IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理研ビタミン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】ゲル状食品用食感改良剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/10 20160101AFI20220920BHJP
   A23L 9/10 20160101ALN20220920BHJP
   A23L 15/00 20160101ALN20220920BHJP
【FI】
A23L29/10
A23L9/10
A23L15/00 D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018173311
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020043786
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤本 武
(72)【発明者】
【氏名】大熊 珠美
(72)【発明者】
【氏名】萩原 立春
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-050494(JP,A)
【文献】特開2014-060987(JP,A)
【文献】特開2009-297024(JP,A)
【文献】特表平10-501696(JP,A)
【文献】特開2004-261063(JP,A)
【文献】特開2002-262787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成脂肪酸が炭素数16~18の飽和脂肪酸であるグリセリンコハク酸脂肪酸エステル及び構成脂肪酸が炭素数16~18の飽和脂肪酸であるグリセリンモノ脂肪酸エステルを含有するゲル状食品用食感改良剤であって、該剤が、下記条件(A)及び(B)を満たすことを特徴とするゲル状食品用食感改良剤。
(A)酸価が85mgKOH/g以下
(B)該剤100質量%中のグリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量が35質量%以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状食品に用いる食感改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリン、茶碗蒸し等のゲル状食品は、その味もさることながら、食感も消費者が重視する点である。特に、口に含んで咀嚼した際にほろほろと崩れやすい、崩壊感のある食感は消費者に好まれている。
【0003】
ゲル状食品の食感を改良する方法としては、例えば、該ゲル状食品に対し食感改良剤として食品用乳化剤を添加する方法が知られており、具体的には、卵成分及び/又は乳清たんぱく質が配合され、かつハイドロコロイドでゲル化させてなるゲル状食品であって、さらに有機酸モノグリセリド及びHLBが10以上のポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されてなることを特徴とするゲル状食品(特許文献1)、卵黄と、砂糖と、乳たんぱく質と、グリセリン脂肪酸エステルと、クエン酸塩および/またはリン酸塩と、増粘多糖類を含む第1の原料液を、加熱してゲル化させた後、破砕して破砕物を得、該破砕物に、冷却によりゲル化するハイドロコロイドを添加して第2の原料液を得、この第2の原料液を冷却してゲル化させることを特徴とするゲル状食品の製造方法(特許文献2)、抹茶と乳化剤Aと水を含有する液を混合・攪拌して抹茶分散液を得る工程と、油脂と乳化剤Bと水を含有する液を混合・攪拌して油脂分散液を得る工程と、抹茶分散液と油脂分散液とゲル化剤とを混合して、ゲル化剤の融解温度より高い温度で加熱した後、ゲル化温度未満で静置冷却するゲル化工程とを有することを特徴とする抹茶プリンの製造方法(特許文献3)等が提案されている。
【0004】
しかし、いずれも崩壊感のある食感を実現するには不十分であることから、崩壊感のある食感をゲル状食品に付与できる方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-262787号公報
【文献】特開2003-189810号公報
【文献】特開2010-75157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ゲル状食品に添加することにより、該ゲル状食品に崩壊感のある食感を付与できるゲル状食品用食感改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の条件を満たす食品用乳化剤をゲル状食品に添加することで、該ゲル状食品に崩壊感のある食感が付与されることを見出し、この知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記〔1〕及び〔2〕からなっている。
