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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】透明電極積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20220920BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20220920BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20220920BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
B32B15/08 E
G02B1/111
H01B5/14 A
H01B13/00 503B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018149071
(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公開番号】P2019034548
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】10-2017-0103351
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳 ▲漢▼太
(72)【発明者】
【氏名】尹 億根
(72)【発明者】
【氏名】魯 ▲聖▼辰
(72)【発明者】
【氏名】琴 同基
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-152727(JP,A)
【文献】特開2010-037575(JP,A)
【文献】国際公開第2014/181641(WO,A1)
【文献】特開2011-003456(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0010712(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C23C 14/00-14/58
G02B 1/10-1/18
H01B 5/00-5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層上に所定の厚さの第1の透明酸化物電極層を形成する段階と、
前記第1の透明酸化物電極層上に第2の透明酸化物電極層を形成する段階とを含み、
前記第2の透明酸化物電極層を形成する段階は、前記第2の透明酸化物電極層の厚さを調節して積層体全体の透過率及び色度(b*)を調節することを含み、
前記第1の透明酸化物電極層は、インジウム亜鉛酸化物(IZO)を含むように形成され、前記第2の透明酸化物電極層は、インジウムスズ酸化物(ITO)を含むように形成される、透明電極積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第2の透明酸化物電極層の厚さは、120~150nmの範囲に調節され、前記積層体全体の色度(b*)は5以下に調節される、請求項1に記載の透明電極積層体の製造方法。
【請求項3】
前記第2の透明酸化物電極層の厚さは、120~140nmの範囲に調節され、前記積層体全体の色度(b*)は、0.9~4.7の範囲に調節される、請求項1に記載の透明電極積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の透明酸化物電極層は、厚さが10~20nmの範囲で固定される、請求項1に記載の透明電極積層体の製造方法。
【請求項5】
前記積層体全体の透過率は87%以上に調節される、請求項1に記載の透明電極積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の透明酸化物電極層を形成する前に、前記基材層上に屈折率整合層を形成する段階をさらに含む、請求項1に記載の透明電極積層体の製造方法。
【請求項7】
前記屈折率整合層を形成する段階は、屈折率が互いに異なる第1の屈折率整合層および第2の屈折率整合層を順次形成することを含む、請求項に記載の透明電極積層体の製造方法。
【請求項8】
基材層と、
前記基材層上に積層されたインジウム亜鉛酸化物(IZO)を含む第1の透明酸化物電極層と、
前記第1の透明酸化物電極層上に積層されたインジウムスズ酸化物(ITO)を含む第2の透明酸化物電極層とを含み、
前記第2の透明酸化物電極層の厚さは、120~150nmであり、積層体全体の透過率は87%以上であり、色度(b*)は5以下である、透明電極積層体。
【請求項9】
前記第2の透明酸化物電極層の厚さは、120~140nmであり、前記積層体全体の色度(b*)は、0.9~4.7である、請求項に記載の透明電極積層体。
【請求項10】
