(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】ロボットハンド用指構造、ロボットハンド及びロボットアーム
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
B25J15/08 J
(21)【出願番号】P 2018192090
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-081538(JP,A)
【文献】特開2012-189067(JP,A)
【文献】特開2018-133237(JP,A)
【文献】特表2016-528483(JP,A)
【文献】特開2009-066683(JP,A)
【文献】特開2018-001359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈伸可能な指関節部を少なくとも一つ有する複数本の指本体を有し、前記指本体によって対象物を把持可能なロボットハンド用指構造であって、
前記指関節部を駆動する関節駆動装置は、一個の前記関節駆動装置に対して前記関節駆動装置の電力供給用である少なくとも一個のリチウムイオン電池が
関節駆動制御部を介して接続され、前記リチウムイオン電池が対応する前記指関節部に隣接して配置され
、
前記リチウムイオン電池と前記関節駆動制御部とは、フレキシブル基板上に積層されているロボットハンド用指構造。
【請求項2】
請求項1記載のロボットハンド用指構造において、
前記リチウムイオン電池を構成する正極活物質層が正極活物質粒子の非結着体であり、前記リチウムイオン電池を構成する負極活物質層が負極活物質粒子の非結着体であるロボットハンド用指構造。
【請求項3】
請求項2記載のロボットハンド用指構造において、
前記リチウムイオン電池は前記指関節部の屈曲方向内側の前記指本体の表面に配置され
ているロボットハンド用指構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のロボットハンド用指構造において、
さらに前記関節駆動装置の動作を制御する感圧センサを有し、前記感圧センサが前記リチウムイオン電池に接続されたロボットハンド用指構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のロボットハンド用指構造を備えたロボットハンド。
【請求項6】
請求項5記載のロボットハンドを備えたロボットアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屈伸可能な指関節部を少なくとも一つ有する複数本の指本体を有し、この指本体によって対象物を把持可能なロボットハンド用指構造、ロボットハンド及びロボットアームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数体の指本体を有し、対象物が把持可能なロボットハンドは周知である(例えば特許文献1参照)。このようなロボットハンドにおいて、各々の指本体には、この指本体を例えば屈曲させて複数の指本体により対象物を把持させるためのアクチュエータやモータが設けられていることがある。そして、このアクチュエータ等が電動式の場合、このアクチュエータ等に駆動電力を供給する電源が必要となる。
【0003】
ロボットハンドのアクチュエータ等に駆動電力を供給する電源は、ロボットハンドの軽量化を図る目的から、このロボットハンドとは別体の、ロボットハンドの制御装置と一体にまとめられて設けられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2004/000508号
【文献】特開2001-38987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アクチュエータ等へ駆動電力を供給する電源がロボットハンドと別体に設けられ、かつ、一箇所にまとめられていると、各々のアクチュエータ等への駆動電力供給用の電線として長いものが必要となり、また電源からアクチュエータまでの間で外力によって電線が切断されることを避けるために、この電線として外力に駆動電力に耐えうるだけの太いものが必要となり、ロボットハンドの円滑な動作に支障を与える可能性があった。
【0006】
また、アクチュエータ等の起動時には大電流となる突入電流が流れることがあり、上述した駆動電力供給用の電線もこの突入電流を考慮した大電流に耐える仕様のものであることが要求される。
【0007】
例えば、突入電流を考慮したモータ駆動回路として、モータを駆動する主電源部と充電可能な補助電源部とを有し、モータ始動時の突入電流による電流の増加分を補助電源部の放電で補うモータ駆動回路が提案されているが(特許文献2参照)、かかる技術であっても、アクチュエータ等へ駆動電力を供給するための主電源部からの電線は長くなり、外力の影響を受け易いために細線化することは困難である。
【0008】
そこで、この発明は、電力供給源を分散配置することで、関節駆動装置を制御するための信号線の短線化と細線化を可能とするロボットハンド用指構造、ロボットハンド及びロボットアームを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、この発明は、屈伸可能な指関節部を少なくとも一つ有する複数本の指本体を有し、指本体によって対象物が把持可能なロボットハンド用指構造において、指関節部を駆動する関節駆動装置は、一個の関節駆動装置に対して関節駆動装置の電力供給用である少なくとも一個のリチウムイオン電池が接続され、リチウムイオン電池が対応する指関節部に隣接して配置されている。
