(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】断熱材
(51)【国際特許分類】
F16L 59/00 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
F16L59/00
(21)【出願番号】P 2018141849
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000244084
【氏名又は名称】明星工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【氏名又は名称】北村 光司
(72)【発明者】
【氏名】山城 博隆
(72)【発明者】
【氏名】中澤 功治
(72)【発明者】
【氏名】中川 幸雄
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-006807(JP,A)
【文献】特開2008-239457(JP,A)
【文献】特開2001-232949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密空間に充填可能な断熱材であって、
シリカエアロゲル粉粒体と、平均粒径が前記シリカエアロゲル粉粒体よりも小さい酸化チタン粉粒体とを混合し、前記シリカエアロゲル粉粒体が平均粒径0.01~1.2mmで、前記酸化チタン粉粒体が平均粒径7nmである断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密空間に充填可能な断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記断熱材として、シリカエアロゲルの粉粒体が知られている(周知である)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したシリカエアロゲルは、網目状の微細構造を持ち、骨格間に10nmに満たない細孔があって、三次元的で微細な多孔性の構造をしているために優れた断熱性を示し、融点が1200℃で、高温環境下での断熱にも利用できるという利点がある。
しかも、曲げには脆いが自重の2000倍もの重さを支える強度を持つものもあることが知られている。
しかし、更なる断熱性能の高いものが求められている。
【0004】
従って、本発明の目的は、シリカエアロゲルの特性を備えながら、より低い熱伝導率の断熱材を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の特徴構成は、気密空間に充填可能な断熱材であって、シリカエアロゲル粉粒体と、平均粒径が前記シリカエアロゲル粉粒体よりも小さい酸化チタン粉粒体とを混合し、前記シリカエアロゲル粉粒体が平均粒径0.01~1.2mmで、前記酸化チタン粉粒体が平均粒径7nmである。
【0012】
本発明の第1の特徴構成によれば、シリカエアロゲル粉粒体と、平均粒径が前記シリカエアロゲル粉粒体よりも小さい酸化チタン粉粒体とを混合することにより、双方の熱伝導率よりもより低い断熱材を提供できる。
【0014】
平均粒径0.01~1.2mmのシリカエアロゲルに対して、平均粒径7nmの酸化チタン粉粒体を添加して混合して、夫々の単独使用時よりも熱伝導率が確実に低下する。
従って、より断熱性の良い断熱材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】シリカエアロゲルに炭化ケイ素を添加した場合の熱伝導率の変化グラフである。
【
図2】シリカエアロゲル単体と、シリカエアロゲルに炭化ケイ素を混入した場合の低温時の熱伝導率の変化を比較するグラフである。
【
図3】シリカエアロゲル単体と、シリカエアロゲルに炭化ケイ素を混入した場合の高温時の熱伝導率の変化を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
例えば、断熱容器において被断熱体の収容空間を囲繞する壁厚内の気密空間や、真空断熱体の気密空間に充填可能な断熱材を構成するのに、平均粒径0.01~4.0mmのシリカエアロゲル粉粒体と、平均粒径2μmの炭化ケイ素粉粒体とを混合した断熱材を提供する。
そして、前記断熱材は、質量割合が、前記シリカエアロゲル粉粒体100に対して、前記炭化ケイ素粉粒体を0より大で110よりも小にすることにより、シリカエアロゲル粉粒体だけの場合や、炭化ケイ素粉粒体だけの場合よりも、熱伝導率が低下するもので、次の実験結果により示す。
【0017】
〔実験1〕
シリカエアロゲルは、網目状の微細構造を持ち、骨格間に10nmに満たない細孔があって、三次元的で微細な多孔性の構造をしているために優れた断熱性を示し、融点が1200℃で、粒子サイズとして表1に示すように、4種類のサンプルを準備した。
【0018】
【0019】
表1より、粒径0.01~1.2mmのシリカエアロゲル粉粒体が、熱伝導率において0.0198W/mKと最も小さかった。
【0020】
〔実験2〕
サンプル2のシリカエアロゲル粉粒体を用いて、シリカエアロゲル100質量部に対する炭化ケイ素粉粒体の添加割合を変化させた場合の熱伝導率の変化を調べ、表2に示した。
【0021】
【0022】
表2をグラフにすると、
図1に示すようになり、シリカエアロゲル粉粒体100質量部に対して、平均粒子サイズ約2μm(分布は1~5μm)の炭化ケイ素粉粒体15~25質量部を添加した混合物が、他の添加割合よりも熱伝導率の低下率が高くなることが明確である。
尚、炭化ケイ素粉粒体(SiC)単独の場合の熱伝導率は、0.0774W/mKである。
【0023】
〔実験3〕
次に、各種粒子サイズの異なるシリカエアロゲル粉粒体として、サンプル1~サンプル4単独の場合と、サンプル1~サンプル4のシリカエアロゲル粉粒体100質量部に対して、平均粒子サイズ約2μm(分布は1~5μm)の炭化ケイ素粉粒体(SiC)を、夫々20質量部の割合で添加して混合した材料において、実測嵩密度(kg/m3)及び平均温度23℃での熱伝導率(W/mK)を測定して表3に示した。
【0024】
【0025】
表3からは、サンプル1~サンプル4夫々において、平均粒径がシリカエアロゲル粉粒体よりも小さい炭化ケイ素粉粒体(SiC)を添加混合することによって熱伝導率が低下することが分かる。
【0026】
〔実験4〕
次に、シリカエアロゲル粉粒体単体と、シリカエアロゲル粉粒体に炭化ケイ素粉粒体(SiC)を混入した断熱材の夫々の低温特性(-40℃~40℃)を調べて、表4に示した。
【0027】
【0028】
尚、表4を温度グラフに表すと
図2のようになる。
つまり、シリカエアロゲル粉粒体単体よりも、炭化ケイ素粉粒体を混入したほうが熱伝導率が低減し、温度が高くなるにつれてその低減率が大きくなることが分かる。
【0029】
〔実験5〕
上記と同様のシリカエアロゲル粉粒体単体と、シリカエアロゲル粉粒体に炭化ケイ素粉粒体を混入した断熱材の夫々において、高温特性(100℃~500℃)を調べて、表5に示した。
【0030】
【0031】
表5を、温度グラフに表すと
図3のようになる。
つまり、高温になればなるほどシリカエアロゲル粉粒体単独の物よりも炭化ケイ素混入シリカエアロゲル粉粒体の方が熱伝導率に差が大きく出て、断熱性が高くなることが明確である。
【0032】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
〈1〉 炭化ケイ素粉粒体は、一般的に赤外線透過抑制剤として使用されているために、同様の特性を持つ酸化チタン粉粒体(平均粒子サイズは約7nm)を、シリカエアロゲル粉粒体(粒子径0.01~1.2mm)に添加混合させた場合にも熱伝導率が低下するか否かを調べ表6に示した。
尚、比較のために炭化ケイ素粉粒体を添加した場合の実験結果も合わせて記載した。この実験で、炭化ケイ素粉粒体以外に平均粒径が前記シリカエアロゲル粉粒体よりも小さい酸化チタン粉粒体でもシリカエアロゲル単体よりも熱伝導率が低減することが分かり、酸化チタン粉粒体混入シリカエアロゲル粉粒体が断熱材として利用できる。
【0033】