(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】消臭性能の評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/497 20060101AFI20220920BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
G01N33/497 D
A61L9/00 Z
(21)【出願番号】P 2018102407
(22)【出願日】2018-05-29
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】田澤 寿明
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-167205(JP,A)
【文献】特開2018-034100(JP,A)
【文献】特開2017-221434(JP,A)
【文献】特開2017-196878(JP,A)
【文献】特開2003-305111(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0147573(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
G01N 33/497
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭いを発する物質を収容した袋に入れて使用する消臭剤による消臭性能を評価する方法であって、
前記臭いを発する物質を収容した袋に消臭剤を入れて開口部を閉じた評価対象袋を用意し、
前記評価対象袋をチャンバー内に入れて当該チャンバーを密閉
するとともに、チャンバー内の空気を攪拌し、
一定時間放置した後に、当該チャンバー内の空気を採取して、前記評価対象袋から当該チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、
前記チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果に基づいて前記消臭剤による消臭性能を評価する、
消臭性能の評価方法。
【請求項2】
前記チャンバーを密閉する前に、当該チャンバー内を、活性炭とシリカゲルを含む吸着剤に接触させて無臭化させた空気で満たす、
請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
臭いを発する物質を収容した袋に入れて使用する消臭剤による消臭性能を評価する方法であって、
前記臭いを発する物質を収容した袋に消臭剤を入れて開口部を閉じた評価対象袋、および前記臭いを発する物質を同じ材質の別の袋に収容して前記消臭剤を入れずに開口部を閉じた比較対象袋を用意し、
前記評価対象袋を第1チャンバー内に入れて当該第1チャンバーを密閉
するとともに、当該第1チャンバー内の空気を攪拌し、一定時間放置した後に、当該第1チャンバー内の空気を採取して、前記評価対象袋から当該第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、
前記比較対象袋を前記第1チャンバーと同じ容積の第2チャンバー内に入れて当該第2チャンバーを密閉
するとともに、当該第2チャンバー内の空気を攪拌し、一定時間放置した後に、当該第2チャンバー内の空気を採取して、前記比較対象袋から当該第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、
前記第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果と前記第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果を比較して前記消臭剤による消臭性能を評価する、
消臭性能の評価方法。
【請求項4】
臭いを発する物質を収容した袋に入れて使用する消臭剤による消臭性能を評価する方法であって、
臭いを発する物質を収容した袋に消臭剤を入れて開口部を閉じた評価対象袋、および臭いを発する物質を収容して開口部を閉じた前記評価対象袋とは異なる材質の比較対象袋を用意し、
前記評価対象袋を第1チャンバー内に入れて当該第1チャンバーを密閉するとともに、当該第1チャンバー内の空気を攪拌し、一定時間放置した後に、前記第1チャンバー内の空気を採取して、前記評価対象袋から前記第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、
