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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】嵌合式屋根材
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/362 20060101AFI20220920BHJP
   E04D 3/363 20060101ALI20220920BHJP
   E04D 3/365 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
E04D3/362 C
E04D3/363 A
E04D3/365 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019077952
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020176404
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 克也
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205120(JP,A)
【文献】特開2014-132153(JP,A)
【文献】特開2019-027124(JP,A)
【文献】特開2013-133609(JP,A)
【文献】特開平08-013706(JP,A)
【文献】特開平07-331813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/36-3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁間方向に沿って延伸する一対の長尺縁部とこれら各長尺縁部を挟み込み桁方向に沿って延伸する一対の短尺縁部とによって区画された輪郭形状を有する屋根材本体と、該屋根材本体の各短尺縁部にそれぞれ設けられた下継手、上継手と、該屋根材本体の各長尺縁部のそれぞれに沿って一体連結する上ハゼ、下ハゼとを備え、該下継手を、該屋根材本体の水上側に隣接配置する他の屋根材の短尺縁部に設けられた上継手に嵌合させ、該上継手を、該屋根材本体の水下側に隣接配置する他の屋根材の短尺縁部に設けられた下継手に嵌合させて屋根材同士を梁間方向へ接続する一方、該上ハゼ、下ハゼを、桁方向に隣接配置する別の屋根材の下ハゼ、上ハゼにそれぞれ嵌合させて屋根材同士を桁方向へ接続することにより建築構造物の屋根を葺きあげる嵌合式の屋根材であって、
前記水上側に隣接配置する他の屋根材の短尺縁部に設けられた上継手に嵌合する下継手は、該下継手をその表裏において挟み込むとともに浸入雨水を受ける二つ折りの折り返し片を備え、
該折り返し片は、該折り返し片の幅方向の端部につながり、該折り返し片にて受けた浸入雨水を、該下ハゼの外方側へ誘導する誘導片を有することを特徴とする嵌合式屋根材。
【請求項2】
前記下継手は、該屋根材本体の短尺縁部の全域にわたってつながる板状体と、該板状体の幅方向の端縁および該上ハゼの端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の屋根材の上ハゼに嵌合可能な第一のハゼと、該板状体のもう一方の幅方向の縁部および該下ハゼの端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の屋根材の下ハゼに嵌合可能な第二のハゼとを有し、
該上継手は、該屋根材本体に面一状態で一体連結する第一の板状体と、該第一の板状体の幅方向の各端部および該上ハゼ、下ハゼにそれぞれ面一状態で一体連結する第三のハゼ、第四のハゼとを有することを特徴とする請求項1に記載した嵌合式屋根材。
【請求項3】
前記下継手は、前記板状体の先端縁にて立ち上がり水上側に隣接配置する他の屋根材との重ね合わせの際に折り返されて水上側に隣接配置する他の屋根材に連係可能な起立係止片を有し、前記上継手は、前記第一の板状体の先端縁において垂れ下がり水下側に隣接配置する他の屋根材との重ね合わせの際に折り返されて水下側に隣接配置する他の屋根材に連係可能な垂下係止片を有することを特徴とする請求項2に記載した嵌合式屋根材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般住宅や事務所、マンション、福祉施設、リゾート施設等の屋根において幅広く使用される、嵌合式屋根材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