前記第1の透明酸化物電極層の厚さは10~20nmである、請求項に記載の透明電極積層体。
【請求項11】
前記基材層と前記第1の透明酸化物電極層との間に形成される屈折率整合層をさらに含む、請求項に記載の透明電極積層体。
【請求項12】
前記屈折率整合層は、前記基材層から順次に積層された第1の屈折率整合層および第2の屈折率整合層を含み、前記第1の屈折率整合層は、前記第2の屈折率整合層よりも大きい屈折率を有する、請求項11に記載の透明電極積層体。
【請求項13】
請求項12のいずれか一項に記載の透明電極積層体を含む、タッチセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電極積層体及びその製造方法に関する。より詳しくは、複数の透明導電層を含む透明電極積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化が進展するにつれて、ディスプレイ分野でも多様な形態の要求が増加している。これにより、薄型化、軽量化、低消費電力化、などの特徴を持つ各種のフラットパネルディスプレイ、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、有機発光ダイオードディスプレイ、などが研究されている。
【0003】
また、前記ディスプレイ上に貼り付けられ、画面に表示される指示内容を人の手や物体で選択し、ユーザの命令を入力する入力装置であるタッチパネル又はタッチセンサーをディスプレイ装置と結合することで、画像表示機能及び情報入力機能を共に実現した電子機器が開発されている。
【0004】
前記タッチセンサーの場合には、ユーザのタッチセンシングのための透明導電性酸化物を含むセンシング電極を基板上に配列することができる。前記タッチセンサーをディスプレイ装置に挿入すると、前記センシング電極により、ディスプレイ装置によって具現される画像の品質が低下することがある。例えば、前記センシング電極がユーザに視認され、前記画像を乱すことがある。また、前記センシング電極により画像の色感が変化してしまうことがある。
【0005】
そのため、タッチセンシングのための所定の伝導性および感度を維持しつつ、画像品質の向上のための光学的特性も考慮して、前記センシング電極を設計する必要がある。
【0006】
最近では、例えば韓国公開特許第2014-0092366号に示されるように、様々な画像表示装置にタッチセンサーを結合したタッチスクリーンパネルが開発されているが、前述のように光学的特性が向上したタッチセンサー又はタッチパネルの要求が続いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第2014-0092366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、向上した色感及び光学的特性を有する透明電極積層体を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、向上した色感及び光学的特性を有する透明電極積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、前記透明電極積層体を含むタッチセンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1.基材層上に所定の厚さの第1の透明酸化物電極層を形成する段階と、前記第1の透明酸化物電極層上に第2の透明酸化物電極層を形成する段階とを含み、
前記第2の透明酸化物電極層を形成する段階は、前記第2の透明酸化物電極層の厚さを調節して積層体全体の透過率及び色度(b*)を調節することを含む、透明電極積層体の製造方法。
【0012】
2.前記項目1において、前記第1の透明酸化物電極層は、インジウム亜鉛酸化物(IZO)を含むように形成され、前記第2の透明酸化物電極層は、インジウムスズ酸化物(ITO)を含むように形成される、透明電極積層体の製造方法。
【0013】
3.前記項目1において、前記第2の透明酸化物電極層の厚さは、120~150nmの範囲に調節され、前記積層体全体の色度(b*)は、5以下に調節される、透明電極積層体の製造方法。
【0014】
4.前記項目1において、前記第2の透明酸化物電極層の厚さは、120~140nmの範囲に調節され、前記積層体全体の色度(b*)は、0.9~4.7の範囲に調節される、透明電極積層体の製造方法。
【0015】
5.前記項目1において、前記第1の透明酸化物電極層は、厚さが10~20nmの範囲で固定される、透明電極積層体の製造方法。
【0016】
6.前記項目1において、前記積層体全体の透過率は、87%以上に調節される、透明電極積層体の製造方法。
【0017】
7.前記項目1において、前記第1の透明酸化物電極層を形成する前に、前記基材層上に屈折率整合層を形成する段階をさらに含む、透明電極積層体の製造方法。
【0018】