【0010】
ここで、リチウムイオン電池を構成する正極活物質層が正極活物質粒子の非結着体であり、リチウムイオン電池を構成する負極活物質層が負極活物質粒子の非結着体であることが好ましい。
【0011】
また、リチウムイオン電池は指関節部の屈曲方向内側の指本体表面に配置されていることが好ましい。
【0012】
さらに、関節駆動装置の動作を制御する感圧センサを有し、感圧センサがリチウムイオン電池に接続されていることが好ましい。
【0013】
さらに、この目的を達成するため、この発明は、上述の構成を有するロボットハンド用指構造を備えたロボットハンドを設け、そして、上述の構成を有するロボットハンドを備えたロボットアームを設けた。
【発明の効果】
【0014】
このような本発明のロボットハンド用指構造は、一個の関節駆動装置に対して少なくとも一個のリチウムイオン電池が接続され、リチウムイオン電池が対応する指関節部に隣接して配置されている。すなわち、電力供給源たるリチウムイオン電池は一箇所にまとめられることなく、関節駆動装置ごとに分散配置されている。従って、関節駆動装置とリチウムイオン電池とを接続する電力供給用の電線と、関節駆動装置制御用の信号線とを別系統化することができ、これにより、関節駆動装置を制御するための信号線の短線化と細線化とを図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態であるロボットハンドの概略構成を示す一部破断斜視図である。
【
図2】第1実施形態のロボットハンドの指本体を示す部分断面図である。
【
図3】第1実施形態のロボットハンドに用いられるリチウムイオン電池を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態のロボットハンドに用いられるリチウムイオン電池を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態のロボットハンドに用いられるアクチュエータの概略構成を示す斜視図である。
【
図6】第1実施形態におけるアクチュエータを示す一部破断斜視図である。
【
図7】第1実施形態のロボットハンドの回路構成の概略を示す図である。
【
図8】本発明の第2実施形態であるロボットハンドに用いられる電源の一例を示す縦断面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態であるロボットハンドに用いられる電源の一例を示す横断面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態であるロボットハンドに用いられる電源の他の例を示す横断面図である。
【
図11】第2実施形態のロボットハンドの回路構成の概略を示す図である。
【
図12】第2実施形態のロボットハンドに用いられるリチウムイオン電池を示す一部破断斜視図である。
【
図13】第2実施形態におけるリチウムイオン電池の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態であるロボットハンドについて説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明であるロボットハンド用指構造が適用された第1実施形態であるロボットハンドの概略構成を示す一部破断斜視図である。
図1において、本実施形態のロボットハンドAは、基部1の先端に複数(図示例では5本)の指本体2が設けられ、これら指本体2が、指本体2により囲まれる空間の内方に向けて詳細構成を後述するアクチュエータ(関節駆動装置)3により屈伸自在に構成されることで、対象物Wが把持可能とされている。
【0018】
指本体2は、
図1及び
図2に示すように、概略板状に形成された複数の骨部材4を有し、それぞれの骨部材4の基部1側の端部には、骨部材4の長手方向に直交する回転軸を備え、隣り合う骨部材4、または骨部材4と基部1とを連結する指関節部5が形成されている。
【0019】
そして、アクチュエータ3は、指関節部5により連結されている一対の骨部材4または骨部材4と基部1とを跨ぐように設けられ、一方の骨部材4を他方の骨部材4または基部1に対して指関節部5の回転軸に沿って相対的に回動自在にしている。これにより、指関節部5が屈伸自在に構成されている。
【0020】
本実施形態のロボットハンドAに用いられる関節駆動装置であるアクチュエータの詳細について、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、本発明の第1実施形態であるロボットハンドに用いられるアクチュエータの概略構成を示す斜視図、
図6は第1実施形態におけるアクチュエータを示す一部破断斜視図である。
【0021】
本実施形態のアクチュエータ3は、一方の骨部材4の一面、より正確には対象物Wが把持される側と反対側の面(
図5及び
図6において上面)に設けられたギアボックス6と、このギア比を駆動するモータ7と、他方の骨部材4の
図5及び
図6において上面に設けられたナット部8と、これらギアボックス6とナット部8との間に架け渡された一対のコイル状スプリング9a、9bとを有する。
【0022】
