(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】半導体装置製造方法および半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20220920BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220920BHJP
B32B 37/00 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
H01L21/02 C
H01L21/02 B
H01L21/304 631
B32B37/00
(21)【出願番号】P 2018199007
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】山川 章
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/075444(WO,A1)
【文献】特開2014-013801(JP,A)
【文献】特開2001-085453(JP,A)
【文献】国際公開第2018/083961(WO,A1)
【文献】特開平02-312220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/304
B32B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および当該第1面とは反対の第2面を有する第1ウエハ、並びに、当該第1ウエハより薄い第2ウエハと、支持基板と、当該第2ウエハおよび支持基板の間の仮接着剤層とを含む積層構造を有する補強第2ウエハを、用意する工程と、
前記第1ウエハにおける前記第1面に接着剤層を介して前記補強第2ウエハにおける前記第2ウエハを接合する工程と、
前記第1ウエハにおける前記第2面上に樹脂層を形成する工程と、
前記支持基板と前記第2ウエハとの間における前記仮接着剤層による仮接着状態を解除して前記支持基板を取り外す工程と、を含
み、
前記接着剤層における熱膨張率(α
1
)と弾性率(E
1
)と厚さ(t
1
)とによって表現される、当該接着剤層がその被着体に作用する応力に係るパラメータσ
1
(=α
1
×E
1
×t
1
)に対する、前記樹脂層における熱膨張率(α
2
)と弾性率(E
2
)と厚さ(t
2
)とによって表現される、当該樹脂層がその被着体に作用する応力に係るパラメータσ
2
(=α
2
×E
2
×t
2
)の比の値(σ
2
/σ
1
)は、0.8~1.2である半導体装置製造方法。
【請求項2】
前記第1ウエハより薄い第2ウエハと、支持基板と、当該第2ウエハおよび支持基板の間の仮接着剤層とを含む積層構造を有する補強第2ウエハにおける前記第2ウエハを、前記第1ウエハ上の第2ウエハに接着剤層を介して接合する、少なくとも一つのウエハ追加工程と、
前記ウエハ追加工程ごとに行われる少なくとも一つの、前記第1ウエハの前記第2面側の樹脂層上に追加の樹脂層を形成する工程と、
前記ウエハ追加工程ごとに行われる少なくとも一つの、前記支持基板と前記第2ウエハとの間における前記仮接着剤層による仮接着状態を解除して前記支持基板を取り外す工程と、を更に含
み、
前記ウエハ追加工程ごとに追加的に形成される一の接着剤層における熱膨張率(α
1
)と弾性率(E
1
)と厚さ(t
1
)とによって表現される、当該接着剤層がその被着体に作用する応力に係るパラメータσ
1
(=α
1
×E
1
×t
1
)に対する、当該ウエハ追加工程に応じて行われる樹脂層追加工程で追加的に形成される一の樹脂層における熱膨張率(α
2
)と弾性率(E
2
)と厚さ(t
2
)とによって表現される、当該樹脂層がその被着体に作用する応力に係るパラメータσ
2
(=α
2
×E
2
×t
2
)の比の値(σ
2
/σ
1
)は、0.8~1.2である、請求項1に記載の半導体装置製造方法。
【請求項3】
前記第1ウエハにおける前記第2面側に対する研削によって当該第1ウエハを薄化する工程を更に含む、請求項1または2に記載の半導体装置製造方法。
【請求項4】
第1面および当該第1面とは反対の第2面を有する第1ウエハと、
前記第1ウエハの前記第1面側に位置し、且つ、当該第1ウエハより薄い、第2ウエハと、
前記第1および第2ウエハの間に介在している接着剤層と、
前記第1ウエハにおける前記第2面上に密着している樹脂層と、を含む積層構造を有
し、
前記接着剤層における熱膨張率(α
1
)と弾性率(E
1
)と厚さ(t
1
)とによって表現される、当該接着剤層がその被着体に作用する応力に係るパラメータσ
1
(=α
1
×E
1
×t
1
)に対する、前記樹脂層における熱膨張率(α
2
)と弾性率(E
2
)と厚さ(t
2
)とによって表現される、当該樹脂層がその被着体に作用する応力に係るパラメータσ
2
(=α
2
×E
2
×t
2
)の比の値(σ
2
/σ
1
)は、0.8~1.2である半導体装置。
【請求項5】
第1面および当該第1面とは反対の第2面を有する第1ウエハと、
それぞれが前記第1ウエハより薄く、且つ、前記第1ウエハの前記第1面側に位置して当該第1ウエハの厚さ方向に並んでいる、複数の第2ウエハと、
それぞれが、隣り合うウエハ間に介在して当該ウエハどうしを接合している、複数の接着剤層と、
前記第1ウエハの厚さ方向に積み重なる、前記接着剤層の総数と同数の樹脂層、を含み、且つ、前記第1ウエハにおける前記第2面上に密着している、多層樹脂部と、を含む積層構造を有
し、
前記第1ウエハの前記第1面側からm番目(mは、1から前記複数の接着剤層の数の間の整数である)の接着剤層における熱膨張率(α
1
)と弾性率(E
1
)と厚さ(t
1
)とによって表現される、当該接着剤層がその被着体に作用する応力に係るパラメータσ
1
(=α
1
×E
1
×t
1
)に対する、前記第1ウエハの前記第2面側からn番目(nは、前記mと同じ整数である)の樹脂層における熱膨張率(α
2
)と弾性率(E
2
)と厚さ(t
2
)とによって表現される、当該樹脂層がその被着体に作用する応力に係るパラメータσ
2
(=α
2
×E
2
×t
2
)の比の値(σ
2
/σ
1
)は、0.8~1.2である半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの更なる高密度化を主な目的として、複数の半導体チップないし半導体素子がその厚さ方向に集積された立体的構造を有する半導体デバイスを製造するための技術の開発が進められている。そのような技術の一つとして、いわゆるWOW(Wafer on Wafer)プロセスが知られている。WOWプロセスでは、ウエハを他のウエハに対して接着剤層を介して接合して積層する工程と、当該積層ウエハに対するその後の各種の加工工程とを含む一連の工程が、所定の回数、行われる。ウエハ接合工程では、例えば、トランジスタ作製工程、配線形成工程、および薄化工程を経て得られる薄いウエハが、厚いベースウエハに対し、或いは、既にウエハ接合工程を経てベースウエハ上に積層された他の薄いウエハに対し、接着剤層を介して接合されて積層される。所定数のウエハの積層を経て得られるウエハ積層体の、複数の半導体チップが積層された構造を有する半導体デバイスへの個片化は、ウエハ積層体の厚さ方向における複数のウエハに対する一括的な切断によって行われる。このようなWOWプロセスについては、例えば下記の特許文献1~3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-73128号公報
【文献】特開2015-119111号公報
【文献】特開2015-164160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
