(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】生理活性物質の鼻腔内投与
(51)【国際特許分類】
A61K 31/197 20060101AFI20220920BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220920BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20220920BHJP
A61K 31/4415 20060101ALI20220920BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20220920BHJP
A61K 31/51 20060101ALI20220920BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20220920BHJP
A61K 31/714 20060101ALI20220920BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220920BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20220920BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
A61K31/197
A61K9/08
A61K31/375
A61K31/4415
A61K31/455
A61K31/51
A61K31/522
A61K31/714
A61K47/18
A61P3/02
A61P3/02 104
A61P3/02 105
A61P3/02 106
A61P3/02 107
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019568802
(86)(22)【出願日】2018-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2018054777
(87)【国際公開番号】W WO2018158234
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-26
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519318524
【氏名又は名称】ダッチ・リニューアブル・エナジー・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DUTCH RENEWABLE ENERGY B.V.
【住所又は居所原語表記】Kruitpad 16,1398 CP MUIDEN THE NETHERLANDS
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ペリカーン、フーベルト・クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】フィッセール、ロルフ・ローレンス
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-034232(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04430154(DE,A1)
【文献】中国特許第101756954(CN,B)
【文献】ナイアシン栄養におけるトリプトファン経路の重要性,日本栄養・食糧学会誌,2010年,Vol.63, no.4,pp.135-141
【文献】「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会報告書,2014年03月,pp.202-205
【文献】Riboflavin|C17H20N4O6-PubChem,2022年01月21日,https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Riboflavin#section=Solubility
【文献】Biotin|C10H16N2O3S-PubChem,2022年01月21日,https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Biotin#section=Solubility
【文献】Folic acid|C19H19N7O6-PubChem,2022年01月21日,https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Folic-acid#section=Solubility
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61P 3/00 3/14
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のビタミンおよび/またはカフェインから選択される水溶性生理活性物質
の投与
に使用するための
水性組成物であって、前記
使用が対象の鼻腔内に
前記水性組成物を投与することを含み、前記水性組成物が、
・ 0.001~25重量%の1種以上の完全に溶解した生理活性物質であって、少なくとも0.001重量%の1種以上のビタミンおよび/または少なくとも0.001重量%のカフェインを含み、20℃において少なくとも15mg/mLの脱塩水に対する水溶性を有する生理活性物質;ここで、前記水性組成物が、
ニコチン酸およびアスコルビン酸の両者を含まない、
・ 0.01~10重量%のニコチンアミド;ならびに
・ 少なくとも60重量%の水
を含む、
水性組成物。
【請求項2】
前記生理活性物質が、その20℃での水溶性の限界を下回る濃度で前記水性組成物中に存在する、請求項1に記載の
組成物。
【請求項3】
前記水性組成物が、0.001~20重量%、好ましくは0.005~15重量%、より好ましくは0.001~10重量%、またはさらにより好ましくは0.001~5重量%の1種以上の前記生理活性物質を含有する、請求項1または2に記載の
組成物。
【請求項4】
前記水性組成物が、0.05~8重量%、好ましくは0.1~7重量%、より好ましくは0.5~6重量%、またはさらにより好ましくは1~5重量%のニコチンアミドを含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の