図6に示すように、ギアボックス6の内部には、互いに噛合する一対の平歯車10a、10bが設けられており、一方の平歯車10aの中心部にはモータ7の回転駆動軸(図略)が嵌め込まれている一方、他方の平歯車10bは図略の回転軸に軸支されている。これにより、モータ7の回転駆動力が平歯車10a、10bに伝達され、これら平歯車10a、10bが互いに逆方向に回転駆動される。
【0023】
一対のコイル状スプリング9a、9bは、その巻き方向が互いに逆方向にされている。これらコイル状スプリング9a、9bの一端は、平歯車10a、10bから突設された固定部11a、11bに巻回されて固定され、他端部はナット部8に設けられた一対の貫通孔8a、8bに挿通されている。また、ナット部8には、これら貫通孔8a、8bの内面から内方に突出する突起部8cがそれぞれの貫通孔8a、8bに一対(
図6では1つの突起部8cのみ図示している)形成され、この突起部8cはコイル状スプリング9aを構成する線状部材の間に嵌合されている。
【0024】
以上の構成により、モータ7を回転駆動すると平歯車10a、10bを介してコイル状スプリング9a、9bが逆方向に回転駆動され、そして、このコイル状スプリング9a、9bの回転によりギアボックス6とナット部8との間の距離が離隔または近接させられる。これにより、指関節部5を中心として一方の骨部材4が他方の骨部材4または基部1に対して回動自在とされ、よって、指関節部5が屈伸自在とされる。
【0025】
図1及び
図2に戻って、本実施形態のロボットハンドAの骨部材4の他方の面、より正確には、指関節部5に隣接した位置であって、その屈曲方向の内側の指本体2の表面であり対象物Wが把持される側の面(
図2において下面)には、指関節部5を駆動するアクチュエータ3への電力供給用としての略平板状のリチウムイオン電池Lが設けられている。
【0026】
本実施形態のロボットハンドAに用いられるリチウムイオン電池Lの詳細について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は第1実施形態のロボットハンドに用いられるリチウムイオン電池Lを示す断面図、
図4は第1実施形態のリチウムイオン電池Lを示す斜視図である。
【0027】
これら図において、本実施形態のリチウムイオン電池Lは、リチウムイオン電池Lの外殻をなす、可撓性を有する容器30内に外形略平板状の単電池21が直列に複数積層された積層型電池モジュール31が収納されて構成されている。
【0028】
単電池21は、
図3に詳細を示すように、略平板状の樹脂集電体である正極集電体27の表面に正極電極活物質と電解液とを含む略平板状の正極活物質層25が形成された正極22と、同様に略平板状の樹脂集電体である負極集電体28の表面に負極電極活物質と電解液とを含む略平板状の負極活物質層26が形成された負極23とが、同様に略平板状のセパレータ24を介して積層されて構成され、全体として略平板状に形成されている。これにより、対向する正極集電体27及び負極集電体28を図中上面及び下面にそれぞれ有する単電池21が構成される。
【0029】
正極活物質層25及び負極活物質層26は、正極活物質又は負極活物質粒子と電解液とを含む正極電極組成物及び負極電極組成物からなり、正極活物質層25及び負極活物質層26は、それぞれ正極活物質又は負極活物質粒子の非結着体であることが好ましい。なお、非結着体とは正極活物質粒子同士及び負極活物質粒子同士が正極活物質層25及び負極活物質層26中で不可逆的に接着固定化されていないことを意味する。そして非結着体である正極活物質層25及び負極活物質層26は、スラリー状、ゲル状物質又は粉体に近い状態になることもある。
【0030】
図3に最もよく示されるように、正極集電体27及び負極集電体28は、単電池21の端部に形成されたシール部材29により所定間隔をもって対向するように位置決めされている。また、セパレータ24の端部がこのシール部材29内に埋め込まれることで、このセパレータ24が支持されるとともに、セパレータ24と正極集電体27及び負極集電体28との位置関係が定められている。
【0031】
正極集電体27とセパレータ24との間の間隔、及び、負極集電体28とセパレータ24との間の間隔はリチウムイオン電池Lの容量に応じて調整され、これら正極集電体27、負極集電体28及びセパレータ24の位置関係は必要な間隔が得られるように定められている。
【0032】
図3に示す単電池21は、隣り合う単電池21の正極集電体27の上面と負極集電体28の下面とが隣接するように直列に積層されて積層型電池モジュール31が形成され、そして、この積層型電池モジュール31が容器30に減圧封止されて収納されて、
図3及び
図4に示す本実施形態のリチウムイオン電池Lが構成されている。
【0033】
本実施形態のリチウムイオン電池Lを構成する容器30は、
図3に詳細を示すように、上容器30a及び下容器30bに分割されて構成されている。上容器30a及び下容器30bは略同一の形状に形成されており、上面が開口した上容器本体30c及び下容器本体30dと、これら上容器本体30c及び下容器本体30dの
図1において左右の端部から側方に突出する一対の上容器縁部30e及び下容器縁部30fとを備える。
【0034】
そして、上容器30a及び下容器30bが相対向して配置されることで形成される内部空間に積層型電池モジュール31が収納され、この内部空間が減圧された状態で、上容器縁部30e及び下容器縁部30fが図略のシール部材により封止されることで、本実施形態のリチウムイオン電池Lが構成される。