8.前記項目7において、前記屈折率整合層を形成する段階は、屈折率が互いに異なる第1の屈折率整合層および第2の屈折率整合層を順次形成することを含む、透明電極積層体の製造方法。
【0019】
9.基材層と、前記基材層上に積層されたインジウム亜鉛酸化物(IZO)を含む第1の透明酸化物電極層と、前記第1の透明酸化物電極層上に積層されたインジウムスズ酸化物(ITO)を含む第2の透明酸化物電極層とを含み、
前記第2の透明酸化物電極層の厚さは、120~150nmであり、積層体全体の透過率は87%以上であり、色度(b*)は5以下である、透明電極積層体。
【0020】
10.前記項目9において、前記第2の透明酸化物電極層の厚さは、120~140nmであり、前記積層体全体の色度(b*)は、0.9~4.7である、透明電極積層体。
【0021】
11.前記項目9において、前記第1の透明酸化物電極層の厚さは10~20nmである、透明電極積層体。
【0022】
12.前記項目1において、前記基材層と前記第1の透明酸化物電極層との間に形成される屈折率整合層をさらに含む、透明電極積層体。
【0023】
13.前記項目12において、前記屈折率整合層は、前記基材層から順次に積層された第1の屈折率整合層および第2の屈折率整合層を含み、前記第1の屈折率整合層は、前記第2の屈折率整合層よりも大きい屈折率を有する、透明電極積層体。
【0024】
14.前記項目9~13のいずれか一項に記載の透明電極積層体を含む、タッチセンサー。
【発明の効果】
【0025】
本発明の実施形態に係る透明電極積層体は、例えば、インジウム亜鉛酸化物(IZO)を含む第1の透明酸化物電極層、およびインジウムスズ酸化物(ITO)を含む第2の透明酸化物電極層を含むことができる。前記第2の透明酸化物電極層の厚さを調節することで、前記透明電極積層体の色度(b*)を調節することができる。これにより、画像表示装置の構造によって前記透明電極積層体の所望の色度を容易に調節できる。
【0026】
また、前記色度の範囲内で所定の透過率を有するように前記第2の透明酸化物電極層の厚さを調節することにより、色度および透過率を含む光学的特性を全体的に向上させることができる。
【0027】
さらに、前記第1の透明酸化物電極層の厚さを所定の範囲内に固定または維持することにより、前記透明電極積層体の機械的安定性を向上させることができる。
【0028】
前記透明電極積層体を用いて、光学的特性および機械的信頼性が向上したタッチセンサーを製造することができ、画像表示装置内で目的の画像または色度を容易に高解像度で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、例示的な実施形態に係る透明電極積層体を示す概略断面図である。
図2図2は、例示的な実施形態に係る透明電極積層体を示す概略断面図である。
図3図3は、例示的な実施形態に係る透明電極積層体を示す概略断面図である。
図4図4は、例示的な実施形態に係るタッチセンサーを示す概略断面図である。
図5図5は、第2の透明酸化物電極層の厚さの変化によるb*値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態は、第1の透明酸化物電極層及び第2の透明酸化物電極層を含み、前記第2の透明酸化物電極層の厚さを調節することにより、所定の色度を有する透明電極積層体及びその製造方法を提供する。
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態をより具体的に説明する。ただし、本明細書に添付される図面は、本発明の好適な実施形態を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解する一助となる役割を果たすものであるため、本発明は図面に記載された事項のみに限定されて解釈されるものではない。
【0032】
図1は、例示的な実施形態に係る透明電極積層体を示す概略断面図である。
【0033】
図1に示すように、透明電極積層体100は、基材層105、並びに前記基材層105上に形成された第1の透明酸化物電極層160及び第2の透明酸化物電極層170を含むことができる。
【0034】
基材層105は、透明酸化物電極層160,170の形成のためにベース層として用いられるフィルムタイプの基材、または透明酸化物電極層160,170が形成される対象体を包括する意味で使用される。一部の実施形態では、基材層105は、タッチセンサーが形成または積層される表示パネルを指す場合もある。一部の実施形態では、基材層105は、画像表示装置のウィンドウ基板を含むこともできる。
【0035】
