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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】体内空間内での多次元ナビゲーション
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20220920BHJP
   A61M 25/04 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
A61M25/00 560
A61M25/00 540
A61M25/00 600
A61M25/04
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019571475
(86)(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 US2018035849
(87)【国際公開番号】W WO2019005428
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】62/527,864
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519453456
【氏名又は名称】ウェイズ, ギオラ
(73)【特許権者】
【識別番号】519453467
【氏名又は名称】トビス, アイダン
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイズ, ギオラ
(72)【発明者】
【氏名】トビス, アイダン
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0191232(US,A1)
【文献】特表2016-508390(JP,A)
【文献】米国特許第8224416(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0309679(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0144392(KR,A)
【文献】特開2010-155082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内の腔内の標的領域へ機器を方向付けるためのシステムであって、前記システムは、
近接端部にハンドルと、遠位端部に拡張可能ケージと、それらの間にルーメンとを含む、第1のカテーテル、
前記拡張可能ケージを、潰れた送達モードから拡張した展開モードへ動かすように、前記拡張可能ケージを交互に覆ったり露出させたりするように軸方向に可動な外側シースであって、前記拡張可能ケージは、前記腔内で前記ケージを安定させるために、前記体腔の壁を係合するように拡張される複数の部材を含み、前記第1のカテーテルの前記ハンドルが回転されるとき、前記ケージは前記腔内で回転可能である、外側シース;
前記第1のカテーテルの前記ルーメン内に位置決めされた第2のカテーテルであって、前記第2のカテーテルは、前記第1のカテーテルの前記ハンドルを通過する近位端部と、ハブを通過する遠位端部とを含み、前記第2のカテーテルは、そこを貫通するルーメンを含み、前記第2のカテーテルは、前記拡張可能ケージの軸方向及び回転運動と関連して、前記第1のカテーテルの前記ルーメン内で軸方向に及び回転式に可動である、第2のカテーテル;
複数の対のワイヤであって、各ワイヤは、前記第1のカテーテルの前記ハンドル内で固定された第1の端部と、前記第2のカテーテルの前記ハブに固定された対向する第2の端部とを有し、各対のワイヤは、前記ハブ、及びそれにより前記第2のカテーテルの前記遠位端部を動かすような前記ハンドルの操作によって、互いに一緒に可動であり、第1の対のワイヤは、前記ハブを第1の方向に動かすように可動であり、及び第2の対のワイヤは、前記ハブを第2の方向に動かすように可動である、複数の対のワイヤ
を含み、
前記ハンドル及びワイヤの操作によって、前記第2のカテーテルの前記遠位端部は、前記第1及び第2の方向に動かされながら、前記腔内で回転され得る、システム。
【請求項2】
前記拡張可能ケージの第1の部材は、第1の平面を規定する全体的に円環状の部材を含み、及び前記拡張可能ケージの第2の部材は、前記第1の平面に対してほぼ直角の第2の平面を規定する全体的に半円環状の部材を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ハンドルは、第1の静止部分及び第2の可動部分を含み、前記第2の可動部分は、第1及び第2の方向における第2のカテーテルの前記ハブ及び遠位端部の横方向運動を引き起こすように、前記複数の対のワイヤを操作するように構成されている、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記拡張可能ケージの前記部材は、形状記憶材料を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2のカテーテルの前記ルーメンは、前記第2のカテーテルの前記ハブ及び遠位端部が方向付けられた前記標的領域へ送達するために、治療又は診断機器の通過を可能にするように構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
体内の腔内の標的領域へ機器を方向付けるためのシステムであって、前記システムは:
