(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】慢性疼痛および神経障害性疼痛を治療するためのD-エナンチオマーペプチド
(51)【国際特許分類】
A61K 38/10 20060101AFI20220920BHJP
A61K 47/51 20170101ALI20220920BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220920BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220920BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20220920BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
A61K38/10
A61K47/51
A61K38/16
A61P25/04
A61P29/02
C07K7/08 ZNA
(21)【出願番号】P 2019534338
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2017084199
(87)【国際公開番号】W WO2018115341
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-30
(31)【優先権主張番号】102016125645.5
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522037931
【氏名又は名称】プリアヴォイド ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Priavoid GmbH
【住所又は居所原語表記】Theodor-Heuss-Strasse 179, 52428 Julich, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ディーター ヴィルボルト
(72)【発明者】
【氏名】ダークマー ユアゲンス
(72)【発明者】
【氏名】ジャニーヌ クッチェ
(72)【発明者】
【氏名】グスタヴォ アドルフォ グズマン カストロ
(72)【発明者】
【氏名】パトリシア イダルゴ ヒメネス
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0083334(US,A1)
【文献】国際公開第2015/043567(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/150415(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RD2(配列番号1)、D3(配列番号2)、前記RD2もしくは前記D3と少なくとも90%の同一性を有するホモログ、前記RD2もしくは前記D3の環化ペプチドまたはアミド化ペプチド、ならびにRD2D3、D3RD2、D3D3およびRD2RD2からなる群から選択されるダイマーからなる群から選択されるペプチドを含有する、鎮痛剤として、または疼痛治療において使用するための組成物。
【請求項2】
RD2(配列番号1)、D3(配列番号2)、前記RD2もしくは前記D3と少なくとも90%の同一性を有するホモログ、前記RD2もしくは前記D3の環化ペプチドまたはアミド化ペプチド、ならびにRD2D3、D3RD2、D3D3およびRD2RD2からなる群から選択されるダイマーからなる群から選択されるペプチドを含有する、慢性疼痛の治療において使用するための組成物。
【請求項3】
RD2(配列番号1)、D3(配列番号2)、前記RD2もしくは前記D3と少なくとも90%の同一性を有するホモログ、前記RD2もしくは前記D3の環化ペプチドまたはアミド化ペプチド、ならびにRD2D3、D3RD2、D3D3およびRD2RD2からなる群から選択されるダイマーからなる群から選択されるペプチドを含有する、神経障害性疼痛の治療において使用するための組成物。
【請求項4】
RD2(配列番号1)、D3(配列番号2)、前記RD2もしくは前記D3と少なくとも90%の同一性を有するホモログ、前記RD2もしくは前記D3の環化ペプチドまたはアミド化ペプチド、ならびにRD2D3、D3RD2、D3D3およびRD2RD2からなる群から選択されるダイマーからなる群から選択されるペプチドを含有する、神経細胞発現性N型カルシウムチャネル(NCC)を阻害するための組成物。
【請求項5】
前記ペプチドが
、D-エナンチオマーからなることを特徴とする、請求項1から
4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
体重1キロ当たり1マイクログラム~1グラムの投与において使用するための、請求項1から
4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
経腸投与、経静脈投与、皮下投与、腹腔内投与、鼻腔内投与または経口投
与の、請求項1から
4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
N型NCCに対して、1ナノモーラー~1ミリモーラーのIC50値を特徴とする、請求項1から
4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
RD2(配列番号1)、D3(配列番号2)、前記RD2もしくは前記D3と少なくとも90%の同一性を有するホモログ、前記RD2もしくは前記D3の環化ペプチドまたはアミド化ペプチド、ならびにRD2D3、D3RD2、D3D3およびRD2RD2からなる群から選択されるダイマーからなる群から選択されるペプチドが、さらなるアミノ酸、リンカー、スペーサ、官能基、および/または物質と結合していることを特徴とする、請求項1から
4までのいずれか1項記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2もしくはD3の誘導体からなるか、またはRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2もしくはD3の誘導体を含有する群から選択されるペプチド、ならびにRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2および/またはD3の誘導体を含有するか、またはRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2および/またはD3の誘導体からなるポリマーからなるか、あるいはそれらのペプチドならびにポリマーを含有する、鎮痛剤として使用するため、疼痛治療において使用するため、慢性疼痛および/または神経障害性疼痛の治療において使用するため、および/または神経細胞発現性(neuronal)N型カルシウムチャネル(NCC)を阻害するための組成物に関する。本発明は、さらに、対照と比べて神経伝達物質の放出を低下させるための方法、および前記で定義した組成物を使用しながらN型NCCを阻害するための方法に関する。
