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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】ガス供給システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018106142
(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公開番号】P2019210975
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】兼井 直史
(72)【発明者】
【氏名】名倉 見治
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1302010(KR,B1)
【文献】特開平11-210993(JP,A)
【文献】特開昭57-015200(JP,A)
【文献】実開平01-089698(JP,U)
【文献】特開2001-248797(JP,A)
【文献】特開平9-60799(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-45802(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガスL1が気化した天然ガスG1と、前記液化天然ガスL1よりも低温の液体水素L2が気化した水素ガスG2と、を混合した混合ガスを需要先に供給するガス供給システムであって、
前記液化天然ガスL1を貯蔵する第1タンクと、
前記第1タンク内で前記液化天然ガスL1が気化して発生した前記天然ガスG1が流入するとともに、前記天然ガスG1を昇圧するガス昇圧機構が配置された第1経路と、
前記第1タンクから前記液化天然ガスL1を取り出す経路であって、前記液化天然ガスL1を昇圧するポンプと、前記ポンプによって昇圧した前記液化天然ガスL1を気化する気化機構と、が配置された第2経路と、
前記第1経路における前記ガス昇圧機構よりも上流側から取り出した前記天然ガスG1の少なくとも一部を液化して前記第2経路における前記ポンプよりも上流側に流入させる経路であって、前記天然ガスG1を昇圧する再液化用ガス昇圧機構、および、前記液体水素2によって前記天然ガスG1を冷却する冷却熱交換器が配置された再液化経路と、を備え、
前記冷却熱交換器において前記天然ガスG1と熱交換された前液体水素L2から生じた水素ガスG2を、前記ガス昇圧機構で昇圧された後の前記天然ガスG1と合流させて前記需要先に供給することを特徴とする、ガス供給システム。
【請求項2】
液化天然ガスL1が気化した天然ガスG1と、前記液化天然ガスL1よりも低温の液体水素L2が気化した水素ガスG2と、を混合した混合ガスを需要先に供給するガス供給システムであって、
前記液化天然ガスL1を貯蔵する第1タンクと、
前記第1タンク内で前記液化天然ガスL1が気化して発生した前記天然ガスG1が流入するとともに、前記天然ガスG1を昇圧するガス昇圧機構が配置された第1経路と、
前記第1タンクから前記液化天然ガスL1を取り出す経路であって、前記液化天然ガスL1を昇圧する第1ポンプと、前記第1ポンプによって昇圧した前記液化天然ガスL1を気化する気化機構と、が配置された第2経路と、
前記液体水素L2を貯蔵する第2タンクと、
前記第2タンク内で前記液体水素L2が気化して発生した前記水素ガスG2が流入するとともに、前記水素ガスG2を昇圧する第2ガス昇圧機構が配置された第3経路と、
前記第2タンクから前記液体水素L2を取り出す経路であって、前記液体水素L2を昇圧する第2ポンプ、が配置された第4経路と、
前記第1経路における前記ガス昇圧機構よりも上流側から取り出した前記天然ガスG1の少なくとも一部を液化して前記第2経路における前記第1ポンプよりも上流側に流入させる経路であって、前記天然ガスG1を昇圧する再液化用ガス昇圧機構、および、前記水素ガスG2によって前記天然ガスG1を冷却する冷却熱交換器が配置された再液化経路と、
前記再液化経路を通じて流入する前記天然ガスG1と前記第1タンクから前記第2経路を通じて取り出した前記液化天然ガスL1とを熱交換させ、前記天然ガスの少なくとも一部を液化させる再液化熱交換器と、
