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特許7143309手持ち式流体移送装置、手持ち式流体移送装置を備える実験室システム、及び手持ち式流体移送装置又は実験室システムを操作する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】手持ち式流体移送装置、手持ち式流体移送装置を備える実験室システム、及び手持ち式流体移送装置又は実験室システムを操作する方法
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20220920BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20220920BHJP
   G01N 35/10 20060101ALN20220920BHJP
【FI】
B01L3/02 D
G01N1/00 101K
G01N35/10 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019542120
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2018052636
(87)【国際公開番号】W WO2018141898
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】17154629.4
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501186645
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ゲルケン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン エッゲルト
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ダービト
(72)【発明者】
【氏名】ボルフガング ゲマン-トース
(72)【発明者】
【氏名】ペーター シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ウーベ ドゥンカー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ミュラー
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-501218(JP,A)
【文献】特表2010-537320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/299577(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00-99/00
G01N 1/00- 1/44
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体実験室試料で分注プロセスを実行するための手持ち式流体移送装置(1;1’)であって、
前記流体移送装置は、細長い形状の本体を有し、前記形状は前記流体移送装置の前記本体を通る軸線(A)に沿って延び、
前記手持ち式流体移送装置は、前記手持ち式流体移送装置に接続可能な分注容器に分注すべき前記流体実験室試料を吸引し、前記分注容器から前記流体実験室試料を排出する、ピストンを用いた移動装置を含み、
前記手持ち式流体移送装置は、
入力データを使用して前記手持ち式流体移送装置の少なくとも1つの電子制御可能な機能を制御するための制御プログラムを実行可能なデータ処理装置(3)を備える制御装置(2)と、
ユーザ入力を受信するためのユーザインターフェース装置(5)であって、定義された動作経路を実行する際に前記手持ち式装置全体の移動を感知することによって前記手持ち式流体移送装置の動作データを測定し、続いて測定された動作データを含む少なくとも1つの動作データシーケンスを提供する動作センサ装置(6)を備える前記ユーザインターフェース装置と、
前記少なくとも1つの動作データシーケンスを記憶するための動作データメモリ(8)と、
前記少なくとも1つの動作データシーケンスの評価に依存して前記入力データを決定するように構成されている評価装置(4)と、
を備え、
前記制御装置が前記入力データに依存して前記分注プロセスに関連する少なくとも1つの電子制御可能な機能を制御するように構成されており、前記入力データは、前記動作センサ装置(6)によって続いて測定された動作データに依存して前記評価装置(4)により決定され、
前記動作センサ装置(6)は、前記流体移送装置の前記本体の前記軸線(A)に沿って異なる位置に配置された少なくとも2つの動作センサ(7;7’)を備え、
前記電子制御可能な機能は、
前記手持ち式流体移送装置に接続可能な前記分注容器へ分注すべき量、又は前記分注容器から排出されるべき量、
前記分注又は前記排出の順序と繰り返し、又
記流体実験室試料を分注又は排出する速度
を設定する、手持ち式流体移送装置。
【請求項2】
前記制御装置(2)は、前記手持ち式流体移送装置の複数の電子制御可能な機能を制御するための制御データとして前記入力データを利用するように構成される、請求項1に記載の手持ち式流体移送装置。
【請求項3】
前記流体移送装置は、動作ジェスチャ認識システムを提供するように構成され、前記少なくとも1つの動作データシーケンスは、前記評価装置(4)によってジェスチャとして解釈される、請求項1又は2に記載の手持ち式流体移送装置。
【請求項4】
前記評価装置(4)は、動作パターンのデータベースに含まれる動作パターンデータの前記形の所定の動作パターンを含む動作データライブラリメモリにアクセスするように構成され、前記評価装置は、少なくとも1つの動作データシーケンス、又はそれから導出された任意のデータを前記所定の動作パターンと比較するように構成される、請求項3に記載の手持ち式流体移送装置。
【請求項5】
前記ユーザインターフェース装置は、さらなる入力データを前記制御装置に提供するための少なくとも1つの従来の入力装置(13)を備え、前記少なくとも1つの従来の入力装置は、機械ボタン、タッチセンサ式ボタン、ダイヤルホイール、選択ロッカー、スイッチ、レバー、タッチ画面を備える前記グループから選択され、
前記制御装置(2)は、前記入力データに依存し、前記少なくとも1つの従来の入力装置(13)から受信した前記さらなる入力データに依存して制御データを決定するように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の手持ち式流体移送装置。
【請求項6】
前記流体移送装置は、文字認識システムを提供するように構成され、前記少なくとも1つの動作データシーケンスは、前記評価装置(4)によって少なくとも1つの数字及び/又は文字又は文字列として解釈される、請求項1~5のいずれか一項に記載の手持ち式流体移送装置。
【請求項7】
前記評価装置(4)は、前記評価装置によって認識された前記少なくとも1つの文字を前記入力データとして解釈するように構成され、次に、前記入力データは、前記流体移送装置のメモリに記憶されるか、外部データ処理装置への転送のために提供される、請求項6に記載の手持ち式流体移送装置。
【請求項8】
前記手持ち式流体移送装置と外部装置との間のデータの前記転送を可能にするための通信装置(9)を備え、前記手持ち式流体移送装置は、前記少なくとも1つの動作データシーケンスを前記外部装置に送信し、前記外部装置からの前記少なくとも1つの動作データシーケンスに依存して決定された入力データを受信するように構成される、請求項1に記載の手持ち式流体移送装置。
【請求項9】
前記動作センサ装置(6)は、デカルト座標系の3軸線x、y及びzによって定義される前記空間内の3次元動作を測定するように構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の手持ち式流体移送装置。
【請求項10】
前記動作センサ装置(6)は、デカルト座標系の前記3軸線x、y及びzによって定義される前記空間内の3次元加速度を測定するように構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の手持ち式流体移送装置。
【請求項11】
前記動作センサ装置(6)は、デカルト座標系の前記3つの回転軸線x、y及びzの周りの前記角速度を測定するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の手持ち式流体移送装置。
【請求項12】
動作入力モードを提供するように構成され、活動の場合、前記流体移送装置の前記ユーザインターフェース装置(5)の前記動作センサ装置(6)を介したユーザ入力は測定され得るが、前記動作入力モードが非活動のとき、動作センサ装置(6)を介したユーザ入力は測定され得ず、
前記ユーザインターフェース装置(5)は、前記ユーザが前記流体移送装置の動作入力モードの前記活動又は非活動に影響を与えるための活動入力装置(14)を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の手持ち式流体移送装置。
【請求項13】
前記手持ち式流体移送装置が、ピペット又はリピータピペットである、請求項1~12のいずれか一項に記載の手持ち式流体移送装置。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の手持ち式流体移送装置(1;1’)を操作する方法(200)であって、
・前記手持ち式流体移送装置がユーザによって動かされたとき、前記手持ち式流体移送装置の前記動作の動作データを測定することによりユーザ入力を受信し、その後測定された動作データを含む少なくとも1つの動作データシーケンスを提供する(201)こと、
・動作データメモリに前記少なくとも1つの動作データシーケンスを記憶する(202)こと、
・前記少なくとも1つの動作データシーケンスの評価に応じて前記入力データを決定する(203)こと、及び
・前記入力データを使用して、前記手持ち式流体移送装置の分注プロセスに関連する前記手持ち式流体移送装置の少なくとも1つの電子制御可能な機能を制御する(204)こと、を含み、
前記電子制御可能な機能は、
前記手持ち式流体移送装置に接続可能な前記分注容器へ分注すべき量、又は前記分注容器から排出されるべき量、
前記分注又は前記排出の順序と繰り返し、又
記流体実験室試料を分注又は排出する速度
を設定する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手持ち式流体移送装置、手持ち式流体移送装置を備える実験室システム、及び手持ち式流体移送装置又は実験室システムを操作する方法に関する。
【0002】
そのような手持ち式流体移送装置は通常、医学、生物学、生化学、化学、及び他の実験室で使用されている。それらは、特に試料の正確な計量のために、小容量の流体試料を輸送及び移送するために実験室で使用される。手持ち式流体移送装置では、例えば、液体試料が、減圧により分注容器、分注容器、例えばピペットチップに吸引され、そこに格納され、目的地でそれらから再び送達される。手持ち式の流体移送装置は、少なくとも1つの制御パラメータ、特に流体移送装置の少なくとも1つの機能の操作に少なくとも影響を与える又は制御する操作パラメータを使用する。手持ち式流体移送装置は、その後、略して用語「流体移送装置」とも呼ばれる。
【0003】
流体移送装置は、例えば、手持ち式ピペット及びディスペンサーを備える。ピペットは器具を意味すると理解され、器具に関連付けられ、特にピストンを有することができる移動装置は、ピペットに接続された分注容器に分注される試料を吸引するために使用できる。エアクッションピペットの場合、ピストンは器具に関連付けられており、分注される試料とピストンの端はその間にエアクッションがあり、試料が分注容器に入れられると、試料を分注容器に吸引する減圧以下になる。ディスペンサーとは、特にピストンを有し得、使用して、ディスペンサーに接続された分注容器に分注される容量を吸引できる移動装置である器具を意味すると理解され、移動装置は例えば、分注容器にピストンが配置されているため、分注容器に少なくとも部分的に関連付けられている。ディスペンサーの場合、ピストンの端は分注される試料に非常に近いか、試料と接触しているため、ディスペンサーは直接変位ピペットとも呼ばれる。
【0004】
流体移送装置の場合、単一の操作動作によって送達される試料の量は、器具に吸引される試料の量に対応することができる。あるいは、複数の送達量に対応する試料の許容量が段階的に再び送達されるように準備されてもよい。さらに、単一チャネルの流体移送装置と複数チャネルの流体移送装置との間には区別があり、単一チャネルの流体移送装置は単一の送達/受け入れチャネルのみを備え、複数チャネルの流体移送装置は複数の送達/受け入れチャネルを備え、特に、複数の試料を並行して送達又は受け入れることを可能にする。流体移送装置は、特に手動で操作することができ、すなわち、移動装置の駆動がユーザによって生成されること、及び/又は特に電気的に操作できることを意味する場合がある。移動装置の手動操作の場合でさえ、例えば、現在の送達容量又は少なくとも別の操作パラメータが電気的に選択されるため、流体移送装置は電気流体移送装置であり得る。
【0005】