嵌合式の縦葺き屋根材は、従来、屋根材の幅方向の端部に設けられた上ハゼ、下ハゼを、隣接配置する他の屋根材の下ハゼ、上ハゼにそれぞれ嵌合させることにより屋根材同士を桁方向につなぎ合わせる施工が行われてきたが、近年では、さらに、屋根材の流れ方向に上継手、下継手を設け、水下側、水上側に隣接配置される屋根材との相互間で上継手、下継手をそれぞれ相互に嵌合させて屋根材同士を梁間方向につなぎ合わせる構造の屋根材が開発されてきており、この点に関する先行技術としては、例えば、特許文献1が参照される。
【0003】
ところで、上記従来の嵌合式の縦葺き屋根材は、屋根材のつなぎ合わせ部分、とくに、梁間方向におけるつなぎ合わせ部分では、上継手と下継手との間にパッキン等の止水材が配置されていたとしても風の吹き込み状況によっては雨水等が浸入することがないとはいえず、さらなる改善の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-205120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、屋根材のつなぎ合わせ部分に雨水等が浸入することがあったとしても浸入した雨水等を軒先から速やかに排出することができる嵌合式屋根材を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、梁間方向に沿って延伸する一対の長尺縁部とこれら各長尺縁部を挟み込み桁方向に沿って延伸する一対の短尺縁部とによって区画された輪郭形状を有する屋根材本体と、該屋根材本体の各短尺縁部にそれぞれ設けられた下継手、上継手と、該屋根材本体の各長尺縁部のそれぞれに沿って一体連結する上ハゼ、下ハゼとを備え、該下継手を、該屋根材本体の水上側に隣接配置する他の屋根材の短尺縁部に設けられた上継手に嵌合させ、該上継手を、該屋根材本体の水下側に隣接配置する他の屋根材の短尺縁部に設けられた下継手に嵌合させて屋根材同士を梁間方向へ接続する一方、該上ハゼ、下ハゼを、桁方向に隣接配置する別の屋根材の下ハゼ、上ハゼにそれぞれ嵌合させて屋根材同士を桁方向へ接続することにより建築構造物の屋根を葺きあげる嵌合式の屋根材であって、
前記水上側に隣接配置する他の屋根材の短尺縁部に設けられた上継手に嵌合する下継手は、該下継手をその表裏において挟み込むとともに浸入雨水を受ける二つ折りの折り返し片を備え、
該折り返し片は、該折り返し片の幅方向の端部につながり、該折り返し片にて受けた浸入雨水を、該下ハゼの外方側へ誘導する誘導片を有することを特徴とする嵌合式屋根材である。
【0007】
上記の構成からなる嵌合式屋根材において、
1)前記下継手は、該屋根材本体の短尺縁部の全域にわたってつながる板状体と、該板状体の幅方向の端縁および該上ハゼの端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の屋根材の上ハゼに嵌合可能な第一のハゼと、該板状体のもう一方の幅方向の縁部および該下ハゼの端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の屋根材の下ハゼに嵌合可能な第二のハゼとを有し、
該上継手は、該屋根材本体に面一状態で一体連結する第一の板状体と、該第一の板状体の幅方向の各端部および該上ハゼ、下ハゼにそれぞれ面一状態で一体連結する第三のハゼ、第四のハゼとを有すること、
2)前記下継手は、前記板状体の先端縁にて立ち上がり水上側に隣接配置する他の屋根材との重ね合わせの際に折り返されて水上側に隣接配置する他の屋根材に連係可能な起立係止片を有し、前記上継手は、前記第一の板状体の先端縁において垂れ下がり水下側に隣接配置する他の屋根材との重ね合わせの際に折り返されて水下側に隣接配置する他の屋根材に連係可能な垂下係止片を有すること、が課題解決のための具体的手段として好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、二つ折りの返し片にて浸入雨水を受け、受けた浸入雨水を、誘導片にて下ハゼの外方側へと誘導することが可能であり、下ハゼの外方側へと誘導された浸入雨水は、下ハゼに沿い軒に向けて流下し軒先から排出されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明にしたがう嵌合式屋根材の実施の形態を示した外観斜視図である。
図2図1に示した嵌合式屋根材において、折り返し片を取り外し他状態を示した図である。
図3図1に示した嵌合式屋根材の平面を示した図である。
図4】(a)は、図3のA-A断面を示した図であり、(b)は、図3のB-B断面を示した図である。
