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特許7143193収納箱、収納セットおよび収納物管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】収納箱、収納セットおよび収納物管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20220920BHJP
   A62C 35/20 20060101ALI20220920BHJP
   A62C 37/50 20060101ALI20220920BHJP
   H01Q 19/02 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
G06K19/077 248
A62C35/20
A62C37/50
G06K19/077 148
G06K19/077 220
H01Q19/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018221113
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2020086991
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591212718
【氏名又は名称】株式会社正興電機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山内 繁
(72)【発明者】
【氏名】平野 一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】本間 毅
(72)【発明者】
【氏名】西山 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】神原 健吾
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-75481(JP,A)
【文献】特開2016-51438(JP,A)
【文献】特開2008-284967(JP,A)
【文献】特開2007-162805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
A62C 35/20
A62C 37/50
H01Q 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気を導通させる導体を材質とする閉塞部材を備え、その閉塞部材の閉じ状態で外部から閉塞される収納空間を備え、その収納空間に収納物が配置される収納箱であって、
前記閉塞部材を貫通していると共に、両端が閉じた長尺状に設けられると共に、外部端末から放射される通信用電磁波が透過可能な貫通スロット部と、
前記貫通スロット部内に配置され、前記閉塞部材の厚みよりも厚みが小さく、かつ固有の箱用ID情報を有すると共に前記通信用電磁波を介して前記外部端末と通信する箱用ICタグと、
前記貫通スロット部に充填されると共に前記箱用ICタグを保持すると共に、前記閉塞部材の厚みと同程度以下の厚みを有する充填材と、
を備えることを特徴とする収納箱。
【請求項2】
請求項1記載の収納箱であって、
長尺状の前記貫通スロット部は、前記通信用電磁波の半波長に共振する長さに設けられている、
ことを特徴とする収納箱。
【請求項3】
請求項1または2記載の収納箱であって、
前記貫通スロット部のうち、前記閉塞部材の厚み方向の中途の部位には、該閉塞部材の厚み方向の両端側よりも該貫通スロット部の中央側に突出する係止凸部が設けられていて、
前記充填材には、前記係止凸部が入り込む係止凹部が設けられている、
ことを特徴とする収納箱。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の収納箱であって、
前記貫通スロット部の幅は、前記箱用ICタグと通信する前記通信用電磁波の波長の1/4よりも小さく、かつ0.5mm以上の寸法に設けられている、
ことを特徴とする収納箱。
【請求項5】
請求項4記載の収納箱であって、
前記貫通スロット部は、前記箱用ICタグが配置されると共に前記貫通スロット部の端部に設けられているタグ配置部と、前記タグ配置部よりも幅狭に設けられているスリット部と、を有する、
ことを特徴とする収納箱。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の収納箱と、
前記収納空間に配置されている前記収納物と、
前記収納物に取り付けられていると共に、固有の収納物用ID情報を有すると共に前記貫通スロット部を通過した前記通信用電磁波を介して前記外部端末と通信する収納物用ICタグと、
を備えることを特徴とする収納セット。
【請求項7】
請求項6記載の収納セットであって、
前記収納物は作業工具であり、
前記収納箱は前記作業工具を収納する工具箱である、
ことを特徴とする収納セット。
【請求項8】
請求項6記載の収納セットであって、
前記収納物は消防の際に用いられる消防用具であり、
前記収納箱は前記消防用具を収納する消火栓ボックスである、
ことを特徴とする収納セット。
【請求項9】
電気を導通させる導体を材質とする閉塞部材を備え、その閉塞部材の閉じ状態で外部から閉塞される収納空間を備え、その収納空間に収納物が配置される複数の収納箱内に収納されている前記収納物を管理する収納物管理方法であって、
前記収納箱は、
前記閉塞部材を貫通していると共に、両端が閉じた長尺状に設けられると共に、外部端末から放射される通信用電磁波が透過可能な貫通スロット部と、
前記貫通スロット部内に配置され、前記閉塞部材の厚みよりも厚みが小さく、かつ固有の箱用ID情報を有すると共に前記通信用電磁波を介して前記外部端末と通信する箱用ICタグと、
前記貫通スロット部に充填されると共に前記箱用ICタグを保持すると共に、前記閉塞部材の厚みと同程度以下の厚みを有する充填材と、
を備えていて、
単数または複数の前記収納箱に向けて前記外部端末を作動させて前記通信用電磁波を放射する第1通信工程と、
前記第1通信工程でターゲットとなる前記収納箱に関する前記箱用ID情報を前記外部端末で読み取った後に、前記第1通信工程よりもターゲットとなる前記収納箱に近接した状態で、前記外部端末の出力を調整して前記収納箱内の前記収納物の収納物用ICタグと通信する第2通信工程と、
を備えることを特徴とする収納物管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納箱、収納セットおよび収納物管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンホール等のような金属蓋に、ICタグを取り付けたものとしては、たとえば特許文献1に開示の構成がある。特許文献1には、金属蓋に貫通スロットを設け、その貫通スロットに、ICタグ本体およびアンテナ構成部材を含むICタグ部を埋め込んでいる。かかるICタグ部は、地上側のICタグリーダや、地下側のICタグリーダとの間で、ICタグ通信を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-067165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工具箱や消火栓ボックスといった、収納箱に収納されている収納物は、直接見る必要が無い場合であってもチェック作業のために収納箱の蓋部材を作業者が開けて、その収納物の確認作業を行っている。具体的には、作業者は、収納物を目視して、定められた(真正の)収納物が収納されているかといった事項や、収納されている収納物の耐用年数等を確認している。しかしながら、そのようなチェック作業は、作業者の労力が非常に大きい。また、作業者の目視による確認は、ヒューマンエラーを招く虞がある。