【0002】
ドイツ疼痛研究会(Deutsche Schmerzgesellschaft)の数字は、ドイツでは1200万人を超える人が、長引く慢性疼痛および/または神経障害性疼痛に悩んでいることを裏付けている。神経障害性疼痛は、末梢神経系または中枢神経系における求心系の損傷または疾患後に生じる。薬物療法は、50~80%の疼痛軽減率で可能であるが、たいてい無痛状態には至り得ない。すべての薬物オプションにおいて、およそ20~40%の患者が治療に対して不十分にしか応答しないか(<30%の疼痛軽減、いわゆる非応答者)、または容認できない副作用に苦しむ。抗うつ薬(三環系/四環系抗うつ薬、選択的セロトニン/ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、長時間作用型オピオイド、神経細胞発現性ナトリウムチャネルに作用する抗てんかん薬(例えば、カルバマゼピン)、および局所治療薬(リドカインパッチ、高用量カプサイシンパッチ)の他に、神経細胞発現性カルシウムチャネルに作用する薬物療法、例えば、ガバペンチン、プレガバリン、およびジコノチド(Prialt(登録商標))が適用される。その際、ガバペンチンおよびプレガバリンは、P/Q型カルシウムチャネル特異的阻害薬であり、ジコノチドは、承認された唯一のN型カルシウムチャネル特異的阻害薬である。ジコノチドは、25個のアミノ酸からなる環状ペプチドであり、もともとはイモガイConus magusの毒からω-コノトキシンMVIIAとして単離された。
ジコノチドは、きわめて激しい痛みに苦しみ、かつ別のすべての治療オプションが成果を示さない患者において適用される。Prialt(登録商標)の承認は、1200名を超える患者を含めて行われた3つの第III相臨床試験の結果に基づいている。すべての試験において、ジコノチドは、プラシーボと比べて疼痛、とりわけ、癌疾患またはAIDSがもたらす重度の治療抵抗性慢性疼痛を良好に軽減することができた。とりわけ、ジコノチドの追加的な髄腔内投与により、必要とされるオピオイド量を減らすことができた。モルヒネと比べてジコノチドは望ましくない作用をあまり引き起こさない。
ただし、ジコノチドの髄腔内(i.th.)投与は、生命を脅かしかねない潜在的な重症感染、例えば、髄膜炎のリスクをはらむ。カテーテルに沿って生物が侵入することに起因する髄膜炎または不注意による注入システムの汚染が、特に外部システムを使用した、医薬品の髄腔内投与に関する公知の合併症である。さらに、ジコノチドは、88%の患者において、著しい中枢神経系副作用、例えば、めまい、吐き気、眼振、混乱、不安定歩行、記憶障害、霧視、頭痛、無力症、嘔吐、および意識朦朧を引き起こす。非常に手間がかかり、かつ危険を伴う投与方式および著しい副作用にもかかわらず、ジコノチドは、疼痛治療に使用されるが、なぜなら、ジコノチドは、例えば、腫瘍またはAIDSによって引き起こされる、モルヒネさえももはや緩和をもたらさない非常に激しい疼痛においても成果を示す、承認された唯一のN型カルシウムチャネル特異的阻害薬であるからである。
【0003】
本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することだった。特に、あまり副作用を有しておらず、それに応じて特異的かつ選択的にN型NCCを阻害し、L型NCCの機能には影響を及ぼさない組成物を提供することになる。提供される組成物は、簡単なやり方で、好ましくは経口投与により投与可能である。さらに、N型NCCチャネルの阻害は、持続的な疼痛非感受性および損傷を回避するためには、可逆性であるべきである。さらに、受容体生物の特異的代謝に左右されない投与を可能にするためには、ピコモーラー範囲を超えるIC50値が望ましい。ピコモーラー範囲またはそれ未満のIC50値では、有効成分のわずかな濃度変化がすでに大きな効果を示す。そのため、過少投与または過剰摂取が起こりやすく、それぞれ特異的代謝に依存する可能性があり、望ましくない副作用または長期的損傷をもたらしかねない。
さらなる課題は、血液脳関門の通過を保証する有効成分を含有する組成物を提供することだった。
さらなる課題は、その効果を標的部位であるN型NCCにおいて発揮する組成物の、安定した、経腸投与、経静脈投与、皮下投与、腹腔内投与、鼻腔内投与および/または経口投与を提供することだった。
【0004】
この課題は、一実施形態において、RD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2もしくはD3の誘導体からなるか、またはRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2もしくはD3の誘導体を含有する群から選択されるペプチド、ならびにRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログとRD2およびD3の誘導体を含有するか、またはRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログとRD2およびD3の誘導体からなるポリマーからなるか、あるいはそれらのペプチドならびにポリマーを含有する、鎮痛剤として使用するための組成物によって解決される。
【0005】
本発明のさらなる主題は、RD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2もしくはD3の誘導体からなるか、またはRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2もしくはD3の誘導体を含有する群から選択されるペプチド、ならびにRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログとRD2およびD3の誘導体を含有するか、またはRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログとRD2およびD3の誘導体からなるポリマーからなるか、あるいはそれらのペプチドならびにポリマーを含有する、疼痛治療において使用するための組成物である。
【0006】
本発明の主題は、さらに、RD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2もしくはD3の誘導体からなるか、またはRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2もしくはD3の誘導体を含有する群から選択されるペプチド、ならびにRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログとRD2およびD3の誘導体を含有するか、またはRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログとRD2およびD3の誘導体からなるポリマーからなるか、あるいはそれらのペプチドならびにポリマーを含有する、慢性疼痛および/または神経障害性疼痛の治療において使用するための組成物である。
