IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グンゼ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】熱収縮性多層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20220920BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/30 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018196852
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2020062836
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】石川 清康
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-284941(JP,A)
【文献】国際公開第2008/013113(WO,A1)
【文献】特開2011-056736(JP,A)
【文献】特開2017-071064(JP,A)
【文献】特開2009-154500(JP,A)
【文献】特開2014-172214(JP,A)
【文献】特開2012-131169(JP,A)
【文献】特開2020-049731(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0297438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏層と、中間層とが、接着層を介して積層されてなる熱収縮性多層フィルムであって、
前記表裏層は、ポリエステル系樹脂及び有機系微粒子を含有し、
前記中間層は、ビカット軟化温度が80℃以上であるポリスチレン系樹脂を10~50重量%、ビカット軟化温度が80℃未満であるポリスチレン系樹脂を50~90重量%含有し、
前記接着層を構成する樹脂は、ポリスチレン系樹脂とポリエステル系エラストマーとの混合樹脂、ポリスチレン系樹脂とポリエステル系樹脂との混合樹脂、ポリエステル系樹脂とスチレン系エラストマーとの混合樹脂、ポリスチレン系樹脂とポリエステル系樹脂とスチレン系エラストマー又はポリエステル系エラストマーとの混合樹脂、スチレン系エラストマー及びポリエステル系エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記ポリエステル系樹脂100重量部に対する前記有機系微粒子の含有量が0.055~0.145重量部であり、
前記有機系微粒子は、少なくとも平均粒子径が0.5~2.9μmである有機系微粒子(A)と平均粒子径が3.0~10.0μmである有機系微粒子(B)とを含有し、
前記有機系微粒子は、ポリメチルメタクリレートであ
ことを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
【請求項2】
有機系微粒子(A)の平均粒子径が0.5~2.4μmであり、有機系微粒子(B)の平均粒子径が3.0~3.8μmであることを特徴とする請求項1記載の熱収縮性多層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム同士の密着による繰り出し性の低下やラベル装着後のラベル同士の接着を抑制することができ、重ね刷りの際のインキとびを軽減して、トラッピング不良を防止することが可能な熱収縮性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットボトル、金属罐等の容器の多くには、熱収縮性樹脂からなる熱収縮性フィルムに印刷等を施した熱収縮性ラベルが装着されている。
熱収縮性フィルムには、低温収縮性に加えて、耐熱性、耐溶剤性、ミシン目カット性等の種々の性能が要求されている。
【0003】
一般的に、熱収縮性フィルムは、フィルムをロール状に巻き取り、所定のサイズにカットし、印刷、溶剤によるシール、熱収縮による容器への装着等が行われるが、巻き取ったフィルム同士が密着することで、繰り出しの際にフィルムが破れたり、フィルム同士を剥がすことができなくなるという問題があった。また、熱収縮により容器に装着する際や容器にラベルを装着した状態で保管した場合に、ラベル同士が接着して剥がれなくなったり、容器からラベルが剥がれたりするという問題があった。
【0004】
そのため、フィルムの滑り性やフィルム同士の接着を防止するために、シリカ、タルク等のアンチブロッキング剤を添加する手法が用いられている。
しかしながら、これらのアンチブロッキング剤は、フィルム表面を粗くすることで滑り性や耐ブロッキング性を発現させるものであるが、フィルムの汚れが生じて、外観不良の原因になるという問題があった。
【0005】
これに対して、特許文献1では、長期保管下での耐ブロッキング性、耐自然収縮性を向上させるため、ゴム変性スチレン、滑剤、及び、無機系微粒子あるいは有機系微粒子を含有するシュリンクフィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-161147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなシュリンクフィルムは、繰り出し性やフィルム同士の接着を防止できるものの、ラベルに印刷を施す際にインキとびが発生するトラッピング不良が生じるという問題があった。
【0008】
本発明は、フィルム同士の密着による繰り出し性の低下やラベル装着後のラベル同士の接着を抑制することができ、重ね刷りの際のインキとびを軽減して、トラッピング不良を防止することが可能な熱収縮性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、表裏層と、中間層とが、接着層を介して積層されてなる熱収縮性多層フィルムであって、前記表裏層は、ポリエステル系樹脂及び有機系微粒子を含有し、前記中間層は、ビカット軟化温度が80℃以上であるポリスチレン系樹脂を10~50重量%、ビカット軟化温度が80℃未満であるポリスチレン系樹脂を50~90重量%含有し、前記接着層を構成する樹脂は、ポリスチレン系樹脂とポリエステル系エラストマーとの混合樹脂、ポリスチレン系樹脂とポリエステル系樹脂との混合樹脂、ポリエステル系樹脂とスチレン系エラストマーとの混合樹脂、ポリスチレン系樹脂とポリエステル系樹脂とスチレン系エラストマー又はポリエステル系エラストマーとの混合樹脂、スチレン系エラストマー及びポリエステル系エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記ポリエステル系樹脂100重量部に対する前記有機系微粒子の含有量が0.055~0.145重量部であり、前記有機系微粒子は、少なくとも平均粒子径が0.5~2.9μmである有機系微粒子(A)と平均粒子径が3.0~10.0μmである有機系微粒子(B)とを含有し、前記有機系微粒子は、ポリメチルメタクリレートである熱収縮性多層フィルムである。
以下、本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、ポリエステル系樹脂及び有機系微粒子を所定の割合で含有する表裏層を有する熱収縮性フィルムが、フィルムの繰り出し性に優れ、ラベル同士の接着を防止できるだけではなく、印刷工程において重ね刷りした際にもインキとびを軽減して、トラッピング不良を防止することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、表裏層、中間層及び接着層を有する。
なお、本明細書中、表裏層とは、表面層と裏面層との両方を意味する。
【0012】
(表裏層)
上記表裏層は、ポリエステル系樹脂を含有する。
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分とを縮重合させることにより得られるものが挙げられる。
特に上記ジカルボン酸成分として、ジカルボン酸成分100モル%のうちテレフタル酸を55モル%以上含有する芳香族ポリエステル系樹脂が好ましい。
更に、上記ジカルボン酸成分としては、上記テレフタル酸以外に、o-フタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等を含むことができる。
【0013】
上記ジオール成分としては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール)、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール類;2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類等が挙げられる。
【0014】
上記ポリエステル系樹脂としては、なかでも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有し、かつ、ジオール成分としてエチレングリコール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含有するものが好ましい。