【0005】
また、ICタグと外部端末とのタグ通信で用いられる通信用電磁波の波長がUHF帯の920MHzである場合、経験上、金属ケースと金属製の扉の間の隙間が比較的大きい場合に、タグ通信の通信用電磁波が侵入し易くなる。そのため、扉を閉めたまま、収納物をチェックすることができる。しかしながら、金属ケースと扉の間の隙間が、タグ通信の通信用電磁波を往来可能とする条件を満たしていることは保証されていない。そのため、扉を閉じたまま、収納物をチェックすることは、偶然性に依存する、という問題もある。
【0006】
また、工具箱や消火栓ボックスの蓋部材は、通常は薄い金属板を材質としていて、電磁波を透過させ難いので、収納物にICタグを取り付けても、そのICタグと外部端末との間で、タグ通信を行うことは困難である。
【0007】
その対策として、蓋部材の表面に、収納物のリストを検索するICタグを取り付けることも考えられるが、その場合、規定の収納物が、収納箱の内部に収納されているか否かは不明であるので、蓋部材を開けて収納物を確認する作業が必要となる。
【0008】
また、特許文献1には、厚みの大きなマンホール蓋の貫通孔に、ICタグおよびアンテナ構成部材を有するICタグ部を埋め込んでいる。しかしながら、薄い金属板を材質とする蓋部材に、特許文献1に開示の構成を適用すると、薄い金属板を貫通する貫通スロット部からアンテナ構成部材やICタグ部が突出してしまう。その場合、ICタグ部に、外部衝撃が加わることで、ICタグ部が破損したり脱落してしまう虞がある。
【0009】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、収納箱の外部から蓋部材に組み込まれたICタグとの間、および収納箱内の収納物に取り付けたICタグとの間でタグ通信を行うことが可能であると共に、外部衝撃が加わってもICタグの破損を防止して、ICタグが有するID情報の読み取りの信頼性を向上させることが可能な収納箱、収納セットおよび収納物管理方法を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、電気を導通させる導体を材質とする閉塞部材を備え、その閉塞部材の閉じ状態で外部から閉塞される収納空間を備え、その収納空間に収納物が配置される収納箱であって、閉塞部材を貫通していると共に、両端が閉じた長尺状に設けられると共に、外部端末から放射される通信用電磁波が透過可能な貫通スロット部と、貫通スロット部内に配置され、閉塞部材の厚みよりも厚みが小さく、かつ固有の箱用IDを有すると共に通信用電磁波を介して外部端末と通信する箱用ICタグと、貫通スロット部に充填されると共に箱用ICタグを保持すると共に、閉塞部材の厚みと同程度以下の厚みを有する充填材と、を備えることを特徴とする収納箱が提供される。
【0011】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、長尺状の貫通スロット部は、通信用電磁波に共振する長さに設けられている、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、貫通スロット部のうち、閉塞部材の厚み方向の中途の部位には、該閉塞部材の厚み方向の両端側よりも該貫通スロット部の中央側に突出する係止凸部が設けられていて、充填材には、係止凸部が入り込む係止凹部が設けられている、ことが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、貫通スロット部の幅は、箱用ICタグと通信する通信用電磁波の波長の1/4よりも小さく、かつ0.5mm以上の寸法に設けられている、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、貫通スロット部は、箱用ICタグが配置されると共に貫通スロット部の端部に設けられているタグ配置部と、タグ配置部よりも幅狭に設けられているスリット部と、を有する、ことが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、収納空間に配置されている収納物と、収納物に取り付けられていると共に、固有の収納物用ID情報を有すると共に貫通スロット部を通過した通信用電磁波を介して外部端末と通信する収納物用ICタグと、を備える、ことが好ましい。
【0016】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、収納物は作業工具であり、収納箱は作業工具を収納する工具箱である、ことが好ましい。
【0017】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、収納物は消防の際に用いられる消防用具であり、収納箱は消防用具を収納する消火栓ボックスである、ことが好ましい。
【0018】
また、本発明の第2の観点によると、電気を導通させる導体を材質とする閉塞部材を備え、その閉塞部材の閉じ状態で外部から閉塞される収納空間を備え、その収納空間に収納物が配置される複数の収納箱内に収納されている収納物を管理する収納物管理方法であって、収納箱は、閉塞部材を貫通していると共に、両端が閉じた長尺状に設けられると共に、外部端末から放射される通信用電磁波が透過可能な貫通スロット部と、貫通スロット部内に配置され、閉塞部材の厚みよりも厚みが小さく、かつ固有の箱用ID情報を有すると共に通信用電磁波を介して外部端末と通信する箱用ICタグと、貫通スロット部に充填されると共に箱用ICタグを保持すると共に、閉塞部材の厚みと同程度以下の厚みを有する充填材と、を備えていて、単数または複数の収納箱に向けて外部端末を作動させて通信用電磁波を放射する第1通信工程と、第1通信工程でターゲットとなる収納箱に関する箱用ID情報を外部端末で読み取った後に、第1通信工程よりもターゲットとなる収納箱に近接した状態で、外部端末の出力を調整して収納箱内の収納物の収納物用ICタグと通信する第2通信工程と、を備えることを特徴とする収納物管理方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、収納箱内の収納物との間でタグ通信を行うことが可能であると共に、外部衝撃が加わってもICタグの破損を防止して、ICタグが有するID情報の読み取りの信頼性を向上させることが可能な収納箱、収納セットおよび収納物管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る収納セットとしての消火栓ボックスセット、および収納箱としての消火栓ボックスを示す平面図である。
図2図1に示す消火栓ボックスセットおよび消火栓ボックスの内部を示す斜視図である。
図3図1に示す消火栓ボックスの蓋部材の表面のうち、貫通スロット部付近を示す平面図である。
図4図3に示す貫通スロット部のスロット端部を幅方向に切断した状態を示す断面図である。
図5図3に示すスロット端部の他の例を示す断面図である。
図6図3に示すスロット端部の他の例を示す断面図である。
図7図3に示す貫通スロット部の他の例を示す平面図である。
図8図3に示す貫通スロット部の他の例を示す平面図である。
図9図3から図6に示すスロット端部に配置されるICタグの構成を示す斜視図である。
図10図3に示す貫通スロット部の長手方向に沿うように、磁界φが形成されている状態を示す図である。