【0035】
ここで、
図4に示すように、上容器30a及び下容器30bと積層型電池モジュール31との間には電極端子33、34がそれぞれ介在されており、この電極端子33、34の一部33a、34aは上容器縁部30e及び下容器縁部30fを通ってリチウムイオン電池Lの外方にまで延出している。
【0036】
そして、電極端子33、34とアクチュエータ駆動制御部40との間、及びアクチュエータ駆動制御部40とアクチュエータ3との間は、
図7に示すように、それぞれ電力供給用の電線41を介して電気的に接続されている。ここで、アクチュエータ駆動制御部40は、
図1~
図2では図示を省略しているが、例えばアクチュエータ3のモータ7の近傍に設けられ、個々のアクチュエータ3の駆動量、ひいては指本体2の屈曲量を制御する。また、アクチュエータ駆動制御部40には、図略のロボットハンド制御部からの制御信号が供給される信号線42が接続されている。
【0037】
さらに、
図1及び
図2に示すように、リチウムイオン電池Lの対象物Wに接触する面(
図2では下面)には、ゴムや柔軟性を有する高分子からなる把持用シート12が貼り付けられている。特に、指本体2の先端側に位置するリチウムイオン電池Lには、
図2においてその下面及び左側面(指本体2の先端部)を覆うように把持用シート12が貼り付けられていることが好ましい。
【0038】
正極活物質層25に含まれる正極活物質粒子としては、公知のリチウムイオン電池に用いられる正極活物質を使用でき、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2及びLiMn2O4)、遷移金属酸化物(例えばMnO2及びV2O5)、遷移金属硫化物(例えばMoS2及びTiS2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン及びポリカルバゾール)等が挙げられる。
【0039】
また、負極活物質層26に含まれる負極活物質粒子としては、公知のリチウムイオン電池に用いられる負極活物質を使用でき、黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭素繊維、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリキノリン等)、スズ、シリコン、及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-シリコン合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLi4Ti5O12等)等が挙げられる。
【0040】
本発明のリチウムイオン電池においては、正極活物質粒子又は負極活物質粒子が、その表面の少なくとも一部に被覆用樹脂組成物を含む被覆層を有する被覆正極活物質粒子又は被覆負極活物質粒子を用いることができる。被覆層を有する正極活物質粒子を被覆正極活物質粒子ともいい、被覆層を有する負極活物質粒子を被覆負極活物質粒子ともいい、これらを被覆電極活物質ともいう。
【0041】
活物質粒子の表面が被覆層を有すると、充放電時に生じる電極の体積変化が緩和され、電極の膨脹を抑制することができる。
【0042】
また、電解液を含んだ被覆層が粘着性を示すため、非結着体の成形が容易となる。
【0043】
被覆層としては、特開2017-054703号公報に非水系二次電池活物質被覆用樹脂として記載されたもの等を好適に用いることができ、被覆電極活物質粒子は、特開2017-054703号公報等に記載された公知の方法で電極活物質粒子の周囲を被覆用樹脂組成物により被覆することができる。
例えば、被覆用樹脂及び必要により用いる下記の導電助剤を含む被覆用樹脂組成物と電極活物質粒子を混合することによって製造することができる。被覆用樹脂組成物が導電助剤を含む場合には、例えば、被覆用樹脂及び導電助剤と、電極活物質粒子を混合することによって製造してもよく、被覆用樹脂と導電助剤とを混合して被覆材を準備したのち、該被覆材と電極活物質粒子とを混合することにより製造してもよい。
【0044】
上記方法により、被覆用樹脂からなる被覆用樹脂組成物によって電極活物質粒子の表面の少なくとも一部が被覆される。
【0045】
被覆層はさらに導電助剤を含んでもよく、導電助剤は導電性を有する材料から選択される。
【0046】
導電性を有する材料としては、具体的には、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)、カーボンナノチューブ(単層、多層及びこれらの混合物等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0047】
これらの導電助剤は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物が用いられてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤とは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をメッキ等でコーティングしたものでもよい。
【0048】
導電助剤として導電性繊維を用いることも可能である。導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。
【0049】
