(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】荷揚げ方法
(51)【国際特許分類】
B63B 25/04 20060101AFI20220920BHJP
B63B 25/00 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
B63B25/04 Z
B63B25/00 101Z
(21)【出願番号】P 2018118030
(22)【出願日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】509277615
【氏名又は名称】周南バルクターミナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】井出 和一
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106882612(CN,A)
【文献】実公昭46-034533(JP,Y1)
【文献】中国実用新案第2539720(CN,Y)
【文献】中国実用新案第201381066(CN,Y)
【文献】特開昭62-116387(JP,A)
【文献】米国特許第05492453(US,A)
【文献】特開昭56-136733(JP,A)
【文献】米国特許第05470191(US,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0058550(KR,A)
【文献】特開昭59-070288(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0250960(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/00-25/06
B65G 67/60
B65D 88/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船倉内にバラ積み状態で収容された粉粒体または粉体を荷揚げする方法であって、船倉内に密閉型コンテナを搬入し、次いで船倉内の粉粒体または粉体を当該密閉型コンテナに充填した後、上記コンテナを荷揚げすることを特徴とする荷揚げ方法。
【請求項2】
密閉型コンテナが、上面に開閉蓋を有するコンテナであることを特徴とする請求項1に記載の荷揚げ方法。
【請求項3】
粉粒体または粉体が、ホワイトペレットまたは穀物粉であることを特徴とする請求項1または2に記載の荷揚げ方法。
【請求項4】
船倉内において、重機を使用して粉粒体または粉体を密閉型コンテナに充填する請求項1~3に記載の荷揚げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体または粉体の荷揚げ方法に関する。詳しくは、発塵し易い粉を含んだ粉粒体または粉体を船倉より荷揚げする際に、上記粉による粉塵が船の周囲の港湾設備、海面等に飛散するのを効果的に防止することを可能とした荷揚げ方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ホワイトペレット、石炭、石炭コークス、石油コークス、小麦粉、フライアッシュ、パーム椰子殻(PKS)等の粉粒体または粉体の輸送には、生産現地から使用地まで大量に且つ安価に運搬するためバルク積載船が使用される。上記粉粒体または粉体は、積載船の船倉にバラ積み状態で収容して輸送され、使用地の港或いはその近郊の港で荷揚げされる。
一般的な荷揚げ方法としては、陸上クレーン、或いは、船上クレーンに取り付けられたチェーンバケット、クラブバケット等のバケットにより、船倉内の粉粒体または粉体を掬い上げ、これを船倉外に位置するホッパーに投入し、次いで、上記ホッパーよりベルトコンベアー、トラック等の輸送機器に積載することによって荷揚げを行うのが一般的である。また、荷揚げされた粉粒体または粉体は目的地まで輸送され、サイロや倉庫等の所定の場所に保管される。
【0003】
ところで、小麦粉等の穀物粉はそれ自体が発塵し易い細かい粉体よりなる。また、ホワイトペレットは、樹皮を含まない木質部粉を加圧して、木質に含まれるリグニンの溶融とその接着機能を利用して固めたものである。特に接着材と称される添加剤を使用しないこともあって、十分に接合されずに木粉のまま残っているもの、更には表面の木粉が移送中に摩擦等でペレット成形体から分離して木粉化した発塵し易い粉体を含んでいる。