組成物。
【請求項5】
前記生理活性物質が、アスコルビン酸、チアミン、
ニコチン酸、パントテン酸、ピリドキシン
、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン、ならびにそれらの塩および混合物の群から選択されるビタミンである、請求項1~4のいずれか1項に記載の
組成物。
【請求項6】
前記ビタミンが、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミンおよびメチルコバラミンからなる群から選択されるビタミンB12成分である、請求項5に記載の
組成物。
【請求項7】
前記ビタミンがピリドキシン(ビタミンB6)である、請求項5に記載の
組成物。
【請求項8】
前記生理活性物質が、20℃において少なくとも20mg/mL、好ましくは20℃において少なくとも33mg/mL、さらにより好ましくは20℃において少なくとも66mg/mlの脱塩水に対する水溶性を有する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の
組成物。
【請求項9】
前記水性組成物が、4.5~6.5の範囲内のpHを有し、前記水性組成物が、200~500mOsm/L、より好ましくは260~380mOsm/Lの浸透圧を有する、請求項1~
8のいずれか1項に記載の
組成物。
【請求項10】
前記方法が、前記組成物を一回ごとに0.01~0.3mlの一定量のスプレーで鼻腔内に投与することを含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の
組成物。
【請求項11】
ビタミンB欠乏症の予防的または治療的処置に使用するための水性組成物であって、前記処置が、水性組成物を鼻腔内投与することを含み、前記水性組成物が、
・ 0.001~25重量%の1種以上の完全に溶解した生理活性物質であって、20℃において少なくとも15mg/mLの脱塩水に対する水溶性を有
し、チアミン、ニコチン酸、パントテン酸、ピリドキシン、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン、ならびにそれらの塩および混合物(ただし、前記混合物はニコチン酸およびアスコルビン酸の両者を含まない)からなる群から選択されるビタミンである生理活性物質;ここで、1種以上の前記生理活性物質は、その20℃での水溶性の限界を下回る濃度で前記水性組成物中に存在する、
・ 0.01~10重量%のニコチンアミド;および
・ 少なくとも60重量%の水
を含み、前記水性組成物は、0.01~0.3mlの量のスプレーまたはエアロゾルとして鼻腔内に投与され、10~10,000μgの量の1種以上の生理活性物質を提供する、水性組成物。
【請求項12】
前記生理活性物質が
、ピリドキシン
、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン、ならびにそれらの塩および混合物からなる群から選択されるビタミンである、
請求項11に記載の予防的または治療的処置に使用するための組成物。
【請求項13】
・ 請求項1~
10のいずれか1項に記載の水性組成物を含む容器;および
・ 前記水性組成物と流体連通している、鼻腔内投与のための鼻腔アプリケーターデバイス
を含むキット。
【請求項14】
・ 請求項
11に記載の水性組成物を含む容器;および
・ 前記水性組成物と流体連通している、鼻腔内投与のための鼻腔アプリケーターデバイス
を含み、前記鼻腔アプリケーターデバイスが、スプレーまたはエアロゾルの形態の0.01~0.3mLの一定量の前記水性組成物を対象の鼻腔内に提供するように適合されており、前記一定量が、10~10,000μgの1種以上の生理活性物質を提供する、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性物質の鼻腔内投与、より詳細には完全に溶解した生理活性物質および鼻腔内吸収促進剤を含有する水性組成物の鼻腔内投与に関する。
【0002】
背景技術
鼻腔内投与は、水溶性生理活性物質の局所および全身送達に対する種々の魅力的な選択肢を提供する。鼻腔粘膜の性質は一連の独特な特質をもたらし、それらは、患者の安全性、利便性およびコンプライアンスを最大にするのに役立つ可能性がある。鼻腔粘膜を介した生理活性剤の投与により、活性物質は体循環に直接輸送され、したがって初回通過代謝が回避されるので、他の投与経路、例えば経口投与よりも利点がある。加えて、活性薬剤は、経鼻投与後、嗅粘膜を通過することにより、または鼻-脳経路(nose to brain pathway)として公知の鼻腔中の三叉神経系を介して輸送されることにより、CNS内に直接吸収される。
【0003】
鼻腔内の鼻腔粘膜は理想的な吸収領域であるにもかかわらず、生まれながらの透過バリアおよび効率的な清浄メカニズムが、吸収可能な活性物質の総量を制限する。経鼻経路の主な不利な点として、限られた適用量(25~250μL)、高分子量薬物(>1,000Da)が鼻腔粘膜を通過することの困難性、病的状態の存在、粘液線毛薬物クリアランス、酵素的バリア、および鼻腔粘膜の刺激がある。経鼻投与した場合の水溶性生理活性物質の吸収を改善する努力がなされてきた。
【0004】
EP-A0967214は、メシル酸シルデナフィルおよび鼻腔内投与に適合した形態の医薬として許容される希釈剤または担体を含む、男性の勃起不全または女性の性障害を処置するための鼻腔内医薬製剤について記載している。例2は、メシル酸シルデナフィル、ニコチンアミド、および水を含有する鼻腔内溶液製剤について記載している。
【0005】
DE-A4430154は、100mLの蒸留水;0.1グラムのニコチン酸;1グラムのニコチンアミド;および10グラムのアスコルビン酸ナトリウムを含む水性抗うつ組成物について記載している。この組成物は、うつ病患者に、水性組成物(0.5~0.7mL)を点眼することにより、または組成物(1~1.2mL)を鼻腔粘膜に投与することにより適用された。
【0006】
