(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】ケーブル接続部
(51)【国際特許分類】
H02G 15/06 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
H02G15/06
(21)【出願番号】P 2018213138
(22)【出願日】2018-11-13
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】丸山 英之
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135944(JP,A)
【文献】特開2011-103768(JP,A)
【文献】特開平10-126946(JP,A)
【文献】特開2008-220124(JP,A)
【文献】特開平7-298472(JP,A)
【文献】特開2017-184458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも内部導体及び前記内部導体の外周に配置される絶縁体を有するブッシングと、前記ブッシングに装着されるケーブル端末部と、を備えるケーブル接続部であって、
前記ケーブル端末部は、
電力ケーブルのケーブル導体に圧縮接続される第1のプラグと、
前記第1のプラグの外側に固定され、前記ブッシングと電気的かつ機械的に接続される第2のプラグと、
前記第1のプラグと前記第2のプラグとの間に介在し、両者を電気的に接続する接触子と、を備え、
前記第1のプラグと前記第2のプラグの間には、前記第2のプラグに対して前記第1のプラグを傾斜した状態で係合できるクリアランスが設けられ、
前記接触子は、内周面で前記第1のプラグに接触するとともに、外周面で前記第2のプラグに接触する、外形が弾性的に変化可能な略回転楕円体形状のマルチラムバンドで構成されている、ケーブル接続部。
【請求項2】
前記ケーブル端末部は、円柱状の胴部と、胴部の一端側に設けられる引留頭部とを有する係止部材を備え、
前記第1のプラグを前記第2のプラグに嵌合した状態で、前記第1のプラグに前記胴部を軸方向から螺合させることにより、前記第2のプラグに対して前記第1のプラグが固定される、請求項1に記載のケーブル接続部。
【請求項3】
前記第1のプラグは、最も先端側に位置する第1の係合部と、前記第1の係合部の後端側に連設される第1の通電部と、前記第1の通電部の後端側に連設される圧縮接続部とを有し、
前記第2のプラグは、最も先端側に位置する第2の係合部と、前記第2の係合部の後端側に連設される第2の通電部と、前記第2の通電部の後端側に連設される固定部とを有し、
前記第1の通電部の外周に前記接触子が配設され、
前記第2の係合部は、径方向内側に張り出す環状の鍔部を有し、前記鍔部で形成される開口の口径は、前記第1の係合部の外径より大きく、前記第1の通電部の先端面の外径より小さく、かつ、前記係止部材の前記引留頭部の外径よりも小さい、
請求項2に記載のケーブル接続部。
【請求項4】
前記第1の通電部の先端面を、前記鍔部の後端面に当接させた位置において、前記クリアランスは、
前記引留頭部の後端面と、前記鍔部の先端面との間に形成される、軸方向のクリアランスと、
前記第1の係合部の外周面と、前記鍔部の内周面との間に形成される、径方向のクリアランスと、
を有する、請求項3に記載のケーブル接続部。
【請求項5】
前記接触子の許容振り角度は、±2°以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載のケーブル接続部。
【請求項6】
前記接触子は、それぞれ導電性材料で形成された、第1の爪部と、第2の爪部と、キャリア部とを有し、
前記第1の爪部と前記第2の爪部は、それぞれの一端が固定端として前記キャリア部に固定され、それぞれの他端が自由端となるように形成され、
前記第1の爪部と前記第2の爪部は、一方の爪部の前記固定端と前記自由端が、もう一方の爪部の前記固定端と前記自由端と互いに逆になるように、周方向に交互に配置されており、
前記自由端同士の間には、前記接触子が弾性的に変形したときに、互いに干渉しないように隙間が設けられている、請求項1から5のいずれか一項に記載のケーブル接続部。
【請求項7】
前記電力ケーブルは、前記ケーブル導体の公称断面積が600mm