図5】本発明にしたがう嵌合式屋根材と、水上側、水下側に隣接配置する他の屋根材とを梁間方向につなぎ合わせる状況を示した図である。
図6】本発明にしたがう嵌合式屋根材と、隣接配置する別の屋根材とを桁方向につなぎ合わせる状況を示した図である。
図7】本発明にしたがう嵌合式屋根材と、水上側に隣接配置する他の屋根材とをつなぎ合わせた状態を一部分について示した図である。
図8】本発明にしたがう嵌合式屋根材の他の実施の形態を示した外観斜視図である。
図9図8に示した嵌合式屋根材と、水上側、水下側に隣接配置する他の屋根材とのつなぎ合わせ状況を示した図である。
図10】本発明にしたがう嵌合式屋根材を複数枚用いて建築構造物の屋根を葺きあげる場合の一例を部分的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明にしたがう嵌合式屋根材の実施の形態を示した外観斜視図であり、図2は、図1に示した嵌合式屋根材において、折り返し片を取り外した状態を示した図であり、図3は、図1に示した嵌合式屋根材の平面を示した図であり、図4(a)(b)は、図3のA-A断面、B-B断面を拡大して示した図である。
【0011】
本発明にしたがう嵌合式屋根材は、下継手が設けられた側を棟に向け、上継手が設けられた側を軒に向けて配置されるものであって、下継手が設けられた側を水上側、上継手が設けられた側を水下側とする。建築構造物の屋根を葺きあげるにあたっては、本発明にしたがう屋根材と同じ構成からなる屋根材を複数枚用いることを前提としており、隣接配置する他の屋根材、隣接配配置する別の屋根材についても本願発明にしたがう屋根材と同じ構成からなるものとする。また、屋根材の本体部分(屋根材本体)を構成する素材としては、厚さ0.2~1.0mm程度になる亜鉛めっき鋼板、アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板、銅板、アルミニウム板、ステンレス鋼板あるいは、それらの塗装または被覆鋼板等が用いられる。
【0012】
図1~4における符号1は、屋根材本体である。屋根材本体1は、梁間方向に沿って延伸する一対の長尺縁部1a、1bと、これら長尺縁部1a、1bを挟み込んで桁方向に沿って延伸する一対の短尺縁部1c、1dによって区画された、全体として矩形状をなす輪郭形状を有している。
【0013】
また、2は、屋根材本体1の長尺縁部1aに一体連結するとともに、桁方向の一方に隣接配置する別の屋根材の下ハゼに嵌合して屋根材同士を接続する上ハゼである。
【0014】
上ハゼ2は、長尺縁部1aから立ち上がる傾斜側板2aと、この傾斜側板2aの上端に係止顎部t1を介してつながるとともに、桁方向に隣接配置する別の屋根材の下ハゼに嵌合可能な内部空間を有する先端先細り形状をなすドーム型の頭部2bと、この頭部2bに係止顎部t2を介して垂下、保持され、傾斜側板2aとの相互間にて下開き開口を形成する傾斜側板2cとから構成されている。上ハゼ2は、頭部2bの側壁に長尺縁部1aに沿って延伸する凹部を設けることが可能であり、これにより、桁方向に隣接配置する別の屋根材の下ハゼに嵌合させた際に、その相互間で面接触するのを避けて雨水等の侵入を防止することができるようになっている。
【0015】
また、3は、屋根材本体1の長尺縁部1bに一体連結するとともに、桁方向のもう一方に隣接配置する別の屋根材の下ハゼに嵌合して屋根材同士を接続する下ハゼである。
【0016】
この下ハゼ3は、長尺縁部1bから立ち上がる側板3aと、この側板3aの上端に係止顎部t3を介してつながるとともに、桁方向に隣接配置する他の屋根材の上ハゼに嵌合可能な先端先細り形状をなすドーム型の頭部3bと、この頭部3bに係止顎部t4を介して垂下、保持され、側板3aとの相互間にて下開き開口を形成する側板3cと、この側板3cの下端に水平姿勢でもって一体的につながる固定用舌片3dから構成されている。
【0017】
係止顎部t1と係止顎部t2とは相互に逆向きに突出していて、両者でもって嵌合させたハゼの引き抜けを防止する。また、係止顎部t3と係止顎部t4とは、上記の係止顎部t1、係止顎部t2と同様に、相互に逆向きになっており、両者でもって嵌合させたハゼの引き抜けを防止する。
【0018】
4は、屋根材本体1の短尺縁部1cに設けられた下継手である。この下継手4は、屋根材本体1の外表面に面一状態でつながり、かつ、水上側に隣接配置する他の屋根材の短尺縁部1cの下側において重ね合わさるものである。
【0019】
