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特許7143284ホルマリン固定パラフィン包埋生体サンプル由来の薬剤耐性細菌を特徴づけるための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】ホルマリン固定パラフィン包埋生体サンプル由来の薬剤耐性細菌を特徴づけるための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20220920BHJP
   C12Q 1/689 20180101ALN20220920BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20220920BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220920BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
C12Q1/689 Z
C12Q1/6869 Z
C12N15/09 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019511824
(86)(22)【出願日】2017-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 US2017031901
(87)【国際公開番号】W WO2017196941
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-05-11
(31)【優先権主張番号】62/334,185
(32)【優先日】2016-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518399276
【氏名又は名称】アメリカン モレキュラー ラボラトリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ジョー イ
(72)【発明者】
【氏名】ユング ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ラオ カクトゥル
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0322490(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105368825(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104846097(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の薬剤耐性遺伝子における突然変異をヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(ピロリ菌(H.pylori))サンプル内で検出するための方法であって、
a) 1つまたは複数の突然変異を含有する遺伝子のそれぞれの領域を含むアンプリコンを産生するのに適切なPCRプライマー対を識別する工程、
b) 別のPCRプライマー対によるアンプリコン生成を妨げる1つまたは複数のプライマーを含むPCRプライマー対を、別個のPCRプライマー対プールに分離する工程であって、前記別個のPCRプライマー対プールの各々が、複数のPCRプライマー対を含有する、工程
c) 前記別個のPCRプライマー対プールの各々および前記サンプルより単離された標的DNAから、アンプリコンを生成する工程、
d) 前記別個のPCRプライマー対プールの各々および前記標的DNAから産生される全てのアンプリコンを、サンプルアンプリコンプールへと組み合わせ、前記サンプルアンプリコンプール内で、前記アンプリコンに固有インデックス配列を付加してインデックス付きサンプルアンプリコンプールを生成する工程、および
e) 対応する野生型遺伝子配列を参照することにより、サンプル由来の前記インデックス付き配列決定アンプリコン内の突然変異を識別する工程
を含み、
少なくとも3種類の異なるタイプの薬剤耐性遺伝子を診断するアンプリコンが、工程c)の2つのPCR反応から生成され、かつ
工程b)のPCRプライマー対プールが、
i) 列番号1~10で表されるプライマーを含むPCRプライマー対プール1、
ii) 列番号11~22で表されるプライマーを含むPCRプライマー対プール2、
iii) 列番号23~28で表されるプライマーを含むPCRプライマー対プール3、
iv) 列番号29~32で表されるプライマーを含むPCRプライマー対プール4、
v) 列番号33~38で表されるプライマーを含むPCRプライマー対プール5、および
vi) 列番号39~44で表されるプライマーを含むPCRプライマー対プール6
を含む
前記方法。
【請求項2】
前記サンプルが生検サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生検が胃生検である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルがホルマリン固定パラフィン包埋生検サンプルを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記識別された突然変異が、前記ピロリ菌23S rRNA遺伝子のA2142G、A2143G、および/またはA2142Cの突然変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記識別された突然変異が、前記ピロリ菌16S rRNA遺伝子のA928C、AG926~927GT、A926G/A928C、および/またはAGA926~928TTCの突然変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記識別された突然変異が、DNAジャイレースサブユニットAをコードする前記ピロリ菌gyrA遺伝子のC261A、C261G、G271A、および/またはG271Tの突然変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記識別された突然変異が、DNA依存性RNAポリメラーゼのベータ/ベータ’サブユニットをコードする前記ピロリ菌rpoB遺伝子のコドン525~545の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記識別された突然変異が、ペニシリン結合タンパク質1をコードする前記ピロリ菌pbp1遺伝子におけるC1242AまたはC1242Gの突然変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記識別された突然変異が、前記ピロリ菌rdxA遺伝子内である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記識別された突然変異が、rdxAによりコードされるピロリ菌の酸素非感受性(タイプI)NAPD(P)Hニトロレダクターゼの機能喪失を生じさせる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アンプリコンが、230塩基対を超えない長さである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アンプリコンが、130塩基対を超える長さである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
別のPCRプライマー対によるアンプリコン生成を妨げる1つまたは複数のプライマーを含む工程b)のPCRプライマー対は、クロスペアプライマー二量体を形成することにより妨げる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