2以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載のケーブル接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブル接続部として、ガス中終端接続部、油中終端接続部、気中終端接続部などの終端接続部、直線接続部や分岐接続部などの中間接続部が知られている。一般的には、ケーブル接続部は、内部導体及び内部導体の外周に配置されるエポキシ樹脂等からなる硬質の絶縁体を有する本体材料(「ブッシング」と呼ばれる)に、接続材料が取り付けられたケーブル端末部を接続することで形成される。ケーブル接続部では、例えば、ケーブル導体に接続端子が圧縮接続され、この接続端子がブッシングの内部導体と接触子を介して電気的に接続される(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示のケーブル接続部は、第1のプラグと、第1のプラグの外側に配置される第2のプラグからなる二重プラグ構造の接続端子を有しており、第1のプラグがケーブル導体に圧縮接続されるとともに、第2のプラグに嵌合して固定されるようになっている。また、第1のプラグと第2のプラグ、第2のプラグとブッシングの内部導体は、それぞれ、接触子を介して電気的に接続されている。
【0004】
このようなケーブル接続部においては、ケーブル端末がブッシングに対して真っ直ぐに挿入される。したがって、例えば、特許文献1に開示のケーブル接続部において、第2のプラグは、電力ケーブルと同一軸となるように配置される必要がある。しかし、ケーブル導体に第1のプラグを圧縮接続したときに曲がり(以下、「圧縮曲がり」と称する)が生じ、電力ケーブルの軸に対して第2のプラグが傾いた状態で装着されることがある。特許文献1では、第1のプラグと第2のプラグとの間にクリアランスを設けることにより圧縮曲がりを吸収するとともに、第1のプラグと第2のプラグとの間に介在する接触子としてV字状のマルチラムバンドを適用することにより導通状態の安定化を図り、これにより、ケーブル接続部の信頼性及び安全性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示の技術は、例えば、154kV級の電力ケーブル用のケーブル接続部において、ケーブル導体の公称断面積が1200mm2以上の電力ケーブルを適用する場合に有用である。しかしながら、例えば、66/77kV級の電力ケーブル用のケーブル接続部は、154kV級の電力ケーブル用のケーブル接続部に比較してサイズが小さいため、600mm2以上の大サイズケーブルを採用しようとした場合に、特許文献1に開示の技術をそのまま適用することはできず、現行製品の仕様を大幅に変更する必要がある。なお、現行のケーブル接続部の一例としては、マルチラムバンドとボールロックを適用したプラグイン構造を有する154kV級のスマート終端接続部(商品名)が既に使用されている。このスマート終端接続部においては、154kV級の電力ケーブルとしてケーブル導体の公称断面積が600mm2以下のものが採用されている。
【0007】
本発明の目的は、66/77kV級の電力ケーブル用のケーブル接続部であって、現行製品の仕様を大幅に変更することなく、大サイズの電力ケーブルを適用できるケーブル接続部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るケーブル接続部は、
少なくとも内部導体及び前記内部導体の外周に配置される絶縁体を有するブッシングと、前記ブッシングに装着されるケーブル端末部と、を備えるケーブル接続部であって、
前記ケーブル端末部は、
電力ケーブルのケーブル導体に圧縮接続される第1のプラグと、
前記第1のプラグの外側に固定され、前記ブッシングと電気的かつ機械的に接続される第2のプラグと、
前記第1のプラグと前記第2のプラグとの間に介在し、両者を電気的に接続する接触子と、を備え、
前記第1のプラグと前記第2のプラグの間には、前記第2のプラグに対して前記第1のプラグを傾斜した状態で係合できるクリアランスが設けられ、
前記接触子は、内周面で前記第1のプラグに接触するとともに、外周面で前記第2のプラグに接触する、外形が弾性的に変化可能な略回転楕円体形状のマルチラムバンドで構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、現行製品に容易に適用できる大サイズの電力ケーブル用のケーブル接続部が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るケーブル接続部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、ケーブル接続部における導体接続部の断面図である。
【
図3】
図3は、軸方向に分解した導体接続部の断面図である。
【
図6】
図6A、