下継手4は、具体的には、ロール成形により屋根材本体1、上ハゼ2、下ハゼ3と同一断面形状に形成したのち、プレス成形による絞り加工を施すことによって成形されるものであって、屋根材本体1の短尺縁部1cの全域にわたってつながる板状体4aと、この板状体4aの幅方向の端縁および上ハゼ2の端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の屋根材の上ハゼ(上継手の第三のハゼに相当するもの)に嵌合可能な第一のハゼ4bと、該板状体4aのもう一方の幅方向の縁部および下ハゼ3の端部においてつながるとともに水上側に隣接配置する他の屋根材の下ハゼ(上継手の第四のハゼに相当するもの)に嵌合可能な第二のハゼ4cとから構成されている。上記第二のハゼ4cの下端には、水平状態で下ハゼ3の固定用舌片3dにつながる舌片4dが設けられている。
【0020】
下継手4の幅寸法は、水上側に隣接配置する他の屋根材とのつなぎ合わせに際して相互に確実に重ね合わせることができるように、水上側に隣接配置する他の屋根材の屋根材本体の幅寸法(実際には上継手の幅寸法)よりも若干広くなっている。
【0021】
また、5は、屋根材本体1のもう一方の短尺縁部1dに設けられた上継手(屋根の水下側に配置される)である。この上継手5は、屋根材本体1と面一状態でつながり、水下側に隣接配置する他の屋根材の短尺縁部(下継手に相当する部分)の上側において重ね合わさるものである。
【0022】
上継手5は、具体的には、屋根材本体1に面一状態で一体連結する第一の板状体5aと、この第一の板状体5aの幅方向の各端部および上ハゼ2、下ハゼ3にそれぞれ面一状態で一体連結する第三のハゼ5b、第四のハゼ5cとを備えている。なお、屋根材本体1と上継手5とをわかりやすく表示するため図1ではその境界を破線で表示している。
【0023】
また、符号6は、下継手4の板状体4aを表裏において挟み込むとともに、浸入雨水を受ける二つ折りの折り返し片である。折り返し片6は、単一の板状体に曲げ加工を施して板状体4aの裏面に位置する下側板体6aと、該板状体4aの表面に位置する上側板体6bから構成されたものを用いることができる。
【0024】
また、符号7は、折り返し片6の幅方向の端部につながり、該折り返し片6にて受けた浸入雨水を、下ハゼ3の外方側へ誘導する誘導片である。誘導片7は、下側板体7aと上側板体7bで構成された二つ折り構造からなり、その縁部に舌片4dの折り返し片と同等の角度を有する折り起し部7cを設けて該舌片4dに位置するものを例として示したが、折り返し片6にて受けた侵入雨水を下ハゼ3の外方側へ誘導できるものであれば図示のものに限定されることはない。
【0025】
本発明にしたがう嵌合式屋根材を梁間方向においてつなぎ合わせるには、図5に示すように、下継手4の第一のハゼ4bを、水上側において隣接配置する他の屋根材の上継手5′の第三のハゼ5b′に、また、下継手4の第二のハゼ4cを、該水上側において隣接配置する屋根材の上継手5′の第四のハゼ5c′にそれぞれ嵌合させる一方、上継手5の第三のハゼ5bを、水下側において隣接配置する他の屋根材の下継手4′の第一のハゼ4b′に、また、上継手5の第四のハゼ5cを、水下側において隣接配置する他の屋根材の下継手4′の第二のハゼ4c′に嵌合させればよい。
【0026】
また、本発明にしたがう嵌合式屋根材を桁方向につなぎ合わせるには、図6に示すように、下ハゼ3を、隣接配置する別の屋根材の上ハゼ2′′を嵌合させ、上ハゼ2を、隣接配置する別の屋根材の下ハゼ3′′に嵌合させればよく、この作業を、梁間方向で先行して行うことにより建築構造物の屋根を葺きあげることができる。
【0027】
図7は、本発明にしたがう屋根材の下継手4と、水上側に隣接配置される他の屋根材の上継手5′とを嵌合させた状態を一部分について示した図である。本発明にしたがう屋根材は、屋根材同士のつなぎ合わせに際しては、折り返し片6と上継手5′との間に止水材8を配置して止水性を高めることになるが、このような状態において、たとえ雨水等が浸入することがあったとしても、浸入雨水は、図3の矢印で示すような経路を経て、すなわち、下ハゼ3の固定用舌片3dに沿って流下して軒先から排出されることになる。
【0028】
折り返し片6の上側板体6bは、下側板体6aに対してθ=0°超~45°の角度とするのがよく、これにより、折り返し片6にて受けた浸入雨水を誘導片7に向けて効率的に流すことができる(図4(a)参照)。
【0029】
折り返し片6と誘導片7の境界には、下継手4を構成する第二のハゼ4cの脚部を受け入れる切り欠き9を形成しておくことが肝要となる。
【0030】
折り返し片6、誘導片7は、基本的には、下継手4とは別部材で構成されるものであって、ウレタン、エポキシ接着剤、ブチルゴムからなる両面テープ、パッキンを挟んでカシメ等によって下継手4に取り付けるのが好ましい。
【0031】
図8は、本発明にしたがう嵌合式屋根材の他の実施の形態を示した外観斜視図である。