前記再液化熱交換器において液化されなかった天然ガスG1を前記第1経路に戻す戻し経路と、
を備え
記冷却熱交換器の第2流路が前記第3経路における前記第2ガス昇圧機構よりも上流側の経路に接続され、
前記第2タンク内で液体水素L2が気化することにより発生した水素ガスG2が前記第3経路を通じて前記冷却熱交換器の前記第2流路に流入し、前記再液化経路を流れる天然ガスG1を前記水素ガスG2の冷熱によって冷却し、
前記再液化熱交換器において再液化された液化天然ガスL1が、前記第1タンクから送られる液化天然ガスL1とともに、前記第2経路を通じて前記第1ポンプへ導かれる、ことを特徴とする、ガス供給システム。
【請求項3】
前記再液化経路は、前記第1タンクから取り出した前記液化天然ガスL1との熱交換を介して前記天然ガスG1を液化させるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のガス供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、天然ガスと水素ガスとを混合した混合ガスを所定の需要先に供給するガス供給システムについて知られている。特許文献1に開示されるガス供給システムは、有機ハイドライドの脱水素反応によって発生させた水素ガスと天然ガスとを混合した混合ガスを、ガスタービン式発電ユニットの燃焼器に燃料として供給するものである。この燃焼器においては、上記混合ガス(水素ガスおよび天然ガスを含むガス)を、別途供給した圧縮空気を用いて燃焼させることにより、高温高圧の燃焼ガスが発生する。そして、この燃焼ガスによってガスタービンを回転駆動させ、その回転エネルギーを発電機において電気エネルギーに変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-187049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるようなガス供給システムでは、天然ガスや水素ガスなどのガスを所定の圧力にまで昇圧した後、所定の需要先に供給する必要が出て来ることもある。本発明者らは、このような場面を想定し、所定の圧力に昇圧したガスを得るために必要なガス供給システム全体のエネルギーを可能な限り少なくすることによってシステム全体を高効率化するという課題に着目した。
【0005】
本発明は、この課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、所定の圧力に昇圧したガスを需要先に供給するガス供給システムにおいて、ガス供給効率を高めることが可能なガス供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係るガス供給システムは、液化天然ガスL1が気化した天然ガスG1と、前記液化天然ガスL1よりも低温の液体水素L2が気化した水素ガスG2と、を混合した混合ガスを需要先に供給するものである。このガス供給システムは、前記液化天然ガスL1を貯蔵する第1タンクと、前記第1タンク内で前記液化天然ガスL1が気化して発生した前記天然ガスG1が流入するとともに、前記天然ガスG1を昇圧するガス昇圧機構が配置された第1経路と、前記第1タンクから前記液化天然ガスL1を取り出す経路であって、前記液化天然ガスL1を昇圧するポンプと、前記ポンプによって昇圧した前記液化天然ガスL1を気化する気化機構と、が配置された第2経路と、前記第1経路における前記ガス昇圧機構よりも上流側から取り出した前記天然ガスG1の少なくとも一部を液化して前記第2経路における前記ポンプよりも上流側に流入させる経路であって、前記天然ガスG1を昇圧する再液化用ガス昇圧機構、および、前記液体水素2によって前記天然ガスG1を冷却する冷却熱交換器が配置された再液化経路と、を備え、前記冷却熱交換器において前記天然ガスG1と熱交換された前液体水素L2から生じた水素ガスG2を、前記ガス昇圧機構で昇圧された後の前記天然ガスG1と合流させて前記需要先に供給する。
【0007】