US 2014/0072588は、インスリンおよび1~40%w/vの様々な濃度のSolutol(登録商標)HS15を含む組成物を開示している。Solutol(登録商標)は、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルである。US 2014/0072588は、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルを治療薬と組み合わせて使用すると、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルが製剤中に存在しない場合と比較して、はるかに高い度合いで粘膜面を通して治療薬が吸収されることを教示している。
【0007】
US 2016 022726 A1は、ビタミンB12を経鼻投与するための組成物、具体的には、約0.02%w/w~約1%w/wのコバラミン化合物および医薬として許容される緩衝液を含む水溶液を開示しており、ここで、該組成物は約4~約6.5のpHを有し、コバラミン化合物はシアノコバラミンまたはヒドロキソコバラミンである。さらに、US 2016 022726 A1は、以下の経鼻吸着促進剤:脂肪酸のポリオキシエチレン誘導体、ソルビトール無水物の部分エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、オレイン酸、レシチン、無水アルコール、Tween(例えば、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80など)、Span(例えば、Span20、Span40、Span80など)、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、エデト酸二ナトリウム、プロピレングリコール、モノオレイン酸グリセリン、フジエエート(fusieate)、胆汁酸塩、オクトキシノール、およびそれらの組合せを開示している。これらの吸収促進剤の有効性は期待外れであることが多く、これらの促進剤には、例えば感作および刺激のような望ましくない副作用を生じるものもある。
【0008】
安全に使用でき、生理活性物質の有効な鼻腔内吸収を実現する、生理活性物質の鼻腔内製剤に対する必要性が依然として存在する。
【0009】
発明の概要
本発明者らは、予想外なことに、ニコチンアミドを適切な濃度で含むことによって、水溶液からの水溶性生理活性物質の鼻腔内吸収を著しく促進できることを発見した。
【0010】
よって、本発明の一側面は、水溶性生理活性物質を投与するための非治療的方法であって、前記方法が対象の鼻腔内に水性組成物を投与することを含み、前記水性組成物が、
・ 0.001~25重量%の1種以上の完全に溶解した生理活性物質であって、少なくとも0.001重量%の1種以上のビタミンおよび/または少なくとも0.001重量%のカフェインを含み、20℃において少なくとも15mg/mLの脱塩水に対する水溶性を有し、ここで、前記水性組成物が、ナイアシンおよびアスコルビン酸の両者を含まない、生理活性物質;
・ 0.01~10重量%のニコチンアミド;ならびに
・ 少なくとも60重量%の水
を含む、非治療的方法に関する。
【0011】
本発明の別の側面は、障害の予防的または治療的処置に使用するための水性組成物であって、前記処置が、水性組成物を鼻腔内投与することを含み、前記水性組成物が、
・ 0.001~25重量%の1種以上の完全に溶解した生理活性物質であって、20℃において少なくとも15mg/mLの脱塩水に対する水溶性を有し、その20℃での水溶性の限界を下回る濃度で前記水性組成物中に存在する、1種以上の生理活性物質;
・ 0.01~10重量%のニコチンアミド;および
・ 少なくとも60重量%の水
を含み、前記水性組成物は、0.01~0.3mlの量のスプレーまたはエアロゾルとして鼻腔内に投与され、10~10,000μgの量の1種以上の生理活性物質を提供する、水性組成物に関する。
【0012】
本発明による水性製剤を適用することによって、鼻腔内吸収を促進することができる水溶性生理活性物質の例には、水溶性ビタミン、ペプチド、タンパク質、および例えばカフェインのようなアルカロイドが含まれる。
【0013】
理論に縛られることを望むものではないが、鼻腔粘膜を経由する吸収の増加は、ニコチンアミドが粘膜透過性を改善することに起因すると考えられる。
【0014】
本発明における生理活性物質の吸収の改善を考慮すると、より低用量の生理活性物質を投与する必要がある。これは、製剤中の生理活性物質の濃度を低減させることができ、および/または、投与量を低減させることができることを意味している。
【0015】
本発明は、また、水溶液からの生理活性物質の鼻腔内吸収の促進剤としてのニコチンアミドの使用であって、前記水溶液が0.01~10重量%のニコチンアミドをさらに含む、ニコチンアミドの使用を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、
・ 上に定義される水性組成物を含む容器;および
・ 前記水性組成物と流体連通している、鼻腔内投与のための鼻腔アプリケーターデバイス
を含むキットに関する。
【0017】
態様の説明
第1の側面では、本発明は、水溶性生理活性物質を投与するための非治療的方法であって、前記方法が対象の鼻腔内に水性組成物を投与することを含み、前記水性組成物が、
・ 0.001~25重量%の1種以上の完全に溶解した生理活性物質であって、少なくとも0.001重量%の1種以上のビタミンおよび/または少なくとも0.001重量%のカフェインを含み、20℃において少なくとも15mg/mLの脱塩水に対する水溶性を有し、ここで、前記水性組成物が、ナイアシンおよびアスコルビン酸(これらの酸の塩を含む)の両者を含まない、生理活性物質;
・ 0.01~10重量%のニコチンアミド;ならびに
・ 少なくとも60重量%の水
を含む、非治療的方法に関する。
【0018】
「ニコチンアミド」という用語は、ここで使用される場合、ナイアシンアミドとしても公知のピリジン-3-カルボキサミド、ならびに生理学的に許容される(解離した)塩を指す。ニコチンアミドは、構造式I:
【0019】
【0020】
で表される。
【0021】
「ビタミン」という用語は、ここで使用される場合、人が限られた量で必要とする生命の維持に必要な栄養素である有機化合物を意味する。「ビタミン」という用語には、必須脂肪酸または必須アミノ酸は含まれない。
【0022】
「ペプチド」という用語は、ここで使用される場合、形式的に水を失うことによる、あるカルボニル炭素から別の窒素原子への共有結合の形成によって、2~100個のアミノ酸分子(同一または異なる)から誘導される化合物を意味する。
