前記測位誤差の和のうちの、少なくとも一つよりも小さいとき、当該位置は移動不可能であることを示す前記移動困難度を算出する請求項3に記載の経路表示装置。
【請求項5】
前記移動困難度算出手段は、前記位置から複数の方向に対して当該位置の周囲に存在する障害物までの距離を求め、当該距離の総和が小さいほど大きい前記移動困難度を算出する請求項1から請求項4の何れか一項に記載の経路表示装置。
【請求項6】
前記移動困難度算出手段は、前記位置から複数の方向に対して当該位置の周囲に存在する障害物までの前記距離を求め、当該距離のうちの最短距離が小さいほど大きい前記移動困難度を算出する請求項1から請求項4の何れか一項に記載の経路表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視エリアを監視する警備員、ドローン、飛行船などの移動体における移動困難な箇所を示した移動経路を表示する経路表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顧客の物件における火災や不正侵入などの異常を検知した際、当該異常の発生位置(異常が検知された位置)に警備員を効率よく急行させるための警備システムが利用されている。例えば、特許文献1には、警備員や警備車両などの移動体の位置を定期的に検出し、異常を検知したとき当該異常の発生位置に最も近い移動体を選定し、当該移動体の現在位置から異常の発生位置に至る移動経路を移動体に送信して、移動体の端末に表示させる警備システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-228781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術のように移動経路を求めるだけでは、求めた移動経路の経路上において物理的に移動困難な箇所が存在する場合であっても予め把握することができないため、たとえ異常の発生位置に最も近い移動体を異常の発生位置に移動させたとしても、到着までに多くの時間がかかる場合や、移動途中で移動不可能であることが判明する場合もあった。特に、最近では、発生した異常を確認させる移動体として、警備員や警備車両などの走行型の移動体に限らず、カメラを搭載した無人の飛行船やドローン(自律飛行ロボット)などといった人間以外のロボットを利用する警備運用が行われつつある。このような飛行型の移動体では、移動経路において障害物に囲まれた狭い空間が存在している場合、障害物に衝突して予期せぬ事故に発展する恐れがある。したがって、移動体にとって求めた移動経路における移動困難箇所が存在するか否かを、管制員などが予め判断できるようにすることが求められていた。
【0005】
そこで本発明は、求めた移動経路における移動困難度を3次元地図を用いて求め、当該移動困難度を移動経路上に識別可能に表示することにより、管制員などが移動経路上における移動困難箇所を容易に把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、障害物を含む監視エリア内を移動する移動体の移動経路を表した経路画像を表示出力する経路表示装置であって、前記監視エリアを3次元の仮想空間として表現した空間モデルと、前記移動経路とを記憶した記憶部と、前記空間モデルを用いて、前記移動経路上の各位置について、当該位置の周囲に存在する障害物までの距離を求め、当該距離が小さいほど大きい移動困難度を算出する移動困難度算出手段と、前記移動経路上の各位置における前記移動困難度を識別可能に表した前記経路画像を表示出力する表示出力手段と、を備えた経路表示装置を提供する。
【0007】
また、本発明の好ましい態様として、前記記憶部は、前記移動体が飛行可能か否かを示した飛行属性を更に記憶し、前記移動困難度算出手段は、前記移動体が飛行不可能である場合、前記移動経路の鉛直下方向にある障害物を算出対象から除外して前記移動困難度を算出するものとする。
【0008】
