(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】デジタル波形表示システム及びデジタル波形表示方法
(51)【国際特許分類】
G01R 13/20 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
G01R13/20 R
G01R13/20 T
(21)【出願番号】P 2018168321
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】横平 貫志
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-101749(JP,A)
【文献】特開2003-315367(JP,A)
【文献】特開平08-178962(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049199(WO,A1)
【文献】特開平05-002030(JP,A)
【文献】特開平09-318667(JP,A)
【文献】特開2014-010036(JP,A)
【文献】特開2010-071742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル波形生成装置と、デジタル波形表示装置とを備えるデジタル波形表示システムであって、
前記デジタル波形生成装置は、
測定データに基づくアナログ信号を
第1サンプリングレートでサンプリングして、
前記第1サンプリングレートの情報と、1番目のデータ番号が第1時間範囲
の開始時点に対応し、m番目のデータ番号が前記第1時間範囲の終了時点に対応するm個のデータ番号と、前記m個のデータ番号に1対1で対応付けられ、それぞれ対応するデータ番号から前記m個のデータ番号のうちの1番目のデータ番号を引いた値に前記第1
サンプリングレートを乗じて得られる時間だけ前記第1時間範囲の開始時点から経過した時点の信号強度を表すm個の信号強度値とを含むデジタル波形データ
を生成すると
ともに、前記アナログ信号を前記第1
サンプリングレートよりも高い
第2サンプリングレートでサンプリングして、
前記第2サンプリングレートの情報と、1番目のデータ番号が前記第1時間範囲よりも短い第2時間範囲
の開始時点に対応し、n番目のデータ番号が前記第2時間範囲の終了時点に対応するn個のデータ番号と、前記n個のデータ番号に1対1で対応付けられ、それぞれ対応するデータ番号から前記n個のデータ番号のうちの1番目のデータ番号を引いた値に前記第2
サンプリングレートを乗じて得られる時間だけ前記第2時間範囲の開始時点から経過した時点の信号強度を表すn個の信号強度値とを含むデジタル波形データ
を生成し、前記第2サンプリングレートで生成したデジタル波形データに含まれる信号強度値が所定の条件を満たすか否かを監視し、前記所定の条件が満たされると、前記所定の条件を満たした信号強度値を含むデジタル波形データを、第2デジタル波形データとして決定し、前記第1サンプリングレートで生成した、前記第1時間範囲が前記第2時間範囲の前後を含むデジタル波形データを、第1デジタル波形データとして決定すると
ともに、前記第1
デジタル波形データに含まれるデータ番号のうち前記第2時間範囲
の開始時点と同じ時点に
対応する
データ番号を示す対応区間情
報を生成するデジタル波形生成部と、
前記第1デジタル波形データと前記第2デジタル波形データと前記対応区間情報とを前記デジタル波形表示装置に出力する出力部と、を備え、
前記デジタル波形表示装置は、取得部と、表示部と、制御部と、を備え、
前記取得部は、前記第1デジタル波形データと前記第2デジタル波形データと前記対応区間情報とを取得し、
前記制御部は、前記対応区間情報に基づいて、
それぞれ前記第1デジタル波形データに
含まれるデータ番号及び信号強度値の組合せに対応するm個の点をプロットして得られる第1デジタル波形の
時間範囲における、それぞれ前記第2デジタル波形データに
含まれるデータ番号及び信号強度値の組合せに対応するn個の点をプロットして得られる第2デジタル波形
の時間範囲の開始時点を特定し、前記第2デジタル波形データに含まれるデータ番号のうちのn番目のデータ番号から1番目のデータ番号を引いた値に前記第2サンプリングレートを乗じて得られる時間だけ、特定した開始時点から経過した時点を、前記第1デジタル波形の時間範囲における前記第2デジタル波形の時間範囲の終了時点として特定し、前記第1デジタル波形の、特定した開始時点から終了時点までの区間を前記第2デジタル波形で置換し
