(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】シェードバンドを有する中間膜フィルム
(51)【国際特許分類】
B29C 59/04 20060101AFI20220920BHJP
B29C 48/16 20190101ALI20220920BHJP
B29C 48/305 20190101ALI20220920BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20220920BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220920BHJP
B32B 27/22 20060101ALI20220920BHJP
B29K 29/00 20060101ALN20220920BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20220920BHJP
【FI】
B29C59/04
B29C48/16
B29C48/305
C03C27/12 D
C03C27/12 N
B32B27/30 102
B32B27/22
B29K29:00
B29L9:00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018090667
(22)【出願日】2018-05-09
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】六車 慎一
(72)【発明者】
【氏名】保田 浩孝
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/072538(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/030284(WO,A1)
【文献】特開2012-224009(JP,A)
【文献】特開2002-104846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00-59/18
B29C 48/00-48/96
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明領域と不透明領域とを有する中間膜フィルムであって、前記不透明領域が少なくとも1種の可塑剤と少なくとも1種のポリビニルアセタールとの第1の混合物を含む2層の外側層、および少なくとも1種の可塑剤と少なくとも1種のポリビニルアセタールとの第2の混合物を含む1層の内側層によってもたらされ、且つ前記透明領域は、少なくとも1種の可塑剤と少なくとも1種のポリビニルアセタールとの第3の混合物を含む1層によってもたらされる中間膜フィルムにおいて、前記第1の混合物および前記第3の混合物は、波長380~780nmを有する光についての透過率が少なくとも85%であり、且つ前記第2の混合物は、波長380~780nmを有する光についての透過率が80%未満であり、且つ少なくとも前記不透明領域は、EN ISO 4287によって測定されるRz/Rv比1.6~2.5の表面粗さを備えることを特徴とする、前記中間膜フィルム。
【請求項2】
前記フィルムが、深さ20~100μmを有する複数の溝を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の中間膜フィルム。
【請求項3】
前記溝が
、幅10~200μm、およびピッチ50~2500μmを有することを特徴とする、請求項2に記載の中間膜フィルム。
【請求項4】
前記溝が、少なくとも不透明領域のランダム粗さRz=1~70μmを有するフィルム
上に設けられていることを特徴とする、請求項
2または3に記載の中間膜フィルム。
【請求項5】
前記内側層が染料または顔料を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の中間膜フィルム。
【請求項6】
前記外側層の間に埋め込まれた前記内側層の面積が、フィルムの全面積の5~40%であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の中間膜フィルム。
【請求項7】
