(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】選択的触媒還元システムのための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
F01N3/08 B
(21)【出願番号】P 2019530768
(86)(22)【出願日】2017-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2017082183
(87)【国際公開番号】W WO2018114421
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-09-18
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516323231
【氏名又は名称】パーキンス エンジンズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PERKINS ENGINES COMPANY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】レオ シェード
(72)【発明者】
【氏名】アレクシス エデン
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド シルバー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ステフェン
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0151339(US,A1)
【文献】特開2016-121678(JP,A)
【文献】特開2013-213466(JP,A)
【文献】特開2016-094937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N3/00,3/02,3/04-3/38,9/00-11/00
B01D53/73,53/86-53/90,53/94,53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解触媒を備える選択的触媒還元システムのための方法であって:
少なくとも1組の測定データを受信するステップ;
前記少なくとも1組の測定データに基づいて前記選択的触媒還元システムの第1,第2及び第3の特性セットを導き出すステップであって,
前記第1の特性セットが,前記選択的触媒還元システムにおける構成部品の状態に関連し,
前記第2の特性セットが,前記選択的触媒還元システムの出力に関連し,
前記第3の特性セットが,モデルの不確実性,センサノイズ,及び/又は前記選択的触媒還元システムに作用する外乱に起因する前記選択的触媒還元システムの入力,状態又は出力における,モデル化されない,又は測定されないバイアス又はスケーリングファクタに関連する,当該ステップ;並びに
前記導き出された前記第1,第2及び第3の特性セットを使用して,前記選択的触媒還元システムを制御するステップ;を備え:
前記第1の特性セットは,各々が前記加水分解触媒における複数の内部状態の1つを記述する複数の第1のパラメータを含み;
前記導き出すステップは,非線形アルゴリズムのセットを使用して前記第1,第2及び第3の特性セットを導き出すステップを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載された方法であって,前記第1の特性セットは:前記加水分解触媒に蓄積されているイソシアン酸のレベル;前記加水分解触媒に蓄積されているアンモニアのレベル;前記加水分解触媒に蓄積されているDEFのレベル;前記加水分解触媒に蓄積されている固体尿素のレベル;前記加水分解触媒に蓄積されている水のレベル;前記加水分解触媒の内部温度;又は前記レベルの少なくとも1つのプロファイル/分布パラメータ;以上の少なくとも1つを含む,方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された方法であって,前記第2の特性セットは,前記加水分解触媒の出力に関連する,方法。
【請求項4】