近接端部にハンドルと、遠位端部に設けられたポートから延在するように構成された、拡張可能な安定化ケージと、それらの間にルーメンとを含む第1のカテーテル;
外側シース遠位端部に外側シースポートが設けられている外側シースであって、前記外側シースは、前記第1のカテーテルを覆っており、且つ前記拡張可能な安定化ケージが前記ポート及び前記外側シースポートの双方から延在するように構成された状態で、前記拡張可能な安定化ケージを、潰れた送達モードから拡張した展開モードへ動かすように、前記拡張可能な安定化ケージを交互に覆ったり露出させたりするように軸方向に可動であり、前記拡張可能な安定化ケージは、第1の平面に配置された第1の部材と、前記第1の平面と交わる第2の平面に配置された第2の部材とを含み、それら部材は、前記展開モードにおいて、前記体の前記腔内で前記拡張可能な安定化ケージを安定させるために、前記腔の壁を係合するように拡張されるように構成され、前記拡張可能な安定化ケージは、前記ハンドルが回転されるとき、前記体の前記腔内で回転可能であるように構成される、外側シース;
前記第1のカテーテルの前記ルーメン内に位置決めされた第2のカテーテルであって、前記第2のカテーテルは、前記ハンドルを通過する第2のカテーテル近位端部と、前記ポート及び前記外側シースポートの双方から延在するように構成された第2のカテーテル遠位端部とを含み、前記第2のカテーテルは、そこを貫通する第2のカテーテルルーメンを含み、前記第2のカテーテルは、前記拡張可能な安定化ケージの軸方向及び回転運動と関連して、前記第1のカテーテルの前記ルーメン内で軸方向に及び回転式に可動である、第2のカテーテル;及び
複数の第2のカテーテル制御ワイヤであって、前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤのそれぞれは、前記ハンドル内で固定された第1の端部と、前記第2のカテーテル遠位端部の近くで前記第2のカテーテルと結合された対向する第2の端部とを有し、前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤのうちの少なくとも1本は、前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤのうちの前記少なくとも1本の前記第1の端部と前記対向する第2の端部との間で、前記拡張可能な安定化ケージの一部分に摺動自在に結合されており、前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤのそれぞれは、前記第2のカテーテル遠位端部を前記標的領域へ方向付け、その後、前記第2のカテーテルルーメンを通して前記機器を前記標的領域へ送達するために、前記拡張可能な安定化ケージに対して前記第2のカテーテル遠位端部を動かすように可動であるように構成される、複数の第2のカテーテル制御ワイヤ
を含む、システム。
【請求項7】
前記拡張可能な安定化ケージの前記第1の部材は、前記第1の平面を規定する円環状の部材を含み、前記拡張可能な安定化ケージの前記第2の部材は、前記第1の平面に対して直角の前記第2の平面を規定する半円環状の部材を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ハンドルは、第1の静止部分及び第2の可動部分を含み、前記第2の可動部分は、前記第1の静止部分に対して可動であり、前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤのそれぞれは前記第1の静止部分を通過し、且つ前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤのそれぞれの前記第1の端部は前記第2の可動部分に固定され、前記第2の可動部分は、前記第2のカテーテル遠位端部の横方向運動を引き起こすように、前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤを操作するように構成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記拡張可能な安定化ケージは、形状記憶材料を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
さらに、前記第2のカテーテル遠位端部に結合されたハブを含み、前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤのそれぞれの前記対向する第2の端部は、前記ハブによって前記第2のカテーテル遠位端部に結合されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤのうちの少なくとも1本は、前記拡張可能な安定化ケージに装着されているリングを通過する、請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤは、第1の制御ワイヤ及び第2の制御ワイヤを含み:
第1のリングが、前記第1の制御ワイヤが前記第1のリングを通過する状態で、前記拡張可能な安定化ケージの第1の部分に装着されており;及び
第2のリングが、前記第2の制御ワイヤが前記第2のリングを通過する状態で、前記第1の部分のケージに対向する、前記拡張可能な安定化ケージの第2の部分に装着されており;