また、本発明の好ましい態様として、前記記憶部は、前記移動体の大きさ又は前記移動体の測位誤差の少なくとも一方の情報を更に記憶し、前記移動困難度算出手段は、前記移動体の大きさが大きいほど、又は前記測位誤差が大きいほど、大きい前記移動困難度を算出するものとする。
【0009】
また、本発明の好ましい態様として、前記移動困難度算出手段は、前記移動経路の各位置について、当該位置の周囲に存在する障害物との間の距離が、前記移動体の前記大きさ、前記測位誤差、又は前記大きさと前記測位誤差の和のうちの、少なくとも一つよりも小さいとき、当該位置は移動不可能であることを示す前記移動困難度を算出するものとする。
【0010】
また、本発明の好ましい態様として、前記移動困難度算出手段は、前記移動経路の各位置について、当該位置から複数の方向に対して当該位置の周囲に存在する障害物までの距離を求め、当該距離の総和が小さいほど大きい前記移動困難度を算出するものとする。
【0011】
また、本発明の好ましい態様として、前記移動困難度算出手段は、前記移動経路の各位置について、当該位置から複数の方向に対して当該位置の周囲に存在する障害物までの前記距離を求め、当該距離のうちの最短距離が小さいほど大きい前記移動困難度を算出するものとする。
【発明の効果】
【0012】
上記のように、本発明によれば、管制員は経路画像を確認することで、移動体の移動経路における移動困難箇所を容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】管制システム5の全体システム構成を示す図である。
図2】管制装置1の機能ブロック図である。
図3】空間モデル111の例を示す図である。
図4】移動体情報112を示すテーブルである。
図5】異常情報113を示すテーブルである。
図6】制御部12の動作を示すフローチャートである。
図7】目標位置設定処理の説明図である。
図8】移動困難度算出処理の説明図である。
図9】表示出力処理の説明図である。
図10】他の実施形態における移動困難度算出処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した管制システム5の概略構成を示した図1を参照し、本発明の実施形態の構成を説明する。管制システム5は、屋外の所定範囲の空間(以下、「監視エリア」という)にて発生した異常を検知する警備装置2と、発生した異常を検出した位置の近くに急行して異常を撮影することで異常の状態を確認するための飛行船3a、ドローン3b、警備員3cなどの移動体3と、インターネットや公衆電話回線などの通信網4を介して各移動体3及び警備装置2と接続される管制装置1とにより構成される。
【0015】
移動体3は、図示しない撮影部を備え、監視エリアにて発生した異常を撮影するよう移動する。撮影部は、CCD素子やC-MOS素子等の撮像素子、光学系部品等を含んで構成されるいわゆるカメラである。撮影部は、移動体3がドローン3bや飛行船3aならばこれらの本体部分に設置される固定カメラであり、移動体3が警備員3cならば胸部や頭部等に装備されるウェアブルカメラである。また、移動体3は、無線LANやLTE(Long Term Evolution)等の無線通信などによって、通信網4を介して管制装置1と情報伝達可能に接続される。また、移動体3は、汎地球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)における航法衛星からの信号や、複数のビーコン等の電波発信機からの受信電波強度などに基づいて自らの現在位置を推定し、当該現在位置を自らの識別子に対応付けて管制装置1に送信する。
【0016】
警備装置2は、監視エリア内の一又は複数の警備対象物件に設置されたいわゆる警備コントローラであり、警備対象物件に設置された図示しないセンサや監視カメラなどが異常を検出した際、これらのセンサや監視カメラなどから検出信号を受信する。警備装置2は、受信した検出信号に基づいて異常の種別(侵入、火災など)と異常の発生位置(異常が検出された位置)などを通信網4を介して管制装置1に通報する。なお、本発明における「現発生位置」は当該異常の発生位置に相当する。
【0017】