このガス供給システムでは、天然ガスG1をガス昇圧機構によって昇圧する前に第1経路から再液化経路に取り出し、当該天然ガスG1の少なくとも一部を液化した後に第2経路に流入させることができる。そして、液化した第1ガス(液化天然ガスL1)をポンプによって昇圧し、続いて気化機構によって気化することができる。したがって、所定の圧力に昇圧した天然ガスG1を得るのに際し、ガス状態で昇圧させる量を少なくするとともに液体状態で昇圧させる量を増やすことができる。ガス状態での昇圧には液体状態での昇圧よりも多くのエネルギーを要するため、上記ガス供給システムによれば、所定の圧力に昇圧した天然ガスG1を得るのに必要なエネルギーをより少なくすることができる。
【0008】
しかも、このガス供給システムでは、冷却熱交換器において液化天然ガスL1よりも低温の液体水素2との熱交換によって天然ガスG1を冷却することができるため、再液化経路における天然ガスG1の液化効率を高めることができる。したがって、再液化経路を通じて第2経路に流入させる液化天然ガスL1の量を増やすことができるため、ガス供給システムの高効率化を図ることができる。
本発明の一局面に係るガス供給システムは、液化天然ガスL1が気化した天然ガスG1と、前記液化天然ガスL1よりも低温の液体水素L2が気化した水素ガスG2と、を混合した混合ガスを需要先に供給するものである。このガス供給システムは、前記液化天然ガスL1を貯蔵する第1タンクと、前記第1タンク内で前記液化天然ガスL1が気化して発生した前記天然ガスG1が流入するとともに、前記天然ガスG1を昇圧するガス昇圧機構が配置された第1経路と、前記第1タンクから前記液化天然ガスL1を取り出す経路であって、前記液化天然ガスL1を昇圧するポンプと、前記ポンプによって昇圧した前記液化天然ガスL1を気化する気化機構と、が配置された第2経路と、前記液体水素L2を貯蔵する第2タンクと、前記第2タンク内で前記液体水素L2が気化して発生した前記水素ガスG2が流入するとともに、前記水素ガスG2を昇圧する第2ガス昇圧機構が配置された第3経路と、前記第2タンクから前記液体水素L2を取り出す経路であって、前記液体水素L2を昇圧するポンプ、が配置された第4経路と、前記第1経路における前記ガス昇圧機構よりも上流側から取り出した前記天然ガスG1の少なくとも一部を液化して前記第2経路における前記ポンプよりも上流側に流入させる経路であって、前記天然ガスG1を昇圧する再液化用ガス昇圧機構、および、前記水素ガスG2によって前記天然ガスG1を冷却する冷却熱交換器が配置された再液化経路と、前記再液化経路を通じて流入する前記天然ガスG1と前記第1タンクから前記第2経路を通じて取り出した前記液化天然ガスL1とを熱交換させ、前記天然ガスの少なくとも一部を液化させる再液化熱交換器と、前記再液化熱交換器において液化されなかった天然ガスG1を前記第1経路に戻す戻し経路と、を備える。前記冷却熱交換器の第2流路が前記第3経路における前記第2ガス昇圧機構よりも上流側の経路に接続され、前記第2タンク内で液体水素L2が気化することにより発生した水素ガスG2が前記第3経路を通じて前記冷却熱交換器の前記第2流路に流入し、前記再液化経路を流れる天然ガスG1を前記水素ガスG2の冷熱によって冷却し、前記再液化熱交換器において再液化された液化天然ガスL1が、前記第1タンクから送られる液化天然ガスL1とともに、前記第2経路を通じて前記第1ポンプへ導かれる。
【0013】
上記ガス供給システムにおいて、前記再液化経路は、前記第1タンクから取り出した前記液化天然ガスL1との熱交換を介して前記天然ガスG1を液化させるように構成されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、第1タンクに貯蔵された液化天然ガスL1の冷熱を利用して天然ガスG1を液化させることができるため、天然ガスG1の液化のために他の冷媒を用いる場合に比べてシステムを簡易化することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、所定の圧力に昇圧したガスを需要先に供給するガス供給システムにおいて、ガス供給効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態1に係るガス供給システムの構成を模式的に示す図である。
図2】本発明のその他実施形態に係るガス供給システムの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係るガス供給システムについて詳細に説明する。