【0023】
「タンパク質」という用語は、ここで使用される場合、100個を超えるアミノカルボン酸分子から誘導される、天然に存在するか、または(半)合成のポリペプチドを意味する。
【0024】
「カフェイン」という用語は、ここで使用される場合、1,3,7-トリメチルキサンチン、ならびに生理学的に許容される(解離した)塩を指す。
【0025】
生理学的に許容される適切な塩は、有機塩であっても無機塩であってもよい。生理学的に許容される適切な有機塩として、クエン酸塩およびギ酸塩が含まれるが、これらに限定されない。生理学的に許容される適切な無機塩として、塩化物およびヨウ化物が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明によって用いられる水溶性生理活性物質は、好ましくは、20℃において少なくとも15mg/mL、好ましくは20℃において少なくとも20mg/mL、より好ましくは少なくとも33mg/mL、さらにより好ましくは20℃において少なくとも66mg/mLの脱塩水に対する溶解性を有する。典型的には、水溶性生理活性物質の20℃における脱塩水に対する水溶性は、100mg/mLを超えない。
【0027】
好ましくは、水溶性生理活性物質は、0.5未満、より好ましくは0未満、さらにより好ましくは-0.5未満のlog Pを有する。log Pは、オクタノール/水分配係数を示し、物質の脂溶性を表す。
【0028】
以前に説明したように、水性組成物中のニコチンアミドは、生理活性物質の鼻腔内吸収を促進する。言い換えれば、好ましくは、ニコチンアミドは溶解促進剤として用いられない。したがって、特に好ましい態様では、生理活性物質は、その20℃での水溶性を下回る濃度で水性組成物中に存在する。さらにより好ましくは、生理活性物質は、その20℃での水溶性の90%を下回る、より好ましくは80%を下回る濃度で存在する。
【0029】
別の好ましい態様では、水性組成物は、0.001~20重量%、より好ましくは0.005~15重量%、さらにより好ましくは0.001~10重量%、最も好ましくは0.001~5重量%の1種以上の生理活性物質を含有する。
【0030】
ニコチンアミドは、好ましくは、0.05~8重量%、より好ましくは0.1~7重量%、さらにより好ましくは0.5~6重量%、最も好ましくは1~5重量%の濃度で水性組成物中に存在する。
【0031】
好ましい一態様では、水溶性生理活性物質は、アスコルビン酸(ビタミンC)、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、ビオチン(ビタミンB7)、葉酸(ビタミンB9)、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン(ビタミンB12)、ならびにそれらの塩および混合物からなる群から選択されるビタミンである。好ましい態様では、用いられるビタミンは、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミンおよびメチルコバラミンからなる群から選択されるビタミンB12成分である。別の好ましい態様では、ビタミンはピリドキシン(ビタミンB6)である。さらに別の好ましい態様では、ビタミンは葉酸(ビタミンB9)である。
【0032】
さらに別の好ましい態様では、水溶性生理活性物質は1,3,7-トリメチルキサンチン(カフェイン)である。
【0033】
好ましくは、水性組成物は、4.5~6.5の範囲内、より好ましくは5.0~6.2の範囲内、さらにより好ましくは5.5~6.0の範囲内のpHを有する。
【0034】
好ましい態様では、水性組成物は、1重量%を超えない、好ましくは0.5重量%を超えない、界面活性剤、高分子賦形剤およびポリヒドロキシル賦形剤を含む。したがって、本質的に、界面活性剤、高分子賦形剤またはポリヒドロキシル賦形剤を含まない、経鼻投与用の水溶性生理活性物質の組成物を製剤化することが今や可能である。これらの賦形剤は、従前は吸収促進剤として使用されてきたが、望ましくない副作用があることは公知である。さらに、本発明の方法では水溶性生理活性物質のバイオアベイラビリティが改善されているので、低濃度の水溶性生理活性物質を使用することができる。この利点には、組成物の浸透圧の改善が含まれるので、高濃度の水溶性生理活性物質と比較して対象に対して痛みの少ない等張性組成物を調製することができる。
【0035】
水性組成物は、好ましくは200~500mOsm/L、より好ましくは260~380mOsm/Lの浸透圧を有する。
【0036】
本発明の方法は、好ましくは、0.0001~0.3ml、より好ましくは0.001~0.2ml、最も好ましくは0.01~0.1ml、さらにより好ましくは0.05~0.2mlの用量の組成物を鼻腔内投与することを含む。組成物は、好ましくは、スプレーまたはエアロゾルとして投与される。
【0037】
「エアロゾル」という用語は、液体粒子の霧を意味する。かかる製剤のための分注システムは、圧縮された噴射ガスによって加圧された液体を含有する缶またはボトルであってもよい。
【0038】
「スプレー」という用語は、手動式ポンプによって生成され、アトマイザーのノズルを強制的に通過させられた液体粒子の微細分散液を意味する。
【0039】
典型的な点鼻スプレー製剤は、生理活性物質の水性組成物が入ったボトルからなる。対象によるポンプ操作によって生理活性物質が鼻腔内に送達される。
【0040】
好ましい態様では、1種以上の生理活性物質は、10~10,000μg、好ましくは50~1000μg、さらにより好ましくは100~500μgの用量で対象に投与される。
【0041】
第2の側面では、本発明は、
・ 水性組成物を含む少なくとも1つの容器であって、前記水性組成物が、
少なくとも0.001重量%の1種以上のビタミンおよび/または少なくとも0.001重量%のカフェインを含み、20℃において少なくとも15mg/mLの脱塩水に対する水溶性を有する、0.001~25重量%の1種以上の完全に溶解した生理活性物質;
0.01~10重量%のニコチンアミド;
少なくとも60重量%の水
を含む、少なくとも1つの容器;
・ 前記水性組成物と流体連通している、鼻腔内投与のための鼻腔アプリケーターデバイス
を含むキットに関する。
【0042】