被覆活物質粒子が有する被覆層が導電助剤を含んでいる場合、被覆層の重量は、活物質粒子と被覆用樹脂組成物と必要により用いる導電助剤との合計重量に対して、3~25重量%であることが好ましい。
【0050】
電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる公知の電解質及び非水溶媒を含有する電解液を使用することができる。
【0051】
電解質としては、通常の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6及びLiClO4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2及びLiC(CF3SO2)3等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiPF6である。
【0052】
非水溶媒としては、通常の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0053】
非水溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
非水溶媒の内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、より好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、さらに好ましいのは環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及び環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとの混合液である。特に好ましいのはプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びこれらから選ばれる2種以上の混合液である。
【0055】
正極活物質層25及び負極活物質層26を構成する正極電極組成物及び負極電極組成物は、活物質粒子を電解液に公知の分散装置を用いて混合分散することで得られ、正極電極組成物及び負極電極組成物にそれぞれ含まれる活物質粒子の重量は、電解液の重量に基づいて10~60重量%の濃度であることが好ましい。なお、正極電極組成物及び負極電極組成物に含まれる活物質粒子として前記の被覆活物質粒子を用いた場合には、正極電極組成物及び負極電極組成物に含まれる活物質粒子の重量は、被覆活物質粒子の重量を用いて計算される。
【0056】
正極活物質層25及び負極活物質層26のうち、少なくとも一方が、被覆活物質粒子が有する被覆層に含まれる導電助剤とは別に、さらに導電助剤を含んでもよい。さらに含む導電助剤としては前記の被覆剤に含まれている導電助剤と同じものをもちいることができ、好ましいものとしては、前記の導電助剤として例示した導電性繊維があげられ、炭素繊維がさらに好ましい。
【0057】
さらに導電助剤を含む正極活物質層25及び負極活物質層26は、活物質粒子、電解液及び導電助剤を混合分散して得られる正極電極組成物及び負極電極組成物を用いて活物質層を形成することで得られる。さらに導電助剤を含む正極活物質層25及び負極活物質層26は活物質粒子の間に導電助剤を含有し、それによって活物質中での電子移動が良好となる。
【0058】
本発明において、正極活物質層25及び負極活物質層26には、リチウムイオン電池用結着剤(バインダともいう)を含まないことが好ましい。ここでいう結着剤としては、リチウムイオン電池の電極において活物質粒子と集電体との結着及び活物質粒子同士の結着を目的として用いられる公知の結着剤(デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の高分子化合物)等が挙げられる。前記の結着剤は溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して電極活物質同士及び電極活物質と集電体とを強固に固定するものであり、これらの結着剤を含む場合、正極活物質粒子同士及び負極活物質粒子同士が正極活物質層25及び負極活物質層26中で不可逆的に接着固定化されて非結着体を得ることができない。
結着剤を含まないことによって、活物質粒子が電極内に固定化されないため活物質粒子の体積変化や活物質層の変形に対する緩和能力が良好となり好ましい。
【0059】
正極活物質層25及び負極活物質層26は、正極活物質又は負極活物質粒子と電解液とを含む正極電極組成物及び負極電極組成物を集電体上に所定の厚さで塗布する方法、並びに正極電極組成物及び負極電極組成物を所定の形状に圧縮成形する方法等で得ることができる。
【0060】
セパレータ24としては、公知のリチウムイオン電池用セパレータを用いることができ、ポリエチレン、ポリプロピレン等、ポリオレフィン製の微多孔膜フィルム、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルム、合成繊維(ポリエステル繊維、アラミド繊維及びガラス繊維等)からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等が挙げられる。
【0061】
正極集電体27及び負極集電体28は一対の集電体であり、集電体としては公知のリチウムイオン電池用集電体[公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報及び国際公開番号WO2015/005116号等に記載されている樹脂集電体)等]を用いることができる。
