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特許7143287血液処理セッションを完了した後に体外血液回路から血液を除去するための方法、該方法を実行するための制御および調整ユニット、ならびに処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】血液処理セッションを完了した後に体外血液回路から血液を除去するための方法、該方法を実行するための制御および調整ユニット、ならびに処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20220920BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
A61M1/36 129
A61M1/16 185
A61M1/36 123
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019515445
(86)(22)【出願日】2017-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2017073632
(87)【国際公開番号】W WO2018054901
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】102016117725.3
(32)【優先日】2016-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501276371
【氏名又は名称】フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】タイス、マルティン
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-502321(JP,A)
【文献】特開2010-131146(JP,A)
【文献】特表2003-519539(JP,A)
【文献】特開2003-199820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再注入処置の間に血液処理セッションの完了後に患者の血液処理に使用された、血液フィルタを備える体外血液回路から血液および/または血液混合物を除去するための、医療用血液処理装置と相互動作して制御または調整するために構成された、制御および/または調整デバイスの作動方法であって、
前記血液フィルタは、間に膜が配置された血液チャンバおよび透析液チャンバを備え、血液処理の目的で、前記血液チャンバは、前記血液チャンバに通じる動脈血ラインおよび前記血液チャンバから遠ざかる静脈血ラインに、ならびに前記透析液チャンバに通じる透析注入口ラインおよび前記透析液チャンバから遠ざかる透析液排出口ラインに接続され、前記作動方法は、
・前記制御および/または調整デバイスが、血液/置換液混合物が形成されるように、置換液を前記動脈血ラインに導入することによって前記血液チャンバから前記血液および/または前記血液混合物を移動させる手段を作動させることと、
・前記制御および/または調整デバイスが、前記血液フィルタを通して前記血液/置換液混合物から水分を除去するための前記再注入処置の間に、前記透析液チャンバ内のより低い圧力および前記血液チャンバ内のより高い圧力を伴う圧力差を前記血液フィルタ内に発生することと
を行うステップを包含する、作動方法。
【請求項2】
前記圧力差は、少なくとも1つのポンプ、特に限外濾過ポンプ、置換液ポンプ、および/または血液ポンプによって、少なくとも部分的に発生される、請求項1に記載の作動方法。
【請求項3】
前記圧力差は、前記限外濾過ポンプと、前記置換液ポンプおよび/または前記血液ポンプの少なくとも1つとによって、少なくとも部分的に発生され、前記限外濾過ポンプは、前記置換液ポンプおよび/または前記血液ポンプそれぞれと同時に少なくとも一時的に起動される、請求項2に記載の作動方法。
【請求項4】
前記血液ポンプの流量(QBP)および/または前記置換液ポンプの流量(Qsubstituate_pump)は、30~280ml/分である、請求項1~3のいずれか一項に記載の作動方法。
【請求項5】
血液ポンプに対する限外濾過ポンプの流量比(QUF/QBP)および/または置換液ポンプに対する限外濾過ポンプの流量比(QUF/Qsubstituate_pump)は、0.01~0.8の値の範囲にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の作動方法。
【請求項6】
前記比(QUF/QBP)および/または前記比(QUF/Qsubstituate_pump)は、それまでにまたは前記作動方法の開始から運搬された前記置換液の量に依存して前記作動方法の実行中増加する、請求項1~5のいずれか一項に記載の作動方法。
【請求項7】
前記比(QUF/QBP)および/または前記比(QUF/Qsubstituate_pump)は、前記静脈血ライン内のヘマトクリット値(HKT)を所定の値に制御または調整するために前記作動方法の実行中に変更される、請求項1~6のいずれか一項に記載の作動方法。
【請求項8】
前記比(QUF/QBP)および/または前記比(QUF/Qsubstituate_pump)は、検出デバイスによって、特に静脈置換液/血液検出器によって決定される、前記静脈血ライン内の前記ヘマトクリット値(HKT)に依存して調整される、請求項1~7のいずれか一項に記載の作動方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の作動方法の実行を、医療用血液処理装置と相互動作して制御または調整するために構成された、制御および/または調整デバイス。
【請求項10】
医療用処理装置であって、
・任意選択で、導管内部を有する少なくとも体外血液回路と、
・前記体外血液回路の前記導管内部内の血液を運搬するための、前記体外血液回路にまたは前記体外血液回路内に配置された少なくとも血液ポンプと
を有し、
・請求項9に記載の少なくとも制御および/または調整ユニット
によって特徴付けられる、医療用処理装置。
【請求項11】
前記透析液チャンバ内のより低い圧力および前記血液チャンバ内のより高い圧力を伴う圧力差を前記血液フィルタ内に発生するための少なくとも1つのポンプを備えるか、または接続され、好ましくは流体連通している、請求項10に記載の医療用処理装置。
【請求項12】
デジタル記憶媒体、特にフロッピーディスク、CDまたはDVDまたはEPROMであって、請求項1~8のいずれか一項に記載の発明に係る作動方法の機械により誘導されるステップが促されるように、プログラマブルコンピュータシステムと相互動作するための電子的に読取り可能なコンピュータプログラムを記憶する、デジタル記憶媒体。
【請求項13】
コンピュータプログラムがコンピュータ上で動作するとき、請求項1~8のいずれか一項に記載の発明に係る作動方法の機械により誘導されるステップを促すためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液処理セッションを完了した後に、患者の血液処理に利用された体外血液回路から血液および/または血液混合物を除去するための方法に関する。本発明はさらに、制御および/または調整ユニットに関する。加えて本発明は、本発明に係る方法を実行するための医療用処理装置、デジタル記憶媒体、コンピュータプログラム製品、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液処理の終了後、体外回路に依然として存在する血液は、通常、置換液体(以下、置換液(substituate)とも短く称する)によって体外血液回路から患者の血管系の方向に移動され、こうして患者に再注入される。この間、置換液と血液との間の界面における乱流により、チューブおよびフィルタ繊維の中でこれら2つの液体のかなりの混合がもたらされることも多い。よって、このプロセスによって引き起こされて、ある特定量の置換液も、血液が完全に再注入されるまで意図せずに患者に注入される。
【0003】
通常、患者の血液から液体分画の複数部分を除去することが治療上の目標であるので、先行する処理が特に患者の血液から水分を除去することを明確に意図したものであるとき、置換液の注入は望ましくなく、逆効果でさえもある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、体外血液回路から血液または血液混合物を除去するためのさらなる方法および好適な装置を指定することである。加えて、本発明の目的は、機械によって実行可能である本発明に係る方法のステップを、コンピュータシステムと接続してそれぞれ実施する、さらなるデジタル記憶媒体、さらなるコンピュータプログラム製品、およびさらなるコンピュータプログラムを提供することである。
【0005】
本発明に係る目的は、請求項1の特徴を有する方法によって達成され得る。さらに、請求項10の特徴を有する制御および/または調整ユニット、請求項11の特徴を有する医療用処理装置、請求項13の特徴を有するデジタル記憶媒体、請求項14の特徴を有するコンピュータプログラム製品、ならびに請求項15の特徴を有するコンピュータプログラムによって達成され得る。