このような芳香族ポリエステル系ランダム共重合樹脂を用いることにより、熱収縮性フィルムに優れた熱収縮性を付与することができる。
熱収縮性をより高めたい場合には、ジオール成分100モル%のうち、エチレングリコールに由来する成分の含有量が60~80モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分の含有量が10~40モル%であるものを用いることが好ましい。
【0015】
このような芳香族ポリエステル系ランダム共重合樹脂は、更に、ジエチレングリコールに由来する成分を0~30モル%、好ましくは1~25モル%、より好ましくは2~20モル%含有していてもよい。ジエチレングリコールを用いることにより、熱収縮性フィルムの主収縮方向の引張破断伸度が高まり、ミシン目を裂いたときに層間剥離が生じて内面側のみが容器に残ってしまうことを防止することができる。ジエチレングリコールに由来する成分が30モル%以下であると、熱収縮性フィルムの低温収縮性を低下させることができ、容器に装着する際のシワの発生を防止することができる。
【0016】
また、上記ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有するポリエステル系樹脂は、ジオール成分として1,4-ブタンジオールに由来する成分を含有するものを用いることもできる。このようなポリエステル系樹脂は、一般に、ポリブチレンテレフタレート系樹脂と呼ばれる。
上記ポリブチレンテレフタレート系樹脂は、上記ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有し、かつ、ジオール成分としてエチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含有する芳香族ポリエステル系ランダム共重合樹脂と、併用されることが好ましい。このような混合樹脂を用いることでより優れた仕上り性を付与することができる。
【0017】
上記ポリブチレンテレフタレート系樹脂としては、テレフタル酸に由来する成分と1,4-ブタンジオールに由来する成分のみからなるポリブチレンテレフタレート系樹脂のほか、テレフタル酸に由来する成分以外のジカルボン酸成分及び/又は1,4-ブタンジオールに由来する成分以外のジオール成分を含有するポリブチレンテレフタレート系樹脂であってもよい。
なお、上記テレフタル酸に由来する成分以外のジカルボン酸成分の含有量は、ジカルボン酸成分100モル%のうち、40モル%以下であることが好ましい。
40モル%以下であると、上記ポリブチレンテレフタレート系樹脂の耐熱性を向上させることができる。また、上記1,4-ブタンジオールに由来する成分以外のジオール成分の含有量は、ジオール成分100モル%のうち、10モル%以下であることが好ましい。10モル%以下であると、上記ポリブチレンテレフタレート系樹脂の耐熱性を向上させることができる。
【0018】
上記表裏層における上記ポリブチレンテレフタレート系樹脂の含有量は特に限定されないが、30重量%以下であることが好ましい。
30重量%以下であると自然収縮を抑制して、フィルムの剛性の低下を防止することができる。
【0019】
上記表裏層を構成するポリエステル系樹脂のガラス転移温度の好ましい下限は55℃、好ましい上限は95℃である。
上記ガラス転移温度が55℃以上であると、熱収縮性フィルムの収縮開始温度を充分に高くすることができ、自然収縮を抑制することができる。上記ガラス転移温度が95℃以下であると、熱収縮性フィルムの低温収縮性及び収縮仕上り性を向上させることができるとともに、経時での低温収縮性の低下を抑制することができる。
上記ガラス転移温度のより好ましい下限は60℃、より好ましい上限は90℃である。
なお、上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
【0020】
上記表裏層を構成するポリエステル系樹脂の引張弾性率の好ましい下限は1000MPa、好ましい上限は4000MPaである。
上記引張弾性率が1000MPa以上であると熱収縮性フィルムの収縮開始温度を充分に高めて、自然収縮を抑制することができる。上記引張弾性率が4000MPa以下であると、熱収縮性フィルムの低温収縮性及び収縮仕上り性を向上させることができるとともに、経時での低温収縮性の低下を抑制することができる。
上記引張弾性率のより好ましい下限は1500MPa、より好ましい上限は3700MPaである。
なお、上記引張弾性率は、ASTM-D882(TestA)に準拠した方法で測定することができる。
【0021】
上記表裏層を構成するポリエステル系樹脂の市販品としては、例えば、「Easter」、「EmbraceLv」(イーストマンケミカル社製)、「ベルペット」(ベルポリエステルプロダクツ社製)、「ノバデュラン」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)等が挙げられる。
【0022】
上記表裏層に含まれるポリエステル系樹脂としては、上述した組成を有するポリエステル系樹脂を単独で用いてもよく、上述した組成を有する2種以上のポリエステル系樹脂を併用してもよい。また、上記ポリエステル系樹脂は、表面層と裏面層とで異なる組成を有するポリエステル系樹脂であってもよいが、フィルムのカール等によるトラブルを抑制するため、同一の組成を有するポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0023】
上記表裏層は、有機系微粒子を含有する。
上記有機系微粒子としては、アクリル系樹脂微粒子、スチレン系樹脂微粒子、スチレン-アクリル系樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、シリコーン系樹脂微粒子等の有機系微粒子を用いることができる。これらは架橋されていても架橋されていなくてもよいが、微粒子の耐熱性を高めるために架橋されていることが望ましい。なかでも上記ポリエステル系樹脂との相溶性の観点からアクリル系樹脂微粒子が好ましく、ポリメタクリル酸メチル系架橋微粒子がより好ましい。
【0024】
上記表裏層は、少なくとも2種の有機系微粒子を含有することが好ましい。
2種以上の有機系微粒子を組み合わせて用いることにより、ブロッキング防止性を向上させるとともに、トラッピング不良を抑制する効果を充分に発揮させることができる。
【0025】
上記有機系微粒子としては、平均粒子径が0.5~2.9μmである有機系微粒子(A)及び平均粒子径が3.0~10.0μmである有機系微粒子(B)とを含有することが好ましい。
【0026】
上記有機系微粒子(A)の平均粒子径は、より好ましい下限が1.8μm、より好ましい上限が2.4μmである。
上記有機系微粒子(B)の平均粒子径は、より好ましい下限が3.2μm、より好ましい上限が3.8μmである。
上記有機系微粒子(A)の平均粒子径と上記有機系微粒子(B)の平均粒子径との比(有機系微粒子(A)の平均粒子径/有機系微粒子(B)の平均粒子径)は、好ましい下限が0.5/10.0、より好ましい下限が1.8/10.0、好ましい上限が2.9/3.0、より好ましい上限が2.4/3.0である。
上記平均粒子径は、例えば、レーザー回折・散乱法等で測定することができる。
【0027】
上記表裏層における上記有機系微粒子の含有量は、ポリエステル系樹脂100重量部に対して、下限が0.055重量部、上限が0.145重量部であり。
上記有機系微粒子の含有量が0.055重量部以上であると、ブロッキング防止性を向上させることができる。上記有機系微粒子の含有量が0.145重量部以下であると、トラッピング不良を防止することができる。
上記有機系微粒子の含有量は、好ましい下限が0.06重量部、好ましい上限が0.125重量部である。
【0028】
上記表裏層における上記有機系微粒子(A)の含有量は、ポリエステル系樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.015重量部、より好ましい下限が0.02重量部、好ましい上限が0.13重量部、より好ましい上限が0.12重量部である。
上記表裏層における上記有機系微粒子(B)の含有量は、ポリエステル系樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.015重量部、より好ましい下限が0.02重量部、好ましい上限が0.13重量部、より好ましい上限が0.12重量部である。
上記表裏層における上記有機系微粒子(A)の含有量と上記有機系微粒子(B)の含有量との比(有機系微粒子(A)の含有量/有機系微粒子(B)の含有量)は、好ましい下限が0.015/0.13、より好ましい下限が0.02/0.12、好ましい上限が0.13/0.015、より好ましい上限が0.12/0.02である。
【0029】
上記表裏層は、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0030】
(中間層)
本発明の熱収縮性多層フィルムは、上記中間層を有する。
上記中間層は、ポリスチレン系樹脂を含有する。