前記第1のワイヤを引くことによって、前記第2のカテーテル遠位端部を第1の方向に動かし、且つ前記第2のワイヤを引くことによって、前記第2のカテーテル遠位端部を、前記第1の方向と実質的に反対の第2の方向に動かす、請求項6に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤは、さらに、第3の制御ワイヤ及び第4の制御ワイヤを含み:
第3のリングが、前記第3の制御ワイヤが前記第3のリングを通過する状態で、前記拡張可能な安定化ケージの第3の部分に装着されており;
前記第3のワイヤを引くことによって、前記第2のカテーテル遠位端部を、前記第1の方向及び前記第2の方向に対して実質的に直角の第3の方向に動かし、且つ前記第4の制御ワイヤを引くことによって、前記第2のカテーテル遠位端部を、前記第1の方向と実質的に反対の第4の方向に動かす、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
体内の腔内の標的領域へ機器を方向付けるためのシステムであって:
ハンドル;
近位端部と、ポートの設けられた遠位端部と、それらの間にルーメンとを含む、第1のカテーテルであって、前記ハンドルから延在する第1のカテーテル;
前記第1のカテーテルの前記遠位端部に設けられた前記ポートから延在するように構成された拡張可能な安定化ケージであって、前記拡張可能な安定化ケージは、第1の平面に配置された第1の部材と、前記第1の平面と交わる第2の平面に配置された第2の部材とを含み、それら部材は、展開モードにおいて、前記体の前記腔内で前記拡張可能な安定化ケージを安定させるために、前記腔の壁を係合するように拡張されるように構成されており、前記拡張可能な安定化ケージは、前記ハンドルが回転されるとき、前記体の前記腔内で回転可能であるように構成されている、拡張可能な安定化ケージ;
前記第1のカテーテルの前記ルーメン内に位置決めされた第2のカテーテルであって、前記第2のカテーテルは、第2のカテーテル近位端部と、前記ポートから延在するように構成された第2のカテーテル遠位端部とを含み、前記第2のカテーテルは、そこを貫通する第2のカテーテルルーメンを含み、前記第2のカテーテルは、前記第1のカテーテルの前記ルーメン内で軸方向に及び回転式に可動である、第2のカテーテル;及び
複数の第2のカテーテル制御ワイヤであって、前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤのそれぞれは、前記ハンドル内で固定された第1の端部と、前記第2のカテーテル遠位端部の近くで前記第2のカテーテルと結合された対向する第2の端部とを有し、前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤのうちの少なくとも1本は、前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤのうちの前記少なくとも1本の前記第1の端部と前記対向する第2の端部との間で、前記拡張可能な安定化ケージのそれぞれの部分にそれぞれ摺動自在に結合され、前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤのそれぞれは、前記拡張可能な安定化ケージに対して前記第2のカテーテル遠位端部を動かして、前記第2のカテーテル遠位端部を前記標的領域へ方向付け、その後、前記第2のカテーテルルーメンを通して前記機器を前記標的領域へ送達するように可動であるように構成される、複数の第2のカテーテル制御ワイヤ
を含む、システム。
【請求項15】
さらに、外側シース遠位端部に外側シースポートが設けられた外側シースを含み、前記外側シースは、前記第1のカテーテルを覆っており、且つ前記拡張可能な安定化ケージが前記ポート及び前記外側シースポートの双方から延在するように構成された状態で、前記拡張可能な安定化ケージを、潰れた送達モードから拡張した展開モードへ動かすように、前記拡張可能な安定化ケージを交互に覆ったり露出させたりするように軸方向に可動である、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
さらに、前記第2のカテーテル遠位端部に結合されたハブを含み、前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤのそれぞれの前記対向する第2の端部は、前記ハブによって前記第2のカテーテル遠位端部に結合されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤのうちの少なくとも1本は、前記拡張可能な安定化ケージに装着されたリングを通過する、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤは、第1の制御ワイヤ及び第2の制御ワイヤを含み:
第1のリングが、前記第1の制御ワイヤが前記第1のリングを通過する状態で、前記拡張可能な安定化ケージの第1の部分に装着されており;及び
第2のリングが、前記第2の制御ワイヤが前記第2のリングを通過する状態で、前記第1の部分のケージに対向する、前記拡張可能な安定化ケージの第2の部分に装着されており;
前記第1のワイヤを引くことによって、前記第2のカテーテル遠位端部を第1の方向に動かし、且つ前記第2のワイヤを引くことによって、前記第2のカテーテル遠位端部を、前記第1の方向と実質的に反対の第2の方向に動かす、請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数の第2のカテーテル制御ワイヤは、さらに、第3の制御ワイヤ及び第4の制御ワイヤを含み:
第3のリングが、前記第3の制御ワイヤが前記第3のリングを通過する状態で、前記拡張可能な安定化ケージの第3の部分に装着されており;