、得られた合成波形を、前記表示部に表示させる、デジタル波形表示システム。
【請求項2】
前記第2デジタル波形データは、信号強度が直前のデータでの信号強度に対して所定値以上変化するデータを有する、請求項1に記載のデジタル波形表示
システム。
【請求項3】
表示部を備えるデジタル波形表示
システムが実行する、デジタル波形表示方法であって、
測定データに基づくアナログ信号を第1サンプリングレートでサンプリングして、前記第1サンプリングレートの情報と、1番目のデータ番号が第1時間範囲の開始時点に対応し、m番目のデータ番号が前記第1時間範囲の終了時点に対応するm個のデータ番号と、前記m個のデータ番号に1対1で対応付けられ、それぞれ対応するデータ番号から前記m個のデータ番号のうちの1番目のデータ番号を引いた値に前記第1サンプリングレートを乗じて得られる時間だけ前記第1時間範囲の開始時点から経過した時点の信号強度を表すm個の信号強度値とを含むデジタル波形データを生成するとともに、前記アナログ信号を前記第1サンプリングレートよりも高い第2サンプリングレートでサンプリングして、前記第2サンプリングレートの情報と、1番目のデータ番号が前記第1時間範囲よりも短い第2時間範囲の開始時点に対応し、n番目のデータ番号が前記第2時間範囲の終了時点に対応するn個のデータ番号と、前記n個のデータ番号に1対1で対応付けられ、それぞれ対応するデータ番号から前記n個のデータ番号のうちの1番目のデータ番号を引いた値に前記第2サンプリングレートを乗じて得られる時間だけ前記第2時間範囲の開始時点から経過した時点の信号強度を表すn個の信号強度値とを含むデジタル波形データを生成するステップと、
前記第2サンプリングレートで生成したデジタル波形データに含まれる信号強度値が所定の条件を満たすか否かを監視するステップと、
前記所定の条件が満たされると、前記所定の条件を満たした信号強度値を含むデジタル波形データを、第2デジタル波形データとして決定し、前記第1サンプリングレートで生成した、前記第1時間範囲が前記第2時間範囲の前後を含むデジタル波形データを、第1デジタル波形データとして決定するとともに、前記第1デジタル波形データに含まれるデータ番号のうち前記第2時間範囲の開始時点と同じ時点に対応するデータ番号を示す対応区間情報を生成するステップと、
前記第1デジタル波形データを取得するステップと、
前
記第2デジタル波形データを取得するステップと、
前
記対応区間情報を取得するステップと、
前記対応区間情報に基づいて、
それぞれ前記第1デジタル波形データに
含まれるデータ番号及び信号強度値の組合せに対応するm個の点をプロットして得られる第1デジタル波形の
時間範囲における、それぞれ前記第2デジタル波形データに
含まれるデータ番号及び信号強度値の組合せに対応するn個の点をプロットして得られる第2デジタル波形
の時間範囲の開始時点を特定し、前記第2デジタル波形データに含まれるデータ番号のうちのn番目のデータ番号から1番目のデータ番号を引いた値に前記第2サンプリングレートを乗じて得られる時間だけ、特定した開始時点から経過した時点を、前記第1デジタル波形の時間範囲における前記第2デジタル波形の時間範囲の終了時点として特定し、前記第1デジタル波形の、特定した開始時点から終了時点までの区間を前記第2デジタル波形で置換し
、得られた合成波形を、前記表示部に表示させるステップと、
を含むデジタル波形表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デジタル波形表示装置、デジタル波形表示システム、デジタル波形表示方法、及びプログラムに関する。
【0002】
測定データに基づくアナログ信号をサンプリングすることで、信号強度と時間との対応情報の集合からなるデジタル波形データを生成可能な、デジタルオシロスコープ等のデジタル波形生成装置が知られている(例えば、特許文献1~4参照)。特許文献1には、アナログ信号の周波数帯域に応じて、異なるサンプリングレートでデジタル波形データを生成可能とした技術が開示されている。特許文献2には、デジタル波形データを構成するデータ数が多くても、リアルタイムに波形表示を可能とした技術が開示されている。特許文献3には、アナログ信号を外部信号によるタイミングでサンプリングする場合であっても、作成されたデジタル波形データを圧縮することで、デジタル波形データに基づく波形表示をリアルタイムに行うことを可能とした技術が開示されている。特許文献4には、低いサンプリングレートでサンプリングされたデジタル波形データに基づく低速デジタル波形と、低速デジタル波形上の指定されたトリガ点に対応する、より高いサンプリングレートでサンプリングされたデジタル波形データに基づく高速デジタル波形とを、同時に表示可能とした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-185225号公報