例えば、基材層105としては、タッチセンサーに通常使用される基板、またはフィルム素材を特に制限することなく使用でき、例えば、ガラス、高分子、及び/又は無機絶縁物質を含むことができる。前記高分子の例としては、環状オレフィン重合体(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(polyallylate)、ポリイミド(PI)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、ポリエーテルスルホン(PES)、セルローストリアセテート(TAC)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィン共重合体(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが挙げられる。前記無機絶縁物質の例としては、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、金属酸化物などが挙げられる。
【0036】
第1の透明酸化物電極層160は、基材層105上に、例えばスパッタリング(sputtering)工程のような蒸着工程により形成することができる。
【0037】
例示的な実施形態によると、第1の透明酸化物電極層160は、インジウム亜鉛酸化物(IZO)を含むように形成することができる。例えば、酸化インジウム(In)及び酸化亜鉛(ZnO)の重量比が調節されたターゲットを用いたスパッタリング工程により、第1の透明酸化物電極層160を形成することができる。
【0038】
一実施形態では、第1の透明酸化物電極層160において、酸化亜鉛の重量比は約5~15重量%であってもよい。
【0039】
第1の透明酸化物電極層160の厚さは、約10~20nmの範囲内で調節できる。
【0040】
相対的にインジウムスズ酸化物(ITO)に比べて機械的安定性および表面特性が向上したIZOを使用して第1の透明酸化物電極層160を形成する一方、厚さを前記範囲内に調節することにより、後述する第2の透明酸化物電極層170により調節される透過度、色度への影響を抑制または低減できる。
【0041】
例示的な実施形態によると、第1の透明酸化物電極層160は、前述のように、IZOを用いて、相対的に低温工程により形成できるため、基材層105の損傷を防止できる。例えば、第1の透明酸化物電極層160は、約20~130℃の範囲の低温蒸着工程により形成できる。
【0042】
第1の透明酸化物電極層160上には、第2の透明酸化物電極層170を形成することができる。第2の透明酸化物電極層170は、第1の透明酸化物電極層160に比べて相対的に透過率および伝導性が向上した物質を含むように形成できる。
【0043】
例示的な実施形態では、第2の透明酸化物電極層170は、ITOを含むようにスパッタリング工程のような蒸着工程により形成することができる。
【0044】
例えば、酸化インジウム(In)および酸化スズ(SnO)の重量比が調節されたターゲットを用いたスパッタリング工程により、第2の透明酸化物電極層170を形成することができる。一実施形態では、第2の透明酸化物電極層170における酸化スズの重量比は約5~15重量%であってもよい。
【0045】
例示的な実施形態によると、第2の透明酸化物電極層170の厚さを調節することにより、透明電極積層体100の色度及び透過率を調節できる。
【0046】
一部の実施形態では、第2の透明酸化物電極層170の厚さは約120~150nmの範囲で調節できる。一部の実施形態では、第2の透明酸化物電極層170の前記厚さの範囲で透明電極積層体100の色度(L*a*b*表色系におけるb*)は、約5以下に調節できる。
【0047】
一実施形態では、第2の透明酸化物電極層170の厚さは、約120~140nmの範囲で調節でき、透明電極積層体100の色度は、約0.9~4.7の範囲に調節できる。
【0048】
例えば、透明電極積層体100が、タッチセンサーのセンシング電極として使用される場合には、前記タッチセンサーは、画像表示装置の中間膜構造として挿入できる。前記画像表示装置の解像度および画像品質、前記タッチセンサーが挿入される画像表示装置内の位置等によって、求められる前記タッチセンサーの色度が異なり得る。
【0049】
例示的な実施形態によると、透明電極積層体100内で、例えば、ITOを含む第2の透明酸化物電極層170の厚さを調節することにより、透明電極積層体100全体の色度を容易に調節できる。また、前記厚さの範囲で色度を約5以下、好ましくは約0.9~4.7の範囲に調節することにより、色偏差による画像表示装置での画像の変形または攪乱を防止できる。
【0050】
また、第2の透明酸化物電極層170の厚さを前記範囲に調節することにより、透明電極積層体100全体の透過率を約87%以上に調節することができる。透明電極積層体100の透過率が約87%未満の場合には、タッチセンサーのユーザに電極が視認されることがあり、前記画像表示装置の画像品質が劣化することがある。
【0051】
第2の透明酸化物電極層170は、第1の透明酸化物電極層160に比べて伝導性および透過率が向上した物質、例えばITOを含むように形成され、また第1の透明酸化物電極層160よりも大きい厚さを有するように形成することができる。
【0052】