図6Bは、第1のプラグと第2のプラグとの間のクリアランスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態では、本発明のケーブル接続部を、開閉装置や変圧器等の気密性を要求される電力用機器の接続部分に適用したガス中終端接続部を例に挙げて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係るケーブル接続部1を示す断面図である。
図1に示すように、ケーブル接続部1は、ブッシング10にケーブル端末部20が装着されることにより構成される。
【0013】
ケーブル接続部1において、ブッシング10は、内部導体11及び絶縁体12を有する。内部導体11及び絶縁体12は、例えば、モールド成形により一体的に形成される。また、絶縁体12の後端側には電界緩和部13が連設され、さらに電界緩和部13の後端側には固定フランジ14が連設されている。電界緩和部13の外表面には導電塗料(図示略)が塗布されており、当該導電塗料が機器ケース60に電気的に接続されることにより、ブッシング10の遮へい層として機能する。
【0014】
内部導体11は、例えば銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性材料で形成される。内部導体11は、後端部に、ケーブル導体51を電気的に接続するための導体挿入部(符号略)を有する。
【0015】
絶縁体12は、機械的強度の高い硬質プラスチック樹脂材料(例えば、エポキシ樹脂や繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)など)で形成される。絶縁体12は、後端部に、ケーブル端末部20を受け入れる受容口(符号略)を有する。この受容口は、内部導体11の導体挿入部に連通する。
【0016】
固定フランジ14の外径は、機器ケース60に設けられた固定用開口(符号略)の口径より大きい。機器ケース60の固定用開口に、ブッシング10を後端側から挿入し、図示しないOリング等のシール部材を介して固定フランジ14を機器ケース60にボルト止めすることにより、ブッシング10は、機器ケース60に気密に固定される。
【0017】
ケーブル接続部1において、ケーブル端末部20は、電力ケーブル50の先端部に、導体接続部21、ストレスコーン22、圧縮装置23、保護金具24、及び防食層25等の接続材料が取り付けられて構成される。
【0018】
電力ケーブル50は、例えば、ゴム又はプラスチックで絶縁された66/77kV級の、ケーブル導体51の公称断面積が600mm2以上の電力ケーブルである。本実施の形態では、電力ケーブル50は、66kV2000mm2の電力ケーブルである。電力ケーブル50は、中心から順に、ケーブル導体51、ケーブル絶縁体52、ケーブル外部半導電層(図示略)、ケーブル遮蔽層(図示略)及びケーブルシース(図示略)等を有する。ケーブル端末部20においては、電力ケーブル50の先端部から所定長で段剥ぎすることにより各層が露出される。
【0019】
ケーブル導体51には、例えば、銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性の接続端子(第1のプラグ31、
図2参照)が圧縮により接続される。これにより、ケーブル導体51と接続端子(第1のプラグ31)とが電気的かつ機械的に接続される。ケーブル絶縁体52からケーブル外部半導電層(図示略、段剥ぎ後に端部を半導電テープや導電塗料等により再生処理した場合を含む)の先端部にわたる外周にストレスコーン22が装着される。また、ストレスコーン22の後端側には、圧縮装置23及び保護金具24が装着される。導体接続部21の詳細な構成については、後述する。
【0020】
ストレスコーン22は、先端側の絶縁部(符号略)と後端側の半導電部(符号略)が、モールド成型により一体的に形成され、全体として紡錘形状を有するプレモールド絶縁体である。絶縁部は、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)又はシリコーンゴム等の絶縁性ゴム材料で形成され、半導電部は、例えば、半導電性のエチレンプロピレンゴム(EPゴム)又はシリコーンゴム等の半導電性ゴム材料で形成されている。
ストレスコーン22の後端部(半導電部)は、電力ケーブル50のケーブル外部半導電層に接続される。ストレスコーン22の先端部(絶縁部)は、ブッシング10の絶縁体12の受容口に対応する形状を有し、ストレスコーン22が圧縮装置23により先端側に向かって押圧されることで絶縁体12の受容口に押圧される。
【0021】