【0007】
本発明のもう1つの主題は、RD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2もしくはD3の誘導体からなるか、またはRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2もしくはD3の誘導体を含有する群から選択されるペプチド、ならびにRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログとRD2およびD3の誘導体を含有するか、またはRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログとRD2およびD3の誘導体からなるポリマーからなるか、あるいはそれらのペプチドならびにポリマーを含有する、神経細胞発現性N型カルシウムチャネル(NCC)を阻害するための組成物である。
【0008】
本発明の一実施形態では、ペプチドが、実質的にD-アミノ酸からなる。本発明の趣旨では、用語「実質的にD-アミノ酸からなる」とは、本発明により使用すべきペプチドが、D-アミノ酸を少なくとも50%、60%、好ましくは75%、80、81、82、83、84%、特に好ましくは85、86、87、88、89%、90、91、92、93、94、95%、特に96%、97%、98%、99%、100%含有するか、またはD-アミノ酸からなることを意味する。
ジコノチドのようなL-エナンチオマーペプチドと比べて、D-ペプチド(イン・ビボ)は、プロテアーゼに対してはるかに耐性であり、それゆえ、消失半減期が長い経口投与の可能性を提供する。さらに、D-ペプチドは、たいていの場合は免疫原性でないか、またはわずかにしか免疫原性でない。
【0009】
さらなる一実施形態は、体重1キロ当たり1マイクログラム~1グラム、好ましくは100μg~10mg/kg体重、特に好ましくは0.5~5mg/kg体重の投与において使用するための、前記の組成物に関する。
【0010】
一実施形態は、経腸投与、経静脈投与、皮下投与、腹腔内投与、鼻腔内投与または経口投与、好ましくは経口投与用の前記の組成物に関する。
【0011】
有利には、前記の組成物が、N型NCCに対して、1ナノモーラー~1ミリモーラー、好ましくは10nM~100μM、特に好ましくは100nM~10μM、特に100nM~1μMというIC50値を示す。
【0012】
本発明により使用すべき組成物は、一変形形態において、
ANK1;(自由N末端、好ましくはアミド化C末端):rkrirlvyhinr(配列番号8)、
ANK2;(自由N末端、好ましくはアミド化C末端):rkrirl06yhinr(配列番号9)、
ANK3;(自由N末端、好ましくはアミド化C末端):rkrirl06yhwnr(配列番号10)、
ANK4;(自由N末端、好ましくはアミド化C末端):rkrirlvyhwnr(配列番号11)、
ANK5;(自由N末端、好ましくはアミド化C末端):rkrvrlvyhkkr(配列番号12)、
ANK6;(自由N末端、好ましくはアミド化C末端):rkrirlvtkkkr(配列番号13)、
ANK7;(自由N末端、好ましくはアミド化C末端):rkrvrl02thikr(配列番号14)、
ANK15;(自由N末端、好ましくはアミド化C末端):rprvrl06yhwnr(配列番号15)、
ANK16;(自由N末端、好ましくはアミド化C末端):rkr07rlvtkrnr(配列番号16)、
ANK17;(自由N末端、好ましくはアミド化C末端):rkrirl06yhikr(配列番号17)、
ANK18;(自由N末端、好ましくはアミド化C末端):rpr07rlhtkkkr(配列番号18)、
02:4-フルオロ-フェニルアラニン(D)06:フェニルグリシン(D)07:D-ホモアルギニン
からなるか、もしくはそれらを含有する群から選択されるペプチドを含有するか、またはそれらのペプチドからなる。
【0013】
一別法では、本発明により使用すべき、かつ前記のペプチドの誘導体が、環化ペプチドまたはアミド化ペプチドである。
本発明により使用すべきペプチドは、本発明のさらなる一形態では、自由C末端において、自由N末端と互いに共有結合しており、その場合、それに応じて環化して存在する。同じく、閉環によって、有利には、自由C末端のカルボキシル基がもはや存在しなくなる。ペプチドは、有利には、例えば、縮合反応を介して、例えば、最初のアミノ酸と最後のアミノ酸との共有結合により直鎖状分子の環化が起こっているアミノ酸配列を有する。例えば、別のアミノ酸を互いに結合させるというやり方で、当然ながら、環化のさらなる可能性が存在する。単に模範的に、2番目のアミノ酸と最後のアミノ酸との結合を挙げておく。あらゆる起こり得る別の結合が、同じく考えられる。ペプチドの最初のアミノ酸と最後のアミノ酸とを互いに結合させる場合、有利には、ペプチド鎖(アミノ酸配列)内に開放末端が存在しなくなる。この措置は、さらに、環化後にもはや区別できない同一のアミノ酸配列を生み出す直鎖状アミノ酸配列を有するすべてのペプチドが、この趣旨で同一であることをもたらす。
例:公知のペプチドD3の直鎖状アミノ酸配列は、rprtrlhthrnrである(配列番号2)。N末端アミノ基とC末端カルボキシル基との間のアミド結合によって結合された、相応する環化ペプチド「cD3」は、配列prtrlhthrnrr、rtrlhthrnrrp、trlhthrnrrpr、rlhthrnrrprt、lhthrnrrprtr、hthrnrrprtrl、thrnrrprtrlh、hrnrrprtrlht、rnrrprtrlhth、nrrprtrlhthr、またはrrprtrlhthrnの環化ペプチドともはや区別できない。これらの配列のそれぞれから、引き続きcD3を同じく誘導できる。
RD2:ptlhthnrrrrr(配列番号1)の状況は、配列tlhthnrrrrrp、lhthnrrrrrpt、hthnrrrrrptl、thnrrrrrptlh、hnrrrrrptlht、nrrrrrptlhth、rrrrrptlhthn、rrrrptlhthnr、rrrptlhthnrr、rrptlhthnrrr、rptlhthnrrrrの環化ペプチドおよび名称「cRD2」を伴いつつ類似である。環化ペプチドの製造は、従来技術であり、例えば、独国特許出願公開第102005049537号明細書(DE 10 2005049537 A1)に記載される方法により行うことができる。