【0032】
本発明にしたがう嵌合式の屋根板材は、第一の板状体5aの先端縁には屈曲部を介して垂れ下がり水下側に隣接配置する他の屋根材との重ね合わせの際に該第一の板状体5aに向けて折り返されて該水下側に隣接配置する他の屋根材に連係可能な矩形状の垂下係止片5dを設けることができ、板状体4aの先端縁には、屈曲部を介して立ち上がり該水上側に隣接配置する他の屋根材との重ね合わせの際に該板状体4aに向け折り返して水上側に隣接配置する他の屋根材に連係可能な起立係止片4eを設けることができる。
【0033】
第一の板状体5a先端縁に垂下係止片5dを設け、板状体4aの先端縁に起立係止片4eを設けることにより、屋根材同士を梁間方向につなぎ合わせる際に、図9に示すように、下継手4の起立係止片4eは、水上側に隣接配置する他の屋根材の上継手5′の第一の板状体5a′による押圧で板状体4aに向け折り返され、上継手5の垂下係止片5dは、水下側において隣接配置する他の屋根材の下継手4′の板状体4a′による押圧で第一の板状体5aに向けて折り返され、これにより両屋根材は相互に引き抜け不能に連係されることになる。
【0034】
上記のつなぎ合わせ構造は、屋根材のつなぎ合わせ強度を高めることが可能であり、しかも、つなぎ合わせ部分において雨水が浸入することがあったとしても、浸入雨水は、折り返し片6、誘導片7を通して軒先から速やかに排出される。
【0035】
図10は、本発明にしたがう嵌合式屋根材を複数枚用いて建築構造物の屋根を葺きあげる場合の一例を部分的に示した図である。
【0036】
屋根材の配置手順としては、まず、野地板に二次防水紙のアスファルトルーフィングを敷設し、屋根材の働き幅に合わせて割付け、墨出しを行い、軒先に軒先水切りを取付けたのち(図示せず)、屋根の「けらば」の軒から墨出しに合わせて一列・一段目の屋根材を配置し、その屋根材の下ハゼ3の固定用舌片3d、下継手4の舌片4dのそれぞれに所定間隔でもってビスをねじ込むか、あるいは釘等を打ち付けて野地板、母屋等に固定する。
【0037】
次に、一列・二段目の屋根材(隣接配置する他の屋根材)を、既に固定された一列・一段目の屋根材の水上側(棟側)に配置して屋根材同士を接続する。一列・一段目の屋根材と一列・二段目の屋根材とを接続するには、一列・二段目の屋根材の上継手5を、一列・一段目の屋根材の下継手4に重ね合わせるべく、上継手5の第三のハゼ5bを、下継手4の第一のハゼ4bに、また上継手5の第四のハゼ5cを、下継手4の第二のハゼ4cに嵌合させればよい。一列・二段目の屋根材も下ハゼ3の固定用舌片3d、下継手4の舌片4dにビスをねじ込むかあるいは釘等を打ち付けることによって野地板、母屋等に固定する。
【0038】
上記の接続作業は、屋根の棟に達するまで繰り返し行い(梁間方向の接続)、一列目の接続作業を終えたならば、二列目の屋根材を配置する。
【0039】
二列目の屋根材として、二列・一段目の屋根材を配置するには、既に固定された一列・一段目の屋根材の下ハゼ3に二列・一段目の屋根材の上ハゼ2を嵌合させるとともに、一列・二段目の屋根材の第四のハゼ5cに、二列・一段目の屋根材の第一のハゼ4bを嵌合させる(桁方向の接続)。
【0040】
次いで、二列・二段目の屋根材の上ハゼ2を、一列・二段目の屋根材の下ハゼ3に、その第三のハゼ5bを二列・一段目の屋根材の第一のハゼ4bに、その第一のハゼ4bを、一列・二段目の屋根材の第二のハゼ4cにそれぞれ嵌合させればよく、二列目の屋根材の接続作業についても一列目の屋根材と同様に屋根の棟に達するまで繰り返し行う。なお、三列目以降については、同様の手順で屋根材同士をつなぎ合わせればよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、屋根材のつなぎ合わせ部分に雨水等が浸入することがあったとしても浸入雨水等を軒先から速やかに排出することが可能な嵌合式屋根材が提供できる。
【符号の説明】
【0042】
1 屋根材本体
1a 長尺縁部
1b 長尺縁部
1c 短尺縁部
1d 短尺縁部
2 上ハゼ
2a 傾斜側板
2b 頭部
2c 傾斜側板
3 下ハゼ
3a 側板
3b 頭部
3c 側板
3d 固定用舌片
4 下継手
4a 板状体
4b 第一のハゼ
4c 第二のハゼ
4d 舌片
4e 起立係止片
5 上継手
5a 第一の板状体
5b 第三のハゼ
5c 第四のハゼ
5d 垂下係止片
6 折り返し片
6a 下側板体
6b 上側板体
7 誘導片
7a 下側板体
7b 上側板体
7c 折り起し部
8 止水材
9 切り欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10