手持ち式電子ピペットの例としては、ドイツのハンブルグにあるエッペンドルフAGのエッペンドルフXplorer(登録商標)及びエッペンドルフXplorer(登録商標)プラスがあり、手持ち式電子ディスペンサーの例は、ドイツのハンブルグにあるエッペンドルフAGのMultipette(登録商標)E3及びMultipette(登録商標)E3xである。
【0006】
電気流体移送装置は、装置の機能性を高めることができる多数の機能を容易に実装できるため、非電気流体移送装置に勝る多くの利点を提供する。制御パラメータによって制御されるコンピュータ実装機能により、特に分注タスクの自動化が可能になる。流体移送装置の任意の操作は、ユーザの影響を受けるように構成されてもよい。特定の自動又は半自動操作を定義するために操作パラメータを提供することができ、操作パラメータを定義するか、又は少なくとも流体移送装置のユーザインターフェース装置を介してユーザによって影響又は変更することができる。この目的のために、ユーザインターフェース装置は、ホイール、ボタン、スイッチ、タッチ画面及び同種のもののような1つ以上の従来の入力装置を備えてもよい。人間工学的な考慮の下で、手持ち式流体移送装置を操作するとき、ユーザの負担を避けることが重要である。いくつかの流体移送装置は、操作パラメータを設定する際にユーザの両手を必要とするが、そのような装置の片手での使用性が一般的に好ましい。本発明は、流体移送装置が片手で使用できるように構成されている場合でも、多くの状況で実験室試料の作業のワークフローが遅れる可能性があるという発見に基づいている。
【0007】
本発明の目的は、手持ち式流体移送装置及びユーザが便利に使用できる手持ち式流体移送装置を操作する方法を提供することである。
【0008】
本発明は、請求項1に記載の流体移送装置及び請求項14に記載の方法によってこの目的を達成する。好ましい実施形態は、特にサブクレームに含まれる。
【0009】
本発明の根底にある考え方は、流体移送装置全体が入力装置として使用され、少なくともユーザのチョイスにより、例えばダイヤルホイール及び/又は選択ロッカーなどの1つ以上の従来の入力装置の機能を置き換えることができる。これは、流体移送装置又は外部データ処理装置のいずれかに少なくとも1つの動作データシーケンスを記憶することで実現され、それにより、ユーザが意図的に流体移送装置を動かして実行した動作の詳細な評価により、特に手持ち式流体移送装置の動作入力モード中に特定の情報を入力することが可能になる。本発明者らによって実施された応用研究において、出願人は、流体移送装置の人間工学的入力装置としての利用を理解していることがわかった。被験者の経験によれば、通常は軽量の装置である手持ち式の流体移送装置は、定義された動作経路を実行するために直感的な方法で動かすことができる。このような経路は、少なくとも1つの動作データシーケンスとして測定及び記憶できる。
【0010】
本発明による流体移送装置のユーザインターフェース装置は、制御プログラムの要件に従って情報を入力するための多機能入力装置として機能する。制御装置は、入力データを使用して手持ち式流体移送装置の少なくとも1つの電子制御可能な機能を制御するための制御プログラムを実行できるデータ処理装置を備え、好ましくは入力データを使用して手持ち式流体移送装置の少なくとも2つの電子制御可能な機能を制御し、そして、最も好ましくは、入力データを使用して、手持ち式流体移送装置の複数の電子制御可能な機能を制御するためのものである。このように、ユーザインターフェース装置は、複数の従来の入力装置を効率的に交換し、制御プログラムの要件に応じて任意の情報を入力するための一般的な入力装置として機能する。
【0011】
特に、制御装置は、制御データに応じて手持ち式流体移送装置の少なくとも1つの電子制御可能な機能を制御するための制御プログラムを実行することができるデータ処理装置を備える。入力データは、電子制御可能な機能を制御するために使用でき、好ましくは、電子制御可能な機能は、入力データによって定義される操作パラメータに依存し、それにより制御データとして機能するようになる。さらに、電子制御可能な機能は、入力データを使用するように構成でき、例えば、入力データの変換及び/又は記憶、及び/又は入力データの外部データ処理装置への送信、及び/又は入力データのデータ記憶装置への送信を行う。
【0012】
流体移送装置は、1つ以上の入力操作モードを提供することができ、その間、制御装置は、流体移送装置の1つ以上の従来の入力装置を介してユーザ入力を受け取るように構成される。本発明の文脈において、動作入力モードは、特に排他的に、流体移送装置のユーザインターフェース装置の動作センサ装置を介したユーザ入力の状況を指している。ユーザインターフェース装置のさらなる入力装置は、好ましくは、動作入力モードの起動又は停止の影響を受けない。動作入力モードは、流体移送装置の任意の操作モードである。動作入力モードの活動期間中、動作データ、特に少なくとも1つの動作データシーケンスの測定が実行され、少なくとも1つの動作データシーケンスが動作データメモリに記憶される。流体移送装置は、特に制御プログラムに応じて、操作モード及び/又は入力操作モード及び/又は動作入力モードを少なくとも一時的に同時に提供することが可能である。
【0013】
動作入力モードの開始及び/又は終了は、好ましくは、活動ボタンであり得るか、又はそれを備え得る活動入力装置を介して、ユーザによってトリガされる。活動入力装置をトリガすると、動作入力モードが開始及び/又は終了し得る。例えば、ユーザは、活動入力装置を作動させることにより動作入力モードを開始し、活動入力装置を再度作動させることにより動作入力モードを終了させることができる。好ましくは、制御装置、特に制御プログラムは、活動入力装置の状態を検出することにより、動作入力モードの活動/非活動を制御するように構成される。
【0014】
しかしながら、動作入力モードの起動及び/又は停止は、特にユーザの動作を必要とせずに、制御装置の制御プログラムによってトリガされることも可能である。例えば、制御プログラムは、以前に測定された少なくとも1つの動作データシーケンスに応じて停止を自動的にトリガするように構成でき、又は、制御プログラムは、期間に応じて停止を自動的にトリガするように構成でき、動作入力モードの期間を決定する。
【0015】
制御プログラムは、以前に測定された少なくとも1つの動作データシーケンスに応じて、停止を自動的にトリガするように構成できる。評価装置が、少なくとも1つの動作データシーケンスに応じて、動作入力モードが自動的に終了するように、所定の状態が満たされたことを検出してもよい。所定の状態は、少なくとも1つの動作データシーケンスに対して評価装置によって実行される評価プロセス-流体移送装置によって測定され、その後一時的に記憶される-に特定の結果を生じることであり得る。所定の状態は、少なくとも1つの動作データシーケンス-流体移送装置によって測定され、その後一時的に記憶される-と動作パターン、特に動作データライブラリに記憶されるジェスチャとの比較に特定の結果が生じることであり得る。そのような結果は、測定された少なくとも1つの動作データシーケンスと、動作データライブラリに記憶された動作パターンの1つとの一致であり得る。結果は、評価プロセスによってエラーが見つかった場合もあり、例えば、評価により、少なくとも1つの動作データシーケンスの比較を確実に実行するには動作データの信号品質が不充分であると結論付けることができる。これは、動作入力モードの開始を手動でトリガした後、動作がまったく検出されないか、動作の変化が速すぎるか遅すぎる場合に発生する可能性がある。
【0016】
制御プログラムは、動作入力モードの期間を決定する期間Tiomに応じて、停止を自動的にトリガするように構成できる。この期間は、少なくとも1つの動作データシーケンスから導出された入力データによって制御される、流体移送装置の特定の電子制御可能な機能に依存し得る。期間Tiomは、好ましい範囲0.5s<=Tiom<=10.0s、0.5s<=Tiom<=20.0s、0.5s<=Tiom<=30.0s、0.5s<=Tiom<=40.0s、0.5s<=Tiom<=50.0s、0.5s<=Tiom<=60.0s、0.5s<=Tiom<=5.0s、0.5s<=Tiom<=4.0s、0.5s<=Tiom<=3.0s、0.5s<=Tiom<=2.0sの1つから選択でき、sは「秒」を意味する。流体移送装置は、好ましくは、期間Tiomを定義するためのユーザ入力を受け取るように構成される。制御装置、特に制御プログラムは、流体移送装置のユーザインターフェース装置を介して、ユーザに期間Tiomを入力させるように構成されてもよい。短い期間のTiomでは、スムーズなワークフローを維持できる。
【0017】
好ましくは、活動入力装置は、機械的に可動な要素、例えば、機械的に可動な接触面を備えるボタン、レバー、ロッカー、又はホイールを備えることができる。活動入力装置は、第1位置と第2位置を有し得、第1位置では、動作入力モードを停止することができ、第2位置では、動作入力モードは、活動であってもよい。活動入力装置は、第1位置から第2位置に変化するためにユーザによって押されることができるばね支持接触面を有してもよい。ユーザがばね支持接触面を離すと、ばねは接触面を第1位置に戻す。動作入力モードが停止されると、動作データが測定されないことが好ましく、及び/又は動作データシーケンスが記憶されないことが好ましい。
【0018】
活動入力装置が、例えばタッチセンシティブ接触面により、例えば、容量センサフィールドによって実装された機械的に可動な接触面を備えないことも可能であり、好ましい。この場合、これに限定されないが、活動入力装置の手動トリガに関してユーザにフィードバックを与える信号装置を提供することが特に有利である。
【0019】
好ましくは、流体移送装置は、ユーザに活動入力装置の手動トリガの信号を送るための及び/又はユーザに動作入力モードの活動及び/又は非活動の信号を送るための信号装置を有する。信号装置は、非活動に対応する少なくとも1つの第1信号と、動作入力モードの活動に対応する少なくとも1つの第2信号とをユーザに提示するように構成されてもよい。第2信号は、動作入力モードの活動の開始時に所定の期間にわたって信号を送ることができ、第1信号は、動作入力モードの非活動の開始時に所定の期間にわたって信号を送ることができる。あるいは、第2信号は、動作入力モードの活動の全期間中に実質的に信号を送ることができ、第1信号は、動作入力モードの非活動の全期間中に実質的に信号を送ることができる。信号装置は、光学及び/又は音響信号をユーザに提示するように構成されてもよい。信号装置は、好ましくは、光信号装置、例えば、少なくとも1つのLED、及び/又は音響出力装置、例えばスピーカーを備える。流体移送装置、特にユーザインターフェース装置は、表示画面を備える又は表示画面からなる少なくとも1つの表示装置を備えることが可能であり好ましく、表示装置は、-少なくとも追加的に又は排他的に-信号装置として動作するように構成される。表示画面には、通常、記号、例えば、背景に表示される文字、単語、グラフィックアイコンで表される情報が表示される。背景は、好ましくは、記号がユーザにとって読みやすいように表される。背景及び/又は記号は、特に、動作入力モードの活動及び/又は非活動に応じて、特定の色及び/又は輝度を有することができる。第1信号は、背景及び/又は記号の第1色及び/又は第1輝度によって表されてもよく、第2信号は、第1色及び/又は第1輝度とは異なる第2色及び/又は第2輝度によって表されてもよい。信号装置として表示画面の全領域又は表示画面の少なくとも一部を使用することは、直感的な方法でユーザに入力モードを知らせる信頼できる方法である。
【0020】
信号装置は、追加又は代替の目的、例えば、動作ジェスチャ認識システムによって所定のジェスチャが正常に認識され又は認識されなかったことをユーザに信号で送るために使用され、又はリアルタイムのユーザが適用した動作パターンに対するフィードバックを提供するように構成することができる。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態では、流体移送装置は、ユーザインターフェース装置を使用して、動作認識システム、特に動作ジェスチャ認識システムを実装するように構成され
、特定の動作、それぞれジェスチャは関連付けられ、特に、流体移送装置の特定の電子制御可能な機能で、特に制御データの定義又は選択、特に操作パラメータの定義又は選択に関連付けられ及び/又は例えば、流体移送を開始又は停止することにより分注プロセスの制御に関連付けられる。これに関連して、動作認識システムは、測定され、-少なくとも一時的に-動作データメモリに記憶された少なくとも1つの動作データシーケンスを好ましくは流体移送装置に、-又は代わりに外部データ処理装置に配置された動作データライブラリメモリに記憶されることが好ましい動作データライブラリに備えられる動作パターンと比較することにより、動作パターンを識別するように構成される。評価装置は、例えば、所定の動作パターン、例えば、動作パターンデータの形式のジェスチャ、例えば、動作パターンのデータベースに含まれるジェスチャデータを含む動作データライブラリにアクセスするように構成されることが好ましい。
【0022】