ペプチドの最初のアミノ酸と最後のアミノ酸とによる環化が、有利には、細胞、動物、または人間における、例えば、アミノペプチダーゼおよびカルボキシペプチダーゼによるペプチド分解活性の頻繁な攻撃部位(Angriffspunkt)である、ペプチド鎖の「開放」末端をもはや存在させなくする。
【0014】
本発明により使用すべきペプチドは、本発明のさらなる一形態では、自由C末端においてアミド化されており、それゆえ、カルボキシル基の代わりに酸アミド基が存在する。つまり、カルボキシル基(-COOH基)の代わりに酸アミド基(-CONH2基)がC末端に配置されている。したがって、ペプチドは、特に有利に、自由C末端においてアミド化されている。それによると、より親和的に標的分子に結合でき、かつ簡単なやり方で入手できる、過剰負電荷を伴わないペプチドが存在するというさらなる課題が、特に有利に解決される。
本発明の一別法では、カルボキシル基の代わりに、COH、COCl、COBr、CONH-アルキル残基、CONH-アルキルアミン残基(正味正電荷)からなる基が存在し、ただし、これに限定されることはない。
【0015】
さらに、本発明により使用すべきペプチドは、一形態において、本来の配列に対して、N末端および/またはC末端においてそれぞれ1つまたは2つのアミノ酸だけ、それぞれ延長されているか、または短縮されている。一別法は、1つまたは2つのアミノ酸が付加的な末端を有する一方で、別の末端は1つまたは2つ少ないアミノ酸を有する。ペプチドは、好ましくは、本来の配列に対して、C末端において、アミノ酸rlhtの基から選択される1つのアミノ酸の分、好ましくはrの分だけ延長される。
【0016】
好ましい誘導体は、環化(cycl-)ペプチド、アミド化ペプチド、および/またはC末端において1つのアミノ酸の分、好ましくはアルギニンのrの分だけ延長されたペプチド配列、特にD3r rprtrlhthrnrr(配列番号5)、および環化D3rである。さらなる好ましい誘導体は、環化RD2、およびそれぞれ直鎖状のアミド化された型、および/またはC末端において1つのアミノ酸の分、好ましくはアルギニンのrの分だけ延長されたペプチド配列RD2r ptlhthnrrrrrr(配列番号19)である。本発明の主題は、それゆえ、ペプチドRD2r ptlhthnrrrrrr(配列番号19)でもあり、C末端において1つのアミノ酸の分、好ましくはrの分だけ延長された、RD2に基づく13-merである。アミド化および/または環化された型cRD2r(cRD2に類似)も、本発明の主題である。さらなる主題は、医学において、ないしは医薬品として使用するための、好ましくは疼痛の治療において、ないしは疼痛、特に慢性疼痛および神経障害性疼痛の療法において使用するための、ペプチドRD2rならびにアミド化および/または環化された型、好ましくはcRD2rである。本発明により使用すべきさらなるペプチドは、RD2RD2、ptlhthnrrrrrptlhthnrrrrr(配列番号3)RD2D3 ptlhthnrrrrrrprtrlhthrnr(配列番号4)、cycl-RD2RD2、ptlhthnrrrrrptlhthnrrrrr、cycl-D3r、rprtrlhthrnrr、D3p、rprtrlhthrnrp(配列番号6)およびcycl-D3p、ならびにD3a、rprtrlhthrnra(配列番号7)およびcycl-D3aである。
【0017】
「ホモログ配列」または「ホモログ」とは、本発明の趣旨において、アミノ酸配列が、前記のモノマーアミノ酸配列の1つと、少なくとも50、55、60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%の同一性を有することを意味する。用語「同一性」の代わりに、本明細書中では、用語「ホモログ」または「ホモロジー」を同じ意味で使用する。2つの核酸配列間またはポリペプチド配列間の同一性は、Smith, T. F.およびWaterman, M. S(Adv. Appl. Math. 2: 482~489ページ(1981年))のアルゴリズムに基づくプログラムBESTFITを用いた比較により、次のアミノ酸用パラメータ、つまりGap creation penalty:8およびGap extension penalty:2、ならびに次の核酸用パラメータ、つまりGap creation penalty:50およびGap extension penalty:3を調整して計算する。好ましくは、2つの核酸配列間またはポリペプチド配列間の同一性は、それぞれ配列全長にわたる核酸配列/ポリペプチド度配列の同一性によって定義し、それは、Needleman, S. B.およびWunsch, C. D.(J. Mol. Biol. 48: 443~453ページ)のアルゴリズムに基づくプログラムGAPを用いた比較により、次のアミノ酸用パラメータ、つまりGap creation penalty:8およびGap extension penalty:2、ならびに次の核酸用パラメータ、つまりGap creation penalty:50およびGap extension penalty:3を調整して計算する。
2つのアミノ酸配列は、本発明の趣旨において、それらが同一アミノ酸配列を有する場合に同一である。
【0018】
一別法では、ホモロジーないしは同一性を、該当するペプチドのそれぞれ全長にわたって特定する。別の一別法では、比較、それゆえ、同一性ないしはホモロジーの特定を、単に部分領域を介して行う。
この別法においても、本発明により使用すべきペプチドは、少なくとも20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%のホモロジーを有する。
【0019】
本発明のさらなる一実施形態では、組成物が、RD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、ならびにRD2およびD3の誘導体、もしくはさらなる前記のペプチドを含有するか、またはRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、ならびにRD2およびD3の誘導体、もしくはさらなる前記のペプチドからなるポリマーを含有するか、あるいはそれらのポリマーからなる。本発明により使用すべきポリマーは、前記のモノマーペプチドを2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上含有する。
好ましくは、RD2D3、D3RD2、D3D3、およびRD2RD2、もしくはホモログ、もしくはそれらの誘導体からなるか、またはRD2D3、D3RD2、D3D3、およびRD2RD2、もしくはホモログ、もしくはそれらの誘導体を含有する群から選択された二量体を使用する。
前記の配列の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上のあらゆる任意の組み合わせも、直鎖型または環化型でポリマーを形成できる。ポリマーは、例えば、化学合成ないしはペプチド合成を介して製造され得る。
