(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】軌道敷設機械を制御する方法
(51)【国際特許分類】
E01B 35/06 20060101AFI20220920BHJP
B61K 9/08 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
E01B35/06
B61K9/08
(21)【出願番号】P 2019559811
(86)(22)【出願日】2018-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2018059216
(87)【国際公開番号】W WO2018206214
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-09
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】521346494
【氏名又は名称】トラック マシーンズ コネクティッド ゲゼルシャフト エム.ベー.ハー.
【氏名又は名称原語表記】Track Machines Connected Gesellschaft m.b.H.
【住所又は居所原語表記】Regensburger Strasse 3, 4020 Linz, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ビュアガー
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-232401(JP,A)
【文献】米国特許第04312275(US,A)
【文献】特開昭55-142266(JP,A)
【文献】特開昭60-078002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0050021(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 35/06
B61K 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道(6)に沿って走行しかつ機械フレーム(3)に対して変位可能な作業ユニット(9,10,11
)を有する軌道敷設機械(1
)を制御する方法であって、作業方向(26)において前記作業ユニット(9,10,11)の前方で、センサ装置(27)により、軌道対象物(5,17,22,37~42
)の位置データを検出し、所定の軌道箇所(33)での作業過程(21)用に、前記作業ユニット(9,10,11)の作業位置を算出する、方法において、
前記作業ユニット(9,10,11)の制御前に、表示装置(34)により、前記作業ユニット(9,10,11)の算出された前記作業位置が表示され、前記作業過程(21)の実施前に、前記作業ユニット(9,10,11)の前記作業位置を、操作部材(35)を介して変更することができることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記表示装置(34)に前記軌道(6)の仮想表示が表示され、該表示に対して算出された前記作業ユニット(9,10,11)の前記作業位置が表示される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記表示装置(34)に、前記軌道(6)の写真表示が表示される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記表示装置(34)において
、枕木(17)
、レール(5)およ
び障害物(37~42)が、識別可能な対象物としてマーキングされる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
作業方向(26)において前記作業ユニット(9,10,11)の目下の位置の前方に位置する、前記軌道敷設機械(1)と連動する表示水平線(59)が設定され、前記作業ユニット(9,10,11)の算出された前記作業位置が、前記表示水平線(59)に到達するまで表示される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記表示水平線(59)に到達するまでに、前記作業ユニット(9,10,11)の算出された前記作業位置の確認応答が表示され
、応答の確認無しで前記表示水平線に到達したとき(60)には、前記軌道敷設機械(1)が停止される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