【文献】特開2007-93523号公報
【文献】特開2004-361310号公報
【文献】特開2001-272420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献4等に開示された技術について、
図9を参照して詳細に説明する。
図9は、特許文献4等に開示された技術による表示画面の一例を示す図である。
図9に示すように、表示画面には、低速デジタル波形91及び高速デジタル波形92が、それぞれ、横軸を時間、縦軸を信号強度として別々に表示されている。また、
図9に示すように、表示画面には、信号強度と時間との対応情報に対応するデータ点が黒丸で表示され、データ点に対する近似曲線が破線で表示されている。また、
図9に示すように、表示画面には、低速デジタル波形91上の指定されたトリガ点と、高速デジタル波形92上の当該トリガ点に該当するとを示すマーカー93が表示され、高速デジタル波形92全体の時間範囲に対応するマーカー93を含む特定期間94が、低速デジタル波形91上に表示されている。なお、
図9には、実際の測定データに対応する曲線が実線で示されているが、表示画面には当該実線は表示されない。
【0005】
図9に示すように、特許文献4等に開示された技術では、低速デジタル波形91と高速デジタル波形92とがそれぞれ独立した波形として表示される。低速デジタル波形91では、高速デジタル波形92よりも広い時間範囲に亘ってデータ点が分布している。しかし、低速デジタル波形91は、特定区間94においてマーカー93で示された、実際の測定データが急激に変化している位置では、データ点に対応する近似曲線が実際の測定データに対応する曲線から大きくずれており、測定データの再現性が低下している。一方、高速デジタル波形92は、データ点に対応する近似曲線の測定データに対応する曲線からのずれが、低速デジタル波形91よりも小さく、測定データをより正確に再現できている。しかし、高速デジタル波形92は、全体の時間範囲が低速デジタル波形よりも狭い。
【0006】
上述のように、特許文献4等に開示された技術によれば、ユーザは、広い時間範囲に亘る測定データの傾向を確認するためには、低速デジタル波形91を参照する必要があり、特定区間94における測定データの詳細を確認するためには、高速デジタル波形92を参照する必要があるため、確認に要する工程が煩雑であった。
【0007】
そこで、本開示は、広い時間範囲に亘る測定データの傾向と、特定区間における測定データの詳細とを、簡便に確認することが可能なデジタル波形表示装置、デジタル波形表示システム、デジタル波形表示方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの実施形態に係るデジタル波形表示装置は、取得部と、表示部と、制御部と、を備え、取得部は、測定データに基づいて生成され、信号強度と時間との対応情報の第1時間範囲に亘る集合からなる第1デジタル波形データと、測定データに基づいて第1デジタル波形データよりも高いサンプリングレートで生成され、信号強度と時間との対応情報の第1時間範囲よりも短い第2時間範囲に亘る集合からなる第2デジタル波形データと、第1時間範囲のうち第2時間範囲に相当区間を示す対応区間情報と、を取得し、制御部は、対応区間情報に基づいて、第1デジタル波形データに基づく波形の第2時間範囲に相当する区間を第2デジタル波形データに基づく波形で置換した合成波形を、表示部に表示させる。このような構成によれば、広い時間範囲に亘る測定データに対応する第1デジタル波形データに基づく波形と、特定区間における測定データに対応する第2デジタル波形データに基づく波形とを、1つの合成波形として表示することができる。よって、広い時間範囲に亘る測定データの傾向と、特定区間における測定データの詳細とを、簡便に確認することができる。
【0009】
一実施形態において、第2デジタル波形データは、信号強度が直前のデータでの信号強度に対して所定値以上変化するデータを有してもよい。このような構成によれば、信号強度の変化が特に激しい区間において、測定データの詳細を確認することができる。