上記ポリスチレン系樹脂としては、例えば、芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体、芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン等が挙げられる。上記ポリスチレン系樹脂を用いることで、本発明の熱収縮性多層フィルムは低温から収縮を開始することができ、また、高収縮性を有する。
【0031】
本明細書中、芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体とは、芳香族ビニル炭化水素に由来する成分と、共役ジエンに由来する成分とを含有する共重合体をいう。
上記芳香族ビニル炭化水素は特に限定されず、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記共役ジエンは特に限定されず、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体は、特に熱収縮性に優れることから、スチレン-ブタジエン共重合体(SBS樹脂)を含有することが好ましい。また、上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体は、よりフィッシュアイの少ない熱収縮性多層フィルムを作製するためには、上記共役ジエンとして2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)を用いたスチレン-イソプレン共重合体(SIS樹脂)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体(SIBS)等を含有することが好ましい。
なお、上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体は、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちのいずれか1つを単独で含有してもよく、複数を組み合わせて含有してもよい。また、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちの複数を用いる場合には、各樹脂をドライブレンドしてもよく、各樹脂を特定の組成にて押出機を用いて練り上げペレタイズしたコンパウンド樹脂を用いてもよい。
【0033】
上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体がSBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂を単独又は複数で含有する場合には、特に熱収縮性に優れた熱収縮性多層フィルムが得られることから、上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体100重量%に占めるスチレン含有量が65~90重量%、共役ジエン含有量が10~35重量%であることが好ましい。上記スチレン含有量が90重量%を超えるか、上記共役ジエン含有量が10重量%未満であると、熱収縮性多層フィルムにテンションをかけたときに切れ易くなったり、印刷等の加工時に思いもよらず破断したりすることがある。上記スチレン含有量が65重量%未満であるか、上記共役ジエン含有量が35重量%を超えると、成形加工時にゲル等の異物が発生しやすくなったり、熱収縮性多層フィルムの腰が弱くなったりして、取り扱い性が悪化することがある。
【0034】
本明細書中、芳香族ビニル炭化水素-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体とは、芳香族ビニル炭化水素に由来する成分と、脂肪族不飽和カルボン酸エステルに由来する成分とを含有する共重合体をいう。
上記芳香族ビニル炭化水素は特に限定されず、上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体において例示した芳香族ビニル炭化水素と同様の芳香族ビニル炭化水素を用いることができる。上記脂肪族不飽和カルボン酸エステルは特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートとの両方を示す。
【0035】
上記芳香族ビニル炭化水素-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体として、スチレン-ブチルアクリレート共重合体を用いる場合には、上記スチレン-ブチルアクリレート共重合体100重量%に占めるスチレン含有量が60~90重量%、ブチルアクリレート含有量が10~40重量%であることが好ましい。このような組成の芳香族ビニル炭化水素-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体を用いることで、熱収縮性に優れた熱収縮性多層フィルムを得ることができる。
【0036】
上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体と上記芳香族ビニル炭化水素-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂は特に限定されないが、上記芳香族ビニル炭化水素-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体の含有量が80重量%以下である混合樹脂であることが好ましい。
【0037】
上記ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンとは、スチレン、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキルの3元共重合体からなる連続相と、共役ジエンを主体とするゴム成分からなる分散相とで構成されるものを基本とするものである。
【0038】
上記連続相を形成するメタクリル酸アルキルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が、アクリル酸アルキルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
上記連続相を形成する共重合体中のスチレンの割合は20~80重量%が好ましく、30~70重量%がより好ましい。メタクリル酸アルキルの割合は10~50重量%が好ましく、15~40重量%がより好ましい。アクリル酸アルキルの割合は1~30重量%が好ましく、5~20重量%がより好ましい。
【0039】
上記分散相を形成する共役ジエンを主体とするゴム成分としては、ポリブタジエン、又は、スチレン含有量が5~30重量%のスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。
上記分散相を形成する共役ジエンを主体とするゴム成分の粒子径は0.1~1.2μmであることが好ましく、更に好ましくは0.3~0.8μmである。粒子径が0.1μmを下回ると、上記ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンの耐衝撃性が不充分となることがあり、1.2μmを上回ると、上記中間層の透明性が低下することがある。
【0040】
上記ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンにおいて、スチレン、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキルの3元共重合体からなる連続相の割合は70~95重量%、共役ジエンを主体とするゴム成分からなる分散相の割合は5~20重量%が好ましい。上記分散相の割合が5重量%を下回ると、上記ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンの耐衝撃性が不充分となることがあり、20重量%を上回ると、上記中間層の透明性が低下することがある。
【0041】
上記ポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度の好ましい下限は50℃、好ましい上限は90℃である。上記ビカット軟化温度が50℃以上であると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性を良好なものとして、容器に装着する際のシワの発生を抑制することができる。上記ビカット軟化温度が90℃以下であると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性を充分に高めて、容器に装着する際の未収縮部分の発生を防止することができる。上記ビカット軟化温度のより好ましい下限は55℃、より好ましい上限は85℃である。なお、上記ビカット軟化温度は、ISO 306に準拠した方法で測定することができる。
【0042】
上記ポリスチレン系樹脂の200℃でのMFR(melt flow rate)の好ましい下限は2g/10分、好ましい上限は15g/10分である。
200℃でのMFRが2g/10分以上であると、フィルムの製膜性を向上させることができる。200℃でのMFRが15g/10分以下であると、フィルムの機械的強度を充分に向上させることができる。
200℃でのMFRのより好ましい下限は4g/10分、より好ましい上限は12g/10分である。なお、MFRは、ISO1133に準拠した方法で測定することができる。
【0043】