WOWプロセスにおいては、例えば上述のように、厚さの異なるウエハどうしが接着剤層を介して接合されるところ、この接合は、接着剤層を硬化させるための所定の高温条件を経て実現される。また、硬化後の接着剤層の熱膨張率は、ウエハの熱膨張率より大きく、両熱膨張率の差は相当程度に大きい。そのため、ウエハ接合工程を経た後に例えば常温に至ったウエハ積層体においては、ウエハと接着剤層との間の熱膨張率差に起因して反りが生じやすい。具体的には、厚いベースウエハとこれに積層される薄いウエハとの間において所定の高温条件で硬化して当該ウエハ間を接合する接着剤層は例えば、接合工程後の降温過程で両ウエハよりも大きく収縮するところ、例えば常温に至ったウエハ積層体は、当該接着剤層の収縮に対する抵抗がベースウエハより小さな薄いウエハの側に積層体端部が反りやすいのである。この反りの程度は、接着剤層を介して積層されるウエハが薄いほど大きくなる傾向にあり、また、積層される薄いウエハの数が増すほど、累積して大きくなる傾向にある。ウエハ積層体に対する各種の加工工程ごとに、許容される反りの程度には上限があるので、WOWプロセスによると、積層可能なウエハの数、即ち、製造目的の半導体装置にて多層化可能な半導体素子の総数は、当該上限による制約を受けることとなる。
【0005】
本発明は、以上のような事情のもとで考え出されたものであって、半導体素子の多層化を図るのに適した半導体装置製造方法および半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によると、半導体装置製造方法が提供される。この半導体装置製造方法は、用意工程と、ウエハ接合工程と、樹脂層形成工程と、取外し工程とを含む。用意工程では、第1ウエハおよび補強第2ウエハが用意される。第1ウエハは、第1面、および、当該第1面とは反対の第2面を有する。補強第2ウエハは、第1ウエハより薄い第2ウエハと、補強用の支持基板と、これら第2ウエハおよび支持基板の間の仮接着剤層とを含む積層構造を有する。補強第2ウエハにおける仮接着剤層は、第2ウエハと支持基板との間の、事後的に解除可能な仮の接着状態を、実現するためのものである。ウエハ接合工程では、第1ウエハにおける第1面に接着剤層を介して補強第2ウエハにおける第2ウエハが接合される。この接合は、例えば、接着剤層を硬化させるための所定の高温条件を経て実現される。このようなウエハ接合工程より前に、第1ウエハの第1面、および/または、補強第2ウエハにおける第2ウエハの接合予定面は、形成される接着剤層との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。ウエハ接合工程より後の樹脂層形成工程では、第1ウエハにおける第2面上に樹脂層が形成される。樹脂層は例えば硬化型の材料よりなり、樹脂層の構成材料としては、例えば、ウエハ接合用の上述の接着剤層を形成するための接着剤と同じ組成の接着剤を用いてもよい。当該樹脂層の形成は、例えば、樹脂層を硬化させるための所定の高温条件を経て実現される。このような樹脂層形成工程より前に、第1ウエハの第2面は、形成される樹脂層との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。そして、取外し工程では、支持基板と第2ウエハとの間における仮接着剤層による仮接着状態が解除されて支持基板の取外しが行われる。
【0007】
本半導体装置製造方法における上述のウエハ接合工程では、仮接着剤層を介して支持基板が接合された状態にある相対的に薄い第2ウエハが、相対的に厚い第1ウエハに対して接着剤層を介して接合される。このようなウエハ接合工程を経て得られる、第1および第2ウエハを含むウエハ積層体(第2ウエハに接合している支持基板を伴う)においては、例えば常温に降温した場合、硬化した接着剤層の収縮に対する第2ウエハそれ自体の抵抗は、同接着剤層の収縮に対する第1ウエハの抵抗よりも、第2ウエハが第1ウエハより薄いために、小さい。しかしながら、硬化した接着剤層の収縮に対する抵抗について、第2ウエハに接合している支持基板が第2ウエハを補い得る。たとえ、第1および第2ウエハの厚さの差が大きくて、硬化後接着剤層の収縮に対する第2ウエハそれ自体の抵抗が第1ウエハの抵抗よりも相当程度に小さい場合であっても、第2ウエハにおける第1ウエハ接合側とは反対の側に接合している支持基板が、硬化後接着剤層の収縮に対する抵抗について第2ウエハを補うことが可能なのである。したがって、当該ウエハ積層体(第2ウエハに接合している支持基板を伴う)においては、第1および第2ウエハと接着剤層との間の熱膨張率差および両ウエハと接着剤層との非対称的な積層構成に起因する、反りの発生が、抑制される。
【0008】
加えて、本半導体装置製造方法においては、上述のように、第2ウエハから支持基板が分離されて取り外される工程(取外し工程)より前に、第1ウエハにおける第2面上に樹脂層が形成される工程(樹脂層形成工程)が行われる。このような樹脂層形成工程とそれより後の取外し工程とを経て例えば常温下にあるウエハ積層体においては、硬化後の接着剤層の収縮応力が第1ウエハの第1面に作用するとともに、硬化後の樹脂層の収縮応力が第1ウエハの第2面(前記第1面とは反対の第2面)に作用する。そのため、たとえ、第1および第2ウエハの厚さの差が大きくて、硬化後接着剤層の収縮に対する第2ウエハの抵抗が第1ウエハの抵抗よりも相当程度に小さい場合であっても、第1ウエハの第1面に作用する硬化後接着剤層の収縮応力(第1ウエハに対してその端部を第1面側へ変形させるように作用する)を、当該第1ウエハの第2面に作用する硬化後樹脂層の収縮応力でもって減殺ないし相殺することが可能である。したがって、樹脂層形成工程とそれより後の取外し工程とが行われるという上述の構成は、相対的に厚い第1ウエハと、相対的に薄い第2ウエハと、これら第1および第2ウエハの間の接着剤層とを含むウエハ積層体において、取外し工程を経た後の反りの発生を抑制するのに適する。
【0009】
以上のように、本半導体装置製造方法は、製造プロセス中のウエハ積層体において反りの発生を抑制するのに適する。そして、製造プロセス中のウエハ積層体における反りの程度が小さいほど、当該ウエハ積層体に対する各種加工を高精度で実施しやすく、当該ウエハ積層体の多層化、ひいては、製造される半導体装置における半導体素子の多層化を、図りやすい。したがって、本半導体装置製造方法は、半導体素子の多層化を図るのに適する。
【0010】
本半導体装置製造方法は、好ましくは、少なくとも一つのウエハ追加工程と、当該ウエハ追加工程ごとに行われる少なくとも一つの樹脂層追加工程と、ウエハ追加工程ごとに行われる少なくとも一つの取外し工程とを更に含む。ウエハ追加工程では、第1ウエハより薄い第2ウエハと、補強用の支持基板と、当該第2ウエハおよび支持基板の間の仮接着剤層とを含む積層構造を有する補強第2ウエハにおける第2ウエハが、第1ウエハ上の別の第2ウエハに接着剤層を介して接合される。第1ウエハ上の別の第2ウエハとは、上述のウエハ接合工程において第1ウエハの第1面に接合された第2ウエハ、または、先行のウエハ追加工程において第1ウエハ上に追加的に積層された第2ウエハである。補強第2ウエハにおける仮接着剤層は、第2ウエハと支持基板との間の、事後的に解除可能な仮の接着状態を、実現するためのものである。ウエハ追加工程での接合は、例えば、接着剤層を硬化させるための所定の高温条件を経て実現される。このようなウエハ追加工程より前に、第1ウエハ上の第2ウエハの接合予定面、および/または、補強第2ウエハにおける第2ウエハの接合予定面は、形成される接着剤層との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。ウエハ追加工程より後の樹脂層追加工程では、第1ウエハの第2面側の樹脂層上に追加の樹脂層が形成される。樹脂層は例えば硬化型の材料よりなり、樹脂層の構成材料としては、例えば、ウエハ接合用の上記接着剤層を形成するための接着剤と同じ組成の接着剤を用いてもよい。当該樹脂層の形成は、例えば、樹脂層を硬化させるための所定の高温条件を経て実現される。このような樹脂層追加工程により、第1ウエハの厚さ方向に積み重なる複数の樹脂層を含んで第2面上に密着している多層樹脂部が形成されることとなる。この多層樹脂部に含まれる樹脂層の数は、ウエハ間の接着剤層の合計数と同じである。このような樹脂層追加工程より前に、第1ウエハの第2面側の樹脂層表面は、追加形成される樹脂層との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。そして、樹脂層追加工程より後の取外し工程では、ウエハ追加工程を経た補強第2ウエハにおける支持基板と第2ウエハとの間における仮接着剤層による仮接着状態が解除されて支持基板の取外しが行われる。