前記比較対象袋を前記第1チャンバーと同じ容積の第2チャンバー内に入れて当該第2チャンバーを密閉するとともに、当該第2チャンバー内の空気を攪拌し、一定時間放置した後に、前記第2チャンバー内の空気を採取して、前記比較対象袋から前記第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、
前記第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果と前記第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果を比較して前記評価対象袋の消臭性能を評価する評価方法。
【請求項5】
臭いを発する物質を収容した袋に入れて使用する消臭剤による消臭性能を評価する方法であって、
前記臭いを発する物質を収容した袋に消臭剤を入れて開口部を閉じた評価対象袋、および前記臭いを発する物質を同じ材質の別の袋に収容して前記消臭剤とは異なる消臭剤を入れて開口部を閉じた比較対象袋を用意し、
前記評価対象袋を第1チャンバー内に入れて当該第1チャンバーを密閉するとともに、当該第1チャンバー内の空気を攪拌し、一定時間放置した後に、当該第1チャンバー内の空気を採取して、前記評価対象袋から当該第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、
前記比較対象袋を前記第1チャンバーと同じ容積の第2チャンバー内に入れて当該第2チャンバーを密閉するとともに、当該第2チャンバー内の空気を攪拌、一定時間放置した後に、当該第2チャンバー内の空気を採取して、前記比較対象袋から当該第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、
前記第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果と前記第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果を比較して前記消臭剤による消臭性能を評価する、
消臭性能の評価方法。
【請求項6】
前記第1チャンバーを密閉する前に、当該第1チャンバー内を、活性炭とシリカゲルを含む吸着剤に接触させて無臭化させた空気で満たすとともに、前記第2チャンバーを密閉する前に、当該第2チャンバー内を、前記無臭化させた空気で満たす、
請求項3-5のいずれか1項に記載の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤や脱臭剤(以下、総称して消臭剤と称する)などの消臭性能の評価方法に関し、例えば、生ごみや使用済みの紙おむつなどを入れる専用の消臭袋や、消臭機能を持たない袋の中に入れて使用する消臭剤による消臭性能を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の臭いを消す消臭剤として、液体タイプ、ゲルタイプ、または活性炭など固形タイプのものが知られている。消臭剤は、消臭剤をそのまま使用する場合と、紙などの担体に消臭剤を担持させて使用する場合がある。或いは、生ごみや使用済み紙おむつなどを入れるごみ袋自体に消臭機能を持たせたものも知られている。
【0003】
一般に、家庭から出る生ごみや使用済み紙おむつなどの可燃ごみは、専用のごみ袋に入れてごみ収集所に出す。可燃ごみは、地域ごとに指定されたごみの収集日まで、屋外のごみ容器に入れて放置したり、台所のごみ箱内にそのまま、或いはレジ袋などに入れて放置したりする。また、乳幼児や要介護者などが使用した紙おむつは、外出先で捨てることができない場合、専用のごみ袋やレジ袋に入れてしばらく持ち歩かなければならない。
【0004】
しかし、ごみ袋やレジ袋は、一般に、ポリエチレンなどの比較的薄い素材により形成されており、小さな穴が開いている場合もあるため、袋の口を単に縛っただけでは、臭いが外部に漏れやすい。このため、臭いが外部に漏れにくい消臭袋が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、リグニンスルホン酸塩とプラスチックを混合した組成物を含む素材により形成した消臭袋について開示されている。この消臭袋は、素材自体が消臭機能を有している。この消臭袋は、例えば、以下のようにその消臭性能の評価がなされている。
【0006】
まず、一般家庭から排出される生ごみ(野菜くず、残飯、調理粕など)1Kgをポリ容器内で一週間放置し、その後、その生ごみを200gずつ消臭袋に入れてしばらく放置する。そして、3日後、一週間後、二週間後のそれぞれにおいて、悪臭防止法に基づいて悪臭の規制基準等に用いられる6段階臭気強度表示法により、消臭袋の臭いを評価する。
【0007】
また、特許文献2には、酸性脱臭剤を含むプラスチックフィルム、塩基性脱臭剤を含むプラスチックフィルム、および物理的吸着による脱臭剤を含むプラスチックフィルムのうち少なくとも2種類のフィルムを組み合わせた消臭袋について開示されている。この消臭袋も、素材自体が消臭機能を有する。この消臭袋は、例えば、以下のようにその消臭性能の評価がなされている。