これら発塵し易い粉を含む粉粒体または粉体を、前記チェーンバケットやクラブバケットを使用して荷揚げすると、ホッパーに投入する際や、ホッパーから輸送機器に積載する際に、発塵して港湾施設や荷役設備に堆積するという問題を有する。具体的には、荷役重機に粉塵が堆積し、重機のエアーフィルターを閉塞することによるオーバーヒートを防止するため3時間に1回程度の頻度でフィルターの掃除を必要としたり、船舶の周辺の海面に飛散した粉塵が海面に堆積して浮遊したりするため、その除去作業に多大の労力を必要とするなどの問題を有していた。
当該問題は、各設備のオペレータの技量の向上や操作方法の改善、荷揚げ時の気象条件の選択等によりある程度の解決は図られるが、根本的な解決にはなっていないのが現状である。
【0004】
一方、タテ型スクリューコンベアーとベルトコンベアーを組み合わせて船倉の粉体を荷揚げする方法もあるが、羽根車で粉体をかき寄せる時や、スクリューコンベアーからホッパーを介してベルトコンベアーに積載する時に同様に発塵の問題が生じるし、更にトラック等への積載において、前記と同様に発塵が発生する。
このような発塵を抑制する方法として、散水による防塵が一般的且つ安価な手段として採用されるが、小麦粉等の穀物粉への散水は腐敗、品質劣化等を引き起こすので厳禁である。ホワイトペレットも、形状崩れや保管時の嫌気発酵を起こすので散水は禁止されている。
更に、真空吸引機構を備えた空気輸送手段を使用した荷揚げも実用化されているが、専用の設備が必要となるばかりでなく、空気輸送された粉粒体または粉体を貯蔵場所、或いはトラック等に積載する際には、前記と同様の問題を生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、発塵し易い粉体が荷揚げ作業時に発塵し、船の周辺に飛散する現象を防止して、港湾設備などの作業環境、海面等の自然環境を保護する、荷揚げ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、船倉内にバラ積み状態で収容された粉粒体または粉体を荷揚げする方法であって、船倉内に密閉型コンテナを搬入し、次いで船倉内の粉粒体または粉体を当該密閉型コンテナに充填した後、上記コンテナを荷揚げすることを特徴とする荷揚げ方法が提供される。
【0007】
本発明の方法においては、
1)密閉型コンテナが、上面に開閉蓋を有するコンテナであること
2)粉体が、ホワイトペレットまたは小麦粉などの穀物粉であること
3)油圧ショベル等の重機を使用して、粉体を密閉型コンテナに充填すること
が好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、密閉型コンテナを使用して船倉内の粉体を荷揚げするので、粉体が積載船から荷揚げ(陸上部に移送)する際の発塵をほぼ完全に防止できる。
この為、船周辺の港湾施設や設備、特に海上への飛散を確実に防止できる。その結果、荷揚げ用のクレーン等の重機の所定時間ごとの清掃作業が不要となり、作業効率の向上並びに作業費用の低下が達成される。また、岸壁や海面の汚染を防止でき、清掃作業が不要となるばかりか作業環境や自然環境の保護において有益である。
また、荷揚げしたコンテナは、粉粒体または粉体を収容した状態で貯蔵できるため、これまで起こっていた、粉体を陸上の倉庫内に搬入する作業も不要となり、搬入作業時の発塵による倉庫内施設や重機の汚染等の問題が解消される。更には、屋外にコンテナを配置して貯蔵することも可能であり、倉庫施設そのものが不要となる。
このように、本発明の工業的価値は極めて高いものがある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明に使用する代表的な密閉型コンテナを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、荷揚げの対象となる粉粒体または粉体は、ホワイトペレット、石炭、石炭コークス、石油コークス、小麦粉、セメント、フライアッシュ、石膏粉、石灰石粉末、パーム椰子殻(PKS)等、多種多様な粉粒体または粉体が挙げられる。そのうち、微粉を含むが故に大変発塵しやすく、しかも水分を嫌う、ホワイトペレットや小麦粉などの穀物粉に対して、本発明は好適である。
