IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴァレオ システム デシュヤージュの特許一覧

特許7143332自動車両ワイパーシステム用のギアモータ
<>
  • 特許-自動車両ワイパーシステム用のギアモータ 図1
  • 特許-自動車両ワイパーシステム用のギアモータ 図2
  • 特許-自動車両ワイパーシステム用のギアモータ 図3
  • 特許-自動車両ワイパーシステム用のギアモータ 図4
  • 特許-自動車両ワイパーシステム用のギアモータ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】自動車両ワイパーシステム用のギアモータ
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/08 20060101AFI20220920BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20220920BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
B60S1/08 P
H02K7/116
F16H1/16 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019566296
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2018063535
(87)【国際公開番号】W WO2018219742
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】1754894
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512092737
【氏名又は名称】ヴァレオ システム デシュヤージュ
【氏名又は名称原語表記】VALEO SYSTEMES D’ESSUYAGE
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼ-ルイ、エラーダ
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/010021(WO,A1)
【文献】特開2011-255811(JP,A)
【文献】特許第5317751(JP,B2)
【文献】特表2002-525005(JP,A)
【文献】米国特許第07898132(US,B2)
【文献】特開2013-203184(JP,A)
【文献】米国特許第05027024(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00-1/68
H02K 7/116
F16H 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両ワイパーシステム用のギアモータ(1)であって、
磁気要素を含む回転子(20)と、前記回転子の電磁励起用の巻線を含む固定子(21)と、前記回転子に固定された回転軸(22)とを含む電気モータ(2)と、
前記回転軸(22)と前記ギアモータの出力軸とを結合する減速ギア機構(3)であって、ウォームギアを含み、ウォーム(30)が前記回転子(22)の前記回転軸に固定され、ウォームホイール(31)が前記ギアモータの前記出力軸に固定される、減速ギア機構(3)と、
前記減速ギア機構(3)用の保護包囲体を形成するケーシングと、
前記ケーシングに固定され、前記回転軸(22)を案内するように構成された玉軸受(5)を収容する軸受支持体(4)であって、前記玉軸受(5)は、前記回転軸に取り付けられた内輪(50)と外輪(51)とを含み、前記軸受支持体(4)は、前記玉軸受(5)の前記外輪(51)を収容するとともに支持するための座部(40)を含み、前記座部が前記玉軸受の前記外輪用の支持面を含む、軸受支持体(4)と、
前記回転軸(22)の軸線方向の遊びを排除するように構成された、軸線方向の力を発生させるための装置であって、前記回転軸(22)に対して半径方向に摺動するように取り付けられた保持くさび(6)を含み、前記保持くさび(6)が前記玉軸受(5)の前記外輪に軸線方向の力を加え、当該力が前記軸受支持体(4)の前記座部(40)の前記支持面に向けられる、装置とを備え、