別のPCRプライマー対によるアンプリコン生成を妨げる1つまたは複数のプライマーを含む工程b)のPCRプライマー対は、クロスペアのトランケートされたアンプリコンを形成することにより妨げる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
薬剤耐性ピロリ菌の存在を患者由来サンプル内で検出するための方法であって、
a) 前記患者由来サンプルから単離されたDNAから、および
i) 列番号1~10で表されるプライマーを含むPCRプライマー対プール1、
ii) 列番号11~22で表されるプライマーを含むPCRプライマー対プール2、
iii) 列番号23~28で表されるプライマーを含むPCRプライマー対プール3、
iv) 列番号29~32で表されるプライマーを含むPCRプライマー対プール4、
v) 列番号33~38で表されるプライマーを含むPCRプライマー対プール5、および
vi) 列番号39~44で表されるプライマーを含むPCRプライマー対プール6
を含むPCRプライマー対プールから、アンプリコンを生成する工程、
b) 工程a)でPCRプライマー対プール1~6から産生された全てのアンプリコンを、サンプルアンプリコンプールへと組み合わせ、前記サンプルアンプリコンプール内で前記アンプリコンに固有インデックス配列を付加してインデックス付きサンプルアンプリコンプールを生成する工程、
c) 配列番号47~51に対する参照により、前記配列決定されたインデックス付きサンプルアンプリコン内の突然変異を識別する工程、および
d) 工程c)で識別される前記突然変異の存在または非存在により、前記患者由来プロファイルに存在するピロリ菌の前記薬剤耐性プロファイルを決定する工程
を含む、前記方法。
【請求項17】
前記インデックス付きサンプルアンプリコンプールを、異なるサンプル由来の1つまたは複数の差次的なインデックス付きサンプルアンプリコンプールと組み合わせ、すべてのインデックス付きサンプルアンプリコンを同時に配列決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記インデックス付きサンプルアンプリコンプールを、異なる患者由来サンプルに由来する1つまたは複数の差次的なインデックス付きサンプルアンプリコンプールと組み合わせ、すべてのインデックス付きサンプルアンプリコンを同時に配列決定する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
記載された方法および組成物は、概して、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)生検試料由来の微量DNA配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅の使用に関する。特に、本方法および材料は、ヒト生検FFPE保存サンプル内の微量の細菌DNA配列のPCR増幅を促進する。より詳細には、該方法および組成物は、ヒト胃生検FFPEサンプル中に存在する多剤耐性ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(ピロリ菌(H.pylori))を特徴付けるのに適している。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ピロリ菌は、主に胃で見出される重要なヒト病原体である。ピロリ菌は、胃炎、消化性潰瘍および胃癌において重要な役割を果たす。ピロリ菌の薬剤耐性および多剤耐性株はますます一般的となり、ピロリ菌の治療のための最前線治療は、通常、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、および2つのさらなる抗生物質、典型的にはクラリスロマイシンと、メトロニダゾールまたはアモキシシリンのいずれかとを同時に投与することを含む、三重の抗生物質療法を伴う。しかしながら、そのような治療は、それが標的とする臨床分離株がクラリスロマイシン耐性でない、あるいはメトロニダゾール、またはアモキシシリンのようなペニシリン様薬剤に耐性でない場合にのみ有効である。他の抗生物質を使用してもよいが、いずれの場合においても、効果的な治療処置を提供するために、患者を苦しめているピロリ菌株が、いずれかの特定の抗生物質に対する耐性を有する傾向があるかどうかを知ることが重要である。尿素呼気試験、迅速ウレアーゼ試験、および血清および糞便サンプルについての抗ピロリ菌抗体検査、ならびに広範囲の免疫組織学的染色方法を含む、ピロリ菌の存在を検出するためのいくつかの診断法が開発されている。大部分の場合、そのような方法は、培養分離株または最近得られた臨床サンプルの使用を必要とする。ピロリ菌の培養および抗生物質感受性試験は、成長および輸送の点でのピロリ菌の特定の要件のために、日常的なプラクティスでは一般的に行われていない。それは困難であり、常に成功するとは限らない。さらに、検出された任意のピロリ菌の薬剤耐性プロファイルを決定することを可能にする良い方法はない。検出された細菌の薬剤耐性プロファイルを同時に判定しながら、ピロリ菌を検出することができる堅牢で安価な方法は、既存の技術よりも大幅に改善されている。
【0003】
歴史的に、生検組織、特に胃生検組織は、ホルマリン固定パラフィン包埋サンプル(FFPE)の「ブロック」に保存されている。そのようなブロックは、特別な取り扱いまたは保管を必要とせず、臨床組織学研究室においてヒト生検材料を保存する一般的な方法を表す。FFPEは、長期間に亘って、埋め込まれた組織の超構造的関係を保存し、サンプルは外因性汚染の影響を受けず、FFPEは組織学的染色のための処理を容易にし、多くの抗体に基づく分析に適している。残念なことに、細胞物質の固定化を可能にするホルマリン固定(主に巨大分子中の窒素含有基の架橋による)は、FFPE生検サンプル中の特定の遺伝子配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などの多くの核酸法の有効性を低下させる。PCR増幅に使用されるDNA依存性DNAポリメラーゼは、化学的に架橋されているかまたは多くの修飾された窒素塩基を含有するDNA配列を、横切ることも、正確に複製することもできない。
【0004】
幸いにも、ほとんどのFFPEサンプルにおける架橋結合のレベルは、核酸分析を完全には排除しない。本明細書に記載の方法および組成物は、既存の方法よりも、そのような架橋およびその他の損傷を受けた、生検FFPEサンプルに由来する微量DNAのPCR増幅の効果を改善する。典型的には、FFPE保存サンプルに由来するDNAのPCR増幅は、生検に存在するヒトDNA配列の分析を標的としており、増幅され得る比較的多量の標的DNAが存在する。これは重要であり、ホルマリンによる化学的架橋がランダムに起こり、PCR増幅反応内で任意の所与の標的DNA配列の十分に高いコピー数を伴うので、所望の標的DNA配列の複数のコピーのうち少なくとも1つまたはいくつかの組合せが増幅のために利用可能であり、したがってPCRに基づく分析に適している可能性が高い。市販のキットは、イルミナのTruSeqカスタムアンプリコンローインプットキット(Illumina)などが、FFPE生検サンプルから回収されたヒトDNAの直接分析に利用できる。しかしながら、FFPE保存組織内に低コピー数で存在する細菌性病原体のような、あまり豊富でないDNA配列に適用した場合、状況は非常に異なる。PCR増幅の標的となるDNA配列が非常に低いコピー数である場合、標的DNAのあらゆるコピーを含む、架橋または付加体の可能性が大きな懸念事項である。PCR増幅が成功する可能性を最大にするためには、PCR増幅によって産生されるDNA断片(アンプリコン)のサイズを分析に必要な最小限に制限し、このような最小アンプリコンを産生する最も好ましいプライマー配列のみを使用し、可能な限り、標的DNAの単一アリコートから多くの診断用アンプリコンを産生することが必要である。