請求項3に記載された方法であって,前記第2の特性セットは,尿素の量;イソシアン酸の量;アンモニアの量;出力温度;又は前記量又は温度の少なくとも1つのプロファイル/分布ベクトル;以上の少なくとも1つを含む,方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載された方法であって,前記非線形アルゴリズムのセットは:無香カルマンフィルタ;拡張カルマンフィルタ;ムービングホライズン推定器;又は粒子フィルタ;以上の少なくとも1つを含む,方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載された方法であって,前記少なくとも1組の測定データは:DEF投与率;入口温度;入口質量流量;又は少なくとも1種の化合物の入口濃度;以上の少なくとも1つを含む,方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載された方法であって,前記少なくとも1組の測定データは:出口温度;又は少なくとも1種の化合物の出口濃度;以上の少なくとも1つを含む,方法。
【請求項8】
排出通路内で排出ガスを処理するための選択的触媒還元システムであって:
加水分解触媒;
前記加水分解触媒にDEFを噴射するためのDEF投与ユニット;
請求項1~7の何れか一項に記載された方法を実施するためのコントローラ;並びに,
前記コントローラに接続された複数のセンサ;
を備える,選択的触媒還元システム。
【請求項9】
請求項1~7の何れか一項に記載された方法を実施するために,
コンピュータ読み取り可能な指示の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム
。
【請求項10】
請求項
8に記載された選択的触媒還元システムを備える,エンジン用の排出装置。
【請求項11】
請求項
8に記載された選択的触媒還元システムを備えるエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ディーゼルエンジンの排出ガスを処理するための選択的触媒還元(SCR)システムに関する。特に,本発明は,SCRシステムの効率を改善させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的触媒還元(SCR)システムは既知であり,一般的にディーゼルエンジンの排出系に含まれて該エンジンの排出ガス処理に供されている。このようなシステムは,エンジンの排出通路内を流れる排出ガスにディーゼル排出流体(DEF)を導入するものである。DEFは尿素を含み,その尿素は排出通路内で加水分解及び熱分解することによりアンモニアを生成する。アンモニアはSCR触媒を通過し,その間に排出ガスと反応する。この場合,排出ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)は,排出系から大気中に放出される前に窒素に変換される。
【0003】
排出通路内にDEFを投与する多くのSCRシステムが提案されている。このようなシステムは,ときには「ウェット・スプレー」とも称されており,水性尿素のスプレーを排出ガス中に噴射して分解させることによりアンモニアを生成するものである。かかるシステムの一例は,特許文献1:米国特許出願公開第2008/307967号明細書に開示されている。特許文献1は,DEFが主排出通路の外側に配置された供給通路内で加水分解される配置を記載している。特に,DEFは加水分解触媒に投与され,アンモニアに加水分解される。そのアンモニアはSCR触媒の入口まで下流側に流れ,ここで反応してNOxを還元させる。一般的に,SCRシステムにより行われる既知の制御プロセス,例えば特許文献1に開示されるプロセスは,NOxをアンモニアにより還元させるべき場合に,DEFを加水分解リアクタに投与するものである。
【0004】
特許文献2:米国特許出願公開第2013/0186086号明細書は触媒システムを開示しており,このシステムは,尿素溶液をシステムに噴射する噴射手段の下流側に配置された加水分解触媒と,システムに噴射する尿素溶液の量を制御するコントローラとを含む。温度センサが,尿素噴射手段の近傍における排出ガスの温度を検出する。その温度情報に基づいて,制御ユニットは,排出ガスが尿素溶液量を気化させるに十分な高温であるか否かを決定する。
【0005】
SCRシステムにおける加水分解触媒にDEFを投与する場合,DEFは,ある条件下では加水分解触媒を冷却して尿素の熱分解,これに引き続くイソシアン酸の加水分解,並びにアンモニア及びイソシアン酸の脱離を減速させ,又は実質的に阻止する。このアンモニア放出量の抑制は,加水分解触媒の機能にラグ又は遅延を生じさせる。これにより,SCR触媒におけるアンモニア蓄積量に対して作用させ得る制御量や,NOx変換が制限される。更に,減速又は阻止された尿素の熱分解により排出通路内における尿素堆積が生じ,例えば排出ガス入口温度が上昇した場合におけるアンモニア・スリップに際して,未反応の尿素又はアンモニアが未処理状態のまま排出通路から排出される可能性がある。