所定の動作パターンのデータベースは、個々の所定の動作パターンをパターン固有の所定の識別コードと関連付けするデータテーブルを備えてもよく、識別コードは入力データ又は制御データとして使用されてもよい。例えば、制御装置は、識別コードを制御プログラムのコンテキスト、特に流体移送装置の操作モードに依存し得る任意の所定のさらなる制御データと相関させる別のテーブルを備えてもよい。例えば、個々のユーザの動作、例えば「水平x軸線の周りを前方に傾ける」は、第1コンテキストでは、流体移送装置に接続された試料移送容器から液体試料を排出する分配ステップを開始するための制御信号として解釈され得、第2コンテキストでは、ユーザインターフース装置の表示画面に表示されるグラフィカルユーザインターフースを介してユーザに向けられたはい又はいいえのクエリに「はい」で応答するための制御信号として解釈され得る。
【0023】
特に、動作ジェスチャ認識システムの実装に関して、評価装置は、評価プログラムコードを含むことが好ましく、*データ処理装置が動作データライブラリメモリにアクセスできるように構成され、これは流体移送装置に備えられることが好ましく、動作パターン、特にジェスチャプロファイルのデータベースが含まれ、*動作センサによって測定された少なくとも1つの動作データシーケンスを比較し、*一致があるかどうかを判断するように構成される。さまざまなアルゴリズムとモデルを使用して、ジェスチャデータをジェスチャプロファイルと効果的に一致させることができる。好ましくは、隠れマルコフモデル(「HMM」)を使用してジェスチャを認識する。本明細書では、ジェスチャデータは、連続する記号に分割することができる。HMMは、あるシステム状態から別の状態への可能な各遷移の確率を表す統計情報を持つ、可能なシステム状態の有限セットに関して複雑なシステムを記述する数学モデルである。したがって、データ処理装置はHMMシステムを使用して、ジェスチャデータをサブパートに分割し、ジェスチャプロファイル情報とそれらを比較して一致の確率を判断できる。
【0024】
動作パターン、特にジェスチャのさまざまなスキームを使用して、ユーザが流体移動装置を介して認識可能なジェスチャを正確に生成できるようにし、データ処理装置が少なくとも1つの動作データシーケンスを正しく解釈できるようにすることが理想的である。例えば、ユーザが実行できる自然な反応に対応する自然なジェスチャを使用できる。例えば、特に流体移送装置の本体の下端を固定しながら、流体移送装置の傾斜角を垂直方向に動かすと、容器から液体を注ぐというジェスチャを模倣し、分注プロセス中に、流体移送装置に取り付けられた試料移送容器から液体試料の排出を開始するために使用できる。分注プロセス中に反対の動作を使用して試料を吸引することができる。
【0025】
好ましくは、動作データライブラリは、そのような所定の動作パターンを含み、これは、動作ジェスチャ認識システムによって容易に区別することができる。
【0026】
好ましくは、所定の動作パターンは、動作の1つ以上のサブパターンを含む。例えば、所定の動作パターンは、並進動作を含む第1サブパターンと、それに続く異なる方向の並進動作又はその逆を含む第2サブパターンを含むことができる。
【0027】
好ましくは、所定の動作パターン又はサブパターンは、少なくとも1つの動作センサの、好ましくは単一の回転軸線周りの回転に対応する。回転はさらに、回転によって囲まれた角度によって特徴付けられてもよい。好ましくは、所定の動作パターン又はサブパターンは、好ましくは単一の軸線に沿った少なくとも1つの動作センサの並進に対応する。好ましくは、所定の動作パターンは、少なくとも1つの動作センサの湾曲動作、好ましくは平面内又は3次元すべての湾曲動作に対応する。ジェスチャの動作は、1次元、2次元、又は3次元のいずれかで行うことができる。ユーザは、空間の中心点から側面、上部、下部、及び角に向かってジェスチャを行い、任意で再び中心点に戻ることができる。
【0028】
好ましくは、ユーザは、数字応答、文字応答、又は他の記号の形で制御装置に入力を提供する必要がある場合がある。動作ジェスチャ認識システムは、数字及び/又は文字を認識するように構成されてもよい。
【0029】
バイナリ応答の形式のジェスチャ、すなわち「はい」又は「いいえ」などの「1」又は「0」が望ましい実施形態では、単純で簡単に再現及び解釈される動作パターンを使用できる。一例では、流体移送装置の単純な上下動作を使用して、「1」応答を生成することができる。さらに、左右の動作を使用して、「0」応答を示すことができる。あるいは、流体移送装置の正の回転方向の傾斜を使用して「1」情報を示し、反対方向の傾斜動作を使用して「0」情報を示すことができる。このような応答は、一般的なはい又はいいえに対応する自然な応答である。したがって、それらは直感的であるが、正確に作成することも容易であり、適切な解釈の高精度に役立つ。
【0030】
情報「1」又は「0」は、クエリの応答として制御装置によって解釈され得、例えば、ユーザインターフェース装置の表示画面経由でユーザに向けられる。バイナリ情報は、表示画面に表示されるグラフィカルユーザインターフェースで提案されたパラメータを選択又は選択解除するか、又は例えば、ユーザが定義する操作パラメータの可能な値のリストを移動するために、グラフィカルユーザインターフースの構造によって定義される方法で「上」、「下」、「左」、「右」の方向に移動するのに適している。流体移送装置の特定の操作モードでは、バイナリ情報は、分注プロセスに関連する機能を直接開始又は停止することができ、例えば、試料の吸引又は排出の開始、又は試料の停止である。
【0031】
さらに、動作センサ装置を介したユーザの入力は、電子制御可能な機能に影響を及ぼすための制御データを決定するために、ユーザインターフェース装置の従来の入力装置からの入力と組み合わせて制御装置によって解釈され得る。このようにして、例えば、操作パラメータの微調整を実装できる。
【0032】
特定の操作モードでは、完全又は部分的な円形経路に沿ったジェスチャを使用して、グラフィカルユーザインターフェースに表示されるユーザメニュー又はリストを段階的にナビゲートでき、単一の円動作は「次の」操作として解釈されてもよい。
【0033】
特定の操作モードでは、第1方向又は第1回転軸線の周りの傾きであるジェスチャを使用して、グラフィカルユーザインターフェースに表示されるユーザメニュー又はリストを介して第1画面方向にスクロールでき、第1方向と反対の方向の傾きを使用して、反対の画面方向にスクロールできる。
【0034】
特定の操作モードでは、揺れ動作を含むジェスチャは、以前の入力を消去し、新しい入力の準備をするために解釈され得る。
【0035】
好ましくは、動作センサ装置によって測定される動作は、軸線、特に非水平軸線又は垂直軸線に沿って、デカルト座標系の平面で、ユーザによって実行される、流体移送装置又は1つ以上の動作センサの動作であり、あるいは、デカルト座標系の3軸線x、y、及びzによって定義される空間内の3次元の動作である。好ましくは、動作センサ装置は、前記タイプの動作を測定するように構成される。
【0036】
制御装置は、動作パターンが認識されたか、又は認識されなかったことを、流体移送装置の信号装置を介して信号を送るように構成されてもよい。これにより、ジェスチャ認識に基づく流体移送装置のユーザインターフェース装置の使いやすさがさらに向上する。信号装置によって出力される特定の信号は、少なくとも1つの動作データシーケンスの評価結果に依存する場合がある。
【0037】
制御装置は、流体移動装置の信号装置を介して、サブ動作パターンが認識されたか、又は認識されなかったことの信号を送るように構成されてもよい。信号装置によって出力される特定の信号は、少なくとも1つの動作データシーケンスの評価結果に依存する場合がある。このようにして、正しい方法で所定の動作パターンを模倣するようにユーザを訓練することができる。
【0038】
制御装置は、流体移送装置の信号装置によって、少なくとも1つの測定された動作データシーケンスに含まれる動作データが所定の基準を満たすこと、例えば、流体移送装置の加速度、割合又は速度が所定の範囲の加速度又は速度に一致するか、又は流体移送装置の加速度、割合又は速度が、好ましくはリアルタイムで所定の下限又は上限を超える信号を送るように構成され得る。このように、動作中のユーザのパフォーマンスを推定できるように、ユーザに資格フィードバックを提供でき、ユーザは、正しい方法で所定の動作パターンを模倣するように訓練できる。
【0039】
動作データライブラリメモリは、好ましくは、流体移送装置内に、-又は代わりに外部データ処理装置内に配置されることが好ましい。動作データライブラリメモリは、少なくとも1つの動作データシーケンスを一時的に記憶するための揮発性メモリであることが好ましい。しかしながら、動作データライブラリメモリは、動作データシーケンスの永続的な記憶を可能にするための不揮発性メモリであること、又は揮発性メモリに加えて不揮発性メモリが提供されることも可能であり、好ましい。不揮発性メモリは、流体移送装置又は外部データ処理装置の一部であってもよい。流体移送装置は、少なくとも1つの物理データメモリ、特に、動作データメモリ、入力データメモリ、他のデータ用のメモリとして機能する揮発性メモリを備えてもよい。流体移送装置は、少なくとも1つの物理データメモリ、特に不揮発性メモリ、例えば、動作データメモリ、入力データメモリ、動作データライブラリメモリ、その他のデータのメモリとして機能するフラッシュメモリを備えてもよい。
【0040】
特にユーザインターフェース装置を使用した認証プロセス、又は他の認証装置、例えば本体、特に流体移送装置のハンドル部に組み込まれた指紋センサにより、ユーザが認証されるように制御装置を構成することが好ましい。好ましくは、認証によってユーザ識別コード(ユーザID)が生成される。ユーザを識別することで、ユーザの活動、特にユーザが実行した動作データシーケンスを監視できる。好ましくは、ユーザIDは、特に動作データシーケンスの永続記憶装置に、特にそれぞれのユーザによって実行された動作データシーケンスとともに、制御装置によって永続的に記憶される。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、流体移送装置は、ユーザインターフェース装置を使用して文字認識システムを実装するように構成され、文字として解釈される少なくとも1つの動作データシーケンス、又はジェスチャは、ポインティング装置として流体移送装置を利用するユーザによって描かれる。文字認識は、流体移送装置の統合機能であってもよく、又は少なくとも1つの動作データシーケンスは、流体移送装置が無線又は有線データ接続で接続され得る外部データ処理装置とも呼ばれる外部装置に転送されてもよい。文字認識システムは、動作データライブラリによって知られている任意のアルファベットに従って、既知の数字及び/又は文字の認識を含んでもよい。
【0042】
文字認識システムを実装する場合、制御装置は、少なくとも1つのユーザの動作データシーケンスを操作パラメータの値の定義として解釈するように構成することができる。例えば、ユーザインターフェース装置の表示画面は、例えば「容量?」というテキストを表示するなど、操作パラメータの値を問い合わせることができ、ユーザは、例えば、空中で文字列、特に数字「100」を描くことによって流体移送装置の動作を実行することによりクエリに応答することができる。この文字列は、特に流体移送装置の特定の操作モード中に、制御プログラムのそれぞれのコンテキストで操作パラメータ「容量」が100μlと定義されたことを意味するように制御装置によって解釈され得る。
【0043】
さらに、文字認識システムを実装する場合、制御装置は、ユーザの少なくとも1つの動作データシーケンスを、ユーザが入力するそれぞれの操作パラメータの値の代わりに、又はそれに加えて、操作パラメータ自体の定義として解釈するように構成できる。例えば、流体移送装置は操作モードであってもよく、ユーザ入力は、それぞれの操作モードに関連する、特にそれぞれの操作モードに関連付けされた一連の操作パラメータに関連する少なくとも1つの操作パラメータを定義することが予期される。例えば、ユーザインターフェース装置の表示画面は、ユーザからの入力を問い合わせし、例えば、「パラメータを待っている」というテキストを表示し、ユーザは、例えば、空中で文字列「V100」を描画することによって、流体移送装置の動作を実行することによりクエリに応答し得る。制御装置は、定義されるそれぞれの操作パラメータのエイリアスである文字を予期し、ここで、「V」は「容量」のエイリアスである。文字列「V100」は、特に流体移送装置の特定の操作モード中に、制御プログラムのそれぞれのコンテキストで操作パラメータ「容量」が100μlと定義されたことを意味するように制御装置によって解釈され得る。
【0044】
さらに、文字認識システムを実装するとき、制御装置は、流体移送装置を使用して分注プロセスを自動的に実行する方法の定義として、ユーザの少なくとも1つの動作データシーケンスを解釈するように構成され得る。ユーザによって提供され認識される文字列は、流体移送装置を使用して分注プロセスを自動的に実行するための方法をプログラミングするためのスクリプトコードであってもよい。スクリプトコードは、制御装置とユーザに知られている必要がある。特に、このような比較的大量の情報の場合、他の従来の入力装置と比較すると、動作検出に基づくユーザインターフェース装置はかなり効率的である。
【0045】
少なくとも1つの動作データシーケンスが文字列として解釈される場合、制御装置は、少なくとも1つの動作データシーケンスの中止によって表される文字列の終わりを検出するように構成されてもよい。このような中止は、所定の期間、例えば1秒以上、実質的に動作は検出されないと考えられ得る。