【0006】
よって本発明によれば、血液フィルタを有する体外血液回路から、血液処理セッションまたは血液処理の完了後に、血液および/または血液混合物を除去するための方法が提案され、該血液回路は患者の血液処理に使用されている。ここで、血液フィルタは、間に膜が配置された血液チャンバおよび透析液チャンバを備える。血液チャンバは、血液処理の目的で、血液チャンバに通じる動脈血ラインと、血液チャンバから遠ざかる静脈血ラインとに接続される。血液フィルタはさらに、透析液チャンバに通じる新しい透析液ラインと、透析液チャンバから遠ざかる使用済み透析液ラインとに接続される。本方法は少なくとも、置換液を動脈血ラインに導入し、血液フィルタ内に圧力差を発生させることによって血液チャンバから血液および/または血液混合物を移動するというステップを包含する。この目的のために、透析液チャンバ内では血液チャンバ内よりも低い圧力が少なくとも一時的に発生または維持される。
【0007】
調整ユニットとしても設計され得る本発明に係る制御ユニットは、本発明に係る方法を医療用血液処理装置と相互動作して実行するために好適であり、設けられおよび/またはプログラミングおよび/または配置および/または構成される。それは、例えば貯蔵デバイス、添加デバイス、(好ましくは自動化された)信号発生デバイス等のような、さらなるデバイスを任意選択で備えることができる。
【0008】
本発明に係る医療用処理装置(以下、処理装置とも短く称する)は、導管内部を有する少なくとも1つの体外血液回路を任意選択で備える。それはさらに、体外血液回路の導管内部内の血液を運搬するための少なくとも1つの血液ポンプを装備し、該血液ポンプは体外血液回路にまたはその中に配置されるかまたは配置可能である。加えて、それは本発明に係る制御または調整ユニットを備える。
【0009】
本発明に係る記憶媒体(ここではキャリアとも示される)、特にデジタルの記憶媒体、特に不揮発性の記憶媒体、特にフロッピー(登録商標)ディスク、RAM、ROM、CD、ハードディスク、USBスティック、フラッシュカード、SDカード、またはEPROM、特に、電子的または光学的に読取り可能な制御信号を有するものは、プログラマブルコンピュータまたはコンピュータシステムと相互動作し得、その結果、本明細書に説明される本発明に係る方法の機械により誘導されるステップが促される。
【0010】
ここで、機械によって実行される本発明に係る方法のステップの全部または一部が促され得る。
【0011】
本発明に係るコンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で動作するとき本発明に係る方法の機械により誘導されるステップを促すための揮発性機械読取り可能記憶媒体に保存されたプログラムコードまたは機械制御命令を備える。
【0012】
本明細書で使用される機械読取り可能記憶媒体という用語は、本発明に係るある特定の実施形態では、ソフトウェアおよび/またはハードウェアによって解釈可能であるデータまたは情報を含むキャリアを示す。キャリアは、ディスク、CD、DVD、USBスティック、フラッシュカード、SDカード、EPROM、および同様のもののような、データキャリアであり得る。
【0013】
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータプログラムがコンピュータ上で動作するとき本発明に係る方法の機械により誘導されるステップを促すためのプログラムコードを備える。
【0014】
ここで、機械によって実行される本発明に係る方法のステップの全部、いくつか、または一部が促され得る。
【0015】
本発明によれば、コンピュータプログラム製品は、例えば、データキャリア、信号波、コンピュータプログラムを有する包括的システムとしての組込み型システム(例えばコンピュータプログラムを有する電子デバイス)、コンピュータにより実装されるコンピュータプログラムのネットワーク(例えば、クライアント・サーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等)、またはコンピュータ製品が搭載、実行、保存、または開発されるコンピュータに記憶されるコンピュータプログラムとして理解されることができる。
【0016】
本発明によれば、コンピュータプログラムは、例えば、コンピュータプログラムを含む、配布の準備ができている物理的なソフトウェア製品として理解されることができる。
【0017】
それはまた、機械によって実行される本発明に係る方法のステップの全部または一部が促され得る、本発明に係るコンピュータプログラム製品および本発明に係るコンピュータプログラムにも適用される。
【0018】
以下の実施形態のすべてにおいて、「~であり得る」または「~を有し得る」等の表現の使用は、それぞれ、「好ましくは~である」または「好ましくは~を有する」等と同義に理解されるべきであり、本発明に係る一実施形態を例示することを意図している。
【0019】
本明細書で数値を表す語が言及されるときはいつでも、当業者はそれらを数値の下限値の指示として認識または理解するであろう。それが当業者に明らかな矛盾をもたらさない限り、当業者は、例えば「1つ」が「少なくとも1つ」を包含するという指定と理解するであろう。この理解はまた、当業者にとって明らかに技術的に可能であるときはいつでも、数値を表す語、例えば「1つ」が代替的に「ちょうど1つ」を意味し得るという解釈として、本発明によって同等に包含される。両方を本発明は包含し、本明細書では使用されるすべての数値を表す語に適用される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
血液混合物は、血液と、少なくとも1つのさらなる流体、特に1つのさらなる液体との混合物を表す。血液混合物は、例えば血液と置換液の混合物であり、該置換液は、例えば新しい透析液、生理食塩液等のような、例えば溶液である。
【0021】
「置換液」は、例えば、血液処理での使用、例えば血液透析濾過で一般に既知の任意の置換液または新しい透析液であり得る。置換液は、好ましくは溶液、例えば等張食塩液、例えば0.9%のNaClを含有する溶液であり、これは血液処理セッション中に既に使用されており、よって流体連通を通して体外血液回路に既に導入されたかまたは導入可能な溶液である。「置換液」という用語はまた、本明細書では「交換液」を意味してもよい。
【0022】
Qは、本明細書では流れとも短く称される流量を表す。QUFは、限外濾過ポンプ(本明細書ではUFポンプとも短く称する)を通る流量を表し、QBPは血液ポンプを通る流量を表し、Qsubstituate_pumpは置換液ポンプを通る流量を表し、Qconveying_deviceは運搬デバイスを通る流量を表し、Qpatientは、患者に血液または血液混合物が再注入される流量を表す。
【0023】
本発明の有利な展開は、実施形態および従属請求項の各主題である。
【0024】
本発明に係る実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたはいくつかを任意の組合せで、当業者がそれらの組合せを技術的に不可能と認識しない限り備え得る。
【0025】
いくつかの例示的な実施形態では、医療用処理装置は、例えば置換液ポンプ、血液ポンプ、または新しい透析液ポンプのような、例えば運搬デバイスといったデバイスを備え、それは体外血液回路に、例えば動脈血ラインに置換液を導入するために設けられる。置換液を導入するために設けられる運搬デバイスは、以下、置換液用の運搬デバイスとも称される。
【0026】
本発明に係るいくつかの例示的な実施形態では、以下のアクチュエータまたは運搬デバイスのうちの1つまたはいくつかが、本発明に係る方法のために使用される。
・置換液用の運搬デバイス、特に置換液ポンプおよび/または血液ポンプ
・半透膜および新しい透析液側の接続部またはデバイス側の接続部を備えるフィルタ
・圧力または陰圧を高め、圧力がフィルタの血液側からフィルタの使用済み透析液側への膜貫通流を駆動するポンプ。このポンプは、いくつかの実施形態では、置換液を運搬するポンプと同一である。他の実施形態では、言及された2つのポンプは互いに同一ではなく、別個に具現化される。いくつかの実施形態では、圧力または陰圧を高めるポンプは、限外濾過ポンプ(略称UFポンプ)である。UFポンプは、好ましくは透析液チャンバ内に陰圧を発生させる。
・流動抵抗(flow resistance)。流動抵抗は、圧力を高める前述のポンプに関連する流動抵抗により血液チャンバに陽圧がもたらされるように、好ましくは、血液フィルタの血液チャンバの流出側の体外血液回路に位置する。
【0027】
本方法を適用する際、UFポンプおよび流動抵抗は、好適な実施形態において、フィルタの血液側とフィルタの使用済み透析液側との間の圧力差を引き起こし、それによって、フィルタの血液側からフィルタの使用済み透析液側への膜貫通流がもたらされる。ここで、好ましくは水分および場合によっては低分子成分が血液側から使用済み透析液側に押し出されるかまたは引き出されるが、細胞成分は、本発明によれば、血液側のヘマトクリット値が増加できるように血液側に残る。
【0028】