透明領域と不透明領域とを有する中間膜フィルムの製造方法であって、前記不透明領域が少なくとも1種の可塑剤と少なくとも1種のポリビニルアセタールとの第1の混合物を含む2層の外側層、および少なくとも1種の可塑剤と少なくとも1種のポリビニルアセタールとの第2の混合物を含む1層の内側層によってもたらされ、且つ前記透明領域は、少なくとも1種の可塑剤と少なくとも1種のポリビニルアセタールとの第3の混合物を含む1層によってもたらされ、前記第1の混合物および前記第3の混合物は、波長380~780nmを有する光についての透過率が少なくとも85%であり、且つ前記第2の混合物は、波長380~780nmを有する光についての透過率が80%未満である製造方法において、少なくとも前記不透明領域は、メルトフラクチャー条件下でのフィルムの押出および引き続く型押段階により、Rz/Rv比1.6~2.5の表面粗さを備えることを特徴とする、前記方法。
【請求項8】
透明領域と、表面のランダム粗さRz=1~70μmを有する不透明領域とを備えたフィルムが押出され、次いで、少なくとも1つの型押ロールと少なくとも1つの加圧ロールとの間で型押されることを特徴とする、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記フィルムが、深さ20~100μmを有する複数の溝で型押されることを特徴とする、請求項
7または
8に記載の方法。
【請求項10】
前記溝が
、幅10~200μm、およびピッチ50~2500μmを有することを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3層を有する可塑化ポリビニルアセタールに基づく中間膜フィルムであって、前記中間膜の透過性が低減されている前記中間膜フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせ安全ガラスは、通常、2枚のガラス板と、前記ガラス板を結合し且つ可塑化ポリビニルアセタール、好ましくはポリビニルブチラール(PVB)に基づく1枚の接着フィルムとからなる。合わせ安全ガラスは特に自動車におけるフロントガラスとして使用される。
【0003】
フロントガラスは多くの場合、該フロントガラスの上方部分に、運転手を直射日光から守るいわゆるシェードバンドを備える。
【0004】
フロントガラスのシェードバンドは、中間膜フィルムの着色または淡彩領域によってもたらされる。これは2層の透明材料の間の着色または淡彩材料の小さな層の押出によって中間膜にもたらされる。
図1に示されるとおり、着色または淡彩領域Aは、フィルム端部から見て、通常、約5~30cmの幅を有し、フロントガラスの下方部分に向かって色の強度が低下する。
【0005】
着色または淡彩領域、つまりシェードバンドを有する可塑化ポリビニルアセタールに基づく中間膜フィルムの製造は、膨大な異なる技術および押出装置で知られている。一般に、着色または淡彩領域は、多かれ少なかれくさび型の中央の層を2層の透明層の間に組み込み、フロントガラスの下方部分の方向に色の低下(または透過率の増加)をもたらすことによって製造される。
図2および3は、色の低下を有する、2層の透明層の間の着色された中央の層を模式的に示す。
【0006】
自動車用途のための中間膜フィルムは通常、特に真空バッグ工程によるガラスの貼り合わせ物のための製造工程において良好な通風挙動を示す規則的な(ランダムではない)表面構造をもたらすための型押によって製造される。中間膜フィルムの型押は、例えば国際公開第2016/030284号(WO2016030284A1)内に記載されている。
【0007】
しかしながら、
図2および3に描かれるようなシェードバンドフィルムは、着色または淡彩領域で、層の2つの内側界面を示す。そのようなフィルムは例えば欧州特許出願公開第3070063号明細書(EP3070063A1)内に開示されている。透明材料と着色材料とは異なる組成を有するので、それらは異なる機械的特性を有する。そのような異なる機械的特性は、透明材料のみを含むフィルムの残部(つまり1層)が光学的ひずみを有さなくても、型押の間に内側界面で光学的ひずみをもたらしかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2016/030284号
【文献】欧州特許出願公開第3070063号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、シェードバンド領域の内側界面での光学的ひずみなく型押することによって、シェードバンドを有する中間膜フィルムを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