管制装置1は、遠隔地にある警備センタに設置されるいわゆるコンピュータであり、通信網4を介して警備装置2から受信した通報に基づいて、監視エリア内を監視する複数の移動体3の中から、発生した異常に対処させるための一又は複数の移動体3の移動経路を求めて表示出力する。特に、本発明の管制装置1は、求めた移動経路における各位置について、移動困難な箇所を識別可能に表した経路画像を表示出力することを特徴としており、当該特徴により、管制員は移動体の移動経路における移動困難箇所を容易に把握できる。
【0018】
図2に管制装置1のブロック図を示す。図2に示すように、管制装置1は、記憶部11、制御部12、表示部13、入力部14及び通信部15を含んで概略構成される。表示部13は、ディスプレイ等の情報表示デバイスである。管制装置1を利用する管制員は、表示部13を用いて、表示部13に表示出力された移動体3の移動経路が示された画像(経路画像)を確認する。入力部14は、キーボードやマウス、タッチパネル、可搬記憶媒体の読み取り装置等の情報入力デバイスである。管制装置1の管理者は、入力部14を用いて、例えば、後述する空間モデル111の3次元形状データなどを記憶部11に記憶させたり、様々な設定情報を設定することができる。また、管制員は、表示部13に表示出力された経路画像を閲覧し、通報された異常の対処に適した移動体3に対して、入力部14を用いて、異常の状態を確認するよう指示するための入力を行う。通信部15は、通信網4を介して移動体3や警備装置2と通信するための通信インタフェースである。
【0019】
記憶部11は、ROM、RAM、HDD等の情報記憶装置である。記憶部11は、各種プログラムや各種データを記憶し、制御部12との間でこれらの情報を入出力する。各種データには、空間モデル111、移動体情報112、異常情報113、その他、制御部12の処理に使用される各種情報(例えば、後述する閾値T1、T2、T3や、後述する処理にて求めたグラフ構造、移動経路データ、経路画像等)などがある。
【0020】
空間モデル111は、監視エリアに存在する現実世界の建造物・地面・樹木等の物体(障害物)をモデル化することにより作成された3次元形状データを含む3次元の仮想空間を表した座標情報である。本実施形態では、空間モデル111における3次元形状データは、監視エリアの形状情報に基づいて3次元CADにより作成する。しかし、これに限らず3次元レーザースキャナー等により監視エリアの3次元形状を取り込んだデータを利用してもよいし、航空機からステレオ撮影やレーザ測距を行うことによって作成された高さ情報も含む立体形状をポリゴンデータによって表したデータであってもよい。このようにして作成された空間モデル111は、管理者により入力部14から設定登録されることにより記憶部11に記憶される。図3の符号111で示した3次元形状は、3次元の仮想空間を表す座標系(以下、「モデル座標系」という)における空間モデルを表現したものである。
【0021】
移動体情報112は、監視エリアを監視する各移動体3に関する情報である。移動体情報112は、図4に示したように、移動体3の識別子である移動体IDと、移動体3が飛行可能か否かを示した飛行属性と、移動体3の現在位置と、移動体3の目標位置とを対応付けたテーブル情報である。ここで、飛行属性は、管理者により予め設定されるものとし、目標位置は、警備装置2から通報を受信する都度、後述する目標位置設定手段121にて適宜更新されるものとする。また、各移動体3から通信網4を介して現在位置を受信したとき、制御部12により移動体情報112の現在位置が更新されるものとする。
【0022】
異常情報113は、監視エリアにて検知された一又は複数の異常に関する情報であり、警備装置2からの通報を受信したときに制御部12により更新される。異常情報113は、図5に示したように、異常の識別子である異常IDと、異常の種別(例えば、侵入、火災、暴動など)と、異常の発生位置とを対応付けたテーブル情報である。ここで異常の発生位置は、警備装置2から通報された異常の発生位置(例えば、緯度・経度・高度からなる異常が検知された位置情報)を、モデル座標系における座標情報(x,y,z)に変換した情報である。