【0011】
本半導体装置製造方法における上述のウエハ追加工程では、相対的に厚い第1ウエハ上に上述のウエハ接合工程または先行のウエハ追加工程にて接着剤層を介して接合された第2ウエハに対して、仮接着剤層を介して支持基板が接合された状態にある相対的に薄い新たな第2ウエハが、新たな接着剤層を介して接合される。このようなウエハ追加工程を経て得られる、第1ウエハおよび複数の第2ウエハを含むウエハ積層体(最も後に積層された第2ウエハに接合している支持基板を伴う)においては、例えば常温に降温した場合、硬化した各接着剤層の収縮に対する各第2ウエハそれ自体の抵抗は、同接着剤層の収縮に対する第1ウエハの抵抗よりも、各第2ウエハが第1ウエハより薄いために、小さい。しかしながら、硬化した各接着剤層の収縮に対する抵抗について、補強第2ウエハにおける支持基板が各第2ウエハを補い得る。たとえ、第1および各第2ウエハの厚さの差が大きくて、硬化後の各接着剤層の収縮に対する各第2ウエハそれ自体の抵抗が第1ウエハの抵抗よりも相当程度に小さい場合であっても、補強第2ウエハにおける支持基板が、硬化後の各接着剤層の収縮に対する抵抗について各第2ウエハを補うことが可能なのである。したがって、各ウエハ追加工程を経て得られるウエハ積層体(最も後に積層された第2ウエハに接合している支持基板を伴う)においては、互いに異なる熱膨張率を示す第1ウエハおよび複数の第2ウエハと複数の接着剤層との所定の非対称的な積層構成に起因する、反りの発生が、抑制される。
【0012】
加えて、本半導体装置製造方法の上述の好ましい構成においては、ウエハ追加工程を経た補強第2ウエハにおける第2ウエハから支持基板が分離されて取り外される工程(取外し工程)より前に、第1ウエハの第2面側の樹脂層上に追加の樹脂層が形成される工程(樹脂層追加工程)が行われる。このような樹脂層追加工程とそれより後の取外し工程とを経て例えば常温下にあるウエハ積層体においては、第1ウエハの第1面側に位置する各接着剤層の収縮応力が直接的または間接的に第1ウエハの第1面に作用するとともに、第1ウエハの第2面に密着している多層樹脂部の各樹脂層の収縮応力が合して第1ウエハの第2面に作用する。そして、製造プロセス中のウエハ積層体が補強第2ウエハの支持基板を伴わない状態において、第1ウエハの第1面側にある接着剤層の総数と、第2面側にある樹脂層の総数とは、同じである。そのため、たとえ、第1および第2ウエハの厚さの差が大きくて、硬化後の各接着剤層の収縮に対する各第2ウエハの抵抗が第1ウエハの抵抗よりも相当程度に小さい場合であっても、第1ウエハの第1面側に作用する各接着剤層の総収縮応力(第1ウエハに対してその端部を第1面側へ変形させるように作用する)を、当該第1ウエハの第2面側に作用する各樹脂層の総収縮応力でもって減殺ないし相殺することが可能である。したがって、ウエハ追加工程ごとに樹脂層追加工程とそれより後の取外し工程とが行われるという上述の構成は、相対的に厚い第1ウエハと、相対的に薄い複数の第2ウエハと、それぞれがウエハ間に介在している複数の接着剤層とを含むウエハ積層体において、取外し工程を経た後の反りの発生を抑制するのに適する。
【0013】
以上のように、本半導体装置製造方法の上述の好ましい構成は、ウエハの多層化が図られる製造プロセス中のウエハ積層体において、反りの発生を抑制するのに適する。WOWプロセスにおいては、積層されるウエハの数が増すほどウエハ積層体の反りの程度は累積して大きくなる傾向にあるものの、本半導体装置製造方法の上述の好ましい構成は、そのような反りの程度を抑制するのに適するのである。
【0014】
本半導体装置製造方法は、好ましくは、第1ウエハの第2面側に対する研削によって当該第1ウエハを薄化する工程(研削工程)を更に含む。この研削工程により、第1ウエハの第2面上の多層樹脂部を除去したうえで、第1ウエハを所定の厚さにまで薄化することが可能である。
【0015】
本発明の第2の側面によると、半導体装置が提供される。この半導体装置は、第1ウエハと、第2ウエハと、接着剤層と、樹脂層とを含む積層構造を有する。第1ウエハは、第1面、および、当該第1面とは反対の第2面を有する。第2ウエハは、第1ウエハの第1面側に位置し、且つ、第1ウエハより薄い。接着剤層は、第1ウエハと第2ウエハとの間に介在している。接着剤層は、例えば、所定の高温条件を経て硬化されたものである。樹脂層は、第1ウエハにおける第2面上に密着している。樹脂層は、例えば、所定の高温条件を経て硬化されたものである。
【0016】
このような構成の半導体装置においては、例えば常温下にて、第1ウエハの第1面側に位置する接着剤層の収縮応力が第1ウエハの第1面に作用するとともに、第1ウエハの第2面側に位置する樹脂層の収縮応力が第1ウエハの第2面に作用する。そのため、本半導体装置においては、たとえ、第1および第2ウエハの厚さの差が大きくて、接着剤層の収縮に対する第2ウエハの抵抗が第1ウエハの抵抗よりも相当程度に小さい場合であっても、第1ウエハの第1面に作用する接着剤層の収縮応力(第1ウエハに対してその端部を第1面側へ変形させるように作用する)を、当該第1ウエハの第2面に作用する樹脂層の収縮応力でもって減殺ないし相殺することが可能である。したがって、本半導体装置は、反りの発生を抑制するのに適する。反りの発生を抑制するのに適した本半導体装置は、例えば更なる加工を要する場合に当該加工を高精度で実施しやすく、半導体素子の多層化された半導体装置として適切に製造しやすい。したがって、本半導体装置は、半導体素子の多層化を図るのに適する。
【0017】
本発明の第3の側面によると、半導体装置が提供される。この半導体装置は、第1ウエハと、複数の第2ウエハと、複数の接着剤層と、多層樹脂部とを含む積層構造を有する。第1ウエハは、第1面、および、当該第1面とは反対の第2面を有する。複数の第2ウエハは、それぞれが第1ウエハより薄く、且つ、第1ウエハの第1面側に位置して当該第1ウエハの厚さ方向に並んでいる。複数の接着剤層のそれぞれは、隣り合うウエハ間に介在して当該ウエハどうしを接合している。各接着剤層は、例えば、所定の高温条件を経て硬化されたものである。多層樹脂部は、第1ウエハの厚さ方向に積み重なる複数の樹脂層を含み、且つ、第1ウエハにおける第2面上に密着している。多層樹脂部の各樹脂層は、例えば、所定の高温条件を経て硬化されたものである。このような多層樹脂部に含まれる樹脂層の数は、それぞれがウエハ間に介在する接着剤層の合計数と同じである。
【0018】
このような構成の半導体装置においては、例えば常温下にて、第1ウエハの第1面側に位置する各接着剤層の収縮応力が直接的または間接的に第1ウエハの第1面に作用するとともに、第1ウエハの第2面側に位置する多層樹脂部の収縮応力が第1ウエハの第2面に作用する。そして、本半導体装置において、第1ウエハの第1面側にある接着剤層の総数と、第2面側にある多層樹脂部に含まれる樹脂層の総数とは、同じである。そのため、本半導体装置においては、たとえ、第1および第2ウエハの厚さの差が大きくて、各接着剤層の収縮に対する各第2ウエハの抵抗が第1ウエハの抵抗よりも相当程度に小さい場合であっても、第1ウエハの第1面に作用する各接着剤層の総収縮応力(第1ウエハに対してその端部を第1面側へ変形させるように作用する)を、当該第1ウエハの第2面に作用する多層樹脂部の総収縮応力でもって減殺ないし相殺することが可能である。したがって、本半導体装置は、反りの発生を抑制するのに適する。WOWプロセスにおいては、積層されるウエハの数が増すほどウエハ積層体の反りの程度は累積して大きくなる傾向にあるものの、本半導体装置は、そのような反りの程度を抑制するのに適するのである。反りの発生を抑制するのに適した本半導体装置は、例えば更なる加工を要する場合に当該加工を高精度で実施しやすく、半導体素子の多層化された半導体装置として適切に製造しやすい。したがって、本半導体装置は、半導体素子の多層化を図るのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図2】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図3】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図4】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図5】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図6】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図7】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図8】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図9】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から