図11】本発明の第2の実施の形態に係る収納セットとしての工具セット、および収納箱としての工具箱を示す斜視図である。
図12図11に示す工具セットおよび工具箱の内部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の各実施の形態に係る、収納セットおよび収納箱について、図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る収納セットとしての消火栓ボックスセット10Aおよび収納箱としての消火栓ボックス11Aについて、以下に説明する。なお、以下の説明においては、第1の実施の形態の消火栓ボックスセット10Aおよび消火栓ボックス11Aに特有の構成については、アルファベット「A」を付して説明するが、後述する第2の実施の形態の工具セット10Bおよび工具箱11Bに係る構成と共通の構成については、アルファベット「A」は付さない状態で説明する。
【0023】
図1に示すように、消火栓ボックス11Aは、金属製の筐体20Aと、金属製の蓋部材30Aとを備えている。筐体20Aは、開口部21(図2参照)を有する箱状部材である。この筐体20Aは、箱状の形態が外部に露呈していても良いが、建築物の内部の壁面から突出する寸法が少なくなるように、壁面から奥側に埋め込まれた状態で設けられていても良い。この筐体20Aには、図示を省略する蝶番や回動軸といった回動支持部を介して、蓋部材30Aが回動自在に取り付けられている。
【0024】
また、蓋部材30Aは、閉塞部材に対応する。この蓋部材30Aは、閉じ状態では筐体20Aの開口部21を塞ぐが、開き状態では開口部21が閉塞されていないので、作業者が筐体20Aの内部空間22(収納空間に対応)に収納されている消防用具100を容易に取り出すことができる。
【0025】
ここで、蓋部材30Aは、厚みの薄い金属板を材質として形成されているが、その金属板の厚みは、消火器が収納されるような小さい蓋部材30Aや、消防ホースが収納される大きい蓋部材30A等を考慮すると、0.5mm~5mm程度となる。なお、上記の蓋部材30Aの材質としては、たとえば圧延鋼板のような鉄板やステンレス鋼板、アルミニウム系材料を用いることができる。ただし、蓋部材30Aの重量がさほど大きくならなければ、蓋部材30Aの厚みは上記の範囲以上であっても良く、また強度が十分であれば、蓋部材30Aの厚みは上記の範囲以下であっても良い。
【0026】
図3は、蓋部材30Aの表面31のうち、貫通スロット部33付近を示す平面図である。図1および図3に示すように、蓋部材30Aの表面31には、貫通スロット部33が設けられている。この貫通スロット部33は、蓋部材30Aを貫通していると共に両端が閉じた長尺状の孔部分であり、スロットアンテナとして機能する部分である。図3に示すように、貫通スロット部33は、スリット部34と、スロット端部35とを有している。
【0027】
スリット部34は、スロット端部35と同じ幅かそれよりも幅の狭い長尺状の部分である。なお、図3では、スリット部34の幅が狭い場合を示している。また、スロット端部35は、スリット部34の両端部側に配置されている。このスロット端部35は、タグ配置部に対応する。また、スロット端部35は、高周波電流i1の電流が最大になる給電部となる部分である。かかる電流給電部としてのスロット端部35のうちの1つには、後述するICタグ60が組み込み配置される。かかる配置を可能とするために、スロット端部35は、スリット部34よりも幅が大きく設けられている。
【0028】
ここで、スリット部34は、外部のリーダ装置300(図10参照)から放射される通信用電磁波を透過可能な長さや幅に設定されているが、特にスリット部34の幅はゴミの侵入や悪戯防止などから狭いことが望ましく、通信用電磁波透過の観点からは広い方が好ましい。具体的な寸法としては、スリット部34の幅は、0.5mm以上となっている。ただし、スリット部34は、スロット端部35と共に、スロットアンテナを構成する。したがって、スリット部34の幅は、スロット端部35の存在も考慮して、通信用電磁波の波長の1/4よりも小さく設定されている。ちなみに、貫通スロット部33の長さは、スロットアンテナの長さ、すなわち半波長であってUHF帯の周波数920MHzでは約16cmである。
【0029】
また、スロット端部35の平面形状は、円形状であることが好ましいが、ICタグが配置可能であれば、その形状は、どのようなものであっても良い。たとえば、スロット端部35の平面形状が円形状であり、かつICタグがIM5-PK2525(日立化成株式会社製)の場合、ICタグの一辺が2.5mmの矩形状であるので、円形状のスロット端部35は、直径が3.5mm以上5mm以下であることが好ましいが、後述するようにICタグの保持性に影響がなければ、円形状のスロット端部35の直径は5mm以上であっても良い。
【0030】
なお、電流給電部としてのスロット端部35のうち、ICタグ60が配置されているスロット端部35においては、その内壁がICタグ60の四辺のうち少なくとも三辺と近接対向する。そのため、スロット端部35の内壁を流れる高周波電流i1とICタグ60とは、良好な相互誘導を行うことが可能となっている。
【0031】
ここで、スロット端部35を幅方向に切断した断面形状を、図4に示す。図4に示すように、スロット端部35の厚み方向の中途の部位には、係止凸部35aが設けられている。係止凸部35aは、スロット端部35の厚み方向における表面側の端部および裏面側の端部よりも、内径側(中央側)に突出している部分である。すなわち、スロット端部35の表面側または裏面側から機械的な加工を行うことで、係止凸部35aがスロット端部35の厚み方向の中途の部位に形成される。
【0032】
なお、スロット端部35の断面形状は、図4に示すものには限られない。このスロット端部35の断面形状の他の例を、図5および図6に示す。
【0033】
図5は、スロット端部35の他の例を示す断面図である。図5に示すスロット端部35には、蓋部材30Aの表面31に対して傾斜している傾斜面36aと、蓋部材30Aの裏面32に対して傾斜している傾斜面36bとが存在することで、スロット端部35の厚み方向の中途の部位に、尖形状の係止凸部35aが設けられている。
【0034】
また、図6は、スロット端部35の他の例を示す断面図である。図6に示すスロット端部35には、蓋部材30Aの表面31から裏面32に向かい、該表面31に対して直交する内壁面36cと、同じく蓋部材30Aの裏面32から表面31に向かい、該裏面32に対して直交する内壁面36dとが設けられている。そして、内壁面36cの終端部と内壁面36dの終端部とで挟まれた部位には、スロット端部35の内径側に突出する係止凸部35aが設けられている。なお、スロット端部35の断面形状は、図4から図6以外の構成を採用することも、勿論可能である。
【0035】
なお、スリット部34とスロット端部35とを含む貫通スロット部33のスロット長は、通信用電磁波に共振する半波長程度であることが好ましい。その場合には、外部端末(リーダ装置300;図10参照)から放射された通信用電磁波に基づく高周波電流i1が貫通スロット部33の縁部に沿って流れた場合に、半波長共振によって高周波電流i1に基づく磁界φを大きくすることができる。ただし、スリット部34の幅および樹脂封止体40の媒質定数やスロット端部35の直径が、半波長共振に影響を与える数値や大きさである場合には、それらの大きさを考慮して、スリット部34の長さを定めることができる。たとえば、貫通スロット部33の縁部に沿って流れる高周波電流i1のスロット中央部分37から左右に流れ出る電流をたとえば往路とし、復路は左右から流れ込む電流の向きを指すとすると、往路と復路とがそれぞれ半波長となるように、スリット部34の長さを定めることができる。