【0018】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係るガス供給システム1について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態1に係るガス供給システム1の主要な構成要素を模式的に示している。
【0019】
ガス供給システム1は、第1低温液化ガスL1が気化した第1ガスG1と、第1低温液化ガスL1よりも低温の第2低温液化ガスL2が気化した第2ガスG2と、を混合した混合ガスG3を需要先100に供給するためのシステムである。本実施形態においては、第1低温液化ガスL1が液化天然ガス(LNG;Liquefied Natural Gas)であり、第1ガスG1が天然ガス(NG)であり、第2低温液化ガスL2が液体水素(LH)であり、第2ガスG2が水素ガス(H)である場合を本発明の一例として説明する。なお、第1および第2低温液化ガスL1,L2ならびに第1および第2ガスG1,G2の種類はこれらに限定されるものではない。
【0020】
ガス供給システム1は、第1ガスG1(天然ガス)と第2ガスG2(水素ガス)とを混合した混合ガスG3を、ガスタービン式発電装置の燃焼室(需要先100)に燃料として供給する。なお、混合ガスG3を供給する需要先100は、ガスタービン式発電装置の燃焼室に限定されるものではない。
【0021】
図1に示すように、ガス供給システム1は、第1ガスG1を供給するための第1ガス供給部1Aと、第2ガスG2を供給するための第2ガス供給部1Bと、を主に備えている。以下、第1および第2ガス供給部1A,1Bのそれぞれの構成について詳細に説明する。
【0022】
まず、第1ガスG1(天然ガス)を供給する第1ガス供給部1Aの構成について説明する。図1に示すように、第1ガス供給部1Aは、第1タンク21と、第1経路23と、第2経路26と、再液化経路28と、を主に有している。
【0023】
第1タンク21は、第1低温液化ガスL1(LNG)を貯蔵するためのものである。第1低温液化ガスL1は、約-162℃の温度で第1タンク21内において貯蔵されている。第1タンク21内においては、外部からの熱の侵入などによって第1低温液化ガスL1の一部が気化(蒸発)することにより、第1ガスG1がボイルオフガスとして発生している。
【0024】
第1経路23は、第1タンク21内で発生した第1ガスG1(ボイルオフガス)が流入する経路である。図1に示すように、第1経路23は、一端が第1タンク21の上部に接続されるとともに、第1ガスG1を所定の圧力まで昇圧する第1ガス昇圧機構22が配置されている。これにより、第1タンク21内で発生した第1ガスG1を第1経路23の一端から当該第1経路23内に流入させ、第1ガス昇圧機構22によって所定の圧力まで昇圧することができる。
【0025】
第1ガス昇圧機構22は、例えば往復動式圧縮機(レシプロコンプレッサー)であって、複数段の圧縮室が内部に設けられている。第1ガスG1は、第1経路23を通じて第1ガス昇圧機構22の吸入口から圧縮室内に吸入される。そして、各圧縮室においてシリンダ内に吸入された第1ガスG1がピストンの往復運動によって昇圧し、昇圧した第1ガスG1が吐出口から吐出される。なお、第1ガス昇圧機構22は、往復動式圧縮機に限定されるものではなく、例えばターボ式圧縮機であってもよい。
【0026】
第2経路26は、第1タンク21から第1低温液化ガスL1を取り出す経路である。図1に示すように、第2経路26は、一端が第1タンク21内に配置されたポンプ29に接続されるとともに、他端が第1経路23における第1ガス昇圧機構22よりも下流側の部位P1に接続されている。また第2経路26には、再液化熱交換器40、ポンプ24および気化機構25が上流から下流に向かって順に配置されている。つまり、第2経路26は、ポンプ29の吐出口と再液化熱交換器40の入口とを接続する部分と、再液化熱交換器40の出口とポンプ24の入口とを接続する部分と、ポンプ24の出口と気化機構25の入口とを接続する部分と、気化機構25の出口と第1経路23(部位P1)とを接続する部分と、を含む。
【0027】
第1タンク21から第2経路26内に取り込まれた第1低温液化ガスL1は、再液化熱交換器40を通過した後、ポンプ24に吸入される。そして、第1低温液化ガスL1は、ポンプ24によって所定の圧力まで昇圧した後、気化機構25に向かってポンプ吐出口から吐出される。