本発明の一変形形態では、ペプチドが、特に前記のように、直鎖状に互いに結合していてもよい。別の一変形形態では、ペプチドが互いに分岐状に結合していて本発明によるポリマーとなる。分岐ポリマーは、本発明によると、モノマーが互いに共有結合または非共有結合しているデンドリマーであり得る。別法として、ペプチドが、プラットフォーム分子(例えば、PEGまたは糖)と結合していることも可能であり、その結果、分岐ポリマーを形成することができる。
【0020】
モノマーペプチドは、ヘッドトゥーヘッド、テールトゥーテール、またはヘッドトゥーテールに、付加的なリンカーを伴うか、または伴わずに直鎖状に結合しており、一別法では、全体として、付加的なリンカー(例えば、1つまたは複数のアミノ酸)を伴うか、または伴わずに、残っている2つの末端の共有結合により環化している。
【0021】
本発明の一実施形態では、本発明により使用すべきペプチドが、さらなるアミノ酸、リンカー、スペーサ、および/または官能基と共有結合している。
本発明の一別法では、それらのさらなるアミノ酸、リンカー、スペーサ、および/または官能基によって、ペプチドの特性が変化しない。さらなる一別法では、さらなるアミノ酸、リンカー、スペーサ、および/または官能基が、ペプチドの特性の変化を引き起こす。そのような一実施形態では、N型NCCに関して、本発明によるポリマーの選択性および/または親和性が高まる。
【0022】
リンカーとは、共有結合によってペプチドに結合している1つまたは複数の分子と理解され、ただし、それらのリンカー同士も、共有結合によって結合していてもよい。
官能基とは、ペプチドに共有結合している分子と理解される。一変形形態では、官能基がビオチン基を含有する。それにより、ストレプトアビジンへの強力な共有結合が可能になる。
本発明の一実施形態では、ペプチドがいわゆるスペーサを含有する。スペーサとは、共有結合を介してペプチドに結合しており、かつ特定の物理的特性および/または化学的特性を有する分子と理解され、それらの特性によってペプチドの特性が変化する。一実施形態では、親水性または疎水性のスペーサ、好ましくは親水性のスペーサを使用する。親水性のスペーサは、ポリエチレングリコール、糖、グリセリン、ポリ-L-リジン、またはベータアラニンから形成される分子群から選択される。
【0023】
ペプチドは、一別法において、さらなる物質と結合している。
その物質は、一変形形態では、ドイツ薬事法第2条ないしは第4条(19)(2012年9月現在)に準拠して定義される医薬品または有効成分である。一別法では、有効成分は、薬用有効成分として使用される治療活性物質である。
別の一変形形態では、その物質は、有効成分の放出制御(Drug Carrier Systemとも呼ばれる)用の担体であり、その目標は、一方では、有効成分の、身体からの迅速な排出を阻止することである。たいていの慣用の有効成分は大部分が小さいため、短時間しか血液循環内にとどまらないが、なぜなら、そのサイズに基づいて腎閾値を下回るため、血液から分離され、再び排出されるからである。他方では、その担体系により、有効成分が特定の器官または細胞の近くへと特異的に輸送され、そこで制御型に放出される。
【0024】
その物質は、さらなる一変形形態では、ペプチドの作用を強化する物質である。一別法では、そのような化合物が、アミノピラゾールおよび/またはアミノピラゾール誘導体である。本発明の趣旨でのアミノピラゾール誘導体は、3-アミノピラゾール-5-カルボン酸または3-ニトロピラゾール-5-カルボン酸、ならびに複素環CH基が-CR-または-N-または-O-または-S-で置換されたすべての誘導体、ならびにそれらから誘導された、すべてのペプチド性の二量体、三量体または四量体であり、好ましくはアミノピラゾール三量体である。さらなる一別法では、ペプチドの可溶性および/または血液脳関門の通過を改善する化合物である。
【0025】
物質は、ペプチドと結合しており、ただし、その結合は、共有結合であるか、または共有結合ではない。その場合、結合は、水素結合、親水性相互作用、疎水性相互作用、静電相互作用ないしは親水性結合、疎水性結合、静電結合、および/または立体的固定化を介して起こる。
【0026】
本発明のさらなる主題は、対照と比べて神経伝達物質の放出を低下させるための方法において、RD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2もしくはD3の誘導体からなるか、またはRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2もしくはD3の誘導体を含有する群から選択されるペプチド、ならびにRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2および/またはD3の誘導体を含有するか、またはRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2および/またはD3の誘導体からなるポリマーからなるか、あるいはそれらのペプチドならびにポリマーを含有する、鎮痛剤として使用するための組成物をN型NCCと接触させることを特徴とする方法である。
【0027】
特に、NCCを通るカルシウム流入が、対照と比べて、本発明の方法により低下する。
【0028】
さらに、対照と比べてN型NCCを阻害するための方法において、N型NCCを、RD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2もしくはD3の誘導体からなるか、またはRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2もしくはD3の誘導体を含有する群から選択されるペプチド、ならびにRD2、D3、少なくとも50%の同一性を有するホモログ、およびRD2および/またはD3の誘導体を含有するポリマーからなるか、あるいはそれらのペプチドならびにポリマーを含有する組成物と接触させることを特徴とする方法も、本発明の主題である。
【0029】
本発明の趣旨では、「接触させる」とは、本発明により使用すべきペプチドとN型NCCとの間の相互作用、特に物理的および/または化学的な相互作用、例えば、配位結合または水素結合の形成を可能にする条件が存在することを意味する。
【0030】
対照の選択は、実験手法のルーチン的な部分である。対照としては、一別法における被検査生物と同一である生物を使用する。被検査生物を、本発明による組成物で処理する、ないしは非常に広い意味では接触させるのに対して、対照にはこの方法を行わない。本発明によると、生物という用語は、生物の一部、組織、組織サンプル、個々の細胞、または細胞培養、細胞の一部、例えば、好ましくはN型またはL型のNCCチャネルを含有する膜、または人工膜、例えば、好ましくはN型および/またはL型の神経細胞発現性カルシウムチャネルを含有する脂質二重膜も含む。対照も被検査生物も、前記のリストから選択される。異なる一別法では、対照は、臨床試験の基準に従って定義されている。