算出された前記作業位置に同意しかつ前記軌道箇所(33)に接近すると、前記作業ユニット(9,10,11)は、自動制御される駆動装置(15)を介して前記作業位置にもたらされ、前記作業過程(21)が実施される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
1つの作業ユニット(9,10,11)の算出された前記作業位置を拒否した場合には、前記軌道箇所(33)に到達したときに前記作業ユニット(9,10,11)が停止され、該作業ユニット(9,10,11)は、前記操作部材(35)を介して制御される駆動装置(15)によって作業位置にもたらされる、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記軌道箇所(33)に接近すると、自動制御され
る駆動装置(15)を介して前記作業ユニット(9,10,11)は算出された前記作業位置にもたらされ、該作業位置は前記操作部材(35)を介して後調整可能であり、前記作業過程(21)は、解放操作部材(63)の操作後に実施される、請求項
7記載の方法。
【請求項10】
前記作業ユニットはリフティングユニット(9)であり、該リフティングユニット(9)のリフティングフック(13)の算出された前記作業位置は、算出された、レール底部またはレール頭部における把持位置に関する情報と共に表示される、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記作業ユニットは進出可能な補助リフティングユニット(10)であり、該補助リフティングユニット(1
0)の算出された前記作業位置は、進出動作または進入動作に関する情報と共に表示される、請求項1から
9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
変位可能な作業ユニット(9,10,11)が配置された機械フレーム(3)と、前記作業ユニット(9,10,11)を自動制御するためのセンサ・制御システム(46)とを有する軌道敷設機械(1)において、
前記センサ・制御システム(46)は、表示装置(34)ならびに操作部材(35)を有しており、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されていることを特徴とする、軌道敷設機械(1)。
【請求項13】
前記センサ・制御システム(46)は、異なって構成された複数のセンサ(28,29,30)を備えたセンサ装置(27)を有している、請求項12記載の軌道敷設機械(1)。
【請求項14】
前記センサ・制御システム(46)は、軌道位置を修正するためのいわゆる指令コンピュータ(24)と、前記作業ユニット(9,10,11)を制御するための機械制御装置(25)と、前記作業ユニット(9,10,11)の作業位置を算出するための計算ユニット(31)とを有しており、前記指令コンピュータ(24)と前記機械制御装置(25)と前記計算ユニット(31)とは、バスシステム(47)を介して接続されている、請求項12または13記載の軌道敷設機械(1)。
【請求項15】
前記表示装置(34)および前記操作部材(35)は運転室(7)内に配置されており、前記操作部材(35)を介した前記作業ユニット(9,10,11)の調整用に、前記作業ユニット(9,10,11)のリアルタイム記録を前記運転室(7)内へ転送するためのカメラ(12)が配置されている、請求項12から14までのいずれか1項記載の軌道敷設機械(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道に沿って連続的にまたは周期的に走行し、かつ機械フレームに対して変位可能な作業ユニット、特にタンピングユニットならびにリフティングユニットを有する軌道敷設機械、特にスイッチマルチプルタイタンパまたはユニバーサルマルチプルタイタンパを制御する方法であって、作業方向において作業ユニットの前方で、センサ装置により、軌道対象物、特に枕木、レールおよび場合により障害物の位置データを検出し、所定の軌道箇所での作業過程用に、作業ユニットの作業位置を算出する方法に関する。さらに本発明には、相応に構成された軌道敷設機械も含まれる。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第3923733号明細書から、センサ・制御システムを備えた軌道敷設機械が公知である。この場合はまず、所定の軌道箇所においてセンサ装置により、軌道上の枕木、枕木間隔、レールおよび障害物が検出され、記憶される。例えば障害物との衝突を回避するために、検出された軌道対象物に応じて、軌道敷設機械の作業ユニットに対してそれぞれ作業位置が算出される。作業走行中に作業ユニット、例えばタンピングユニットが軌道箇所に到達すると、直ちに作業ユニット駆動装置が自動的に制御され、これにより作業ユニットが算出された作業位置にもたらされる。この流れは、相応の作業過程を実施せねばならない別の軌道箇所に対しても周期的に繰り返される。