上記中間層を構成するポリスチレン系樹脂の市販品としては、例えば、「クリアレン」(電気化学工業社製)、「アサフレックス」(旭化成ケミカルズ社製)、「Styrolux」(BASF社製)、「PSJ-ポリスチレン」(PSジャパン社製)等が挙げられる。
【0044】
上記中間層における上記ポリスチレン系樹脂の含有量は、好ましい下限が80重量%、好ましい上限が100重量%である。
上記ポリスチレン系樹脂の含有量が上記下限以上、かつ、上記上限以下であると、MD方向及びTD方向の両方向に対するミシン目カット性に優れるものとすることができる。
上記中間層における上記ポリスチレン系樹脂の含有量は、より好ましい下限が85重量%、より好ましい上限が99重量%、更に好ましい上限が95重量%である。
【0045】
上記中間層は、ビカット軟化温度が80℃以上であるポリスチレン系樹脂を0~60重量%含有することが好ましい。
上記ビカット軟化温度が80℃以上であるポリスチレン系樹脂を所定量含有することで、乾熱収縮させた際の緩み防止効果をより向上させることができる。
上記中間層における上記ビカット軟化温度が80℃以上であるポリスチレン系樹脂の含有量は、より好ましい下限が10重量%、更に好ましい下限が20重量%、より好ましい上限が50重量%である。
なお、上記ビカット軟化温度が80℃以上であるポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度の上限は、好ましくは90℃、より好ましくは85℃である。
【0046】
上記中間層は、ビカット軟化温度が80℃未満であるポリスチレン系樹脂を40~100重量%含有することが好ましい。
上記ビカット軟化温度が80℃未満であるポリスチレン系樹脂を所定量含有することで、乾熱収縮させた際の緩み防止効果をより向上させることができる。
上記中間層における上記ビカット軟化温度が80℃未満であるポリスチレン系樹脂の含有量は、より好ましい下限が50重量%、より好ましい上限が90重量%、更に好ましい上限が80重量%である。
なお、上記ビカット軟化温度が80℃未満であるポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度の下限は、好ましくは50℃、より好ましくは55℃である。
【0047】
上記中間層における上記ビカット軟化温度が80℃以上であるポリスチレン系樹脂の含有量と上記ビカット軟化温度が80℃未満であるポリスチレン系樹脂の含有量との比(ビカット軟化温度が80℃以上であるポリスチレン系樹脂の含有量/ビカット軟化温度が80℃未満であるポリスチレン系樹脂の含有量)は、好ましい下限が0/100、より好ましい下限が10/90、更に好ましい下限が20/80、好ましい上限が60/40、より好ましい上限が50/50である。
【0048】
上記ビカット軟化温度が80℃以上であるポリスチレン系樹脂と上記ビカット軟化温度が80℃未満であるポリスチレン系樹脂とのビカット軟化温度の差は、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、25℃以下であることが好ましく、20℃以下であることがより好ましい。
【0049】
上記中間層が、上記ビカット軟化温度が80℃以上であるポリスチレン系樹脂と上記ビカット軟化温度が80℃未満であるポリスチレン系樹脂とを含む混合樹脂を含有する場合、上記混合樹脂の見掛けのビカット軟化温度は、好ましい下限が65℃、より好ましい下限が68℃、好ましい上限が78℃、より好ましい上限が77℃である。
なお、上記ビカット軟化温度は、ISO 306に準拠した方法で測定することができる。
【0050】
上記中間層は、更に、ポリエステル系樹脂を含有してもよい。
上記中間層に用いることのできるポリエステル系樹脂としては、上記表裏層に用いることができるものと同様のものが挙げられる。
上記ポリエステル系樹脂としては、上記表裏層を構成するものと同様のものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
【0051】
上記中間層における上記ポリエスエル系樹脂の含有量は、好ましい下限が1重量%、好ましい上限が20重量%である。
上記ポリエステル系樹脂の含有量が上記下限以上、かつ、上記上限以下であると、MD方向及びTD方向の両方向に対するミシン目カット性に優れるものとすることができる。
上記中間層における上記ポリエステル系樹脂の含有量は、より好ましい下限が5重量%、より好ましい上限が17重量%である。
【0052】
上記中間層は、更に、ポリエステル系エラストマーを含有してもよい。
ポリエスエル系エラストマーとしては、後述する接着層に用いることができるものと同様のものを用いることができる。
【0053】
上記中間層における上記ポリエステル系エラストマーの含有量は、好ましい下限が0重量%、より好ましい下限が0.1重量%、好ましい上限が1.0重量%、より好ましい上限が0.7重量%である。
【0054】
上記中間層は、更に、スチレン系エラストマーを含有してもよい。
スチレン系エラストマーとしては、後述する接着層に用いることができるものと同様のものを用いることができる。
【0055】
上記中間層における上記スチレン系エラストマーの含有量は、好ましい下限が0重量%、より好ましい下限が2重量%、好ましい上限が10重量%、より好ましい上限が7重量%である。
【0056】
上記中間層は、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0057】
(接着層)
上記表裏層と上記中間層との間により高い層間接着強度が求められる場合には、本発明の熱収縮性多層フィルムは、上記表裏層と上記中間層とが、接着層を介して積層されてなることが好ましい。
接着層を有することで、熱収縮性多層フィルムの各層間の接着強度を高めることができる。
【0058】
上記接着層は、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系エラストマー、又は、ポリエステル系エラストマーを含有することが好ましい。
【0059】
上記接着層を構成するポリスチレン系樹脂としては、特に接着性に優れることから、芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体を含有することが好ましく、特に、スチレン-ブタジエン共重合体(SBS樹脂)を含有することが好ましい。また、より接着性に優れる熱収縮性多層フィルムを作製するためには、上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体の共役ジエンとして2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)を用いたスチレン-イソプレン共重合体(SIS樹脂)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体(SIBS樹脂)等を含有することが好ましい。
なお、上記ポリスチレン系樹脂は、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちの何れかを単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。また、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちの複数を組み合わせて用いる場合、各樹脂をドライブレンドしてもよく、各樹脂を特定の組成にて押出機を用いて練り上げペレタイズしたコンパウンド樹脂を用いてもよい。
【0060】
上記接着層を構成するポリスチレン系樹脂中のスチレン成分含有量は、好ましい下限が50重量%、より好ましい下限が60重量%、好ましい上限が90重量%、より好ましい上限が85重量%である。
【0061】
上記接着層を構成するポリスチレン系樹脂中の共役ジエン成分含有量は、好ましい下限が10重量%、より好ましい下限が15重量%、好ましい上限が50重量%、より好ましい上限が40重量%である。
【0062】
上記接着層を構成するポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度は、好ましい下限が55℃、好ましい上限が85℃である。
上記ビカット軟化温度が55℃以上であると、熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを容器に装着する際の加熱による各層間での剥離を防止することができる。上記ビカット軟化温度が85℃以下であると、熱収縮性多層フィルムの層間接着強度を充分に向上させることができる。
上記ビカット軟化温度は、より好ましい下限が60℃、更に好ましい下限が65℃、より好ましい上限が80℃である。
なお、上記ビカット軟化温度は、ISO 306に準拠した方法で測定することができる。
【0063】
上記接着層を構成するポリスチレン系樹脂の200℃でのMFR(melt flow rate)は、好ましい下限が2g/10分、好ましい上限が15g/10分である。
200℃でのMFRが2g/10分以上であると、押出機内での樹脂の滞留が生じにくく、ゲル等の異物の発生を防止することができる。200℃でのMFRが15g/10分以下であると、製膜工程での圧力を均等にして、厚みを均一にすることができる。