【0046】
さらに、文字認識システムを実装すると、ユーザから大量の情報を読み取り、その情報を流体移送装置の不揮発性メモリに記憶したり、そのような情報を外部データ処理装置に転送したりできる。例えば、ユーザは、メッセージ、通知、又はプロトコルを含むより大きな情報をユーザインターフェース装置を介して入力するように求められ得、それらは永続的に記憶される。永続的に記憶された情報は、流体移送装置を使用してユーザが編集することもできる。
【0047】
測定された少なくとも1つの動作データシーケンスは、分注プロセスを直接開始又は停止するように、特に流体移送容器、例えば、流体移送装置の接続部に取り付けられたピペットチップ又はディスペンサーチップからの液体試料の吸引又は排出を開始又は停止すると解釈され得る。例えば、流体移送装置を下向きに動かし、標的試料容器又はウェルプレートの標的試料ウェルの真上又は内部でこの動作を停止する場合、例えばそのような試料容器の底部又は壁に当接することにより、所定量の試料の試料容器又は試料ウェルへの排出を自動的にトリガしてもよい。
【0048】
流体移送装置は、データインターフェース装置を備えてもよく、例えば、外部データ処理装置との有線又は無線データ接続を提供するためのケーブル接続又は通信装置用のソケットである。このようなデータ接続を使用して、情報、特に前記の大きな情報を、好ましくは、流体移動装置が使用される同じ実験室内のLIMS(実験室情報管理システム)又はELN(電子実験室ノート)に転送できる。
【0049】
ユーザインターフェース装置は、ユーザ入力を受信するように構成されている。ユーザインターフェース装置は、ユーザが流体移送装置に情報を入力できるようにするための1つ以上の入力装置を提供してもよい。入力装置は、機械又は容量ボタン、スイッチ、ダイヤルホイール、選択ロッカー、タッチ画面、又は他の従来の入力手段であってもよく、又はそれらを備えてもよい。さらに、ユーザインターフェースは、情報をユーザに提示するための1つ以上の出力装置を備えてもよい。出力装置は、任意の適切な技術に基づいて、1つ以上の表示装置、特に表示画面であってもよく、又はそれらを備えてもよく、例えば、LCD又はOLEDである。
【0050】
本発明によれば、動作検出システムが流体移送装置に実装され、動作検出システムは、好ましくは、動作センサ装置と、好ましくは評価プログラムコードである評価アルゴリズムとを備える。ユーザインターフェース装置は、手持ち式流体移送装置の動作データを測定するための少なくとも1つの動作センサ装置を備える。動作データの測定は、流体移送装置で完全に実行され、測定には、測定に関与する外部データ処理装置は一切備えられないことを意味する。動作検出システムの機能及び構成要素の一部は、流体移送装置から離れて実行されてもよい。好ましい実施形態では、動作検出システムは、流体移送装置に完全に実装され、これは、動作検出システムの機能又は構成要素が、例えば、外部データ処理装置を使用する流体移送装置から離れて実行されることは必須ではないことを意味する。動作検出システムは、特に動作センサ装置を備える動作データを測定するための機能及び構成要素と、少なくとも1つの動作データシーケンスを評価、特に変換、転換、比較及び/又は認識するための機能及び構成要素を備えてもよい。
【0051】
少なくとも1つの動作データシーケンスが、流体移送装置の動作データメモリに少なくとも一時的に記憶される。さらに、少なくとも1つの動作データシーケンスが、例えば、評価の目的のために外部データ処理装置に転送される可能性がある。流体移送装置は、外部データ処理装置から第2入力データを受信するように構成されてもよい。そのような第2入力データは、外部データ処理装置を利用することにより、動作データ又は少なくとも1つの動作データシーケンスを変換、転換、比較及び/又は認識することにより取得され得る。流体移送装置と外部データ処理装置との間のデータの転送は、無線データ接続を使用して実行され得る。その目的のために、流体移送装置は、無線データ交換のための任意の技術、例えばWLAN(無線ローカルエリアネットワーク)又は無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)、特にWi-Fi、Bluetoothに基づいてもよい。
【0052】
制御装置は、好ましくは、動作データを評価するための評価装置を備え、評価装置は、制御装置の一部であり得る、特に電子回路を利用する。評価装置は、好ましくは、特に動作データを圧縮、フィルタリング、又は単にシフト又は転送することの一部を選択することにより、あるいは動作データを変換、転換、圧縮、比較、及び/又は認識することにより、動作データの評価に応じて入力データを提供するように構成された評価プログラムコードによって実装され、後者は特にジェスチャ認識又は文字認識である。評価装置はまた、特に制御装置のデータ処理装置に加えて特にデータ処理装置又はマイクロ処理装置を備える専用装置であってもよい。これにより、動作検出を評価するタスクから制御装置の負担が軽減され、動作検出がより効率的になる可能性がある。
【0053】
好ましくは、動作センサ装置は、座標系の少なくとも1つの直線方向、好ましくは座標系の少なくとも2つの異なる方向、又は好ましくは座標系の3つの異なる方向に沿った流体移送装置の動作を検出できる1つ以上の動作センサを備える。好ましくは、動作センサ装置は、座標系の少なくとも1つの直線方向の周りの、好ましくは座標系の少なくとも2つの異なる方向の周りの、又は好ましくは座標系の3つの異なる方向の周りの流体移送装置の角速度を測定できる1つ以上の動作センサを備える。前記座標系は好ましくはデカルト座標系であり、座標系の前記方向は好ましくはデカルト座標系の直交方向x、y及びzである。
【0054】
好ましくは、動作センサ装置は、単一の動作センサを備える。好ましくは、動作センサ装置は、異なる動作データを測定するように構成され得る2つの動作センサを備える。これには、異なる動作方向に沿った測定、及び/又は異なる物理量、例えば、流体移送装置の加速度と角速度測定の組み合わせの測定が含まれる。さらに、動作に関する異なる又は補足的な情報を提供するために、動作センサを流体移送装置の異なる位置に配置してもよい。動作センサ装置は、異なるセンサ、好ましくは2つ又は3つのセンサ、又は異なる物理量例えば、開始位置に対する手持ち式流体移送装置の並進又は回転、又は地上磁場の測定に関する量を測定するためのより多くのセンサを備えてもよい。
【0055】
好ましくは、流体移送装置は、細長い形状を有する本体を有し、特に、ピストンは、流体試料の吸引と廃棄を行うために、円筒形の気密スリーブの長さに沿って延びる仮想軸線に沿って移動する。流体移送装置の本体の一部は、ユーザの片手で保持するようになっているハンドルとしても機能する。流体移送装置は、典型的には、本体の一端を有し、そこに接続部、例えば、試料移送容器、例えば、ピペットチップ又はディスペンサーチップを接続するための作業コーンが提供されている。前記端は下端とも呼ばれる一方、反対側の端は流体移送装置の上端とも呼ばれる。ハンドル部分は、典型的には、軸線に沿って測定された流体移送装置の本体の中央又は上半分に位置する。
【0056】
動作中、接続部を備える流体移送装置の端は、上方向ではなく下方向に、すなわち、むしろ流体実験室試料が接続部の方向に流れないようにするために、重力の方向に対するよりも重力の方向にユーザによって位置合わせされなければならない。流体移送装置の移動は、並進動作及び/又は回転動作を含むことができ、並進動作を測定するための1つの動作センサを提供することができ、例えば、加速度センサ、及び回転動作を提供するための1つの動作センサ、例えば、単一の動作センサと比較して詳細を強化して動作を検出するのに有利である角速度センサである。代替的又は追加的に、同じタイプの2つの動作センサ、例えば加速度又は角速度の検出は、冗長又は補足情報を提供するために供給され得る。このようにして、動作データの改善が達成される。
【0057】
好ましくは、少なくとも1つの動作センサ、1つの単一動作センサ又は、第1動作センサ、あるいは2つの動作センサが、流体移送装置の中央領域、上半分、好ましくは上3分の1、好ましくは上4分の1、最も好ましくは、上端に配置され、前記位置は、流体移送装置の本体を通る前記軸線に沿って測定される。このような位置決めにより、ユーザ定義の流体移送装置の下端の点、特に接続部又はそれに取り付けられた試料移送容器が、-ほぼ又はおそらく-点を移動せずにユーザによって固定されたときに、動作センサからの信号を最大化できる。これは、接続部に接続された試料移送容器に含まれる試料の動作を最小化すると同時に、動作センサの動作、特に動作センサの加速度を最大化することが望ましい場合がある。動作センサの動作を最大化すると、測定信号が改善され、動作の検出及び/又は認識が改善される。
【0058】
好ましくは、少なくとも1つの動作センサ、1つの単一動作センサ又は第2動作センサ、あるいは2つの動作センサは、流体移送装置の下半分、好ましくは下3分の1、好ましくは下4分の1、及び/又は下端に配置される。そのような第2動作センサは、少なくとも1つの第1動作センサの代わりに又は補完的に使用されてもよい。
【0059】
少なくとも1つの第1及び少なくとも1つの第2動作センサを供給することにより、流体移送装置の上半分及び下半分の相対動作を検出することが可能になる。少なくとも1つの第1動作センサと少なくとも1つの第2動作センサの信号は、評価装置によって比較されてもよく、特に信号の加算又は減算が提供されてもよい。これにより、動作検出の品質を向上させることができる。
【0060】
加速度又は角速度を測定する場合、ユーザが、流体移送装置の点を通る、例えば流体移送装置の中心を通る仮想軸線の周りで流体移送装置を旋回させる動作を実行することができる。流体移送装置の本体に沿った異なる位置に2つの動作センサを提供すると、動作をより正確に検出できる。
【0061】
好ましくは、第1及び第2動作センサの両方、又はそれぞれ複数の各々の信号は、流体移送装置の同じ動作を分析するために個別に評価される。このように、少なくとも1つの第1及び少なくとも1つの第2動作センサを提供することにより、より複雑な動作を検出することができる。例えば、流体移送装置が前記点の周りを回転している間に、流体移送装置の上端又は下端あるいは中央の点がユーザによって固定されてもよい。これにより、より多くの動作を認識し、互いに区別することができる。
【0062】
動作センサ装置は、流体移送装置に実装可能な任意の技術に基づいていてもよい。動作データは、例えば、加速度、振動信号、磁気、無線周波数エネルギー、光放射、又は音の検出に基づいて動作センサ装置を使用することにより取得され得る。角速度測定は、1つ以上の電気機械センサ、例えば、MEMSジャイロスコープを備える振動構造ジャイロスコープ、又は電気化学センサなどを使用して実現できる。
【0063】
動作センサは、好ましくは、微小電気機械システム(MEMS)によって実装されるセンサであり、それにより、実装のためのスペースとコストを節約する。
【0064】
好ましくは、動作検出装置は少なくとも1つの加速度センサを備える。好ましくは、加速度センサは、各々正及び負の方向を有するx、y及びz軸線を有するデカルト座標系によって定義される6方向の加速度を検出する。通常、水平面上の定常状態のこのような加速度センサは、x軸線で0g、y軸線で0gを測定するが、z軸線は1gを測定し、g=9.8m/sである。そのような加速度センサの例は、スイスのSTMicroelectronicsから市販されているLIS331DLHである。
【0065】
好ましくは、動作検出装置は、少なくとも1つのジャイロスコープセンサを備える。好ましくは、ジャイロスコープセンサは、各々正及び負の回転方向を提供するx、y及びz軸線を有するデカルト座標系によって定義される6方向の周りの角速度を検出する。そのようなジャイロスコープセンサの例は、スイスのSTMicroelectronicsから市販されているL3GD20である。
【0066】
好ましくは、動作検出装置は、少なくとも1つの磁場センサ、特に地理的方向を検出するための地磁気センサ(コンパス機能)を備える。磁場センサを加速度センサ及び/又はジャイロセンサと組み合わせて使用して、それぞれ動作検出又は位置検出の精度を向上させることができる。そのような地磁気センサの例は、ドイツのボッシュから市販されているBMM150、又は複合センサBMC150である。
【0067】
好ましくは、動作検出装置は、少なくとも1つの複合センサを備え、パラメータ加速度(1D、2D及び/又は3D)、角速度(1、2又は3つの直交軸線周り)、位置(1D、2D及び/又は3D)又は地磁場の少なくとも2つを測定する。複合動作センサは、動作データの品質を改善し、したがって、本発明による流体移送装置を使用するときのワークフローを改善する。
【0068】
制御装置は、電気回路、特に集積回路、及び/又はデータ処理装置、特にマイクロ処理装置(CPU)及び/又はマイクロコントローラ(MCU)、データ記憶装置及び/又はプログラム記憶装置を有する。制御装置は、プログラムコードを処理するように構成できる。プログラムコードは、本発明の範囲内で説明される流体移送装置の好ましい実施形態に従って、少なくとも1つの動作データシーケンスを評価するための評価プログラムコードを実装又は実行するように構成され得る。制御装置は、制御プログラムを記憶するための制御プログラムメモリを有することが好ましい。