電力ケーブル50の先端部を段剥ぎし、保護金具24、圧縮装置23、ストレスコーン22を電力ケーブル50に装着し、ケーブル導体51に導体接続部21を取り付けることにより、ケーブル端末部20が組み立てられる。
そして、組み立てられたケーブル端末部20の先端部を絶縁体12の受容口に挿入し、圧縮装置23のスプリング(図示略)を圧縮させながら、ブッシング10の固定フランジ14の後端面に圧縮装置23を、圧縮装置23の後端面に保護金具24を、それぞれボルト止めすることにより、ブッシング10にケーブル端末部20が装着される。
ストレスコーン22の先端部は絶縁体12の受容口の内壁面に押し付けられ、導体接続部21(第2のプラグ32、
図2参照)は内部導体11と電気的に接続される。また、保護金具24の後端部には、防水のための防食層25が配置される。ケーブル接続部1は、プラグイン接続により、比較的簡単な作業で組み立てることができる。
【0022】
図2は、ケーブル接続部1における導体接続部21の断面図である。
図3は、軸方向に分解した導体接続部21の断面図である。
図4A~
図4Cは、第1の接触子33の構造を示す図である。なお、
図2では、第1のプラグ31、第1の接触子33、及び引留金具34を半断面で示している。
【0023】
図2に示すように、導体接続部21は、第1のプラグ31、第2のプラグ32、第1の接触子33、引留金具34、ロック機構35等を有する。本実施の形態では、第1のプラグ31及び第2のプラグ32により、二重プラグ構造の接続端子が構成されている。
【0024】
図3に示すように、第1のプラグ31は、最も先端側に位置する第1の係合部311、第1の係合部311の後端側に連設される第1の通電部312、及び第1の通電部312の後端側に連設される圧縮接続部313を有し、例えば、銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した材料により形成される。第1のプラグ31は、全体として、主に第1の通電部312からなる円柱状の小径部と、圧縮接続部313からなる有蓋円筒状の大径部とを有する二段円柱形状に形成されている。
【0025】
第1の係合部311は、第1の通電部312より小径の円筒状に、第1の通電部312から先端側に突出して形成されている。第1の係合部311には、引留金具34を固定するためのねじ孔311a(雌ねじ)が先端部から第1の通電部312の先端側(実施の形態では、凹部312bに対応する位置の途中)にかけて形成されている。
【0026】
第1の通電部312は、先端側の外周面に、円環状の凹部312bを有し、この凹部312bに第1の接触子33が配置される。凹部312bの深さは、使用される第1の接触子33の仕様に応じて設計される。
【0027】
圧縮接続部313は、ケーブル導体51が挿入される導体接続孔313aを有し、この導体接続孔313aにケーブル導体51が挿入された状態で、圧縮により接続される。圧縮接続は、例えば、六角ダイスで圧縮した後、丸ダイスで圧縮する、いわゆる2回押しで行われる。この場合、六角ダイスによる1回押しで圧縮接続する場合に比較して、圧縮曲がりが大きくなる。
【0028】
第1の接触子33は、多面接触方式のマルチラムバンドであり、本実施の形態では、外形が弾性的に変化可能な略回転楕円体形状のマルチラムバンドで構成されている。ここで、略回転楕円体形状とは、回転楕円体(扁球)における長軸を径方向、短軸を軸方向となるように配置したときに、短軸の先端側及び後端側のそれぞれに軸方向に垂直な切断面を有するような形状をいう。第1の接触子33の形状は、ドームの底面同士を貼り合わせた形状ということもできる。
第1の接触子33には、例えば、ストーブリ社製の「ML-CUXP(商品名)」を適用することができる。この場合、第1の通電部312の凹部312bの深さは、約5mmである(実施の形態のケーブルは、66kV2000mm2)。第1の接触子33は、基準状態において、第1の通電部312の周面から径方向外側に、例えば約3mm突出する。
【0029】
具体的には、第1の接触子33は、
図4A~
図4Cに示すように、第1の爪部331、第2の爪部332、及びキャリア部333を有する。
【0030】
キャリア部333は、導電性材料で形成され、全体としてつづら折り状に延びつつ、円環形状に形成されている。また、キャリア部333は、側面が径方向外側に膨出するように湾曲しており、径方向内側に変形可能な可撓性を有している。キャリア部333において、一方の端縁に位置する屈曲部333aに、第1の爪部331の一端331aが固定され、他方の端縁に位置する屈曲部333bに、第2の爪部332の一端332aが固定されている(
図5A、
図5B参照)。
【0031】