【0023】
仮想カメラ情報114は、空間モデル111に仮想的に配置されるカメラである仮想カメラの視野を定義するカメラパラメータであり、後述する表示出力手段125にて経路画像を生成する際に利用される情報である。管制装置1は、空間モデル111上に経路探索手段122にて求めた移動経路を配置し、それを仮想カメラ情報114にて設定される仮想カメラにより撮影したときの画像を経路画像として生成する。具体的には仮想カメラ情報114は視野変換、投影変換及び生成する画像のサイズに関する情報が含まれる。視野変換に関する情報は、仮想カメラの位置(レンズの中心座標、又は視点)及び姿勢(レンズ光軸の方向、又は視線方向)を含み、管制員による入力部14の操作によって随時更新できる。投影変換に関する情報はレンズの投影特性をモデル化するためのパラメータ群、例えば焦点距離、歪収差係数などを含み、画像のサイズに関する情報は画像を構成する画素数などを含み、本実施形態では投影変換及び画像のサイズに関する情報は予め与えられた所定値とする。
【0024】
制御部12は、CPU等のマイクロプロセッサユニットと、ROM、RAMなどのメモリと、その周辺回路とを有し、各種信号処理を実行する。制御部12は、マイクロプロセッサユニット上で動作するプログラムの機能モジュールとして実装される目標位置設定手段121、経路算出手段122、経路探索手段123、評価値算出手段124及び表示出力手段125を有する。これらの機能モジュールは、制御部12が記憶部11に格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0025】
目標位置設定手段121は、記憶部11の空間モデル111と移動体情報112と異常情報113とを用いて、各移動体3の移動先となる目標位置を設定するための目標位置設定処理を行う。本実施形態では、目標位置設定手段121は、空間モデル111における異常の発生位置から所定の範囲内の位置であって、障害物に干渉しない位置に目標位置を設定し、移動体情報112に記憶する。図7は、目標位置設定処理を説明するために空間モデル111の一部を切り出した図である。目標位置設定処理では、まず、異常情報113を参照し、異常の発生位置Oを読み出す。そして、空間モデル111における発生位置Oを求め、当該発生位置Oから所定の範囲内の位置であって、障害物に干渉しない位置に目標位置を設定する。本実施形態では、発生位置Oから半径Kの位置に目標位置が設定するものとする。図7では、符号111a及び111bはそれぞれ監視エリアに存在する建物及び樹木に相当し、発生位置Oから半径K内の空間には建物111aが存在するため、当該建物111aに干渉しない空間内の位置に目標位置が設定される。具体的には、移動体3の飛行属性を参照し、飛行不可能な移動体3ならば目標位置を発生位置Oから半径Kの地表面の位置に目標位置Pを設定する。また、飛行可能な移動体3ならば、発生位置Oから半径K、仰角θの位置、すなわち上空の位置に目標位置P’を設定する。なお、本実施形態では、目標位置P及びP’の水平角は対象移動体の現在位置の方向を向くよう設定されるものとする。これにより、移動体3が飛行可能か否かに応じて適切な3次元位置に目標位置を設定することが可能となる。目標位置設定手段121は、求めた目標位置の3次元座標を移動体情報112に記憶する。なお、本実施形態では、目標位置設定手段121にて、異常の発生位置に基づいて目標位置を設定しているが、これに限らず、管制員が入力部14を用いて各移動体3の目標位置を設定してもよい。また、簡易的に異常の発生位置Oを目標位置として設定してもよい。なお、本実施形態において「飛行不可能」とは、移動体3の機構的に飛行することができない移動体だけでなく、機構的に飛行することができても運用的に飛行することを禁止された移動体についても含む。
【0026】