【0069】
制御データは、流体移送装置の少なくとも1つの電子制御可能な機能に影響を与えるかそれを決定する任意のデータであると理解される。「動作センサ装置を備えるユーザインターフェース装置」という入力装置を使用して制御データを生成する概念は、制御データを生成するためにも使用される従来の入力装置の機能に類似している。制御データは、操作パラメータの値を表すことができ、それに応じて制御装置によって解釈され、表示画面のグラフィカルユーザインターフェースに示される要素のユーザチョイス又は選択、すなわち画面上のユーザ定義のマーキングを表すことができ、又はチョイス又は選択の確認を表すことができ、すなわち、コンピュータのキーボードの従来の機能「入力」に匹敵する。流体移送装置の電子制御可能な機能は、分注プロセスに関連する機能であり得、例えば試料の吸引及び/又は排出のためにピストンを制御して、又は分注プロセスを定義し、例えば操作パラメータを設定することによりなされる。流体移送装置の電子制御可能な機能はさらに、分注プロセスに関連しない機能、例えば{操作モード間の切り替え、グラフィカルユーザインターフェースのページの切り替え、制御装置に記憶される絶対時間及び/又は日付の設定、流体移送装置の動作、ユーザ認証によりトリガされた待ち受けモードからの起動、流体移送装置内の装置間、又は流体移送装置と外部データ処理装置との間で又は実験室ネットワーク、特にLIMS又はELNでデータを転送すること}を含むグループから選択された機能であり得る。
【0070】
特に、制御装置は、少なくとも1つ、特に複数の操作パラメータに従って、特に自動又は半自動で分注プロセスを制御するように構成される。分注プロセスは、流体移送プロセスとも呼ばれ、流体試料の吸引及び/又は廃棄が含まれる。自動制御とは、分注プロセスを実行するために、分注装置のユーザインターフェース装置を介してユーザによって実質的に開始信号のみが入力されること、及び/又は特に分注装置に接続された少なくとも1つの移送容器への少なくとも1つの流体試料の受け取りプロセスは、ユーザ入力を必要とせずに実行でき又は実行され、及び/又は特に分注装置に接続された少なくとも1つの移送容器からの少なくとも1つの流体試料の分注プロセスは、ユーザ入力を必要とせずに実行でき、又は実行されることを意味する。半自動制御の場合、開始信号の入力に加えて、受信又は分配プロセスを実行するために、少なくとも1つの追加のユーザ入力が必要であり、例えば、開始信号を入力した後、分注プロセスを実行する前に、ユーザが使用する少なくとも1つの操作パラメータを確認するための入力である。-自動制御と半自動制御の-両方の制御は、ユーザが情報を入力するために実行する少なくとも1つの動作データシーケンスの影響を受ける場合がある。
【0071】
流体移送装置は、1つの操作モード又は複数の操作モードで動作するように構成することができる。1つの操作モードは、流体移送装置の1つの分注プロセスに影響し又はそれを制御する流体移送装置の1つ以上の操作パラメータを備えたセットを提供し、自動的に問い合わせ、設定及び/又は適用することができる。操作値の値がどうあるべきかについての決定は、概して、流体移送装置を使用するときにユーザによってそれぞれ行われ、操作パラメータはそれに応じて設定される。一連の操作パラメータのうちの少なくとも1つの操作パラメータ、特に速度パラメータのこの少なくとも1つの速度値は、制御装置によって設定される。制御パラメータ又は操作パラメータの定義又は選択、特に操作モードのチョイスは、流体移送装置のユーザインターフェース装置の表示画面に表示されるグラフィカルユーザインターフェースを介してユーザに問い合わせることにより実行されることが好ましい。制御パラメータ又は操作パラメータの定義又は選択は、特にジェスチャ認識を実装することにより、流体移送装置の少なくとも1つの所定の動作を実行することにより、ユーザによって実行されることが好ましい。
【0072】
分注プログラムに従って、プログラム可能な分注装置の分注プロセスは、典型的には、開始容器から分注装置に接続された分注容器に特定の量の試料を吸引し、特にその後、再度分配することができ、特に計量された方法で標的容器に放出される。用途に応じて、試料(複数可)の受け取り及び/又は分配は、受け取り及び分配ステップの特定の順序、特定のシーケンスに従うことができ、時間に依存した方法で実行でき、時間を一致せることができる。分注操作プロセスは、好ましくは、一連の操作パラメータによって制御でき、それによって、前述のプロセスを望み通りに影響させることができる。
【0073】
分注操作プロセスを制御するための操作パラメータは、分注装置に接続された分注容器に試料を吸引するステップ、又はこの分注容器から試料を分注するステップで分注する容量の設定に関連することが望ましく、任意にシーケンスとステップの繰り返しに関し、及び任意でこれらのプロセスの時間分布における時間パラメータに関し、特にさらにそのようなプロセスの時間変化、特に、試料の吸引又は分注の速度値及び/又は加速度に基づく速度に関する。本発明によれば、設備は、速度パラメータの少なくとも1つの速度値が制御装置によって設定されるようになっている。
【0074】
分注操作プロセスは、一連の操作パラメータによって一意に設定されることが好ましい。この一連の操作パラメータは、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、特に分注装置の操作装置を介して、ユーザによって選択及び/又は入力されることが好ましい。所望の分注プロセスを実行するための制御プログラムは、一連の操作パラメータによって制御されることが好ましい。制御プログラムは、それぞれ制御装置の電気回路の形で構成でき、及び/又は制御装置を制御するのに適した実行可能なプログラムコードによって構成できて、それは好ましくはプログラムコードによって制御可能であり、好ましくはプログラム可能である。
【0075】
分注装置は、好ましくは、ユーザが入力したパラメータ値を自動的に確認し、それぞれの操作パラメータの許容範囲と比較するように構成されている。ユーザが入力したパラメータ値が許容範囲外にある場合、入力は受け入れられないか、デフォルト値に設定されることが好ましく、例えば、最小値、最大値、又は入力された残りの許容値であり得る。
【0076】
分注装置の動作状態は、特に、分注装置の準備完了状態を示し、分注プロセスを実行するために必要な操作パラメータは、これらの値に基づいて分注プロセスを実行できるような値を有する。
【0077】
流体移送装置は、1つの操作モード(複数の操作モード)又は複数の操作モードで動作するように設計されてもよい。操作モードは、自動的に要求、選択、及び/又は適用されるように、流体移送装置の分注プロセスに影響又はそれを制御する流体移送装置の1つ以上の操作パラメータを含むセットを提供してもよい。
【0078】
通常、分注プロセスは、特定の量の試料を開始容器から流体移送装置に接続された分注容器に移し、その後、特に計量式で送り先の容器に戻すことを含む分注プログラムを提供する。用途に応じて、試料(複数可)の受け入れ及び/又は送達は、特定の順序パターン、特に移送及び送達ステップの順序に従うことができ、時間に基づいて行うことができ、タイミングの観点から調和することができる。分注プロセスは、好ましくは、引用されたプロセスに望ましい方法で影響を与えるために使用できる一連の操作パラメータによって制御することができる。ユーザは、流体移送装置の所定の動作を提供することにより、一連の操作パラメータの一部であり得る少なくとも1つの操作パラメータに影響又は修正を加えることができ、これは次に流体移送装置によって測定及び評価される。
【0079】
流体移送装置に接続された分注容器に試料を吸引するステップの場合、又は、試料がこの分注容器から送達されるステップの場合、分注プロセスを制御するための操作パラメータは、分注される容量の選択に好ましくは関し、これらのステップの順序と繰り返しに関する可能性があり、及びこれらのプロセスの時間的分布の時間的パラメータに関する可能性があり、特にそのようなプロセスの経時的な変更にさらに関し、特に、吸引又は送達される試料の速度及び/又は加速度に関する。
【0080】
分注プロセスは、操作パラメータセットによって明示的に規定されることが好ましい。この操作パラメータセットは、特に流体移送装置のユーザインターフェース装置を使用して、ユーザによって少なくとも部分的かつ好ましくは完全に選択及び/又は入力されることが好ましい。
【0081】
ただし、分注プロセスが操作パラメータセットによって明示的に規定されていない可能性がある。少なくとも1つの操作パラメータは、ユーザによって規定されるのではなく、例えば、既知のパラメータ(複数可)として、例えば、その中に記憶されることにより、流体移送装置によって規定されることも可能であり、好ましい。流体移送装置は、少なくとも1つの操作パラメータを自動的に決定するように設計されてもよい。
【0082】
操作モード及びそれに関連することが好ましい操作パラメータについて以下に説明し、各々が流体移送装置に提供されることが好ましい。
【0083】
好ましくは、分注される分注容量を定義するために使用される操作パラメータが提供される。吸引ステップ中に吸引される吸引量を定義するために使用される操作パラメータが提供され、及び/又は送達ステップ中に送達される送達量を定義するために使用される操作パラメータが提供され得る。
【0084】
好ましくは、直接連続又は間接連続分注容量の数を規定するために使用される少なくとも1つの操作パラメータ、好ましくは吸引ステップ及び/又は送達ステップの数を規定するために使用される少なくとも1つの操作パラメータが提供され、各場合、好ましくは、それぞれの関連する分注容量、それぞれの関連する分注速度及び/又は加速度、及び/又はステップ間のそれぞれの関連する時間間隔も含まれる。
【0085】
好ましくは、1つの操作モードは、試料の「分配」(DIS)に関する。関連する操作パラメータは、各場合において好ましくは、複数の送達ステップのうちの1つの間の分注容量に関係する個々の試料の容量、送達ステップの数、試料(複数可)が受け入れられる速度、試料(複数可)が送達される速度である。分注機能は、マイクロタイタープレートに試薬液をすばやく充填するのに特に適しており、例えばELISAの実行に使用できる。
【0086】
好ましくは、1つの操作モードは、試料の「自動分配」(ADS)に関する。関連する操作パラメータは、各場合において好ましくは、複数の送達ステップのうちの1つの間の分注容量に関係する個々の試料の容量、送達ステップの数、送達ステップが一定の時間間隔で連続して自動的に実行される期間の期限-期間は、これらの時間間隔、又は例として、連続する送達ステップの終了と開始の間の遅延を規定でき、試料(複数可)が受け入れる速度、試料(複数可)が送達される速度である。ユーザは、操作動作、例えば、キーを押すなどによって送達ステップを繰り返し開始する必要はないが、むしろ、自動分配が開始された後、送達は時間管理下で行われるため、この分配機能は、マイクロタイタープレートを充填するのにさらに便利である。操作モードの他の操作プログラムと同様に、自動分配は、少なくとも操作要素が中断することなく操作された場合に、例えば、キーが中断されることなく押されたままになっている場合に、関連するプログラムが実行されるという条件の下で行われ得る。これは、例えば、時間枠に正確に注意する必要がある長い分注操作又は反応の場合に有利である。この場合、ユーザは自分で単一の送達ステップを開始する必要はないが、例えば、ELISAを実行するために使用できる、これが自動的に行われるため、自動分配機能は、マイクロタイタープレートの充填にさらに便利に適する。
【0087】
好ましくは、1つの操作モードは、試料の「分注」(Pip)に関する。関連付けられた操作パラメータは、各場合に好ましくは、分注される試料の容量、試料が受け入れられる速度、試料が送達される速度である。
【0088】
好ましくは、1つの操作モードは、試料の「後続の混合を伴う分注」(P/Mix)に関する。関連する操作パラメータは、各場合に好ましくは、吸引される試料及び/又は送達される試料の容量、混合量、混合サイクルの数、試料が受け入れられる速度、試料が送達される速度である。非常に少量を分注する場合は、「後続の混合を伴う分注」機能をお勧めし、例えば、計量容量<10μLを選択した場合、これをそれぞれの反応液に流すことをお勧めする。これは、液体が送達された後の混合動作の自動開始により可能である。混合容量及び混合サイクルも事前に定義されている。この操作モードの用途の1つは、液体の送達であり、液体の物理的特性のため、水よりも計量が難しく、例えば、分注容器、特にピペットチップ内の残留物を既に提示されている液体を使用して、分注容器又はピペットチップから洗い流す。さらなる用途は、送達された液体と提示された液体との即時の混合である。この操作モードは、例えばDNAをPCR混合溶液と混和する場合に有利である。
【0089】