上記粉体は、生産地近傍の港で積載船にバラ積みされて目的地の港まで輸送され、当該港において荷揚げされる。
粉粒体または粉体を積載する積載船の構造は特に限定されなく、仕切りがない単槽型の積載船であってもよいし、2以上の収納室に仕切られた構造の積載船であってもよい。
【0011】
本発明の最大の特徴は、
図1に示すように、上記粉粒体または粉体3がばら積みされた船倉1に密閉型コンテナ2を搬入し、船倉内において該コンテナ2に粉粒体または粉体を充填し、密閉状態で船倉から搬出(荷揚げ)することにある。
従来、粉粒体または粉体の荷揚げにおいて、粉粒体または粉体を船倉内で密閉型コンテナに充填して、荷揚げの際の粉塵の発生を防止する思想は、本発明によって初めて提案されるものである。
【0012】
上記密閉型コンテナ2は、船倉に積載された粉粒体または粉体の量を勘案して、必要な個数が準備される。荷揚げ作業としては、1個または船倉の大きさが許容する範囲で複数の密閉型コンテナを、例えば陸上クレーン、或いは、船上クレーンにより船倉内に搬入し、上記コンテナの開閉扉5を開いて粉粒体または粉体を充填後、陸上クレーン、或いは、船上クレーンにより船倉外に搬出(荷揚げ)する方法が一般的である。粉粒体または粉体のコンテナへの充填は、ホイルローダ、パワーショベル、ブルドーザー等の重機4を船倉内に配置して行うことも可能であるが、陸上クレーン、或いは、船上クレーンにバケットを装備して行うこともできる。
尚、充填時に開の状態となる開閉扉5は、船倉1から荷揚げする際は、閉の状態とすることが好ましいが、荷揚げ後、陸上において閉の状態とすることもできる。
そして、上記特徴的手段により、荷揚げの際、船倉周辺部における粉塵による問題を解消することが可能となる。また、密閉型コンテナは、そのまま貯蔵用として利用することができる。
【0013】
本発明において、粉粒体または粉体を充填する密閉型コンテナは、開閉扉が設けられた公知のコンテナを使用することが可能であるが、粉粒体または粉体の充填に使用する重機の種類に応じて、開閉扉の位置を選択することが好ましい。具体的には、粉粒体または粉体を掬い上げて充填するのに適した油圧ショベル等の重機、陸上クレーン、或いは、船上クレーンに取り付けられたバケットなどを使用して粉粒体または粉体を充填する場合は、開閉扉が上面に設けられたコンテナが好適であり、粉粒体または粉体を押し込んで充填するのに適したホイルローダ、ブルドーザー等の重機においては、開閉扉が側面に設けられたコンテナが好適に使用される。この場合、重機がコンテナ内に入り込んで作業ができるよう、重機とコンテナとの相互の大きさを決定することが好ましい。
また、前記密閉型コンテナに充填された粉粒体または粉体を排出する際の排出用の扉は、前記充填用の扉を兼用してもよいし、別途開閉扉を設けてもよい。また、開閉扉の構造も特に制限されるものではなく、公知のコンテナに取り付けられる構造を採用することができる。
【0014】
図2は、本発明に使用する密閉型コンテナの一態様を示す概略図である。
図2に示す態様は、上面に充填用の開閉扉5と側面に排出用の開閉扉6を備えた密閉型コンテナを示すものである。尚、図において、扉の開閉はヒンジ7により観音開きとなっているが、片側開きでもよく、更にはスライド式でもよい。また、扉を閉めた際の密閉性を高めるため、また、屋外に放置時の雨等の侵入を防止するため、扉は留め具8によって固定することが好ましい。また、扉の周縁部には、液密性を高めるためにパッキンを設けることがより好適である。
本発明において、前記密閉型コンテナの容量は、荷役設備により船倉に搬入可能な容量であれば特に制限されないが、10~100m
3、好ましくは、15~60m
3程度の容量のものが一般的である。
更に、密閉型コンテナの材質は特に制限されないが、ステンレス、アルミニウム、鋼鉄、鉄などの構造材が一般に使用される。また、上記材質は、枠体、開閉扉等の部材毎に2種以上を組み合わせて使用することができる。
【符号の説明】
【0015】
1 船倉
2 密閉型コンテナ
3 粉粒体または粉体
4 重機
5 開閉扉
6 開閉扉
7 ヒンジ
8 留め具(取っ手)
9 吊り具