【0036】
なお、貫通スロット部33の寸法の一例としては、次のものがある。すなわち、スリット部34の幅が1.5mmであり、樹脂封止体40の媒質定数がウレタンなど1に近いものを選んだ場合、スロット端部35の直径が4mmで、スリット部34とスロット端部35を含む全長は15.8mmが最良となったものがある。この一例による貫通スロット部33のアンテナ性能は、通信用電磁波の出力を250mW、通信用電磁波の周波数を920MHz、ICタグ60をIM5-PK2525(日立化成株式会社製)としたとき、通信飛距離が1.5m~2mに及ぶ。この通信飛距離は、一般的なUHF帯の高飛距離シール型ICタグと同等レベルである。
【0037】
また、貫通スロット部33の形状は、図3に示すものには限られない。貫通スロット部33の他の例を、図7および図8に示す。図7は、貫通スロット部33の端部側が湾曲した形状となっている構成を示す図である。この図7に示す構成では、スリット部34の両端部側には、略U字形状を描くように湾曲した湾曲部34bが設けられていて、その湾曲部34bがスロット端部35と接続している。このため、スリット部34のストレート部分34aと、スロット端部35の間には、突出部36が設けられている。かかる突出部36の存在により、たとえばストレート部分34aの樹脂封止体40の樹脂が柔らかく、この樹脂封止体40に鋭利な工具が突き刺さり、その状態でスロット端部35側に移動しても、突出部36の存在によって、ICタグ60が破壊されるのを防ぐことができる。
【0038】
また、図8に示す構成では、図7に示す構成よりも簡略化された形状のスリット部34を有している。この図8に示す構成では、スリット部34は、ストレート部分34a以外に、ストレート部分34aの延伸方向に対して折れ曲がっている折れ曲がり部34cが設けられていて、その折れ曲がり部34cがスロット端部35と接続している。このように構成した場合にも、ストレート部分34aに鋭利な工具が突き刺さり、その状態でスロット端部35側に移動しても、折れ曲がり部34cの存在によって、鋭利な工具の移動速度を減じさせることができ、ICタグ60が破壊されるのを防ぐことができる。なお、折れ曲がり部34cは、ストレート部分34aに対して略直交せずに、ストレート部分34aに対して所定の角度で傾斜していても良い。
【0039】
上述した貫通スロット部33には、樹脂封止体40が配置されている。樹脂封止体40は、樹脂充填部50と、ICタグ60とを有している。樹脂充填部50は、充填材に対応する。この樹脂充填部50は、電気的な絶縁性を有する樹脂を材質としている。かかる樹脂としては、たとえば、抵抗ロスなどによりアンテナ感度を下げることのない物質が望ましく、例えば、空気を多く含むウレタン材やフッ素樹脂などの他に、塩素系樹脂や高分子樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は、後述する数式(1)におけるnが2~5、mがほぼ1であり、例えば、m×nが4である物質とし、通信用電磁波の波長が、RFID通信にて用いられるUHF帯の周波数として用いられる920MHzの場合、貫通スロット部33の長さは約8cmとなるが、現実的には樹脂封止体40の形状が細長くこれに接する表面31と裏面32の空気(nとmがともにほぼ1)の媒質定数が支配的となり結果的に空気中の共振長16cmとなる。
【0040】
樹脂封止体40が太い場合や樹脂充填部50を構成する樹脂が、媒質定数が真空や空気と比較して高い値の絶縁物などを用いることができる。上記の媒質定数は、比誘電率と比透磁率との積で表される。真空中の比誘電率εは1.0であり、比透磁率μは1.0であるため、真空中の媒質定数は1.0となる。また、空気中の媒質定数も、ほぼ1.0である。樹脂充填部50の樹脂の媒質定数は、その材質の比誘電率と比透磁率とが、真空に対してそれぞれ何倍であるかにより求められる。すなわち、樹脂充填部50の樹脂の比誘電率が真空のn倍であり、比透磁率が真空のm倍である場合、樹脂充填部50の樹脂の媒質定数は、mnεμで表される。したがって、貫通スロット部33の内部が上記の樹脂で充填されている場合の半波長共振の波長の長さは、次の数式(1)で示される倍率を乗ずる。つまり真空中の波長に比べ短縮する。
【0041】
【数1】
【0042】
ただし、樹脂充填部50を構成する樹脂としては、上記のように媒質定数が真空や空気と比較して高い値の絶縁物とは異なる観点の樹脂を用いても良い。たとえば、外部衝撃に対して、樹脂充填部50が破損しないような樹脂を材質としても良い。そのような材質としては、たとえばシリコーンゴム系、ポリイミド系、エポキシ系、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PDAP(ジアリルフタレート)といった耐熱性を有する樹脂が挙げられる。しかしながら、それ以外のゴム系の材質や、樹脂製のフィルム系の材質、あるいはセラミックス等、種々の材質を用いることが可能である。いずれの樹脂であっても、樹脂充填部50が細長いこと、厚みが薄いことによって、実質的媒質定数が変化し式(1)で求まる倍率が補正される。実際は最良の共振感度になるように貫通スロット部33の長さを実験で求めるのが近道の場合がある。
【0043】
図4から図6に示すように、樹脂充填部50には、係止凹部51が設けられている。係止凹部51は、係止凸部35aが入り込む部分である。すなわち、貫通スロット部33に樹脂を充填して樹脂充填部50を形成する際に、充填された樹脂は、係止凸部35aの形状に倣うことで、係止凹部51が形成され、その係止凹部51に係止凸部35aが入り込んだ状態となる。かかる係止凹部51に係止凸部35aが入り込むことにより、樹脂封止体40が貫通スロット部33から脱落し難くなる。
【0044】
なお、外部から貫通スロット部33が容易に視認されるのを防ぐために、貫通スロット部33に配置される樹脂封止体40には、蓋部材30Aの表面31と同一の塗装を施して、外部から視認し難くしても良い。このように構成する場合には、ICタグ60がどの部位に存在するのかが把握し難くなるため、外部からICタグ60が攻撃され難くなる。また、導電性を妨げないような所定のシールによって、貫通スロット部33が覆われるように構成しても良い。なお、所定のシールの一例として、「点検済票」や安全協会などが発行する「設備安全シール」などが挙げられるが、これ以外のものであっても良い。
【0045】
図9は、ICタグ60の構成を示す斜視図である。ICタグ60は、ICタグ基板61と、ICチップ62と、コイルアンテナ63とを備えている。ICタグ基板61は、略矩形状をなす平板形状に形成されている。ICタグ基板61としては、たとえばガラスエポキシ基板あるいはPETを始めとした樹脂製のフィルムを用いることができる。ICタグ基板61は、ICチップ62と、コイルアンテナ63とを有しているが、そのうちICチップ62は、各種のデータを記憶する。
【0046】
なお、ICタグ60の厚みは、金属板である表面31の厚みよりも小さく設けられている。そのようなICタグ60としては、たとえばIM5-PK2525(日立化成株式会社製)のような、超小型のサイズのものがある。上記のIM5-PK2525(日立化成株式会社製)の場合、ICタグの一辺が2.5mmの矩形であり、また厚みが0.4mmとなっている。また、後述するICタグ70はICタグ60では感度が不足する場合の高感度のICタグである。
【0047】