【0005】
そのような小さいアンプリコンサイズに対する要件は、標的配列に沿ってプライマーを分配するための選択肢の数を制限し、かつ複数の密接に関連したプライミング部位を使用して、プライマー結合配列内で架橋結合によってまたは破壊的な付加体の存在によって単一の部位が損なわれないことを確実にすることを必要とする。DNA配列は完全に異種ではないため、そして、最適なプライマー結合部位は、特にプライマー配列の3’末端でより高いGC含量を好む傾向があるため、アンプリコンのセットを生成するための最良のプライマーは、所与の標的配列の狭い領域にクラスター化する傾向がある。各アンプリコンが、所望のプライマー対から特異的かつ専ら産生されることを確実にするためには、PCR増幅プロセスの間に産生される、プライマー二量体またはアンプリコン鎖のクロスハイブリダイゼーションによる組換え増幅産物の形成を避けるために、通常、各アンプリコンは個々に産生されなければならない。実際には、これは複数のPCR反応間で標的DNAの希釈を必要とし、これは標的DNAの非効率的な使用であり、FFPE生検サンプルから回収できる微量の細菌DNAでは実用的ではない。ここで開示されるより効率的な方法は、PCR増幅の間の、プライマー二量体形成または新たに生じたアンプリコン間のクロスハイブリダイゼーションのリスクが最小限になるように、PCRプライマー対を、相互に適合するプールに分離することを含む。この種の、プライマー対の分離的プーリング(分離的にプールすること)は、臨床検査室セッティングにおいて、PCR増幅に基づく方法で分析される稀なDNA配列を含有するFFPEサンプルの効率的かつ自動化可能な取り扱いを可能にする。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本発明は、FFPE保存組織中の薬剤耐性ピロリ菌の存在を特徴付けるためのPCR増幅プライマーのセットを提供する。既知の薬剤耐性ピロリ菌株に特徴的な別個の遺伝子のための2対のプライマー(各対において1つは順方向1つは逆方向)からなるプライマーを図2に列挙する。ここに提示されている遺伝子の例には、16S rRNA(テトラサイクリン耐性に関連する)、23S rRNA(クラリスロマイシン耐性に関連する)、pbp1(ペニシリン抗生物質に対する耐性に関連する)、gyrA(フルオロキノン抗生物質に対する耐性に関連する)、rpoB(リファブチン耐性に関連する)およびrdxA(メトロニダゾールに対する耐性に関連する)を含む。他の抗生物質に対する耐性に関与する他の遺伝子座が知られており、本明細書に記載されたものに含まれていてもよいし、代用されてもよいことを当業者であれば理解する。実際には、各標的遺伝子に対して2つのプライマー対を使用することにより、標的DNA配列中に見られる任意の特定の障害(例えば、架橋または付加体)が両方のアンプリコンからのPCR増幅を阻害する機会が、最小限に抑えられる。その理由は、このような障害は、2つの異なるプライマー結合部位で起こる可能性が低く、標的(鋳型)DNA内の標的遺伝子の全てのコピーを含むためである。しかしながら、細菌染色体の同じ領域を標的とし、異なるが重複する断片をなお産生する2対のプライマーの使用は、各プライマー対が産生するように設計された全長アンプリコンと一致しないハイブリッドアンプリコンの産生を避けるために、PCR増幅反応を別々に実施することを必要とする。したがって、少なくとも2つのPCR増幅反応をプライマー対の各セットについて実施しなければならない。対照的に、異なる遺伝子を標的とし、相同配列をもたないアンプリコンを産生するPCRプライマー対をプールすることができ、したがってFFPE保存組織から増幅され得る標的細菌DNAの限られた量ができるだけ効率的に使用される。本発明は、アンプリコンの重複するセットを別個のプールに標的指向させるプライマー対の分離、および分離したプールで単一PCR増幅反応を行って、所望のアンプリコンを生成することを教示する。ここに提示された一例では、FFPE胃生検サンプルから抽出されたDNAを用いた、たった2つのPCR反応から、上に列挙した5種類の異なるタイプの薬剤耐性ピロリ菌遺伝子を診断するための10種類ものアンプリコンを産生することができる。
【0007】
本発明の一実施形態は、複数の遺伝子における突然変異を、サンプル内で検出するための方法であって、該方法は、以下の工程を含む:
a)1つまたは複数の突然変異を含有する遺伝子のそれぞれの領域を含むアンプリコンを産生するのに適切なPCRプライマー対を識別する工程、
b)別のPCRプライマー対によるアンプリコン生成を妨げる1つまたは複数のプライマーを含むPCRプライマー対を、別個のPCRプライマー対プールに分離する工程であって、該別個のPCRプライマー対プールの各々は、複数のPCRプライマー対を含む、工程、
c)該別個のPCRプライマー対プールの各々および該サンプルより単離された標的DNAからアンプリコンを生成する工程、
d)該別個のPCRプライマー対プールの各々および該標的DNAから産生される全てのアンプリコンを、サンプルアンプリコンプールへと組み合わせ、該サンプルアンプリコンプール内で、該アンプリコンに固有インデックス配列を付加してインデックス付きサンプルアンプリコンプールを生成し、任意で、異なるサンプル由来の1つまたは複数の差次的なインデックス付きサンプルアンプリコンプールと、該インデックス付きサンプルアンプリコンプールとをさらに組み合わせ、すべてのインデックス付きサンプルアンプリコンを同時に配列決定する工程、および
e)対応する野生型遺伝子配列決定を参照することにより、サンプル由来の該インデックス付き配列決定アンプリコン内の突然変異を識別する工程。
【0008】
本発明の一実施形態では、該サンプルは生検サンプルであり、別の実施形態では、該生検は胃生検である。さらなる実施形態では、該生検サンプルはホルマリン固定パラフィン包埋生検サンプルを含む。別の実施形態では、該サンプルはヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)を含有する。
【0009】
別の実施形態では、該複数の遺伝子は、ピロリ菌16S rRNA、23S rRNA、gyrA、rpoB、pbp1、およびrdxAからなる群から選択される遺伝子を含む。さらなる実施形態では、該識別された突然変異は、ピロリ菌23S rRNA遺伝子のA2142G、A2143G、および/またはA2142Cの突然変異、ピロリ菌16S rRNA遺伝子のA928C、AG926~927GT、A926G/A928C、および/またはAGA926~928TTCの突然変異、DNAジャイレースサブユニットAをコードするピロリ菌gyrA遺伝子のC261A、C261G、G271A、および/またはG271Tの突然変異、DNA依存性RNAポリメラーゼのベータ/ベータ’サブユニットをコードするピロリ菌rpoB遺伝子のコドン525~545の間の突然変異、ペニシリン結合タンパク質1をコードするピロリ菌pbp1遺伝子におけるC1242AまたはC1242Gの突然変異、あるいはピロリ菌rdxA遺伝子内の突然変異である。別の実施形態では、該識別された突然変異は、rdxAによりコードされる、ピロリ菌の酸素非感受性(タイプI)NAPD(P)Hニトロレダクターゼの機能喪失を生じさせる。
【0010】
本発明の一実施形態では、該アンプリコンは、230塩基対を超えない長さである。別の実施形態では、該アンプリコンは、130塩基対を超える長さである。さらなる実施形態では、別のPCRプライマー対によるアンプリコン生成を妨げる1つまたは複数のプライマーを含む該PCRプライマー対は、クロスペアのプライマー二量体を形成することにより、または、クロスペアのトランケートされたアンプリコンを形成することにより、妨げる。
【0011】
本発明の別の実施形態は、薬剤耐性ピロリ菌の存在を、患者由来サンプル内で検出するための方法に関し、該方法は、以下の工程を含む:
a)該患者由来サンプルから単離されたDNAからアンプリコンを生成する工程であって、
i)PCRプライマー対プール1はプライマー配列番号1~10を含み、
ii)PCRプライマー対プール2はプライマー配列番号11~22を含み、
iii)PCRプライマー対プール3はプライマー配列番号23~28を含み、
iv)PCRプライマー対プール4はプライマー配列番号29~32を含み、
v)PCRプライマー対プール5はプライマー配列番号33~38を含み、
vi)PCRプライマー対プール6はプライマー配列番号39~44を含む、工程、
b)工程a)でPCRプライマー対プール1~6から産生された全てのアンプリコンを、サンプルアンプリコンプールへと組み合わせ、該サンプルアンプリコンプール内で該アンプリコンに固有インデックス配列を付加してインデックス付きサンプルアンプリコンプールを生成し、任意で、異なる患者由来サンプルに由来する1つまたは複数の差次的なインデックス付きサンプルアンプリコンプールと、該インデックス付きサンプルアンプリコンプールとをさらに組み合わせ、すべてのインデックス付きサンプルアンプリコンを同時に配列決定する工程、
c)配列番号47~51に対する参照により、該配列決定されたインデックス付きサンプルアンプリコン内の突然変異を識別する工程、および
d)工程c)で識別される突然変異の存在または非存在により、患者由来プロファイルに存在するピロリ菌の薬剤耐性プロファイルを決定する工程。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態は、薬剤耐性ピロリ菌の存在を、患者由来サンプル内で検出するための方法に関し、該方法は、以下の工程を含む:
a)該患者由来サンプルから単離されたDNAからアンプリコンを生成する工程であって、
i)PCRプライマー対プール1はプライマー配列番号23~28を含み、
ii)PCRプライマー対プール2はプライマー配列番号29~32を含み、
iii)PCRプライマー対プール3はプライマー配列番号33~38を含み、
iv)PCRプライマー対プール4はプライマー配列番号39~44を含む、工程、
b)工程a)でPCRプライマー対プール1~4から産生された全てのアンプリコンを、サンプルアンプリコンプールへと組み合わせ、該サンプルアンプリコンプール内で該アンプリコンに固有インデックス配列を付加してインデックス付きサンプルアンプリコンプールを生成し、任意で、異なる患者由来サンプルに由来する1つまたは複数の差次的なインデックス付きサンプルアンプリコンプールと、該インデックス付きサンプルアンプリコンプールとをさらに組み合わせ、すべてのインデックス付きサンプルアンプリコンを同時に配列決定する工程、
c)配列番号47~51に対する参照により、該配列決定されたインデックス付きサンプルアンプリコン内の突然変異を識別する工程、および
d)工程c)で識別される突然変異の存在または非存在により、患者由来プロファイルに存在するピロリ菌の薬剤耐性プロファイルを決定する工程。
【0013】
さらなる実施形態では、本明細書に記載の任意のアンプリコンプールは、末端プライマーの1つをプール内の単一のアンプリコンに対してフォワード配列決定プライマーとして使用し、他の末端プライマーをリバース配列決定プライマーとしてそのアンプリコンに使用して、古典的なサンガー配列決定法によって配列決定することができる。あるいは、アンプリコンプール内の各個々のアンプリコンについてのそれぞれの所望の反応に特異的な固有配列決定プライマーを同じ目的のために使用することができる。このようにして、各アンプリコンを、アンプリコンプールから直接配列決定することができる。アンプリコンプールは、同じFFPEで抽出した生検サンプル由来の他のアンプリコンプールと組み合わせることも、組み合わせないことも可能であり、組み合わせたアンプリコンは、次世代配列決定(NGS)の準備のためにアダプターおよびインデックスタグを付加することによって配列決定するために調製した。単一のFFPE生検サンプル由来のタグ付けされたアンプリコンプールは、異なるFFPE生検サンプル由来の差次的にタグ付けされたアンプリコンプール、およびハイスループットマルチプレックス配列決定法により直接配列決定された組み合わせられたサンプルアンプリコンプールと、さらに組み合わせられてもよい。
[本発明1001]
複数の遺伝子における突然変異をサンプル内で検出するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
a) 1つまたは複数の突然変異を含有する遺伝子のそれぞれの領域を含むアンプリコンを産生するのに適切なPCRプライマー対を識別する工程、
b) 別のPCRプライマー対によるアンプリコン生成を妨げる1つまたは複数のプライマーを含むPCRプライマー対を、別個のPCRプライマー対プールに分離する工程であって、前記別個のPCRプライマー対プールの各々が、複数のPCRプライマー対を含有する、工程
c) 前記別個のPCRプライマー対プールの各々および前記サンプルより単離された標的DNAから、アンプリコンを生成する工程、
d) 前記別個のPCRプライマー対プールの各々および前記標的DNAから産生される全てのアンプリコンを、サンプルアンプリコンプールへと組み合わせ、前記サンプルアンプリコンプール内で、前記アンプリコンに固有インデックス配列を付加してインデックス付きサンプルアンプリコンプールを生成し、任意で、異なるサンプル由来の1つまたは複数の差次的なインデックス付きサンプルアンプリコンプールと、前記インデックス付きサンプルアンプリコンプールとをさらに組み合わせ、すべてのインデックス付きサンプルアンプリコンを同時に配列決定する工程、および
e) 対応する野生型遺伝子配列を参照することにより、サンプル由来の前記インデックス付き配列決定アンプリコン内の突然変異を識別する工程。
[本発明1002]
前記サンプルが生検サンプルである、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記生検が胃生検である、本発明1002の方法。
[本発明1004]
前記サンプルがホルマリン固定パラフィン包埋生検サンプルを含む、本発明1002の方法。
[本発明1005]
前記サンプルがヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(ピロリ菌(H.pylori))を含有する、本発明1002の方法。
[本発明1006]
前記複数の遺伝子が、ピロリ菌16S rRNA、23S rRNA、gyrA、rpoB、pbp1、およびrdxAからなる群から選択される遺伝子を含む、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記識別された突然変異が、前記ピロリ菌23S rRNA遺伝子のA2142G、A2143G、および/またはA2142Cの突然変異である、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記識別された突然変異が、前記ピロリ菌16S rRNA遺伝子のA928C、AG926~927GT、A926G/A928C、および/またはAGA926~928TTCの突然変異である、本発明1001の方法。
[本発明1009]
前記識別された突然変異が、DNAジャイレースサブユニットAをコードする前記ピロリ菌gyrA遺伝子のC261A、C261G、G271A、および/またはG271Tの突然変異である、本発明1001の方法。
[本発明1010]
前記識別された突然変異が、DNA依存性RNAポリメラーゼのベータ/ベータ’サブユニットをコードする前記ピロリ菌rpoB遺伝子のコドン525~545の間である、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記識別された突然変異が、ペニシリン結合タンパク質1をコードする前記ピロリ菌pbp1遺伝子におけるC1242AまたはC1242Gの突然変異である、本発明1001の方法。