経路算出手段122は、各移動体3のそれぞれについて移動経路を算出する基となるグラフ構造を求め、当該グラフ構造を用いて各移動体3の移動経路を算出する経路探索処理を行う。具体的には、経路算出手段122は、空間モデル111を所定の大きさ(例えば50cm×50cm×50cm)のボクセルに分割し、各ボクセルの識別子であるボクセルIDと、モデル座標系におけるボクセルの重心位置(三次元座標)と、ボクセル属性とを対応付けてボクセル空間を求める。そして、経路算出手段122は、各ボクセルに対して、空間モデル111における障害物が存在するボクセルか否かを判定し、判定結果をボクセル属性として付与する。そして、経路算出手段122は、ボクセル空間において、障害物が存在しないボクセルの中心をノードとし、当該ノードに隣接するノード間を連結した線分をエッジとするグラフ構造を生成する。この際、エッジの重みとして、隣接するノード間の距離に基づいて求められるコストを設定する。続いて、経路算出手段122は、求めたグラフ構造を用いて、移動経路を生成する。移動経路の生成方法については、さまざまな経路生成方法が適用可能であるが、本実施形態ではA*(エースター)経路探索法を用いて移動経路の経由点を探索する。すなわち、グラフ構造において、移動体3の現在位置から最も近いノードからA*経路探索法にて経路探索を開始し、目標位置設定手段121にて設定した目標位置に最も近いノードに至る移動経路を求める。そして、経路探索手段122は、移動体3の現在位置から開始し、経路探索処理にて求めた各ノードを経由点とし、目標位置に至る各地点の座標データの集合を移動経路データとして求め、対応する移動体3の移動体IDと対応付けて記憶部11に記憶する。
【0027】
移動困難度算出手段123は、経路算出手段122にて求めた移動経路データの各位置における移動困難度を算出する移動困難度算出処理を行う。この際、移動困難度算出手段123は、移動経路の各位置と当該位置の周囲に存在する障害物との間の距離を求め、当該距離が小さいほど大きい移動困難度を算出する。本実施形態では、移動困難度を示す数値が大きい値であるほど移動困難であることを示している。移動困難度算出処理の詳細については後述する。
【0028】
評価値算出手段124は、移動困難度算出手段123にて算出した移動経路の各位置における移動困難度を積算することにより、移動経路全体における移動の困難さ度合いを示す指標(経路評価値)を算出する評価値算出処理を行う。評価値算出処理の詳細については後述する。
【0029】
表示出力手段125は、経路探索手段122にて算出した移動経路データの座標値を線で結んだ移動経路を空間モデル111上に配置し、仮想カメラ情報114にて設定された仮想カメラにより撮影したときの画像に相当する仮想カメラ画像を経路画像として求め、表示部13に表示出力する表示出力処理を行う。この際、表示出力手段125は、移動困難度算出手段123にて算出した移動困難度に基づいて、移動経路上の箇所の表示を異ならせることにより、経路画像を閲覧する管制員が、移動経路の各位置における移動困難度を一目で識別できるようにする。また、表示出力処理では、生成した経路画像だけでなく、評価値算出手段124にて算出した経路評価値も表示部13に表示出力する。表示出力処理の詳細については後述する。
【0030】
図6は、制御部12における各機能モジュールが行う各種処理のフローチャートである。以下、図6図8図9を用いて制御部12の処理を詳細に説明する。なお、本実施形態では、警備装置2が送信した通報に基づいて異常情報113が更新される度に、当該異常に対して図6の処理が実行されるものとする。以下、処理対象となっている異常を「対象異常」という。また、図6におけるループ1は、移動体情報112の移動体3ごとに処理を行うことを意味し、移動体3の数だけループ1内の処理が実行されることを意味する。以降の説明において、ループ1にて処理対象となっている移動体3を「対象移動体」という。
【0031】
まず、目標位置設定手段121は、対象異常の発生位置に基づいて対象移動体の目標位置を求め、移動体情報112に記憶する目標位置設定処理を行う(ST1)。次に、経路算出手段122は、対象移動体の現在位置からST1にて求めた目標位置に至る移動経路データを算出する経路算出処理を行う。(ST2)
【0032】