上述のICチップ62には、消火栓ボックスセット10A(消火栓ボックス11A)に対応したID(identification)情報や、その他収納されるべき消防用具100に関する情報(消防用具100のID情報、消防用具100の種類情報、消防用具100の製造年月日、消防用具100のサイズ情報等)が記憶されていてもよく、IDをキーとした情報連携としてもよい。なお、ICチップ62には、消火栓ボックスセット10Aが設置されている場所に関する設置情報を記憶しても良い。
【0048】
このような消火栓ボックスセット10A(消火栓ボックス11A)に関するID情報は、専用のリーダ装置300(図10参照)で読み取られる。そして、リーダ装置300で読み取った情報を外部のサーバ等で管理することで、消火栓ボックスセット10A(消火栓ボックス11A)の管理を容易に行うことが可能となる。
【0049】
次に、消火栓ボックス11Aの内部に収納されている消防用具100について説明する。消防用具100は、たとえば消防用ホース、消火栓、消火器等のような消防活動で使用される用具である。この消防用具100には、ICタグ70が取り付けられている。なお、このICタグ70は、ICタグ60と同様に超小型のサイズであることが好ましいが、より大型のサイズであっても良い。また、ICタグ70は、小型であることに限定されず、たとえばシール型タグ、金属対応型タグなど取り付け相手に合わせた適材適所の仕様を選ぶことができる。
【0050】
ここで、消防用具100に対するICタグ70の取付態様は、外部のリーダ装置300との間の通信を妨げなければ、どのようなものであっても良い。たとえば、消防用具100に存在する凹部や隙間に、樹脂等によってICタグ70が埋設されていても良く、ワイヤ等の手段を介して消防用具100にICタグ70が取り付けられていても良く、シール等を介してICタグ70が消防用具100に取り付けられていても良い。
【0051】
なお、ICタグ70には、該ICタグ70が取り付けられた消防用具100に関する情報(消防用具100のID情報、消防用具100の種類情報、消防用具100の製造年月日、消防用具100のサイズ情報等)が記憶されていてもよく、IDを検索キーとして情報連携してもよい。
【0052】
<ICタグと外部のリーダ装置との通信について>
次に、ICタグ60,70と外部のリーダ装置300との通信について説明する。なお、リーダ装置300は、情報を読み取る機能のみならず、ICタグ60,70に情報を書き込む機能を有しても良いのは勿論である。
【0053】
外部のリーダ装置300から通信用電磁波が放射されると(第1通信工程)、その通信用電磁波が貫通スロット部33の近傍に届く。すると、貫通スロット部33の縁部(内壁)に沿って高周波電流i1が形成される。この高周波電流i1が形成される場合、スロット端部35は電流が最大となる給電部となり、スリット部34の中央部分37は、電圧が最大となる給電部となるが、このとき、スリット部34の中央部分37における幅方向の一方側がプラスの電圧に印加され、幅方向の他方側がマイナスの電圧に印加されると見立てることができる。ちなみに、通信用電磁波は高周波であるので、これらの電流や電圧の極性は周波数によって交互に代わる。また、貫通スロット部33のスロット長は、通信用電磁波の半波長程度に設けられているので、高周波電流i1によって共振状態となる。そのため、図10に示すように、貫通スロット部33を貫通する磁界φの輪が表面31側の空間に連なり、同時に裏面32側の空間にも連なり通信用電磁波が伝わることで、消火栓ボックス11Aの内部側および外部側に、電磁波が放射される。なお、電磁波は磁界と電界が直交状態のまま連鎖して伸びてゆくが、図10では、見やすくするために電界分布を省略している。
【0054】
一方、ICタグ60が配置されているスロット端部35においては、ICタグ60のコイルアンテナ63とスロット端部35の内壁とが近接している。そのため、スロット端部35の内壁を流れる高周波電流i1により、ICタグ60のコイルアンテナ63が相互誘導を受け、それにより、ICチップ62が作動して、ICチップ62に記憶されているタグ情報が高周波電流i1に含まれ磁界φを介して、外部のリーダ装置300にタグ情報が伝達される。それにより、外部のリーダ装置300とICタグ60との間のタグ通信が可能となる。
【0055】
なお、消火栓ボックスセット10A(消火栓ボックス11A)が、近隣に複数存在する場合には、リーダ装置300では、それぞれの消火栓ボックスセット10A(消火栓ボックス11A)に取り付けられているICタグ60の複数のID情報を読み取ることができる。ただし、読み取られる電磁波の強度を1つのIDになるまで下げてゆき、ターゲットとなる消火栓ボックスセット10A(消火栓ボックス11A)は、容易に特定することができる。
【0056】
ところで、リーダ装置300が消火栓ボックスセット10A(消火栓ボックス11A)から離れている状態では、貫通スロット部33を透過する通信用電磁波は、そのほとんどが金属製の蓋部材30Aで反射または遮断されるので、表面31から貫通スロット部33を介して裏面32側に入るとき、さほど強くない状態となる。そこで、ターゲットとなる消火栓ボックスセット10A(消火栓ボックス11A)のID情報を読み取った後に、そのターゲットの消火栓ボックスセット10A(消火栓ボックス11A)に接するか近接する。このように、リーダ装置300が貫通スロット部33に接するか近接した状態で、リーダ装置300から貫通スロット部33に向けて通信用電磁波を放射する。
【0057】
このような近接状態(または接する状態)では、リーダ装置300から放射された通信用電磁波は、上述したように、磁界φを介して、消火栓ボックス11Aの内部側に進行する。そして、消火栓ボックス11Aの内部に収納されている消防用具100のICタグ70と、タグ通信を行う。すなわち、ICタグ70に電磁波(磁界φ)が届き、近接した外部のリーダ装置300にICタグ70のタグ情報が伝達される。それにより、外部のリーダ装置300とICタグ70との間のタグ通信が可能となる。
【0058】
しかしながら、上記のように貫通スロット部33に近接しても、リーダ装置300とICタグ70との間で、タグ通信が良好に行えない場合もあり得る。そのような場合には、リーダ装置300を貫通スロット33に接するまたは近接したまま出力を調整することで、消火栓ボックス11A内の消防用具100に取り付けられているICタグ70とタグ通信する(第2通信工程)。このように、リーダ装置300の出力調整を行うことにより、リーダ装置300とICタグ70との間で、より確実なタグ通信が行える。
【0059】
<効果について>
以上のような構成を有する消火栓ボックス11A(収納箱)は、電気を導通させる導体を材質とする蓋部材30A(閉塞部材)を備え、その蓋部材30Aの閉じ状態で外部から閉塞される内部空間22を備え、その内部空間22に消防用具100(収納物)が配置される消火栓ボックス11A(収納箱)である。この消火栓ボックス11A(収納箱)は、蓋部材30Aを貫通していると共に、両端が閉じた長尺状に設けられると共に、外部のリーダ装置300(外部端末)から放射される通信用電磁波が透過可能な貫通スロット部33と、貫通スロット部33内に配置され、蓋部材30Aの厚みよりも厚みが小さく、かつ固有の箱用ID情報を有すると共に通信用電磁波を介してリーダ装置300(外部端末)と通信するICタグ60(箱用ICタグ)と、貫通スロット部33に充填されると共にICタグ60(箱用ICタグ)を保持すると共に、蓋部材30Aの厚みと同程度以下の厚みを有する樹脂充填部50(充填材)と、を備えている。
【0060】