先行技術から既知であるように、本発明に係るいくつかの実施形態では、実際の治療の完了後に―好ましくは直後に―返血が開始する。患者の血液は次いで、好ましくは医師の処方(時間についての情報、質的または量的情報であり得る)にしたがって洗浄またはすすがれ、患者の血液中に存在する水分(または血漿)の量が、それに対応して、例えば処方にしたがって低減される。ここで、治療は通常3~5時間かかる。持続時間は事前に設定され得る。この時間期間の終結は、血液処理の完了を示し得る。
【0029】
返血が終了すると、いくつかの実施形態では、デバイスはこれをオペレータに信号で知らせる。これは、例えば、体外血液回路に存在するヘマトクリット値が(例えば検出デバイスにおいて、特に静脈置換液/血液検出器において)所定の値に(例えば2%まで)低減された場合であり得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、血液処理の終了は、表示されるかまたはオペレータに伝達される。本発明の方法はその後に続いて起きる。
【0031】
血液処理の終了の伝達は、例えばディスプレイによって(例えばモニタで)および/またはアラームでオペレータに伝達され得る。
【0032】
血液処理の終了は、例えば処方または事前に設定されている限外濾過量が除去されたときに、到達および/または表示もしくは伝達され得る。
【0033】
血液処理の終了は、処理の終了がユーザインターフェースによってオペレータに伝達されるときに、到達および/または表示もしくは伝達され得る。
【0034】
血液処理の終了は、血液処理中アクティブであるアラームシステムまたはアラーム限界が無効にされたときに、到達および/または表示もしくは伝達され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明に係る方法の実行中に血液は患者から抜き取られない。したがって血液処理は、好ましくは、本発明に係る方法を開始するより前に完了し、それ以上血液は体外血液チューブシステムに導入されない。好ましくは、本発明に係る方法を始める前に既に処理された血液のみが患者に再注入される。
【0036】
本発明に係る方法は、好ましくは血液処理の終了後、好ましくはその終了後のある遅れの後またはその終了直後に開始する。
【0037】
いくつかの実施形態では、血液ポンプは、本発明に係る方法の実行中に逆方向に作動する。
【0038】
「逆方向」とは、血液ポンプが、動脈患者接続部に向かう、または動脈患者チューブホースに向かう方向に運搬することを意味し得る。
【0039】
「逆方向」とは、血液処理中の血液ポンプの運搬方向とは反対の方向に、血液ポンプが運搬することを意味し得る。
【0040】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、血液ポンプは、血液再注入の目的で体外血液回路に接続されているすすぎ液を運搬する。
【0041】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、血液ポンプは、バッグまたは別の容器から体外血液回路に供給される食塩液を運搬する。
【0042】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、動脈患者ラインおよび静脈患者ラインは互いに接続されている。
【0043】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、動脈患者ラインおよび/または静脈患者ラインは、体外血液回路または血液カセットの静脈区間または動脈区間にそれぞれ接続される。
【0044】
本発明に係る方法のいくつかの例示的な実施形態では、血液フィルタの血液チャンバと透析液チャンバとの間の圧力差が、少なくとも1つのポンプ、特に置換液用の運搬デバイス、限外濾過ポンプ、置換液ポンプ、および/または血液ポンプによって少なくとも部分的に発生する。
【0045】
本発明に係る方法では、限外濾過ポンプは、いくつかの実施形態では、置換液用の運搬デバイス、置換液ポンプ、および/または血液ポンプと少なくとも一時的に同時に作動する。このようにして、いくつかの実施形態では、血液フィルタの血液チャンバと透析液チャンバとの間の圧力差が発生し得る。
【0046】
ある特定の実施形態では、置換液用の運搬デバイス、特に血液ポンプおよび/または置換液ポンプは、20~300ml/分、好ましくは30~280、70~240、特に好ましくは150~210ml/分の流量Qconveying_device、QBP、またはQsubstituate_pumpで運搬する。
【0047】
いくつかの実施形態では、限外濾過ポンプは、好ましくは、置換液用の運搬デバイス、特に血液ポンプおよび/または置換液ポンプの流量の何分の1かで運搬し、その結果、商QUF/Qconveying_device、QUF/QBP、またはQUF/Qsubstituate_pumpが、好ましくは0.005~0.9または0.01~0.8、特に好ましくは0.1~0.7、最も好ましくは0.2~0.6の値の範囲にある。ここで、QUFは好ましくは1~80ml/分である。
【0048】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、限外濾過ポンプは、好ましくは1ml/分~150ml/分、特に好ましくは15ml/分~150ml/分で運搬する。
【0049】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、限外濾過ポンプは、好ましくは15ml/分~150ml/分、特に好ましくは20ml/分~150ml/分で運搬する。
【0050】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、限外濾過ポンプは、好ましくは15ml/分を超えて、特に好ましくは20ml/分を超えて運搬する。これは再注入を有利に加速し得る。加えて、置換液と血液の混合はこのようにして、短い長さまたは先行技術と比較したときにより短い長さのチューブに有利に限定され得る。
【0051】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、本明細書で示される運搬量(conveying rate)に少なくとも一時的に達する。
【0052】
いくつかの実施形態では、流量、または商Qconveying_device、QUF、および/またはQBPは、デバイスによって自動的に制御または調整される。
【0053】
いくつかの実施形態では、フィルタ内の液体のヘマトクリット値が通常依然として高く、そして粘度またはヘマトクリット値の比較的強い増加が回避されるべきであるので、QUF/Qconveying_device、QUF/QBP、またはQUF/Qsubstituate_pumpは、戻りの開始時に、低くまたは後の時間におけるものよりも低く設定される。さらに当然のことながら、フィルタ内の液体のヘマトクリット値が典型的にはそのうちにも減少しているので、該商は好ましくは増加する。血液/置換液混合物のヘマトクリット値は、本発明に係る方法により好ましくは増加し、その結果、有利なことに患者にできる限りあまり置換液が注入されない。
【0054】
いくつかの実施形態では、QUF/Qconveying_device、QUF/QBP、および/またはQUF/Qsubstituate_pumpは、置換液の注入量を増加させながら増加する。増加は好ましくは単調に、特に好ましくは狭義単調に生じる。以下の表は、一実施形態について約200mlの体外回路の容積についてのQUF/QBP間の例示的な関連を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
本発明に係る方法の一実施形態では、置換液の所望の流量はオペレータによって調節可能である。患者への流れ(Qpatient)は、好ましくはQpatient = Qconveying_device - QUF、特に、Qpatient = QBP - QUFという規則に従って設定され、ここにおいて血液ポンプは、本明細書では単に例示的に唯一の置換液用の運搬ポンプとみなされる。
【0057】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、患者への所望の流れ(QPatientDesired)は、オペレータによって調節可能であり、デバイスは、以下の規則に従って、例えば反復的または連続的にQconveying_deviceまたはQBPを計算する。
conveying_device = QPatientDesired +QUF
特に、QBP = QPatientDesired + QUF
【0058】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、QUF/Qconveying_device、QUF/QBP、および/またはQUF/Qsubstituate_pumpは、それまでに運搬された置換液の量に依存して(例えば上昇ランプ(rising ramp)という意味で)制御される。