【0008】
まず、評価対象となるフィルムを20cm×30cmのサイズに切ったフィルム片を複数枚用意し、それぞれ臭いを発する物質が入った複数のバイアル瓶に1枚ずつ入れて瓶を密閉する。そして、各バイアル瓶内の臭い成分を所定時間ごとに経時的に測定し、フィルム片の消臭性能を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-200557号公報
【文献】実開昭63-32542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、消臭機能を有する袋に臭いを発する物質を収容した場合、袋の外に臭いが漏れ難くなる。しかし、上述した特許文献1の消臭袋は、官能的評価法により消臭性能が定性的に評価されており、消臭性能の定量的な評価にはなっていない。また、上述した特許文献2の消臭袋は、袋の形態での評価がなされておらず、実際に袋から外部にもれる臭い成分を測定している訳ではない。つまり、従来は、臭いを発する物質を袋に入れた形態で、袋の外に漏れる臭い成分を測定しておらず、このような形態における消臭性能が適切に評価されていない。
【0011】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、臭いを発する物質を収容した消臭機能を有する袋、及び消臭機能を持たない袋に臭いを発する物質とともに入れて使用する消臭剤による消臭性能を正確に評価することができる消臭性能の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の消臭性能の評価方法は、臭いを発する物質を収容した袋に入れて使用する消臭剤による消臭性能を評価する方法であって、臭いを発する物質を収容した袋に消臭剤を入れて開口部を閉じた評価対象袋を用意し、評価対象袋をチャンバー内に入れてチャンバーを密閉するとともに、チャンバー内の空気を攪拌し、一定時間放置した後に、チャンバー内の空気を採取して、評価対象袋からチャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果に基づいて消臭剤による消臭性能を評価する、消臭性能の評価方法である。
【0014】
また、本発明の消臭性能の評価方法は、臭いを発する物質を収容した袋に入れて使用する消臭剤による消臭性能を評価する方法であって、臭いを発する物質を収容した袋に消臭剤を入れて開口部を閉じた評価対象袋、および臭いを発する物質を同じ材質の別の袋に収容して消臭剤を入れずに開口部を閉じた比較対象袋を用意し、評価対象袋を第1チャンバー内に入れて第1チャンバーを密閉するとともに、第1チャンバー内の空気を攪拌し、一定時間放置した後に、第1チャンバー内の空気を採取して、評価対象袋から第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、比較対象袋を第1チャンバーと同じ容積の第2チャンバー内に入れて第2チャンバーを密閉するとともに、第2チャンバー内の空気を攪拌し、一定時間放置した後に、第2チャンバー内の空気を採取して、比較対象袋から第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果と第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果を比較して消臭剤による消臭性能を評価する、消臭性能の評価方法である。
【0015】
また、本発明の消臭性能の評価方法は、臭いを発する物質を収容した袋に入れて使用する消臭剤による消臭性能を評価する方法であって、臭いを発する物質を収容した袋に消臭剤を入れて開口部を閉じた評価対象袋、および臭いを発する物質を収容して開口部を閉じた評価対象袋とは異なる材質の比較対象袋を用意し、評価対象袋を第1チャンバー内に入れて第1チャンバーを密閉するとともに、第1チャンバー内の空気を攪拌し、一定時間放置した後に、第1チャンバー内の空気を採取して、評価対象袋から第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、比較対象袋を第1チャンバーと同じ容積の第2チャンバー内に入れて第2チャンバーを密閉するとともに、第2チャンバー内の空気を攪拌し、一定時間放置した後に、第2チャンバー内の空気を採取して、比較対象袋から第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果と第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果を比較して評価対象袋の消臭性能を評価する評価方法である。