【0010】
幾つかの実施形態に係るデジタル波形表示システムは、デジタル波形生成装置と、デジタル波形表示装置とを備えるデジタル波形表示システムであって、デジタル波形生成装置は、測定データに基づくアナログ信号をサンプリングして、信号強度と時間との対応情報の第1時間範囲に亘る集合からなる第1デジタル波形データと、アナログ信号を第1デジタル波形データよりも高いサンプリングレートでサンプリングして、信号強度と時間との対応情報の第1時間範囲よりも短い第2時間範囲に亘る集合からなる第2デジタル波形データと、第1時間範囲のうち第2時間範囲に相当する区間を示す対応区間情報と、を生成するデジタル波形生成部と、第1デジタル波形データと第2デジタル波形データと対応区間情報とをデジタル波形表示装置に出力する出力部と、を備え、デジタル波形表示装置は、取得部と、表示部と、制御部と、を備え、取得部は、第1デジタル波形データと第2デジタル波形データと対応区間情報とを取得し、制御部は、対応区間情報に基づいて、第1デジタル波形データに基づく波形の第2時間範囲に対応する区間を第2デジタル波形データに基づく波形で置換した合成波形を、表示部に表示させる。このような構成によれば、広い時間範囲に亘る測定データに対応する第1デジタル波形データに基づく波形と、特定区間における測定データに対応する第2デジタル波形データに基づく波形とを、1つの合成波形として表示することができる。よって、広い時間範囲に亘る測定データの傾向と、特定区間における測定データの詳細とを、簡便に確認することができる。
【0011】
幾つかの実施形態に係るデジタル波形表示方法は、表示部を備えるデジタル波形表示装置が実行する、デジタル波形表示方法であって、測定データに基づいて生成され、信号強度と時間との対応情報の第1時間範囲に亘る集合からなる第1デジタル波形データを取得するステップと、測定データに基づいて第1デジタル波形データよりも高いサンプリングレートで生成され、信号強度と時間との対応情報の第1時間範囲よりも短い第2時間範囲に亘る集合からなる第2デジタル波形データを取得するステップと、第1時間範囲のうち第2時間範囲に相当する区間を示す対応区間情報を取得するステップと、対応区間情報に基づいて、第1デジタル波形データに基づく波形の第2時間範囲に対応する区間を第2デジタル波形データに基づく波形で置換した合成波形を、表示部に表示させるステップと、を含む。このような方法によれば、広い時間範囲に亘る測定データに対応する第1デジタル波形データに基づく波形と、特定区間における測定データに対応する第2デジタル波形データに基づく波形とを、1つの合成波形として表示することができる。よって、広い時間範囲に亘る測定データの傾向と、特定区間における測定データの詳細とを、簡便に確認することができる。
【0012】
幾つかの実施形態に係るプログラムは、表示部を備えるコンピュータに、測定データに基づいて生成され、信号強度と時間との対応情報の第1時間範囲に亘る集合からなる第1デジタル波形データを取得するステップと、測定データに基づいて第1デジタル波形データよりも高いサンプリングレートで生成され、信号強度と時間との対応情報の第1時間範囲よりも短い第2時間範囲に亘る集合からなる第2デジタル波形データを取得するステップと、第1時間範囲のうち第2時間範囲に相当する区間を示す対応区間情報を取得するステップと、対応区間情報に基づいて、第1デジタル波形データに基づく波形の第2時間範囲に対応する区間を第2デジタル波形データに基づく波形で置換した合成波形を、表示部に表示させるステップと、を実行させる。このようなプログラムによれば、広い時間範囲に亘る測定データに対応する第1デジタル波形データに基づく波形と、特定区間における測定データに対応する第2デジタル波形データに基づく波形とを、1つの合成波形として表示することができる。よって、広い時間範囲に亘る測定データの傾向と、特定区間における測定データの詳細とを、簡便に確認することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、広い時間範囲に亘る測定データの傾向と、特定区間における測定データの詳細とを、簡便に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係るデジタル波形表示システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】第1デジタル波形データの一例を示す図である。