型押によって生成された表面構造が特定の特性を有する場合に、シェードバンド領域の型押によって生成される光学的ひずみを回避できることが判明した。
【0011】
発明の記載
本発明の対象は、透明領域と不透明領域とを有する中間膜フィルムであって、前記不透明領域が少なくとも1種の可塑剤と少なくとも1種のポリビニルアセタールとの第1の混合物を含む2層の外側層、および少なくとも1種の可塑剤と少なくとも1種のポリビニルアセタールとの第2の混合物を含む1層の内側層によってもたらされ、且つ前記透明領域は、少なくとも1種の可塑剤と少なくとも1種のポリビニルアセタールとの第3の混合物を含む1層によってもたらされ、前記第1の混合物および前記第3の混合物は、波長380~780nmを有する光についての透過率が少なくとも85%であり、且つ前記第2の混合物は、波長380~780nmを有する光についての透過率が80%未満であり、少なくとも前記不透明領域は、EN ISO 4287によって測定されるRz/Rv比1.6~2.5の表面粗さを備える、前記中間膜フィルムである。
【0012】
好ましくは、少なくとも不透明領域は、Rz/Rv比1.6~2.3または1.7~2.3の表面粗さを備え、Rz/Rv比1.9~2.1がより好ましい。Rz/Rv比が2.5を上回ると、粗悪な脱気および粗悪な光学歪みが生じる。他方で、Rz/Rv比が1.6を下回ると、溝が深過ぎ、且つ粗悪な端部封止が生じることがある。
【0013】
フィルムの表面粗さはさらに、20~100μmの深さRzを有する複数の溝で型押しされることができる。
【0014】
本願において、RzおよびRvはEN ISO 4287内に定義されるとおりに用いられる。Rzは、表面構造の平均粗さの深さを表し、且つRvはサンプリング長さ内の表面粗さのプロファイルの最も深い谷部の深さを表す。粗さの値Rzおよびプロファイルの谷部の最大深さRvを有するフィルムの表面粗さの測定を、DIN EN ISO 4287に従って実施する。表面粗さを測定するために使用される測定装置は、EN ISO 3274を満たさなければならない。使用されるプロファイルフィルターは、DIN EN ISO 11562に対応しなければならない。
【0015】
フィルムの不透明領域の表面粗さは、フィルムの透明領域の表面粗さと同一であってよく、且つまずメルトフラクチャー条件下でフィルムを押出し、続いて型押段階を行うことによって提供されることができる。
【0016】
従って、本発明の他の対象は、透明領域と不透明領域とを有する中間膜フィルムの製造方法であって、前記不透明領域が少なくとも1種の可塑剤と少なくとも1種のポリビニルアセタールとの第1の混合物を含む2層の外側層、および少なくとも1種の可塑剤と少なくとも1種のポリビニルアセタールとの第2の混合物を含む1層の内側層によってもたらされ、且つ前記透明領域は、少なくとも1種の可塑剤と少なくとも1種のポリビニルアセタールとの第3の混合物を含む1層によってもたらされ、前記第1の混合物および前記第3の混合物は、波長380~780nmを有する光についての透過率が少なくとも85%であり、且つ前記第2の混合物は、波長380~780nmを有する光についての透過率が80%未満であり、少なくとも前記不透明領域は、メルトフラクチャー条件下でのフィルムの押出および引き続く型押段階により、Rz/Rv比1.6~2.5の表面粗さを備える、前記方法である。
【0017】
本発明の好ましい実施態様において、波長380~780nmを有する光についての内側層の透過率は、3~75%、より好ましくは8~70%、および特に15~60%である。
【0018】
外側層の間に埋め込まれた内側層は、中間膜フィルムの全面積の5~40%、好ましくは5~25%の面積を有することができる。
【0019】
通常、自動車用途のためのフロートガラスおよび/または合わせガラスは、波長380~780nmを有する光についての透過率が少なくとも88%である。
【0020】
着色のために、着色剤、顔料および染料を、特に限定なく使用できる。
【0021】
顔料の例は、有機顔料、例えばアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、ジオキサジン系、アントラキノン系、イソインドリノ系等、酸化物、水酸化物、硫化物、クロム酸、炭酸塩、ケイ酸塩、無機顔料、例えばヒ酸塩、フェロシアン化物、カーボン、金属粉末、およびその種のものを含む。
【0022】