[本発明1012]
前記識別された突然変異が、前記ピロリ菌rdxA遺伝子内である、本発明1001の方法。
[本発明1013]
前記識別された突然変異が、rdxAによりコードされるピロリ菌の酸素非感受性(タイプI)NAPD(P)Hニトロレダクターゼの機能喪失を生じさせる、本発明1012の方法。
[本発明1014]
前記アンプリコンが、230塩基対を超えない長さである、本発明1001の方法。
[本発明1015]
前記アンプリコンが、130塩基対を超える長さである、本発明1001の方法。
[本発明1016]
別のPCRプライマー対によるアンプリコン生成を妨げる1つまたは複数のプライマーを含む前記PCRプライマー対は、クロスペアプライマー二量体を形成することにより妨げる、本発明1001の方法。
[本発明1017]
別のPCRプライマー対によるアンプリコン生成を妨げる1つまたは複数のプライマーを含む前記PCRプライマー対は、クロスペアのトランケートされたアンプリコンを形成することにより妨げる、本発明1001の方法。
[本発明1018]
薬剤耐性ピロリ菌の存在を患者由来サンプル内で検出するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
a) 前記患者由来サンプルから単離されたDNAからアンプリコンを生成する工程であって、
b) PCRプライマー対プール1はプライマー配列番号1~10を含み、
c) PCRプライマー対プール2はプライマー配列番号11~22を含み、
d) PCRプライマー対プール3はプライマー配列番号23~28を含み、
e) PCRプライマー対プール4はプライマー配列番号29~32を含み、
f) PCRプライマー対プール5はプライマー配列番号33~38を含み、
g) PCRプライマー対プール6はプライマー配列番号39~44を含む、工程、
h) 工程a)でPCRプライマー対プール1~6から産生された全てのアンプリコンを、サンプルアンプリコンプールへと組み合わせ、前記サンプルアンプリコンプール内で前記アンプリコンに固有インデックス配列を付加してインデックス付きサンプルアンプリコンプールを生成し、任意で、異なる患者由来サンプルに由来する1つまたは複数の差次的なインデックス付きサンプルアンプリコンプールと、前記インデックス付きサンプルアンプリコンプールとをさらに組み合わせ、すべてのインデックス付きサンプルアンプリコンを同時に配列決定する工程、
i) 配列番号47~51に対する参照により、前記配列決定されたインデックス付きサンプルアンプリコン内の突然変異を識別する工程、および
j) 工程c)で識別される前記突然変異の存在または非存在により、前記患者由来プロファイルに存在するピロリ菌の前記薬剤耐性プロファイルを決定する工程。
[本発明1019]
ピロリ菌中のrdxAにおける突然変異の存在を患者由来サンプル内で検出するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
a) 前記患者由来サンプルから単離されたDNAからアンプリコンを生成する工程であって、
i) PCRプライマー対プール1はプライマー配列番号23~28を含み、
ii) PCRプライマー対プール2はプライマー配列番号29~32を含み、
iii) PCRプライマー対プール3はプライマー配列番号33~38を含み、
iv) PCRプライマー対プール4はプライマー配列番号39~44を含む、工程、
b) 工程a)でPCRプライマー対プール1~4から産生された全てのアンプリコンを、サンプルアンプリコンプールへと組み合わせ、前記サンプルアンプリコンプール内で前記アンプリコンに固有インデックス配列を付加してインデックス付きサンプルアンプリコンプールを生成し、任意で、異なる患者由来サンプルに由来する1つまたは複数の差次的なインデックス付きサンプルアンプリコンプールと、前記インデックス付きサンプルアンプリコンプールとをさらに組み合わせ、すべてのインデックス付きサンプルアンプリコンを同時に配列決定する工程、
c) 配列番号47~51に対する参照により、前記配列決定されたインデックス付きサンプルアンプリコン内の突然変異を識別する工程、および
d) 工程c)で識別される前記突然変異の存在または非存在により、前記患者由来サンプルに存在するピロリ菌がrdxA突然変異を有するかどうかを決定する工程。


【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ピロリ菌rdxA遺伝子を示し、記載されたアンプリコンの相対配置を図示する。
図2-1】図2は、説明および実施例で開示された個々のプライマーの表である。
図2-2】同上。
図2-3】同上。
図2-4】同上。
図3】すべてのrdxA特異的プライマーをプールすると不正確なサイズのアンプリコンを生成するが、本明細書に記載された分離されたプライマープールは正しいサイズのアンプリコンを生成することを示す電気泳動ゲルである。
図4】23S rRNA194-Fおよび170R-Fを用いて配列決定された、23S rRNAの(FFPEサンプル、FFPE_KおよびLにおける)23S rRNAクラリスロマイシン配列のアラインメントにおける代表的な突然変異を識別する。赤いボックスは23S rRNA上の突然変異遺伝子座を示す。
図5】分離的プーリング、および識別された薬剤耐性ピロリ菌に特徴的な6つの異なる遺伝子のそれぞれに突然変異を有するプールされたアンプリコンのストラテジーを用いて、16個のFFPEサンプルからの次世代配列決定(NGS)データによって分析された16個のFFPEサンプルの要約データ表である。NGSによって同定された全ての突然変異は、サンガー配列決定によって確認された。
図6】分離的プーリング、および識別された薬剤耐性ピロリ菌に特徴的な6つの異なる遺伝子のそれぞれに突然変異を有するプールされたアンプリコンのストラテジーを用いて、24個のFFPEサンプルからのNGSデータによって分析された24個のFFPEサンプルの要約データ表である。データ表は、NGSによって同定された遺伝子突然変異およびその突然変異頻度を列挙する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、FFPE生検サンプル中に存在する微量DNA配列を増幅するための方法および組成物を提供する。これらの方法および組成物は、FFPE胃生検サンプルからのピロリ菌の薬剤耐性および多剤耐性プロファイルの存在を決定し、それらを特徴付けるために有用である。
【0016】
本明細書に記載の方法および組成物は、FFPE生検サンプル中に存在する微量の細菌DNAからアンプリコンを生成することに関する。そのようなDNAは特に損傷を受けやすく、損傷したDNAのPCR増幅は、所望の配列が標的DNAから増幅されることを確実にする特別な工程を必要とする。これらの工程は、増幅反応から回収される各アンプリコンの長さの最小化、標的DNA配列内の最適なプライマー配列の決定、および互いに干渉を避けるための、重複するアンプリコンおよびプライマーの戦略的プーリングを含む。分離的プーリング、と呼ばれるプロセス。DNA完全性が比較的高いと推定され得る典型的なPCR増幅スキームにおいては、プライマー選択は、鋳型DNAがFFPE由来DNAの場合のように架橋または塩基の付加体の存在によって損傷されることが知られている場合ほどには限定されない。さらに、典型的な生検サンプル中に見出される細菌DNAの絶対量は、宿主生物のDNAよりも数桁低い。これは、増幅の標的となる配列がサンプル中の全DNAのうちの少数であり、そのような珍しいDNA配列から1つまたは複数のアンプリコンを首尾よく増幅するためには、最適なプライマーおよび標的DNAの最も効率的な使用が可能であることが必要であることを意味する。さらに、商業的臨床検査室で一般的に有用であるためには、このような方法は確立された技術および試薬と互換性があり、確立された技術および試薬を可能な限り使用するべきである。