【0006】
上述した問題に対処するために,最適化された投与戦略を講じることができる。しかしながら,そのような戦略を成功裏に講じるためには,加水分解触媒の内部状態,例えば内部温度及びNH3相当蓄積プロファイルに関する情報が必要とされる。既知のシステムにおいて典型的に使用されるような埋込型モデルでは,上記の最適化された制御戦略に必要とされる情報を提供するに十分な精度の内部温度プロファイルを決定し得ない恐れがある。
【0007】
本発明の課題は,少なくとも,上述した欠点のいくつかに対処することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2008/307967号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0186086号明細書
【発明の概要】
【0009】
第1の態様において,本発明は,加水分解触媒を備える選択的触媒還元システムのための方法を提供する。この方法は:
少なくとも1組の測定データを受信するステップ;
前記少なくとも1組の測定データに基づいて前記システムの第1,第2及び第3の特性セットを導き出すステップであって,
前記第1の特性セットが,前記触媒システムにおける構成部品の状態に関連し,
前記第2の特性セットが,前記触媒システムの出力に関連し,
前記第3の特性セットが,前記システムにおける入力状態又は出力バイアスに関連する,当該ステップ;並びに
前記導き出された第1,第2及び第3の特性セットを使用して,前記触媒システムを制御するステップ;を備える。
【0010】
第2の態様において,本発明は,排出通路内で排出ガスを処理するための選択的触媒還元システムを提供する。このシステムは:
加水分解触媒;
前記加水分解触媒にDEFを噴射するためのDEF投与ユニット;
請求項1~11の何れか一項に記載された方法を実施するためのコントローラ;並びに,
前記コントローラに接続された複数のセンサ;
を備える。
【0011】
第3の態様において,本発明は,上述した方法を実施するために,コンピュータ読み取り可能な指示の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムを提供する。
【0012】
第4の態様において,本発明は,上述した選択的触媒還元システムを備える,エンジン用の排出装置を提供する。
【0013】
第5の態様において,本発明は,上述した選択的触媒還元システムを備えるエンジンを提供する。
【0014】
本発明の更なる態様,特徴及び利点,並びに本発明の各種実施形態の構造及び機能は,添付図面を参照して以下に詳述する通りである。本発明が本明細書に記載する特定の実施形態に限定されるものでないことに留意されたい。そのような実施形態は,あくまでも例示にために開示されるものである。付加的な実施形態は,本明細書の教示に基づいて当業者にとって自明である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下,本発明の実施形態を,単なる例示として,添付図面を参照しながら記載する。なお,対応する参照符号は,対応する構成要素を表している。
【
図1】選択的触媒還元システムを示す概略図である。
【
図3】コントローラ用の例示的なプロセッサユニットのブロック線図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る例示的方法のフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る更なる例示的方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の特定の実施形態について詳細に説明するに先立ち,本発明を適用し得る環境を例示しておくことが有益である。
【0017】
図1は,例示的な選択的触媒還元(SCR)システム10を示す。このシステムは,車両のエンジン(図示せず)からの排出ガスを搬出する排出通路12内に配置される。初めに,排出ガスは既知形式のディーゼル酸化触媒(DOC,図示せず)を通過し,この触媒は,その触媒作用により排出ガス中の炭化水素,一酸化炭素及び窒素酸化物の酸化反応を生じさせて二酸化炭素,二酸化窒素及び水を生成する。
【0018】