【0003】
スイッチマルチプルタイタンパに関する適当な解決手段が、オーストリア国特許出願公開第516590号明細書に開示されている。分岐器コンポーネント測定装置の測定値に基づき、リフティング・整正装置の作業位置の算出が行われ、その際に、設定した位置に到着したことまたはレールが確実に把持されたことを証明するために、ローラキャッチの閉鎖距離およびリフティングフックの変位距離が継続的に表示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の根底を成す課題は、冒頭で述べた形式の方法および軌道敷設機械に対し、従来技術との比較における改良点を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明に基づき、請求項1および12記載の特徴によって解決される。本発明の有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0006】
この場合、作業ユニットの制御前に、表示装置により、作業ユニットの算出された作業位置が表示され、作業過程の実施前に、操作部材を介して作業ユニットの作業位置を変更することができることが想定されている。このようにして、自動化された作業ユニット制御の利点を縮小すること無しに、算出された作業位置の簡単な点検が可能である。
【0007】
算出された作業位置を、作業過程に先行して表示することにより、誤った位置が有効になる前に、誤っている可能性のある位置を、オペレータが認識することができるようにする。誤った位置が有効になるというような例外的なケースは、例えばセンサ装置の通過後に初めて、障害物が作業過程用に想定された軌道箇所に達する場合に生じることがある。
【0008】
この場合、作業位置の適合は操作部材を介して簡単に行われるため、作業の進行が損なわれることはない。この場合は特に、今までも自動化されていない作業ユニットにおいて手動制御用に使用されるような操作部材を使用することができる。
【0009】
本発明の1つの有利な構成では、表示装置に軌道の仮想表示が表示され、この場合、この表示に対して算出された作業ユニットの作業位置が表示される。このようにして、オペレータが、処理しようとする軌道箇所に対して算出された作業位置において予想される状況についての直接的な印象を有するようになっている。
【0010】
別の改良点は、表示装置に軌道の写真表示が表示される場合に生じる。これは、処理しようとする軌道箇所に対して設定された作業状況の直観的な把握を可能にし、これにより、その他の点では負担が軽いオペレータの迅速な反応が促進される。
【0011】
1つの改良では、表示装置において枕木、レールおよび場合により認識される障害物が、識別可能な対象物として分類され、これに対応して(例えば異なる色で)マーキングされることによっても、算出された作業位置の点検が容易になる。軌道対象物の分類法は、本出願人のオーストリア国特許出願第2872016号明細書に開示されている。これをもってこの開示の特に第35段落および第55~65段落が、本願に組み込まれる。
【0012】
表示装置による効果的な表示は、作業方向において作業ユニットの目下の位置の前方に位置する、軌道敷設機械と連動する表示水平線が設定される場合、および作業ユニットの算出された作業位置が表示水平線に到達するまで表示される場合に有意である。この場合、算出された作業位置の表示は、作業ユニットを実際に制御するまで時間的に間隔をあけて行われるため、後調整の準備をするために十分な時間が残される。
【0013】
この場合、表示水平線に到達するまでに、作業ユニットの算出された作業位置の確認応答が表示される場合、および、特に応答の確認無しで表示水平線に到達したときには軌道敷設機械が停止される場合が有利である。このようにして、オペレータは次のプロセスに介入する必要無しに、表示された作業位置を確認する手段を得る。有利な安全対策として、オペレータが全く反応を示さない場合には、機械が停止される。
【0014】
有利には、算出された作業位置に同意しかつ軌道箇所に接近すると、作業ユニットは、自動制御される駆動装置を介して作業位置にもたらされ、引き続き作業過程(例えばリフティングユニットによる軌道こう上およびタンピングユニットによる枕木の突固め)が実施される。
【0015】