第1の爪部331及び第2の爪部332は、キャリア部333と同様に、導電性材料で形成され、それぞれにおいて、一端331a、332aがキャリア部333に固定され(以下、「固定端331a、332a」と称する)、他端331b、332bは自由端となっている(以下、「自由端331b、332b」と称する)。第1の爪部331及び第2の爪部332は、固定端331a、332aと自由端331b、332bが互いに逆になるように、周方向に交互に配置されている。具体的には、
図4Cに示すとおり、第1の爪部331及び第2の爪部332は、一方の爪部(例えば、第1の爪部331)の固定端331aと自由端331bが、もう一方の爪部(例えば、第2の爪部332)の固定端332aと自由端332bと互いに逆になるように、周方向に交互に配置されている。また、自由端331b、332bの間には、第1の接触子33が弾性的に変形したときに、互いに干渉しないように隙間が設けられている。
【0032】
第1の爪部331及び第2の爪部332は、キャリア部333の周面に沿って延在しており、自由端331b、332bが、固定端331a、332aよりも径方向外側に位置している。固定端331a、332aの端部が、第1のプラグ31との接触点となり、自由端331b、332bの外面が、第2のプラグ32との接触点となっている。
【0033】
第1の接触子33は、基準状態(外力が作用していない状態)から圧縮状態へと、弾性的に変形可能となっている。具体的には、第1の接触子33において、キャリア部333は、基準状態では径方向外側に膨出する形状を有し、径方向内側に向けて力が作用すると膨出する程度が緩和されるようになっている。
【0034】
ここで、第1の接触子33の外径は、第2のプラグ32の第2の通電部322の内径(ソケット径)よりも大きい。つまり、第1のプラグ31を第2のプラグ32に取り付けたときに、第1の接触子33は径方向内側に圧縮されるようになっている。具体的には、第1の接触子33は、第1のプラグ31が第2のプラグ32に挿入される前は基準状態となっており(
図5A参照)、第2のプラグ32に挿入されると第1の爪部331及び第2の爪部332の自由端331b、332bが径方向内側に押し潰され圧縮状態となる(
図5B参照)。これにより、第1のプラグ31と第2のプラグを確実に導通させることができる。
【0035】
また、第1の接触子33の許容振り角度は、±2°以上であることが好ましい。許容振り角度とは、導通状態を確保できる角度範囲であり、ここでは、第1のプラグ31と第2のプラグ32の軸が一致した状態を基準として表している。つまり、第1のプラグ31に対する第2のプラグ32の傾斜角度が許容振り角度以内であれば、導通状態が確保される。これにより、大サイズの電力ケーブルを適用した場合に生じうるケーブル端末部20における圧縮曲がりを確実に吸収することができる。
【0036】
ところで、特許文献1に記載の、マルチラムバンド「LA-CUT(商品名)」を第1の接触子33に適用しようとした場合、LA-CUTは導通状態を確保できる許容振り角度を有する。しかし、LA-CUTは、バンド幅が大きいため、66/77kV級600mm2以下のケーブルに対応する現行品(スマート終端接続部(商品名))の第2のプラグに収まるように第1のプラグを形成することが困難である。また、現行品の第2のプラグに収まるように第1のプラグを形成してLA-CUTを適用した場合でも、ソケット径が約50mmと小さく許容電流が不足するため、66/77kV級600mm2以上の大サイズケーブルには対応困難である。
そこで、本実施の形態では、第1の接触子33として、マルチラムバンド「ML-CUXP(商品名)」を適用することにより、上述した問題を解消している。すなわち、ML-CUXPは、バンド幅が小さく、かつ、適用するプラグの径において最大許容電流を満足するので、現行品(スマート終端接続部(商品名))の第2のプラグ32に収まるように大サイズの電力ケーブルに対応した第1のプラグ31を形成することができる。また、ML-CUXPは、±2°以上の許容振り角度に対応可能でありフレキシブル性に優れるので、第1のプラグ31の圧縮曲がりにも柔軟に対応でき、第1のプラグ31と第2のプラグ32の導通状態を確保することができる。
【0037】