キットは、ここに定義される組成物を投与するための単純でユーザーフレンドリーな方式を提供する。
【0043】
好ましい態様では、鼻腔アプリケーターデバイスは、組成物を含む容器に接続されている。鼻腔アプリケーターデバイスは、好ましくは、一定量の組成物をスプレーまたはエアロゾルの形態で対象の鼻腔に提供するように適合されている。
【0044】
別の好ましい態様では、鼻腔アプリケーターデバイスは、組成物を含む容器に取り外し可能であるように接続されている。容器は、例えば、回して外すまたはクリップを外すことによって、鼻腔アプリケーターデバイスから取り外すことができる。このようにして、容器が空になった場合、使用者は新たな満杯の容器を鼻腔アプリケーターデバイスに取り付け、それによって、鼻腔アプリケーターデバイスの不必要な浪費を回避する。
【0045】
容器は、バイアル、アンプル、ボトル、または組成物を入れるのに適した他の容器であってもよい。容器は、鼻腔アプリケーターデバイスを受け入れるように適合された受け入れ手段を有することができ、その結果、容器が鼻腔アプリケーターデバイスに適切に接続された場合に、組成物が対象の鼻腔内に投与することができる。容器は、容器を開けるための手段、例えば、ねじ蓋、アンプルの場合のカット線、穴あけシール(puncture seal)、または容器を開けるための他の手段を含むことができ、そのため組成物を容器から鼻腔アプリケーターデバイスに移送することができる。このようにして、鼻腔アプリケーターデバイスは再充填することができ、使用者が、一回の使用後に鼻腔アプリケーターを捨てるのではなく、前記デバイスを再利用することを可能にする。
【0046】
本発明の第3の側面は、
障害の予防的または治療的処置に使用するための水性組成物であって、前記処置が、水性組成物を鼻腔内投与することを含み、前記水性組成物が、
・ 0.001~25重量%の1種以上の完全に溶解した生理活性物質であって、20℃において少なくとも15mg/mLの脱塩水に対する水溶性を有し、その20℃での水溶性の限界を下回る濃度で前記水性組成物中に存在する、1種以上の生理活性物質;
・ 0.01~10重量%のニコチンアミド;および
・ 少なくとも60重量%の水
を含み、前記水性組成物は、0.01~0.3mlの量のスプレーまたはエアロゾルとして鼻腔内に投与され、10~10,000μgの量の1種以上の生理活性物質を提供する、水性組成物に関する。
【0047】
好ましい一態様では、この処置に用いられる水溶性生理活性物質は、アスコルビン酸(ビタミンC)、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、ビオチン(ビタミンB7)、葉酸(ビタミンB9)、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン(ビタミンB12)、ならびにそれらの塩および混合物からなる群から選択されるビタミンである。好ましい態様では、用いられるビタミンは、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、およびメチルコバラミからなる群から選択されるビタミンB12成分である。別の好ましい態様では、ビタミンはピリドキシン(ビタミンB6)である。さらに別の好ましい態様では、ビタミンは葉酸(ビタミンB9)である。好ましい態様では、水性組成物は、ナイアシンおよびアスコルビン酸の両者を含まない。
【0048】
さらに好ましい態様では、処置に用いられる水溶性生理活性物質は、アンフェタミンまたはその誘導体である。特に好ましい態様では、アンフェタミンまたはその誘導体は、メチルフェニデートである。
【0049】
さらに好ましい態様では、処置に用いられる水溶性生理活性物質は、カルシトニン、インスリン、オキシトシン、バソプレシン、上皮増殖因子、ソマトスタチン、グルカゴン、GLP-1関連化合物、アンジオテンシン、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、メラノコルチン、およびそれらの誘導体からなる群から選択されるペプチドである。好ましくは、ペプチドはカルシトニンである。上述したペプチドの誘導体には、ペプチド配列中の少なくとも1つのアミノ酸が修飾されている、置きかえられている、または欠失されている前記ペプチドの類似体が含まれる。修飾されたペプチドには、例えば、少なくとも1つのアミノ酸とポリアルケンオキシド部分またはポリヒドロキシル部分の連結が含まれる。あるいは、1つ以上のネイティブなアミノ酸をネイティブではないアミノ酸または合成アミノ酸によって置きかえることによって、ネイティブなアミノ酸配列が改変されてもよい。天然に存在するペプチド配列の異なる長さに相当する「フラグメント」を合成することによって、切断されたペプチド誘導体(ここでは少なくとも1つのアミノ酸が欠失されている)が生成されてもよい。
【0050】
さらに別の好ましい態様では、処置に用いられる水溶性生理活性物質は、エリスロポエチン、副腎皮質刺激ホルモン、血小板由来増殖因子、プロラクチン、黄体ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、セクレチン、腫瘍壊死因子、神経成長因子、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、免疫グロブリン、およびレニンからなる群から選択されるタンパク質である。特に好ましい態様では、タンパク質はエリスロポエチンである。
【0051】
吸収促進剤としてのニコチンアミドの使用は低分子量の物質に限らず、ニコチンアミドは、例えば1000Daを超える高分子量の活性物質の吸収も促進することが見出された。水溶性生理活性物質は、好ましくは100~100,000Daの分子量を有する。
【0052】
好ましい態様では、処置に用いられる水溶性生理活性物質は、100~1500Daの分子量を有するビタミンである。
【0053】
別の好ましい態様では、処置に用いられる水溶性生理活性物質は、500~10,000Da、好ましくは1000~7000Da、さらにより好ましくは500~1000Daの分子量を有するペプチドである。
【0054】
別の好ましい態様では、処置に用いられる水溶性生理活性物質はタンパク質であり、その分子量は、好ましくは10,000~100,000Da、より好ましくは10,000~75,000Da、さらにより好ましくは10,000~50,000Daである。