作業ユニットの算出された作業位置が拒否された場合には、軌道箇所に到達したときに作業ユニットが停止され、かつ操作部材を介して制御される駆動装置によって作業ユニットが作業位置にもたらされると有利である。このような手動での位置決めは、軌道敷設機械のオペレータにとってはルーチンプロセスであるため、迅速な実施が保証される。場合によりこれと並行して、-既に同意が得られた-関係のない作業ユニットでは、自動化された位置決めが行われる。
【0016】
本発明の1つの別の構成では、確認応答に代えて、軌道箇所に接近すると、自動制御される駆動装置を介して作業ユニットが算出された作業位置にもたらされ、作業位置は操作部材を介して後調整可能であり、作業過程は、解放操作部材の操作後に実施されることが想定されている。通常、後調整は必要とされないため、オペレータの役割は、自動制御される作業位置の周期的な解放に限定される。
【0017】
マルチプルタイタンパを制御する方法では、リフティングユニットのリフティングフックの算出された作業位置が、算出された、レール底部またはレール頭部における把持位置に関する情報と共に表示されると有利である。このような表示画像を用いて、軌道箇所に対して設定されたリフティングユニットを迅速かつ一義的に判断することができる。
【0018】
さらに、スイッチマルチプルタイタンパまたはユニバーサルマルチプルタイタンパを制御する方法に関しては、進出可能な補助リフティングユニットの算出された作業位置が、進出動作または進入動作に関する情報と共に表示されると有利である。このようにして、補助リフティングユニットの使用を、実際の作動前に点検することができる。特に、支障の無い進出および進入を保証することができる。有利には、補助リフティングユニットの自由端部に位置するレール把持装置の当付け角度ならびに補助リフティングユニットの算出された使用範囲も表示される。
【0019】
本発明による軌道敷設機械は、変位可能な作業ユニットが配置された機械フレームと、作業ユニットを自動制御するためのセンサ・制御システムとを有しており、センサ・制御システムは、表示装置ならびに操作部材を有しておりかつ上述の方法のうちの1つを実施するように構成されている。連続して作業するマルチプルタイタンパの場合には、機械フレームおよび作業ユニットがいわゆるサテライトに配置されており、サテライトは、車両フレームに対して周期的に前後に移動される。
【0020】
この場合、センサ・制御システムは、異なって構成された複数のセンサを備えたセンサ装置を有していると有利である。これにより、軌道の異なる構造および要素を検出することができ、この場合、センサデータの融合により、軌道の詳細な全体像が得られる。この全体像は、作業ユニットの作業位置を特に正確に算出するための基礎として役立つ。
【0021】
センサ・制御システムの1つの有利な構成は、軌道位置を修正するためのいわゆる指令コンピュータと、作業ユニットを制御するための機械制御装置と、作業ユニットの作業位置を算出するための計算ユニットとを有しており、この場合、指令コンピュータと機械制御装置と計算ユニットとは、バスシステムを介して接続されている。これにより、既存の軌道敷設機械への後装備が可能である。
【0022】
軌道敷設機械の1つの別の簡略化は、表示装置および操作部材が運転室内に配置されており、かつ操作部材を介した作業ユニットの調整用に、作業ユニットのリアルタイム記録を運転室内へ転送するためのカメラが配置されている場合に生じる。通常、自動化された作業プロセスは後調整を全く必要としないため、従来必要とされた、作業ユニットが見える作業室は省かれてよい。これにより、従来の軌道敷設機械に比べ、重量および寸法の大幅な削減が達成される。
【0023】
以下に、添付の図面を参照して本発明を例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図3】突き固めようとする分岐器の概略的な配置図である。
【
図5】確認応答を伴う方法の流れを示す概略図である。
【
図7】表示装置におけるリフティングユニットの表示を概略的に示す図である。
【
図8】表示装置における表示の組合せを概略的に示す図である。
【
図9】表示装置におけるタンピングユニットの表示を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示す軌道敷設機械1は、分岐器2を突き固めるためのスイッチマルチプルタイタンパである。この機械1は、走行装置4に支持されて軌道6のレール5を走行可能な機械フレーム3を有している。図示の例に対して代替的に、連続的に作業するマルチプルタイタンパの場合には、車両フレームが走行装置4に支持されており、機械フレーム3はサテライトに含まれている。両端面には各1つの運転室7が配置されている。本発明の1つの簡単な変形形態ではさらに、機械フレーム3に対して変位可能な作業ユニット9,10,11がすぐに見える作業室8が設けられている。この作業室8は、作業ユニット9,10,11のリアルタイム録画を運転室7に転送するカメラ12が配置されている場合には、省かれてよい。