【0031】
本発明の趣旨では、阻害するとは、本発明により使用すべき組成物による、好ましくはN型の神経細胞発現性カルシウムチャネル活性の、対照に対する低下を意味する。対照は、本発明によると、この組成物と接触させない。その代わりに、対照を、公知の阻害剤と接触させることも可能である。
公知の阻害剤の適用を、本発明により使用すべき組成物の適用と比較して、当業者は同じく、本発明による組成物の有効性に関する結論を探し出せる。
【0032】
本発明の一実施形態では、IC50値に相応する濃度ないしはIC50値と等しい濃度において阻害を特定する。
本発明により使用すべき組成物は、N型NCCを、少なくとも10%、15%、20%、25%、好ましくは30%、特に好ましくは40%、50%、60%、70%、80%、特に90%または100%阻害する。
一実施形態では、本発明により、いわゆるパッチクランプ技術を利用して阻害を特定する。その際、カルシウムチャネルを通るイオン電流を、様々な電圧において測定する。したがって、神経細胞発現性カルシウムチャネルの阻害は、イオン電流の低下により特定される。一別法では、イオン電流が、少なくとも10%、15%、20%、25%、好ましくは30%、35%、特に好ましくは40、42、44、46、48、50%、52、54、56、58、60%、70%、80%、特に90%または100%だけ低下する。好ましくは、IC50値に等しいペプチド濃度において低下を特定する。一実施形態では、150nMという濃度の、本発明により使用すべき組成物と、該当するチャネルとを接触させる際に、パッチクランプ測定を行う。
【0033】
本発明による方法は、L型NCCの機能を、対照と比べて変化させないことを特徴とする。言い換えると、L型NCCを通るカルシウム流入は、対照と比べて変化しない。本発明により使用すべきペプチドは、特異的および/または選択的にN型NCCに作用する。
【0034】
コノトキシンの代用品としての、本発明により使用すべきペプチドの使用も、本発明の主題である。
つまり、NCC、ないしはNCCを含有する膜、またはNCCを含有する同様の起源の接触を、イン・ビトロ(エクス・ビボ)で行うことができる。
【0035】
本発明はさらに、被治療個体に対して、経腸投与、経静脈投与、皮下投与、腹腔内投与、鼻腔内投与または経口投与、好ましくは経口投与により、1μg~1g/kg体重の濃度において本発明により使用すべきペプチドを投与する、慢性疼痛および/または神経障害性疼痛の治療、つまり疼痛緩和のための治療に関する。
【0036】
したがって、本発明は、本発明により使用すべきペプチドを、当業者には公知の慣用の方法を利用して、医薬製剤に混合する方法にも関する。したがって、医薬製剤中での前記のペプチドの使用も、本発明の主題である。したがって、本発明により使用すべき前記のペプチドを含有する医薬製剤も同じく、本発明の主題である。
さらに、本発明の主題は、鎮痛剤、疼痛治療において使用する医薬品、および/または慢性疼痛および神経障害性疼痛の治療薬を製造するための、請求項1からの組成物の使用である。
【0037】
本発明のさらなる主題は、神経細胞発現性N型カルシウムチャネルNCCを阻害するための、請求項1に基づく組成物の使用である。
【0038】
本発明による方法においては、さらなる、前記のペプチド、誘導体、およびホモログも使用できる。
【0039】
さらなる例は、前記のペプチドのどれを用いても行える。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A】150mMのRD2を含有する組成物との接触前および接触後に、-90mV~+20mVの保持電位の、40msのパルスの最中に引き起こされる、CaV2.2チャネルが仲介する電流強度の代表的記録を示す図。
【
図1B】-90mV~+20mVの5秒ごとの連続パルスの最中に、代表的細胞において記録された阻害の時間推移を示す図。
【
図1C】CaV2.2を発現する細胞の、RD2の存在下および不在下での平均的な電流強度-電圧関係(n=7)を示す図。
【
図1D】
図Cと同じ細胞を対象に、電圧プロットに対してプロットした活性化チャネル画分(活性化曲線)を示す図。
【
図2A】150mMのRD2を含有する組成物との接触前および接触後に、-90mV~+10mVの保持電位の、40msのパルスの最中に引き起こされる、CaV1.2チャネルが仲介する電流強度の代表的記録を示す図。
【
図2B】150nMのRD2による灌流の際の電流強度を示す図。
【
図2D】CaV1.2チャネルの活性化の電圧依存性を示す図。
【
図3】RD2が、CaV2.2チャネルおよびCaV1.2チャネルにより仲介されるイオン電流を遮断する能力の検査結果を示す図。
【
図4A】150mMのD3を含有する組成物との接触前および接触後に、-90mV~+20mVの保持電位の、40msのパルスの最中に引き起こされる、CaV2.2チャネルが仲介する電流強度の代表的記録を示す図。
【
図4B】-90mV~+20mVの5秒ごとの連続パルスの最中の電流強度の記録を示す図。
【
図4C】54%までのイオン電流の低下を示す電流-電圧プロット(I-V)を示す図。
【
図5】D3がCaV2.2チャネルを遮断することを示す図。
【
図6】Ca
V2.2チャネルおよびCa
V1.2チャネルに及ぼすcD3rおよびcRD2rの作用を示す図。
【
図7A】CaV2.2チャネルによって仲介される代表的なイオン電流放電が、150nMのcD3rへの曝露前および曝露後に、-90mV~+20mVの40msのパルスの最中に引き起こされたこと(左図)、および-90mV~+20mVの5秒ごとの連続パルスの最中の、代表的細胞における遮断の時間推移(右図)を示す図。
【
図7B】CaV2.2発現細胞の、cD3rの存在下および不在下での平均的な電流強度-電圧関係(n=8)ならびに活性化チャネル画分対電圧(活性化曲線)を示す図。
【
図7C】CaV2.1チャネルによって仲介される代表的なイオン電流放電が、150nMのcD3rへの曝露前および曝露後に、-90mV~+20mVの40msのパルスの最中に引き起こされたこと(左図)、および-90mV~+20mVの5秒ごとの連続パルスの最中の、代表的細胞における遮断の時間推移(右図)を示す図。
【
図7D】CaV2.1発現細胞の、cD3rの存在下および不在下での平均的な電流強度-電圧関係(n=8)ならびに活性化曲線(n=7)を示す図。
【
図8A】CaV2.2チャネルによって仲介される代表的なイオン電流放電が、150nMのcRD2rへの曝露前および曝露後に、-90mV~+20mVの40msのパルスの最中に引き起こされたこと(左図)、および-90mV~+20mVの5秒ごとの連続パルスの最中の、代表的細胞における遮断の時間推移(右図)を示す図。
【