図9は、本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法を表す。この製造方法は、半導体素子がその厚さ方向に集積された立体的構造を有する半導体装置を製造するための方法であり、
図1から
図9は製造過程を部分断面図で表すものである。
【0021】
本半導体装置製造方法においては、まず、
図1(a)に示すように、ウエハ11および補強ウエハ12Rが用意される(用意工程)。
【0022】
ウエハ11は、面11a、および、これとは反対の面11bを有する。ウエハ11は、面11aの側に各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ且つ当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が面11a上に既に形成されている、半導体ウエハである。ウエハ11をなすための半導体ウエハの構成材料としては、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、炭化ケイ素(SiC)、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、およびインジウムリン(InP)が挙げられる。このようなウエハ11の厚さは、製造プロセス中の当該ウエハ11を含むウエハ積層体の強度を確保するという観点からは、好ましくは300μm以上、より好ましくは500μm以上、より好ましくは700μm以上である。後述の研削工程における研削時間の短縮化の観点からは、ウエハ11の厚さは、好ましくは1000μm以下、より好ましくは900μm以下、より好ましくは800μm以下である。
【0023】
補強ウエハ12Rは、ウエハ12と、支持基板Sと、これらウエハ12および支持基板Sの間の仮接着剤層13とを含む積層構造を有する。
【0024】
ウエハ12は、面12a、および、これとは反対の面12bを有する。ウエハ12は、面12aの側に各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ且つ当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が面12a上に既に形成されている、半導体ウエハである。或いは、ウエハ12は、面12aの側に各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれたものであって、当該半導体素子に必要な配線構造等が面12a上に後に形成されるものであってもよい。ウエハ12をなすための半導体ウエハの構成材料としては、例えば、ウエハ11をなすための半導体ウエハの構成材料として上掲したものを採用することができる。また、ウエハ12は、上述のウエハ11よりも薄い。ウエハ12の厚さは、製造される半導体装置の薄型化や小型化の観点からは、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下である。作り込まれる半導体素子の特性を確保するという観点からは、ウエハ12の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、より好ましくは2.5μm以上である。
【0025】
補強ウエハ12Rにおける支持基板Sは、薄いウエハ12を補強するためのものである。支持基板Sとしては、例えば、シリコンウエハやガラスウエハが挙げられる。支持基板Sの厚さは、補強要素としての機能を確保するという観点からは、好ましくは300μm以上、より好ましくは500μm以上、より好ましくは700μm以上である。支持基板Sの厚さは例えば800μm以下である。このような支持基板Sは、ウエハ12の面12aの側に仮接着剤層13を介して接合されている。
【0026】
仮接着剤層13は、ウエハ12と支持基板Sとの間の、事後的に解除可能な仮の接着状態を、実現するためのものである。このような仮接着剤層13を形成するための接着剤としては、例えば、所定の温度領域では仮接着剤層13において粘着性ないし接着性を発現させる高分子材料であって当該温度領域を超える高温域に軟化点を有する高分子材料を含有して、ウエハ12を形成するための後記の研削加工に耐えうる接着力や、加熱を伴う後記のウエハ接合工程等に耐えうる耐熱性、後記の取外し工程を適切に行うための軽剥離機能を兼ね備える接着剤が、用いられる。仮接着剤層13形成用の接着剤としては、例えば、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、または、ワックスタイプの接着剤を採用することができる。仮接着剤層13形成用の接着剤としては、特開2008-13589号公報、特開2008-13590号公報、または特開2008-49443号公報に記載のものを採用してもよい。以上のような仮接着剤層13の厚さは、例えば1~20μmである。
【0027】
このような構成の補強ウエハ12Rは、例えば次のような工程を経て、作製することができる。まず、
図2(a)に示すように、支持基板S上に仮接着剤層13を形成する。具体的には、仮接着剤層13形成用の接着剤組成物を支持基板S上に例えばスピンコーティングによって塗布して仮接着剤組成物層を形成し、加熱によって当該組成物層を乾燥させて、仮接着剤層13を形成することができる。当該加熱の温度は例えば100~300℃であり、加熱時間は例えば30秒~30分間である。次に、
図2(b)および
図2(c)に示すように、支持基板Sとウエハ12’とを仮接着剤層13を介して接合する。ウエハ12’は、面12a、および、これとは反対の面12b’を有する。ウエハ12’は、面12aの側に各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ且つ当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が面12a上に既に形成されている、半導体ウエハである。本接合工程では、例えば、支持基板Sとウエハ12’とを仮接着剤層13を介して加圧しつつ貼り合わせた後、加熱を経て仮接着剤層2を固化させ、これら支持基板Sとウエハ12’とを仮接着剤層2によって接着させる。貼り合わせにおいて、加圧力は例えば300~5000g/cm
2であり、温度は例えば30~200℃である。また、仮接着剤層13による接着において、加熱温度は例えば100~300℃であり、加熱時間は例えば30秒~30分間である。そして、ウエハ12’を薄化して、
図2(d)に示すように上述のウエハ12を形成する。具体的には、支持基板Sに支持された状態にあるウエハ12’に対してその面12b’の側からグラインド装置を使用して研削加工を行うことによって、ウエハ12’を所定の厚さに至るまで薄化し、ウエハ12を形成することができる。以上のようにして、ウエハ12と、支持基板Sと、これらの間の仮接着剤層13とを含む積層構造の補強ウエハ12Rを作製することができる。補強ウエハ12Rにおけるウエハ12の面12bは、後記の接着剤層21との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。
【0028】
本半導体装置製造方法においては、次に、例えばウエハ11の面11a上に、
図1(b)に示すように接着剤層21が形成された後、
図1(c)に示すように、当該ウエハ11と補強ウエハ12Rのウエハ12とが接着剤層21を介して接合される(ウエハ接合工程)。
【0029】