DOCの下流側にはディーゼル排出流体(DEF)投与ユニット16が配置され,これは,排出通路12内で加水分解触媒18にDEFを投与するように構成されている。DEF)投与ユニット及び加水分解触媒は,いずれも既知形式のものである。加水分解触媒の下流側にはSCR触媒20が配置され,これも既知形式のものである。システムは付加的な構成要素,例えばアンモニア・スリップ触媒又はディーゼル粒状物質フィルタを備えることができる。
【0019】
システムはコントローラ26を備え,このコントローラは,DEF投与ユニットがDEFを加水分解触媒に投与する投与率を制御するように構成されている。
【0020】
システムは,コントローラに接続される複数のセンサを更に含む。特に,加水分解触媒の上流側には窒素酸化物(NOx)センサ28及び入口温度センサ30が配置されている。加水分解触媒及びSCR触媒の間に加水分解触媒温度センサ32が配置され,NOxセンサ34がSCR触媒の下流側に配置されている。上記のセンサは,もっぱら例示として列挙したものであり,システムは付加的又は代替的なセンサを備えることもできる。これら各種のセンサは,コントローラに設けられている1つ以上の入力及び/又は出力に接続することができる。作動の間,コントローラは,部分的にはシステムにおける種々のセンサから受信した測定データに基づいてDEF投与率を調整する。
【0021】
触媒システムは,単一のコントローラ26のみを有する構成として記載したが,原則的には複数の相互接続されたコントローラを使用することも可能である。代替的に,コントローラは,複数の個別的なサブコントローラ26a,26bを備えることができる。各サブコントローラは,特定の操作を行うことができる。例えば,第1のサブコントローラ26aはSCR触媒20の性能に関連する操作を行うことができ,第2のサブコントローラ26bは,加水分解触媒18の性能に関連する操作を行うことができる。
【0022】
次に,例えば
図1のシステムにおいて使用し得る例示的なコントローラにつき,
図2を参照して説明する。コントローラ226は,上流側のセンサが接続される第1の入力240と,下流側のセンサが接続される第2の入力242とを備える。第1及び第2の入力は単なる例示を目的とするものであり,コントローラがセンサからの測定データを受信するために適当な任意の数及び形式の入力を備え得ることは,言うまでもない。コントローラは,第1の出力244及び第2の出力246を備えるが,これらの機能は後述するとおりである。コントローラは,受信した測定データに基づいてDEF投与率を決定するためのプロセッサユニット248を更に備える。その決定は,プロセッサユニットに組み込まれた1つ又は複数のアルゴリズム又はモデル要素を使用して,任意の適当な態様で実行することができる。
【0023】
次に,例えば
図2に示すようなプロセッサユニットにおけるモデル化要素の実施例を,
図3を参照して説明する。この実施例は,あくまでも例示を目的とするに止まり,プロセッサユニットには付加的及び/又は代替的なモデル化要素を組み込むこともできる。
【0024】
プロセッサユニット348には,推定要素350が組み込まれている。推定要素は,1つ又は複数の演算を行うために使用するものであり,後述するように任意の適当な態様で実施し得るものである。推定器に加えて,触媒システムにおける1つ又は複数の要素の挙動を代表する1つ又は複数のモデルを組み込むこともできる。本実施例においては,推定要素に加えて,加水分解触媒モデル要素352と,センサモデル要素354とが向き込まれている。各モデル要素は,触媒システムにおける対応する物理的構成要素の挙動をモデル化するため,並びに作動の間に推定器に対して入力を与えるために使用されるものである。いくつかの実施例において,モデル要素は,作動の間に推定要素からの入力信号を受信して,演算精度を更に改善する構成とすることができる。
【0025】
加水分解触媒モデル要素は,任意の適当な態様で組み込むことができ,入力として任意の適当な数のパラメータを使用することができる。一実施例において,加水分解触媒モデルは,いずれも触媒の上流側における排出ガス状態及びDEF噴射品質に関連する測定値/計算値を入力とする。その入力は,限定されるものではないが:イソシアン酸(HNCO)の予想入口濃度;アンモニア(NH3)の予想入口濃度;DEFの予想入口濃度;水(H2O)の予想入口濃度;又は予想入口温度(Tin)を代表するデータである。これらのデータは,限定されるものではないが,システム内部における分布パラメータ状態,例えば;加水分解触媒の内部温度Tint;DEFのレベル;NH3のレベル;水(H2O)のレベル;固体尿素(CO(NH2)2)のレベル;又はイソシアン酸(HNCO)のレベル;を代表するデータ,並びにシステム出力,例えば,限定されるものではないが,HNCOの予想出力レベル;NH3の予想出力レベル;DEFの予想出力レベル;水(H2O)の予想出力レベル;又は予想出口温度(Tout);を代表するデータのそれぞれの変化を予測するために使用するものである。