【0026】
作業ユニット9,10,11として、この例示的なスイッチマルチプルタイタンパは、通常は組み合わされたリフティング・整正ユニットとして形成されているリフティングユニット9を有している。このような作業ユニット9は、軌道6の各レール5用に、リフティングフック13と、少なくとも1つの整正ローラと、ローラリフティングキャッチ14とを有している。各リフティングフック13は、高さ調節可能であると共に、レール頭部またはレール底部の下方に選択的に係合する。複数の駆動装置15を介して、リフティングユニット9は、機械フレーム3に対して変位可能である。リフティングシリンダを介して、軌道6は所望の高さにこう上される。さらに、軌道整正のための横方向変位性と、長手方向で把持機構13,14を調整するための長手方向変位性とが加わる。
【0027】
分岐器2を均一にこう上するために、分岐レール5を把持するための補助リフティングユニット10が配置されている。この作業ユニット10は、伸縮式に進出可能な支持体を有している。進出した支持体は、駆動装置15を介して、車両長手方向軸を中心として上方に旋回可能である。支持体の自由端部には、調整可能なレール把持装置16(ヘッド)が配置されている。
【0028】
枕木17を突き固めるために、機械フレーム3には複数の変位可能なタンピングユニット11が配置されている。具体的には、タンピングユニット11は懸吊装置18(回転台)に取り付けられている。斜めに配置された枕木17に合わせるために、懸吊装置18は鉛直方向軸19を中心として回動可能に、機械フレーム3に支承されている。さらに、各タンピングユニット11は、駆動装置15を介して共にかつ別個に、横方向に移動可能である。各タンピングユニット11は通常、対向して位置する二対のタンピングピッケル20を有しており、タンピングピッケル20は、作業過程21において振動を加えられて枕木間隔22内に降下し、締込みシリンダを介して互いに締め込まれる。ダブル枕木を突き固めるためには、締込みシリンダにおいていわゆる衝突フラップが駆動装置15を介して離間させられ、これにより、対向して位置するタンピングピッケルの開放幅が拡大される。分岐器2の幾何形状にさらに合わせるために、個々のタンピングピッケル20は、機械長手方向軸を中心として別個に旋回可能である。
【0029】
分岐器仕上げ中は、弦測定システム23による軌道幾何形状の測定が連続して行われる。このとき、いわゆる指令コンピュータ24が、予め算出された目標値を設定する。指令コンピュータ24は、機械制御装置25に連結されている。この機械制御装置25は、軌道幾何形状を目標値に適合させるように、リフティングユニット9,10のリフティング駆動装置および整正駆動装置を制御する。
【0030】
作業方向26で見て、軌道敷設機械1の前端面にはセンサ装置27が配置されている。このセンサ装置27には、例えばレーザ回転スキャナ28と、カラーカメラ29と、複数のレーザラインスキャナ30とが含まれている。レーザ回転スキャナ28は、前進走行中に軌道6の三次元の点群を周辺環境と共に送る。レーザラインスキャナ30は、陰になる範囲をカバーするために、レール首部に向けられている。カラーカメラ29により、軌道6の写真画像が連続的に検出される。
【0031】
センサ装置27により検出されたデータは、計算ユニット31で処理され、適当なメモリユニット32(例えばハードディスクを備えたコンピュータ)に記憶される。最初に、点群およびカラー画像から、軌道6の三次元モデルが周辺環境と共に算出される。オーストリア国特許出願第2872016号明細書に開示された対象認識手段により、モデル内で枕木17、枕木間隔22、レール5および障害物37~42が特定される。次に、作業過程21を実施すべき各軌道箇所33について、作業ユニット9,10,11の適用性が調べられる。例えば、タンピングユニット11について、アプローチ可能な枕木間隔22が求められる。リフティングユニット9,10については、可能な限り最良の把持位置の決定が行われる。このようにして、作業ユニット9,10,11の、各作業過程21用に予め設定された作業位置が求められる。
【0032】
運転室7または作業室8内には表示装置34(モニタ、タッチスクリーン等)が配置されており、表示装置34に算出された作業位置が表示されてから、作業ユニット9,10,11の実際の制御が行われる。さらに、相応する室7,8に複数の操作部材35が配置されている。操作部材35を介して、オペレータ36は作業過程21の実施前に、作業ユニット9,10,11の作業位置を変更することができる。