【0055】
上述した予防的または治療的処置における水性組成物の使用は、好ましくは、水溶性生理活性物質を投与する非治療的方法に関して以前に述べたような方法での鼻腔内投与を含む。
【0056】
好ましい態様では、障害は、ビタミン欠乏症、心疾患、内分泌障害、がん、喘息、呼吸障害および骨障害からなる群から選択される。
【0057】
好ましい態様では、障害は水溶性ビタミン欠乏症であり、処置に用いられる水溶性生理活性物質は、アスコルビン酸(ビタミンC)、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、ビオチン(ビタミンB7)、葉酸(ビタミンB9)、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン(ビタミンB12)、ならびにそれらの塩および混合物からなる群から選択されるビタミンであり、ただし、混合物はナイアシンおよびアスコルビン酸の両者を含まない。
【0058】
別の好ましい態様では、障害はビタミンB欠乏症であり、処置に用いられる生理活性物質は、チアミン、リボフラビン、パントテン酸、ピリドキシン、ビオチン、葉酸、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン、ならびにそれらの塩および混合物からなる群から選択される。
【0059】
特に好ましい態様では、障害はビタミンB12欠乏症であり、処置に用いられる生理活性物質は、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、およびメチルコバラミンからなる群から選択される。
【0060】
別の好ましい態様では、障害はビタミンB6欠乏症であり、処置に用いられる生理活性物質は、ピリドキシン(ビタミンB6)である。
【0061】
別の好ましい態様では、障害はビタミンB9欠乏症であり、処置に用いられる生理活性物質は、葉酸(ビタミンB9)である。
【0062】
別の態様では、障害は内分泌障害であり、水溶性生理活性物質は、水溶性ペプチドまたはタンパク質である。内分泌障害は、先端巨大症、アジソン病、副腎がん、副腎障害、甲状腺未分化がん、クッシング症候群、ド・ケルバン甲状腺炎、糖尿病、甲状腺濾胞がん、妊娠糖尿病、甲状腺腫、グレーブス病、成長障害、成長ホルモン欠乏症、橋本甲状腺炎、ヒュルトレ細胞甲状腺がん、高血糖症、副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、低血糖症、副甲状腺機能低下症、甲状腺機能低下症、低テストステロン、甲状腺髄様がん、MEN 1(多発性内分泌腫瘍症1型)、MEN 2A(多発性内分泌腫瘍症2A型)、MEN 2B(多発性内分泌腫瘍症2B型)、月経閉止、メタボリック症候群、肥満、骨粗しょう症、甲状腺乳頭がん、副甲状腺疾患、褐色細胞腫、下垂体障害、下垂体腫瘍、多嚢胞性卵巣症候群、前糖尿病、生殖、無痛性甲状腺炎、甲状腺がん、甲状腺疾患、甲状腺結節、甲状腺炎、ターナー症候群、1型糖尿病、2型糖尿病からなる群から選択されてもよい。
【0063】
第4の側面では、本発明は、
・ 水性組成物を含む少なくとも1つの容器であって、前記水性組成物が、
0.001~25重量%の1種以上の完全に溶解した生理活性物質であって、20℃において少なくとも15mg/mLの脱塩水に対する水溶性を有し、その20℃での水溶性の限界を下回る濃度で前記水性組成物中に存在する、1種以上の生理活性物質;
0.01~10重量%のニコチンアミド;および
少なくとも60重量%の水
を含む、水性組成物;
・ 前記水性組成物と流体連通している、鼻腔内投与のための鼻腔アプリケーターデバイス
を含み、前記鼻腔アプリケーターデバイスが、スプレーまたはエアロゾルの形態で0.01~0.3mLの一定量の前記水性組成物を対象の鼻腔に提供するように適合されており、前記一定量が、10~10,000μgの1種以上の前記生理活性物質を提供する、キットに関する。
【0064】
キットは、ここに定義される組成物を投与するための単純でユーザーフレンドリーな方式を提供する。
【0065】
好ましい態様では、鼻腔アプリケーターデバイスは、組成物を含む容器に接続される。
【0066】
別の好ましい態様では、鼻腔アプリケーターデバイスは、組成物を含む容器に取り外し可能であるように接続されている。容器は、例えば、回して外すまたはクリップを外すことによって、鼻腔アプリケーターデバイスから取り外すことができる。このようにして、容器が空になった場合、使用者は新たな満杯の容器を鼻腔アプリケーターデバイスに取り付け、それによって、鼻腔アプリケーターデバイスの不必要な浪費を回避する。
【0067】
容器は、バイアル、アンプル、ボトル、または組成物を入れるのに適した他の容器であってもよい。容器は、鼻腔アプリケーターデバイスを受け入れるように適合された受け入れ手段を有することができ、その結果、容器が鼻腔アプリケーターデバイスに適切に接続された場合に、組成物が対象の鼻腔内に投与することができる。容器は、容器を開けるための手段、例えば、ねじ蓋、アンプルの場合のカット線、穴あけシール(puncture seal)、または容器を開けるための他の手段を含むことができ、そのため組成物を容器から鼻腔アプリケーターデバイスに移送することができる。このようにして、鼻腔アプリケーターデバイスは再充填することができ、使用者が、一回の使用後に鼻腔アプリケーターを捨てるのではなく、前記デバイスを再利用することを可能にする。
【0068】
第5の側面では、本発明は、20℃において少なくとも15mg/mLの脱塩水に対する水溶性を有する水溶性生理活性物質の、水溶液からの鼻腔内吸収の促進剤としてのニコチンアミドの使用であって、前記水溶液が、0.01~10重量%のニコチンアミドをさらに含む、ニコチンアミドの使用に関する。
【0069】
本発明の幾つかの例示的な態様に関して説明した。ある部分または要素の修正および代替実施が可能であり、それは、特許請求の範囲で定義される保護の範囲内に含まれる。
【0070】
[実施例]
以下の例1~6に述べる量のニコチンアミドおよび水溶性生理活性物質を含む水性組成物を調製し、被験者の鼻腔内に投与した。組成物は以下の一般的配合を有する:
・ 水溶性生理活性物質: 0.040~10重量%
・ ニコチンアミド: 3.5~10重量%