接着剤層21は、ウエハ11,12間の接合状態を実現するためのものであり、熱硬化型接着剤よりなる。当該熱硬化型接着剤をなすための粘着剤主成分としては、例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン、ベンゾシクロブテン(BCB)樹脂、およびノボラック系エポキシ樹脂が挙げられる。各種加熱条件や温度変動を含む本方法における温度環境に耐えうる良好な耐熱性や耐クラック性を実現するという観点からは、接着剤層21の形成には、ポリオルガノシルセスキオキサン含有熱硬化型接着剤を採用するのが好ましい。ポリオルガノシルセスキオキサン含有熱硬化型接着剤としては、例えば国際公開第2016/204114号に記載の接着剤を採用することができる。また、接着剤層21をなすための熱硬化型接着剤の耐熱性に関し、当該接着剤の熱分解温度は、好ましくは200℃以上、より好ましくは260℃以上、より好ましくは300℃以上である。熱分解温度は、示差熱熱重量同時測定装置を使用して行う熱重量分析によって得られる曲線、即ち、分析対象である試料についての所定昇温範囲での熱重量の温度依存性を表す曲線における、昇温過程初期の重量減少のない或いは一定割合でわずかに漸減している部分の接線と、昇温過程初期に続く昇温過程中期の有意な重量減少が生じている部分内にある変曲点での接線との交点が示す温度とする。示差熱熱重量同時測定装置としては、例えば、セイコーインスツル株式会社製の商品名「TG-DTA6300」を使用することができる。このような接着剤層21の形成においては、例えば、接着剤層21形成用の接着剤組成物をウエハ11の面11aにスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成し、加熱によって当該組成物層を乾燥させて固化させる。このときの加熱温度は例えば50~150℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。このような接着剤層21の形成より前に、ウエハ11の面11aは、接着剤層21との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。また、本実施形態では、ウエハ11の面11a上に接着剤層21を形成するのに代えて、ウエハ12の面12b上に接着剤層21を形成してもよい。
【0030】
ウエハ接合工程においては、具体的には、ウエハ11と、補強ウエハ12Rないしウエハ12とを、接着剤層21を介して加圧しつつ貼り合せた後、加熱によって接着剤層21を硬化させる。貼り合わせにおいて、加圧力は例えば300~5000g/cm2であり、温度は例えば30~200℃である。接着剤層21の硬化において、加熱温度は例えば30~200℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。また、接着剤層21の厚さは、例えば0.5~20μmである。
【0031】
本半導体装置製造方法においては、次に、
図1(d)に示すように樹脂層31が形成される(樹脂層形成工程)。樹脂層31は例えば硬化型の材料よりなり、樹脂層31の構成材料としては、例えば、上述の接着剤層21を形成するための接着剤と同じ組成の熱硬化型接着剤を採用することができる。樹脂層31の形成においては、例えば、樹脂層31形成用の接着剤組成物をウエハ11の面11bにスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成し、加熱によって当該組成物層を乾燥させ且つ当該組成物中の硬化成分を硬化させる。このときの加熱温度は例えば30~200℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。このような樹脂層31の形成より前に、ウエハ11の面11bは、樹脂層31との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。
【0032】
次に、ウエハ12と支持基板Sとの間における仮接着剤層13による仮接着状態が解除されて、
図3に示すように、ウエハ12から支持基板Sが取り外される(取外し工程)。具体的には、所定の高温加熱によって接着力の低下する上述の仮接着剤層13に対して軽剥離化用の当該加熱を行った後、ウエハ12に対して支持基板Sを例えばスライドさせることによって、ウエハ12ないしこれを含むウエハ積層体から支持基板Sを分離して取り外すことができる。本工程において、加熱温度は例えば130~250℃であり、加熱時間は例えば30秒~15分間である。上述の補強ウエハ12Rにおけるウエハ12がその面12a側に絶縁膜や配線パターンを含む配線構造等を伴わないものである場合、本取外し工程の後、ウエハ12の面12a上に配線構造等が形成される。後記の取外し工程の後においても同様である。
【0033】
次に、
図4に示すように、取外し工程を経て得られるウエハ積層体において、異なるウエハ(ウエハ11とウエハ12)に形成されている半導体素子間の電気的接続のための貫通電極41が形成される。例えば、ウエハ12と接着剤層21とを貫通してウエハ11上の上記配線構造(図示略)に至る開口部の形成、当該開口部の内壁面への絶縁膜(図示略)の形成、絶縁膜表面へのバリア層(図示略)の形成、バリア層表面への電気めっき用シード層(図示略)の形成、および、電気めっき法による開口部内への銅など導電材料の充填を経るなどして、貫通電極41を形成することができる。貫通電極41により、ウエハ11の面11aの側に形成されている配線構造(図示略)と、ウエハ12の面12aの側に形成されている配線構造(図示略)とが、電気的に接続される。
【0034】
本半導体装置製造方法においては、次に、上述のようにして得られるウエハ積層体におけるウエハ12の面12a上に例えば、
図5(a)に示すように接着剤層21が形成された後、
図5(b)に示すように、当該ウエハ12と新たな補強ウエハ12Rのウエハ12(追加のウエハ12)とが接着剤層21を介して接合される(ウエハ追加工程)。
【0035】
ウエハ追加工程における接着剤層21の形成においては、例えば、接着剤層21形成用の接着剤組成物をウエハ接合体におけるウエハ12の面12aにスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成し、加熱によって当該組成物層を固化させる。当該加熱の温度は例えば50~150℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。このような接着剤層21の形成より前に、ウエハ接合体におけるウエハ12の面12aは、接着剤層21との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。
【0036】
ウエハ追加工程に供される補強ウエハ12Rは、追加のウエハ12と、支持基板Sと、これらの間の仮接着剤層13とを含む積層構造を有する。この補強ウエハ12Rの構成および作製手法については、ウエハ接合工程に関して上述した補強ウエハ12Rの構成および作製手法と同様である。ウエハ追加工程にて形成される上述の接着剤層21は、このような補強ウエハ12Rにおける追加のウエハ12の面12b上に形成されてもよい。
【0037】
ウエハ追加工程においては、具体的には、ウエハ12と、新たな補強ウエハ12Rないし追加のウエハ12とを、接着剤層21を介して加圧しつつ貼り合せた後、加熱によって接着剤層21を硬化させる。貼り合わせにおいて、加圧力は例えば300~5000g/cm2であり、温度は例えば30~200℃である。接着剤層21の硬化において、加熱温度は例えば30~200℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。また、接着剤層21の厚さは、例えば0.5~20μmである。
【0038】
本半導体装置製造方法においては、次に、