【
図3】第2デジタル波形データの一例を示す図である。
【
図5】
図1に示すデジタル波形表示装置が実行する合成波形表示処理を説明するフローチャートである。
【
図6】
図5に示す合成波形表示処理を説明するための、第1デジタル波形を示す図である。
【
図7】
図5に示す合成波形表示処理を説明するための、第2デジタル波形を示す図である。
【
図8】
図5に示す合成波形表示処理により表示される合成波形の一例を示す図である。
【
図9】特許文献4等に開示された技術による表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、いくつかの実施形態について、図面を参照して例示説明する。各図において共通の要素には、同一の符号を付している。
【0016】
図1は、一実施形態に係るデジタル波形表示システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、デジタル波形表示システム1は、デジタル波形生成装置20と、デジタル波形表示装置10と、を備える。
図1では、測定データに基づくアナログ信号、第1デジタル波形データ、第2デジタル波形データ、対応区間情報等の移動の流れを矢印で示す。
【0017】
デジタル波形生成装置20は、デジタルオシロスコープ等で構成される。デジタル波形生成装置20は、測定データ取得部21と、デジタル波形生成部22と、出力部23と、操作受付部24と、記憶部25と、表示部26と、制御部27と、特徴検出部28と、を備える。
【0018】
測定データ取得部21は、測定データに基づくアナログ信号を取得する。測定データ取得部21は、取得したアナログ信号をデジタル波形生成部22に出力する。測定データ取得部21は、例えばアンプを備え、取得したアナログ信号をアンプで増幅させてからデジタル波形生成部22に出力してもよい。
【0019】
デジタル波形生成部22は、測定データ取得部21から入力されるアナログ信号をサンプリングして、信号強度と時間との対応情報(以下、単に「データ」とも記載する。)の集合からなる第1デジタル波形データ及び第2デジタル波形データを生成する。第1デジタル波形データは、アナログ信号が所定のサンプリングレート(以下、「第1サンプリングレート」とも記載する。)でサンプリングされて生成され、信号強度と時間との対応情報の第1時間範囲に亘る集合からなる。第2デジタル波形データは、アナログ信号が第1サンプリングレートよりも高い第2サンプリングレートでサンプリングされて生成され、信号強度と時間との対応情報の第2時間範囲に亘る集合からなる。ここで、第2時間範囲は、第1時間範囲よりも短い時間範囲である。また、第2時間範囲は、第1時間範囲に含まれる一部の時間範囲である。第2時間範囲は、例えば、測定データが急激に変化する時点を含む時間範囲である。
【0020】
デジタル波形生成部22は、例えば間引き回路と、A/Dコンバータとを備え、A/Dコンバータは、間引き回路から出力されたサンプリング信号のサンプリングタイミングで、アナログ信号をサンプリングする。具体的には、間引き回路は、第1サンプリングレートのタイミングによるサンプリング信号と、第2サンプリングレートのタイミングによるサンプリング信号とを、それぞれA/Dコンバータに出力する。
【0021】
ここで、デジタル波形生成部22による、第1デジタル波形データ及び第2デジタル波形データの生成方法の詳細について説明する。デジタル波形生成部22は、継続的に入力されるアナログ信号を、第1サンプリングレート及び第2サンプリングレートで連続的にサンプリングして、デジタル波形データをそれぞれ生成していく。デジタル波形生成部22は、第2サンプリングレートで生成中のデジタル波形データに含まれるデータが所定の条件を満たすか否かを監視する。第2サンプリングレートで生成中のデジタル波形データに含まれるデータが所定の条件を満たすと、当該所定の条件を満たしたデータを含む第2時間範囲に亘るデジタル波形データを、第2デジタル波形データとして決定する。また、デジタル波形生成部22は、第1サンプリングレートで生成されたデジタル波形データについて、第2時間範囲の前後を含む第1時間範囲に亘るデジタル波形データを、第1デジタル波形データとして決定する。
【0022】
第2デジタル波形データが決定されるための上記所定の条件が満たされるか否かは、例えば、特徴検出部28が第2サンプリングレートで生成されたデジタル波形データの特徴位置を検出するか否かに基づいて決定してもよい。特徴検出部28による特徴位置の検出の詳細については後述する。