【0026】
この実施例が単なる例示に過ぎず,他の実施例も想定し得ることは,言うまでもない。そのような実施例には,限定されるものではないが,ニューラルネットワークモデル(内部状態が物理的状態に対応せず,もっぱら演算目的で使用されるモデル),確率モデル(例えばカルマンフィルタにおいて使用されるモデル)又はその他の非線形モデルが含まれる。
【0027】
センサモデル要素は,システムにおける少なくとも1つのセンサの挙動をモデル化するために使用するものである。一実施例において,センサモデルは,複数の個別的なセンサモデル,例えば上流側NOxセンサモデル及び下流側NOxセンサモデルを含む。他の実施例において,センサモデルは,システムに配置される少なくとも1つの温度センサをモデル化する温度センサモデルを更に含む。特定の実施例において,温度センサモデルは,上流側温度センサモデル及び下流側温度センサモデルを含む。システムで使用される1つ又は複数のセンサの挙動及び特性をモデル化することにより,予測器の精度を向上することができる。
【0028】
各種の異なる作動条件下におけるセンサ及びモデルの統計的精度は,予測器アルゴリズムのパラメータとして特徴づけられ,かつ,提供される必要がある。
【0029】
上述したモデル要素に加えて,センサモデルは,付加的なモデル要素を含むことができる。いくつかの実施例において,数値的なセンサモデルは,相関除去要素を含む。例えば,物理的なNOxセンサからの検出器信号は,NOx(例えば,NO及び/又はNO2)と,他のガス及び成分(例えば,NH3)の両者からの寄与分を含む。NOxからの特定の寄与分を決定するためには,NOx他のガス又は成分との比を決定する必要がある。
【0030】
上記のモデルは単なる例示に過ぎず,限定を意図するものではない。プロセッサユニットは,付加的又は代替的なモデルを備えることができる。一実施例において,プロセッサユニットは,DOC触媒の少なくとも1つの挙動を苦実するDOCモデルを備える。
【産業上の地用可能性】
【0031】
次に,例示的な方法につき,
図4を参照して説明する。この例示的方法は,適当な装置,例えば
図1に示す触媒システムにより実施することができる。
【0032】
第1ステップ401において,少なくとも1組の測定データを受信する。この少なくとも1組の測定データは,システムに設けられている1つ又は複数のセンサから受信するものである。いくつかの実施例において,測定データは複数のセンサから受信する。一実施例においては,
図1に示すシステムの各センサから1組の測定データを受信する。
【0033】
上記1組の測定データは,任意の適当な態様で取得することができる。いくつかの実施例において,測定データは,触媒市捨て句の作動中に取得する。特定の実施例において,測定データは,連続的に,又は固定間隔をもって取得することができる。いくつかの実施例において,少なくとも1組の測定データは,事前に取得された測定データを付加的に含むことができる。例えば,触媒システムの前回の作動セッションの間に記録された測定データを使用することができる。更に他の実施例において,少なくとも1組の敷く艇データは,経時的又は統計的に導き出したデータ(例えば,他の触媒システムから導き出したもの)を付加的に含むことができる。
【0034】
第2ステップ402において,触媒システムの構成要素の状態に関連する第1の特性セット,触媒システムの出力に関連する第2の特性セット,並びにシステムのバイアル及びスケーリングファクタに関連する第2の特性セットを導き出す。
【0035】
第1の特性セットは,触媒システムにおける任意の構成要素に関連させることができる。いくつかの実施例において,第1の特性セットは,触媒システムにおける加水分解触媒の少なくとも1つの内部状態に関連する。そのような実施例において,第1の特性セットは,各々が加水分解触媒の複数の内部状態の1つを記述する複数の第1パラメータを含む。
【0036】