【0059】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、既に運搬された置換液の量および例えばシステムの充填から知られる体外血液回路の容積に依存して、QUF/Qconveying_device、QUF/QBP、および/またはQUF/Qsubstituate deviceが制御される(上昇ランプ)。例えば、運搬される置換液のQUF/Qconveying_deviceは単調に、好ましくは狭義単調に増加する。QUF/Qconveying_deviceは、特に好ましくは、既に運搬された置換液量に比例する。
【0060】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、QUF/Qconveying_device、QUF/QBP、および/またはQUF/Qsubstituate_pumpは、処方または患者の急性の要求に依存して個別に制御される。
【0061】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、QUF/Qconveying_device、QUF/QBP、および/またはQUF/Qsubstituate_pumpは、例えば、例として静脈血ラインにおけるヘマトクリット値を所定値に調整するために、本方法の実行中に変更される。
【0062】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、QUF/Qconveying_device、QUF/QBP、および/またはQUF/Qsubstituate_pumpは、体外血液回路内のヘマトクリット値を所望の値(典型的には30~60%)に調整するために変更される。例えば、血液側のフィルタの流圧(flow pressure)は調整器の入力値として使用され得る(例えば、Pfilter_longitudinal = プレフィルタ(ポストポンプ)の圧力 - ポストフィルタ(静脈)の圧力、すなわち、ポンプとフィルタの入口との間に広がる圧力、引くことの、フィルタの下流の静脈ラインに存在する圧力)。ここで、流動抵抗は体外血液回路内の液体の粘度に比例する。粘度はフィルタ内の血液のヘマトクリット値に比例する。
【0063】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、QUF/Qconveying_device、QUF/QBP、および/またはQUF/Qsubstituate_pumpは、例えば静脈血ライン内のヘマトクリット値に依存して調整され、このヘマトクリット値は、検出デバイスによって、特に静脈置換液/血液検出器によって、および節約される所定の置換液量に依存して決定される。例えば、オペレータは、先行技術と比較して節約される置換液の量を指定し、QUF/Qconveying_device、QUF/QBP、および/またはQUF/Qsubstituate_pumpは、例えば静脈患者ラインにおける液体のヘマトクリット値(例えば、光学検出器、例えば静脈置換液/血液検出器によって検出される)に依存して変更または調整される。
【0064】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、QUF/Qconveying_device、QUF/QBP、および/またはQUF/Qsubstituate_pumpは、同時の動脈および静脈の再注入の場合、動脈患者ライン内の液体のヘマトクリット値に依存して設定され、その結果、静脈患者ラインを通って患者に流れる液体のヘマトクリット値は、比較的非常に高い(例えば、>50%、好ましくは>55%、特に好ましくは約60%)。例えば、比較的低いヘマトクリット値(例えば10%)を有する動脈患者ラインからの液体は、患者の血管系に再注入されるとき、高いヘマトクリット値(例えば60%)を有する静脈患者ラインからの液体と混合し得、その結果、静脈または動脈患者ライン内のヘマトクリット値についての値の中間にある値(例えば<60%)を有するヘマトクリット値が、患者の血管系にもたらされる。このようにして、いくつかの実施形態では、基質の特に低い再注入を有利に達成し得る。
【0065】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、QUF/Qconveying_device、QUF/QBP、および/またはQUF/Qsubstituate_pumpは、返血より前に(実際の処理中に)既に血液から除去された水分量と共に処方の値がもたらされるように設定される。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明に係る方法は、任意の既知の再注入方法(例えば、NaCl、オンライン、同時オンライン等)において有利に使用され得る。
【0067】
本発明に係るいくつかの実施形態では、本方法は、血液処理セッションの完了後に患者の血液処理に使用された血液フィルタおよび/または血液回路から血液を部分的に除去し、他の実施形態では完全に除去するのに役立つ。
【0068】
利用される血液フィルタは、本発明に係るいくつかの実施形態では、血液透析器またはヘモフィルタである。
【0069】
血液チャンバと透析液チャンバとの間に配置される膜は、本発明に係るある特定の実施形態では半透膜である。
【0070】
本発明に係る特定の実施形態では、静脈血ラインは血液フィルタの血液チャンバから静脈血液チャンバ(本明細書では静脈空気分離チャンバとも示される)および/または静脈接続点もしくは接続デバイスに通じる。
【0071】
本発明に係るある特定の例示的な実施形態では、動脈血ラインは、動脈接続点または接続デバイスから血液フィルタの血液チャンバに通じる。
【0072】
本発明に係るいくつかの例示的な実施形態では、制御および/または調整デバイスは、(本発明によらない)血液処理と、本発明に係る導入された置換液による血液チャンバからのその後の血液の移動とを、医療用血液処理装置と相互動作して実施するように構成される。
【0073】
本発明に係る特定の例示的な実施形態では、医療用処理装置および/または血液フィルタは、血液カセットに接続される。
【0074】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、本方法は、体外血液回路の導管内部の内容物の質的変化を検出することを包含する。
【0075】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、所定量の置換液が、運搬デバイス、例えば血液ポンプ、置換液ポンプ、または新しい透析液ポンプを操作することによって体外血液回路の導管内部に導入される。
【0076】
本発明に係る方法のいくつかの特定の実施形態では、置換液(代替的に置換液体と示される)または新しい透析液は、検出デバイスが体外血液回路の導管内部における所定の程度(例えば量または濃度)の置換液を検出するまで運搬される。
【0077】
本発明に係る方法のいくつかの実施形態では、検出デバイスは、静脈アクセスデバイスまでの所定の距離をあけて配置される。これらの実施形態では、本方法はさらに、透析液が検出デバイスにおいてまたは検出デバイスによって検出された後に、体外血液回路の導管内部の内容物を静脈アクセスデバイスに所定の距離にわたって運搬することを包含する。
【0078】
本発明に係る方法のある特定の実施形態では、体外血液回路の導管内部に含まれる血液は、静脈アクセスデバイスを介して患者の血管系に導入される。
【0079】
本発明に係るいくつかの実施形態では、本方法はさらに、例えば、血液処理セッションの完了後、および/または体外血液回路からの血液の部分的もしくは完全な除去後に、体外血液回路に空気を導入することを包含する。
【0080】
「血液処理セッション」は、例えば、血液透析、血液濾過、血液透析濾過、および/または細胞分離方法を備える処理単位であり得、それは血液の処理および/または浄化を対象とする。このような血液処理を行うために、好適な血液処理装置が使用される。
【0081】
本発明に係る方法を実行するのに好適である血液処理装置は、本発明に係るいくつかの実施形態では、任意選択で、導管内部を有する体外血液回路と、体外血液回路の導管内部の少なくとも2つの流体を導入および/または運搬するための少なくとも1つの運搬デバイスと、例えば、1つまたはいくつかの血液フィルタならびに/もしくは1つまたはいくつかの透析器ならびに/もしくは1つまたはいくつかの吸着体のような患者の血液を処理するためのデバイスとを備えるか、またはそれらに接続される。それはさらに、流体を貯蔵するための容器、例えばチューブ要素および/またはバルブのような流体を導入するための要素、ならびに、例えば血液処理中に血液から空気を除去するための空気分離チャンバまたは気泡トラップおよび/または例えば体外血液回路内の圧力のような様々な関連パラメータを検出するためのセンサおよび/または検出器のような、さらなるデバイスを備え得る。
【0082】
本明細書で言及される運搬デバイスは、膜ポンプ、チューブポンプ、ローラポンプ等を含む。血液ポンプ、置換液ポンプ、および/または新しい透析液ポンプは、例えばチューブポンプまたはローラポンプとして具現化され得る。しかしながら、異なるタイプのポンプ、例えば膜ポンプもまた使用され得る。
【0083】