・ pH6.2(+/-0.2)のリン酸塩緩衝剤: 0.10重量%
・ 塩化ベンザルコニウム(防腐剤): 0.02重量%
・ 等張性を調節するための塩化ナトリウム: 十分量
・ 精製水: 100%まで
ニコチンアミドが存在しない対照組成物を調製した。
【0071】
水溶性生理活性物質を投与する前と投与の30分および/または60分後に血液を採取した。分析したすべての血漿は、全血を1000Gで10分間遠心分離することによって得た。
【0072】
例1 (ビタミンB6)
15mgのリン酸ピリドキシン(分子量169;logP -0.77)および35mgのニコチンアミドを含む1mLの組成物を調製した。この水性組成物の0.1mLを、点鼻スプレーを介して被験者の鼻腔に投与した。対照として、15mgのリン酸ピリドキシン水性組成物を使用した。
【0073】
ビタミンB6/ピリドキシンの血漿濃度は、0分および60分後にHPLC分析によって決定した。
【0074】
HPLC計測および分析手順: 不活性インジェクター(LKB 2154-002型)および500uLの試料ループを装着したLKB HPLCポンプ(チタン製部品を有する2150型)を使用した。5pm粒子の逆相材料(TSK ODS-120T)を充填した4.6×250mmのLKB分析カラムを、同様の充填材料(LKB Spherisorb guardまたはLichrosorb RP18のいずれか)を含有する3cmのガードカラムと共に使用した。溶出液は、1リットル当たり75mmolのNaClO4、8.5mLのアセトニトリル、および0.5mLのトリエタノールアミンを含有し、濃縮したNaClO4でpHを3.38に調節した、75mmol/LのNaH2PO4緩衝液であった。流量は、12000kPaの定圧において、1.2mL/分であった。Coburn SF, Mahuren JD. A versatile cation-exchange procedure for measuring the seven major forms of vitamin B6 in biologicalsamples. Anal Biochem, 1983, 129, 310-7に示された亜硫酸水素イオンでのリン酸ピリドキサールのポストカラム誘導体化のために、T接合器および反応コイルに接続されたBraunシリンジポンプを使用した。ポストカラム試薬は、1リットル当たり1gのメタ重亜硫酸ナトリウムを含有するNa2HPO4緩衝液(250mmol/L、pH11.7)からなるものであった。ポストカラム試薬の流量は、6mI/時に保持した。カラム流出液は、50pLの毛管フローセルを備えたL5-20型蛍光光度計(Perkin-Elmer Ltd., Beaconsfield, Bucks. HP9 1QA, U.K.)でモニタリングした。励起および発光波長は、それぞれ、325および400nmに設定した。注入量は100pLであった。
【0075】
結果を表1および2に示す。
【0076】
【0077】
【0078】
例2 (ビタミンB9)
4mgの葉酸(ビタミンB9;分子量441;logP -0.02)および35mgのニコチンアミドを含む1mLの組成物を調製した。この水性組成物の0.1mLを、点鼻スプレーを介して被験者の鼻腔に投与した。対照として、4mgの葉酸水性組成物を使用した。
【0079】
電気化学発光イムノアッセイ(Access Folate assay, Beckman Coulter, Inc -競合的結合受容体アッセイ)を、血液試料中に存在する葉酸塩の定量化に使用した。簡潔に述べると、血清検体を、内在性結合タンパク質から葉酸塩を放出させるように処理した。反応混合物の中和後、葉酸塩-結合タンパク質、マウス抗葉酸塩結合タンパク質、葉酸-アルカリホスファターゼコンジュゲート、および常磁性粒子に結合したヤギ抗マウス捕捉抗体を反応容器に添加した。試料中の葉酸塩は、限られた量の葉酸塩-結合タンパク質上の結合部位に対し、葉酸-アルカリホスファターゼコンジュゲートと競合する。得られた複合体は、マウス抗葉酸塩結合タンパク質を介して固相に結合する。反応容器内でのインキュベーションの後、固相に結合した材料は磁界に保持されるが、結合していない材料は洗い流される。容器に化学発光基質Lumi-Phos530を添加し、反応によって生じた光をルミノメーターで測定する。光の生成は、試料中の葉酸塩の濃度に反比例する。試料中の分析物の量は、保存されている多点検量線から決定する。このアッセイは、世界保健機関(WHO)国際規格03/178に標準化されている。(Beckman Coulter Assay Manual 2011, Beckman Coulter Inc., Fullerton, CA)。使用した機器は、Beckman Coulter DXI800である。
【0080】
【0081】
【0082】
例3 (ビタミンB12-ヒドロキソコバラミン 500μg用量)
5mgのヒドロキソコバラミン(分子量1346;logP -0.9)および50mgのニコチンアミドを含む1mLの組成物を調製した。この水性組成物の0.1mLを、点鼻スプレーを介して被験者の鼻腔に投与した。対照として、0.5mgのヒドロキソコバラミン水性組成物を使用した。
【0083】
イムノアッセイ(Access Vitamin B12 assay, Beckman Coulter Inc.)を、血液試料中に存在する葉酸塩の定量化に使用した。簡潔に述べると、試料をアルカリ性シアン化カリウムおよびジチオスレイトールと共に反応容器に添加した。この処理は、B12結合タンパク質を変性させ、すべての形態のビタミンB12をシアノコバラミンの形態に変換する。中和後、内因子-アルカリホスファターゼコンジュゲート、およびヤギ-抗マウスIgG:マウスモノクローナル抗内因子で被覆された常磁性粒子を試料に添加した。試料中のビタミンB12は内因子コンジュゲートに結合し、当該コンジュゲートが固相の抗内因子に結合することを防ぐ。反応容器内でのインキュベーションの後、固相に結合した材料は磁界に保持されたが、結合していない材料は洗い流された。化学発光基質Lumi-Phos530が容器に添加され、反応によって生じた光をルミノメーターで測定する。光の生成は、試料中のビタミンB12の濃度に反比例する。試料中の分析物の量を、保存されている多点検量線によって決定した。(取扱説明書:Beckman Coulter Assay Manual 2015, Beckman Coulter Inc, Brea, CA)。