これにより、第2の透明酸化物電極層170によって、タッチセンサーの伝導性、透過率を確保するとともに、色度の微調節を行うことができる。また、第1の透明酸化物電極層160は、例えば、基材層105側から第2の透明酸化物電極層170に浸透する外部の不純物に対するバリアとして提供することができ、タッチセンサーに含まれるセンシング電極の機械的安定性を向上させることができる。
【0053】
第2の透明酸化物電極層170は、第1の透明酸化物電極層160よりも相対的に高温工程により形成することができる。例えば、第2の透明酸化物電極層170は、約30~230℃の温度の蒸着工程により形成できる。
【0054】
一部の実施形態では、第1の透明酸化物電極層160及び第2の透明酸化物電極層170は、互いに接触しており、この場合、タッチセンサーのセンシング電極は2層構造を有することができる。前記センシング電極において、前述のように、第1の透明酸化物電極層160はバリア電極または支持電極で提供され、第2の透明酸化物電極層170は伝導性、透過率、色度調整電極で提供され得る。
【0055】
図2は、例示的な実施形態に係る透明電極積層体を示す概略断面図である。
【0056】
図2に示すように、第1の透明酸化物電極層160と基材層105との間に屈折率整合層140を形成することができる。屈折率整合層140は、例えば、基材層105の屈折率と、透明酸化物電極層160,170の屈折率との間の屈折率を有し、第1の透明酸化物電極層160と基材層105との間の屈折率の変化を緩衝することができる。
【0057】
一部の実施形態では、屈折率整合層140は、図2に示すように基材層105の上面から順次積層され、互いに異なる屈折率を有する第1の屈折率整合層120及び第2の屈折率整合層130を含むことができる。一実施形態では、第1の屈折率整合層120の屈折率を第2の屈折率整合層130の屈折率よりも高くしてもよい。
【0058】
例えば、屈折率整合層140は、アクリル樹脂、シロキサン樹脂などのような有機絶縁物質、またはシリコン酸化物、シリコン窒化物などのような無機絶縁物質を含むことができる。一実施形態では、屈折率整合層140は、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化スズ(SnO)、アルミナ(Al)、酸化タンタル(Ta)などの無機粒子をさらに含むことができる。例えば、前記無機粒子は、第1の屈折率整合層120に含まれ、相対的に屈折率を増加させることができる。
【0059】
屈折率整合層140の厚さは、透明電極積層体100aにおいて、第2の透明酸化物電極層170によって調節された色度、透過率に影響を与えないように設定できる。
【0060】
例えば、第1の屈折率整合層120の厚さは、約10~80nmであってもよい。第2の屈折率整合層130の厚さは、約100~200nmであってもよい。
【0061】
図3は、例示的な実施形態に係る透明電極積層体を示す概略断面図である。
【0062】
図3に示すように、透明電極積層体100bは、基材層105の少なくとも一つの面上に形成されたハードコート層を含むことができる。一部の実施形態では、前記ハードコート層は、基材層105の底面上に形成された第1のハードコート層110aと、基材層105の上面上に形成された第2のハードコート層110bとを含むことができる。
【0063】
ハードコート層110a,110bは、例えば、光硬化性化合物、光開始剤および溶剤を含むハードコート組成物を使用して形成され、これにより、基材層105の柔軟性、耐摩耗性、表面硬度をさらに向上させることができる。
【0064】
前記光硬化性化合物は、例えばシロキサン系化合物、アクリレート系化合物、(メタ)アクリロイル基またはビニル基を有する化合物などを含むことができる。これらは、単独に又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
一部の実施形態では、基材層105は、画像表示装置のウィンドウで提供することができ、基材層105の前記底面又は第1のハードコート層110aをユーザの視認側に配置することができる。
【0066】
図4は、例示的な実施形態に係るタッチセンサーを示す概略断面図である。
【0067】
図4に示すように、前記タッチセンサーは、基材層105上に形成されたセンシング電極150を含むことができる。センシング電極150は、前述のように、第1の透明酸化物電極層160及び第2の透明酸化物電極層170の積層構造を含むことができる。
【0068】
一部の実施形態では、前記タッチセンサーは、相互静電容量(Mutual-Capacitance)方式により駆動できる。この場合には、センシング電極150は、ユーザのタッチ位置を検出するために、互いに異なる方向(例えば、X方向及びY方向)に交差するように配列される第1のセンシング電極及び第2のセンシング電極を含むことができる。
【0069】