図8B】CaV2.2発現細胞の、cRD2rの存在下および不在下での平均的な電流強度-電圧関係(n=7)ならびに活性化チャネル画分対電圧(活性化曲線)を示す図。
【
図8C】CaV2.1チャネルによって仲介される代表的なイオン電流放電が、150nMのcRD2rへの曝露前および曝露後に、-90mV~+20mVの40msのパルスの最中に引き起こされたこと(左図)、および-90mV~+20mVの5秒ごとの連続パルスの最中の、代表的細胞における遮断の時間推移(右図)を示す図。
【
図8D】CaV2.1発現細胞の、cRD2rの存在下および不在下での平均的な電流強度-電圧関係(n=8)および活性化曲線(n=6)を示す図。
【0041】
例:
1.RD2(C末端アミド化)
A.タンパク質コンストラクト:
電位依存性カルシウムチャネルの2つの異なるalpha1細孔形成ユニット(CaValpha1)のコーディング領域を、蛍光タンパク質とインフレーム(C末端融合)で、次のように融合させた:イエウサギ由来ユニットCaV1.2(UniProtKB:P15381)をYFPと融合させ(CaV1.2-YFP)、ヒトユニットCaV2.2(UniProtKB:Q00975-1)をGFPと融合させた(CaV2.2-GFP)。ベータサブユニットCaVbeta2e(UniProtKB:Q8VGC3-2)をmRFPに(CaVbeta2e-mRFP)、およびCaVbeta4(UniProtKB:O00305.2)をmCherryに結合させた(CaVbeta4-mCherry)。
【0042】
B:細胞のトランスフェクション:
CaValpha1サブユニットの正常機能および表面発現は、CaVbetaサブユニットへの会合を必要とするため、tsA201細胞を、CaV1.2-YFPとCaVbeta2e-mRFP、またはCaV2.2-GFPとCaVbeta4-mCherryとのいずれか一方により、一過性に共トランスフェクションした。トランスフェクションは、Lipofectamine 2000TM(Invitrogen)を用いて行い、トランスフェクションに成功した細胞を、蛍光シグナルによって同定した。電気生理学的な放電(Ableitung)を、トランスフェクションから24~48時間後に行った。
【0043】
C.電気生理学:
イオン電流を、Whole Cell Patch Clamp技術を用いて、PatchMasterソフトウェアが実装されたEPC-10アンプ(HEKA、Elektronik)により測定した。バリウムを担体として使用した。Sutter P-1000プラー(Harvard Apparatus)を用いて、0.9~2MΩの抵抗を有するホウケイ酸ガラスピペットを引き伸ばし、Narishige MF-830マイクロフォージを用いて、先端部の表面をヒートポリッシュした。外部測定溶液として140mMのTEA-MeSO3、10mMのBaCl2、10mMのHEPES(pH7.3)を使用し、内部測定溶液として135mMのCs-MeSO3、10mMのEGTA,5mMのCsCl2、1mMのMgCl2、4mMのMgATP、0.4mMのNa2GTPおよび10mMのHEPES(pH7.3)を使用した。データ解析は、ソフトウェアFitMaster(HEKA)、Origin(OriginLab)およびExcel(Microsoft)の組み合わせを使用して行った。すべてのデータは、平均値±SEMとして示す。イオン電流は、P/4プロトコルを使用して補正した(リーク電流の除去)。
RD2の薬理効果を検査するために、細胞を剥離し、被検物質を含有するか、または含有しない灌流中へと移した。被検物質の一定濃度を保証するために、一定の灌流下に観察を行った。RD2を、1mMという最終濃度でDMSO中に溶解し、使用直前に、外部測定溶液中において150nMに溶解した。対照実験は、公知のCaV1.2およびCaV2.2のカルシウムチャネル拮抗薬、ニモジピン(10μM)およびオメガコノトキシン(1nM)を用いて行った。
【0044】
D.結果:
CaV2.2が仲介するイオン電流へのRD2の作用:
CaV2.2は、シナプス前神経終末に局在し、シナプス中心部(zentrale Synapse)での神経伝達を仲介する。CaV2.2仲介イオン電流を、CaV2.2/CaVbeta4を発現するtsA201細胞から記録した。RD2(150nM)を含有する外部測定溶液による細胞の灌流は、イオン電流の著しい低下をもたらしたが、外部測定溶液単独を用いると低下は起こらなかった(
図1A、B;A:150mMのRD2を含有する組成物との接触前および接触後に、-90mV~+20mVの保持電位の、40msのパルスの最中に引き起こされる、CaV2.2チャネルが仲介する電流強度の代表的記録。B:-90mV~+20mVの5秒ごとの連続パルスの最中に、代表的細胞において記録された阻害の時間推移)。電流-電圧プロット(I-V)は、検査したすべての電圧において、55%までのイオン電流の低下を示した(
図1C:CaV2.2を発現する細胞の、RD2の存在下および不在下での平均的な電流強度-電圧関係(n=7))。イオン電流の遮断には、チャネルの電圧依存性活性化の変化が付随しなかったことから、RD2による細孔遮断機構を推定させる(
図1D:
図Cと同じ細胞を対象に、電圧プロットに対してプロットした活性化チャネル画分(活性化曲線)。対照として。したがって、チャネルの機能または機構の変化は起こらないが、なぜなら、曲線が互いに重なっており、ずれていないからである)。イオン電流が、1nMのCaV2.2拮抗薬オメガコノトキシンの投与後に中断されたことは、そのイオン電流が、CaV2.2チャネルにより仲介されたことを裏付ける(
図1Aの挿入図)。
【0045】
CaV1.2が仲介するイオン電流へのRD2の作用:
CaV1.2は、主に心臓で発現しているL型カルシウムチャネルであり、心筋細胞の電気的活性化を筋フィラメント収縮と連関させる。イオン電流を、CaV1.2とCaVbeta2eとを共発現する細胞から記録すると、150nMのRD2への曝露後にほぼ不変のままだった(
図2A:150mMのRD2を含有する組成物との接触前および接触後に、-90mV~+10mVの保持電位の、40msのパルスの最中に引き起こされる、CaV1.2チャネルが仲介する電流強度の代表的記録。
図2B:150nMのRD2による灌流の際に電流強度の変化なし)。それに対して、公知のCaV1.2チャネル拮抗薬である、10μMのニモジピンによる灌流は、イオン電流のほぼ完全な遮断をもたらした。つまり、CaV1.2チャネルの活性化の電圧依存性は、RD2の存在によって影響されなかった(
図2Cおよび2D)。
【0046】
E:結論
RD2が、CaV2.2チャネルおよびCaV1.2チャネルにより仲介されるイオン電流を遮断する能力を、150nMの濃度において検査した。その検査は、CaV2.2チャネルおよびCaV1.2チャネルを発現するtsA201細胞において、Whole Cell Patch Clamp技術を使用して行った。RD2は、CaV2.2チャネルを遮断するのに対して、CaV1.2チャネルは、検査した濃度では、RD2に対して非感受性である(