染料の例は、アゾ、アントラキノン、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ジオキサジン、アントラキノン、インドリノン、イソインドリノ、キノンイミン、トリフェニルメタン、チアゾール、ニトロおよびニトロソ染料などの染料を含む。それらの中で、アゾ系およびアントラキノン系が染料として好ましく使用され、それらは近赤外光(750~1000nm)の波長を有する光線をほとんど遮らない。
【0023】
シェードバンド(PVB)フィルム、つまり、不透明領域と透明領域とを有する可塑化ポリビニルアセタールを含むフィルムを、国際公開第2005/090054号(WO2005090054A1)内に開示される方法に従って押出すことができる。不透明領域の外側層は、シェードバンドの外(つまり透明領域内)で結合して単一の層になる。好ましくは、外側層は同一の組成を有する。内側層は、色以外は、外側層と同じ組成を有することができる。
【0024】
溝の間の隆起部上のランダムな表面パターンはフィルムの押出の間に作り出され、且つ型押の間は、本質的に押出の間に得られたままであるべきである。
【0025】
好ましくは、型押後に得られる溝の間の隆起部の表面粗さは、押出後に得られるものよりも最大20%、より好ましくは最大10%低い。最善の場合、押出後および型押後に得られる溝の間の隆起部の表面粗さは同一である。これは、隆起部の領域においてフィルムと接触していないか、または完全には接触していない型押器具によって達成できる。
【0026】
可塑化ポリビニルアセタールを含む溶融物の押出は好ましくは、メルトフラクチャー条件下で、温度制御可能なリップを有する押出ダイを用いて実施される。そのような押出工程は、例えば欧州特許第0185863号明細書(EP0185863 B1)から、当業者に公知である。
【0027】
溝の間の隆起部上のランダムな表面パターンは、フィルム表面と同一または異なっていてよい。異なる表面パターンまたは粗さのレベルを、メルトフラクチャー押出の間の、吐出ギャップの幅およびダイ出口直上のダイリップの温度を変化させることによって生成できる。
【0028】
好ましくは表面のランダム粗さRz=10~70μmを有するフィルム、より好ましくは表面のランダム粗さRz=25~60μmを有するフィルムを得るように押出工程を実施する。
【0029】
本発明の第1の態様において、押出を、リップ温度100~270℃、好ましくは100~240℃を有する押出ダイを用いてメルトフラクチャー条件下で実施する。
【0030】
本発明の第2の態様において、メルトフラクチャー条件下での押出を、溶融物の流速500~3500kg/時間で実施する。
【0031】
押出に引き続き、フィルムを段階b)において、各々独立して、表面構造および粗さの深さRz=20~100μm、好ましくはRz=20~80μm、特にRz=25μm~70μmで、片側または両側上での型押に供する。
【0032】
フィルムの最終的な表面構造を、単独の段階で、または好ましくは2つの別途の型押段階で型押できる。単独の段階の型押においては、2つの型押ロールが使用される一方で、多段階の型押においては、1つの型押ローラーおよび加圧ローラーが使用される。加圧ローラーは好ましくはショアA硬度20~80を有するゴムの表面を有する。
【0033】
本発明による型押段階を、構造化されたフィルムの2つの側が異なる粗さの深さRzを有するように行うことができる。これは例えば、異なる型押器具、または型押器具および/または加圧ローラーの温度によって達成できる。
【0034】
フィルムの両表面上の溝は、互いに70~90°または5~45°の角度を共有できる。他の態様において、フィルムの少なくとも1つの表面上のチャネルは、押出方向に対して5~45°、好ましくは35~45°の角度を有する。
【0035】
チャネルのピッチはフィルム表面上で同一または異なっていてよく、ここで表面間での5%のずれは同一であるとみなされる。溝のピッチは100~1500μm、好ましくは200~1000μmであってよい。
【0036】
型押工程の前および/またはその後に、フィルムを-10~+40℃に冷却して、このようにフィルムの表面構造を固定することができる。好ましくは相応に温度制御された冷却ローラーを介して冷却を行う。
【0037】
好ましくは、型押ローラーは金属またはセラミック製であり、且つフィルム表面内の後方に存在する構造のネガ型のプロファイルパターンを備えた表面を有する。
【0038】
型押後にメルトフラクチャー表面を保つためには、意図するフィルム粗さよりも高い深さの溝の型押ローラーが好ましい。
【0039】