例えば、第1のセンシング電極は、単位パターンがつなぎ部によって互に接続されてセンシングライン形状に延長され、複数の前記センシングラインが配列され得る。第2のセンシング電極は、それぞれ物理的に離隔している単位パターンを含むことができる。例えば、前記第1のセンシング電極を間に置いて互いに隣り合う第2のセンシング電極を電気的に接続するブリッジ電極をさらに含むことができる。この場合には、絶縁パターンが、前記つなぎ部及びブリッジ電極の交差部に形成され、前記第1及び第2のセンシング電極を互いに絶縁することができる。
【0070】
一実施形態では、前記つなぎ部及びブリッジ電極もまた、前述した第1の透明酸化物電極層160及び第2の透明酸化物電極層170の積層構造を含むことができる。
【0071】
一部の実施形態では、前記タッチセンサーは、自己静電容量(Self-Capacitance)方式により駆動されるタッチセンサーを含むことができる。この場合には、センシング電極150は、それぞれ物理的に離隔している単位パターンを含むことができる。前記単位パターンは、それぞれ、トレースまたは配線ラインにより駆動回路と電気的に接続できる。
【0072】
絶縁層180は、基材層105上でセンシング電極150を覆うことができる。絶縁層180は、例えば、シリコン酸化物のような無機絶縁物質、またはアクリル系樹脂のような透明有機物質で形成することができる。
【0073】
基材層105上には、図2を参照して説明したように、屈折率整合層140を形成することができる。隣り合うセンシング電極150同士の間の領域、例えばセンシング電極150が形成されていない領域では、屈折率整合層140が露出して、電極領域と非電極領域との間の屈折率差による電極の視認を抑制または低減できる。
【0074】
本発明の実施形態は、前述した透明電極積層体を含むタッチセンサーまたはタッチスクリーンパネルを提供する。また、本発明の実施形態は、前記タッチセンサーを含む、例えば、OLED装置またはLCD装置のような画像表示装置を提供する。
【0075】
前記画像表示装置において、OLEDパネルまたはLCDパネルのようなディスプレイパネル上に、例えば、図4に示すようなタッチセンサーを積層することができる。前記ディスプレイパネルは、ディスプレイ基板上に配列された薄膜トランジスタ(TFT)を含む画素回路、および前記画素回路と電気的に接続される画素部または発光部を含むことができる。
【0076】
前記ディスプレイパネルと前記タッチセンサーとの間に、または前記タッチセンサー上に偏光板を積層することもできる。前記タッチセンサー上には、ウィンドウが配置されて保護部材として提供され得る。一部の実施形態では、前記透明電極積層体または前記タッチセンサーの基材層105を前記ウィンドウとして提供することもできる。
【0077】
以下、具体的な実験例により、本発明の光学積層体の特性についてより詳細に説明する。これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0078】
実験例
上面及び下面に、それぞれ1.38μmのアクリル系ハードコート層が形成されたCOP材質の基材層(Zeon社製、厚さ40.5μm)を準備した。前記基材層上に順次に、第1の屈折率整合層(厚さ50nm)および第2の屈折率整合層(厚さ170nm)を形成した。前記第1の屈折率整合層および第2の屈折率整合層は、それぞれアクリル系樹脂を含み、前記第1の屈折率整合層は、付加的に無機粒子が分散された樹脂を使用して形成した。
【0079】
前記第2の屈折率整合層上にIZOをスパッタリング工程により蒸着して10nmの厚さの第1の透明酸化物電極層を形成した。その後、第1の透明酸化物電極層上にITOをスパッタリング工程により蒸着して第2の透明酸化物電極層を形成することにより、透明電極積層体を製造した。
【0080】
前記第2の透明酸化物電極層の厚さを変更しながら、前記透明電極積層体全体の透過率及び色度(a*、b*)を測定した。透過率及び色度は、CM-3600A(Minolta社製)を用いて測定した。
【0081】
測定の結果を下記表1に示す。なお、図5は、第2の透明酸化物電極層の厚さの変化による透過率及びb*値の変化を示すグラフである。
【0082】
【表1】
【0083】
表1及び図5から分かるように、第2の透明酸化物電極層の厚さが増加するほど色度(b*)の値が増加し、厚さを約120~150nmの間で調節することにより、87%以上の透過率が維持され、かつ色度(b*)の値が5以下に調節された。また、第2の透明酸化物電極層の厚さを約120~140nmの間に調節することにより、色度(b*)の値を約0.9~4.7の範囲に維持することができた。
【符号の説明】
【0084】
100,100a,100b:透明電極積層体
105:基材層
120:第1の屈折率整合層
130:第2の屈折率整合層
140:屈折率整合層
150:センシング電極
160:第1の透明酸化物電極層
170:第2の透明酸化物電極層
図1
図2
図3
図4
図5