このため、消火栓ボックス11A(収納箱)に取り付けられているICタグ60(箱用ICタグ)との間でタグ通信を行うことが可能である。なお、消火栓ボックス11A(収納箱)に収納されるべき消防用具100(収納物)に関する情報を、ICタグ60(箱用ICタグ)に関連付けておくことで、ICタグ60(箱用ICタグ)を読めば、消防用具100(収納物)に関する情報が知れることになる。
【0061】
ここで、蓋部材30Aに貫通スロット部33が形成され、その貫通スロット部33には、ICタグ60(箱用ICタグ)と、蓋部材30Aの厚みと同程度以下の厚みを有する樹脂充填部50(充填材)とが配置されている。したがって、ICタグ60(箱用ICタグ)および樹脂充填部50(充填材)は、貫通スロット部33から突出しない構成とすることができるので、外部衝撃が蓋部材30Aに加わっても、樹脂充填部50およびICタグ60(箱用ICタグ)に与えるダメージを小さくすることができる。このため、樹脂充填部50およびICタグ60(箱用ICタグ)が破損したり、貫通スロット部33から樹脂充填部50およびICタグ60(箱用ICタグ)が脱落してしまうのを防止することができる。そのため、ICタグ60が有するID情報の読み取りの信頼性を向上させることが可能となる。
【0062】
また、貫通スロット部33を介して、実際に消火栓ボックス11A(収納箱)の内部に収納されている消防用具100に取り付けられているICタグ70(収納物用ICタグ)と、リーダ装置300(外部端末)との間で、タグ通信を行うことが可能となる。そのため、実際に蓋部材30Aを開けなくても、消火栓ボックス11A(収納箱)内に収納されている消防用具100に関する情報を、ICタグ70(収納物用ICタグ)から読み取ることが可能となる。
【0063】
このように、蓋部材30Aを開けなくても、消火栓ボックス11A(収納箱)内に収納されている消防用具100に関する情報を読み取れるので、作業者の労力を大幅に軽減することができる。特に、たとえば高層ビル等においては、1つのフロアに複数台の消火栓ボックスセット10A(収納物セット)が存在する場合がある。この場合、各階に同じ台数だけ消火栓ボックスセット10A(収納物セット)が存在し、それら全てを定期点検等で点検する際には、多大な労力が必要となる。特に、年月が経過すると、消防用具100から製造年月日等のような刻印されている情報が読み取り難くなる場合がある。また、蓋部材30Aが悪戯防止など容易に開けられないようにシール等で封印されている場合には、その封印を解いた後に、点検後に再び封印する必要もある。
【0064】
しかしながら、上記のように、貫通スロット部33を介して、消火栓ボックス11A(収納箱)の内部に収納されている消防用具100に取り付けられているICタグ70(収納物用ICタグ)と、リーダ装置300(外部端末)との間で、タグ通信を行うことで、そのような労力を大幅に低減可能となる。
【0065】
また、本実施の形態では、長尺状の貫通スロット部33は、通信用電磁波の半波長に共振する長さに設けられている。このため、貫通スロット部33を良好なスロットアンテナとして機能させることができる。したがって、リーダ装置300(外部端末)は、消防用具100に取り付けられているICタグ70(収納物用ICタグ)との間でタグ通信を良好に行うことが可能となる。
【0066】
また、本実施の形態では、貫通スロット部33のうち、蓋部材30A(閉塞部材)の厚み方向の中途の部位には、該蓋部材30A(閉塞部材)の厚み方向の両端側よりも該貫通スロット部33の中央側に突出する係止凸部35aが設けられている。また、樹脂充填部50(充填材)には、係止凸部35aが入り込む係止凹部51が設けられている。
【0067】
このため、かかる係止凹部51に係止凸部35aが入り込むことにより、樹脂封止体40が貫通スロット部33から脱落するのを防止することができる。したがって、蓋部材30AにICタグ60(箱用ICタグ)が取り付けられた状態を長期に亘って維持することで、ICタグ60(箱用ICタグ)に関する情報(ID情報)の読み取りを長期に亘って維持することができ、ICタグ60(箱用ICタグ)に関する情報(ID情報)の読み取りの信頼性を向上させることが可能となる。
【0068】
また、本実施の形態では、貫通スロット部33はスロットアンテナを形成しているが、その幅は、ICタグ60(箱用ICタグ)と通信する通信用電磁波の波長の1/4よりも小さく、下限の幅は数ミクロンでもよいが、実用的感度のスロットアンテナを形成するために0.5mm以上の寸法に設けられている。
【0069】
このため、貫通スロット部33を介して、通信用電磁波を消火栓ボックス11A(収納箱)の内部空間22に放射することができる。したがって、収納されている消防用具100(収納物)に取り付けられているICタグ70(収納物用ICタグ)と、リーダ装置300(外部端末)との間で、タグ通信を行うことが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態では、貫通スロット部33は、ICタグ60(箱用ICタグ)が配置されると共に貫通スロット部33の端部に設けられているスロット端部35(タグ配置部)と、スロット端部35(タグ配置部)よりも幅狭に設けられているスリット部34とを有している。これは、ゴミや遺物の侵入を妨げるため、あるいは蓋部材30Aの機械的強度を損なわないために有効である。
【0071】
このため、スロット端部35(タグ配置部)では、ICタグ60(箱用ICタグ)を配置するためにスリット部34よりも幅広としながらも、スリット部34はそれよりも幅狭とすることで、必要以上に広いスリットが存在しない状態となる。それにより、貫通スロット部33に配置される樹脂充填部50に与えられる外部衝撃を低減可能となる。また、スリット部34の幅を狭くすることで、貫通スロット部33に充填される樹脂充填部50の取付強度を向上させることができる。
【0072】
また、本実施の形態では、消火栓ボックスセット10A(収納セット)は、内部空間22に配置されている消防用具100(収納物)と、消防用具100(収納物)に取り付けられていると共に、固有の収納物用ID情報を有すると共に貫通スロット部33を通過した通信用電磁波を介してリーダ装置300(外部端末)と通信するICタグ70(収納物用ICタグ)と、を備える。
【0073】
このため、蓋部材30Aを開けなくても、消火栓ボックス11A(収納箱)内に収納されている消防用具100に関する情報を読み取れるので、作業者の労力を大幅に軽減することができる。
【0074】
また、本実施の形態では、収納物は消防の際に用いられる消防用具100であり、収納箱は消防用具100を収納する消火栓ボックス11Aである。このため、消防用具100に取り付けられているICタグ70(収納物用ICタグ)とリーダ装置300(外部端末)との間で、蓋部材30Aを閉じた状態でタグ通信を行うことができる。したがって、人目につくような場所で、セキュリティーの観点からみてなるべく蓋部材30Aの開閉を避けたい場合でも、蓋部材30Aを開けずに、消防用具100(収納物)に関する情報(ID情報)を読み取ることができる。
【0075】
また、本実施の形態の収納物管理方法は、単数または複数の消火栓ボックス11A(収納箱)に向けてリーダ装置300(外部端末)を作動させて通信用電磁波を放射する第1通信工程を備える。また、第1通信工程でターゲットとなる消火栓ボックス11A(収納箱)に関する箱用ID情報をリーダ装置300(外部端末)で読み取った後に、第1通信工程よりもターゲットとなる消火栓ボックス11A(収納箱)に近接した状態で、リーダ装置300(外部端末)の出力を小さくするなど調整して消火栓ボックス11A(収納箱)内の消防用具100(収納物)のICタグ70(収納物用ICタグ)と通信する第2通信工程と、を備える。