【0023】
デジタル波形生成部22は、第1時間範囲のうち第2時間範囲に相当する区間を示す対応区間情報を更に生成する。具体的には、デジタル波形生成部22は、第2デジタル波形データが決定されるための上記所定の条件が満たされると、第1時間範囲に対する第2時間範囲の区間を決定すると共に、対応区間情報を生成する。
【0024】
図2は、第1デジタル波形データの一例を示す図である。
図2(a)に示すように、第1デジタル波形データは、1からm(mは正の整数)までのデータ番号と、信号強度とが対応付けられた情報(データ)の集合を含んでいてもよい。また、
図2(b)に示すように、第1デジタル波形データは、第1サンプリングレートの情報を含んでいてもよい。これらの情報により、データ番号がm以下の任意の正の整数Xであるとき、(X-1)に第1サンプリングレートを乗じて得られる時間だけ、データ番号=1の時点から経過していることが分かる。すなわち、
図2(a)及び
図2(b)に示す第1デジタル波形データは、時間と信号強度とが対応付けられた情報の集合である。
【0025】
第1デジタル波形データは、
図2に示す例には限定されない。例えば、第1デジタル波形データは、データ番号と、時間と、信号強度とがそれぞれ対応付けられた情報の集合を含んでいてもよい。この場合、第1デジタル波形データは、第1サンプリングレートの情報を含まなくてもよい。ただし、
図2に示す第1デジタル波形データであれば、各データ番号に対応する時間を記憶する必要がないので、データ量を削減できる点で好ましい。
【0026】
図3は、第2デジタル波形データの一例を示す図である。
図3(a)に示すように、第2デジタル波形データは、1からn(nは正の整数)までのデータ番号と、信号強度とが対応付けられた情報(データ)の集合を含んでいてもよい。また、
図3(b)に示すように、第2デジタル波形データは、第2サンプリングレートの情報を含んでいてもよい。これらの情報により、データ番号がn以下の任意の正の整数Yであるとき、(Y-1)に第2サンプリングレートを乗じて得られる時間だけ、データ番号=1の時点から経過していることが分かる。すなわち、
図3(a)及び
図3(b)に示す第2デジタル波形データは、時間と信号強度とが対応付けられた情報の集合である。
【0027】
第2デジタル波形データは、
図3に示す例には限定されない。例えば、第2デジタル波形データは、データ番号と、時間と、信号強度とがそれぞれ対応付けられた情報の集合を含んでいてもよい。この場合、第2デジタル波形データは、第2サンプリングレートの情報を含まなくてもよい。ただし、
図3に示す第2デジタル波形データであれば、各データ番号に対応する時間を記憶する必要がないので、データ量を削減できる点で好ましい。
【0028】
図4は、対応区間情報の一例を示す図である。
図4に示す例では、対応区間情報は、第2デジタル波形データの開始位置に対応する第1デジタル波形データのデータ番号の情報(
図4ではk)である。これにより、第1時間範囲における第2時間範囲の開始時点は、第1時間範囲のデータ番号1の時点から、(k-1)に第1サンプリングレートを乗じて得られる時間だけ経過した時点であることが分かる。また、第1時間範囲における第2時間範囲の終了時間は、第1時間範囲における第2時間範囲の開始時間から、(n-1)に第2サンプリングレートを乗じて得られる時間だけ経過した時点であることが分かる。
【0029】
図1に示すように、デジタル波形生成部22は、生成した第1デジタル波形データ、第2デジタル波形データ、及び対応区間情報を、出力部23に出力する。
【0030】
出力部23は、デジタル波形生成部22から入力される第1デジタル波形データ、第2デジタル波形データ、及び対応区間情報を、デジタル波形表示装置10に出力する。出力部23は、有線通信又は無線通信により、デジタル波形表示装置10に情報を送信可能なインターフェースを備える。
【0031】
操作受付部24は、ユーザ操作を受け付けて、当該ユーザ操作に基づく情報を制御部27に出力する。操作受付部24は、例えば、デジタル波形生成部22の筐体の表面に配置された、ボタン、ダイヤル、又は、表示部26に一体的に設けられるタッチパネル等の入力インターフェースを備える。
【0032】