【0028】
気化機構25は、ポンプ24によって昇圧した第1低温液化ガスL1を気化する熱交換器である。図1に示すように、気化機構25は、ポンプ24から吐出された第1低温液化ガスL1が流れる第1流路25Aと、所定の熱媒体(例えば海水)が流れる第2流路25Bと、を有している。気化機構25においては、第1流路25Aを流れる第1低温液化ガスL1と第2流路25Bを流れる熱媒体とが熱交換することにより(第1低温液化ガスL1が熱媒体から吸熱することにより)、第1低温液化ガスL1が気化して第1ガスG1が発生する。この第1ガスG1は、気化機構25(第1流路25A)から流出した後、部位P1において第1経路23内を流れる第1ガスG1に合流する。なお、気化機構25は、第1低温液化ガスL1を気化するものであればよく、例えばオープンラック式LNG気化器、シェル&チューブ式熱交換器またはプレート式熱交換器であってもよい。
【0029】
再液化経路28は、第1経路23における第1ガス昇圧機構22よりも上流側から取り出した第1ガスG1の少なくとも一部を液化して、第2経路26におけるポンプ24よりも上流側に流入させる経路である。図1に示すように、再液化経路28は、一端が第1経路23における第1ガス昇圧機構22よりも上流側の部位P2に接続されるとともに他端に再液化熱交換器40が配置された主経路28Aと、主経路28Aにおける部位P3から分岐するとともに当該部位P3よりも下流側の部位P4において主経路28Aに合流する分岐経路28Bと、を有している。
【0030】
主経路28Aにおける部位P3よりも上流側には、第1経路23から取り出された第1ガスG1を昇圧する再液化用ガス昇圧機構41が配置されている。この再液化用ガス昇圧機構41は、第1ガス昇圧機構22と同様に往復動式圧縮機からなるものであるが、第1ガスG1の圧送を目的としたものであるため、第1ガス昇圧機構22よりも吐出圧力が小さくなっている。
【0031】
再液化熱交換器40は、例えば直接接触式熱交換器であって、第1タンク21から第2経路26を通じて取り出した第1低温液化ガスL1と、再液化経路28を通じて流入する第1ガスG1と、を接触させることにより、これらを熱交換させる。これにより、第1ガスG1は、第1低温液化ガスL1によって冷却されることにより液化する。そして、この再液化によって得られた第1低温液化ガスL1は、第1タンク21から送られる第1低温液化ガスL1とともに、第2経路26を通じてポンプ24へ導かれる。なお、再液化熱交換器40は、第1ガスG1の少なくとも一部を液化するものであればよく、直接接触式熱交換器に限定されるものではない。
【0032】
図1に示すように、分岐経路28Bには、部位P3から当該分岐経路28Bに流入する第1ガスG1を冷却するための冷却熱交換器27が配置されている。この冷却熱交換器27は、本実施形態に係るガス供給システム1における重要な構成要素であって、詳細については後述する。
【0033】
以上のとおり、再液化経路28によれば、第1経路23における第1ガス昇圧機構22よりも上流側(部位P2)から第1ガスG1(ボイルオフガス)を取り出すとともに、再液化熱交換器40において当該第1ガスG1の少なくとも一部を液化することができる。そして、液化した第1ガスG1(第1低温液化ガスL1)を、第2経路26におけるポンプ24よりも上流側に流入させることができる。
【0034】
また、再液化経路28を通じて再液化熱交換器40に流入する第1ガスG1は、その全てが液化せず、ガス状態のままのものも存在する。このように再液化熱交換器40において液化されなかった第1ガスG1は、膨張弁43で減圧された後、戻し経路42を通じて第1経路23(部位P2よりも上流側)に戻される。
【0035】
次に、第2ガスG2(水素ガス)を供給する第2ガス供給部1Bの構成について説明する。図1に示すように、第2ガス供給部1Bは、第2タンク31と、第3経路32と、第4経路34と、を主に有している。
【0036】
第2タンク31は、第2低温液化ガスL2(液体水素)を貯蔵するためのものである。第2低温液化ガスL2は、約-252℃の温度で第2タンク31内に貯蔵されている。第2タンク31内では、第1タンク21内と同様に、外部からの熱の侵入などによって第2低温液化ガスL2の一部が気化(蒸発)することにより、第2ガスG2(水素ガス)が発生している。