【0017】
Qiagen QIAamp DSP DNA FFPE組織キット(Qiagen、カタログ番号60404)を使用して、製造元の指示に従って、FFPE胃生検サンプルから全DNAを抽出した。簡単に説明すると、単一のFFPE生検サンプルの5μmの厚さの5つの切片を単一チューブに入れ、キシレンで脱パラフィンし、プロテアーゼKを用いて65℃で1時間処理して細胞を脱パラフィンしたサンプル中で溶解させ、細胞構造を脱架橋しかつプロテイナーゼKを変性させるために90℃でさらに1時間インキュベートした。脱パラフィンし溶解したサンプルを、製造業者の推奨手順に従ってMiniElute PCR精製カラム(Qiagen、カタログ番号28004)に適用して室温に冷却する。MiniEluteカラムを2回洗浄し、溶出緩衝液でカラムから回収したFFPE生検サンプルからDNAを回収する。回収したDNAをQubit2.0蛍光光度計(Thermo Fisher Scientific)で定量し、DNA純度をNanodrop装置(Thermo Fisher Scientific)で測定した。
【0018】
各生検サンプルからの全DNAサンプル中のピロリ菌配列の存在を確認するために、ピロリ菌の23S rRNA遺伝子の特異的125塩基対断片の固有に高度に保存された領域のPCR増幅を、配列番号45および46のPCRプライマーを用いて実施した。PCR産物を精製し、配列決定し、BLAST分析によってピロリ菌に特異的であることを確認した[Altschul,S.F.,Gish,W.,Miller,W.,Myers,E.W.&Lipman,D.J.(1990)"Basic local alignment search tool."J.Mol.Biol.215:403-410]。適切な増幅産物(アンプリコン)が存在しないことは、使用可能なピロリ菌DNAがサンプル中に存在しないことを示した。
【0019】
回収されたDNAの品質を決定するために、125塩基対のピロリ菌特異的PCRアンプリコンを産生したサンプルをさらに調査した。PCR増幅および配列決定のためにピロリ菌を含有するFFPE胃生検サンプルから抽出されたDNAの適合性を決定するために、多重PCR適格性アッセイを開発した。この適格性アッセイは、グリセロアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼをコードするヒトGAPDH遺伝子を、100、200、300、400、および500塩基対断片のアンプリコンラダーを産生することができるPCRプライマーセットでPCR増幅することを含む。大きな断片サイズかつ比較的高い濃度である有意な損傷を有さないFFPE DNAは、アンプリコンラダーの5つ全ての「段(rung)」を生成し、一方、高度に損傷し、有意に断片化されたDNAは、予想されるアンプリコンのいずれも産生しない。この方法で培った経験を生かして、FFPE胃生検サンプルから回収されたDNAを、この試験がアンプリコンラダーの2~5バンドを産生する場合は良い、1バンドのみを産生する場合は普通、全くバンドが観察されない場合は悪い、と評価している。多数のFFPE抽出生検サンプルにわたって観察されたアンプリコンバンド数の全体的な頻度は、分析用アンプリコンのサイズを約200塩基対以下に制限することにより、可能な限り連続した配列を生成することと、鋳型DNAにおけるPCR増幅を終了させる損傷を避けることとの間の最良のバランスが得られることが示される。
【0020】
新たに調製または凍結したピロリ菌染色体DNA(陽性対照として)およびFFPE胃生検サンプルから抽出したサンプル(実験サンプル)の両方を用いたPCR増幅反応を、1UのTaqDNAポリメラーゼ、10mMのdNTPミックス入りの、100mMのトリス-HCl、500mMのKClおよび25mMのMgCl2緩衝液中で行った。
【0021】
サンガー配列決定法によって分析されたサンプルについては、図1のPCRプライマー(配列番号1~44)を、以下の熱サイクルパラメータで示されるように使用した:95℃で10分間の初期変性、次に95℃で30秒、55℃で30秒、72℃で30秒、を35サイクル、次に72℃で10分間の最終伸長。各増幅反応から得られたアンプリコンを、MiniElute PCR Purificationカラムを用いて製造元の指示に従って精製した。
【0022】
精製したアンプリコンを、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems、カタログ番号4337455)を用いて製造元のプロトコールに従ってサンガー配列決定のために処理した。PCR配列決定反応は、以下の熱パラメータを用いて実施した:95℃で1分間、次に95℃で30秒間、56℃で30秒間、60℃で1分間、を25サイクル。プライマー伸長反応は、Agencourt CleanSEQキット(Beckman Coulter Life Sciencesカタログ番号A29151)を用いて製造元の指示に従って処理した。ABI 3500 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)でサンプルをロードし分析した。3500シリーズデータ収集ソフトウェア(Applied Biosystems)を用いて生の配列データを収集し、Sequencher v 5.4ソフトウェア(Gene Codes Corp.)を用いて参照配列に対してアセンブルし、整列させた。
【0023】
NGS配列決定を目的とするサンプルの場合、イルミナオーバーハングアダプター配列を、図2(配列番号1~44)に列挙された遺伝子座特異的プライマー配列に付加する。フォワードオーバーハング配列(遺伝子座特異的フォワードプライマー配列の5’側に付加)は
であり、リバースオーバーハング配列(遺伝子座特異的リバースプライマー配列の5’側に付加)は
である。最初のラウンドのPCR増幅熱サイクルパラメータは、95℃で11分間の初期変性、その後、95℃で30秒、59℃で1分、72℃で1分、を35サイクル、次に72℃で10分間の最終伸長である。第2段階のPCR反応(マルチプレックスインデックスアダプターの追加を含む)は、熱サイクルパラメータ:98℃で30秒、98℃で20秒、60℃で30秒、および72℃で45秒、を17サイクル、72℃で5分間の最終伸長を含んだ。次に、ライブラリーを製造元の指示に従ってAgencourt AMPure XPキット(Beckman Coulter Life Sciencesカタログ番号A63880)で処理し、必要に応じて希釈して、2100 BioAnalyzer(Agilent Technologies)で定量し、Illumina MiSeq配列決定装置(Illumina,Inc.)にロードした。データ解析は、NextGENe V 2.4.1.1ソフトウェア(SoftGenetics)を用いて行った。
【0024】
本発明は、本発明の理解を助けるために記載されている以下の実施例で説明されるが、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0025】
実施例1
複数の遺伝子座からの薬剤耐性を特徴付けるための、PCRプライマーおよびアンプリコンの分離的プーリング