図5(c)に示すように、追加の樹脂層31が形成される(樹脂層追加工程)。樹脂層31は例えば硬化型の材料よりなり、樹脂層31の構成材料としては、例えば、上述の接着剤層21を形成するための接着剤と同じ組成の熱硬化型接着剤を採用することができる。樹脂層31の形成においては、例えば、樹脂層31形成用の接着剤組成物を、ウエハ11の面11b側に既に形成されている樹脂層31上にスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成し、加熱によって当該組成物層を乾燥させ且つ当該組成物中の硬化成分を硬化させる。このときの加熱温度は例えば30~200℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。このような追加の樹脂層31の形成より前に、ウエハ11の面11b側に既に形成されている樹脂層31の表面は、追加の樹脂層31との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。以上のような樹脂層追加工程により、ウエハ11の厚さ方向に積み重なる複数の樹脂層31を含んで面11b上に密着している多層樹脂部30が形成されることとなる。樹脂層追加工程は、ウエハ追加工程ごとに行われるところ、多層樹脂部30に含まれる樹脂層31の数は、それぞれがウエハ間に介在する接着剤層21の合計数と同じである。
【0039】
次に、補強ウエハ12Rにおけるウエハ12と支持基板Sとの間における仮接着剤層13による仮接着状態が解除されて、
図6に示すように、図中最上位のウエハ12から支持基板Sが取り外される(取外し工程)。具体的には、
図3を参照して上述した取外し工程と同様にして支持基板Sが取り外される。
【0040】
次に、
図7に示すように、取外し工程を経て得られるウエハ積層体において、異なるウエハに形成されている半導体素子間の電気的接続のための貫通電極41が形成される。例えば、追加のウエハ12とその直下の接着剤層21とを貫通してウエハ12上の上記配線構造(図示略)に至る開口部の形成、当該開口部の内壁面への絶縁膜(図示略)の形成、絶縁膜表面へのバリア層(図示略)の形成、バリア層表面への電気めっき用シード層(図示略)の形成、および、電気めっき法による開口部内への銅など導電材料の充填を経るなどして、貫通電極41を形成することができる。貫通電極41により、例えば、図中上位の追加のウエハ12の面12aの側に形成されている配線構造(図示略)と、図中下位のウエハ12の面12aの側に形成されている配線構造(図示略)とが、電気的に接続される。
【0041】
本半導体装置製造方法においては、
図5(a)および
図5(b)を参照して上述したウエハ追加工程と、
図5(c)を参照して上述した樹脂層追加工程と、
図6を参照して上述した取外し工程と、
図7を参照して上述した貫通電極形成工程とを含む一連の過程が、製造目的の半導体装置の半導体素子積層数に応じた所定の回数、行われる。樹脂層追加工程およびその後の取外し工程は、ウエハ追加工程ごとに行われる。
図8には、当該一連の過程が2回行われて得られるウエハ積層体を一例として表す。
【0042】
本半導体装置製造方法においては、次に、
図9に示すように研削工程が行われる。具体的には、ウエハ11の面11b側に対する研削加工によって多層樹脂部30を除去したうえで、ウエハ11を所定の厚さにまで薄化する。薄化後のウエハ11の厚さは、例えば5~400μmである。この後、最も後に積層されたウエハ12の面12a側にて外部接続用バンプ(図示略)を形成してもよい。或いは、薄化後のウエハ11を貫通してウエハ11の面11a側の配線構造(図示略)と電気的に接続している貫通電極(図示略)を形成し、当該貫通電極と電気的に接続している外部接続用バンプ(図示略)をウエハ11の面11b側に形成してもよい。
【0043】
以上のようにして、半導体素子がその厚さ方向に多層化された半導体装置を製造することができる。この半導体装置は、ダイシングして個片化されてもよい。
【0044】
本半導体装置製造方法における、
図1(b)および
図1(c)を参照して上述したウエハ接合工程では、仮接着剤層13を介して支持基板Sが接合された状態にある相対的に薄いウエハ12が、相対的に厚いウエハ11に対して接着剤層21を介して接合される。このようなウエハ接合工程を経て得られる、ウエハ11,12を含むウエハ積層体(ウエハ12に接合している支持基板Sを伴う)においては、例えば常温に降温した場合、硬化した接着剤層21の収縮に対するウエハ12それ自体の抵抗は、同接着剤層21の収縮に対するウエハ11の抵抗よりも、ウエハ12がウエハ11より薄いために、小さい。しかしながら、硬化した接着剤層21の収縮に対する抵抗について、ウエハ12に接合している支持基板Sがウエハ12を補い得る。たとえ、両ウエハ11,12の厚さの差が大きくて、硬化後の接着剤層21の収縮に対するウエハ12それ自体の抵抗がウエハ11の抵抗よりも相当程度に小さい場合であっても、ウエハ12におけるウエハ11接合側とは反対の側に接合している支持基板Sが、硬化後の接着剤層21の収縮に対する抵抗についてウエハ12を補うことが可能なのである。したがって、ウエハ接合工程を経て得られる当該ウエハ積層体(ウエハ12に接合している支持基板Sを伴う)においては、ウエハ11,12と接着剤層21との間の熱膨張率差およびウエハ11,12と接着剤層21との非対称的な積層構成に起因する、反りの発生が、抑制される。
【0045】
本半導体装置製造方法においては、
図3を参照して上述したようにウエハ12から支持基板Sが分離されて取り外される工程(取外し工程)より前に、
図1(d)を参照して上述したように、ウエハ11における面11b上に樹脂層31が形成される工程(樹脂層形成工程)が行われる。このような樹脂層形成工程とその後の取外し工程とを経て例えば常温下にあるウエハ積層体においては、硬化後の接着剤層21の収縮応力がウエハ11の面11aに作用するとともに、硬化後の樹脂層31の収縮応力がウエハ11の面11bに作用する。そのため、たとえ、両ウエハ11,12の厚さの差が大きくて、硬化後の接着剤層21の収縮に対するウエハ12の抵抗がウエハ11の抵抗よりも相当程度に小さい場合であっても、ウエハ11の面11aに作用する硬化後の接着剤層21の収縮応力(ウエハ11に対してその端部を面11a側へ変形させるように作用する)を、当該ウエハ11の面11bに作用する硬化後の樹脂層31の収縮応力でもって減殺ないし相殺することが可能である。したがって、樹脂層形成工程とその後の取外し工程とが行われるという上述の構成は、相対的に厚いウエハ11と、相対的に薄いウエハ12と、これらウエハ11,12間の接着剤層21とを含むウエハ積層体において、取外し工程を経た後の反りの発生を抑制するのに適する。そして、ウエハ11の面11aに作用する硬化後の接着剤層21の収縮応力を、ウエハ11の面11bに作用する硬化後の樹脂層31の収縮応力でもって相殺ないし充分に減殺するという観点からは、接着剤層21における熱膨張率(α
1)と弾性率(E
1)と厚さ(t
1)とによって表現される、接着剤層21がその被着体に作用する応力に係るパラメータσ
1(=α
1×E
1×t
1)に対する、樹脂層31における熱膨張率(α
2)と弾性率(E
2)と厚さ(t
2)とによって表現される、樹脂層31がその被着体に作用する応力に係るパラメータσ
2(=α
2×E
2×t
2)の比の値(σ
2/σ
1)は、好ましくは0.8~1.2、より好ましくは0.9~1.1、より好ましくは0.95~1.05である。
【0046】
本半導体装置製造方法における、
図5(a)および
図5(b)を参照して上述したウエハ追加工程では、相対的に厚いウエハ11上にウエハ接合工程または先行のウエハ追加工程にて接着剤層21を介して接合されたウエハ12に対して、仮接着剤層13を介して支持基板Sが接合された状態にある相対的に薄い追加のウエハ12が、新たな接着剤層21を介して接合される。このようなウエハ追加工程を経て得られる、ウエハ11および複数のウエハ12を含むウエハ積層体(最も後に積層されたウエハ12に接合している支持基板Sを伴う)においては、例えば常温に降温した場合、硬化した各接着剤層21の収縮に対する各ウエハ12それ自体の抵抗は、同接着剤層21の収縮に対するウエハ11の抵抗よりも、各ウエハ12がウエハ11より薄いために、小さい。しかしながら、硬化した接着剤層21の収縮に対する抵抗について、補強ウエハ12Rにおける支持基板Sが各ウエハ12を補い得る。たとえ、ウエハ11と各ウエハ12との厚さの差が大きくて、硬化後の各接着剤層21の収縮に対する各ウエハ12それ自体の抵抗がウエハ11の抵抗よりも相当程度に小さい場合であっても、補強ウエハ12Rにおける支持基板Sが、硬化後の各接着剤層21の収縮に対する抵抗について各ウエハ12を補うことが可能なのである。したがって、各ウエハ追加工程を経て得られるウエハ積層体(最も後に積層されたウエハ12に接合している支持基板Sを伴う)においては、互いに異なる熱膨張率を示すウエハ11および複数のウエハ12と複数の接着剤層21との所定の非対称的な積層構成に起因する、反りの発生が、抑制される。