前記保持くさび(6)が、前記軸受支持体(4)の前記座部(40)と、前記ウォームホイール(31)のすぐ近くの前記ウォーム(30)との間の中間位置に配置され、
前記保持くさび(6)によって前記玉軸受(5)の前記外輪(51)に加えられた前記軸線方向の力(Fa)が、前記ウォーム(30)から離れる方向に向けられる、ギアモータ。
【請求項2】
前記保持くさび(6)が、前記ウォームホイール(31)の歯から3mm未満の距離(d1)に位置する、請求項1に記載のギアモータ。
【請求項3】
前記保持くさび(6)が、
前記回転軸(22)が貫通するノッチ(63)を含む前壁(60)であって、前記ウォーム(30)に向けられる外面と、前記玉軸受(5)の前記外輪(51)に圧力を加えるとともに、前記軸線方向の力(Fa)を前記玉軸受(5)の前記外輪(51)に伝達する内面とを有する前壁(60)と、
前記ノッチ(63)の両側にそれぞれ位置付けられるとともに、前記軸受支持体(4)の2つの平行な取付溝(41、42)に対してそれぞれ摺動可能に係合するように意図された2つの取付フランジ(61、62)と、を含む、請求項1または2に記載のギアモータ。
【請求項4】
前記ノッチ(63)に対して前記ウォームホイール(31)側に配置された、第1取付フランジと称される前記取付フランジ(61)が、前記回転軸(22)の軸線方向における位置オフセット(dc)であって、前記前壁(60)の軸線方向位置に対する位置オフセット(dc)だけ前記ウォームホイール(31)から離間している、請求項3に記載のギアモータ。
【請求項5】
前記前壁(60)と、前壁(60)から軸線方向にオフセットされた前記第1取付フランジ(61)は、前記保持くさび(6)の屈曲部(64)によって結合されている、請求項4に記載のギアモータ。
【請求項6】
前記屈曲部(64)は、前記ウォームホイール(31)の歯の高さ、および歯のすぐ近くに、ノッチ(65)を含む、請求項5に記載のギアモータ。
【請求項7】
前記第1取付フランジ(61)が、前記前壁(60)の前記ノッチ(63)の前記ウォームホイール(31)側に配置され、前記回転軸(22)の前記軸線方向における前記位置オフセット(dc)だけ前記ウォームホイール(31)から離間しており、
前記ノッチ(63)の他の側に配置された、第2取付フランジと称される他の前記取付フランジ(62)は、前記回転軸の軸線に沿った、前記第1取付フランジ(61)とは異なる軸線方向位置にあり、前記第1取付フランジ(61)と比較して、前記ウォームホイール(31)に対して軸線方向に近い位置にある、請求項4乃至6のいずれか一項に記載のギアモータ。
【請求項8】
前記回転軸(22)の軸線に沿った、前記第2取付フランジ(62)の前記軸線方向位置は、前記前壁(60)の位置と同一である、請求項7に記載のギアモータ。
【請求項9】
前記回転軸(22)が貫通する、前記前壁(60)の前記ノッチ(63)は、前記保持くさびの底部に向かって開いており、
カバー(66)が、前記玉軸受(5)および/または前記軸受支持体(4)を覆うように、前記保持くさびの上部において前記前壁から突出している、請求項3乃至8のいずれか一項に記載のギアモータ。
【請求項10】
前記軸受支持体(4)が、前記玉軸受(5)の前記外輪(51)用の前記座部(40)を形成するハウジングを含み、
前記ハウジングは、
前記ウォーム(30)に面した玉軸受挿入開口(43)と、
前記玉軸受(5)の前記外輪(51)の円筒面と協働する円筒内壁(44)と、
前記玉軸受の前記外輪(51)の端面であって、前記保持くさび(6)が圧力を加える端面とは反対側に位置する端面に圧力を加える後方肩部(45)とを含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のギアモータ。
【請求項11】
前記ハウジングが形成された前記軸受支持体の本体は、前記挿入開口(43)が形成された前面(46)を含み、
前記第1取付フランジ(61)と係合する前記取付溝(41)は、前記前面(46)に対して軸線方向にオフセットされた位置にあり、前記本体に横方向のオフセットを作り出す、請求項10に組み合わされた、請求項4乃至8のいずれか一項に記載のギアモータ。
【請求項12】