本発明の一態様では、薬剤耐性の異なる形態をコードする複数の遺伝子座は、標的遺伝子座のそれぞれをカバーする診断用アンプリコンを生成するために使用されるPCRプライマーを分離することによって同時に特徴付けることができる。ピロリ菌の16S rRNA遺伝子の位置926~928にまたがる168塩基対のアンプリコン(16S rRNA 168)を産生するための、配列番号1および2を含むPCRプライマー対。これらの位置の事実上のあらゆる突然変異は、低レベルのテトラサイクリン耐性を生じさせるが、三重変異AGA926~928TTCは、テトラサイクリン耐性の非常に高いレベルと関連する。配列番号11および12を含む第2のプライマー対は、ピロリ菌16S rRNAの926~928位をも包含する162塩基対のアンプリコン(16S rRNA 162)を産生する。配列番号3および4を含む別のPCRプライマー対は、ピロリ菌の23S rRNA遺伝子の2142位および2143位にまたがる194塩基対のアンプリコン(23S rRNA 194)を産生する。これらの位置の突然変異、特にA2142G、A2142CおよびA2143G突然変異は、クラリスロマイシン耐性と関連している。配列番号13および14を含む第2のプライマー対は、ピロリ菌23 SrRNAの2142位および2143位にもまたがる170塩基対のアンプリコン(23S rRNA 170)を産生する。配列番号5および6を含む別のPCRプライマー対は、gyrA遺伝子によってコードされるピロリ菌ジャイレースのAサブユニットのアミノ酸位置87~91をコードする領域にまたがる193塩基対アンプリコン(gyrA 193)を産生する。Asn87のLysまたはTyrへの突然変異およびAsp91のGly、AsnまたはTyrへの突然変異は、個々にまたは一緒に、フルオロキノン抗生物質に耐性を生じることが知られている。配列番号15および16を含む、ピロリ菌gyrA遺伝子のこの領域にまたがる第2のPCRプライマー対は、139塩基対のアンプリコン(gyrA 139)を産生する。配列番号17および18を含む、同じ領域にまたがる第3のPCRプライマー対は、137塩基対アンプリコン(gyrA 137)を産生する。配列番号7および8を含む別のPCRプライマー対は、ピロリ菌pbp1遺伝子のアミノ酸位置414をコードする配列を包含する159塩基対アンプリコン(pbpA 159)を産生する。ペニシリン結合タンパク質1の位置414に通常見出されるセリンのアルギニンへの突然変異は、アモキシシリンおよび他のペニシリン抗生物質に対する耐性を生じる。別のPCRプライマー対、配列番号19および20は、ピロリ菌ペニシリン結合タンパク質1の位置414をコードする配列をも包含する140塩基対のアンプリコン(pbpA 140)を産生する。配列番号9および10を含む別のPCRプライマー対は、RNAポリメラーゼのβ/β’サブユニットをコードするピロリ菌rpoB遺伝子のコドン525~545を包含する228塩基対アンプリコンを産生する。この領域内のコドンのいずれかの突然変異は、リファブチンおよび他のリファマイシン様抗生物質に対する耐性を与えることができる。配列番号21および22を含むPCRプライマー対はまた、167塩基対でありかつrpoB内の重要なコドンを包含するアンプリコン(rpoB-R-167)を産生する。
【0026】
薬剤耐性突然変異を潜在的にコードする特定の遺伝子領域を標的とするPCRプライマーの各対は、異なる遺伝子を標的とする一つまたは複数の固有のプライマー対を含有する別個のPCRプライマー対プールに分離される。したがって、各プールのPCR増幅は、各プール内の複数の遺伝子に特異的なアンプリコンを産生し、プライマー二量体またはオーバーラッピングアンプリコン配列内の相同的対形成によって引き起こされるクロスペアアンプリコントランケーションのようなPCR増幅アーティファクトの可能性を最小にする。図2に示すように、プール5GFは、PCRプライマー対、16S rRNA 168、23S rRNA 194、gyrA 193、pbpA 159およびrpoB 228を含む。FFPE由来のピロリ菌標的DNAをこれらのプライマー対で増幅すると、159、168、193、194、および228塩基対の5つの固有のアンプリコンが産生される。
【0027】
アンプリコンプール5GR(図2)は、PCRプライマー対、16S rRNA 162R、23S rRNA 170R、gyrA 139R、gyrA 137R、pbpA 140およびrpoB-R-167を含む。FFPE由来のピロリ菌標的DNAをこれらのプライマー対で増幅すると、8個ものアンプリコンが産生される。これらのうち4つは、140、162、167および170塩基対(それぞれpbpA特異的アンプリコン、16S rRNA特異的アンプリコン、rpoB特異的アンプリコンおよび23S rRNA特異的アンプリコンに対応)の固有のアンプリコンである。残りの4つのアンプリコンは、プール5GRに存在する2対のgyrA特異的PCRプライマー対について順に並んだものを表す。これらのプライマー対は、4つの可能なアンプリコンが2対のプライマーから産生され得るように、同じ方向に互いに部分的に重複する。プライマーの部分的な重複は、同じ鎖の向き(方向)を有するプライマーに限定されるので、プライマー二量体形成のリスクはなく、プライマー間の増幅された配列は同一であるため(増幅された配列の絶対的な長さを除いて)、アンプリコン間のクロスハイブリダイゼーションは新しい配列を生成しないであろう。したがって、2対の半固有プライマーをアンプリコンプール内に収容することができる。この場合、これらのプライマーは、131、137、139、および145塩基対の4つもの相同なアンプリコンを産生することができる。これらのアンプリコンの配列は、より長いアンプリコンに存在する、短いアンプリコンの末端から欠けている少数の塩基対を除いて、他のアンプリコンのそれぞれの配列と端から端まで同一である。
【0028】
配列決定されたアンプリコンの各々を整列させることにより、薬剤耐性を付与する突然変異の同定が可能になる。図4は、2つの独立したFFPE由来サンプル(「E」および「K」)において同定された、23S rRNAにおけるA2142G突然変異の例であり、これらのサンプルが由来する患者を苦しめているピロリ菌株の治療はクラリスロマイシンに反応しそうもないことを示す。一番上の配列は、ピロリ菌の既知のクラリスロマイシン耐性株であり、対照のすぐ下の2つの配列は、サンプル「E」からの独立したPCRアンプリコンであり、最後の2つの配列は、サンプル「F」からの独立したアンプリコンである。
【0029】
実施例2
遺伝子の全コード配列の調査に由来する薬剤耐性を特徴付けるための、PCRプライマーおよびアンプリコンの分離的プーリング
本発明の別の態様において、分離されたPCRプライマープールは、遺伝子全体の有効なカバレッジを可能にする。メトロニダゾールに対する耐性は、細菌の酸素非感受性(I型)NAD(P)Hニトロレダクターゼをコードするピロリ菌rdxA遺伝子における任意の機能喪失的変異の結果として生じ得る。メトロニダゾールはこの酵素の作用によって活性化され、したがって、この酵素をコードするrdxA遺伝子内のあらゆるフレームシフトまたは点突然変異は、メトロニダゾールに対する耐性を付与する可能性がある。先に記載された実施形態とは異なり、単一の短いアンプリコンは、ピロリ菌に遭遇するメトロニダゾール耐性の既知の突然変異スペクトルを包含することはできない。この問題に対処するために、各系列内のプライマーが一緒にrdxA遺伝子の全コード領域をカバーする短いアンプリコンを産生するように、オーバーラッピングアンプリコンを産生する2系列のPCRプライマー対を設計した。2つの系列の間のプライマーは固有の位置に位置するが、いくつかはrdxA遺伝子のコード配列内にあり、他の系列の類似のプライマーと比較して一方向のわずか数塩基だけずらされている(前のパラグラフで説明したアンプリコンプール5GR内の部分的に重複するgyrAプライマーと同様の様式で)。このストラテジーは、標的DNA中に存在する単一の架橋または付加体がアンプリコンの産生を完全にブロックする機会を減少させる。1系列のPCRプライマーによって産生されたアンプリコン由来の配列は、プライマープールの全セットからrdxA遺伝子の完全なカバレッジが確実に達成されるように、他の一連のPCRプライマーから産生されたアンプリコンで組み立てることができる。各系列のプライマーは、各系列の2つのアンプリコンプールのうちの1つに配置され、重複してもよく、プライマー二量体を形成しやすいプライマーから産生される系列内のアンプリコンは別個のプールに分離される。