【0076】
このように、リーダ装置300(外部端末)の出力を調整した状態で、消防用具100(収納物)のICタグ70(収納物用ICタグ)と通信する第2通信工程を備えている。そのため、貫通スロット部33に近接しても、リーダ装置300とICタグ70との間で、タグ通信が良好に行えない場合でも、リーダ装置300(外部端末)の出力調整を行うことにより、あるいはリーダ装置300を貫通スロット部33に接するか近接することによってリーダ装置300(外部端末)とICタグ70(収納物用ICタグ)との間で、より確実なタグ通信を行うことができる。したがって、蓋部材30Aを閉じた状態で、消防用具100(収納物)に関する情報(ID情報)を読み取ることができる。
【0077】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る収納セットとして工具セット10B、および収納箱としての工具箱11Bについて、以下に説明する。なお、以下の説明においては、第2の実施の形態の工具セット10Bおよび工具箱11Bに特有の構成については、アルファベット「B」を付して説明するが、第1の実施の形態の消火栓ボックスセット10Aおよび消火栓ボックス11Aに係る構成と共通の構成については、アルファベット「B」は付さない状態で説明する。
【0078】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る収納セットとしての工具セット10B、および収納箱としての工具箱11Bを示す斜視図である。図12は、図11に示す工具箱11Bの内部構成を示す平面図である。
【0079】
図11および図12に示すように、工具箱11Bは、金属製の筐体20Bと、金属製の蓋部材30Bとを備えていて、内部空間22に各種工具200を収納している。筐体20Bは、開口部21(図12参照)を有する有底の箱状部材であり、その筐体20Bの所定の部位に、図示を省略する蝶番や回動軸といった回動支持部を介して、蓋部材30Bが回動自在に取り付けられている。この蓋部材30Bには、工具箱11Bの持ち運びを容易にするために、取手H1が取り付けられているが、そのような取手H1が省略されていても良い。
【0080】
また、蓋部材30Bは、閉じ状態では筐体20Bの開口部21を塞ぐが、開き状態では開口部21が閉塞されていないので、作業者が筐体20Bの内部空間22に収納されている工具200を容易に取り出すことができる。
【0081】
ここで、蓋部材30Bは、厚みの薄い金属板を材質として形成されている。なお、工具セット10Bは、消火栓ボックスセット10Aと異なって、作業者が持ち運んだり、移動させることが多いが、2人がかりで運ぶ大きなものもある。そのため、蓋部材30Bを構成する金属板の厚みは、蓋部材30Aと同程度の厚みとすることができる。すなわち、蓋部材30Bの金属板の厚みは、上記の蓋部材30Aの場合と同様に、0.5mm~5mm程度となる。なお、上記の蓋部材30Bの材質としては、たとえば圧延鋼板のような鉄板やステンレス鋼板、アルミニウム系材料を用いることができる。ただし、蓋部材30Bの重量がさほど大きくならなければ、蓋部材30Bの厚みは上記の範囲以上であっても良く、また強度面で問題がなければ、蓋部材30Bの厚みは上記の範囲以下であっても良い。
【0082】
また、本実施の形態の工具箱11Bのその蓋部材30Bにも、図3に示すような貫通スロット部33が設けられている。また、貫通スロット部33には、第1の実施の形態で述べたのと同様の樹脂充填部50とICタグ60とを備える樹脂封止体40が配置されている。なお、蓋部材30Bに設けられる貫通スロット部33は、図3に示すような構成に代えて、図4から図8に示すような構成としても良い。
【0083】
次に、工具箱11Bの貫通スロット部33に設置されているICタグ60について説明する。このICタグ60のICチップ62には、工具セット10B(工具箱11B)に対応したID(identification)情報や、収納される工具200に関する情報(工具100のID情報、工具100の種類情報、工具のサイズ情報等)が記憶されている。なお、ICチップ62には、工具セット10Bが使用される環境に関する使用環境情報を記憶しても良い。そのような使用環境情報としては、たとえば衛生面の管理が厳格な現場(たとえば病院、食品を扱う現場等)で用いられる旨の情報、塵埃の低減が厳しく要求される現場(たとえばクリーンルーム等)で用いられる旨の情報等がある。
【0084】
このようなID情報は、専用のリーダ装置300で読み取られる。そして、リーダ装置300で読み取った情報を外部のサーバ等で管理することで、工具セット10Bの管理を容易に行うことが可能となる。
【0085】
次に、工具箱11Bの内部空間22に収納される工具200について説明する。なお、工具200は、収納物に対応する。工具200は、たとえばスパナ、レンチ、ペンチ、ニッパ、ハンマ等のような汎用されている工具である。この工具200には、ICタグ70が取り付けられている。なお、このICタグ70は、ICタグ60と同様に超小型のサイズであることが好ましいが、より高い感度の大型のサイズであっても良い。
【0086】
ここで、工具200に対するICタグ70の取付態様は、外部のリーダ装置300との間の通信を妨げなければ、どのようなものであっても良い。たとえば、工具200の表面に存在する凹部に、樹脂等によってICタグ70が埋設されていても良く、ワイヤ等の手段を介して工具200にICタグ70が取り付けられていても良く、シール等を介してICタグ70が取り付けられていても良い。あるいは、小型の金属対応タイプであってもよい。
【0087】
なお、ICタグ70には、該ICタグ70が取り付けられた工具200に関する情報(工具200のID情報、工具200の種類情報、工具200の製造年月日、工具200のサイズや工具仕様など工具情報等)が記憶されている。あるいは工具200のID情報を検索キーとして工具情報と連携してもよい。
【0088】
<ICタグと外部のリーダ装置との通信について>
次に、ICタグ60,70と外部のリーダ装置300との通信について説明する。外部のリーダ装置300から通信用電磁波が放射されると(第1通信工程)、既に図10に基づいて説明したように、貫通スロット部33を貫通する磁界φの輪が表面31側の空間に連なり、同時に裏面32側の空間にも連なり通信用電磁波が伝わることで、工具箱11Bの内部側および外部側に、電磁波が放射される。なお、電磁波は磁界と電界が直交状態のまま連鎖して伸びてゆくが、図10では、見やすくするために電界分布を省略している。
【0089】
また、スロット端部35においても、既に説明したように、スロット端部35の内壁を流れる高周波電流i1により、相互誘導によってICタグ60のコイルアンテナ63が相互誘導を受け、それによりICチップ62が作動して、ICチップ62に記憶されているタグ情報が高周波電流i1に含まれ磁界φを介して、外部のリーダ装置300にタグ情報が伝達される。それにより、外部のリーダ装置300とICタグ60との間のタグ通信が可能となる。
【0090】
ここで、工具セット10B(工具箱11B)は、消火栓ボックスセット10A(消火栓ボックス11A)と比較して、異なる複数の工具セット10B(工具箱11B)が近隣に配置される場合が多い。そのため、リーダ装置300から通信用電磁波を放射した際には、複数の工具セット10B(工具箱11B)に関するID情報が得られるので、複数の工具セット10B(工具箱11B)の管理を容易に行える。