前記ハウジングの前記円筒内壁と、前記ウォームホイール(31)側の前記本体の外側面との間に画定される、前記軸受支持体(4)の前記本体の壁の最も薄い領域の厚み(ep)は、5mm未満である、請求項11に記載のギアモータ。
【請求項13】
前記軸受支持体(4)の前記座部(40)と前記保持くさび(6)との間に保持された前記玉軸受(5)は、前記ウォーム(30)に対して前記電気モータ(2)とは反対側の端部にある、前記回転軸の端部を案内する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のギアモータ。
【請求項14】
前記玉軸受(5)と、前記ウォームホイール(31)の外縁とを隔てる距離(d2)は、10mm未満である、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のギアモータ。
【請求項15】
前記回転軸(22)は、2つの玉軸受(5,7)によってのみ案内され、2つの玉軸受(5,7)は、前記軸受支持体(4)と前記保持くさび(6)との間に保持され、前記ウォーム(30)に対して前記電気モータ(2)とは反対側の端部に位置する、前記回転軸(22)の端部を案内する前記玉軸受(5)と、前記電気モータ(2)の側に位置する、前記回転軸(22)の他方の端部を案内するための第2軸受(7)とを含む、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のギアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両ワイパーシステム用のギアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ギアモータは、基本的に、高回転伝達トルクを得るためにギアモータの速度を減速させる役割を果たす減速ギア機構に連結された電気モータからなる。
【0003】
長寿命、小型化、低消費量、低騒音レベルのような多くの利点を提供するギアモータ、特にブラシレス直流電気モータにおいて、様々な種類の電気モータが使用され得る。
【0004】
上記の種類のギアモータは、1つ以上のワイパーブレードと、ワイパーブレードを往復運動させるためのリンク機構とを含む自動車両ワイパーシステムに特に適用され、ギアモータの出力軸はワイパーシステムのリンク機構を駆動する。
【0005】
減速ギア機構は、ウォーム/ウォームホイールの組み合わせであり得て、ウォームは回転子の回転軸に固定され、ウォームホイールはギアモータの出力軸に固定される。
【0006】
通常、2つまたは3つの玉軸受が回転軸の回転を案内するために使用され、各玉軸受は、内輪と外輪とを有し、玉は、内輪の軌道および外輪の軌道において転がることができるようになっている。
【0007】
製造業者が順守しなければならない仕様の要件の中で、通常、出力軸の角度位置に関する正確さが要求される。これは、回転子の回転軸の軸線に沿ったウォームの軸線方向位置をロックする目的において、回転子の回転軸と支持体との間の軸線方向の遊びの排除を意味する。
【0008】
この目的のために、まず、玉軸受の内輪の軸線方向の位置が、回転軸上で(両方向に)固定され、その後、軸受の外輪の軸方向の位置が、固定支持体、すなわちギアモータのケーシングに対して固定される。
【0009】
回転軸の軸線方向の遊びを補償するように構成された、軸線方向の力を発生させるための先行技術としての装置が、特許文献により知られている。これらの装置は、回転軸に容易に取り付けられる保持くさびを含んでおり、保持くさびは、回転軸をまたぎ、軸に対して半径方向の嵌合方向に摺動させることにより、回転軸に容易に取り付けられる。欧州特許第1050099号明細書、米国特許第7898132号明細書、特許第5317751号公報および特開2013-203184号公報といった文献は、このような特許文献の例である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した先行技術の全てにおいて、軸力を発生させるための装置は、ウォームと電気モータの回転子との間の中間位置に位置する、回転軸を案内する軸受の軸線方向の遊びをロックしている。
【0011】
したがって、玉軸受は、減速ギア機構のケーシングに固定された座部を含む軸受支持体に保持され、座部は、ウォームの位置から離れて面する、軸受の外輪の端面に圧力を加える面を含んでいる。保持くさびは、軸に対して半径方向に摺動させることによって取り付けられる要素である。