さらに、本発明の消臭性能の評価方法は、臭いを発する物質を収容した袋に入れて使用する消臭剤による消臭性能を評価する方法であって、臭いを発する物質を収容した袋に消臭剤を入れて開口部を閉じた評価対象袋、および臭いを発する物質を同じ材質の別の袋に収容して消臭剤とは異なる消臭剤を入れて開口部を閉じた比較対象袋を用意し、評価対象袋を第1チャンバー内に入れて第1チャンバーを密閉するとともに、第1チャンバー内の空気を攪拌し、一定時間放置した後に、第1チャンバー内の空気を採取して、評価対象袋から第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、比較対象袋を第1チャンバーと同じ容積の第2チャンバー内に入れて第2チャンバーを密閉するとともに、第2チャンバー内の空気を攪拌、一定時間放置した後に、第2チャンバー内の空気を採取して、比較対象袋から第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果と第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果を比較して消臭剤による消臭性能を評価する、消臭性能の評価方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の消臭性能の評価方法の一態様によれば、臭いを発する物質を収容した消臭機能を有する袋、及び消臭機能を持たない袋に臭いを発する物質とともに入れて使用する消臭剤による消臭性能を正確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係る評価装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る評価装置100を示す概略図である。評価装置100は、臭いを発する物質(以下、臭気物質とする)と消臭剤を収容した袋10(評価対象袋)を入れるエアバッグ20(第1、第2チャンバー)を有する。エアバッグ20は、例えば、10Lの容積を有する。エアバッグ20は、臭いを透過させることのない素材により形成されている。エアバッグ20内には、内部の空気を撹拌するためのファン22が取り付けられている。エアバッグ20は、袋10を入れた後、図示しない開口部を閉じて密閉される。
【0019】
評価装置100は、連通管32を介してエアバッグ20に接続した検知管30を有する。検知管30の連通管32と反対側の端部には、吸引器34が取り付けられている。検知管30の端部に吸引器34を取り付けて、検知管30の端部を切断し、吸引器34のピストンアーム36を図示右方に引くと、連通管32を介してエアバッグ20内の空気が検知管30に流入する。ピストンアーム36を引く量を調整することで、検知管30に流入する空気の量を適量にコントロールすることができる。
【0020】
連通管32は、連通管32を通して空気を流通可能にするとともに空気の流通を遮断することができる図示しない開閉弁を備えている。開閉弁は、コック38を回すことにより操作することができる。
【0021】
エアバッグ20や袋10の素材は、臭いや香りを吸脱着しない素材を用いることが望ましい。例えば、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニル、FRPなど)、ポリエステル(PETなど)、アルミニウム(アルミ薄膜にプラスチックフィルムをラミネートしたものなど)が適している。
【0022】
検知管30は、例えば、ガラス管の中に一定量の検知剤を充填したものである。検知剤は、測定対象となるガスとの間の化学反応によって色が変わる薬剤であり、精製されたシリカゲル、活性アルミナ、ガラス粒などに試薬を吸着させて乾燥したものなどが用いられる。検知剤は、測定対象となるガスの種類に応じて選択される。
【0023】
臭気物質としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸などがあり、これらの物質を単独で、或いは混ぜたものを使用することができる。また、一般的な生ごみや使用済み紙おむつなどを臭気物質として使用してもよい。
【0024】
以下、上述した評価装置100を用いて、臭気物質と共に袋10に入れた消臭剤による消臭性能を評価する方法について説明する。なお、ここでは、袋10の種類や枚数、消臭剤の種類や有無などの条件を変えて、複数の袋10のサンプル(試料1~試料7)を用意し、一定時間ごとに各サンプルの臭い成分を測定した。
【0025】