好ましくは、1つの操作モードは、「逆分配」又は吸引のための「ASP」とも呼ばれる試料の「複数回の受け入れ」に関する。関連する操作パラメータは、各場合に好ましくは、吸引される試料(複数可)の量、試料数、受け入れの速度、送達の速度である。この機能は、ある量の液体を複数回受け入れて、全体の量を送達するために使用される。この場合、1つのプロセスで分注容器に複数回充填するための設備は無い。速度はすべての試料で同じである。以下は、実行中に行われることが好ましく、基本位置から開始して、流体移送装置は、オペレータ制御装置の第1タイプの操作の結果としてそれぞれの部分容量を受け入れる。最後の部分容量が受け入れられたとき、流体移送装置は、好ましくは、オペレータ制御装置の第2タイプの操作により、好ましくはユーザによる確認が必要な警告メッセージを出力する。オペレータ制御装置が次に第2方法で操作されると、容量全体が再び送達される。第1又は第2タイプの操作のために、オペレータ制御装置は、好ましくは少なくとも2つの制御ボタンを有し、一方は「第1タイプ」のオペレータ制御信号を制御装置に入力し、他方は「第2タイプ」のオペレータ制御信号を制御装置に入力する。オペレータ制御装置は、ロッカーを有することができ、特に、流体移送装置の長手方向の軸線に対して垂直な軸線を中心に、特に、第1タイプの操作のための「ロッカーアップ」第1信号開始位置と第2タイプの操作のための「ロッカーダウン」第2信号開始位置との間で旋回できる。
【0090】
好ましくは、1つの操作モードは、「希釈」とも呼ばれる試料の「希釈」(Dil)に関する。関連する操作パラメータは、各場合に好ましくは、試料容量、気泡容量、希釈剤容量、受け入れの速度、送達の速度である。最大希釈剤容量=公称容量-(試料+気泡)である。この機能は、気泡による分離と全量の送達を伴う試料及び希釈剤の受け入れに使用される。速度は、すべての部分容量で同じである。以下が実行中に行われることが好ましく、基本位置から開始して、流体移送装置はまず希釈剤容量、次に気泡、そして試料を受け入れる。各受け入れは、好ましくは、第1タイプのオペレータ制御装置の操作により別々に開始される。その後、全量が1つに送達される。
【0091】
好ましくは、1つの操作モードは、試料の「順次分配」(SeqD)に関する。関連する操作パラメータは、各場合に好ましくは、試料の数(好ましくは5<=Nmax<=15、好ましくはNmax=10のしっかりと規定された最大数Nmaxまで)、個々の試料の個々の容量、受け入れの速度、送達の速度である。この機能は、ユーザが選択可能なNmaxの容量を連続して分配するために使用され、この場合、分注容器への複数回の充填は想定されていない。速度はすべての試料で同じである。試料の数は、個々の容量の入力の主要なパラメータであることが好ましい。容量が入力されると、ピペットは、流体移送装置の最大容量を超えていないかどうかを好ましくは常に確認する必要があり、必要に応じて、警告メッセージが出力される。すべてのパラメータが入力されると、流体制御装置は、オペレータ制御装置が第1方法で操作されたときに全体の容量を受け入れ、オペレータ制御装置が第2方法で操作されたときにそれぞれの個別の容量を送達する。それ以降のすべてのサイクルは、通常の分配の方法で動作することが好ましい。
【0092】
好ましくは、1つの操作モードは、試料の「順次分注」(SeqP)に関連する。関連する操作パラメータは、各場合に好ましくは、試料の数(好ましくは5<=Nmax<=15、好ましくはNmax=10のしっかりと規定された最大数Nmaxまで)、個々の試料の個々の容量、受け入れの速度、送達の速度である。この機能は、開始前にプログラムされ、シーケンスが固定されているユーザが選択可能な最大Nmax個の容量を分注するために使用される。この操作モードの簡単なオペレータ制御を可能にするために、速度はすべての試料で同じであることが好ましい。あるいは、速度はさまざまな方法で選択可能である。機能のサイクルは、分注のサイクルに対応している。以前に入力された容量は、プログラムされた順序で処理される。送達後、オペレータ制御要素の操作、例えばキーを押すことが、次の試料を受け入れるかどうかを決定し、次の試料の前に「吹出し」、つまり分注容器にまだ最初に含まれている試料の完全で安全な吹出しは、過剰な動作によって実行する必要があり、及び/又は分注容器を交換する必要があるかどうかを決定するために使用される。
【0093】
好ましくは、1つの操作モードは、試料の「逆分注」(rPip)に関連している。関連する操作パラメータは、各場合に好ましくは、個々の試料の容量、受け入れの速度、送達の速度、カウンターの起動である。この「rPip」機能の場合、計量される容量以上のものが受け入れられる。これは、液体を受け入れる前にピストンを下に動かすことによって、つまり第2タイプの操作、例えば、吹出し、すなわち、分注動作中にピストンの位置を超えるピストンによる過剰な動作の下部位置に到達するまでに、キーを押すか「下にロッカー」することにより達成される。容量の受け入れの開始時に、流体移送装置は、吹出し及び選択された容量のための容量を受け入れる。送達方向の推進力の遊びを除去するために、流体移送装置は、すぐに再送達される追加の動作を実行する。これは、分配に似ているが、最大速度での拒否動作の自動送達で行われることが好ましい。
【0094】
「rPip」操作モードの実行中に、以下が行われることが好ましく、第1に、オペレータ制御装置が第2方法で動作し、流体移送装置のピストンが吹出しに移動し、下部位置で静止したままである。第2に、オペレータ制御装置は第1方法で操作され、ピストンは、吹出し部と分注容量の動作を上向きに移動する。第3に、オペレータ制御装置は第2方法で操作され、ピストンは分注容量の下向き動作によって移動し、吹出しの前に静止したままになる。第4に、オペレータ制御装置は再び第2方法で再度操作され、ピストンが吹出しを実行し、下部位置で静止したままになる。「第4」の代替として、オペレータ制御装置は第1方法で操作され、ピストンは分注の動作を上向きに移動する。「rPip」モードは、血漿、血清、その他のタンパク質含有量の高い液体の分注に特に適している。水溶液の場合、「分注」モードが特に適している。「rPip」モードは、目的の容器への送達時の泡の形成を最小限に抑えるために、湿潤剤を含む溶液に特に適している。液体は、特に過剰な動作(吹出し量)で受け入れられる。この場合、通常、過剰な動作は送達量の一部ではなく、目的の容器に送達されないことが好ましい。特に同じ試料を再び使用する場合、過剰な動作が先端に残ることがある。別の液体が使用される場合、過剰な動作及び/又は好ましくは分注容器(複数可)は、好ましくは拒否される。
【0095】
操作パラメータセットは、制御プログラムを制御して、望ましい分注プロセスを実行することが好ましい。制御プログラムは、それぞれ制御装置の電気回路の形で生成されてもよく、及び/又はプログラムコードによって制御され得、好ましくはプログラム可能な制御装置を制御するのに適した実行可能プログラムコードによって生成されてもよい。
【0096】
好ましくは、流体移送装置、特にユーザインターフェース装置は、ユーザに情報を表示するために使用できる表示装置を有する。表示装置は、好ましくは表示画面、好ましくはカラーディスプレイである。表示画面は入力機能を備えていてもよく、特にタッチ画面であってもよい。制御装置は、好ましくは現在の操作モードに応じて、1つ以上のページの集合の特定のページを表示するように構成することができ、これらはそれぞれユーザにグラフィカルユーザインターフェースを提示する。グラフィカルユーザインターフェースは、ユーザに情報を提供し、ユーザからの入力を問い合わせするために使用される。入力は、グラフィカルユーザインターフェースに表示される可能性のある項目の集合、例えば操作パラメータの可能性のある値のリストから選択できる。本発明による流体移送装置のユーザインターフェース装置を使用して、操作パラメータの値を定義するための1つ以上の数字又は文字の形でジェスチャをユーザに入力させることも可能である。
【0097】
好ましくは、オペレータ制御装置は、ソフトキーとも呼ばれる可変機能を有する少なくとも1つのオペレータ制御要素を有する。オペレータ制御要素、特にソフトキーは、特にプログラム可能なオペレータ制御要素とすることができ、その機能は特にユーザがプログラムすることができる。好ましくは、ソフトキーは、流体移送装置の選択された操作モードに依存する操作モード固有の機能を有する。
【0098】
好ましくは、流体移送装置は、表示装置と、流体移送装置に記憶され、好ましくは画面を満たすように表示装置に表示できる少なくとも部分的に所定の複数の表示ページとを有し、可変機能を有するオペレータ制御要素は、表示された表示ページに基づいて、好ましくは所定の位置で表示ページ上に示され表示されるそれぞれ所定の機能を有する。
【0099】
好ましくは、流体移送装置は、表示装置及び時間記録装置を有する。時間記録装置は、水晶発振器を備えていてもよい。好ましくは、メモリ装置はFIFOメモリ(最初に入り、最初に出る)の形態であり、これは、最初に入力されたデータも最初に再び拒否され、特に上書きされることを意味する。時間記録装置は、特に制御装置の一部であってもよい。
【0100】
好ましくは、流体移送装置は、反復プロセスの数をカウントするために使用できるカウンター装置を有し、例えば、試料の繰り返し送達、試料の反復の吸引、又は操作モードの反復の使用である。カウンター装置は、カウンターとも呼ばれる。
【0101】
好ましくは、流体移送装置及び/又は制御装置は、任意のデータ、特に制御データを、流体移送装置と外部データ処理装置、例えば、PCの間、及び/又は制御装置と外部データ処理装置、例えばPCの間で交換できる、すなわち、特に、流体移送装置から外部データ処理装置に転送され、及び/又は外部データ処理装置から流体移送装置に転送され得るように構成される。特に、分注装置は、有線又は無線方式でそのようなデータ交換を可能にするように構成できる。
【0102】
本発明による流体移送装置は、単一チャネルピペット又は複数チャンネルピペットであり得る。さらに、特に、流体移送装置は、ピペット又はリピータピペット(ディスペンサー)であり得る。好ましくは、流体移送装置は、流体移送装置に電力を供給するためのバッテリー又はアキュムレーターを備える無線操作装置である。流体移送装置は、ユーザの片手で容易に輸送及び/又は操作することができる携帯装置である。
【0103】
動作データは、測定データ、特に加速度又は速度データを表す、特定の数の複数のデータポイントを備えてもよい。動作データシーケンスは、好ましくは他の情報、例えば時間情報と一緒に、少なくともデータポイントを含んでもよい。動作データは、例えば、動作センサによって測定された加速度の値又は速度の値であってもよい。そのような値は、時間に依存して記録され得、例えば各動作データのタイムスタンプを含めるか、データポイントの測定に関する時間の変動における情報を含める。例えば、測定は、少なくとも特定の動作データシーケンス(複数可)の場合、時間的に等距離で行われ、関連する動作データシーケンス(複数可)の一定期間は、データポイントと組み合わせて動作データを形成することができる。
【0104】
動作センサ装置が位置データを提供できる場合、動作データはまた、位置データであってもよい。次いで、少なくとも1つの動作データシーケンスは、動作センサ又は流体移送装置の動作経路の軌道をそれぞれ表すことができる。加速度又は速度/割合の値を使用して、経過時間に関する積分によって位置データを決定できる。さらに、位置データを提供するために、複数の動作センサからの情報を使用できる。
【0105】
本発明はまた、少なくとも1つの手持ち式流体移送装置を制御するための実験室システムに関し、少なくとも1つの手持ち式流体移送装置は、流体実験室試料に対して流体移送プロセスを実行するように構成され、より具体的にはピペット又はリピータピペットであり、少なくとも1つの手持ち式流体移送装置は、入力データを使用して手持ち式流体移送装置の少なくとも1つの電子制御可能な機能を制御するための制御プログラムを実行できるデータ処理装置を備える制御装置を備え、少なくとも1つの手持ち式流体移送装置は、ユーザ入力を受信するためのユーザインターフェース装置を備え、ユーザインターフェース装置は、手持ち式流体移送装置の動作データを測定し、続いて測定された動作データを含む少なくとも1つの動作データシーケンスを提供する動作センサ装置を備え、少なくとも1つの手持ち式流体移送装置は、少なくとも1つの動作データシーケンスを少なくとも1つの外部データ処理装置に送信し、少なくとも1つの外部データ処理装置から入力データを受信する通信装置を備える。
【0106】
さらに、実験室システムは、少なくとも1つの外部データ処理装置を備え、少なくとも1つの外部データ処理装置は、少なくとも1つの動作データシーケンスを記憶するための動作データメモリを備え、少なくとも1つの外部データ処理装置は、少なくとも1つの動作データシーケンスの評価に依存して入力データを決定するように構成された評価装置を備え、少なくとも1つの外部データ処理装置は、少なくとも1つの手持ち式流体移送装置から少なくとも1つの動作データシーケンスを受信し、少なくとも1つの手持ち式流体移送装置に入力データを送信する通信装置を備える。
【0107】
評価装置は、好ましくは、動作データ、特に少なくとも1つの動作データシーケンスを処理し、動作データ、特に少なくとも1つの動作データシーケンスに応じて入力データを決定するデータ処理装置を備える。好ましくは、少なくとも1つの外部データ処理装置、特に評価装置は、動作ジェスチャ認識システムを提供するように構成され、少なくとも1つの動作データシーケンスは、評価装置によってジェスチャとして解釈される。