【0012】
組み立て中、玉軸受は、回転軸の所定の位置に予めロックされた玉軸受の内輪とともに、予め回転軸に対して位置付けられる。次に、回転軸/玉軸受組立体は、ボールネジを減速ギア機構のケーシングに貫通させ、同時に、軸受の外輪の位置決めをして、座部の支持面に圧力を加えるために、外側から座部の開口に装着される。保持くさびをケーシングのガイド内で摺動させることにより、保持くさびを摺動方向に、すなわち、回転軸に対して半径方向に挿入した後、軸方向の遊びは排除される。
【0013】
ロック位置になると、保持くさびは玉軸受に軸方向の力を加える。この力は軸受支持体の座部に向けられ、軸受の外輪は保持くさびによってウォーム側に向けてロックされるとともに、座部の支持面によって軸受の位置に対してウォームの反対側の端部に向けてロックされる。したがって、玉軸受の外輪に対する保持くさびの軸線方向の力は、常にウォームに向けられる。
【0014】
本発明者等は、軸線方向における、電気モータの全体のサイズを制限することを目的とする場合、ウォームと電気モータとの間の中間位置に配置された玉軸受のロックに依存する軸線方向の力を発生させる上述した装置の存在には、ペナルティが課され得ることに気付いた。
【0015】
本発明の目的は、回転軸の軸線方向の遊びの補償を犠牲にすることなく、回転軸の長手方向軸線に沿ってコンパクトにすることができるように、モータ軸が案内される自動車両ワイパーシステム用のギアモータを提案することにより、上述した欠点を軽減することである。
【0016】
本発明の他の目的および利点は、非限定的な例示としてのみ与えられる以下の説明により明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、第1に、
磁気要素を含む回転子と、回転子の電磁励起用の巻線を含む固定子と、回転子に固定された回転軸とを含む電気モータと、
回転軸とギアモータの出力軸とを結合する減速ギア機構と、
減速ギア機構用の保護包囲体を形成するケーシングであって、減速ギア機構がウォームギアを含み、ウォームが回転子の回転軸に固定され、ウォームホイールがギアモータの出力軸に固定される、ケーシングと、
ケーシングに固定され、回転軸を案内するように構成された玉軸受を収容する軸受支持体であって、玉軸受は、回転軸に取り付けられた内輪と外輪とを含み、軸受支持体は、玉軸受の外輪を収容するとともに支持するための座部を含み、座部が玉軸受の外輪用の支持面を含む、軸受支持体と、
回転軸の軸線方向の遊びを補償するように構成された、軸線方向の力を発生させるための装置であって、回転軸に対して半径方向に摺動するように取り付けられた保持くさびを含み、保持くさびが玉軸受の外輪に軸線方向の力を加え、当該力が軸受支持体の座部の支持面に向けられる、装置とに関する。
【0018】
本発明によれば、保持くさびが、軸受支持体の座部と、ウォームホイールのすぐ近くのウォームとの間の中間位置に配置され、保持くさびによって玉軸受の外輪に加えられた軸線方向の力が、ウォームから離れる方向に向けられる。
【0019】
軸受支持体の座部と保持くさびとの間に保持された玉軸受は、有利には、ウォームに対して電気モータとは反対側の端部にある、回転軸の端部、すなわち電気モータからの最大距離にある、回転軸の端部を案内するものであってもよい。
【0020】
保持くさびが、ウォームホイールの歯から3mm未満、例えば2mmの距離に位置していてもよい。
【0021】
一実施の形態では、保持くさびが、
回転軸が貫通するノッチを含む前壁であって、ウォームに向けられる外面と、玉軸受の外輪に圧力を加えるとともに、軸線方向の力を玉軸受の外輪に伝達する内面とを有する前壁と、
ノッチの両側にそれぞれ位置付けられるとともに、軸受支持体の2つの平行な取付溝に対してそれぞれ摺動可能に係合するように意図された2つの取付フランジと、を含んでいてもよい。
【0022】
玉軸受をウォームホイールに向けて移動させるために、ギアモータは、以下の特徴を有していてもよい。
-ノッチに対してウォームホイール側に配置された、第1取付フランジと称される取付フランジが、回転軸の軸線方向における位置オフセットであって、前壁の軸線方向位置に対する位置オフセットだけウォームホイールから離間していてもよい。この場合、前壁と、前壁から軸線方向にオフセットされた第1取付フランジは、保持くさびの屈曲部によって結合されていてもよい。