次に、移動困難度算出手段123は、移動困難度算出処理を行う。移動困難度算出処理では、まず、対象移動体の移動経路データに基づいて、移動経路を所定間隔(例えば50cm)ごとに分割して区分経路を求め、各区分経路の中間地点にあたる評価地点を求める(ST3)。図8は、移動困難度算出処理を説明するために空間モデル111の一部を切り出した図であり、対象移動体の現在位置Sから目的位置Pに至る移動経路Rが空間モデル111のトンネルに相当する障害物111cの中を通過している場合の例を表している。区分経路は、図8における符号r1~r14に示すように、現在位置Sから間隔dごとに移動経路Rを分割したときのそれぞれの区間を示す。また、評価地点は、図8における区分経路r10に着目したとき、当該区分経路r10の中間地点にあたる符号Apで示す地点を示す。
【0033】
図6におけるループ2は、ST3にて求めた区分経路ごとに処理を行うことを意味し、区分経路の数だけループ2内の処理が実行されることを意味する。以降の説明において、ループ2にて処理対象となっている区分経路を「対象区分経路」とをいう。移動困難度算出手段123は、対象区分経路の評価地点と、空間モデル111において当該評価地点の周囲の障害物との間の距離を求める(ST4)。図8に示したように、本実施形態では、対象区分経路をr10としたとき、当該対象区分経路の評価地点Apと障害物との間の距離を、移動経路Rの進行方向に直角な左水平方向及び右水平方向の距離である左方向距離Dl及び右方向距離Drと、鉛直上方向及び鉛直下方向の距離である上方向距離Du及び下方向距離Ddの四方向について、障害物(評価地点Apの場合はトンネル111cの内壁)までの距離を算出する。この際、評価地点Apの座標値と空間モデル111とを用いる。
【0034】
次に、移動困難度算出手段123は、ST4にて算出した各距離Du、Dd、Dl、Drのそれぞれを用いて、各距離が小さいほど大きい移動困難度を算出する(ST5)。本実施形態では、各距離Du、Dd、Dl、Drのそれぞれの方向成分困難度Eu、Ed、El、Erを、E=α×exp(-λ×D)により算出する。ここでα及びλは、移動体3の標準的な大きさや衝突時の被害の大きさ等を考慮して予め設定したパラメータである。この際、移動体情報112の飛行属性を参照し、対象移動体が飛行不可能な移動体3であるならば、下方向距離Ddに対応する方向成分困難度を0(ゼロ)として算出する。そして、各方向成分困難度の総和から対象区分経路の移動困難度vを算出する。
【0035】
全ての区分経路についてループ2の処理を終えると、評価値算出手段124は、各区分経路riの距離dと移動困難度viとを用いて、移動経路Rの経路評価値Vを、V=Σ(β×d+vi)により算出する(ST6)。ここで、Σは区分経路riの移動困難度viについての総和を表し、βは移動距離と移動困難度のどちらを重視するのかによって予め固定的に設定されるパラメータを表す。
【0036】
次に、評価値算出手段124は、ST6にて算出した経路評価値Vと、予め設定し記憶部11に記憶した経路評価閾値T1とを比較する(ST7)。ここで、経路評価閾値T1は、ST2にて算出された移動経路に対して、移動体3が採用する移動経路として許容できる経路評価値Vの最大値であり、予め管制システム5の管理者により記憶部11に記憶される。ST6にて算出した経路評価値Vが経路評価閾値T1以上であるとき(ST7-Yes)、評価値算出手段124は、グラフ構造のエッジのコストを修正する(ST8)。具体的には、ST2にて求めた移動経路Rにおいて、予め記憶部11に記憶した閾値T2を超えている区分経路を求め、当該区分経路に対応するグラフ構造のエッジのコストを大きい値になるよう修正する。この際、当該区分経路に対応するエッジだけでなく、当該区分経路の所定範囲内に存在するエッジのコストを大きい値になるよう修正してもよい。そして、処理をST2に戻し、対象移動体の移動経路を再度算出させる。これにより、経路評価値Vが経路評価閾値T1以上となる移動経路については、移動困難度の大きい箇所が再度経路に含まれないよう経路修正でき、最終的に経路評価閾値T1以下の移動経路を求めることができる。
【0037】