新しい透析液または置換液用の運搬デバイスは、「第2の」運搬デバイス、すなわち血液ポンプと同一ではない運搬デバイスであり得る。しかしながら血液ポンプはまた、血液ポンプの典型である機能を実行するように、かつ導管内部に置換液を導入し、および/または導管内容物を運搬する機能を実行することができるように設計され得る。置換液用の運搬デバイスが本明細書で言及されるときはいつでも、これは、より読みやすくするためだけに、血液ポンプまたは後者とは異なる運搬デバイスに関連する。両方のバージョンとも本発明は同等に包含する。
【0084】
本発明に係る方法は、本発明に係るある特定の実施形態では、例えば血液ポンプを操作することによって体外血液回路の導管内部に空気を導入してそれから流体を抜くステップを包含する。空気は、例えば大気であり得る。しかしながら本発明は、空気のみの使用に限定されることを意図するものではなく、むしろ本発明の目的のために好適である、空気に加えてすべての気体状流体を含むことを意図している。
【0085】
血液処理セッションを完了した後に「体外血液回路の導管内部に空気を導入すること」は、単独で行われてもよく、または血液ポンプによって、第2の運搬デバイスによって、もしくは圧縮空気源によって支持され得る。
【0086】
上述の選択の組合せ、ならびに空気の受動吸気も本発明は包含する。
【0087】
「体外血液回路の導管内部に置換液を導入すること」は、上述のように、本発明に係るいくつかの特定の実施形態では、置換液用の運搬デバイス、特に血液ポンプおよび/または置換液ポンプを操作することによって行われる。
【0088】
血液ポンプは、置換液を供給ラインから置換液用の容器に引き込むことによって運搬し得、ここにおいて、供給ラインは、血液ポンプの吸い上げ側の上流で体外血液回路に入る。このために、例えば体外血液回路の動脈分岐路に設けられたチューブクランプを有する排出口が設けられ得る。
【0089】
血液ポンプが体外血液回路に血液および置換液の両方を導入および運搬することが意図される場合、本発明に係る方法は、1つだけのポンプを用いて実行されてもよい。そのようなさらなる好ましい実施形態を本発明が包含していても、血液ポンプおよび第2の運搬デバイスが使用される実施形態が下記に説明される。以下の説明は、本発明の基礎となる個々の構成要素の原理および機能の理解を単純にすることを意図している。好ましくは、本方法は、透析液チャンバ内に陰圧を発生させ得る、UFポンプの助けで実行される。
【0090】
本発明に係るさらに好ましい実施形態では、体外血液回路内または体外血液回路の区間に配置された少なくとも1つの検出デバイスによって、体外血液回路の導管内部の内容物の質的変化を検出することが包含される。
【0091】
「質的変化」は、体外血液回路の1つまたはいくつかの領域もしくは区間、例えば検出デバイスが配置される領域または区間に関連し得る。
【0092】
「導管内部の内容物の質的変化」は、例えば導管内部またはそれの区間における血液および/または置換液の個々の部分の変化のような、互いに関連する、導管内部の内容物の組成変化を含む。また、以前に存在していた流体の欠如も、組成変化を表し得る。質的変化はまた、血液から置換液への移行でもあり得る。そのような変化は、例えば、内容物の明るさまたは暗さのような内容物の光学的変化、もしくは色の変化、例えば赤への変質または赤みの増加により容易に検出され得る。
【0093】
体外血液回路の区間に配置される「検出デバイス」は、例えば、導管内部の内容物またはその内容物の特性の光学的変化を検出する光センサであり得る。さらなる好適なセンサは、圧力センサ、導電率センサ、および体外血液回路の導管内部の内容物の密度の変化を検出するためのセンサを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、検出デバイスは、置換液/血液検出器であるかまたはそれを備える。
【0094】
「体外血液回路の区間」は、体外血液回路の動脈および/または静脈区間であり得る。「動脈区間」は、血液が患者の血管系から血液処理デバイスに向かう方向または血液フィルタに向かう方向に流れる体外血液回路の区間に関連する。「静脈区間」は、血液処理デバイスからまたは血液フィルタからの血液が患者の血管系に流れ戻る体外血液回路の区間を指す。
【0095】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、体外血液回路は、患者の血管系の区間と接続可能である少なくとも1つのアクセスデバイスを包含し、本方法は、特に体外血液回路の端部にある、特に第1の、例えば動脈の、アクセスデバイスの領域で患者の血管系から体外血液回路を切り離すことを包含する。
【0096】
「患者の血管系から体外血液回路を切り離す」とは、例えば体外血液回路の端部における区間において、体外血液回路と患者の血管系との間の接続を遮断することを意味する。その際、遮断は動脈区間および静脈区間の両方で行われ得、ここにおいて本発明では、体外血液回路の動脈区間を切り離すことが好ましい。
【0097】
「第1のアクセスデバイスの領域」において切り離すことは、例えば、ダブルニードルアクセスの動脈接続針を引き抜くこととして理解され得る。
【0098】
切り離すことはまた、体外血液回路の動脈区間と動脈接続針との間の流れ接続を遮断することとしても理解され得る。
【0099】
シングルニードルのバージョンの場合、切り離すことは、体外血液回路の「Y」字形区間の動脈区分(arterial leg)と患者の血管系に接続された唯一の接続針との間の接続を遮断することとして理解され得る。Y字部分の動脈区分の開いているルーメンは、離された後に任意の方法(手動、機械により誘導、自動等)で閉じられ得る。
【0100】
代替的または追加的に、同じことが体外血液回路の静脈区間および患者の血管系への静脈アクセスにも適用され得る。
【0101】
「体外血液回路のライン内部への置換液用の体外血液回路の添加点」が、体外血液回路の動脈および/または静脈区間に配置され得る。「添加点」は、血液処理デバイスの上流、および例えば血液フィルタの上流で灌流される体外血液回路の区間に配置されることが好ましい。
【0102】
添加点に好適な例は、開閉バルブ、止め栓、体外血液回路の分岐区間の接続可能分岐ライン等を含む。
【0103】
「所定の置換液量または新しい透析液量」は、その経路に沿って内容物が運搬される体外血液回路のライン内部のある特定の供給量および/またはある特定の経路長に対応し得、例えば膜ポンプを操作することによってもたらされることができる。
【0104】
置換液量または新しい透析液量は、好ましくはパラメータとして、例えば既定値および単位を有する量として、予め決定され得る。置換液の絶対量は好ましくは、例えば本発明に係る処理装置の制御デバイスに記憶され得、および/または入力可能であり得る。置換液量は好ましくは、技術的精度の範囲内で正確に運搬され得る。
【0105】
置換液の正確な量を予め決定するために、例えば利用される体外血液回路の技術仕様、例えばチューブセットの内容積等が、制御デバイスに記憶または入力され得る。体外血液回路の個々の構成要素の技術仕様によって、例えば必要とされる供給時間および/または供給量が計算され得る。
【0106】
「置換液または新しい透析液の制限量」は、例えば、操作人員の経験値にしたがって選ばれた置換液体の量であり得る。好ましくは、制限量の流体が、さらなる検出デバイスにおいて体外血液回路の導管内部に置換液が検出されるまで長時間にわたって導入および運搬され得る。よって制限された置換液量は、正確に知られている必要はなく、および/またはある特定の供給量に対応する必要はない。しかしながら、置換液の制限量は、置換液量が流れる体外血液回路の構成要素の内容積、特に、置換液用の添加点および/または血液処理デバイスとさらなる検出デバイスとの間の区間の内容積によって、間接的に制限され得る。よってこのように、量は「制限される」という意味で決定されるが、正確に知られることなく、また例えばミリリットル単位で表現可能でなく、および/またはコントローラに記憶されたものでも入力可能でもない。制限量の置換液を導入することは、例えば、血液処理デバイスのフィルタのタイプまたはその容量が不明であるかまたは不正確に決められている場合に有利であり得る。
【0107】
その際、置換液は、体外血液回路の対応する導管システムを介して置換液用の添加点において、設けられた貯蔵容器から体外血液回路に導入され得る。
【0108】
「検出デバイス」は上記のように定義され、例えば体外血液回路の静脈区間、例えば血液処理デバイスと患者の血管系への静脈アクセスデバイスとの間、特に静脈区間におけるドリップチャンバと静脈アクセスデバイスとの間に配置され得る。
【0109】
検出デバイスは、例えばライン内部の内容物の光学的変化によって、体外血液回路の導管内部のある特定の区間における置換液の出現を検出し得る。
【0110】
検出デバイスが体外血液回路の導管内部に空気または置換液の存在を検出した場合、「置換液/血液内容物」の運搬が停止され得る。
【0111】
これは、それぞれの運搬デバイスを停止することによって行われ得る。
【0112】
さらに、本発明に係る方法の別の実施形態では、第2のアクセスデバイスまでの事前定義の距離をあけて検出デバイスを配置し、置換液または所定の透過率もしくは光透過率、所定の色合いもしくは所定の色の変化が検出デバイスにおいて認識された後に、ライン内部の内容物を事前定義の距離に沿ってアクセスデバイスに運搬することが好ましい。
【0113】