【0037】
第3経路32は、第2タンク31内で発生した第2ガスG2が流入する経路である。図1に示すように、第3経路32は、一端が第2タンク31の上部に接続されるとともに、他端が需要先100に接続されている。また第3経路32の途中には、第2ガスG2を所定の圧力まで昇圧する第2ガス昇圧機構33が配置されている。この第2ガス昇圧機構33は、第1ガス昇圧機構22と同様に、多段式の往復動式圧縮機により構成されている。これにより、第2タンク31内で発生する第2ガスG2を第3経路32を通じて第2ガス昇圧機構33に供給し、第2ガス昇圧機構33によって所定の圧力まで昇圧することができる。
【0038】
第3経路32における第2ガス昇圧機構33よりも下流側の部位P5には、第1ガス供給部1Aの第1経路23の他端が接続されている。したがって、この部位P5において第1ガスG1と第2ガスG2とが混合されることにより混合ガスG3が得られ、当該混合ガスG3が需要先100に向けて送られる。
【0039】
第4経路34は、第2タンク31内に貯蔵された第2低温液化ガスL2を取り出すための経路である。図1に示すように、第4経路34は、一端が第2タンク31内の第2低温液化ガスL2中に浸漬されるとともに、他端が第3経路32における第2ガス昇圧機構33と部位P5との間の部位P6に接続されている。また第4経路34には、第4経路34内において第2低温液化ガスL2を圧送するためのポンプ36と、冷却熱交換器27と、がそれぞれ配置されている。
【0040】
冷却熱交換器27は、第2タンク31から送られる第2低温液化ガスL2との熱交換を介して(第2低温液化ガスL2の冷熱によって)、再液化経路28(分岐経路28B)を流れる第1ガスG1を冷却するものである。図1に示すように、冷却熱交換器27は、再液化経路28の分岐経路28Bに接続された第1流路27Aと、第4経路34に接続された第2流路27Bと、有している。第1流路27Aには部位P3から分岐経路28Bに流入した第1ガスG1が流れ、一方で第2流路27Bにおいては第2タンク31から第4経路34を通じて供給される第2低温液化ガスL2が流れる。
【0041】
したがって、この冷却熱交換器27によれば、第1流路27Aを流れる第1ガスG1(LNGボイルオフガス)を、第2流路27Bを流れる第2低温液化ガスL2(液体水素)によって冷却することができる。つまり、液体水素の冷熱を利用して第1ガスG1を冷却することにより、再液化熱交換器40における第1ガスG1の液化効率を高めることができる。また冷却熱交換器27によれば、第1流路27Aを流れる第1ガスG1によって第2流路27Bを流れる第2低温液化ガスL2を加温することができる。第2低温液化ガスL2は、第1ガスG1との熱交換を介して気化することにより第2ガスG2となり、部位P6において第3経路32内を流れる第2ガスG2に合流する。
【0042】
ここで、上記のとおり説明した実施形態1に係るガス供給システム1の特徴および作用効果について列記する。
【0043】
実施形態1に係るガス供給システム1は、第1低温液化ガスL1が気化した第1ガスG1と、第1低温液化ガスL1よりも低温の第2低温液化ガスL2が気化した第2ガスG2と、を混合した混合ガスG3を需要先100に供給するシステムである。このガス供給システム1は、第1低温液化ガスL1を貯蔵する第1タンク21と、第1タンク21内で第1低温液化ガスL1が気化して発生した第1ガスG1が流入するとともに、第1ガスG1を昇圧する第1ガス昇圧機構22が配置された第1経路23と、第1タンク21から第1低温液化ガスL1を取り出す経路であって、第1低温液化ガスL1を昇圧するポンプ24と、ポンプ24によって昇圧した第1低温液化ガスL1を気化する気化機構25と、が配置された第2経路26と、第1経路23における第1ガス昇圧機構22よりも上流側から取り出した第1ガスG1の少なくとも一部を液化して第2経路26におけるポンプ24よりも上流側に流入させる経路であって、第2低温液化ガスL2によって第1ガスG1を冷却する冷却熱交換器27が配置された再液化経路28と、を備えている。
【0044】