〔1〕グリセリンコハク酸脂肪酸エステル及びグリセリンモノ脂肪酸エステルを含有するゲル状食品用食感改良剤であって、該剤が、下記条件(A)及び(B)を満たすことを特徴とするゲル状食品用食感改良剤。
(A)酸価が85mgKOH/g以下
(B)該剤100質量%中のグリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量が35質量%以上
〔2〕上記〔1〕に記載の食感改良剤を含有することを特徴とするゲル状食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明のゲル状食品用食感改良剤(以下単に「本発明の食感改良剤」という)は、ゲル状食品に添加することで、該ゲル状食品に崩壊感のある食感を付与することができる。崩壊感のある食感とは、口に含んで咀嚼した際にほろほろと崩れやすい食感であり、口溶けの良い食感と言い換えることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の食感改良剤は、有効成分として食品用乳化剤であるグリセリンコハク酸脂肪酸
エステル及びグリセリンモノ脂肪酸エステルを含有し、且つ、以下に述べる条件(A)及
び(B)を満たすものである。
【0011】
本発明で用いられるグリセリンコハク酸脂肪酸エステルは、グリセリンが有するヒドロ
キシ基のいずれかにコハク酸及び脂肪酸がそれぞれ少なくとも1つエステル結合した化合
物であり、通常、グリセリンモノ脂肪酸エステルと無水コハク酸(又はコハク酸)との反
応、グリセリンとコハク酸と脂肪酸との反応等、自体公知の方法により製造される。
【0012】
グリセリンコハク酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を起源
とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数6~24の直鎖の飽和脂肪酸(例
えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸
、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等)又は不飽和脂肪酸(例え
ば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等)等が挙げられる。これらの中でも、炭素数16~18の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~18の飽和脂肪酸が特に好ましい。グリセリンコハク酸脂肪酸エステルは、これら脂肪酸の1種類のみを構成脂肪酸とするものであっても、2種類以上を構成脂肪酸とするものであってもよい。
【0013】
グリセリンコハク酸脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムB-10(商品名;理研ビタミン社製)、ポエムB-30(商品名;理研ビタミン社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0014】
本発明で用いられるグリセリンモノ脂肪酸エステルは、グリセリンが有するヒドロキシ
基のいずれか1つに脂肪酸がエステル結合した、エステル結合数が1の化合物であり、通
常、グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応、グリセリンと油脂とのエステル交換反応等
、自体公知の方法により製造される。
【0015】
グリセリンモノ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を起源とす
る脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数6~24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば
、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ス
テアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等)又は不飽和脂肪酸(例えば、
パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リ
ノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等)等が挙げられる。これら
の中でも、炭素数16~18の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~18の飽
和脂肪酸が特に好ましい。グリセリンモノ酸脂肪酸エステルは、これら脂肪酸の1種類のみを構成脂肪酸とするものであっても、2種類以上を構成脂肪酸とするものであってもよい。
【0016】
グリセリンモノ脂肪酸エステルとしては、例えば、エマルジーP-100(商品名;グ