本発明に係る方法のさらに好ましい実施形態では、体外血液回路の導管内部に含まれる血液は、第2のアクセスデバイスを介して患者の血管系に―特に実質的に完全に―戻される。「実質的に完全に戻される」という用語は、本明細書では体外血液回路の導管内部に存在する血液が、体外血液回路から残っている物質なしにほとんど除去されることを意味する。ぬれ挙動のような技術的理由で体外血液回路に残っている可能性のある血液残留物、またはドリップチャンバに残っている血液残留物は、本明細書では無視できるほど少ないと見なされるべきである。
【0114】
「患者の血管系に返血する」ことは、例えば静脈区間の端部、例えば静脈接続針のような、体外血液回路の端部が患者の血管系に接続されている場合または接続されているときに行われ得る。この接続は、血液処理セッションの完了後に維持または再確立され得る。
【0115】
本明細書で説明される本発明に係る方法が、本発明に係る処理装置を用いて実行可能であるということにより、繰り返しを避けるために、本明細書で説明されるそれぞれの実施形態が参照される。
【0116】
本発明に係る処理装置の展開により、体外血液回路の導管内部の内容物の少なくとも1つの変化または体外血液回路の区間内の内容物の1つの特性を検出するための少なくとも1つの検出デバイスの配置が提供される。内容物の特性は、組成物、物理学的、化学的、または生物学的パラメータ、例えば光学濃度、pH値、およびさらに多くの同様のものであり得る。そのような検出デバイスは、上述したものに対応し得るので、繰り返しを避けるために上記説明が参照される。
【0117】
本発明に係る処理装置は、これらに限定されることなく、血液透析、血液濾過、血液透析濾過、および/または分離方法を実行するのに好適および/または実行するように構成され得る。
【0118】
本明細書で言及された利点のうちの1つまたは複数は、本発明に係るいくつかの実施形態を介して達成可能であり得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、本方法は、先行技術と比較して、フィルタを通した再注入処置の間に、置換液による血液の移動に起因する水分が血液/血液混合物から除去されるように変更または修正される。このため、フィルタを出て患者の方へ向かう血液/置換液混合物は、いくつかの実施形態では置換液をあまり含有しない。
【0120】
処理全体(再注入を含む)で除去される正味の水分は、通常腎機能不全のある患者にとって重要な処理パラメータである。処理全体を通して患者の血液からある特定の正味量の水分を除去するために、血液に加えて再注入中に必然的に注入された水分も、通常、前の処理の過程で患者の血液から既に除去されている。
【0121】
患者の血液から実際の処理で除去される水分量が増加するにつれて、患者の循環に対する負担が相当に増加することも多い。これは処理中の生理学的問題につながることも多い。再注入中に注入され、そして上述のように処理を完了するより前に除去された液体の量も同様に生理学的問題につながることも多い。本発明に係るいくつかの実施形態では、そのような生理学的問題は有利に防止または減少され得る。
【0122】
本発明に係る方法は、いくつかの実施形態において、上述または以下の利点のうちの1つ、いくつか、またはすべてを伴い得る。
・再注入中に患者に注入される、血液/置換液混合物中の置換液の部分の低減。ここで、本発明に係る方法に先行する処理中に除去されるべき水分量が低減され得る。
・患者(特に小児患者の場合)の循環安定性の改善
・再注入中の血管の総液体摂取量の低減
・再注入処置の持続時間の低減
・コスト削減
・先行技術では再注入後に体外血液回路に残る、残留血液がより少ないことによる患者による失血の低減。先行技術では、多くの置換液が注入され、それによって返血ができる限り完全に達成されるべきかどうか、またはあまり効率的でない返血ひいては患者の失血に関連する、できる限り少ない置換液が注入されるべきかどうかが論点であることも多い。本発明に係る方法は、いくつかの実施形態においてこれらの欠点を回避する。
・透析患者の貧血の低減
・造血を助ける薬剤(例えばエリスロポエチン(erythropoietin))の必要性の低減
・患者の幸福の増加
・再注入中の有効処理時間(透析)の低減、および(対応するコスト削減を伴う)対応する透析時間の低減および/またはクリアランスの改善
【0123】
本発明は、ある特定の実施形態において、再注入中に血液と共に注入される置換液量を有利に低減する。
【0124】
よって本発明は、本発明に係るある特定の実施形態では、動静脈返血、換言すれば動脈患者接続部および静脈患者接続部の両方を介した同時再注入の有効性の改善に寄与し得る。
【0125】
血液処理セッションが終了した直後に本発明に係る方法が実行され得るので、それは単純かつ容易に実行可能であり、技術的に複雑な、時間および/またはコストが非常にかかるステップを何ら必要としない。
【0126】
本発明に係る方法は、有利に好ましくは、血液処理において使用されるかまたはいずれにしても存在する置換液を用いて、または例えば等張食塩液、例えば0.9%のNaCl溶液のような、血液処理において使用されるかまたはいずれにしても存在する液体を用いて、実行され得る。これは次にコストと時間の削減に有利に寄与する。
【0127】
さらに、本発明に係る方法は、体外血液回路の動脈区間から、および特に動脈接続針からの血液の除去および患者の血管系への返血を可能にし得る。動脈接続針中に存在する血液が逆行して押し出される先行技術の再注入方法におけるステップは、例えば食塩液で充填されたシリンジの助けで、こうして有利に回避され得る。
【0128】
よって本発明に係る方法は、体外血液回路の導管内部に存在する血液を、患者のための血液処理に使用した後に、本質的に完全に回収するという利点を提供し得る。
【0129】
本発明に係る処置は、空にする間に患者の血管系に空気が入らないことを確実にし得る。さらに本方法のいくつかの実施形態では、体外血液回路から血液を抜くのを妨げることになる発泡が、体外血液回路内に存在する血液フィルタの領域に生じることはない。しかしながら、血液フィルタ内または体外血液回路に残っている血液は汚染リスクの性質がある。
【0130】
下記に本発明に係る方法が、以下が適用される添付図面を参照して、その好ましい実施形態に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0131】
図1】既知の医療用処理デバイスによる先行技術からの方法の実行を概略的に簡略化して示す図。
図2】本発明に係る方法を実行している間の医療用処理装置の例示的な実施形態を概略的に簡略化して示す図。
図3】既知の医療用処理デバイスによって実行される先行技術からのさらなる方法を示す図。
図4】NaClを用いた従来の返血と本発明に係る方法による返血との比較を示す図。
【0132】
血液処理セッションの完了後、体外血液回路内の(および特に血液フィルタ内の)血液または血液混合物が典型的には患者に戻される。これは通常、体外血液回路に置換液を導入することによって行われ、それによって中に存在する血液は下流に移動され、こうして、例えば静脈患者接続部を通して患者に再注入される。
【0133】
通常、先行技術では、血液から置換液への拡散移行領域が発達し、そこで血液が置換液と混合される。よって血液フィルタの後(ポストフィルタ)の流れ方向に存在する血液/置換液混合物は、置換液を含有することも多い。望ましくないことに、静脈患者接続部までずっと体外血液回路をすすぐためには多くの置換液が必要である。この置換液の一部はさらに患者に供給され、これは通常、特に血液処理の完了後の透析患者にとって望ましくない。
【0134】
処理セッションの完了後に患者の血液処理に使用された血液フィルタ19から血液および/または血液混合物を除去するための、図1の従来の方法および図2の本発明に係る方法が、例示的な実施形態においてそれぞれ例示される。ここで、同時再注入(オンライン閉回路とも称される)および再注入の従来の量の半分(例えば約200ml)を運搬した後の残留血液分布を各々が有する1つの例が、スナップショットで概略的に示される。
【0135】
図1は、体外血液回路1を示しており、これは患者の血管系(図示せず)へのダブルニードルアクセスを介して接続される、または接続可能である。血液回路1は、血液回路1の区間または血液カセット2上に任意選択で配設される。血液回路1は血液処理装置4に接続されている。血液処理装置4を制御または調整することは、制御または調整ユニット29によって実行され得る。
【0136】
体外血液回路1は、動脈区間9または動脈患者ラインもしくは血液ライン9の動脈患者ホースチューブ6および動脈接続針5(アクセスデバイスの一例として)を備える。体外血液回路1はさらに、静脈区間23または静脈患者ラインもしくは血液ライン23の静脈患者チューブクランプ7および接続針27(さらなるまたは第2のアクセスデバイスの一例として)を備える。
【0137】
血液ポンプ11が動脈区間9に設けられており、置換液ポンプ17が置換液ライン17aに接続されている。置換液ライン17aは、ここでは接続されていないように示されているが、好ましくは自動および任意選択の置換液ポート18を介して置換液供給源に接続され得る。置換液ポンプ17によって、置換液は、関連付けられたライン13または14を通した前希釈または後希釈を介してライン区間に、例えば体外血液回路1の動脈区間9に、または(血液チャンバ19aと任意選択のシングルニードルチャンバ36との間の)静脈区間23aに導入され得る。