【0047】
本半導体装置製造方法においては、ウエハ追加工程を経た補強ウエハ12Rにおけるウエハ12から支持基板Sが分離されて取り外される工程(取外し工程)より前に、ウエハ11の面11b側の樹脂層31上に追加の樹脂層31が形成される工程(樹脂層追加工程)が行われる。このような樹脂層追加工程とその後の取外し工程とを経て例えば常温下にあるウエハ積層体においては、ウエハ11の面11a側に位置する各接着剤層21の収縮応力が直接的または間接的にウエハ11の面11aに作用するとともに、ウエハ11の面11bに密着している多層樹脂部30の各樹脂層31の収縮応力が合してウエハ11の面11bに作用する。そして、製造プロセス中のウエハ積層体が補強ウエハ12Rの支持基板Sを伴わない状態において、ウエハ11の面11a側にある接着剤層21の総数と、面11b側にある樹脂層31の総数とは、同じである。そのため、たとえ、ウエハ11と各ウエハ12との厚さの差が大きくて、硬化後の各接着剤層21の収縮に対する各ウエハ12の抵抗がウエハ11の抵抗よりも相当程度に小さい場合であっても、ウエハ11の面11a側に作用する各接着剤層21の総収縮応力(ウエハ11に対してその端部を面11a側へ変形させるように作用する)を、当該ウエハ11の面11b側に作用する各樹脂層31の総収縮応力でもって減殺ないし相殺することが可能である。したがって、ウエハ追加工程ごとに樹脂層追加工程とその後の取外し工程とが行われるという上述の構成は、相対的に厚いウエハ11と、相対的に薄い複数のウエハ12と、それぞれがウエハ間に介在している複数の接着剤層21とを含むウエハ積層体において、取外し工程を経た後の反りの発生を抑制するのに適する。そして、ウエハ11の面11aに作用する各接着剤層21の総収縮応力を、ウエハ11の面11bに作用する多層樹脂部30ないし各樹脂層31の総収縮応力でもって相殺ないし充分に減殺するという観点からは、ウエハ追加工程ごとに追加的に形成される一の接着剤層21における熱膨張率(α1)と弾性率(E1)と厚さ(t1)とによって表現される、当該接着剤層21がその被着体に作用する応力に係るパラメータσ1(=α1×E1×t1)に対する、当該ウエハ追加工程に応じて行われる樹脂層追加工程で追加的に形成される一の樹脂層31における熱膨張率(α2)と弾性率(E2)と厚さ(t2)とによって表現される、当該樹脂層31がその被着体に作用する応力に係るパラメータσ2(=α2×E2×t2)の比の値(σ2/σ1)は、好ましくは0.8~1.2、より好ましくは0.9~1.1、より好ましくは0.95~1.05である。
【0048】
以上のように、本半導体装置製造方法は、製造プロセス中のウエハ積層体において反りの発生を抑制するのに適する。WOWプロセスにおいては、積層されるウエハの数が増すほどウエハ積層体の反りの程度は累積して大きくなる傾向にあるものの、本半導体装置製造方法は、そのような反りの程度を抑制するのに適するのである。そして、製造プロセス中のウエハ積層体における反りの程度が小さいほど、当該ウエハ積層体に対する各種加工(例えば、貫通電極41を形成するための上記の各種加工)を高精度で実施しやすく、当該ウエハ積層体の多層化、ひいては、製造される半導体装置における半導体素子の多層化を、図りやすい。したがって、本半導体装置製造方法は、半導体素子の多層化を図るのに適する。そして、このような本半導体装置製造方法における上述の樹脂層形成工程を経て得られるウエハ積層体ないし半導体装置は、半導体素子の多層化を図るのに適するものである。
【実施例】
【0049】
〔実施例1〕
〈接着剤組成物の作製〉
後記のようにして得られるエポキシ基含有のポリオルガノシルセスキオキサン100質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート115質量部と、アンチモン系スルホニウム塩(商品名「SI-150L」,三新化学工業株式会社製)0.1質量部と、(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウムメチルサルファイト(商品名「サンエイドSI助剤」,三新化学工業株式会社製)0.01質量部とを混合し、接着剤組成物(接着剤組成物C)を得た。
【0050】
〈ポリオルガノシルセスキオキサンの合成〉
還流冷却器と、窒素ガス導入管と、撹拌装置と、温度計とを備えた300mLのフラスコ内で、窒素ガスを導入しながら、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン161.5mmol(39.79g)と、フェニルトリメトキシシラン9mmol(1.69g)と、溶媒としてのアセトン165.9gとを混合して50℃に昇温した。次に、当該混合物に、5%炭酸カリウム水溶液4.7g(炭酸カリウムとして1.7mmol)を5分かけて滴下し、続いて水1700mmol(30.6g)を20分かけて滴下した。滴下操作の間、混合物に著しい温度上昇は生じなかった。当該滴下操作の後、フラスコ内に窒素ガスを導入しながら、50℃で4時間、重縮合反応を行った。重縮合反応後の反応溶液中の生成物を分析したところ、数平均分子量は1900であり、分子量分散度は1.5であった。そして、静置されて冷却された反応溶液について、相分離によって生じる下層液(水相)が中性になるまで水洗を繰り返した後、上層液を分取し、1mmHgおよび40℃の条件で溶媒量が25質量%になるまで上層液から溶媒を留去し、無色透明の液状の生成物(エポキシ基含有ポリオルガノシルセスキオキサン)を得た。
【0051】
〈ウエハ積層体の作製〉
まず、第1シリコンウエハおよび補強第2シリコンウエハを用意した。第1シリコンウエハは、直径が300mmであり、厚さが775μmであり、一方の面にシランカップリング剤処理を施したものである。第1シリコンウエハのシランカップリング剤処理においては、第1シリコンウエハの一方の面に対するシランカップリング剤(商品名「KBE403」,信越化学工業株式会社製)のスピンコーティングによる塗布、および、その後の120℃での5分間の加熱を行った。補強第2シリコンウエハは、次のようにして作製した。
【0052】
まず、支持基板たるシリコン基板(直径300mm,厚さ775μm)上に、仮接着剤層形成用の接着剤組成物をスピンコーティングによって塗布して仮接着剤組成物層を形成し、200℃での2分間の加熱とその後の230℃での4分間の加熱とを行って当該組成物層を乾燥させて、仮接着剤層を形成した。仮接着剤層形成用の接着剤組成物は、ジエチレングリコールジビニルエーテル0.24質量部と、p-ヒドロキシスチレン/スチレン共重合体(商品名「マルカリンカー CST-50」,p-ヒドロキシスチレンとスチレンとのモル比は50:50,重量平均分子量は4400,軟化点は150℃,丸善石油化学株式会社製)5.4質量部と、ポリビニルブチラール樹脂(商品名「エスレック KS-1」,分子量は2.7×104,軟化点が200℃の熱可塑性樹脂,積水化学工業株式会社製)1.8質量部と、ポリカプロラクトン(商品名「プラクセル H1P」,重量平均分子量は10000,軟化点が100℃の熱可塑性樹脂,株式会社ダイセル製)1.8質量部と、重合促進剤としてのトランス桂皮酸(pKaは4.44,和光純薬工業株式会社製)0.18質量部と、界面活性剤としてのフッ素系オリゴマー(商品名「F-554」,DIC株式会社製)0.045質量部と、溶剤としてのシクロヘキサノン22質量部とを混合して調製したものである。次に、シリコン基板と第2シリコンウエハ(直径300mm,厚さ775μm)とを仮接着剤層を介して接合した。具体的には、シリコン基板と第2シリコンウエハとを温度150℃および加圧力3000g/cm2の条件で加圧しつつ仮接着剤層を介して貼り合わせた後、230℃での5分間の加熱を経てシリコン基板と第2シリコンウエハとを仮接着剤層を介して接合した。次に、シリコン基板に支持された状態にある第2シリコンウエハに対してグラインド装置(株式会社ディスコ製)を使用して研削加工を行うことによって、第2シリコンウエハを厚さ10μmまで薄化した。次に、薄化された第2シリコンウエハの表面(研削加工面)にシランカップリング剤(商品名「KBE403」,信越化学工業株式会社製)をスピンコーティングによって塗布した後、120℃での5分間の加熱を行った(シランカップリング剤処理)。上述の補強第2シリコンウエハは、このようにして作製したものである。