まず、直径90mmのろ紙を複数枚用意し、各ろ紙に0.5wt%のアンモニア水溶液(約0.3g)をスプレーで塗布し、複数の悪臭発生源(臭いを発する物質:臭気物質)を作成した。そして、下の[表1]に示した数種類の袋に上記の悪臭発生源と共に[表1]の消臭剤を入れ(或いは入れずに)、袋の開口部を閉じて試料1~7を用意した。なお、各袋の中の空気の量は、袋の容積に対して8割程度とした。
【0026】
【0027】
[表1]における乳白色袋は、HDPE(高密度ポリエチレン)製の袋(縦444mm×横549mm×厚さ0.019mm)であり、脱臭袋Aは、S社製の「おむつの消臭袋」であり、脱臭袋Bは、K社製の「おむつが臭わない袋」である。また、[表1]における消臭剤の製品Aは、エステー株式会社製の「脱臭炭におい取り紙」であり、試作品Bは、活性炭を担持させたクレープ紙である。
【0028】
つまり、[表1]の試料1は、乳白色袋に悪臭発生源だけを入れて密閉した比較対象袋であり、試料2は、2枚重ねた乳白色袋に悪臭発生源だけを入れて密閉した参考袋であり、試料3は、乳白色袋に悪臭発生源と共に製品A(表面積約400cm2、98mm×409mm)を入れて密閉した評価対象袋であり、試料4は、乳白色袋に悪臭発生源と共に試作品B(表面積約400cm2、200mm×200mm)を入れて密閉した評価対象袋であり、試料5は、直径1mm程度の穴を1つ開けた乳白色袋に悪臭発生源と共に試作品B(表面積約400cm2、200mm×200mm)を入れて密閉した評価対象袋であり、試料6は、脱臭袋Aに悪臭発生源だけを入れて密閉した評価対象袋であり、試料7は、脱臭袋Bに悪臭発生源だけを入れて密閉した評価対象袋である。
【0029】
次に、上記のように用意した複数の試料1~7を、それぞれ、容積10リットルの別々のエアバッグ20内に収容した。その後、それぞれのエアバッグ20内を、活性炭とシリカゲルで濾過した無臭の空気で満たした。さらに、各エアバッグ20内の温度を一定に保持して、ファン22を回転させて各エアバッグ20内の空気を撹拌した。
【0030】
そして、下の[表2]に示した経過時間(0.16h、1h、1.5h、3h、6h、24h)ごとに、試料1~7を入れた複数のエアバッグ20内の空気を検知管30で採取し、アンモニア濃度を測定した。なお、試料1~7の他に、袋も消臭剤も入れずに悪臭発生源だけをエアバッグ20内に収容したブランクを用意し、同じ経過時間ごとにアンモニア濃度を測定した。測定結果を下の[表2]に示す。
【0031】
【0032】
[表2]から分かるように、総合評価が「×」であった試料1、試料2、試料7については、24時間経過した時点で、エアバッグ20内のアンモニア濃度がブランクのアンモニア濃度と同程度となった。つまり、袋に悪臭発生源だけを入れて消臭剤を入れなかった場合には、例え脱臭袋Bを用いた場合であっても、消臭性能が長時間持続しないことが分かった。
【0033】
また、総合評価が「○」であった試料3(評価対象袋)については、24時間経過した時点でも、エアバッグ20内のアンモニア濃度がブランクのアンモニア濃度の半分以下であった。つまり、試料1(比較対象袋)と比較すると、悪臭発生源と共に製品Aを袋に入れることで、悪臭が経時的に袋の外に漏れる量を大幅に低減することができているのが分かった。
【0034】
さらに、総合評価が「◎」であった試料4、試料5、試料6については、24時間経過した時点でも、悪臭が袋の外に漏れることはほとんど無かった。つまり、製品Aの消臭性能をさらに改良した試作品Bを消臭剤に用いた場合、長時間経っても袋の外に悪臭が漏れることはほとんど無く、高い消臭性能を示すことが分かった。
【0035】
以上のように、本実施形態によると、悪臭発生源と共に消臭剤を袋10に入れて、この袋10をエアバッグ20内に収容配置して、一定時間経過した時点で、エアバッグ20内の空気を採取して臭いを評価するようにしたため、袋10の外に経時的に漏れる悪臭を正確に評価することができる。これに対し、例えば、悪臭発生源と消臭剤を袋に入れずにエアバッグ20内に収容配置した場合、比較的広い容積を有するエアバッグ20内で一旦拡散した臭いを消臭剤が消臭することになり、袋から漏れる臭いを適切に評価することはできない。
【0036】
なお、本実施形態によると、悪臭発生源と共に袋10に入れた消臭剤の消臭性能を適切に評価することができるとともに、袋自体の消臭性能も適切に評価することができる。この場合、評価対象となる「袋」は、消臭機能を有する消臭袋であってもよく、レジ袋などの消臭機能を持たない袋であってもよい。
【0037】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0038】
例えば、上述した実施形態では、袋10に入れる臭気物質として、アンモニア水溶液をろ紙にスプレーしたものを使用した場合について説明したが、これに限らず、評価対象となる悪臭の種類に応じて臭気物質を種々変更することができる。例えば、評価対象となる悪臭が糞尿である場合には、硫化水素を臭気物質として用いることができる。また、評価対象となる悪臭が生ごみである場合には、酢酸を臭気物質として用いることができる。