【0138】
血液フィルタ19が血液回路1に設けられている。それは、動脈区間9および静脈区間23に接続されている血液チャンバ19aを備える。血液フィルタ19の透析液チャンバ19bは、透析液チャンバ19bに通じる新しい透析液注入口ライン31a、および透析液チャンバ19bから遠ざかる使用済み透析液排出口ライン31bに接続されている。
【0139】
新しい透析液注入口ライン31aは、任意選択でバルブV24を備え、それによって新しい透析液注入口ライン31a内の流れが停止され得る。使用済み透析液排出口ライン31bは、任意選択でバルブV25を備え、それによって使用済み透析液排出口ライン31b内の流れが停止され得る。
【0140】
新しい透析液注入口ライン31aはさらに、任意選択でデバイスの別の内部バルブによって圧縮空気源26(ここでは示されていないが図3参照)に接続されている。圧縮空気源26は、処理装置4の一部または一構成要素として設けられ得るか、またはそれとは別個の部分であり得る。圧力センサ37(ここでは示されていないが図3を参照)は、圧縮空気源26の下流に設けられ得る。
【0141】
図1の配置は、空気および/または血液を検出するための任意選択の動脈検出器15を包含する。図1の配置はさらに、例えば図1および図2に示されるポイントに、1つ、2つ、またはそれ以上の圧力センサ33a、33b、33cを包含する。
【0142】
処理後に血液フィルタ19の血液チャンバ19aから血液を抜くために、添加箇所13を通って、置換液ポンプ17によって、図1に示されるように、置換液が血液回路1および血液チャンバ19aに前希釈で添加され得る。
【0143】
代替的または追加的に、置換液は、置換液ポンプ17を操作することなく、または置換液ポンプ17の単独操作(exclusive operation)によってではなくむしろ、血液ポンプ11を(単独でまたは追加的に)操作することによって導入され得る。この目的のために、例えば動脈患者ホースクランプ6が閉じられ、置換液が置換液用の貯蔵容器から供給ライン8を介して体外血液回路1に導入される。
【0144】
こうして生成された置換液/血液内容物は、血液ポンプ11および/または置換液ポンプ17を操作することによって体外血液回路1の導管内部に沿って運搬される。該置換液/血液内容物は、血液フィルタ19から、静脈接続針27に向かう方向に体外血液回路1から血液を除去するために、体外血液回路1の血液フィルタ19、静脈空気分離チャンバ21、および静脈区間23を通って押し出されるかまたは運搬される。
【0145】
静脈置換液・血液検出器25が、体外血液回路1の導管内部の所定位置において置換液の存在を検出する検出デバイスの一例として、体外血液回路1の静脈区間23に任意選択で配置される。血液ポンプ11および/または置換液ポンプ17は、体外血液回路1の静脈区間23に存在していた血液がそれから除去されて静脈接続針27を介して患者の血管系に戻されるまで、および/または置換液の存在(または導管内部内のヘマトクリット値の、例えば2%までの減少)が静脈置換液/血液検出器25において導管内部内に検出されるまで、置換液/血液内容物を任意選択で運搬し続ける。この時点ですべてのポンプの運搬動作は停止され得る。光信号および/または音響信号が出力され得る。
【0146】
図1は、血液チューブセット1から血液を除去するのに従来必要とされる再注入流体の量の半分を運搬した後の残留血液の分布を示す。静脈置換液/血液検出器25におけるヘマトクリット値HKTは、図1に表される時点で、血液処理方法の完了直前に体外血液回路1に存在する本来のHKT値の100%に達する。よって静脈置換液/血液検出器25におけるヘマトクリット値HKTは、血液処理方法の完了直前の体外血液回路1では本来のHKT値である。それゆえヘマトクリット値HKTは、静脈置換液/血液検出器25において「HKT100%」として図1に示されている。図1および図2のHKTに関するパーセント値のすべてが相対値であることを知っておくことが重要である。血液チューブ回路1の示されたポイントで示されたパーセント値は、それらのポイントで測定可能なHKTが処理の終了時に導管内部に存在するHKTに対して表す分率を示す。
【0147】
体外血液回路1内に存在する血液のヘマトクリット値HKTは、図1の様々なポイントにおいてHKTおよびパーセント値を用いて説明される。パーセントは、血液処理方法の完了直前に体外血液回路1に存在する本来のヘマトクリット値に対する、示されたポイントでの現在のヘマトクリット値HKTの関係を表す。例えば体外血液回路1内のヘマトクリット値HKTが血液処理の完了前に42%である場合、「HKT100%」は、ヘマトクリット値HKTがまだ42%であることを意味する。
【0148】
前希釈のために添加箇所13を通して置換液ポンプ17を使用して置換液を注入することによって、体外血液回路1内の混合物が、特に血液フィルタ19内での置換液から血液への移行時に出現または発達し、その混合物は測定可能なHKTに影響を及ぼす。
【0149】
図1において、血液フィルタ19の血液チャンバ19aの入口におけるヘマトクリット値HKTは、本来の値の2%である。ヘマトクリット値HKTは、血液チャンバ19aにわたって―最初は10%まで増加し、次いで血液チャンバ19aの静脈端部では本来の測定可能な値の20%まで増加する。静脈区間23では、ヘマトクリット値HKTはさらに、初めに血液フィルタ19の直後では最初40%まで、次いで区間23aで60%まで、空気分離チャンバ21の後では80%まで、静脈置換液/血液検出器25において最大100%まで増加する(図1および図2の両方において、示されたパーセントは、上記のように本来のヘマトクリット値HKTに対する現在存在するヘマトクリット値HKTの比を指すので、よって相対値である)。先行技術では置換液と血液の混合がより長い距離にわたって行われ、その結果、相当量の置換液が、血液の完全な再注入またはほぼ完全な再注入を達成するために注入されなければならないことが今や明らかである。
【0150】
図2のスナップショットに例示されている本発明に係る方法は、―ちょうど図1のように―従来では再注入される流体の半分を運搬した後の残留血液分布を示す。図1とは異なり、透析液チャンバ19b内では圧力がより低く、血液チャンバ19a内では圧力がより高い、圧力差が血液フィルタ19内にある。圧力差は、例えば、限外濾過ポンプ(UFポンプ40、図示せず、図3参照)によってバルブV25を通して透析液チャンバ19bから液体を除去することによって、例えば、血液フィルタ19の透析液チャンバ19b内に絶対的または相対的な陰圧を発生させることによってもたらされ得る。例えば置換液ポンプ17および/または血液ポンプ11によって同時に新しい透析液が血液チャンバ19aに導入される場合、圧力差は、例えば静脈区間23aにおける血液チャンバ19aの下流の流動抵抗を通して代替的または追加的に発生され得る。
【0151】
圧力差によって、体外血液回路1から液体が除去される(血液フィルタ19内の矢印参照)。これは、体外血液回路1内のヘマトクリット値HKTが、一般には返血中にまたは時として図1よりも高いことを意味する。これは血液フィルタ19で見られ、その入口で、ちょうど図1のように、(本来の値の)2%のヘマトクリット値HKTが観察され得る。フィルタ19の出口では、ヘマトクリット値HKTは、図1に示される方法における(それぞれ本来の値の)20%と比較して既に50%である。これは、血液フィルタ19内の血液/置換液混合物から水分が除去されたということによる。
【0152】
ヘマトクリット値HKTが40%、60%、および80%である図1のポイントでは、それは図2では70%、80%、または90%である。よって血液から置換液への移行は、図1の従来の方法におけるものよりも急である。静脈患者接続部までずっと洗い流すためにあまり置換液が必要とされない。さらに、フィルタ19の下流の血液/置換液混合物は比較的あまり置換液を含有しない。
【0153】
図3は、先行技術から既知の返血中の例示的なデバイス挙動を示す。動脈区間9に置かれた生理食塩液を含むバッグ50は、血液が体外血液回路1からそれと共に移動される置換液用の供給源である。図1および図2とは異なり、置換液は、血液ポンプ11の助けで血液フィルタ19に運搬される。
【0154】
この目的のために、患者の血液はそれ以上血液フィルタ19内で洗浄されず、血液フィルタ19の透析液チャンバ19bおよび膜にはそれ以上灌流されず、その結果、患者の血液中の水分(血漿)の量はそれ以上低減されない。したがって、血液ポンプ11の流量は患者に到達する(流量は、例えば30~200ml/分である)。バルブV24およびV25は両方とも閉じられ、UFポンプ40はスイッチオフされる。動脈血液ポンプ11は、NaCl溶液を体外血液回路1に運搬する。ここで、流量は、例えば30~200ml/分である。
【0155】