-屈曲部は、ウォームホイールの歯の高さ、および歯のすぐ近くに、ノッチを含んでいてもよい。
【0023】
別個のまたは組み合わされる本発明の任意の特徴では、
-ノッチの他の側に配置された、第2取付フランジと称される他の取付フランジは、回転軸の軸線に沿った、第1取付フランジとは異なる軸線方向位置にあり、第1組立フランジと比較して、ウォームホイールに対して軸線方向に近い位置にある。例えば、回転軸の軸線に沿った、第2取付フランジの軸線方向位置は、前壁の位置と同一である。
-回転軸が貫通する、前壁のノッチは、保持くさびの底部に向かって開いており、カバーが、玉軸受および/または軸受支持体を覆うように、保持くさびの頂部において前壁から突出している。
-軸受支持体が、玉軸受の外輪用の座部を形成するハウジングを含み、ハウジングは、ウォームに面した、玉軸受を挿入するための開口と、玉軸受の外輪の円筒面と協働する円筒内壁と、玉軸受の外輪の端面であって、保持くさびが圧力を加える端面とは反対側に位置する端面に圧力を加える後方肩部とを含んでいる。
-ハウジングが形成された軸受支持体の本体は、挿入開口が形成された前面を含み、第1取付フランジと係合する取付溝は、前面から軸線方向に離間した位置にあり、本体に横方向のオフセットを作り出す。
-ハウジングの円筒内壁と、ウォームホイール側の本体の外側面との間に画定される、軸受支持体の本体の壁の最も薄い領域の厚みepは、5mm未満、特に3mm未満である。
-回転軸は、2つの玉軸受によってのみ案内され、2つの玉軸受は、軸受支持体と保持くさびとの間に保持され、ウォームに対して電気モータとは反対側の端部に位置する、回転軸の端部を案内する玉軸受と、電気モータの側に位置する、回転軸の他方の端部を案内するための第2軸受とを含んでいる。
【0024】
本発明によれば、玉軸受と、ウォームホイールの外縁とを隔てる距離は、10mm未満、好ましくは8未満、より好ましくは6mm未満、さらにより好ましくは4mm未満であってもよい。
【0025】
本発明は、添付の図面および以下の説明を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の一実施の形態によるギアモータを上方から示す部分図(ケーシングは図示せず)であり、ウォームホイールの歯のすぐ近くにある保持くさびの位置をより詳細に示す図である。
図2図2は、ウォームホイールに平行かつ回転軸の軸線を通る切断面に沿った図1の断面図であり、保持くさびによって玉軸受の外輪に適用され、ウォームから離れる方向に向けられる軸線方向の力の方向と、保持くさびとウォームホイールの外縁とを隔てる距離d1と、本発明が最小化することを目的とする距離d2、すなわち玉軸受とウォームホイールの外縁とを隔てる距離と、をより詳細に示す図である。
図3図3は、本発明によるギアモータの(部分)斜視図であり、図1の実施の形態と比較して、玉軸受をウォームホイールの更に近くに位置付けることが可能になるように、保持くさびが、有利には、くさびの前壁とウォームホイール側の取付フランジとの間における屈曲部の位置に、ノッチを有するという点で特に図1とは区別される図である。
図4図4は、図3のギアモータの保持くさびと軸受支持体とを詳細に示す図である。
図5図5は、図3のギアモータの保持くさびと軸受支持体とを詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、磁気要素を含む回転子20と、回転子の電磁励起用の巻線を含む固定子21と、回転子に固定された回転軸22とを含む電気モータ2と、回転軸22とギアモータの出力軸とを結合する減速ギア機構3と、減速ギア機構3用あるいは電気モータ2用の保護包囲体を形成するケーシングとを備える、自動車両ワイパーシステム用のギアモータ1に関する。
【0028】
電気モータ2は、ブラシを含むタイプの直流モータであってもよく、ブラシを含まないタイプの直流モータであってもよい。ブラシを含まないタイプの直流モータ(すなわち、ブラシレスモータ)の場合、このタイプのギアモータは、固定子21に対する回転子20の角度位置を決定するための装置を含んでいる。コントローラー(図示せず)は、回転子の角度位置を決定するための装置によって決定された回転子の角度位置に応じて、固定子21の電磁励起巻線に電力を供給するための制御信号を生成するように構成されている。