型押ローラーの温度は、80~200℃、特に80~170℃、好ましくは100~160℃、および特に110~155℃である。特に好ましくは、型押ローラーは(例えばポリマーまたはセラミックで)被覆された鋼表面を有して、フィルムの付着性を低減する。
【0040】
第1の実施態様において、押出されたフィルムを、同一または異なる表面の浮き彫りを有する2つの型押ローラー間で型押する。
【0041】
本発明の他の実施態様において、フィルムを、逆方向に回転している型押ローラーと加圧ローラーとの間に導く。好ましくは、フィルムを、型押ローラー間および/または型押ローラーおよび加圧ローラー間で、ライン圧力10~400N/mm、特に10~150N/mm、好ましくは30~130N/mm、および特に40~110N/mmに晒す。複数の工程段階b)が実施される場合、ライン圧力は同一であっても異なっていてもよい。ライン圧力とは、フィルム幅に対するローラー対の押し付け力を意味する。
【0042】
加圧ローラーは好ましくは0~50℃、好ましくは5~30℃の温度を有する、つまり、それらは、型押ローラーに相対して積極的に冷却される。加圧ローラーの温度は、工程段階b)において同一または異なっていてよい。
【0043】
加圧ローラーは、型押ローラーの構造化された表面にフィルムを押し込み、型押ローラーに対して軽く寄り添う。ライン圧力を変化させることによって、型押領域の表面、ひいてはローラーギャップ中のフィルムの滞在時間を変えることができる。
【0044】
ライン圧力、フィルム温度および/またはローラー温度、ローラー速度、およびローラー上のフィルムウェブの包絡角度の工程パラメータを選択することにより、型押ローラーの特定の粗さの深さによってフィルム型押の粗さの深さに影響を及ぼすことができる。
【0045】
この場合も、温度制御ローラーのローラーギャップを通じて直接的に、つまり、それらをよけることなくフィルムを導くことができる。
【0046】
特にポリビニルブチラール(PVB)を、架橋されたまたは架橋されていない形態で、部分的にアセタール化されたポリビニルアルコールとして、少なくとも1種の可塑剤、付着性を調節するための金属塩、有機添加剤および/または無機充填材との混合物において使用することが可能である。
【0047】
一方では、このために当該技術分野において公知の全ての可塑剤、特に多価酸、多価アルコールまたはオリゴエーテルグリコールのエステル、例えばアジピン酸エステル、セバシン酸エステルまたはフタル酸エステル、特にジ-n-ヘキシルアジペート、ジブチルセバケート、ジオクチルフタレート、ジグリコール、トリグリコールまたはテトラグリコールと直鎖または分枝鎖の脂肪族カルボン酸とのエステル、およびそれらのエステルの混合物が、部分的にアセタール化されたポリビニルアルコールのための可塑剤として適している。脂肪族ジオールと長鎖脂肪族カルボン酸とのエステル、特にトリエチレングリコールと、6~10個の炭素原子を含有する脂肪族カルボン酸とのエステル、例えば2-エチル酪酸またはn-ヘプタン酸が、部分的にアセタール化されたポリビニルアルコール、特にポリビニルブチラールのための標準的な可塑剤として好ましく使用される。ジ-n-ヘキシルアジペート(DHA)、ジブチルセバケート(DBS)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジグリコール、トリグリコールまたはテトラグリコールと、直鎖または分枝鎖の脂肪族カルボン酸とのエステル、特にトリエチレングリコール-ビス-2-エチルブチレート(3GH)、トリエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート(3G7)、トリエチレングリコール-ビス-2-エチルヘキサノエート(3G8)、テトラエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート(4G7)からなる群からの1つまたは複数の可塑剤が特に好ましく使用される。
【0048】
本発明の特定の実施態様において、フィルム材料への付着性を低減させる物質を添加することによって、型押器具へのフィルムの付着性をさらに低減させることができる。
【0049】
可塑化された部分的にアセタール化されたポリビニルアルコール樹脂は、樹脂100質量部に対して好ましくは25~45質量部、および特に好ましくは30~40質量部の可塑剤を含有する。
【0050】