記憶部25は、例えば、デジタル波形生成部22が用いる第1サンプリングレート、第2サンプリングレート等の設定情報等、種々の情報及びプログラムを記憶する。記憶部25は、デジタル波形生成部22が生成した第1デジタル波形データ、第2デジタル波形データ、及び対応区間情報等を記憶してもよい。記憶部25は、任意の記憶装置で構成される。
【0033】
表示部26は、例えば、第1デジタル波形及び第2デジタル波形を表示する。表示部26は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示デバイスを備える。
【0034】
制御部27は、例えば記憶部25に記憶された種々の情報及びプログラムのうち、所定の情報及びプログラムを読み込むことにより所定の機能を実現するプロセッサを備え、デジタル波形生成装置20の各構成部を制御する。
【0035】
特徴検出部28は、第2サンプリングレートで生成されたデジタル波形データの特徴位置を検出する。具体的には、特徴検出部28は、デジタル波形データの特徴位置として、例えばエッジを検出するエッジ検出部である。例えば、特徴検出部28は、デジタル波形データに含まれるデータのうち、信号強度が直前の信号強度に対して所定値以上変化したデータ位置でエッジが検出されたと判定してもよい。特徴検出部28は、プロセッサ及びメモリ等で構成される。特徴検出部28は、制御部27と共通の部材で構成されていてもよい。
【0036】
デジタル波形表示装置10は、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータで構成される。デジタル波形表示装置10は、取得部11と、表示部12と、記憶部13と、操作受付部14と、制御部15と、を備える。
【0037】
取得部11は、デジタル波形生成装置20の出力部23から出力される第1デジタル波形データ、第2デジタル波形データ、及び対応区間情報を取得する。取得部11は、有線通信又は無線通信により、デジタル波形生成装置20からの情報を受信可能なインターフェースを備える。
【0038】
表示部12は、例えば、第1デジタル波形データに基づく波形の第2時間範囲に対応する区間を第2デジタル波形データに基づく波形で置換した合成波形を表示する。合成波形の詳細については後述する。表示部12は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示デバイスを備える。
【0039】
記憶部13は、例えば、種々の情報及びプログラムを記憶する。記憶部13は、取得部11が取得した第1デジタル波形データ、第2デジタル波形データ、及び対応区間情報等を記憶してもよい。記憶部13は、任意の記憶装置で構成される。
【0040】
操作受付部14は、ユーザ操作を受け付けて、当該ユーザ操作に基づく情報を制御部15に出力する。操作受付部14は、例えば、キーボード、マウス、又は、表示部12に一体的に設けられるタッチパネル等の入力インターフェースを備える。
【0041】
制御部15は、例えば、取得部11が取得した種々の情報と、記憶部13が記憶した種々の情報及びプログラムとのうち、所定の情報及びプログラムを読み込むことにより所定の機能を実現するプロセッサを備え、デジタル波形表示装置10の各構成部を制御する。具体的には、制御部15は、例えば、取得部11が取得した第1デジタル波形データ、第2デジタル波形データ、及び対応区間情報と、記憶部13が記憶した合成波形表示処理用のプログラムとに基づいて、合成波形表示処理を実行する。合成波形表示処理の詳細については後述する。
【0042】
図5は、デジタル波形表示装置10が実行する合成波形表示処理を説明するフローチャートである。
図5に示すように、まず、デジタル波形表示装置10は、第1デジタル波形データを取得する(ステップS1)。また、デジタル波形表示装置10は、第2デジタル波形データを取得する(ステップS2)。また、デジタル波形表示装置10は、対応区間情報を取得する(ステップS3)。本実施形態のデジタル波形表示装置10は、取得部11を用いて、デジタル波形生成装置20の出力部23から出力される第1デジタル波形データ、第2デジタル波形データ、及び対応区間情報を取得する。デジタル波形表示装置10がステップS1、ステップS2、及びステップS3を実行する順番は特に限定されず、2以上のステップを同時に実行してもよい。また、第1デジタル波形データ、第2デジタル波形データ、及び対応区間情報は、予め記憶部13に記憶されていてもよく、その場合、制御部15が、記憶部13に記憶された第1デジタル波形データ、第2デジタル波形データ、及び対応区間情報を読み出して取得する。