パラメータ値は,限定されるものではないが:加水分解触媒に蓄積されているイソシアン酸(HNCO)のレベル;加水分解触媒に蓄積されているアンモニア(NH3)のレベル;加水分解触媒に蓄積されているDEFのレベル;加水分解触媒に蓄積されている水(H2O)のレベル;加水分解触媒に蓄積されている固体尿素(CO(NH2)2)のレベル;加水分解触媒の内部温度(Tint);又は,前記レベルの少なくとも1つのプロファイル/分布パラメータベクトル;を含むことができる。
を含むことができる。
【0037】
第2の特性セットは,触媒システムにおける任意部分の出力に関連する。いくつかの実施例において,第2の特性セットは,触媒システムの全体的な出力に関連する。他の実施例において,第2の特性セットは,触媒システムの構成要素,例えば加水分解触媒の出力に関連する。
【0038】
第2の特性セットは,任意の数の出力関連パラメータを代表するデータを含むことができる。一実施例において,第2の特性セットは,限定されるものではないが:HNCOの予想出力レベル;NH3の予想出力レベル;DEFの予想出力レベル;水(H2O)の予想出力レベル;又は,市予想出力温度(Tout);を代表するデータを含む。
【0039】
第3の特性セットは,モデルの不確実性,センサノイズ,及び/又はシステムに作用する外乱に起因するシステムの入力,状態又は出力における,モデル化されない,又は測定されないバイアス/スケーリングファクタを代表させるために使用することができる。これらのバイアス/スケーリングファクタは,付加的な代表的状態又はシステムに作用する入力/出力外乱として代表させることができ,従って,第1又は第2の特性,あるいはシステムに付加される追加的特徴により完全に代表されるものと仮定される。
【0040】
第3ステップ403において,導き出された第1,第2及び第3の特性セットを使用して触媒システムを制御する。いくつかの実施例において,第1,第2及び第3の特性セットを,触媒システムのパラメータを制御するための1つ又は複数の制御アルゴリズム及び/又は制御ユニットにおいて使用する。
【0041】
次に,上述した方法における導き出しステップを実行するための例示的な方法につき,
図5を参照して説明する。以下に記載する方法は,単なる例示に過ぎず,代替的な方法も原則的には同等に使用され得ることは,言うまでもない。
【0042】
第1ステップ501において,複数のシグマ点を生成する。シグマ点は,典型的な様式の,いわゆる無香カルマンフィルタ(UKF)を使用し,モデル及びセンサの精度に関する統計的な知見,及び/又は過去に予測した少なくとも1つのシステム状態に基づいて生成するものである。
【0043】
第2ステップ502において,加水分解触媒のモデルについて1つ又は複数の評価を行う。本実施例において,生成した複数のシグマ点の各々につき,予測出力を導き出す。更に,生成した複数のシグマ点の各々につき,加水分解触媒の想定内部状態を導き出す。
【0044】
第3ステップ503において,複数のシグマ点の各々について,予測出力の平均値を導き出す。更に,各シグマ点について,想定内部状態の平均値を導き出す。
【0045】
第4ステップ504において,想定内部状態及び予測出力につき,複数の共分散を計算する。
【0046】
第5ステップ505において,想定内部状態及び予測出力の双方につき,最適なオブザーバゲインを計算する。
【0047】
第6ステップ506において,結果的に得られる加水分解触媒の想定内部状態及び対応する共分散を:オブザーバゲイン,測定データ及び想定内部状態の少なくとも1つに基づいて導き出す。
【0048】
シグマ点及び想定内部状態は,上記ステップのうち何れのステップにおいても,又は各ステップにおいて,予測アルゴリズムの安定性を維持するために適当なレベル内に収める必要があり得る。更に,適当な状態関数(例えば,対数関数)を予測することにより,予測性能を向上することができる。選択された状態/軸線方向プロファイルの数は,アルゴリズムの計算負荷を支配するものであるため,予測精度を最大化すると共に実用可能とするためには入念に選択する必要がある。
【0049】
導き出された値は,適当な態様で使用することができる。幾つかの実施例において,導き出された値は,プロセッサユニットにより実行される他の数値方法の入力として,例えば1つ又は複数のモデル要素についての入力として使用することができる。他の実施例において,導き出された値は,メモリに蓄積し,及び/又は分析のために中央プロセッサユニットに送信することができる。
【0050】
以上の記載は,単なる例示を目的とするものであって,限定的ではない点に留意されたい。すなわち,以下に記載する本発明の技術的範囲を逸脱することなく,本発明に修正を加え得ることは,当業者には明白である。