リセリンモノ脂肪酸エステルの含有量97質量%;理研ビタミン社製)、エマルジーMS
(商品名;グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量98質量%;理研ビタミン社製)等が
商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0017】
[条件(A)について]
本発明の食感改良剤における条件(A)は、該剤の酸価が85mgKOH/g以下、好ましくは、50mgKOH/g以上85mgKOH/g以下である。該酸価は、「第8版 食品添加物公定書」(日本食品添加物協会)の「40.油脂類試験法」に記載の方法に準じて測定される。
【0018】
[条件(B)について]
本発明の食感改良剤における条件(B)は、該剤100質量%中のグリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量が35質量%以上、好ましくは、35質量%以上55質量%以下である。
【0019】
前記グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は、HPLC(高速液体クロマトグラフィ
ー)で分析することにより求められる。具体的には、以下に示す分析条件にて試料を分析
し、分析後、データ処理ソフトウェアによりクロマトグラム上に記録された被検試料の各
成分に対応するピークについて、積分計を用いてピーク面積を測定する。測定されたピー
ク面積に基づいて、面積百分率として各成分の含有量を求めることができる。HPLC分
析条件を以下に示す。
【0020】
<HPLC分析条件>
装置:島津高速液体クロマトグラフ
データ処理ソフトウェア(型式:LCsolution ver.1.0;島津製作所社
製)
ポンプ(型式:LC-20AD;島津製作所社製)
カラムオーブン(型式:CTO-20A;島津製作所社製)
オートサンプラ(型式:SIL-20A;島津製作所社製)
検出器:RI検出器(型式:RID-10A;島津製作所社製)
カラム:GPCカラム(型式:SHODEX KF-801;昭和電工社製)
カラム:GPCカラム(型式:SHODEX KF-802;昭和電工社製)
2本連結
移動相:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.01g/1mL THF
サンプル注入量:20μL(in THF)
【0021】
一方、本発明の食感改良剤中のグリセリンコハク酸脂肪酸エステルの含有量は、該剤1
00質量%から前記グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量を除いた残余であれば特に制
限はないが、好ましくは45質量%以上65質量%以下である。この含有量は、前記グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量と同様にHPLCで分析することにより求められる。
【0022】
本発明の食感改良剤の製造方法に特に制限はなく、例えば、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルとグリセリンモノ脂肪酸エステルとの混合により製造してもよいが、化学反応により製造することが好ましい。
【0023】
本発明の食感改良剤を化学反応により製造する場合、一般的なグリセリンコハク酸脂肪酸エステルの製造方法に準ずる方法で製造することができる。即ち、本発明の食感改良剤は、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルを製造する際と同様の化学反応において、反応生成物がグリセリンコハク酸脂肪酸エステルを含有するとともに、本発明の条件(A)及び(B)を満たすものとなるように反応条件等を適宜調整することで製造することができる。例えば、その好ましい製造方法の概略は以下のとおりである。
【0024】
即ち、攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板等を備えた通常の反応容器にグリセリンモ
ノ脂肪酸エステル及び無水コハク酸を89/11~83/17の質量比で仕込み、必要に
応じてアルカリ触媒を添加し、例えば90~130℃、好ましくは94~110℃で15
~180分間、好ましくは30~120分間加熱してエステル化反応を行い、本発明の条
件(A)及び(B)を満たす反応物を得る。なお、得られた反応物が本発明の条件(A)
及び(B)を満たしていない場合、該反応物にさらにグリセリンコハク酸脂肪酸エステル
又はグリセリンモノ脂肪酸エステルを添加して溶融及び混合することにより、本発明の条
件(A)及び(B)を満たすように調整してもよい。
【0025】
また、本発明の食感改良剤をグリセリンコハク酸脂肪酸エステルとグリセリンモノ脂肪酸エステルとの混合により製造する場合、市販の、又は予め別々に製造したグリセリンコハク酸脂肪酸エステルとグリセリンモノ脂肪酸エステルとを必要に応じて融点以上に加熱し、溶融及び混合して、本発明の条件(A)及び(B)を満たす混合物を製造すればよい。