【0029】
一実施の形態によれば、回転子の角度位置を決定するための装置は、回転子とともに回転するように拘束された多極磁石と、回転子が回転したときに、固定位置において多極磁石の磁区の変化を検出する1つ以上のホール効果センサ(図示せず)とを含んでいてもよい。
【0030】
減速ギア機構3は、ウォーム/ウォームホイールシステムを含み、ウォーム30が回転子22の回転軸に固定され、ウォームホイール31がギアモータの出力軸に固定されている。ウォームは、シャフトの材料と一体のネジ山で構成されている。
【0031】
ギアモータは、ケーシングに固定され、回転軸22を案内するように構成された玉軸受5を収容する軸受支持体4を含んでいる。軸受支持体4は、特に、ギアモータのケーシングを形成する包囲体と一体になっている。
【0032】
玉軸受5は、回転軸22に取り付けられた内輪50と外輪51とを含んでいる。内輪50と外輪51とは、それらの間に軸受の玉用の環状ハウジングを形成する。内輪および外輪は、それぞれ玉用の転がり軌道を有している。内輪は、例えば収縮または弾性リング(サークリップ(登録商標)または他のタイプ)などの当業者に知られた任意の手段によって、軸線方向において、回転軸22に対してロックされている。
【0033】
軸受支持体4は、玉軸受5の外輪51を収容するとともに支持するための座部40を含み、座部が、玉軸受の外輪51用の支持面を含んでいる。
【0034】
本発明では、ギアモータ1は、回転軸22の軸線方向の遊びを補償するように構成された、軸線方向の力を発生させるための装置を備えており、装置は、保持くさび6を含んでいる。保持くさび6は、回転軸22に対して半径方向に摺動可能に取り付けられており、ケーシングの固定ガイド内に引っ込められ、または反対に配置されることが可能になっている。取り付け位置では、保持くさび6が玉軸受5の外輪51に軸線方向の力を加え、当該軸線方向の力が軸受支持体4の座部40の支持面に向けられている。これにより、軸線方向において、玉軸受5の外輪51がロックされ、当該外輪は、玉軸受5の両側において、保持くさび6と軸受支持体4の座部40の支持面との間に係合される。
【0035】
本発明の1つの特徴によれば、保持くさび6が、軸受支持体4の座部40と、ウォームホイール31のすぐ近くのウォーム30との間の中間位置に配置されている。
【0036】
このため、図2の例に示すように、保持くさび6によって玉軸受5の外輪51に加えられた軸線方向の力Faが、ウォーム30から離れる方向に向けられる(特に欧州特許第1050099号明細書にある上述した従来技術とは異なり、ウォームに向かっていない)。
【0037】
保持くさび6が、ウォームホイール31の歯から5mm以下、好ましくは3mm未満、例えば2mm以下の距離d1に位置していてもよい。
【0038】
保持くさび6は、軸受支持体4と協働して玉軸受5を保持する。玉軸受5は、回転軸22の端部を案内し、有利には、ウォーム30に対して電気モータ2とは反対側の端部、すなわち電気モータ2からの最大距離にある、回転軸の端部に位置する。
【0039】
回転軸の長さの制限を可能にする有利な実施形態では、回転軸22は、2つの玉軸受5,7によってのみ案内され、2つの玉軸受5,7は、軸受支持体4と保持くさび6との間に保持され、ウォーム30に対して電気モータ2とは反対側の端部に位置する、回転軸22の端部を案内する玉軸受5と、ウォーム30に対して電気モータ2の側に位置する、回転軸22の他方の端部を案内するための第2軸受7とを含んでいる。
【0040】
保持くさび6が、(くさびが取付位置にあるときに)回転軸22が貫通するノッチ63を含む前壁60を含んでいてもよい。この前壁60は、ウォーム30に向けられる外面と、玉軸受5の外輪51に圧力を加える内面とを有している。内面は、玉軸受の外輪51に圧力を加えるとともに、軸線方向の力Faを玉軸受5の外輪51に伝達する。
【0041】
保持くさび6が、ノッチ63の両側にそれぞれ位置付けられるとともに、軸受支持体4に平行な2つの取付溝41,42のようなそれぞれの固定ガイドに摺動可能に係合するように意図された2つの取付フランジ61,62を更に含んでいてもよい。
【0042】