上記MFRは、より好ましい下限が4g/10分、より好ましい上限が12g/10分である。
なお、MFRは、ISO1133に準拠した方法で測定することができる。
【0064】
上記ポリスチレン系樹脂としては、中間層を構成するものと同様のものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
【0065】
上記接着層における上記ポリスチレン系樹脂の含有量は、好ましい下限が10重量%、より好ましい下限が20重量%、好ましい上限が95重量%、より好ましい上限が80重量%である。
【0066】
上記接着層を構成するポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸とジオールとを縮重合させることにより得られるものを用いることができる。
上記ジカルボン酸としては特に限定されず、例えば、o-フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等が挙げられる。
上記ジオールとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール)、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール類等が挙げられる。
【0067】
上記ポリエステル系樹脂としては、なかでも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有し、かつ、ジオール成分としてエチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含有するものが好適に用いることができる。
また、上記ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有し、ジオール成分として1,4-ブタンジオールに由来する成分を含有するものも好適に用いることができる。
【0068】
上記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度の好ましい下限は30℃、より好ましい下限は55℃、好ましい上限は95℃、より好ましい上限は90℃である。
上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
【0069】
上記ポリエステル系樹脂の引張弾性率の好ましい下限は1000MPa、より好ましい下限は1500MPa、好ましい上限は4000MPa、より好ましい上限は3700MPaである。
なお、上記引張弾性率は、ASTM-D992(TestA)に準拠した方法で測定することができる。
【0070】
上記ポリエステル系樹脂としては、表裏層と構成するものと同様のものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
【0071】
上記接着層を構成するスチレン系エラストマーとしては、ハードセグメントとしてのポリスチレンと、ソフトセグメントとしてのポリブタジエン、ポリイソプレン、又は、ポリブタジエン及びポリイソプレンの共重合体とから構成される樹脂、これらの水素添加物等が挙げられる。なお、上記水素添加物は、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の一部が水素添加されたものであってもよく、全てが水素添加されたものであってもよい。
【0072】
上記スチレン系エラストマーは変性物であってもよい。
上記スチレン系エラストマーの変性物としては、例えば、カルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及び水酸基等の官能基によって変性されたものが挙げられる。
【0073】
上記スチレン系エラストマーの変性物における上記官能基の含有量の好ましい下限は0.05重量%、好ましい上限は5.0重量%である。
上記官能基の含有量が0.05重量%以上であると、熱収縮性多層フィルムの層間強度を充分に高めることができる。上記官能基の含有量が5.0重量%以下であると、スチレン系エラストマーの熱劣化によるゲル等の発生を抑制することができる。
上記官能基の含有量のより好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限が3.0重量%である。
【0074】
上記スチレン系エラストマー、又は、上記スチレン系エラストマーの変性物の市販品としては、例えば、タフテック、タフプレン(以上、いずれも旭化成ケミカルズ社製)、クレイトン(クレイトンポリマージャパン社製)、ダイナロン、JSR TR、JSR SIS(JSR社製)、セプトン(クラレ社製)等が挙げられる。
【0075】
上記ポリエステル系エラストマーとは、ハードセグメントであるポリエスエルと、ゴム弾性に富むソフトセグメントであるポリエーテル又はポリエステルとから構成されるものであり、具体的には、例えば、ハードセグメントとしての芳香族ポリエステルと、ソフトセグメントとしての脂肪族ポリエーテル又は脂肪族ポリエステルとからなるブロック共重合体等が挙げられ、飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましく、特に、ソフトセグメントとしてのポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましい。
上記ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントとしての芳香族ポリエステルと、ソフトセグメントとしてのポリアルキレンエーテルグリコールとからなるブロック共重合体が好ましい。
【0076】
上記ポリエステル系エラストマーとして、芳香族ポリエステルとポリアルキレンエーテルグリコールとからなるブロック共重合体を用いる場合、ポリアルキレンエーテルグリコールからなるセグメントの割合は、好ましい下限が5重量%、好ましい上限が90重量%である。
上記ポリアルキレンエーテルグリコールからなるセグメントの割合が5重量%以上であると、中間層との接着性を充分に高めることができ、90重量%以下であると、表裏層との接着性を充分に高めることができる。
上記ポリアルキレンエーテルグリコールからなるセグメントの割合は、より好ましい下限が30重量%、更に好ましい下限は55重量%、より好ましい上限が80重量%である。
【0077】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサンメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。
【0078】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量は、好ましい下限が400、より好ましい下限が600、更に好ましい下限が1000、好ましい上限が6000、より好ましい上限が4000、更に好ましい上限が3000である。
数平均分子量が上記好ましい範囲内であると、層間強度をより向上させることができる。
なお、上記数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定することができる。
【0079】
上記ポリエステル系エラストマーを作製する方法としては特に限定されないが、例えば、(i)炭素数2~12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールと、(ii)芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸又はそれらのエステルと、(iii)数平均分子量が400~6000のポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応によりオリゴマーを得た後、更に、オリゴマーを重縮合させることにより作製することができる。
【0080】
上記炭素数2~12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールとしては、例えば、ポリエステルの原料、特に、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として常用されているものが挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。なかでも、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールが好ましく、1,4-ブタンジオールがより好ましい。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
上記芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸としては、例えば、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として常用されているものが挙げられる。具体的には、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。なかでも、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