第2のプラグ32は、最も先端側に位置する第2の係合部321、第2の係合部321の後端側に連設される第2の通電部322、及び第2の通電部322の後端側に連設される固定部323を有し、例えば、銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した材料により形成される。第2のプラグ32は、全体として、円筒形状に形成されている。また、第2の係合部321の先端側の周縁には、損傷を防止するための保護部材36が取り付けられる。保護部材36は、ポリアセタール(POM)等の絶縁材料で形成されている。保護部材36は、先端側の小径の孔部と、小径の孔部の後端側に連設される大径のねじ孔(雌ねじ)とを有し、全体として円筒形状を有する。第2のプラグ32の第2の係合部321の外周に設けられた雄ねじと、保護部材36のねじ孔(雌ねじ)とを螺合することにより、第2のプラグ32に保護部材36が固定される。
【0038】
第2の係合部321は、径方向内側に張り出す環状の鍔部321aを有する。鍔部321aで形成される開口(符号略)の口径は、第1のプラグ31の第1の係合部311の外径より大きく、第1の通電部312の先端面312aの外径より小さい。
【0039】
第2の通電部322は、外周面に、円環状の凹部322a(ここでは、2つ)を有し、この凹部322aに第2の接触子(図示略)が配置される。
【0040】
固定部323は、鋼球352を収容するボール収容部323aを有する。ボール収容部323aは、内側から外側に向かって縮径しながら貫通するテーパー孔である。ボール収容部323aは、例えば、周方向に沿って等間隔で12箇所に設けられる。また、固定部323は、第2の通電部322との間に形成された段部に、コイルスプリング353を固定するためのスプリング収容部323bを有する。
【0041】
第2の接触子(図示略)は、多面接触方式のマルチラムバンドであり、例えば、ストーブリ社製の「LACuS(商品名)」を適用することができる。
【0042】
引留金具34は、円柱状の胴部34aと、胴部34aの一端側に連設される引留頭部34bを有するハット形の係止部材である。引留頭部34bの外径は、第2のプラグ32の鍔部321aの内径よりも大径に形成されている。胴部34aの外周面には、第1のプラグ31のねじ孔311a(雌ねじ)に螺合する雄ねじが形成されている。
【0043】
ロック機構35は、押しリング351、鋼球352、及びコイルスプリング353等を有する。
押しリング351は、全体として、先端側の小径部351aと、後端側の大径部351b(以下、「押しリング本体部351b」と称する)の二段円筒形状を有する。押しリング351は、ポリアセタール(POM)等の絶縁材料で形成されている。押しリング本体部351bは、ケーブル接続部1を組み立て後、第1のプラグ31の圧縮接続部313に対応する位置、言い換えれば第1のプラグ31の第1の通電部312の後端部に対応する位置に配設される(
図2参照)。これにより、第1のプラグ31の圧縮接続部313や、第1の通電部312と圧縮接続部313との連設部分に設けられたテーパー部が、押しリング351の先端側の小径部351aと干渉しないようにケーブル接続部1を形成することができる。また、当該干渉を避けるために必要以上に導体接続部21を大径化する必要がない。
実施の形態では、押しリング本体部351bの後端部に連設されたストッパー部351cが、ストレスコーン22の先端に配設され(
図1、
図2参照)、ストレスコーン22の軸方向先端側への移動を規制するストッパーの役割を果たす。ケーブルが小サイズの現行品では、ストレスコーン22の移動を規制するストッパーは、押しリング本体部351bの後端部に螺合して一体化する構造であるが、実施の形態の2000mm
2のような大サイズのケーブルでは螺合するための押しリングの厚さを確保できない(確保しようとすると接続部が大径化する)。そのため、押しリング本体部351bの後端部がストッパーの機能を有するように、ここでは押しリング本体部351b(大径部)の外径よりも大径であるストッパー部351cが押しリング本体部351b(大径部)の後端側に連設されている。
押しリング351は、第2のプラグ32のボール収容部323aに鋼球352を配置するとともに、第2のプラグ32のスプリング収容部323bとの間にコイルスプリング353を配置した状態で、軸方向に移動可能に配置される。
第2のプラグ32と押しリング351の小径部351aとは、予め仮固定により一体化されている。具体的には、第2のプラグ32の小径部351аの外周において、ボール収容部323aに鋼球352を配置するとともに、コイルスプリング353の先端部がスプリング収容部323bに、コイルスプリング353の後端部が押しリング351の小径部の内側に、それぞれ固定されることにより、第2のプラグ32に対して、押しリング351が仮固定されている。
【0044】