【0033】
図2には、分岐器2が平面図で示されている。この場合、一般的な分岐器コンポーネントが、作業ユニット9,10,11に対する障害物と見なされる。これらは例えば、転てつ器37、サーボモータ38、分岐器リンク装置39、ガード40、ウイングレール41およびクロッシング42である。これらの障害物37~42の位置および広がりが、センサ装置27によって検出される。
【0034】
図3に示すように、各分岐器または各分岐器タイプ用に、通常は複数の突固め図が存在する。そこには、所要作業工程について計画された、個々のタンピングユニット11またはタンピングピッケル20毎の突固め位置43が書き込まれている。これはこの例では、スイッチマルチプルタイタンパが分岐器2の一貫して延びるレールに沿って走行する第1の作業工程用に計画された、複数の突固め位置43である。第2の作業工程では、分岐したレールを走行し、このときに、第1の作業工程では突き固められなかった領域が処理される。それぞれの軌道中心が、機械ガイドライン44として用いられ、外側の各タンピングユニット11については、最大押開け幅45が表示されている。
【0035】
軌道敷設機械1内に配置されたセンサ・制御システム46には、指令コンピュータ24、機械制御装置25、バスシステム47、計算ユニット31ならびにセンサ装置27が含まれる(
図4)。個々のセンサ28,29,30は、計算ユニット31に接続されている。用途に応じて、センサ装置27には別のセンサ(例えば誘導センサ)が追加されてよい。
【0036】
計算ユニット31では、複数のセンサデータがまとめられて軌道2のモデルが形成されかつ評価される。この評価の結果が、処理しようとする軌道箇所33に対する、作業ユニット9,10,11の個々の作業位置である。処理しようとする各軌道箇所33に対する作業位置を算出するために、計算ユニット31には軌道敷設機械1、特に作業ユニット9,10,11の幾何形状データが記憶されている。
【0037】
軌道敷設機械1の幾何形状データを用いて、計算ユニット31は、軌道6ならびに軌道対象物5,17,22,37~42の位置データおよび幾何形状データから、または導出されたデジタル軌道モデルから、処理しようとする軌道箇所33に対する作業ユニット9,10,11またはユニットコンポーネントの最適な作業位置を算出する。これと並行して、軌道6に対する軌道敷設機械1または作業ユニット9,10,11の目下の位置が、センサ装置27または別のセンサ(例えば距離センサ)によって連続的に検出される。これらのデータが機械制御装置25において連続的に調整されることにより、軌道箇所33に到達すると、作業ユニット9,10,11の対応する作業位置の割当てが行われる。
【0038】
任意には、突固め位置43が計画された突固め図、または、そこから導出された分岐器2の神経点が、計算ユニット31に記憶されていてよい。このような計画データは、例えば個々のタンピングユニット11に対する配向ライン(レール5)の変更が行われねばならない場所を示している。例えば、主要レール突固めに関しては、最も外側のユニット11でもって最大押開け幅45が達成されるまで、分岐レールに沿って突き固められるべきであるということが規定されている。次いで、分岐レールの内側のレールに向かって横方向移動が行われ、これは再び最大押開け幅45に到達するまで引き続き実施される。最大押開け幅45では、主要レールに対するユニット11の戻し案内が想定されている。計算ユニット31に接続された表示装置34により、算出された作業位置がオペレータ38に示される。
【0039】
バスシステム47は、例えばイーサネットとして形成されている。イーサネットスイッチ48を介して、機械制御装置25に計算ユニット31および指令コンピュータ24のデータが供給される。このネットワーク構成により、既存の軌道敷設機械1を、作業ユニット9,10,11を自動制御するための本発明による支援システムでもって拡張する可能性が生じる。
【0040】
作業位置を調整するための操作部材35としては、機械制御装置25の操作部材を使用することができる。これに対して代替的に、計算ユニット31に接続された操作部材、ワイヤレスの操作部材またはタッチスクリーンが使用可能である。大抵はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)として形成される機械制御装置25は、作業ユニット9,10,11の個々の駆動装置15を制御する。有利には、作業ユニット9,10,11には目下のユニット位置を検出するためのセンサが装備されている。このようなフィードバック手段は、制御過程を最適化する。任意には、突固めプロトコルにおいてセンサにより算出された実際作業位置の、算出された目標作業位置からのずれが検出される。