一実施の形態によれば、ノッチ63に対してウォームホイール31側に配置された、第1取付フランジと称される取付フランジ61が、有利には、回転軸22の軸線方向における位置オフセット(図1に示すdc)であって、前壁60の軸線方向位置に対する位置オフセット(図1に示すdc)により、ウォームホイール31から離れていてもよい。取付フランジ61のこのオフセット位置は、有利には、玉軸受5を可能な限りウォームホイール31に近づけることができ、したがって、保持くさび6の前壁60の平面に取付フランジを配置した解決策(図示せず)と比較して、回転軸22の長さを短くすることを可能にする。
【0043】
前壁60と、前壁60から軸線方向にオフセットされた第1取付フランジ61は、保持くさび6の屈曲部64によって結合されてもよいことに留意されたい。また、図3および図4に示すように、玉軸受5をウォームホイール31に更に近づけるために、屈曲部64は、ウォームホイール31の歯の高さ、および歯のすぐ近くに、ノッチ65を含んでいてもよいことに留意されたい。
【0044】
第1取付フランジに対してノッチ63の他の側に配置された他の取付フランジは、第2取付フランジ62と称される。この第2取付フランジ62は、回転軸の軸線に沿った、第1取付フランジ61とは異なる軸線方向位置にあってもよく、玉軸受5に近づくための障害物には必ずしもならないため、(第1取付フランジ61と比較して)ウォームホイール31に対して特に軸線方向に近い位置にあってもよい。回転軸22の軸線に沿った、第2取付フランジ62の軸線方向位置は、前壁60の位置と同一であり、第2取付フランジ62は、前壁60と同一直線上に位置している。
【0045】
回転軸22が通過する、前壁60のノッチ63は、保持くさびの底部に向かって開いており、カバー66が、保持くさび6の上部において前壁60から突出していてもよい。取付位置では、保持くさび6のカバー66は、玉軸受5および/または軸受支持体4を覆うようになる。
【0046】
軸受支持体4が、玉軸受5の外輪51用の座部40を形成するハウジングを含んでいてもよい。ハウジングは、玉軸受をウォーム30に向けて挿入するための開口43と、玉軸受5の外輪51の円筒面と協働する円筒内壁44と、後方肩部45とを有している。後方肩部45は、座部の表面(すなわち、支持面)を形成し、玉軸受5の外輪51の端面であって、保持くさび6が圧力を加える端面とは反対側に位置する端面に圧力を加える。
【0047】
ハウジングが形成された軸受支持体4の本体は、ウォームに向けられるとともに、玉軸受5の嵌合を可能にする挿入開口43が形成された前面46を含んでいる。第1取付フランジ61と係合する支持体の取付溝41は、ウォームホイールから離れていてもよく、すなわち、前面46から軸線方向に離間した位置にあってもよい。この間隔は、本体に横方向のオフセットを作り出し、軸受支持体4の本体を可能な限りウォームホイール31に近づけることを可能にする。この目的のために、ハウジングの円筒内壁44と、(ウォームホイール31側の)本体の外側面との間に画定される、軸受支持体4の本体の壁の最も薄い領域の厚みepは、より小さくてもよく、5mm未満であってもよく、特に3mm以下であってもよい。玉軸受5と、ウォームホイール31の外縁とを隔てる距離d2は、有利には短く、例えば、10mm未満、特に8mm未満、より好ましくは6mm未満、または4mm未満であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ギアモータ
2 電気モータ
20 回転子
21 固定子
22 回転軸
3 減速ギア機構
30 ウォーム
31 ウォームホイール
4 軸受支持体
40 座部
41 取付溝
42 取付溝
43 玉軸受挿入開口
44 円筒内壁
45 後方肩部
46 前面
5 玉軸受(第1軸受)
50 内輪
51 外輪
6 保持くさび
60 前壁
61 取付フランジ
62 取付フランジ
63 回転軸が貫通する、前壁のノッチ
64 屈曲部
65 ノッチ(屈曲部)
66 カバー
7 第2軸受
8 多極磁石
d1 ウォームホイールと保持くさびとの間の距離
d2 ウォームホイールと玉軸受とを隔てる距離
ep ハウジングの内壁と、ウォームホイール側の本体の外側面との間に画定される、軸受支持体の本体の壁の最も薄い領域の厚み
Fa 保持くさびによって玉軸受に加えられる軸方向の力
図1
図2
図3
図4
図5