【0084】
【0085】
【0086】
例4 (ビタミンB12-ヒドロキソコバラミン、75μg用量)
750μgのヒドロキソコバラミン(分子量1346;logP -0.9)および50mgのニコチンアミドを含む1mLの組成物を調製した。この水性組成物の0.1mLを、点鼻スプレーを介して被験者の鼻腔に投与した。対照として、750μgのヒドロキソコバラミン水性組成物を使用した。例3と同じ方法をヒドロキソコバラミンの定量化に使用した。
【0087】
イムノアッセイ(Access Vitamin B12 assay, Beckman Coulter Inc.)を、血液試料中に存在する葉酸塩の定量化に使用した。簡潔に述べると、試料をアルカリ性シアン化カリウムおよびジチオスレイトールと共に反応容器に添加した。この処理は、B12結合タンパク質を変性させ、すべての形態のビタミンB12をシアノコバラミンの形態に変換する。中和後に、内因子-アルカリホスファターゼコンジュゲート、およびヤギ-抗マウスIgG:マウスモノクローナル抗内因子で被覆された常磁性粒子を試料に添加した。試料中のビタミンB12は内因子コンジュゲートに結合し、当該コンジュゲートが固相の抗内因子に結合しすることを防ぐ。反応容器内でインキュベーションの後、固相に結合した材料は磁界に保持されたが、結合していない材料は洗い流された。化学発光基質Lumi-Phos530が容器に添加され、反応によって生じた光をルミノメーターで測定する。光の生成は、試料中のビタミンB12の濃度に反比例する。試料中の分析物の量は、保存されている多点検量線によって決定する。(取扱説明書:Beckman Coulter Assay Manual 2015, Beckman Coulter Inc, Brea, CA)。
【0088】
【0089】
【0090】
例5 (rh-エリスロポエチン 0.040重量%)
400μgのrh-エリスロポエチン(分子量34000;logP 0)および50mgのニコチンアミドを含む1mLの組成物を調製した。この水性組成物の0.1mLを、点鼻スプレーを介して被験者の鼻腔に投与した。対照として、400μgのrh-エリスロポエチンを含む組成物を使用した。
【0091】
イムノアッセイ(Access erythropoietin(EPO), Beckman Coultier Inc.)を、エリスロポエチンの定量化に使用した。簡潔に述べると、試験は、Beckman Coulter DxI 800(Beckman Coulter Inc.)で行った。簡潔には、試料を、マウスモノクローナル抗EPO抗体で被覆された常磁性粒子、ブロッキング試薬、およびアルカリホスファターゼコンジュゲートと共に反応容器に添加した。反応容器内でインキュベーションの後、固相に結合した材料は磁界に保持されたが、結合していない材料は洗い流された。次いで、化学発光基質Lumi-Phos530が容器に添加され、反応によって生じた光をルミノメーターで測定する。光の生成は、試料中のEPOの濃度に正比例する。試料中の分析物の量は、保存されている多点検量線によって決定した。(取扱説明書:Beckman Coulter Access EPO, Beckman Coulter Access Immunoassay Systems, Beckman Coulter, Inc, Fullerton CA 2009)。
【0092】
【0093】
【0094】
例6 (カフェイン)
12.5mgのカフェイン(分子量194;logP -0.79)および50mgのニコチンアミドを含む1mLの組成物を調製した。この水性組成物の0.2mLを、点鼻スプレーを介して被験者の鼻腔に4回投与した。対照として、12.5mg/mlのカフェイン水性組成物を使用した。
【0095】
C18逆相カラムおよび移動相として1%氷酢酸:メタノール(83:17V/V)を使用するHPLC分離法を、Pickard C.E., Stewart A.D., Hartley R.およびLucock M.D., A rapid HPLC method for monitoring plasma levels of caffeine and theophylline using solid phase extraction columns, Ann. Clin. Biochem., 1986, 23, 440-446に従って開発した。クロマトグラフィーの条件は、溶媒流0.5ml/分、注入量5μL、実行時間20分、および274,4nmでのUV検出であった。UV検出と共に、化合物の質量に基づくピーク同定のためMS検出を行った。Alvi S.N, Muhammad M., Hammami M., Validated HPLC Method for Determination of Caffeine Level in Human Plasma using Synthetic Plasma: Application to Bioavailability Studies, J Chromatogr Sci, 2011, 49(4), 292-296に記載されるように、カフェインおよび内標準である4-アミノアンチピリンを人口血漿に溶解させた。人口血漿は、塩化ナトリウム(145mM)、塩化カリウム(4.5mM)、塩化カルシウム(32.5mM)、塩化マグネシウム(0.8mM)、尿素(2.5mM)およびグルコース(4.7mM)からなるものであった。保持時間を、カフェイン、4-アミノアンチピリンだけでなく、分解生成物であるテオブロミンおよびテオフィリンについても決定し、ピークの分離を最適化した。続いて、人口血漿中のカフェインの希釈範囲をカフェイン0,05~43,6μg/ml(最終濃度)の範囲内で調製し、加えて2,8または5,3μg/ml(最終濃度)のいずれかの内部標準を調製した。血漿は、輸送時は-20℃に凍結されており、サンプリングの前に解凍し、穏やかに振とうして溶液を混合した。5.3μg/ml(最終濃度)の内部標準を100μLの血漿に添加した。この試料をボルテックス撹拌し、5分間遠心分離し、直接注入後に分析した。
【0096】
【0097】
【0098】
例1~6のそれぞれについて、平均増加の値を使用して、吸収の増加の割合を計算することにより、試験した水溶性生理活性物質の血中濃度に対するニコチンアミドの効果を決定した。その結果を表13に要約する。
【0099】