【0062】
金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの金属を1種以上含む合金、並びに、ステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属材料が挙げられる。これらの金属材料は薄板や金属箔等の形態で用いてもよい。また、上記金属材料以外で構成される基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の方法により上記金属材料を形成したものを金属集電体として用いてもよい。
【0063】
樹脂集電体を構成する導電材料は、上述した導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
【0064】
樹脂集電体を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0065】
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0066】
シール部材29を構成する材料としては、集電体27、28との接着性を有し、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、高分子材料、特に熱硬化性樹脂が好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0067】
容器30を構成する材料は、容器30内に積層型電池モジュール31を収納しうる材料であれば、任意の材料が好適に適用可能である。但し、単電池21と容器30とが接触する可能性があることを考慮して、容器30を構成する材料は絶縁性を有する材料であることが好ましい。加えて、容器30は、積層型電池モジュール31を内部に収納した状態で減圧封止することから、容器30を構成する材料は可撓性及び気密性を有する材料であることが好ましい。このような材料としては、ラミネートフィルムが好ましい。ラミネートフィルムの一例としては、アルミニウム又はニッケル等の金属層の両面を高分子フィルムで覆ったフィルムが挙げられ、金属層の両面に配置される高分子フィルムのうち、容器の内面となる高分子フィルムがポリエチレン及びポリプロピレン等の熱融着性樹脂からなる高分子フィルムであるラミネートフィルムが挙げられる。
【0068】
次に、本実施形態のリチウムイオン電池の製造方法について説明する。
【0069】
まず、正極集電体27及び負極集電体28のそれぞれの表面に、正極電極活物質と電解液とを含む正極活物質層25、及び負極電極活物質と電解液とを含む負極活物質層26を形成して正極22及び負極23を形成する。正極22及び負極23を形成する手法は任意であり、正極集電体27及び負極集電体28のそれぞれの表面に正極活物質25及び負極活物質26を塗布する、正極集電体27及び負極集電体28のそれぞれの表面に、ノズル等を介して正極活物質層25及び負極活物質層26を載置した後に所定厚になるようにヘラ等で均す、など、種々の手法が挙げられる。その後、セパレータ24を介して正極22及び負極23を積層し、正極集電体27及び負極集電体28の端部、さらにセパレータ24の端部をシール部材29により封止することで単電池21を製造することができる。
【0070】
次いで、上述の工程により製造された単電池21を、隣り合う単電池21の正極集電体27の上面と負極集電体28の下面とが隣接するように直列に積層して積層型電池モジュール31を形成し、さらに、この積層型電池モジュール31及び電極端子33、34を容器30内に収納し、容器30内を脱気した後にシール部材で封止することで、本実施形態のリチウムイオン電池Lを製造することができる。
【0071】
上述したように本実施形態のロボットハンドAでは、指本体2を屈伸させるアクチュエータ3と、アクチュエータ3の電力供給用であるリチウムイオン電池Lとが、一個のアクチュエータ3に対して一個のリチウムイオン電池Lを組み合わせて接続されており、指本体2の指関節部5の近傍に対応するリチウムイオン電池Lが設けられている。すなわち、電力供給源たるリチウムイオン電池Lがアクチュエータ3に対応して分散配置されている。従って、アクチュエータ3とリチウムイオン電池Lとを接続する電力供給用の電線41と、アクチュエータ制御用の信号線42とを別系統化することができ、これにより、アクチュエータ3を制御するための信号線42の短線化及び細線化を図ることが可能となる。
【0072】
加えて、リチウムイオン電池Lをアクチュエータ3の近傍に配置したので、電力供給用の電線41を太線化してもロボットハンドAの操作性に影響を与えることが少ない。これにより、アクチュエータ3起動時の突入電流を考慮した電線41を配線することが可能となる。
【0073】
また、本実施形態の単電池21は、正極活物質層25が正極活物質粒子の非結着体であり、負極活物質層26が負極活物質粒子の非結着体であるので、活物質粒子は隣接する活物質粒子との接触を維持したまま動くことが出来る。これにより、リチウムイオン電池Lを屈曲させる方向に応力が作用してリチウムイオン電池Lが変形した場合であっても、活物質層での亀裂の発生や集電体との界面での剥離を起こすことなく、正極集電体27と負極集電体28との間における導電経路を維持することができ、十分な充放電特性を発揮し続けることができる。かかる効果は、骨部材4の対象物Wを把持する側にリチウムイオン電池Lを設けた本実施形態のロボットハンドAにおいて、対象物Wの把持に伴いリチウムイオン電池Lに応力が作用する可能性が高いことを考慮すると、有利な効果である。