ケーブル端末部20の組み立て工程では、第1のプラグ31において、第1の通電部312に、第1の接触子33を取り付ける(組み立て現場でなく工場出荷時に予め第1の接触子33を第1の通電部312に取り付けておいてもよい)。また、圧縮接続部313の導体接続孔313aにケーブル導体51が挿入された状態で、圧縮接続部313にケーブル導体51を圧縮接続する。ケーブル導体51に第1のプラグ31を圧縮接続する際、圧縮曲がりが生じうる。なお、保護金具24、圧縮装置23、ストレスコーン22は、第1のプラグ31に圧縮する前に、予め電力ケーブル50に挿入しておく。
【0045】
次に、第1のプラグ31を装着した電力ケーブル50を第2のプラグ32に対して挿入する。このとき、第1の接触子33は、径方向に圧縮された状態で、第1のプラグ31と第2のプラグ32との間に介在する。
【0046】
次に、第1のプラグ31の第1の係合部311を第2のプラグ32の第2の係合部321まで挿入し(具体的には、鍔部321aの内側を貫通させ)、この状態で第1のプラグ31に(具体的には、ねじ孔311aに)引留金具34を軸方向から螺合させる。第2のプラグ32の鍔部321aが、鍔部321aの内径よりも大きい引留金具34の引留頭部34bの後端面と、鍔部321aの内径よりも大きい第1のプラグ31の第1の通電部312の先端面312aとの間に配設されることにより、第2のプラグ32に対して第1のプラグ31が脱落不能に固定される。
【0047】
このとき、第1のプラグ31の第1の通電部312の先端面312aを、第2のプラグ32の鍔部321aの後端面に当接させた状態において、第1のプラグ31と第2のプラグ32との間にはクリアランスC1、C2が形成され、第1のプラグ31に対して第2のプラグ32が傾斜可能となっている(
図6A参照)。具体的には、第1のプラグ31の第1の係合部311に固定された引留金具34における引留頭部34bの後端面と、第2のプラグ32の鍔部321aの先端面との間には、軸方向のクリアランスC1が形成され、第1のプラグ31の第1の係合部311の外周面と、第2のプラグ32の鍔部321aの内周面との間には、径方向のクリアランスC2が形成される。
これにより、ケーブル端末部20に圧縮曲がりが生じている場合でも、第1のプラグ31に対して第2のプラグ32が傾斜することで、ブッシング10に対してケーブル端末部20を真っ直ぐに挿入することができる(
図6B参照)。
クリアランスC1、C2は、第1のプラグ31に対して第2のプラグ32が傾斜した状態でケーブル端末部20がブッシング10に挿入される場合(
図6Bの状態)にでも、圧縮曲がりを吸収して良好な導通状態でケーブル接続部1を組み立て可能な範囲で設定される。クリアランスC1、C2は、それぞれ1mm以上とするのが好ましい。特に、圧縮曲がりにより想定される第1のプラグ31の傾斜角度(
図6Bの状態)が、第1の接触子33の許容振り角度(±2°以上)よりも小さい角度でクリアランスC1、C2をそれぞれ設定するのが好ましい。
【0048】
組み立てられたケーブル端末部20の先端部をブッシング10の受容口に挿入し、圧縮装置23のスプリング(図示略)を圧縮させながら、ブッシング10の固定フランジ24の後端面に圧縮装置23を、圧縮装置23の後端面に保護金具24を、それぞれボルト止めすることにより、ブッシング10にケーブル端末部20が装着される。
具体的には、ストレスコーン22によって押しリング351が先端側に付勢されると、押しリング351がコイルスプリング353の付勢力に抗して移動する。これに伴い、押しリング351によって鋼球352が外側に押し出され、ボール収容部323aから徐々に鋼球352が露出する。押しリング351が規定位置まで移動すると、鋼球352は内部導体11の位置決め孔(符号略)と係合する。これにより、ケーブル端末部20はブッシング10に脱落不能に固定され、ケーブル導体51と内部導体11が電気的に接続される。
【0049】
具体的には、ケーブル導体51と第1のプラグ31が圧縮接続により電気的に接続され、第1のプラグ31と第2のプラグ32が第1の接触子33を介して電気的に接続される。また、第2のプラグ32と内部導体11が第2の接触子(図示略)を介して電気的に接続される。
【0050】
上述した組み立て工程において、ケーブル端末部20は、ブッシング10に対して、第2のプラグ32が真っ直ぐになるように挿入される。したがって、圧縮曲がりが生じている場合は、第1のプラグ31に対して、第2のプラグ32が傾斜する。
本実施の形態では、第1のプラグ31(あるいは、第1のプラグ31に固定された引留金具34)と第2のプラグ32との間にクリアランスC1、C2が設けられているので、このクリアランスによって圧縮曲がりを吸収することができる。すなわち、ケーブル端末部20に圧縮曲がりが生じていても、ブッシング10に対してケーブル端末部20を真っ直ぐに挿入する過程で、第1のプラグ31に対して第2のプラグ32が傾斜し、ブッシング10に対して真っ直ぐな状態となる(