ピロリ菌rdxA遺伝子の場合、5つの短いアンプリコンのうち1つの系列は集合的にrdxAコード配列全体に及ぶ。5’から3’へのこれらの5つのアンプリコンは、rdxA 188アンプリコン(PCRプライマー対配列番号23および24から産生)、rdxA-5-2-163アンプリコン(PCRプライマー対配列番号29および30から産生)、rdxA 156アンプリコン(PCRプライマー対配列番号25および26から産生)、rdxA 182アンプリコン(PCRプライマー対配列番号31および32から産生)、およびrdxA 177アンプリコン(PCRプライマー対配列番号27および28から産生)を含む。この系列内では、アンプリコンrdxA 188、rdxA 156およびrdxA 177を産生するPCRプライマー対を、rdxA-F1と称する単一のプールに入れ、一方、アンプリコンrdxA-5-2-163およびrdxA 182を産生するPCRプライマー対は、rdxA-F2と呼ばれる異なるプールに組み合わされる(図2)。別の系列では、ピロリ菌rdxA遺伝子全体に6つの短いアンプリコンが使用されている。5’から3’に配列されたこれらのアンプリコンは、rdxA-R-150アンプリコン(PCRプライマー対配列番号33および34から産生)、rdxA-R-187アンプリコン(PCRプライマー対配列番号39および40から産生)、rdxA-R-164アンプリコン(PCRプライマー対配列番号35および36から産生)、rdxA-R0174アンプリコン(PCRプライマー対配列番号41および42から産生)、rdxA-R-171アンプリコン(配列番号37および38のPCRプライマー対から産生)、およびrdxA-R-189アンプリコン(PCRプライマー対配列番号43および44から産生)を含む。この系列内で、アンプリコンrdxA-R-150、rdxA-R-164およびrdxA-R-171を産生するPCRプライマー対を、rdxA-R1と称される一方のプールと組み合わせ、アンプリコンrdxA-R-187、rdxA-R-174、およびrdxA-R-189を産生するPCRプライマー対を、rdxA-R2と称される異なるプールと組み合わせる(図2)。これらのPCRプライマープールは、FFPE生検サンプルから抽出されたピロリ菌DNAからそれらの同族アンプリコンを生成するために使用される。アンプリコンをどのように配列決定するかに応じて、各PCR反応からのアンプリコンをさらに組み合わせて、各系列が単一のアンプリコンプールによって表されるようにすることができる。
【0030】
図3に示すように、適切な分離的プーリングは正しい(予測された)アンプリコンを産生するが、単一のプールに存在するときの同じプライマーは、誤ったアンプリコンおよびプライマー二量体からなる一連のPCR産物を産生する。2つのFFPEサンプル、「FFPE_C」および「FFPE_E」は記載のように処理され、rdxA遺伝子の分析のための標的DNAとして供された。(一番左端のレーンをレーン1として数えて)レーン6は、二本鎖DNAサイズマーカー(Ready-to-Use 100bp DNA Ladder、Biotium、Inc.)である。サイズマーカーは、サンプル特異的にプールされた増幅産物の各側に隣接している。「RDX-All」と表示されたレーン1および7は、上記rdxA遺伝子全体にわたるアンプリコンのすべてのPCRプライマーを含有するPCR増幅反応の結果である。「F1」と記されたレーン(レーン2およびレーン8)は、rdxA 188、rdxA 156およびrdxA 177アンプリコンプライムを含むrdxA-F1プールに対応し、両方のサンプルレーンは、予想通り150~200塩基対のアンプリコンを含有する。「F2」と記されたレーン(レーン3および9)は、rdxA-5-2-163およびrdxA 182アンプリコンプライマーを含むrdxA-F2プールに対応し、両方のサンプルレーンは正しいサイズのアンプリコンを含有する。約60塩基対のマイナーな産物も存在するが、このアンプリコンは、正しいアンプリコンの配列決定を妨害せず、所望のアンプリコンのうちの1つの中でまたはその間での内部組換え産物を表す可能性が高いことに留意されたい。「R1」(レーン4および10)と記されたレーンは、rdxA-R-150、rdxA-R-164およびrdxA-R-171アンプリコンプライマーを含むrdxA-R1プールに対応し、所望のアンプリコンは、ゲル上で150~約170塩基対でクラスター化される。「R2」と記されたレーン(レーン5および11)は、rdxA-R-187、rdxA-R-174およびrdxA-R-189アンプリコンプライマーを含むrdxA-R2プールに対応し、適切なサイズのアンプリコンを産生する。
【0031】
図5は、単一のNGS分析に基づいて、FFPEサンプル由来の複数の分離株における薬剤耐性および多剤耐性の存在およびパターンを決定する方法の性能を示す。この場合、実施例1に記載されるように分析された5つの別個の遺伝子ならびに実施例2に記載のように分析されたrdxA遺伝子が、各患者由来のFFPE生検サンプル中のピロリ菌の潜在的耐性プロファイルを6つの薬剤のそれぞれについて概説する単一の報告書にまとめられている。
【0032】
図6はまた、実施例1および2に記載のNGS分析に基づいて、FFPEサンプル由来の複数の分離株における薬剤耐性および多剤耐性の存在およびパターンを決定する方法の性能を示す。この表には、各サンプル中に見出される遺伝子突然変異ならびに各突然変異の頻度が列挙されている。結果は、NGS分析が、突然変異を有さないFFPEサンプルと突然変異を有するものとを区別できることを示す。例えば、24サンプルのうち、10サンプル(42%)には変異がなかった(番号5、6、8、9、13、17、および21~24)。しかしながら、結果はまた、NGS分析が、1つのFFPEサンプル内の単一および複数の突然変異の両方を検出できることも示している。例えば、14個のサンプル(58%)は、少なくとも1つの遺伝子突然変異(番号1~4、7、10~12、14~16、および18~20)を有していた。これらの14個のサンプルのうち、11個のサンプルは単一の遺伝子(番号2、4、7、11~12、14~16、18、19、および20)に突然変異を有し、3個のサンプルは複数の遺伝子(番号1、3、および10)に突然変異を有していた。
【0033】
単一の遺伝子変異を有するサンプルのうち、5個のサンプルはgyrA遺伝子の突然変異のみを有し(番号2、4、15、18、および19)、2個のサンプルはrdxA遺伝子の突然変異のみを有し(番号7および20)、4個のサンプルは23S rRNA遺伝子の突然変異のみを有していた(番号11、12、14、および16)。gyrA突然変異のみを有するサンプルのうち、サンプルの1つは、gyrA遺伝子に2つの突然変異を有していた(No.19)。上記のように、gyrA遺伝子変異の存在は、フルオロキノン抗生物質耐性を示す。rdxA遺伝子突然変異のみを有するサンプルのうち、サンプルの1つはrdxA遺伝子内に2つの突然変異を有していた(No.7)。上記のように、rdxA遺伝子突然変異の存在は、メトロニダゾールに対する耐性を示す。
【0034】
複数の突然変異を有する3個のサンプルは、23S rRNAおよびgyrAの両方(番号1および3)、ならびにgyrAおよびrdxAの両方(番号10)に突然変異を有していた。同時発生している23S rRNAおよびgyrA突然変異は、クラリスロマイシンおよびフルオロキノン抗生物質耐性の両方を示し、一方、同時発生しているgyrAおよびrdxA突然変異は、フルオロキノン抗生物質耐性およびメトロニダゾール耐性の両方を示す。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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