【0039】
また、上述した実施形態では、臭い成分を測定する手段として検知管30を用いた場合について説明したが、これに限らず、機器分析による測定、例えばエアバッグ20内の空気を採取し、ガスクロマトグラフにより測定してもよい。
【0040】
さらに、上述した実施形態では、悪臭発生源と共に消臭剤を入れた袋10をエアバッグ20内に収容配置した場合について説明したが、これに限らず、例えば、樹脂製の容器(弁当箱のような容器)やパウチなどを袋10の代りに適宜用いることができる。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
臭いを発する物質を収容した袋に入れて使用する消臭剤による消臭性能を評価する方法であって、
前記臭いを発する物質を収容した袋に消臭剤を入れて開口部を閉じた評価対象袋を用意し、
前記評価対象袋をチャンバー内に入れて当該チャンバーを密閉し、
一定時間放置した後に、当該チャンバー内の空気を採取して、前記評価対象袋から当該チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、
前記チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果に基づいて前記消臭剤による消臭性能を評価する、
消臭性能の評価方法。
[2]
臭いを発する物質を収容した袋の消臭性能を評価する方法であって、
前記臭いを発する物質を収容した袋の開口部を閉じた評価対象袋を用意し、
前記評価対象袋をチャンバー内に入れて当該チャンバーを密閉し、
一定時間放置した後に、当該チャンバー内の空気を採取して、前記評価対象袋から当該チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、
前記チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果に基づいて前記袋の消臭性能を評価する、
消臭性能の評価方法。
[3]
臭いを発する物質を収容した袋に入れて使用する消臭剤による消臭性能を評価する方法であって、
前記臭いを発する物質を収容した袋に消臭剤を入れて開口部を閉じた評価対象袋、および前記臭いを発する物質を同じ材質の別の袋に収容して前記消臭剤を入れずに開口部を閉じた比較対象袋を用意し、
前記評価対象袋を第1チャンバー内に入れて当該第1チャンバーを密閉し、一定時間放置した後に、当該第1チャンバー内の空気を採取して、前記評価対象袋から当該第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、
前記比較対象袋を前記第1チャンバーと同じ容積の第2チャンバー内に入れて当該第2チャンバーを密閉し、一定時間放置した後に、当該第2チャンバー内の空気を採取して、前記比較対象袋から当該第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、
前記第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果と前記第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果を比較して前記消臭剤による消臭性能を評価する、
消臭性能の評価方法。
[4]
臭いを発する物質を収容した袋の消臭性能を評価する方法であって、
臭いを発する物質を収容して開口部を閉じた評価対象袋、および臭いを発する物質を収容して開口部を閉じた前記評価対象袋とは異なる材質の比較対象袋を用意し、
前記評価対象袋を第1チャンバー内に入れて当該第1チャンバーを密閉し、一定時間放置した後に、前記第1チャンバー内の空気を採取して、前記評価対象袋から前記第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、
前記比較対象袋を前記第1チャンバーと同じ容積の第2チャンバー内に入れて当該第2チャンバーを密閉し、一定時間放置した後に、前記第2チャンバー内の空気を採取して、前記比較対象袋から前記第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分を測定し、
前記第1チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果と前記第2チャンバー内に漏れ出た臭い成分の測定結果を比較して前記評価対象袋の消臭性能を評価する評価方法。
【符号の説明】
【0041】
10…袋、 20…エアバッグ、 22…ファン、 30…検知管、 34…吸引器、 100…評価装置。