上記ポリエステル系エラストマーの市販品としては、例えば、「プリマロイ」(三菱化学社製)、「ペルプレン」(東洋紡績社製)、「ハイトレル」(東レ・デュポン社製)等が挙げられる。
【0083】
上記ポリエステル系エラストマーの融点は、好ましい下限が120℃、好ましい上限が200℃である。
上記融点が120℃以上であると、耐熱性を充分に高めて、熱収縮性ラベルとして容器に被覆させる際に溶剤シール部分からの剥離を防止することができる。上記融点が200℃以下であると、接着強度を充分に高めることができる。
上記融点は、より好ましい下限が130℃、より好ましい上限が190℃である。
なお、上記融点は、示差走査熱量計(島津製作所社製、DSC-60)等を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定することができる。
【0084】
上記ポリエステル系エラストマーの融点は、ハードセグメントであるポリエステルと、ソフトセグメントであるポリエーテル又はポリエステルの共重合比や構造に起因する。
一般的にポリエステル系エラストマーの融点は、ソフトセグメントであるポリエーテル又はポリエステルの共重合量に依存しやすく、ポリエーテル又はポリエステルの共重合量が多いと融点が低く、少ないと融点が高くなる。
また、ポリエステル系エラストマーを構成するハードセグメントであるポリエステルの融点を共重合成分の変更により調整し、ポリエステル系エラストマー全体の融点を調製することができる。
更に、ソフトセグメントであるポリエーテル又はポリエステルの分子量が小さくなると得られるポリエステル系エラストマーのブロック性が低下するため融点が低下しやすくなる。
【0085】
上記ポリエステル系エラストマーのデュロメーター硬さは、好ましい下限が10、好ましい上限が80である。
上記デュロメーター硬さが10以上であると、接着層の機械的強度を向上させることができる。上記デュロメーター硬さが80以下であると、接着層の柔軟性及び耐衝撃性を向上させることができる。
上記デュロメーター硬さは、より好ましい下限が15、更に好ましい下限が20、より好ましい上限が70、更に好ましい上限が60である。
なお、上記デュロメーター硬さは、ISO18517に準拠した方法でデュロメーター タイプDを用いることにより測定することができる。
【0086】
上記ポリエステル系エラストマーの比重は、好ましい下限が0.95、好ましい上限が1.20である。
上記比重が0.95以上であると、耐熱性を充分に高めて、熱収縮性ラベルとして容器に被覆させる際に溶剤シール部分からの剥離を防止することができる。上記比重が1.20以下であると、接着強度を充分に高めることができる。
上記比重は、より好ましい下限が0.98、より好ましい上限が1.18である。
なお、上記比重はISO 1183に準拠した方法で水中置換法を用いて測定することができる。
【0087】
上記接着層は、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系エラストマー又はポリエステル系エラストマーをそれぞれ単独で含むものであってもよく、これらを2種以上含有していてもよい。
【0088】
上記接着層が、上記ポリスチレン系樹脂と上記ポリエステル系エラストマーとの混合樹脂を含有する場合、上記接着層中のポリスチレン系樹脂の含有量は、好ましい下限が20重量%、より好ましい下限が25重量%、好ましい上限が80重量%、より好ましい上限が75重量%である。
また、上記接着層中のポリエステル系エラストマーの含有量は、好ましい下限が20重量%、より好ましい下限が25重量%、好ましい上限が80重量%、より好ましい上限が75重量%である。
【0089】
上記接着層が、上記ポリスチレン系樹脂と上記ポリエステル系樹脂との混合樹脂を含有する場合、上記接着層中のポリスチレン系樹脂の含有量は、好ましい下限が20重量%、より好ましい下限が25重量%、好ましい上限が80重量%、より好ましい上限が75重量%である。
また、上記接着層中のポリエステル系樹脂の含有量は、好ましい下限が20重量%、より好ましい下限が25重量%、好ましい上限が80重量%、より好ましい上限が75重量%である。
【0090】
上記接着層が、上記ポリエステル系樹脂と上記スチレン系エラストマーとの混合樹脂を含有する場合、上記接着層中のポリエステル系樹脂の含有量は、好ましい下限が20重量%、より好ましい下限が25重量%、好ましい上限が80重量%、より好ましい上限が75重量%である。
また、上記接着層中のスチレン系エラストマーの含有量は、好ましい下限が20重量%、より好ましい下限が25重量%、好ましい上限が80重量%、より好ましい上限が75重量%である。
【0091】
上記接着層が、上記ポリスチレン系樹脂、上記ポリエステル系樹脂、及び、上記スチレン系エラストマー又は上記ポリエステル系エラストマーを含有する混合樹脂を含む場合、上記接着層中のポリスチレン系樹脂の含有量は、好ましい下限が10重量%、より好ましい下限が20重量%、好ましい上限が80重量%、より好ましい上限が75重量%である。
また、上記接着層中のポリエステル系樹脂の含有量は、好ましい下限が10重量%、より好ましい下限が20重量%、好ましい上限が80重量%、より好ましい上限が75重量%である。
上記接着層中のスチレン系エラストマー又はポリエステル系エラストマーの含有量は、好ましい下限が2重量%、より好ましい下限が4重量%、好ましい上限が10重量%、より好ましい上限が8重量%である。
【0092】
上記接着層は、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
【0093】
本発明の熱収縮性多層フィルム全体の厚さは、好ましい下限が20μm、好ましい上限が80μmであり、より好ましい下限が25μm、より好ましい上限が70μmである。熱収縮性多層フィルム全体の厚さが上記範囲内であると、優れた熱収縮性、印刷又はセンターシール等の優れたコンバーティング性、優れた装着性が得られる。
また、本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、上記中間層の厚さは、熱収縮性多層フィルム全体の厚みに対する好ましい下限が50%、好ましい上限が90%である。上記中間層の厚さが上記範囲内であると、高い層間強度、高い透明性等が得られる。
【0094】
本発明の熱収縮性多層フィルムの動摩擦係数は、好ましい下限が0.1、好ましい上限が0.55であり、より好ましい下限が0.15、より好ましい上限が0.52である。上記動摩擦係数を上記範囲内とすることで、ブロッキング等の不具合を防止できる。また、得られる熱収縮性多層フィルムの取扱い性を向上させることができる。
【0095】
本発明の熱収縮性多層フィルムを70℃温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向(TD方向)の熱収縮率は、好ましい下限が10%である。上記熱収縮率が10%以上であると、しわや歪み等の収縮不良の問題を起こすことがなく、熱収縮性多層フィルムとして好適に使用することができる。
上記熱収縮率は、より好ましい下限が20%、好ましい上限が50%である。
本発明の熱収縮性多層フィルムを100℃温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向(TD方向)の熱収縮率は、好ましい下限が60%である。上記熱収縮率が60%以上であると、しわや歪み等の収縮不良の問題を起こすことがなく、熱収縮性多層フィルムとして好適に使用することができる。
上記熱収縮率は、より好ましい下限が62%、好ましい上限が85%である。
【0096】
本発明の熱収縮性多層フィルムを5℃雰囲気下での主収縮方向と直交する方向(MD方向)における引張破断伸度は、好ましい下限が100%である。
上記引張破断伸度が100%以上であると、印刷・シール加工等の工程において、フィルムの破断が生じにくく、生産性が向上する。
上記引張破断伸度は、より好ましい下限が200%、好ましい上限が400%である。
【0097】
本発明の熱収縮性多層フィルムを40℃雰囲気下で7日間静置した場合の主収縮方向(TD方向)における自然収縮率は、3.0%未満であることが好ましい。
上記自然収縮率が3.0%未満であると、保管の際の収縮が小さく、収縮不良等の問題を起こすことがなく、熱収縮性多層フィルムとして好適に使用することができる。
上記自然収縮率は、2.8%未満であることがより好ましい。
【0098】
本発明の熱収縮性多層フィルムの層間剥離強度は、好ましい下限が0.4N/10mmである。
上記層間剥離強度が、0.4N/10mm以上であると、印刷・シール加工やラベル装着時に表裏層と中間層との剥離が生じにくく、熱収縮性ラベルとして好適に用いることができる。
【0099】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法は特に限定されないが、共押出法により各層を同時に成形する方法が好ましい。上記共押出法がTダイによる共押出である場合、積層の方法は、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法のいずれであってもよい。