部分的にアセタール化されたポリビニルアルコールは、加水分解ポリビニルエステルのアセタール化によって公知の方法で製造される。例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドおよびその種のもの、好ましくはブチルアルデヒドを、アルデヒドとして使用する。
【0051】
好ましいポリビニルブチラール樹脂は、10~25質量%、好ましくは17~23質量%、および特に好ましくは19~21質量%のビニルアルコール基、および/または0~20質量%、好ましくは0.5~2.5質量%のアセテート基を含有する。
【0052】
さらなる方法の態様において、ポリアルデヒド(特にグルタルアルデヒド)およびオキソカルボン酸(特にグリオキシル酸)で部分的に架橋されたPVBは、国際公開第2004/063231号(WO2004/063231 A1)によるポリマーとして使用される。そのような部分的に架橋されたPVBは、同類の架橋されていないPVBの粘度よりも10~50%高い粘度を有する。
【0053】
フィルムの含水率は、好ましくは0.15~0.8質量%、特に0.3~0.5質量%に制御される。
【0054】
本発明により製造されるフィルムを、特に1または複数のガラス板および/または1または複数のポリマー板と少なくとも1つの構造化フィルムとの貼り合わせ物を製造するために使用できる。
【0055】
それらの貼り合わせ物の製造の間に、ガラス/ポリマー板およびフィルムから、プレス、真空バッグまたは真空リングによって、予備複合材をまず製造する。通常、予備複合材貼り合わせ物は、空気の包含に起因してわずかに混濁している。貼り合わせ物の最終的な製造は、例えば国際公開第2003/033583号(WO03/033583)に従ってオートクレーブ内で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】着色または淡彩領域Aを備えるフロントガラスを示す図である。
【
図2】色の低下を有する、2層の透明層の間の着色された中央の層を模式的に示す図である。
【
図3】色の低下を有する、2層の透明層の間の着色された中央の層を模式的に示す図である。
【実施例】
【0057】
本発明による例
PVB樹脂100質量部あたり公称レベル38部の可塑剤を含有する、青いシェードバンドを有する0.76mm厚のPVBフィルムを、国際公開第2005/090054号(WO2005090054A1)に開示される方法に従い、下記の条件で押出する。
【0058】
リップ温度: 195℃
溶融物の流速: 1000kg/時間
ライン速度: 15m/分。
【0059】
このPVBフィルムは、各々の側の上で、Rzメルトフラクチャー33μm(ミクロン)の値を特徴とするメルトフラクチャー表面粗さを有する。シェードバンド層の厚さは300μmであり、シェードバンド領域で中間膜端部で測定された光透過率7%を有する。
【0060】
不透明領域の外側層は、シェードバンドの外(つまり透明領域内)で結合して単一の層になり、且つ同一の組成を有する。内側層は、色以外は外側層と同じ組成を有する。
【0061】
このPVBフィルムを、以下の特性を有する2組のプレスおよび型押ローラーの間で型押する:
設備のパラメータ:
ゴムローラーの硬さ: 70±5 ショアA
型押ローラーの粗さ: 約200μm
型押ローラーのピッチ: 約500μm
溝の角度: 45°
表面コーティング: ポリマー
ゴムローラーの温度: 10℃
【表1】
【0062】
2段階の型押のプレスローラーおよび型押ローラーは、同じ特性を有した。
【0063】
フィルムの特性を以下の表に示し、ここで、「メルトフラクションによるRz」とは、メルトフラクチャー条件下での押出後の粗さを表す。「最終Rz」とは、型押後の粗さを表す。「最終Rv」とは、型押後の粗さの谷の深さを表す。全ての値はDIN ISO 4287に準拠して測定された。
【0064】
例1~5は本発明による一方で、例6および7は比較例である。
【表2】
【0065】
【0066】
不透明領域の光学歪みを目視検査によって評価する。あらゆる光学的ひずみがまだら状のパターンとして見られる。
【表4】
【0067】
(比較)例6によるフィルムは、低温の型押ゆえに、型押パターンをほとんど示さない。粗悪な脱気および光学的ひずみが生じる。(比較)例7によるフィルムは、高温の型押ゆえに、過度の型押パターンを示す。従って、粗悪な端部封止および光学的ひずみが生じる。
【0068】
本発明の方法で、良好な光学的ひずみおよびより良好な貼り合わせ収率を有する、シェードバンドを有する可塑化ポリビニルアセタールフィルムを製造できる。