【0053】
ウエハ積層体の作製においては、次に、第1シリコンウエハのシランカップリング剤処理面(第1面)に上記の接着剤組成物Cをスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成した後、この組成物層を伴う第1シリコンウエハについて、80℃で4分間の加熱を行い、続いて100℃で2分間の加熱を行った。これにより、接着剤組成物層を乾燥させ、第1シリコンウエハの第1面上に厚さ2.5μmの接着剤層を形成した。次に、当該接着剤層付き第1シリコンウエハと、上述の補強ウエハにおける薄化ウエハとを、第1シリコンウエハ上の接着剤層を介して加圧しつつ貼り合わせた後、150℃で30分間の加熱を行い、続いて170℃で30分間の加熱を行い、これによって当該接着剤層を硬化させて接合した。貼り合わせは、温度50℃および加圧力3000g/cm2の条件で行った。
【0054】
ウエハ積層体の作製においては、次に、第1シリコンウエハにおける、第2シリコンウエハ接合面(第1面)とは反対の側の面(第2面)に樹脂層を形成した。具体的には、まず、第1シリコンウエハの第2面にシランカップリング剤(商品名「KBE403」,信越化学工業株式会社製)をスピンコーティングによって塗布した後、120℃での5分間の加熱を行った(シランカップリング剤処理)。次に、樹脂層形成用の接着剤組成物Cを第1シリコンウエハのシランカップリング剤処理面(第2面)にスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成した後、80℃で4分間の加熱を行い、続いて100℃で2分間の加熱を行い、接着剤組成物層を乾燥させた。次に、この組成物層を伴う第1シリコンウエハについて、150℃で30分間の加熱を行い、続いて170℃で30分間の加熱を行った。これにより、接着剤組成物層を乾燥させ且つ硬化させて、第1シリコンウエハの第2面上に厚さ2.5μmの樹脂層を形成した。
【0055】
次に、支持基板たるシリコン基板と薄化された第2シリコンウエハとの間における仮接着剤層による仮接着状態を解除して、第2シリコンウエハからシリコン基板を取り外した。具体的には、235℃での5分間の加熱処理を経た後、第2シリコンウエハに対してシリコン基板を1mm/秒の相対速度でスライドさせて、第2シリコンウエハないしこれを含むウエハ積層体からシリコン基板を取り外した。その後、第2シリコンウエハ上の仮接着剤残渣をプロピレングリコールモノメチルエーテルを用いて洗浄除去した。以上のようにして、実施例1のウエハ積層体を作製した。
【0056】
本実施例のウエハ積層体について、形状測定装置(商品名「LTV-3000」,株式会社コベルコ科研製)を使用して、SEMI規格(具体的にはSEMI MF1451-0707)に定められるSORI(反り量)を測定したところ、9.5μmであった。本測定においては、測定対象物の自重たわみに関する補正を経て得られる当該測定対象物の表面形状データから最小二乗参照平面が算出され、前記表面形状データにおける当該最小二乗参照平面からの偏差の最大値と最小値との差分に、前記反り量は相当する。
【0057】
〈膜厚測定〉
上記の接着剤組成物Cをシリコンウエハ(直径300mm,厚さ775μm)上にスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成した。1回のスピンコーティングに供して使用した接着剤組成物Cは20gであり、スピンコーティングに係る回転速度は1200rpmとした。そして、基材上の接着剤組成物層に対し、80℃で4分間の加熱を行い、続いて100℃で2分間の加熱を行い、接着剤組成物層を乾燥させた。次に、150℃で30分間の加熱を行い、続いて170℃で30分間の加熱を行い、これにより、硬化した塗膜を基材上に形成した。形成された塗膜について、微細形状測定機(商品名「サーフコーダ ET 4000A」,株式会社小坂研究所製)を使用して厚さを測定したところ、2.5μmであった。実施例1の上述のウエハ積層体は、このような硬化塗膜を、第1および第2シリコンウエハを接合する接着剤層として含むのに加えて、第1シリコンウエハの第2面に密着している樹脂層としても含むものである。
【0058】
〈熱膨張率測定〉
上記の接着剤組成物Cをシリコンウエハ(直径300mm,厚さ775μm)上にスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成した後、基材上の接着剤組成物層に対し、80℃で4分間の加熱を行い、続いて100℃で2分間の加熱を行い、接着剤組成物層を乾燥させた。次に、150℃で30分間の加熱を行い、続いて170℃で30分間の加熱を行い、これにより、硬化した塗膜(厚さ2.5μm)を基材上に形成した。この塗膜について、熱膨張率測定装置(商品名「分光エリプソメータ」,SCI社製)を使用して測定される25℃から250℃までの膜厚データに基づき、熱膨張率を求めたところ、68ppm/℃であった。
【0059】
〈弾性率測定〉
上記の接着剤組成物Cをシリコンウエハ(直径300mm,厚さ775μm)上にスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成した後、80℃で4分間の加熱を行い、続いて100℃で2分間の加熱を行い、接着剤組成物層を乾燥させた。次に、基材上の接着剤組成物層に対し、150℃で30分間の加熱を行い、続いて170℃で30分間の加熱を行い、これにより、硬化した塗膜(厚さ2.5μm)を基材上に形成した。この塗膜について、微小硬度計(商品名「ENT-2100」,株式会社エリオニクス製)を使用して弾性率を測定したところ、4.9GPaであった。
【0060】
[比較例1]
第1シリコンウエハの第2面上への樹脂層の形成を行わないこと以外は実施例1のウエハ積層体と同様にして、比較例1のウエハ積層体を作製した。本比較例のウエハ積層体について、実施例1のウエハ積層体と同様にして、形状測定装置(商品名「LTV-3000」,株式会社コベルコ科研製)を使用して反り量を測定したところ、47.4μmであった。
【0061】
[評価]
実施例1のウエハ積層体では、比較例1のウエハ積層体と比較して、反りが約1/5に低減された。また、実施例1のウエハ積層体において、ウエハ間の接着剤層の厚さ(t1)は上述のように2.5μmであり、且つ、上述の熱膨張率測定および弾性率測定の結果から理解できるように当該接着剤層ないし塗膜の熱膨張率(α1)は68ppm/℃であり且つ弾性率(E1)は4.9GPaである。これとともに、実施例1のウエハ積層体において、第1シリコンウエハの第2面上に形成される樹脂層の厚さ(t2)は上述のように2.5μmであり、且つ、上述の熱膨張率測定および弾性率測定の結果から理解できるように当該樹脂層ないし塗膜の熱膨張率(α2)は68ppm/℃であり且つ弾性率(E2)は4.9GPaである。すなわち、実施例1のウエハ積層体において、ウエハ間の接着剤層がその被着体に作用する応力に係るパラメータσ1(=α1×E1×t1)に対する、第1シリコンウエハの第2面上の樹脂層がその被着体に作用する応力に係るパラメータσ2(=α2×E2×t2)の比の値(σ2/σ1)は、1である。したがって、実施例1のウエハ積層体においては、第1シリコンウエハの第1面に作用する硬化後の接着剤層の収縮応力が、第1シリコンウエハの第2面に作用する硬化後の樹脂層の収縮応力でもって充分に減殺されているのである。
【符号の説明】
【0062】
S 支持基板
11 ウエハ(第1ウエハ)
11a 面(第1面)
11b 面(第2面)
12R 補強ウエハ(補強第2ウエハ)
12 ウエハ(第2ウエハ)
12a 面
12b 面
13 仮接着剤層
21 接着剤層
30 多層樹脂部
31 樹脂層
41 貫通電極