【0074】
さらには、正極活物質層25が正極活物質粒子の非結着体であり、負極活物質層26が負極活物質粒子の非結着体であるため、リチウムイオン電池L全体を柔軟に形成することができる。従って、このリチウムイオン電池Lに緩衝性能を持たせることができ、指本体2により対象物Wを把持しても対象物Wにかかる応力を緩和させ、対象物Wとリチウムイオン電池Lとが接触した場合に出会っても対象物Wに影響を与えることが無いという有利な効果を発揮することができる。
【0075】
(第2実施形態)
次に、
図8~
図9を参照して、本発明のロボットハンド用指構造が適用された第2実施形態であるロボットハンドについて説明する。
図8は、本発明の第2実施形態であるロボットハンドに用いられる電源の一例を示す縦断面図、
図9は本発明の第2実施形態であるロボットハンドに用いられる電源の一例を示す横断面図である。なお、以下の説明において、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0076】
本実施形態のロボットハンドAにおいては、第1実施形態におけるリチウムイオン電池Lに加えて、後述する回路部、センサ部等が一体化された電源50が、骨部材4の対象物W側の面に設けられている。
【0077】
回路部51は、一面(図中上面)に図略の回路パターンが形成されたフレキシブル基板51aの対象物W側の面(図中上面)にIC51b等が配置され、さらにシール部材51cにより回路パターン及びIC51cがシールされて、全体として略平板状に構成されている。
【0078】
この回路部51の図中上面にはリチウムイオン電池Lが設けられ、さらに、このリチウムイオン電池Lの図中上面にはセンサ部52が設けられている。センサ部52は、略平板状の感圧センサ52aと、この感圧センサ52aの図中上面に設けられた、ゴムや柔軟性を有する高分子からなる把持用カバー52bとを有する。
【0079】
感圧センサ52aは、一例として感圧導電性エラストマーを電極で挟み込んで構成され、感圧導電性エラストマーに圧力が作用するとその部分の抵抗値が減少することでこの感圧センサ52aに圧力が作用したことを検出するものである。
【0080】
把持用カバー52bは、
図9に最もよく示すように、山形の断面を有し、その内部に空洞52cが形成されているとともに、空洞52cの図中上部内面から感圧センサ52aに向けて突設され、先端がこの感圧センサ52aに接触する突部52dが形成されている。
【0081】
従って、指本体2により対象物Wが把持され、把持用カバー52bの図中上面、すなわち対象物W側の面から図中下方に向けて圧力が作用すると、把持用カバー52bの突部52dが感圧センサ52aを押圧する。この押圧力を感圧センサ52aが検出し、電圧の変化として検出結果を出力する。
【0082】
ここで、
図9に示す例では突部52dが1つのみ設けられていたが、
図10に示すように複数の突部52dを把持用カバー52bに形成してもよい。
図9に示す例では感圧点は1点であるが、
図10に示す例では感圧点が複数設けられることになる。
【0083】
図11に、第2実施形態のロボットハンドの回路構成の概略を示す。回路部51とリチウムイオン電池L、及び回路部51とセンサ部52とはそれぞれ電線43により接続され、センサ部52の駆動用電力が電線43を介して回路部51及びセンサ部52にそれぞれ供給される。また、回路部51と上述したアクチュエータ駆動制御部40(
図11において図略)とは、アクチュエータ駆動制御部40及びアクチュエータ3(
図11において図略)への電源供給用電線41及びアクチュエータ駆動制御部40への信号線42とで接続されている。
【0084】
センサ部52による対象物Wの把持検出がない状態では、回路部51のみ起動しており、アクチュエータ駆動制御部40への電源供給はされていない。そして、回路部51はセンサ部52に印加する電圧の変化を常時監視し、電圧の変化があった、すなわち、指本体2により対象物Wが把持されたことを検出すると、回路部51はアクチュエータ駆動制御部40に起動指示のための信号を信号線42を介して供給するとともに、アクチュエータ駆動制御部40への駆動電力を電線41を介して供給する。このようにして、感圧センサ52aを備えるセンサ部52により関節駆動装置であるアクチュエータ3の動作が制御される。
【0085】
次に、
図12を参照して、本実施形態のロボットハンドAに好適に用いられるリチウムイオン電池Lについて説明する。
図12は、第2実施形態のロボットハンドに用いられるリチウムイオン電池Lを示す一部破断斜視図である。
【0086】
図12に示すリチウムイオン電池Lは、フレキシブル基板51aの図中上面に形成されている。フレキシブル基板51aの上面には、電源取り出し用の回路パターン53a、53bが形成されており、正極集電体27及び負極集電体28の端部は、その一部がこれら回路パターン53a、53bの上部に重畳されて形成されている。また、正極集電体27の上面を覆うように保護膜54が形成されている。
【0087】
次に、
図13を参照して、
図12に示すリチウムイオン電池Lの製造方法について説明する。
【0088】