【0100】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法としては、具体的には、例えば、上記表裏層を構成する原料、上記中間層を構成する原料、及び、上記接着層を構成する原料をそれぞれ押出機に投入し、ダイスによりシート状に押出し、引き取りロールにて冷却固化した後、1軸又は2軸に延伸する方法が挙げられる。
上記延伸の方法としては、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法又はこれらの組み合わせを用いることができる。延伸温度はフィルムを構成する樹脂の軟化温度、熱収縮性多層フィルムに要求される収縮特性等に応じて変更されるが、好ましい下限は65℃、好ましい上限は120℃、より好ましい下限は70℃、より好ましい上限は115℃である。主収縮方向の延伸倍率はフィルムを構成する樹脂、延伸手段、延伸温度等に応じて変更されるが、好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上であって、好ましくは7倍以下、より好ましくは6倍以下である。このような延伸温度及び延伸倍率とすることにより、優れた厚み精度を達成することができる。
【0101】
本発明の熱収縮性多層フィルムの用途は特に限定されないが、本発明の熱収縮性多層フィルムは、ブロッキング防止性に優れるとともに、トラッピング不良を防止できることから、例えば、ペットボトル、金属罐等の容器に装着される熱収縮性ラベルのベースフィルムとして好適に用いられる。
【発明の効果】
【0102】
本発明によれば、フィルム同士の密着による繰り出し性の低下やラベル装着後のラベル同士の接着を抑制することができ、重ね刷りの際のインキとびを軽減して、トラッピング不良を防止することが可能な熱収縮性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0103】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0104】
実施例、参考例及び比較例においては、以下の原料を用いた。
(ポリエステル系樹脂)
・ポリエステル系樹脂A:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する100モル%、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を65モル%、ジエチレングリコールに由来する成分を20モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を15モル%含有するポリエステル系樹脂(ガラス転移温度69℃)
・ポリエステル系樹脂B:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する100モル%、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を68モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を32モル%含有するポリエステル系樹脂(ガラス転移温度82℃)
(ポリスチレン系樹脂)
・ポリスチレン系樹脂A:スチレン-ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%、ビカット軟化温度71℃)
・ポリスチレン系樹脂B:スチレン-ブタジエン共重合体(スチレン80重量%、ブタジエン20重量%、ビカット軟化温度77℃)
・ポリスチレン系樹脂C:スチレン-ブタジエン共重合体(スチレン82重量%、ブタジエン18重量%、ビカット軟化温度75℃)
・ポリスチレン系樹脂D:スチレン-ブタジエン共重合体(スチレン81重量%、ブタジエン19重量%、ビカット軟化温度81℃)
・ポリスチレン系樹脂E:スチレン-ブタジエン共重合体(スチレン71重量%、ブタジエン29重量%、ビカット軟化温度76℃)
(ポリエステル系エラストマー)
・エラストマーA:ポリブチレンテレフタレート及びポリエーテルからなるブロック共重合体(融点:193℃、ガラス転移温度:45℃)
(ポリスチレン系エラストマー)
・エラストマーB:変性スチレン-ブタジエン共重合体水添物(酸価2mgCHONa/g、スチレン30重量%、MFR:4.5g/10分)
(有機系微粒子)
微粒子A:ポリメチルメタクリレート(PMMA)(平均粒子径:2.2μm、熱分解開始温度:270℃)
微粒子B:ポリメチルメタクリレート(PMMA)(平均粒子径:3.3μm、熱分解開始温度:270℃)
(無機系微粒子)
微粒子C:多孔質シリカ(平均粒子径:4.0μm)
【0105】
(実施例1)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂A100重量%を用い、ポリエステル系樹脂A100重量部に対する微粒子A及び微粒子Bの含有量が表1に示す割合となるように添加して混合した。
接着層を構成する樹脂として、エラストマーA60重量%とポリスチレン系樹脂E40重量%とからなる混合樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂C70重量%とポリスチレン系樹脂D30重量%とからなる混合樹脂を用いた。
上記表裏層、接着層及び中間層の原料をバレル温度が160~250℃の押出機に投入し、250℃の多層ダイスから3層構造のシート状に押出し、30℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、延伸倍率1.5倍でMD方向へロール延伸し、引き続き予熱ゾーン112℃(通過時間5.3秒)、延伸ゾーン100℃(通過時間7.8秒)、熱固定ゾーン102℃(通過時間5.3秒)のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にてTD方向へ延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、総厚みが40μmであり、表層(5.7μm)/接着層(0.7μm)/中間層(27.2μm)/接着層(0.7μm)/裏層(5.7μm)の5層構成からなる熱収縮性多層フィルムを得た。
【0106】
(実施例2)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂A100重量%を用い、ポリエステル系樹脂A100重量部に対する微粒子A及び微粒子Bの含有量が表1に示す割合となるように添加して混合した。
接着層を構成する樹脂として、エラストマーA40重量%とポリスチレン系樹脂E60重量%とからなる混合樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂A70重量%とポリスチレン系樹脂D30重量%とからなる混合樹脂を用いた。
これらの原料を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが40μmであり、表層(5.7μm)/接着層(0.7μm)/中間層(27.2μm)/接着層(0.7μm)/裏層(5.7μm)の5層構造であった。
【0107】
参考例3)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂A100重量%を用い、ポリエステル系樹脂A100重量部に対する微粒子A及び微粒子Bの含有量が表1に示す割合となるように添加して混合した。
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂A30重量%とポリスチレン系樹脂E70重量%とからなる混合樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂B100重量%を用いた。
これらの原料を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが40μmであり、表層(5.7μm)/接着層(0.7μm)/中間層(27.2μm)/接着層(0.7μm)/裏層(5.7μm)の5層構造であった。
【0108】
参考例4)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂B100重量%を用い、ポリエステル系樹脂B100重量部に対する微粒子A及び微粒子Bの含有量が表1に示す割合となるように添加して混合した。
接着層を構成する樹脂として、エラストマーA100重量%を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂A100重量%を用いた。
これらの原料を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが40μmであり、表層(5.7μm)/接着層(0.7μm)/中間層(27.2μm)/接着層(0.7μm)/裏層(5.7μm)の5層構造であった。
【0109】
参考例5)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂B100重量%を用い、ポリエステル系樹脂B100重量部に対する微粒子A及び微粒子Bの含有量が表1に示す割合となるように添加して混合した。