図6B参照)。したがって、ケーブル端末部20を所定位置まで挿入して、ブッシング10と適切に接続することができる。このとき、第1のプラグ31と第2のプラグ32は、傾斜した状態で固定されることになるが、両者の間には、フレキシブル性に優れる第1の接触子33が介在しているので、良好な導通状態が確保される。
【0051】
ケーブル端末部20を引き抜く際には、ストレスコーン22を軸方向後端側に後退させ、押しリング351による係止を解除する。押しリング351は、コイルスプリング353の付勢力により後端側に後退するので、鋼球352は内側に移動し、組み立て前の元の状態に戻る。これにより、内部導体11と第2のプラグ32との固定状態は解除され、ケーブル端末部20をブッシング10から容易に引き抜くことができる。
【0052】
ケーブル接続部1においては、ケーブル導体51と内部導体11との間に、第1のプラグ31及び第2のプラグ32からなる二重プラグ構造の接続端子を介在させ、ロック機構35により第2のプラグ32をブッシング10の内部導体11に固定するので、導体接続部21の寸法を大幅に小さくすることができ、ひいてはケーブル接続部1全体の寸法を小型化することができる。また、ケーブル接続部1は、特殊な工具などを用いることなく、容易に組立作業及び解体作業を行うことができる。
【0053】
このように、ケーブル接続部1は、少なくとも内部導体11及び内部導体11の外周に配置される絶縁体12を有するブッシング10と、ブッシング10に装着されるケーブル端末部20と、を備える。ケーブル端末部20は、電力ケーブル50のケーブル導体51に圧縮接続される第1のプラグ31と、第1のプラグ31の外側に固定され、内部導体11と電気的かつ機械的に接続される第2のプラグ32と、第1のプラグ31と第2のプラグ32との間に介在し、両者を電気的に接続する第1の接触子33(接触子)と、を備える。第1のプラグ31と第2のプラグ32の間には、第2のプラグ32に対して第1のプラグ31を傾斜した状態で係合できるクリアランスが設けられ、第1の接触子33は、内周面で第1のプラグ31に接触するとともに、外周面で第2のプラグ32に接触する、外形が弾性的に変化可能な略回転楕円体形状のマルチラムバンドで構成されている。
【0054】
ケーブル接続部1によれば、現行製品を必要最小限の設計変更で600mm2以上(実施の形態では66/77kV級)の大サイズの電力ケーブル用のケーブル接続部が提供される。
【0055】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0056】
本発明は、実施の形態の電力用機器のガス終端接続部だけでなく、いわゆるプレハブ構造のケーブル接続部であれば、気中終端接続部、ガス中終端接続部、油中終端接続部、及び直線接続部や分岐接続部などの中間接続部などに広く適用することができる。
【0057】
また、本発明において、ブッシングには、電力用機器のブッシングの他、油中終端接続部、ガス中終端接続部などの本体材料、中間接続部の本体材料なども含まれる。すなわち、本発明において、ブッシングは、少なくとも内部導体及び内部導体の外周に配置される絶縁体(例えばエポキシ樹脂やFRPなどの機械的強度の高い硬質プラスチック樹脂材料)を有していればよい。
【0058】
また、実施の形態では、押しリング351は、先端側の小径部351aと後端側の押しリング本体部351b(大径部)の二段円筒形状の一体物で説明したが、小径部351aと押しリング大径部351bをそれぞれ別部品で形成した後にねじ嵌合等により後から一体化させてもよい。この場合、押しリング本体部351bが押しリング351そのものに相当し、別部品で形成される小径部351aはプリセットリングの役割となる。
【0059】
また、本発明のケーブル接続部においては、600mm2以上の大サイズの電力ケーブル用に特に有用であるが、電力ケーブルのケーブル導体の公称断面積は特に限定されず、600mm2未満の電力ケーブルに適用してもよい。
さらに、実施の形態では、66/77kV級のケーブル接続部について説明したが、使用する電圧階級は特に限定されず、例えば110kVや154kV以上のケーブル接続部に適用してもよい。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 ケーブル接続部
10 ブッシング
11 内部導体
20 ケーブル端末部
31 第1のプラグ
32 第2のプラグ
33 第1の接触子(接触子)
34 引留金具
35 ロック機構
36 保護部材
50 電力ケーブル
51 ケーブル導体
52 ケーブル絶縁体