本発明に係る例示的な実施形態における返血中のデバイス挙動も、図3を参照して例示され得る。透析液チャンバ19bには、一実施形態では、任意選択でそれ以上灌流されず、すなわち、透析液チャンバに―膜を通る以外の―流れはない。患者の血液の水分(血漿分画)の量はさらに低減される。ここで、バルブV24は閉じられ、バルブV25が開かれる。UFポンプ40がスイッチオンされ、透析液チャンバ19b内に陰圧を発生させるために、例えば1~80ml/分でポンピングし、それによって膜を介して血液チャンバ19aから水分を除去する。動脈血液ポンプ11はここで、例えば30~280ml/分の流量で、例えばNaCl溶液を動脈区間9におけるバッグから体外血液回路1に運搬する。
【0156】
フィルタ19の膜を介した処理装置4への体外血液回路1内の流量は、この例ではUFポンプ40の運搬量と同等である。患者に到達する流量は、この例では、動脈ポンプによって運搬される流量、引くことの、UFポンプによって運搬される流量である。患者の血管系へ入る流量(動脈流量と静脈流量の合計)は、ここでは例えば30~200ml/分である。
【0157】
図4は、先行技術における返血と本発明に係る方法の例示的な実施形態との比較を示す。
【0158】
この例では、本発明に係る方法は、置換液の必要とされる量を通常の390mlからわずか300mlに有利に低減する。
【0159】
実線(線1)は、血液フィルタ19の入口に存在する流量を表す。この流量は、任意選択で、先行技術および本発明に係る例示的な方法の両方において返血全体の間変化せず、100ml/分であり得る。
【0160】
先行技術では、細い短い破線(線2)に見られるように、返血中のUFポンプの運搬量は0ml/分である。フィルタ膜を介した流れはない。それゆえ血液フィルタ19の入口における流量(線1)は、ここではフィルタ19の出口における流量と同じである。
【0161】
先行技術では、これは、静脈患者接続部(線5、長い破線)において、このケースでは静脈置換液/血液検出器25において、絶対ヘマトクリット値HKTをもたらし、それは返血の開始時40%である。置換液による血液の所望の移動により、ヘマトクリット値HKTは、該ヘマトクリット値が、そこで例えば2%の所定の値に達するまで、返血中に検出器25において減少する。先行技術では、この2%の値に達するために、390mlの生理食塩液が体外血液回路に導入されなければならない(図4の図表のx軸参照)。
【0162】
図4に例示的に例示される本発明に係る方法の実施形態では、フィルタ出口(線4、一点鎖線)における流量は、UFポンプ40が透析液チャンバ19bから水分を除去するので、フィルタ入口(線1)における流量よりも低い。UFポンプ40の流量は、太い短い破線(線3)で示される。ここで、UFポンプ40の流量が、返血を介してまたはその間に増加し(線3)、流量がフィルタ出口で減少するという結果を伴う(線4)ことが明らかである。UFポンプ40によって血液フィルタ19において血液/置換液混合物から水分が除去され、それは静脈患者接続部27におけるヘマトクリット値HKTが既により早く、すなわちわずか300mlの置換液を注入した後に、所定の値(例えば2%)まで減少することを引き起こす(線6、点線)。よって、体外血液回路1に含まれる血液量のほぼ完全な再注入のために、本発明によれば、先行技術におけるものよりも少ない置換液が注入される。
【0163】
本発明は、例示のためだけに与えられた上述の実施形態に限定されない。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
血液処理セッションの完了後に患者の血液処理に使用された、血液フィルタを備える体外血液回路から血液および/または血液混合物を除去するための方法であって、
前記血液フィルタは、間に膜が配置された血液チャンバおよび透析液チャンバを備え、血液処理の目的で、前記血液チャンバは、前記血液チャンバに通じる動脈血ラインおよび前記血液チャンバから遠ざかる静脈血ラインに、ならびに前記透析液チャンバに通じる透析注入口ラインおよび前記透析液チャンバから遠ざかる透析液排出口ラインに接続され、前記方法は、
・置換液を前記動脈血ラインに導入することによって前記血液チャンバから前記血液および/または前記血液混合物を移動することと、
・前記透析液チャンバ内のより低い圧力および前記血液チャンバ内のより高い圧力を伴う圧力差を前記血液フィルタ内に発生することと
を行うステップを包含する、方法。
[C2]
C1に記載の方法を実行している間、血液は前記患者から抜き取られない、C1に記載の方法。
[C3]
前記圧力差は、少なくとも1つのポンプ、特に限外濾過ポンプ、置換液ポンプ、および/または血液ポンプによって、少なくとも部分的に発生される、C1または2に記載の方法。
[C4]
前記限外濾過ポンプは、前記置換液ポンプおよび/または前記血液ポンプと同時に少なくとも一時的に起動される、C3に記載の方法。
[C5]
前記血液ポンプの流量(Q BP )および/または前記置換液ポンプの流量(Q substituate_pump )は、30~280ml/分である、C1~4のいずれか一項に記載の方法。
[C6]
血液ポンプに対する限外濾過ポンプの流量比(Q UF /Q BP )および/または置換液ポンプに対する限外濾過ポンプの流量比(Q UF /Q substituate_pump )は、0.01~0.8の値の範囲にある、C1~5のいずれか一項に記載の方法。
[C7]
前記比(Q UF /Q BP )および/または前記比(Q UF /Q substituate_pump )は、それまでにまたは前記方法の開始から運搬された前記置換液の量に依存して前記方法の実行中増加する、C1~6のいずれか一項に記載の方法。
[C8]
前記比(Q UF /Q BP )および/または前記比(Q UF /Q substituate_pump )は、前記静脈血ライン内のヘマトクリット値(HKT)を所定の値に制御または調整するために前記方法の実行中に変更される、C1~7のいずれか一項に記載の方法。
[C9]
前記比(Q UF /Q BP )および/または前記比(Q UF /Q substituate_pump )は、検出デバイスによって、特に静脈置換液/血液検出器によって決定される、前記静脈血ライン内の前記ヘマトクリット値(HKT)に依存して調整される、C1~8のいずれか一項に記載の方法。
[C10]
C1~9のいずれか一項に記載の方法の実行を、医療用血液処理装置と相互動作して制御または調整するために構成された、制御および/または調整デバイス。
[C11]
医療用処理装置であって、
・任意選択で、導管内部を有する少なくとも体外血液回路と、
・前記体外血液回路の前記導管内部内の血液を運搬するための、前記体外血液回路にまたは前記体外血液回路内に配置された少なくとも血液ポンプと
を有し、
・C10に記載の少なくとも制御および/または調整ユニット
によって特徴付けられる、医療用処理装置。
[C12]
前記透析液チャンバ内のより低い圧力および前記血液チャンバ内のより高い圧力を伴う圧力差を前記血液フィルタ内に発生するための少なくとも1つのポンプを備えるか、または接続され、好ましくは流体連通している、C11に記載の医療用処理装置。
[C13]
デジタル記憶媒体、特にフロッピーディスク、CDまたはDVDまたはEPROMであって、C1~9のいずれか一項に記載の発明に係る方法の機械により誘導されるステップが促されるように、プログラマブルコンピュータシステムと相互動作するために構成またはプログラミングされた、電子的に読取り可能な制御信号を有する、デジタル記憶媒体。
[C14]
コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で動作するとき、C1~9のいずれか一項に記載の発明に係る方法の機械により誘導されるステップを促すための機械読取り可能媒体に保存されたプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品。
[C15]
コンピュータプログラムがコンピュータ上で動作するとき、C1~9のいずれか一項に記載の発明に係る方法の機械により誘導されるステップを促すためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0164】
1…体外血液回路、2…血液カセット、4…処理装置、血液処理装置、5…アクセスデバイス、例えば動脈接続針、6…動脈患者ホースクランプ、7…静脈患者ホースクランプ、8…供給ライン、9…動脈区間または動脈血ラインまたは動脈患者ライン、11…血液ポンプ、13…置換液用の添加箇所(前希釈)、14…置換液用の添加箇所(後希釈)、15…動脈空気/血液検出器、17…第2の運搬デバイス、例えば置換液ポンプ、17a…置換液ライン、18…自動置換液ポート、19…血液フィルタ、フィルタ、19a…血液チャンバ、19b…透析液チャンバ、21…静脈空気分離チャンバ、23…静脈区間または静脈血ライン、23a…静脈区間、25…静脈置換液/血液検出器、26…圧縮空気源、27…アクセスデバイス、例えば静脈接続針、静脈患者接続部、29…制御または調整デバイス、31a…新しい透析液注入口ライン、31b…使用済み透析液排出口ライン、33a、33b、33c…圧力センサ、35…シングルニードルバルブ、36…シングルニードルチャンバ、37…圧力センサ、40…限外濾過ポンプ(UFポンプ)、V24…バルブ、V25…バルブ、50…バッグ、HKT…ヘマトクリット値。
図1
図2
図3
図4