【0043】
次に、デジタル波形表示装置10は、制御部15を用いて、合成波形を生成する(ステップS4)。
図6及び
図7は、
図5に示す合成波形表示処理のステップS4を説明するための図である。具体的には、
図6は、第1デジタル波形データに基づく波形(以下、単に「第1デジタル波形」とも記載する。)を示す図である。
図7は、第2デジタル波形データに基づく波形(以下、単に「第2デジタル波形」とも記載する。)を示す図である。
図6及び
図7において、横軸は時間を示し、縦軸は信号強度を示す。
図6において、第1デジタル波形の信号強度と時間との対応情報に対応するデータ点を黒丸で示す。
図7において、第2デジタル波形の信号強度と時間との対応情報に対応するデータ点を黒丸で示す。
図6及び
図7において、実際の測定データに対応する曲線を実線で示し、データ点に対応する近似曲線を破線で示す。
【0044】
図6に示すように、ステップS4(
図5参照)において、デジタル波形表示装置10の制御部15は、対応区間情報に基づいて、第1デジタル波形の第1時間範囲T1のうち、第2時間範囲T2に相当する区間を特定する。そして、デジタル波形表示装置10の制御部15は、
図6に示す第1デジタル波形の第2時間範囲T2に相当する区間を、
図7に示す第2デジタル波形で置換する。これにより、デジタル波形表示装置10の制御部15は、合成波形を生成する。
【0045】
デジタル波形表示装置10は、制御部15を用いて、表示部12に合成波形を表示させる(ステップS5)。
図8は、合成波形表示処理により表示される合成波形の一例を示す図である。
図8に示すように、表示部12には、第1デジタル波形の第2時間範囲T2に相当する区間を第2デジタル波形で置換した合成波形を表示することができる。
【0046】
このように、本実施形態のデジタル波形表示装置10は、広い時間範囲に亘る測定データに対応する第1デジタル波形と、特定区間における測定データに対応する第2デジタル波形とを、1つの合成波形として表示することができる。よって、本実施形態のデジタル波形表示装置10によれば、広い時間範囲に亘る測定データの傾向と、特定区間における測定データの詳細とを、簡便に確認することができる。
【0047】
図5に示す合成波形表示処理においては、制御部15は、ステップS4で合成波形を予め生成した後で、ステップS5で合成波形を表示するとして説明した。しかし、制御部15は、ステップS4を実行せずに、ステップS5を実行してもよい。すなわち、制御部15は、表示部12に第1デジタル波形を表示させ、第1デジタル波形の第2時間範囲に対応する区間に、第1デジタル波形よりも上層のレイヤーに第2デジタル波形を表示させることで、合成波形が視認されるように表示制御してもよい。
【0048】
また、1つの第1デジタル波形データに対して、複数の第2デジタル波形データが対応していても良い。その場合、対応区間情報は、第1時間範囲のうち、複数の第2デジタル波形データそれぞれの第2時間範囲が相当する区間を示す情報である。
【0049】
本開示は、上述した実施形態で特定された構成に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、各構成、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成やステップなどを1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【0050】
また、デジタル波形表示装置10は、デジタル波形生成装置20と一体に構成されていてもよい。その場合、デジタル波形表示装置10とデジタル波形生成装置20とで共通する構成は、適宜同一の部材としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示は、デジタル波形表示装置、デジタル波形表示システム、デジタル波形表示方法、及びプログラムに関する。
【符号の説明】
【0052】
1:デジタル波形表示システム
10:デジタル波形表示装置
11:取得部
12:表示部
13:記憶部
14:操作受付部
15:制御部
20:デジタル波形生成装置
21:測定データ取得部
22:デジタル波形生成部
23:出力部
24:特徴検出部
25:操作受付部
26:記憶部
27:表示部
28:制御部
91:低速デジタル波形
92:高速デジタル波形
93:マーカー
94:特定区間
T1:第1時間範囲
T2:第2時間範囲