接着層を構成する樹脂として、エラストマーB100重量%を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂A100重量%を用いた。
これらの原料を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが40μmであり、表層(5.7μm)/接着層(0.7μm)/中間層(27.2μm)/接着層(0.7μm)/裏層(5.7μm)の5層構造であった。
【0110】
(比較例1)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂B100重量%を用い、ポリエステル系樹脂B100重量部に対する微粒子A及び微粒子Bの含有量が表1に示す割合となるように添加して混合した。
接着層を構成する樹脂として、エラストマーA100重量%を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂A100重量%を用いた。
これらの原料を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが40μmであり、表層(5.7μm)/接着層(0.7μm)/中間層(27.2μm)/接着層(0.7μm)/裏層(5.7μm)の5層構造であった。
【0111】
(比較例2)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂A100重量%を用い、ポリエステル系樹脂A100重量部に対する微粒子A及び微粒子Bの含有量が表1に示す割合となるように添加して混合した。
接着層を構成する樹脂として、エラストマーA100重量%を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂A100重量%を用いた。
これらの原料を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが40μmであり、表層(5.7μm)/接着層(0.7μm)/中間層(27.2μm)/接着層(0.7μm)/裏層(5.7μm)の5層構造であった。
【0112】
(比較例3)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂A100重量%を用い、ポリエステル系樹脂A100重量部に対する微粒子A及び微粒子Bの含有量が表1に示す割合となるように添加して混合した。
接着層を構成する樹脂として、エラストマーA60重量%とポリスチレン系樹脂E40重量%とからなる混合樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂C70重量%とポリスチレン系樹脂D30重量%とからなる混合樹脂を用いた。
これらの原料を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが40μmであり、表層(5.7μm)/接着層(0.7μm)/中間層(27.2μm)/接着層(0.7μm)/裏層(5.7μm)の5層構造であった。
【0113】
(比較例4)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂A100重量%を用い、ポリエステル系樹脂100重量部に対する微粒子A及び微粒子Bの含有量が表1に示す割合となるように添加して混合した。
接着層を構成する樹脂として、エラストマーA60重量%とポリスチレン系樹脂E40重量%とからなる混合樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂C70重量%とポリスチレン系樹脂D30重量%とからなる混合樹脂を用いた。
これらの原料を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが40μmであり、表層(5.7μm)/接着層(0.7μm)/中間層(27.2μm)/接着層(0.7μm)/裏層(5.7μm)の5層構造であった。
【0114】
(比較例5)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂A100重量%を用い、ポリエステル系樹脂A100重量部に対する微粒子A及び微粒子Bの含有量が表1に示す割合となるように添加して混合した。
接着層を構成する樹脂として、エラストマーB100重量%を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂A100重量%を用いた。
これらの原料を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが40μmであり、表層(5.7μm)/接着層(0.7μm)/中間層(27.2μm)/接着層(0.7μm)/裏層(5.7μm)の5層構造であった。
【0115】
(比較例6)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂A100重量%を用い、ポリエステル系樹脂100重量部に対する微粒子Cの含有量が表1に示す割合となるように添加して混合した。
接着層を構成する樹脂として、エラストマーB100重量%を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂A100重量%を用いた。
これらの原料を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが40μmであり、表層(5.7μm)/接着層(0.7μm)/中間層(27.2μm)/接着層(0.7μm)/裏層(5.7μm)の5層構造であった。
【0116】
(比較例7)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂A100重量%を用い、ポリエステル系樹脂A100重量部に対する微粒子A、微粒子B及び滑剤の含有量が表1に示す割合となるように添加して混合した。なお、滑剤としては、オレイン酸ビスアマイドを用いた。
接着層を構成する樹脂として、エラストマーB100重量%を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂A100重量%を用いた。
これらの原料を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが40μmであり、表層(5.7μm)/接着層(0.7μm)/中間層(27.2μm)/接着層(0.7μm)/裏層(5.7μm)の5層構造であった。
【0117】
(評価)
実施例、参考例及び比較例で得られた熱収縮性多層フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0118】
(1)ブロッキング
実施例、参考例及び比較例で得られた熱収縮性多層フィルムを30mm×40mmにカットして2枚のサンプルを作製した。得られたサンプルを重ね合わせ、荷重5kg/100cm、40℃の条件で48時間静置した。その後、引張速度200m/minでせん断方向に引張り、せん断剥離硬度を測定し、以下の基準で評価した。
〇:せん断剥離強度が2000g/cm以下であった。
×:せん断剥離強度が2000g/cmを超えていた。
【0119】
(2)トラッピング
得られた熱収縮性多層フィルムを以下の条件で、5色のグラビア印刷機を用いて印刷を行った。
フィルム幅:900mm
印刷インキ:大日精化工業株式会社製 OSMタイプ 墨、赤、黄、青、白(下地部分)
インキ粘度:ザーンカップ法 #3のザーンカップで15秒
版;彫刻製版により作成したカラーチャート版
印刷速度;150m/min
印刷後の状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
〇:0~100%のグラデーションカーブにおける5~20%部分において、目視もしくは拡大鏡観察や印刷欠点検出装置により輪郭がはっきり印刷できている、若しくは、色の抜け(インキのとび)が25箇所未満であった。
△:色の抜け(インキのとび)が25~50箇所であった。
×:上記以外であった。
【0120】
(3)総合評価
ブロッキング及びトラッピングの結果に基づき、以下の基準で評価を行った。
〇:ブロッキング及びトラッピングの評価がいずれも「〇」であった。
×:上記以外であった。
【0121】
(4)熱収縮率
実施例、参考例及び比較例で得られたフィルムを、MD100mm×TD100mmの大きさのサンプルにカットし試験片を得た。得られた試験片を、70℃の温水及び沸騰水(100℃)に10秒間浸漬させた後、熱収縮性多層フィルムを取り出し、15℃の水に5秒間浸漬し、次式に従いTD方向の熱収縮率を求めた。なお、収熱縮率は、各実施例、参考例及び比較例につき、3つの試験片を用いて測定し、その平均値を用いた。
熱収縮率(%)={(100-L)/100}×100
【0122】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明によれば、フィルム同士の密着による繰り出し性の低下やラベル装着後のラベル同士の接着を抑制することができ、重ね刷りの際のインキとびを軽減して、トラッピング不良を防止することが可能な熱収縮性フィルムを提供することができる。