図3)。
【0047】
2.D3(C末端アミド化)
A.タンパク質コンストラクト:
電位依存性カルシウムチャネルCaV2.2のヒトalpha1細孔形成ユニット(CaValpha1)(UniProtKB:Q00975-1)のコーディング領域を、GFPと融合させてCaV2.2-GFPとした。ベータサブユニットCaVbeta4(UniProtKB:O00305.2)を、mCherryに融合してCaVbeta4-mCherryとした。
【0048】
B:細胞のトランスフェクション:
CaValpha1サブユニットの正常機能および表面発現は、CaVbetaサブユニットへの会合を必要とするため、tsA201細胞を、CaV2.2-GFPとCaVbeta4-mCherryとにより、一過性に共トランスフェクションした。トランスフェクションは、Lipofectamine 2000TM(Invitrogen)を用いて行い、トランスフェクションに成功した細胞を、蛍光シグナルによって同定した。電気生理学的な放電を、トランスフェクションから24~48時間後に行った。
【0049】
C.電気生理学:
イオン電流を、Whole Cell Patch Clamp技術を用いて、PatchMasterソフトウェアが実装されたEPC-10アンプ(HEKA、Elektronik)により測定した。バリウムを担体として使用した。Sutter P-1000プラー(Harvard Apparatus)を用いて、0.9~2MΩの抵抗を有するホウケイ酸ガラスピペットを引き伸ばし、Narishige MF-830マイクロフォージを用いて、先端部の表面をヒートポリッシュした。外部測定溶液として140mMのTEA-MeSO3、10mMのBaCl2、10mMのHEPES(pH7.3)を使用し、内部測定溶液として135mMのCs-MeSO3、10mMのEGTA,5mMのCsCl2、1mMのMgCl2、4mMのMgATP、0.4mMのNa2GTPおよび10mMのHEPES(pH7.3)を使用した。データ解析は、ソフトウェアFitMaster(HEKA)、Origin(OriginLab)およびExcel(Microsoft)の組み合わせを使用して行った。すべてのデータは、平均値±SEMとして示す。イオン電流は、P/4プロトコルを使用して補正した(リーク電流の除去)。
【0050】
D3の薬理効果を検査するために、細胞を剥離し、被検物質を含有するか、または含有しない灌流中へと移した。被検物質の一定濃度を保証するために、一定の灌流下に観察を行った。D3を、1mMという最終濃度でDMSO中に溶解し、使用直前に、外部測定溶液中において150nMに溶解した。対照実験は、公知のCaV2.2カルシウムチャネル拮抗薬であるオメガコノトキシン(1nM)を用いて行った。
【0051】
D.結果:
CaV2.2が仲介するイオン電流へのD3の作用:
CaV2.2仲介イオン電流を、CaV2.2/CaVbeta4を発現するtsA201細胞から記録した。D3(150nM)を含有する外部測定溶液による細胞の灌流は、イオン電流の著しい低下をもたらしたが、外部測定溶液単独を用いると低下は起こらなかった(
図4A、B;A:150mMのD3を含有する組成物との接触前および接触後に、-90mV~+20mVの保持電位の、40msのパルスの最中に引き起こされる、CaV2.2チャネルが仲介する電流強度の代表的記録。4B:D3が誘導した阻害は、外部リンガー溶液による再灌流後に可逆である。-90mV~+20mVの5秒ごとの連続パルスの最中に電流強度を記録した)。電流-電圧プロット(I-V)は、検査したすべての電圧において、54%までのイオン電流の低下を示した(
図4C)。イオン電流の遮断には、チャネルの電圧依存性活性化の変化が付随しなかったことから、D3による細孔遮断機構を推定させる(
図4D)。イオン電流が、1nMのCaV2.2拮抗薬オメガコノトキシンの投与後に中断されたことは、そのイオン電流が、CaV2.2チャネルにより仲介されたことを裏付ける(
図4Aの挿入図)。
【0052】
E.結論
D3は、CaV2.2チャネルを遮断する(
図5)。
【0053】
3.cD3(環化D3)およびcRD2(環化RD2)
例1および2に類似して実験を行った。
【0054】
Ca
V2.2チャネルおよびCa
V1.2チャネルに及ぼすcD3rおよびcRD2rの作用のまとめ(
図6)
2つの棒グラフは、Ca
V2.2に関しては+20mVにおいて、Ca
V1.2に関しては+10mVにおいて、電流強度-電圧グラフから読み取った平均イオン電流をまとめる。
**p≦0.01。
【0055】
CaV2.2チャネルおよびCaV1.2チャネルに及ぼすcD3rの作用(
図7)
CaV2.2チャネルによって仲介される代表的なイオン電流放電が、150nMのcD3rへの曝露前および曝露後に、-90mV~+20mVの40msのパルスの最中に引き起こされた(7Aの左図)。7Aの右図は、-90mV~+20mVの5秒ごとの連続パルスの最中の、代表的細胞における遮断の時間推移を示す。7B、CaV2.2発現細胞の、cD3rの存在下および不在下での平均的な電流強度-電圧関係(n=8)ならびに活性化チャネル画分対電圧(活性化曲線)。7C、CaV2.1チャネルによって仲介される代表的なイオン電流放電が、150nMのcD3rへの曝露前および曝露後に、-90mV~+20mVの40msのパルスの最中に引き起こされた(7Cの左図)。7Cの右図は、-90mV~+20mVの5秒ごとの連続パルスの最中の、代表的細胞における遮断の時間推移を示す。7D、CaV2.1発現細胞の、cD3rの存在下および不在下での平均的な電流強度-電圧関係(n=8)ならびに活性化曲線(n=7)。
【0056】
CaV2.2チャネルおよびCaV1.2チャネルに及ぼすcRD2rの作用(
図8)
8A、CaV2.2チャネルによって仲介される代表的なイオン電流放電が、150nMのcRD2rへの曝露前および曝露後に、-90mV~+20mVの40msのパルスの最中に引き起こされた(8Aの左図)。8Aの右図は、-90mV~+20mVの5秒ごとの連続パルスの最中の、代表的細胞における遮断の時間推移を示す。8B、CaV2.2発現細胞の、cRD2rの存在下および不在下での平均的な電流強度-電圧関係(n=7)ならびに活性化チャネル画分対電圧(活性化曲線)。8C、CaV2.1チャネルによって仲介される代表的なイオン電流放電が、150nMのcRD2rへの曝露前および曝露後に、-90mV~+20mVの40msのパルスの最中に引き起こされた(左図)。8Cの右図は、-90mV~+20mVの5秒ごとの連続パルスの最中の、代表的細胞における遮断の時間推移を示す。8D、CaV2.1発現細胞の、cRD2rの存在下および不在下での平均的な電流強度-電圧関係(n=8)および活性化曲線(n=6)。
【配列表】