まず、
図13(a)に示すように、フレキシブル基板51aの上面に、一部が回路パターン53aに重畳するように負極集電体28を形成する。フレキシブル基板51aの上面に負極集電体28を形成する手法は任意であるが、一例として、インクジェット機や3Dプリンタ等、ノズル60を所定箇所に移動制御して所定量の部材を吐出できる機構により負極集電体28を形成する部材を吐出する手法が好適に挙げられる。
【0089】
次に、
図13(b)に示すように、負極集電体28の上面に、負極電極活物質と電解液とを含む負極活物質層26を形成して負極23を形成する。負極活物質層26を形成する手法も任意であり、負極集電体28と同様に、ノズル61を所定箇所に移動制御して所定量の部材を吐出できる機構により負極活物質層26を形成する部材を吐出する手法が好適に挙げられる。
【0090】
次に、
図13(c)に示すように、負極23を形成する負極集電体28及び負極活物質層26の図中上面を覆うように、セパレータ24を形成する。セパレータ24を形成する手法も任意であり、負極集電体28及び負極活物質層26と同様に、ノズル62を所定箇所に移動制御して所定量の部材を吐出できる機構によりセパレータ24を形成する部材を吐出する手法が好適に挙げられる。
【0091】
次に、
図13(d)に示すように、セパレータ24の上面の一部を覆うように、正極電極活物質と電解液とを含む正極活物質層25形成する。正極活物質層25を形成する手法は、負極活物質層26を形成する手法と略同一であるので、ここではその説明を省略する。
次に、
図13(e)に示すように、正極活物質層25の上面に、一部が回路パターン53bに重畳するように正極集電体27を形成して正極22を形成する。正極集電体27を形成する手法は、負極集電体28を形成する手法と略同一であるので、ここではその説明を省略する。
【0092】
そして、
図13(f)に示すように、回路パターン53a、53b、正極22及びセパレータ24の上面を覆うように、保護膜54を形成し、
図13(g)に示すようなリチウムイオン電池Lを形成する。保護膜54を形成する手法は任意であるが、正極22及び負極23と同様に、インクジェット機や3Dプリンタ等、ノズル63を所定箇所に移動制御して所定量の部材を吐出できる機構により保護膜54を形成する部材を吐出する手法が好適に挙げられる。
【0093】
従って、本実施形態のロボットハンドAによっても、上述した第1実施形態のロボットハンドAと同様の効果を奏することができる。加えて、本実施形態のロボットハンドAでは、センサ部52の近傍にリチウムイオン電池Lが配置されているので、回路部51とアクチュエータ駆動制御部40とを接続する電線41及び信号線42の短線化と細線化を図ることができる。特に、回路部51を構成するフレキシブル基板51aの上面にアクチュエータ駆動制御部40を形成すれば、電線41、信号線42を省略して回路パターンにより接続することが可能になり、電線41等を省略することができ、さらなる短線化が実現できる。
【0094】
また、上述したように本実施形態のリチウムイオン電池Lは柔軟に形成することができるので、このリチウムイオン電池Lに緩衝性能を持たせることができ、指本体2により対象物Wを把持しても対象物Wにかかる応力を緩和させることができる。特に、本実施形態のロボットハンドAでは、感圧センサ52a及び把持用カバー52bがいずれも柔軟性を有する材料から形成されているので、電源50全体の柔軟性をより高めることができる。
【0095】
さらに、
図13に示す工程により、フレキシブル基板51aの上面に柔軟なリチウムイオン電池Lを形成することができ、しかも、印刷工程と同様の簡易な工程でリチウムイオン電池Lを製造することができる。
【0096】
(変形例)
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0097】
一例として、本発明のロボットハンドに用いられるアクチュエータ(駆動部)は上述の各実施形態に開示されたものに限定されず、指本体2を屈曲自在にするものであれば特段の限定はない。一例として、圧電素子や人工筋肉等のアクチュエータが好適に挙げられる。特に、圧電素子をアクチュエータとして用いた場合、指本体2の開閉により圧電素子から電力を回収してもよい。
【0098】
また、ロボットハンドを構成する指構造の構成も上述の各実施形態に限定されず、既知のロボットハンドの構成が好適に採用可能である。加えて、上述した各実施の形態であるロボットハンドを用いたロボットアームも好適に実現可能である。
【0099】
さらに、上述の各実施の形態では一個のアクチュエータ(関節駆動装置)3に対してこのアクチュエータ3への電力供給用であるリチウムイオン電池Lを一個接続していたが、一個のアクチュエータ3に対して二個以上のリチウムイオン電池Lを接続する構成であってもよい。つまり、上述の各実施の形態に示した個数よりも多くのリチウムイオン電池Lを指本体2、さらにはロボットハンドAに配置してもよい。
【符号の説明】
【0100】
A ロボットハンド
L リチウムイオン電池
W 対象物
2 指本体
3 アクチュエータ(関節駆動装置)
4 骨部材
5 指関節部
12 把持用シート
21 単電池
22 正極
23 負極
24 セパレータ
25 正極活物質層
26 負極活物質層
27 正極集電体
28 負極集電体
40 アクチュエータ駆動制御部
41、43 電線
42 信号線
52 センサ部
52a 感圧センサ