【0041】
図5には、1つの有利な方法の流れが示されている。これは例えば、軌道敷設機械1の第1の運転モードで実施される。対象特定および位置特定49から出発して、周知の数値法により、軌道6のモデル形成50が行われる。次の方法ステップでは、処理しようとする軌道箇所33に対してそれぞれ、作業ユニット9,10,11用の作業位置算出51が行われる。作業位置は、確認応答と結びついた表示過程52において、表示装置34に表示される。この場合、この確認応答は、同意応答53と拒否応答54とに分かれている。
【0042】
同意応答53のYESが確認された場合には、算出された作業位置を作業ユニット9,10,11用の制御信号に変換するために、機械制御装置25へのデータ転送55が行われる。これにより、対応する軌道箇所33に到達すると、作業ユニット9,10,11の自動位置決め56が行われ、次のステップにおいて作業過程21(リフティング過程または整正過程および突固め過程)が実施される。
【0043】
拒否応答54のYESが確認された場合には、作業ユニット9,10,11が対応する軌道箇所33に到達すると直ちに、作業ユニット9,10,11は停止される。操作部材35を介した、作業ユニット9,10,11の手動での位置決め58が行われる。連続して作業するマルチプルタイタンパの場合には、まずサテライトだけが停止される。車両全体の停止は、車両がサテライトに乗り上げたときに初めて行われる(手動での位置決め58は、大抵この前に終了している)。タンピングユニット11が、目下突き固めようとする枕木17の上に位置決めされる。ローラリフティングキャッチ14の位置決め58は、次の枕木17に向かって引き続き走行する前に行われる。作業過程21および引き続く走行61の実施後には、次の作業サイクルが続く。
【0044】
複数の作業ユニット9,10,11においてばらばらに確認することも可能である。この場合には、算出された作業位置の一部だけに同意し、次いで自動位置決め56が行われる。作業位置を拒否された他の部分においては、関係する作業ユニット9,10,11が、作業過程21用に想定された軌道箇所33のところで停止され、手動で位置決めされる。
【0045】
応答53,54の確認タイムリミットとして、軌道敷設機械1と連動した表示水平線59が表示される。応答確認無しで表示水平線に到達60した場合には、機械1の停止57がトリガされる。軌道敷設機械1は、表示された作業位置に対する同意または拒否が行われるまで、停止する。この安全対策により、オペレータ36が確認を行わない場合には、引き続く走行が阻止される。
【0046】
さらなる防護用に、第2の運転モードでは、作業過程21の直前に解放応答62が行われてよい。解放動作として、オペレータは解放操作部材63(例えばペダル)を操作する。この過程は、流れを中断すること無く行うことができるため、通常、この安全対策により遅延が生じることはない。
【0047】
図6には、1つの代替的な方法の流れが示されている。この場合は第3の運転モードにおいて算出された作業位置が、表示水平線に到達する60まで確認応答無しで表示される。次いで、機械制御装置25へのデータ転送55および作業ユニット9,10,11の自動位置決め56が行われる。作業過程21を実施するためには、解放応答62が確認されねばならない(YES)。このためにオペレータ36は解放操作部材63を操作する。ただしその前に、操作部材35を介して作業位置の後調整64を行う可能性がある。
【0048】
図7~
図9に示す例示的な図は、表示装置34によりオペレータ36に表示されるものである。この図は、分岐器2の画像を含む第1の表示ウインドウ65と、算出された作業位置に関するデータを含む第2の表示ウインドウ66とに分けられている。表示水平線59は、破線として示されている。表示水平線59と第1の表示ウインドウ65とは、軌道敷設機械1と連動しているため、引き続く走行61時には、分岐器2の画像は、第1の表示ウインドウ65内で作業方向26とは反対の方向に動く。
【0049】
図7には、処理しようとする所定の軌道箇所33に対するリフティングユニット9および補助リフティングユニット10の作業位置が映されている。これは突き固めの際にタンピングユニット11が位置決めされる軌道箇所33である。作業方向26においてその前方に、リフティング装置9,10が位置している。図示の例では、軌道箇所33に対してリフティングユニット9の四つのローラリフティングキャッチ14ならびに補助リフティングユニット10のレール把持装置16の使用が算出された。この場合、各作業位置は円盤(使用中の把持ローラ)としてまたはピクトグラム(把持装置)として示されている。ハッチングされた三角形の領域により、進出過程67が示されている。軌道6の相当する領域からは、突出した障害物(例えば標識灯)が除去されていなければならない。