経路評価値Vが経路評価閾値T1未満であるとき(ST7-No)、対象移動体に係るループ1の処理を終え、移動体情報112における次の移動体3を対象移動体に設定してループ1の処理をST1から開始する。全ての移動体3についてループ1の処理を終えると、表示出力手段125は、表示出力処理を行う(ST9)。表示出力処理では、まず、ST2にて求めた移動経路データの座標値を線で結んだ移動経路オブジェクトを空間モデル111上に配置する。図9は、表示出力処理を説明する図であり、図9(a)は現在位置Sから目的位置Pに至る移動経路Rのオブジェクトを空間モデル111上に配置した場合の例を表している。同図の移動経路Rにおいて点線にて表した区間は、ST5にて算出した移動困難度が高い区分経路に相当する。本実施形態では、各区分経路の移動困難度を、予め記憶部11に記憶した閾値T3と比較し、当該閾値T3よりも大きい移動困難度となる区分経路を点線にて表す。続いて、表示出力処理では、移動経路のオブジェクトを空間モデル111上に配置した後、表示出力手段125は、仮想カメラ情報114にて設定された仮想カメラにより撮影したときの画像に相当する仮想カメラ画像を求め、当該仮想カメラ画像を経路画像として出力する。この際、経路画像は、既知のコンピュータグラフィックス技術によるレンダリング処理にて求める。レンダリング処理については、例えば、「コンピュータグラフィックス」(コンピュータグラフィックス編集委員会 編集・出版、平成18年刊)に詳細に記述されているため、詳細な説明を省略する。図9(b)は、経路画像Xの例を表す図である。なお、本実施形態では、図9(c)に表すように、さらに経路画像Xの上に移動経路に対応する経路評価値を重畳表示した経路画像X’を出力する。そして、表示出力手段125は、経路画像X又は経路画像X’の少なくとも一方を表示部13に表示出力する。なお、経路画像Xと経路画像X’の何れを表示するのかについては、管制員の入力部14からの入力により適宜切り替えて表示することができるものとする。
【0038】
以上のように、本実施形態の管制システム5では、管制装置1の表示部13に表示出力された経路画像X又は経路画像X’を管制員が確認することにより、当該管制員は、移動経路上における移動困難箇所を容易に把握することができる。また、管制員は、表示部13に表示出力された経路画像X’に記された経路評価値を確認することにより、算出された移動経路が移動体3にとって移動困難か否か、すなわち、当該移動体3の移動に適しているか否かを容易に把握することができる。
【0039】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で、更に種々の異なる実施形態で実施されてもよいものである。また、実施形態に記載した効果は、これに限定されるものではない。
【0040】
上記実施形態では、ST6にて評価値算出手段124により経路評価値を算出しているが、評価値算出手段124を省略してもよい。この場合、ST6~ST8の各処理を省略し、ST9の表示出力処理では経路画像Xのみを表示出力する。
【0041】
上記実施形態では、ST9の表示出力処理にて表示出力手段125は、経路画像X又はX’の少なくとも一方を表示出力している。しかしこれに限らず、ST2にて算出した移動経路、ST5にて算出した移動困難度、ST6にて算出した経路評価値などを通信部15を介して他のサーバ(図示なし)に送信してもよい。
【0042】
上記実施形態では、ST2の経路算出処理にて各移動体3の移動経路を算出しているが、これに限らず、入力部14又は通信部15から入力された移動経路を移動体情報112に予め記憶させてもよい。
【0043】
上記実施形態では、ST9の表示出力処理にて、閾値T3よりも大きい移動困難度となる区分経路を点線にて表示されるよう経路画像X及びX’を出力している。しかし、これに限らず、移動困難度に応じた色で表示させるよう経路画像X及びX’を出力してもよい。例えば、移動困難度が大きい区分経路であるほど赤色に近い色で表示させ、移動困難度が小さい区分経路であるほど青色に近い色で表示させる。
【0044】