【0108】
少なくとも1つの外部データ処理装置はさらに、動作データライブラリメモリを備えてもよい。
【0109】
本発明による実験室システムは、動作データ、特に少なくとも1つの動作データシーケンスの処理のステップが、少なくとも部分的に、又は大部分あるいは完全に手持ち式流体移送装置によって実行されず、及び/又は少なくとも1つの外部データ処理装置によって少なくとも部分的に、又は大部分又は完全に実行されることが好ましいという利点を提供する。それにより、ハードウェアの必要性、処理のステップに関連するエネルギー消費及び熱放散は、手持ち式流体移送装置から外注される。その結果、手持ち式流体移送装置は軽量に構成でき、物理的影響、例えば処理される流体試料のデータ処理の熱を最小限に抑えることができる。さらに、外部データ処理装置のエネルギー供給は必須のバッテリーではなく、好ましくは有線電源であるため、データ処理用のハードウェアをより強力に選択することができる。
【0110】
本発明による実験室システムの好ましい実施形態は、本発明による手持ち式流体移送装置の好ましい実施形態及び特徴の説明から導き出すことができ、逆もまた同様である。
【0111】
特に、実験室システムの特に好ましい実施形態に関して、通信装置、例えば手持ち式流体移送装置のネットワークアダプタ及び外部データ処理装置の通信装置は、それぞれ、通信装置によって実装される無線データ接続によって、データ、特に少なくとも1つの動作データシーケンス及び/又は入力データを交換するように構成されてもよい。無線データ接続は、無線ネットワーク、特に無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)を実装できる。無線ネットワークは、特にIEEE802.11WLAN標準に従って、イーサネットネットワークを実装できる。
【0112】
実験室システムは、少なくとも1つの外部データ処理装置及び/又は少なくとも1つの手持ち式流体移送装置を備えるローカルコンピュータネットワークを備えることができ、ローカルコンピュータネットワークは、好ましくはイーサネットネットワークとして実装される。ローカルコンピュータネットワーク、特にコンピュータネットワークに接続された装置及び場合によっては他のローカルコンピュータは、実験室システムを使用して会社又は個人の敷地内に配置されることが好ましい。ローカルコンピュータネットワークは、ローカルハードウェアとソフトウェアを使用して、企業のファイアウォールの内側にローカルに設定できる。ローカルコンピュータネットワークは、ローカルエリアネットワーク(LAN)、つまり住宅、学校、実験室、オフィスビルなどの限られたエリア内のコンピュータを相互接続するコンピュータネットワークであり得る。好ましくは、特にケーブル配線及び/又はWi-Fiを介したイーサネットが、ローカルエリアネットワークの実装に使用される。
【0113】
好ましくは、外部データ処理装置の1つ又は数N1>1は、数N2の手持ち式流体移送装置の入力データを生成するための実験室システムの一部であり得、好ましくはN2>N1である。このようにして、効率的な実験室システムを実現するために必要なのは外部データ処理装置の1つ又は少数N1だけである。N1=N2=1であることも可能であり、好ましいため、装置間で必要なデータトラフィックを削減する。
【0114】
さらに好ましくは、実験室システムの少なくとも1つの外部データ処理装置は、ローカルコンピュータネットワークから離れて配置されてもよく、別のデータネットワークを介して同じものに接続されてもよく、例えば、グローバルネットワーク、好ましくはインターネットである。実験室システムは、例えば、他のデータネットワーク、例えばグローバルネットワーク、好ましくはインターネット経由で手持ち式流体移送装置の遠隔から入力データを受信するように構成されてもよい。このようにして、特定の効率的な実験室システムを実装でき、遠隔インスタンス、すなわち、少なくとも1つの遠隔外部データ処理装置は、多くのローカルインスタンス、例えば、実験室に配置された手持ち式流体移送装置にデータ評価を提供する。
本発明による方法は、電気流体移送装置、特に本発明による流体移送装置を操作して流体移送装置を操作するために提供され、好ましくは以下のステップを有し、
・手持ち式流体移動装置がユーザによって動かされたとき、その動作の動作データを測定することによりユーザ入力を受信し、その後測定された動作データを含む少なくとも1つの動作データシーケンスを提供すること、
・動作データメモリに少なくとも1つの動作データシーケンスを記憶すること、
・少なくとも1つの動作データシーケンスの評価に応じて入力データを決定すること、
・入力データを使用して、手持ち式流体移送装置の少なくとも1つの電子制御可能な機能を制御することである。
【0115】
本発明によるプログラムコードは、流体移送装置において本発明による方法を実施するために提供され、後者は、本発明による特徴を有する流体移送装置であり、プログラムコードは、実行されると、本発明による方法を実現するように、プログラムコードは流体移送装置で使用可能である。
【0116】
本発明による方法のさらに好ましい実施形態は、流体移送装置及び実験室システムの説明、並びにそれらの好ましい実施形態に見出すことができる。
【0117】
本発明による流体移送装置及び実験室システム並びに本発明による方法のさらなる好ましい実施形態は、図面及びその説明と併せて以下の好ましい実施形態の説明にも見出すことができる。好ましい実施形態の同一の構成要素は、これについて異なる説明が与えられない限り、又は文脈がそうでないことを明らかにしない限り、本質的に同じ参照符号によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図1a図1aは入力データを決定するために使用される3Dの並進動作又は湾曲動作を検出するように構成された本発明による手持ち式流体移送装置の好ましい実施形態の斜視図を示す。
図1b図1bは図1aの手持ち式流体移送装置の斜視図を示し、3つの直交軸線の周りの回転を検出することにより回転動作を検出するように構成され、回転動作は入力データを決定するために使用される。
図1c図1cは図1aの実施形態に使用可能な3D動作を検出するための動作センサの斜視図を示す。
図1d図1bの実施形態に使用可能な3つの直交する回転軸線に関する回転動作を検出するための動作センサの斜視図を示す。
図2a図2aは本発明による手持ち式流体移送装置の好ましい実施形態の側面図を示す。
図2b図2bは図2aの手持ち式流体移送装置の正面図を示す。
図3図3図2aの手持ち式流体移送装置の概略図を示す。
図4a図4aはデカルト座標系のyz平面に沿った図を示し、動作データシーケンスMDS1のコースが概略的に示されており、これは、本発明による流体移送装置内の動作センサの位置曲線であり、所定のジェスチャG1を模倣するためにユーザによって適用される。
図4b図4bは図4aの動作データシーケンスMDS1を示し、動作データのシーケンスとして設定され、曲線の点として表示される。
図5a】それぞれ、本発明による流体移送装置の好ましい実施形態によって認識される所定のジェスチャとして利用され得るデカルト座標系のx、y及びz軸線周りの回転動作を示す。
図5b】それぞれ、本発明による流体移送装置の好ましい実施形態によって認識される所定のジェスチャとして利用され得るデカルト座標系のx、y及びz軸線周りの回転動作を示す。
図5c】それぞれ、本発明による流体移送装置の好ましい実施形態によって認識される所定のジェスチャとして利用され得るデカルト座標系のx、y及びz軸線周りの回転動作を示す。
図5d】それぞれ、デカルト座標系のx、y及びz軸線に沿った並進動作を示し、本発明による流体移送装置の好ましい実施形態によって認識される所定のジェスチャとして利用することができる。
図5e】それぞれ、デカルト座標系のx、y及びz軸線に沿った並進動作を示し、本発明による流体移送装置の好ましい実施形態によって認識される所定のジェスチャとして利用することができる。
図5f】それぞれ、デカルト座標系のx、y及びz軸線に沿った並進動作を示し、本発明による流体移送装置の好ましい実施形態によって認識される所定のジェスチャとして利用することができる。
図5g図5gはデカルト座標系のy-z平面におけるより長い動作を示し、これは、本発明による流体移送装置の好ましい実施形態によって実装される文字認識システムによって認識されるジェスチャとして利用され得る。
図6図6はユーザからの情報を問い合わせるために、本発明による流体移送装置の好ましい実施形態の表示画面によって表示され得るグラフィカルユーザインターフェースのページを示し、これは、流体移送装置の動作に応答して、要求された情報をそれに入力することができる。
図7図7は本発明による流体移送装置の好ましい実施形態を含む、本発明の好ましい実施形態による実験室システムを示す。
図8図8は手持ち式流体移送装置、特に本発明による手持ち式流体移送装置を操作するための本発明による方法の実施形態を示す。
【0119】
図2a及び2bの実施形態では、手持ち式流体移送装置は実験室ピペットであり、以後ピペット1、1’である。図2aに示されるように、ピペットは、ピペットの本体10のハンドル部10aでユーザの片手で保持されるように構成される。ハンドル10aは、中心線Cの周りから延び、A軸線に沿ったピペットの幾何学的中心点を示し、ピペットの上半分に達する。ピペットの本体10は、軸線Aに沿って延びる細長い形状を有し、軸線Aに沿って測定された長さLを有する。線Cは、軸線Aに沿ったピペットの中心をマークする。軸線Aは、ピペット内部に配置されたピストン(図示せず)の対称軸線でもあり、電気駆動装置(図示せず)によって駆動され、試料移送容器、ここではピペットチップ30に含まれる液体試料を吸引及び/又は排出する。従来の方法で気密接続を形成し、チップ30は、ピペット1の下端に位置し、ピペットの最下端を形成するピペット1の作業コーン11に差し込まれる。ピペットは、ユーザによって押されるボタン15によって駆動されるスリーブ16の下向きの動作によって作業コーンから先端30を解放及び落下させるための突き出しスリーブ16を有する。ここでは、重力方向gに沿って整列したピペット1、1’が示されている。
【0120】
図3に示されるように、ピペット1、1’は、データ処理装置3を備えるマイクロ処理装置を備え得る制御装置2を有する。制御装置2は、手持ち式流体移送装置の少なくとも1つの電子制御可能な機能を制御するように構成される。制御装置2は、ピペット1、1’を制御し、特に、手持ち式流体移送装置の少なくとも1つの電子制御可能な機能を制御するための制御プログラムを含むコンピュータプログラムを記憶するプログラムメモリを備える。電子制御可能な機能には、制御パラメータが含まれ、例えば、ピストンを動かすための電気駆動装置を制御するための速度、加速度、時間経過である。そのような電子制御可能な機能は、ユーザインターフェース装置5の表示画面12において、例えば図6に示されるように、グラフィカルユーザインターフェースの1ページ40以上のページをさらに表示することを含む。ピペットの操作中、制御装置、特にデータ処理装置3は、入力データを使用して手持ち式流体移送装置の複数の電子制御可能な機能を制御するための制御プログラムを実行する。
【0121】
入力データは、電子制御可能な機能を制御するために、ピペット1、1’によって使用され、これにより、一部の電子制御可能な機能は、入力データによって定義される1つ以上の操作パラメータに依存し、そのため電子制御可能な機能を制御するための制御データとして機能する。さらに、ピペット1、1’の電子制御可能な機能のいくつかは、入力データを使用するように構成され、入力データを不揮発性メモリにシフトするように、及び/又は入力データを通信装置9を介して外部装置に送信するように構成される。例えば、ピペットは、ユーザが実行するピペットの動作を識別する文字認識システムを実装して、1つ以上の文字を記述するように構成されている。この方法で識別された文字又は文字列は、入力データを表し、ピペット1の特定の操作モードで記憶又は送信できる。
【0122】
ピペット1、1’は、ユーザ入力データを受信するためのユーザインターフェース装置5を備える。ユーザインターフェース装置5は、ピペット1、1’の所定の入力操作モードで、ユーザからの入力を受け取るためのボタン13、14、ダイヤルホイール、及び選択ロッカーのような従来の入力装置を備える。ユーザインターフェース装置5は、例えば図6に示されるように、グラフィカルユーザインターフェースの1ページ40以上のページを表示画面12に表示するための表示画面12を備える。このようなページには、ユーザからのユーザ入力を要求するための情報やクエリマスクが含まれている。
【0123】
ピペット1、1’、特にユーザインターフェース装置5は、ピペット1、1’の動作データを測定し、その後測定された動作データを含む少なくとも1つの動作データシーケンスを提供する動作センサ装置6を備える。動作データ又は動作データポイントをそれぞれ含むそのような動作データシーケンスは、図4bに例示的に示されている。
【0124】
ピペットは、少なくとも1つの動作データシーケンスを記憶するための動作データメモリ8、ここでは揮発性メモリを有する。
【0125】