【0091】
また、ターゲットとなる工具セット10B(工具箱11B)が予め決まっている場合には、そのターゲットとなる工具セット10B(工具箱11B)にリーダ装置300を近付ける。その際に、貫通スロット部33にリーダ装置300を近づけて、そのリーダ装置300の出力を、ターゲット以外の工具セット(工具箱11B)のICタグ60が検出しなくなるまで下げるなど調整する。すると、ターゲットとなる工具箱11B内の工具200に取り付けられているICタグ70とタグ通信することができる(第2通信工程)。
【0092】
ここで、上述のように、リーダ装置300の出力調整を行うことで、近くに他の工具セット10B(工具箱11B)が存在する場合でも、そのような他の工具セット10B(工具箱11B)内に存在する工具200に取り付けられたICタグ70とタグ通信を行わないようにすることができる。すなわち、ターゲットとなる工具セット10B(工具箱11B)の工具200に取吊られたICタグ70と、リーダ装置300との間で、選択的にタグ通信を行うことができる。
【0093】
<効果について>
以上のような構成を有する工具箱11B(工具セット10B)においても、上述の第1の実施の形態で述べたのと同様に、樹脂充填部50およびICタグ60(箱用ICタグ)が破損したり、貫通スロット部33から樹脂充填部50およびICタグ60(箱用ICタグ)が脱落してしまうのを防止することができる。そのため、ICタグ60が有するID情報の読み取りの信頼性を向上させることが可能となる。
【0094】
また、貫通スロット部33を介して、実際に工具箱11B(収納箱)の内部に収納されている工具200に取り付けられているICタグ70(収納物用ICタグ)と、リーダ装置300(外部端末)との間で、タグ通信を行うことが可能となる。そのため、実際に蓋部材30Aを開けなくても、工具箱11B(収納箱)内に収納されている工具200に関する情報を、ICタグ70(収納物用ICタグ)から読み取ることが可能となる。そのため、工具200に関する情報の読み取りのために要する労力を大幅に低減可能となる。
【0095】
また、本実施の形態では、収納物は工具200であり、収納箱は工具200を収納する工具箱11Bである。このため、蓋部材30Bを開けなくても、工具箱11B(収納箱)内に収納されている工具200に関する情報を読み取れるので、作業者の労力を大幅に軽減することができる。
【0096】
また、本実施の形態の収納物管理方法は、単数または複数の工具箱11B(収納箱)に向けてリーダ装置300(外部端末)を作動させて通信用電磁波を放射する第1通信工程を備える。また、第1通信工程でターゲットとなる工具箱11B(収納箱)に関する箱用ID情報をリーダ装置300(外部端末)で読み取った後に、第1通信工程よりもターゲットとなる工具箱11B(収納箱)に近接した状態で、リーダ装置300(外部端末)の出力をターゲット以外の工具セット(工具箱11B)のICタグ60が検出しなくなるまで下げるなど調整して工具箱11B(収納箱)内の工具200(収納物)のICタグ70(収納物用ICタグ)と通信する第2通信工程と、を備える。
【0097】
このように、リーダ装置300(外部端末)の出力を調整した状態で、工具200(収納物)のICタグ70(収納物用ICタグ)と通信する第2通信工程を備えている。そのため、近くに他の工具セット10B(工具箱11B)が存在する場合でも、リーダ装置300の出力調整を行うことで、その工具セット10B(工具箱11B)の近傍に存在する他の工具セット10B(工具箱11B)内の工具200に取り付けられたICタグ70とタグ通信を行わないようにすることができる。すなわち、ターゲットとなる工具セット10B(工具箱11B)の工具200に取吊られたICタグ70と、リーダ装置300との間で、選択的にタグ通信を行うことができる。
【0098】
また、上述の第2通信工程における出力調整を、ターゲットとなる工具セット10B(工具箱11B)毎に繰り返すことで、それぞれの工具セット10B(工具箱11B)内の工具200(収納物)に取り付けられたICタグ70から、工具200に関するID情報を読み取ることができる。そのため、多数の工具セット10B(工具箱11B)を点検する等のような管理作業が必要な場合でも、その管理作業の労力を大幅に低減することができる。
【0099】
<変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0100】
上述の実施の形態では、貫通スロット部33は、直線状に設けられている。しかしながら、貫通スロット部33は、直線状には限られない。たとえば、図8に示すようにストレート部34aは折り曲げ部34cがあってもよく、さらに複数回折り曲がった九十九折状の部分が存在していても良い。
【0101】
また、上述の実施の形態では、閉塞部材には、蓋部材30A,30Bが対応するものとしている。しかしながら、閉塞部材は、蓋部材30A,30Bに限られるものではない。たとえば、消火栓ボックス11Aや工具箱11Bが引き出し可能な引出し部材を備える場合、その引出し部材が閉塞部材に対応するものとしても良い。また、消火栓ボックス11Aや工具箱11Bがシャッター部材を備える場合、そのシャッター部材が閉塞部材に対応するものとしても良い。
【0102】
また、上述の実施の形態では、収納セットとして、消火栓ボックスセット10Aおよび多数の工具セット10Bについて説明している。しかしながら、収納セットは、これらに限られるものではない。たとえば、ドリル刃やエンドミル等のような切削工具を収納しているセット、研磨材を収納している研磨材収納セット、医療器具を収納している医療器具セットを収納セットとしても良い。
【0103】
また、上述の実施の形態では、貫通スロット部33は、蓋部材30A,30Bに1箇所設けられた構成について説明している。しかしながら、蓋部材30A,30Bには、2箇所以上の貫通スロット部33が設けられる構成を採用しても良い。
【0104】
また、上述の各実施の形態においては、RFID通信にて用いられるUHF帯の周波数としては920MHzが好適である。しかしながら、RFID通信にて用いられるUHF帯の周波数としては、たとえば860MHzから960MHzの帯域であれば、どのような周波数であっても良い。また、RFID通信にて用いられる周波数としては、UHF帯の周波数には限られず、2.45GHzを中心とする周波数であっても良く、433MHzを中心とする周波数であっても良い。
【符号の説明】
【0105】
10A…消火栓ボックスセット(収納セットに対応)、10B…工具セット(収納セットに対応)、11A…消火栓ボックス(収納箱に対応)、11B…工具箱(収納箱に対応)、20A,20B…筐体、21…開口部、22…内部空間(収納空間に対応)、30A,30B…蓋部材(閉塞部材に対応)、31…表面、32…裏面、33…貫通スロット部、34…スリット部、34a…ストレート部分、34b…湾曲部、34c…折れ曲がり部、35…スロット端部(タグ配置部に対応)、35a…係止凸部、36…突出部、36a,36b…傾斜面、36c,36d…内壁面、37…スロット中央部分、40…樹脂封止体、50…樹脂充填部(充填材に対応)、51…係止凹部、60,70…ICタグ、61…ICタグ基板、62…ICチップ、63…コイルアンテナ、100…消防用具(収納物に対応)、200…工具(収納物および作業工具に対応)、300…リーダ装置(外部端末に対応)、H1…取手
図1
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図12