【0050】
レール把持装置16(補助リフティングユニット10の自由端部における変位可能なヘッド)の当付け角度も、有意には表示される。この当付け角度でもって、ガイドローラが分岐するレール5に対して平行に向けられる。
【0051】
加えて、分岐器2の第1の長枕木68が強調されている。認識される全ての障害物37~42も、色的にまたは縁取りされて特徴付けされている。補足的に、広範な状況の全体画像をオペレータ36に送るためには、個々の軌道対象物5,17,22,37~42の輪郭と、軌道6の写真画像とを重ね合わせることが有意である。このようにして、場合によって認識されない障害物または不十分な作業位置を即座に認識することができる。
【0052】
第2の表示ウインドウ66には、リフティング動作の算出された作業位置に関する別の情報が表示される。有意な表示は例えば、係合状態にある把持機構13,14,16の数およびそこから導出される、確実な軌道こう上が期待できるか否かという、クオリティ表示である。さらに、各把持機構13,14,16用に、進んだ軌道距離(キロメートル数)を表示することができる。このために、各把持機構13,14,16には、固有の線が割り当てられている。この色的なまたはそれ以外の割当てでもって、第1の表示ウインドウ65には、作業ユニット9,10,11の目下の位置も映されている。作業ユニット9,10,11は、作業方向26において表示水平線59の後方に位置している。例えば、実線69はタンピングユニット11の目下の位置を示している。
【0053】
図8には、全ての作業ユニット9,10,11の作業位置が組み合わされた図が示されている。リフティングユニット9については、リフティングフック13が枕木間隔22内のレール5のレール底部を把持することができるようにするために、長手方向移動70が表示されている。把持位置は、ピクトグラムによって表示されている。この軌道箇所33では、リフティングユニット9の三つのローラだけが把持位置にもたらされてよい。
【0054】
突き固めようとする枕木17の領域には障害物37~42が位置していないため、全てのタンピングピッケル20を使用することができる。この場合、個々のタンピングピッケル20の作業位置は、ピッケル20の概略横断面図によって示されている。懸吊装置18の位置は実線によって示されており、この場合は鉛直方向軸19を中心とした回動により、枕木17の傾斜位置に対する適合が行われる。
【0055】
第3の表示ウインドウ71には、懸吊装置18の作業位置ならびに各タンピングピッケル20の横方向移動および角度位置に関する情報が表示されている。この場合、迅速な状況判断を可能にするために、各タンピングピッケル20はそれぞれレール横断面に対して算出された作業位置に、概略的に示されている。対向して位置するタンピングピッケル20の算出された開放幅、ひいては衝突フラップの作業位置もここに、または別の作業ウインドウ65,66に表示することができる。第2の作業ウインドウ66において組み合わされた確認応答を介して、全ての作業ユニット9,10,11の作業位置に対する同意または拒否が行われてよい。
【0056】
図9では、分岐器2が180°回動された状態で示されている。つまり、オペレータの目視方向は、軌道突固め機械において通常であるように、作業方向26に相当する。この表示は、タンピングユニット11の算出された作業位置の監視に適している。軌道突固め時には、軌道こう上を完全に自動化して進行することができる。なぜならば、ローラリフティングキャッチだけが使用され、かつ障害物は滅多にないからである。障害物はいずれにしろセンサ装置27により検出されるので、衝突が確実に回避される。
【0057】
この場合は
図6に示した方法の流れに基づいている。各軌道位置33に関しては、作業ユニット9,10,11の既に算出された作業位置と共に、それぞれ第2の表示ウインドウ66に追加情報が表示される。第3の表示ウインドウ71には、最後に算出されたタンピングピッケル20の横方向位置および角度位置が表示される。その時々の軌道位置33が表示水平線59に到達すると直ちに、対応する作業位置表示は表示ウインドウ65,66,71内の追加情報と共に消える。場合によっては、作業過程21の解放前に、後調整64が行われる。
【0058】
オペレータ36が算出された作業位置を解放することができるようにするためには、別の表示態様も適している。これには、作業位置に関する純粋なテキスト表示もしくは純粋な画像表示、または適当なモニタもしくはデータグラスを用いた三次元表示が含まれる。