ピペット1、1’は、少なくとも1つの動作データシーケンスの評価に依存して入力データを決定するように構成された評価装置4を有する。特に、制御プログラムによって、及び/又はユーザによって選択されて、ピペット1、1’に適用される入力操作モードに応じて、入力データは制御装置によって所定の方法で解釈される。1つの操作モード(複数可)では、入力データは、1つ以上の電子制御可能な機能を制御するための制御データを形成し得る。別の操作モード(複数可)では、入力データは制御データを形成しない場合があるが、他の装置又はメモリに記憶あるいは転送され得る。
【0126】
動作センサ装置6は、ピペット1、1’の実施形態では、2つのセンサを備える。図1cに示すように、1つのセンサ7は加速度センサであってもよく、3D加速度を測定し、図1cに示す米国STMicroelectronicsから市販されているセンサLIS331DLHの表示を参照する。1つのセンサ7’はジャイロセンサであり得、動作センサ内/の点に対して固定された座標系を基準にして、3つの直交回転軸線の周りの角速度Ω、Ω、Ωを測定し、図1dに示される米国STMicroelectronicsから市販されているセンサL3GD20の表示を参照する。
【0127】
センサ7、7’の一方又は両方は、3D加速度を測定し、さらに動作センサ内/の点に対して固定された座標系を基準にして、3つの直交回転軸線の周りの回転をジャイロスコープで測定する複合センサであり得る。1つのセンサ7、7’が地磁気センサを備えることも可能であり、すなわち、動作データの物理的測定を改善するためのコンパスセンサである。センサの1つは、ピペット本体1、1’の上半分と上端に配置される。センサの1つは、ピペット本体1、1’の下半分と下端に配置されている。動作センサのそのような空間分布を使用して、流体移送装置の動作をより正確に測定することができ、これは、より複雑な動作を検出するのに、例えば、文字認識に、又は動作データの品質向上のため特に有利である。動作データは、動作データポイントの測定時間を示すタイムスタンプを備えるか、少なくとも動作データポイント間の期間が既知である限り、例えば、後続の動作データポイント間の時間的距離が一定であるか、そうでなければ既知の場合、少なくとも相対的又は絶対的な開始時間及び/又は終了時間を少なくとも示すことができる。2つの異なる動作センサ7、7’の動作データは、2つの異なる動作センサ7、7’の動作データポイントの対が測定された時点に関して組み合わせて評価され得る。又は、2つの異なる動作センサ7、7’の動作データは、独立して評価されてもよい。
【0128】
評価装置4は、制御装置の電気回路と、制御装置によって実行される評価アルゴリズム又は評価プログラムコードによってそれぞれ実装される。評価装置4は、動作データメモリ8に記憶された少なくとも1つの動作データシーケンスを使用し、ピペット1、1’のそれぞれの入力操作モードに応じて入力データを決定する。動作ジェスチャ認識システムを実装して、動作データメモリ8内の少なくとも1つの動作データシーケンスに相関された特定の制御データを入力データが参照することを決定することができる。入力データが特定のユーザ定義文字列を参照することを決定するために文字認識システムを実装することができ、それは制御データをそこから引き出すために使用されるか、不揮発性メモリに記憶するために使用され得る。
図1a、1bは、実験室ピペットであり、入力データを決定するために使用される動作M1又はM2を検出するように構成された手持ち式流体移送装置1を示す。動作M1は、第1直線軸線に沿った並進動作である第1サブパターンと、それに続くキンク及び第1軸線に対して垂直な第2直線軸線に沿った並進動作である第2サブパターンを含む動作パターンであることが示されている。動作M1、M2は、動作ジェスチャ認識システムのジェスチャとして解釈されてもよく、それにより、ユーザインターフェース装置は、ジェスチャ制御入力システムとして機能する。
【0129】
図1a及び1bに示すデカルト座標系x-y-zは、図2a、2bでより明確に示されているデカルト座標系x-y-zに対応する。特に、軸線zは、ピペット1の吸引/放出量を制御するピストンの動作の方向である軸線Aに平行である。
【0130】
ユーザインターフェース装置5及び評価装置4によって実装される動作認識システムは、まず、例えば、図4aに示される動作データシーケンスMDS1などの動作データシーケンスをキャプチャすることを提供する。この目的のために、ユーザは、ピペット1、1’をポインター装置として使用して、動作MDS1を空中に「描く」必要がある。一般に、ユーザが動作の描画を開始する前に、制御装置は動作入力モードが起動していることを知らなければならず、ユーザは動作、例えば、描画MDS1の実行を開始する準備ができていることを意味する。この目的のために、制御装置は信号装置、特に画面12に表示される点滅するグラフィックマーカー及び/又はユーザに動作検出の開始及び/又は終了を示す音を含むことができる。このようにして、ユーザが入力のジェスチャを表すことを意図していない手持ち式流体移送装置の他の動作が誤って入力データとして解釈され、その後、手持ち式流体移送の電子制御可能な機能が誤って実行されることが、誤って検出されたジェスチャとおそらく相関する。
【0131】
ここで、ピペット1、1’は、さらに、活動入力装置として機能するボタン14を提供する。動作入力モードの開始と終了は、ばね支持ボタン14を介してユーザによってトリガされる。活動入力装置をトリガすると、動作入力モードが開始され、ボタン14を離すと動作入力モードが終了する。より長い期間、例えば2秒より長い期間が、-制御プログラムのコンテキストに応じて解釈され、例えば、-ユーザの入力が終了するように制御装置による入力を必要とする特定の操作モードである。例えば、ユーザは活動入力装置を作動させることにより動作入力モードを開始し、活動入力装置を解放することにより動作入力モードを終了することができる。制御装置、特に制御プログラムは、活動入力装置の状態を検出することにより、動作入力モードの活動/非活動を制御するように構成されている。
【0132】
動作データメモリ8に記憶された少なくとも1つの動作データシーケンスに対してジェスチャ認識が実行される場合、評価装置は、動作データライブラリメモリに記憶されたデータベースである動作データライブラリにアクセスし、比較動作を実行し、曲線MDS1が図4aに示されている所定のジェスチャG1と一致するかどうかを判定する。一致と判定される場合、評価装置は特定の入力データを決定し、それらは少なくとも制御プログラムの特定のコンテキストの下で検出されたジェスチャG1と相関する。そのような相関は、動作データライブラリメモリ又は別のメモリに記憶できる相関ジェスチャ、入力データ、及びコンテキストのテーブルから取得できる。
【0133】
グラフィカルユーザインターフェースの特定のクエリページでユーザを問い合わせると、ジェスチャG1は同じ動作になり、例えば、操作パラメータのチョイスである。例えば、図5aに示すように、x軸線の周りのピペット1、1’の傾斜動作(ユーザの実施ではユーザへの回転)は、クエリページ40が表示されたときに実行され(図6を参照)、ページ40に示されている下部ダーツ41を常に強調表示し、操作パラメータ「速度値」を所定の増分(動作1)で減少させ、図5a(ユーザの実施ではユーザから離れた回転)と比較して反対方向のx軸線の周りのピペット1、1’の傾斜運動は、クエリページ40が表示されたときに実行され(図6を参照)、ページ40に示されている上部ダーツ41を常に強調表示し、操作パラメータ「速度値」を所定の増分で増やす(動作1)。あるいは、図5bに示すように、y軸線を中心とするピペット1、1’の傾斜動作は、クエリページ40が表示されたときに実行され、常に下部ダーツ42(ここではページ40の非強調色で示されている)を強調表示し、操作パラメータ「速度値」を所定の増分で減らす(動作2)。操作パラメータ「速度値」の入力(動作3)の終了は、前記並進動作が開始及び終了するときに、加速度計値によって検出できる並進動作によってユーザにより示されてもよい。
【0134】
「コンテキストへの依存」とは、特に同じジェスチャ、例えば図5aのジェスチャは、同じクエリページ40内の同じ動作に相関されているが、例えば、別のクエリページのコンテキスト内の別の動作に相関されている。例えば、図5aのジェスチャは、別のコンテキストにおいて、別のクエリページが表示されるとき、操作パラメータ「容量」の増加として解釈され得る。
【0135】
図5gは、ピペット1、1’によって実装される文字認識システムによって文字列として認識されるジェスチャとして利用できるデカルト座標系のy-z平面に描画することにより、より長い動作を示し、より多くの情報をコーディングする。ここで、ユーザは文字列を入力するように問い合わせされる。ユーザは「V100」を空中で描く。ここでは円形の点として描かれているボタン14をトリガする各ユーザ動作は、動作データシーケンスの測定を開始し、単一の文字の開始を示す。ここでは三角形の点として描かれている、押されたボタン14を放す各ユーザ動作により、動作データシーケンスの測定が終了し、単一の文字の終了が示される。より大きい期間、例えば、2秒後に、制御装置は、このコンテキストでユーザ入力が終了したと判断する。代替的に、又は表示画面に示される確認ダイアログ画面により、手持ち式流体移送装置は、入力モードの終了を確認するために、ユーザに確認動作を要求するように構成されてもよい。前記確認動作は、ユーザによる従来の入力装置の作動、例えばボタンを押すことであり得る。評価装置は、複数の動作データシーケンスを文字列として認識し、先行文字「V」は制御装置によって解釈され、操作パラメータ「容量」の選択を指し、後続の数字「100」はユーザがマイクロリットル(又は他の適切な単位)で入力した容量の値「100」として解釈される。
【0136】
文字認識システムは、文字/文字列又はスクリプト認識のための適切なアルゴリズムを選択することにより、個々の文字の開始と終了をマークするために、活動入力装置14を使用せずに動作するようにさらに構成されてもよい。
【0137】
図7は、少なくとも1つの手持ち式流体移送装置1”を制御するための実験室システム100を示している。ユーザにとって、手持ち式流体移送装置1”は、流体移送装置1’と同じ機能を提供するように見え、なぜなら、動作データメモリ及び評価装置も提供されるが、外部装置50に配置され、通信装置、ここではネットワークアダプタ9、59間に確立されたデータ接続-ここではWIFI-を介して手持ち式流体移送装置1”から少なくとも1つの動作データシーケンスを受信し、少なくとも1つの動作データシーケンスを動作データライブラリの入力と比較することにより入力データを計算し、入力データを手持ち式流体移送装置1”に送信し、手持ち式流体移送装置1”の制御装置は、入力データを使用して、手持ち式流体移送装置の少なくとも1つの電子制御可能な機能を制御するための制御プログラムを実行するからである。
【0138】
実験室システム100は、流体実験室試料で流体移送プロセスを実行するように構成された少なくとも1つの手持ち式流体移送装置、より具体的にはピペット又はリピータピペットを備え、少なくとも1つの手持ち式流体移送装置は制御装置2を備え、これは、入力データを使用して、手持ち式流体移送装置の少なくとも1つの電子制御可能な機能を制御するための制御プログラムを実行できるデータ処理装置3を備え、少なくとも1つの手持ち式流体移送装置は、ユーザ入力を受信するためのユーザインターフェース装置5を備え、ユーザインターフェース装置は、手持ち式流体移送装置の動作データを測定し、続いて測定された動作データを含む少なくとも1つの動作データシーケンスを提供するための動作センサ装置6を備え、少なくとも1つの手持ち式流体移送装置は、少なくとも1つの動作データシーケンスを少なくとも1つの外部データ処理装置に送信し、少なくとも1つの外部データ処理装置から入力データを受信する通信装置9を備える。
【0139】
さらに、実験室システム100は、少なくとも1つの外部データ処理装置50を備え、少なくとも1つの外部データ処理装置は、少なくとも1つの動作データシーケンスを記憶する動作データメモリ58を備え、少なくとも1つの外部データ処理装置は、少なくとも1つの動作データシーケンスの評価に依存して入力データを決定するように構成された評価装置54を備え、少なくとも1つの外部データ処理装置は、少なくとも1つの手持ち式流体移送装置から少なくとも1つの動作データシーケンスを受信し、入力データを少なくとも1つの手持ち式流体移送装置に送信するための通信装置59を備える。
【0140】
図8において、手持ち式流体移送装置、特にピペット1、1’を操作する方法200は、以下のステップ、
・手持ち式流体移送装置がユーザによって動かされたとき、手持ち式流体移送装置の動作の動作データを測定することによりユーザ入力を受信し、その後測定された動作データを含む少なくとも1つの動作データシーケンスを提供する(201)こと、
・動作データメモリに少なくとも1つの動作データシーケンスを記憶する(202)こと、
・少なくとも1つの動作データシーケンスの評価に応じて入力データを決定する(203)こと、
・入力データを使用して、手持ち式流体移送装置の少なくとも1つの電子制御可能な機能を制御する(204)ことと、を含む。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a-2b】
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図5g
図6
図7
図8