上記実施形態では、ST4にて左方向距離Dl、右方向距離Dr、上方向距離Du及び下方向距離Ddの四方向についての距離を求め、ST5にて各距離ごとに方向成分困難度Eを求め、それらの方向成分困難度Eの総和から対象区分経路における移動困難度を算出している。しかし、これに限らず、四方向の距離の和を求め、当該和が小さいほど大きい移動困難度を算出してもよい。また、進行方向に直角な左水平方向及び右水平方向と、鉛直上方向及び鉛直下方向との四方向に限らず、それぞれの方向の中間方向を加えた八方向について、それぞれ障害物までの距離を求め、これらの距離を用いて移動困難度を算出してもよい。また、複数の方向に対して障害物までの距離をそれぞれ求め、その中で最も小さい値の最短距離を求め、当該最短距離が小さいほど大きい移動困難度を算出してもよい。
【0045】
また、移動体情報112として、各移動体3の大きさ又は測位誤差の少なくとも一方の情報を記憶させておき、ST5にて移動困難度算出手段123は、移動体3の大きさが大きいほど、又は移動体3の測位誤差が大きいほど、大きい移動困難度を算出してもよい。例えば、移動体3の大きさとして、移動体3に外接する球体の水平方向の半径(水平半径)と鉛直方向の半径(鉛直半径)とが記憶され、移動体3の測位誤差として、水平方向の平均的な測位のずれを示す水平誤差と鉛直方向の平均的な測位のずれを示す鉛直誤差とが記憶される。なお、移動体3の大きさは予め測定されて管理者により設定され、また、測位誤差は各移動体3が有する測位手段が出力する測位結果に含みうるずれの大きさ(長さ)として管理者により設定されるものとする。図10は、移動体3の大きさ及び測位誤差を用いて移動困難度を算出する例を説明する図である。図10に表すように、ある移動体3の移動経路Rにおける、所定の区間経路の評価地点をApとしたとき、当該Apから障害物111aまでの左方向距離Dlを、Apの座標と空間モデル111とを用いて算出できる。ここで、移動体情報112に当該移動体3に対応する大きさとして水平半径e1が記憶され、また、当該移動体3の測位誤差として水平誤差e2が記憶されている場合、左方向距離Dlに対する方向成分困難度をEDl=α×exp{-λ×Dl’}=α×exp{-λ×(Dl-e1-e2)}により算出してもよい。この際、左方向距離Dlが、水平半径e1、又は水平半径e1と水平誤差e2の和の何れか一方よりも小さい場合、方向成分困難度を予め定めた大きな値に設定する。また、左方向距離Dlと右方向距離Drの和が水平半径の2倍(すなわち移動体3の水平方向の大きさ)よりも小さい場合、又は、上方向距離Du及び下方向距離Ddの和が鉛直半径の2倍(すなわち移動体3の鉛直方向の大きさ)よりも小さい場合、当該区分経路の移動困難度を移動不可能であることを示す極めて大きな値に設定してもよい。
【0046】
上記実施形態では、ST6の評価値算出処理にて、経路評価値Vを、V=Σ(β×d+vi)にて算出し、移動経路の距離も経路評価値Vにおける評価対象としている。しかし、これに限らず、経路評価値Vを、V=Σviにて算出し、移動経路の距離を評価対象としなくてもよい。また、上記各実施形態では、各区分経路の移動困難度を総和により積算し、経路評価値Vを求めている。しかし、これに限らず、各区分経路の移動困難度の相乗により積算し、経路評価値Vを求めてもよい。すなわち、経路評価値Vを、例えばV=Πviにて算出してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1・・・管制装置
2・・・警備装置
3・・・移動体
4・・・通信網
5・・・管制システム
11・・・記憶部
12・・・制御部
13・・・表示部
14・・・入力部
15・・・通信部
111・・・空間モデル
112・・・移動体情報
113・・・異常情報
114・・・仮想カメラ情報
121・・・目標位置設定手段
122・・・経路算出手段
123・・・移動困難度算出手段
124・・・評価値算出手段
125・・・表示出力手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10