【0026】
本発明の食感改良剤は、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル及びグリセリンモノ脂肪酸エステル以外に、本発明の効果を妨げない範囲で他の任意の成分を含有していてもよい。
そのような成分としては、例えば、カゼインナトリウム、デキストリン、結晶セルロース
等の賦形剤、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル及びグリセリンモノ脂肪酸エステル以外
の食品用乳化剤等が挙げられる。
【0027】
本発明の食感改良剤は、ゲル状食品に添加して使用することができる。該ゲル状食品とは、原材料のゲル化能によってゲル状に固めて製造される食品である。ゲル状食品の種類に特に制限はなく、例えば、プリン、茶碗蒸し、ミルク茶碗蒸し(乳成分含有茶碗蒸し)ミルクゼリー(乳成分含有ゼリー)、ムース、ババロア、卵豆腐、杏仁豆腐、レアチーズケーキ等が挙げられる。
【0028】
本発明の食感改良剤を前記ゲル状食品に添加して使用する場合、その添加方法に特に制限はなく、例えば、ゲル状食品の製造時に原材料の一部として添加してもよく、常法により製造されたゲル状食品に対して後から添加してもよい。
【0029】
本発明の食感改良剤のゲル状食品に対する添加量は、該ゲル状食品の種類等により異なり一様ではないが、例えば、該ゲル状食品100質量部に対し、通常0.001~1.0質量部、好ましくは0.01~0.3質量部である。
【0030】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。
【実施例
【0031】
<食感改良剤の製造>
[製造例1]
グリセリンモノ脂肪酸エステル(商品名:エマルジーP-100;グリセリンモノ脂肪
酸エステルの含有量97質量%;理研ビタミン社製)850g、無水コハク酸(商品名:
リカシッド;新日本理化社製)150g、炭酸ナトリウム(高杉製薬社製)1.49gを
四ツ口フラスコに仕込み、112℃で30分間エステル化反応を行わせた。得られた反応
物を冷却し、食感改良剤(試作品1)を得た。該剤を分析したところ、酸価は約83mgKOH/g、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は約37質量%、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルの含有量は約61質量%であった。
【0032】
[製造例2]
グリセリンモノ脂肪酸エステル(商品名:エマルジーP-100;グリセリンモノ脂肪
酸エステルの含有量97質量%;理研ビタミン社製)770g、無水コハク酸(商品名:
リカシッド;新日本理化社製)110g、炭酸ナトリウム(高杉製薬社製)4.68gを
四ツ口フラスコに仕込み、110℃で30分間エステル化反応を行わせた。得られた反応
物にグリセリン脂肪酸エステル(商品名:エマルジーP-100;グリセリンモノ脂肪酸
エステルの含有量97質量%;理研ビタミン社製)120gを添加し、90℃で30分間
撹拌した後冷却し、食感改良剤(試作品2)を得た。該剤を分析したところ、酸価は約56mgKOH/g、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は約49質量%、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルの含有量は約50質量%であった。
【0033】
[製造例3]
グリセリンモノ脂肪酸エステル(商品名:エマルジーP-100;グリセリンモノ脂肪
酸エステルの含有量97質量%;理研ビタミン社製)420g、無水コハク酸(商品名:
リカシッド;新日本理化社製)60g、炭酸ナトリウム(高杉製薬社製)3.08gを四
ツ口フラスコに仕込み、110℃で30分間エステル化反応を行わせた。得られた反応物
にグリセリン脂肪酸エステル(商品名:エマルジーP-100;グリセリンモノ脂肪酸エ
ステルの含有量97質量%;理研ビタミン社製)520gを添加し、88℃で30分間撹
拌した後冷却し、食感改良剤(試作品3)を得た。該剤を分析したところ、酸価は約31mgKOH/g、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は約70質量%、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルの含有量は約29質量%であった。
【0034】
[製造例4]
グリセリンモノ脂肪酸エステル(商品名:エマルジーP-100;グリセリンモノ脂肪
酸エステルの含有量97質量%;理研ビタミン社製)835g、無水コハク酸(商品名:
リカシッド;新日本理化社製)165gを四ツ口フラスコに仕込み、115℃で30分間