このガス供給システム1では、第1ガスG1を第1ガス昇圧機構22によって昇圧する前に第1経路23から再液化経路28に取り出し、第1ガスG1の少なくとも一部を液化した後に第2経路26に流入させることができる。そして、液化した第1ガスG1(第1低温液化ガスL1)をポンプ24によって昇圧し、続いて気化機構25によって気化することができる。したがって、所定の圧力に昇圧した第1ガスG1を得るのに際し、ガス状態で昇圧させる量を少なくするとともに液体状態で昇圧させる量を増やすことができる。ガス状態での昇圧には液体状態での昇圧よりも多くのエネルギーを要するため、ガス供給システム1によれば、所定の圧力に昇圧した第1ガスG1を得るのに必要なエネルギーをより少なくすることができる。
【0045】
しかも、このガス供給システム1では、冷却熱交換器27において第1低温液化ガスL1よりも低温の第2低温液化ガスL2との熱交換によって第1ガスG1を冷却することができるため、再液化経路28における第1ガスG1の液化効率を高めることができる。したがって、再液化経路28を通じて第2経路26に流入させる第1低温液化ガスL1の量を増やすことができるため、ガス供給システム1の高効率化を図ることができる。
【0046】
上記ガス供給システム1において、再液化経路28には、第1経路23から取り出された第1ガスG1を昇圧する再液化用ガス昇圧機構41が配置されている。これにより、再液化経路28において第1ガスG1を圧送することができるため、第1ガスG1をスムーズに流すことができる。
【0047】
上記ガス供給システム1において、冷却熱交換器27は、第2低温液化ガスL2によって第1ガスG1を冷却するとともに、第1ガスG1によって第2低温液化ガスL2を加温するように構成されている。これにより、冷却熱交換器27によって第1ガスG1を冷却するとともに第2低温液化ガスL2の気化を促進することもできる。
【0048】
上記ガス供給システム1において、再液化経路28は、第1タンク21から取り出した第1低温液化ガスL1との熱交換を介して第1ガスG1を液化させるように構成されている。これにより、第1タンク21に貯蔵された第1低温液化ガスL1の冷熱を利用して第1ガスG1を液化させることができるため、第1ガスG1の液化のために他の冷媒を用いる場合に比べてシステムを簡易化することができる。
【0049】
(その他実施形態)
最後に、本発明のその他実施形態について説明する。
【0050】
上記実施形態1では、第2低温液化ガスL2(液体水素)の冷熱を利用して冷却熱交換器27により第1ガスG1(ボイルオフガス)を冷却する場合について説明したが、これに限定されない。図2に示すように、冷却熱交換器27の第2流路27Bが第3経路32(第2ガス昇圧機構33よりも上流側の経路)に接続されていてもよい。この場合、第2タンク31内で第2低温液化ガスL2が気化することにより発生した第2ガスG2が、第3経路32を通じて冷却熱交換器27(第2流路27B)に流入する。そして、再液化経路28(分岐経路28B)を流れる第1ガスG1(天然ガス)を第2ガスG2(水素ガス)の冷熱によって冷却することができる。なお、この場合、第2ガスG2を冷却熱交換器27の第2流路27Bに流入させるため、第3経路32における第2タンク31と冷却熱交換器27との間に、第2ガスG2を昇圧させるための昇圧機構が配置されてもよい。
【0051】
再液化用ガス昇圧機構41が1台の圧縮機によって構成されるとともに複数段の圧縮室を有していてもよいがこれに限定されず、再液化用ガス昇圧機構41が複数台の圧縮機を有していてもよい。
【0052】
上記実施形態1では、再液化経路28が分岐経路28Bを有する場合について説明したがこれに限定されず、再液化経路28が主経路28Aのみから構成され、当該主経路28Aが冷却熱交換器27の第1流路27Aに接続されていてもよい。
【0053】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
1 ガス供給システム
21 第1タンク
22 第1ガス昇圧機構
23 第1経路
24 ポンプ
25 気化機構
26 第2経路
27 冷却熱交換器
28 再液化経路
31 第2タンク
32 第3経路
33 第2ガス昇圧機構
40 再液化熱交換器
41 再液化用ガス昇圧機構
100 需要先
G1 第1ガス
G2 第2ガス
G3 混合ガス
L1 第1低温液化ガス
L2 第2低温液化ガス
図1
図2