エステル化反応を行わせた。得られた反応物を冷却し、食感改良剤(試作品4)を得た。該剤を分析したところ、酸価は約93mgKOH/g、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は約30質量%、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルの含有量は約68質量%であった。
【0035】
ここで、製造例1~4で得られた食感改良剤(試作品1~4)について、酸価、グリセリンモノ脂肪酸エステル及びグリセリンコハク酸脂肪酸エステルの含有量を表1に示す。また、後述の「食感改良効果の評価」では、食感改良剤(試作品1~4)の他に、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル及びグリセリンモノ脂肪酸エステルを含有する市販の食品用乳化剤製剤についても、食感改良剤(市販品)として評価を行っている。食感改良剤(市販品)について、酸価、グリセリンモノ脂肪酸エステル及びグリセリンコハク酸脂肪酸エステルの含有量を表1に併せて示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1から明らかなとおり、食感改良剤(試作品1~3)は本発明の条件(A)及び(B)をいずれも満たす実施例であり、食感改良剤(試作品4、市販品)は本発明の条件(A)及び(B)をいずれも満たさない比較例である。
【0038】
<食感改良効果の評価>
[プリンによる評価]
(1)プリンの調製
500mL容ビーカーに、脱脂粉乳(商品名;よつ葉乳業社製)21g、グラニュー糖(商品名:T.T.G.Aグラニュー糖;東洋精糖社製)24g、生クリーム(商品名:特選北海道純生クリーム35;乳脂肪35%;タカナシ乳業社製)19.29g、寒天(商品名:かんてんクック;伊那食品工業社製)1.2g、ゼラチン(商品名:クックゼラチン;森永製菓社製)0.9g、精製水233.61g、食感改良剤(試作品1~4、市販品)のいずれかを0.15g入れ、ウォーターバス(型式:HWA-50D;アズワン社製)を用いて加熱しながらスリーワンモーター(型式:BL600;新東科学社製)を用いて350rpmで撹拌し、80℃に達温後、さらに10分間撹拌した。次に、均質化処理機(型式:ホモミクサーMARKII 2.5型;プライミクス社製)を用いて、10,000rpmで3分間均質化した。最後に、該ビーカーを、水を入れたボウルに入れて20分間冷却後、冷蔵庫(5℃)で12時間冷却し、プリン1~5を得た。また食感改良剤を添加しない以外は同様に処理して、プリン6を得た。
【0039】
(2)官能評価
前記プリン1~5について、食感(崩壊感)に関する官能評価を行った。評価は前記プリン6を対照とし、表2に示す評価基準に従って10名のパネラーで行い、結果は10名の評点の平均値を求め、下記基準にて記号化した。結果を表3に示す。
〔記号化基準〕
◎:平均値3.5以上
○:平均値2.5以上、3.5未満
△:平均値1.5以上、2.5未満
×:平均値1.5未満
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
表3の結果から明らかなように、本発明の実施例である食感改良剤(試作品1~3)を添加したプリン1~3は、対照と比較して崩壊感が付与されていた。一方、比較例の食感改良剤(試作品4、市販品)を添加したプリン4及び5は、崩壊感が不十分であった。
【0043】
[茶碗蒸しによる評価]
(1)茶碗蒸しの調製
1000mL容ビーカーに、卵液90g、だし(商品名:割烹白だし;ヤマキ社製)15g、しょうゆ7.5g、食感改良剤(試作品2)の0.2質量%水溶液150g、精製水37.5gを入れ、ウォーターバス(型式:HWA-50D;アズワン社製)を用いて加熱しながら、スリーワンモーター(型式:BL600;新東科学社製)を用いて300rpmで撹拌し、60℃に達温後、均質化処理機(型式:ホモミクサーMARKII 2.5型;プライミクス社製)を用いて、10,000rpmで3分間均質化した。次に、該ビーカーを、水を入れたボウルに入れて20分間冷却し、その後50mL容ビーカーに30gずつ充填し、アルミ箔でふたをした後、蒸し器を用いて8分間蒸した。最後に、冷蔵庫(5℃)で1時間冷却し、茶碗蒸し1を得た。また食感改良剤を添加しない以外は同様に処理して、茶碗蒸し2を得た。
【0044】
(2)官能評価
前記茶碗蒸し1について、食感(崩壊感)に関する官能評価を行った。評価は前記茶碗蒸し2を対照とし、表4に示す評価基準に従って10名のパネラーで行い、結果は10名の評点の平均値を求め、下記基準にて記号化した。結果を表5に示す。
〔記号化基準〕
◎:平均値3.5以上
○:平均値2.5以上、3.5未満
△:平均値1.5以上、2.5未満
×:平均値1.5未満
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
表5の結果から明らかなように、本発明の実施例である食感改良剤(試作品2)を添加した茶碗蒸し1は、対照と比較して崩壊感が付与されていた。