前記第3のワイヤを引くことによって、前記第2のカテーテル遠位端部を、前記第1の方向及び前記第2の方向に対して実質的に直角の第3の方向に動かし、且つ前記第4の制御ワイヤを引くことによって、前記第2のカテーテル遠位端部を、前記第1の方向と実質的に反対の第4の方向に動かす、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年6月30日出願の米国仮特許出願第62/527,864号の優先権及び出願日の利益を主張し、参照によりその内容全体を本願明細書に援用する。
【0002】
本発明は、概して、例えば心房、心室、胃腸系、膀胱、肺又は子宮などの体内の腔若しくは空間内の標的部位に機器を送達するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な病変は、人体内の腔又は空間への、治療機器、例えば、弁修復又は弁置換機器の送達を求める。例えば、弁修復は、特定の箇所の心房内経中隔穿刺、及び左心房又は左心室の複数の箇所への組織アンカーの的確な位置決めを必要とすることが多い。同様に、子宮筋腫摘出では、子宮内での切開機器の的確な位置決めを必要とする。
【0004】
現在、位置決めは、通常、医師によって以下の方法で行われている:カテーテルを、手動で前方に(その遠位端部の方へ向かって)又は後方に(その近位端部の方へ向かって)動かし得る。例えば、図1の従来技術の概略的なカテーテルCを参照のこと、ここでは、カテーテルCが、ルーメンL、及びハンドルH及び可撓性遠位チップすなわち先端DTを含む。そのような例示的な操向可能なカテーテルが、その長軸の周りで、手動で回転され得る。操向可能な可撓性チップが、ハンドルにあるノブによって操作され、これは、可撓性チップを曲げるようにプルワイヤを引き得る。結果として、円筒座標系と球面座標系とのハイブリッドとして最良に説明され得る3自由度の操作が得られ、ここでは、主な座標は、ロー、シータ及びz軸(それぞれρ,θ,Ζ)であり、Zは、カテーテルの長軸に沿ったチップの線形の動きであり、Θは、カテーテルの長軸の周りでのチップの回転する動きであり、及びpは、操向によってチップが曲がる動きである。これは、純粋な球面座標系の(ρ,θ,φ)、又は純粋な円筒座標系の(Γ,Θ,Ζ)と比較される。
【0005】
このハイブリッド座標系の使用は、複雑で曲がりくねった解剖学的構造によって損なわれ、及びオペレータにとってあまり直感的ではないため、長期にわたる学習が必要とされる。さらに、高度な訓練を受けている医師でも、送達システムのチップを的確に位置決めすることは非常に困難であることが多い。ユーザが人体内の空間又は腔内で的確に且つ繰り返しナビゲーションできるようにして、様々な治療ツールの正確な位置決めを可能にする、より直感的且つ正確なナビゲーションシステムに対するニーズが生じている。
【0006】
別の従来技術の機器は、2014年10月16日公開のMaisanoらへの米国特許出願公開第2014-0309679A1号明細書に示されている。その機器は、卵円窩付近の特定の組織部位を見つけ出し、その後、そこを穿刺するために卵円窩内の領域を標的とすることに、依存する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の実施形態は、人体内の空間又は腔の表面上への治療又は診断機器のより的確な位置決めを提供することによって、より直感的な操向の必要性に対処する。いくつかの実施形態では、装置は、カテーテル、標的の空間(又は腔)の全範囲に拡張するように設計された拡張可能ケージ、及びデカルト(x,y,z)又は半デカルト(x,y,6)式に、空間内の1つの表面上でハブを線形に動かすために使用される複数の対のワイヤを含み、これは、伝統的な操向性カテーテルよりも直感的であり且つ学習及び実施するのが簡単である。ケージはまた、解剖学的構造に関する座標系、並びに多くのタイプの処置に有益である反力を提供するための手段の双方を提供する。
【0008】
一実施形態では、システムが、体内の腔内の標的領域へ機器を方向付けるために提供され、ここで、システムは、(1)近接端部にハンドル、遠位端部に拡張可能ケージ、及びそれらの間にルーメンを含む第1のカテーテル、(2)拡張可能ケージを、潰れた送達モードから拡張した展開モードへ動かすように、拡張可能ケージを交互に覆ったり露出させたりするように軸方向に可動な外側シースであって、拡張可能ケージは、腔内でケージを安定させるために、体腔の壁を係合するように拡張される複数の部材を含み、ケージは、第1のカテーテルのハンドルが回転されるとき、腔内で回転可能である、外側シース、(3)第1のカテーテルのルーメン内に位置決めされた第2のカテーテルであって、第2のカテーテルは、第1のカテーテルのハンドルを通過する近位端部と、ハブを通過する遠位端部とを含み、第2のカテーテルは、そこを貫通するルーメンを含み、第2のカテーテルは、拡張可能ケージの軸方向及び回転運動と関連して、第1のカテーテルのルーメン内で軸方向に及び回転式に可動である、第2のカテーテル、及び(4)複数の対のワイヤであって、各ワイヤは、第1のカテーテルのハンドル内で固定された第1の端部と、第2のカテーテルのハブに固定された対向する第2の端部とを有し、各対のワイヤは、ハブ、及びそれにより、第2のカテーテルの遠位端部を動かすようなハンドルの操作によって、互いに一緒に可動であり、第1の対のワイヤは、ハブを第1の方向に動かすように可動であり、及び第2の対のワイヤは、ハブを第2の方向に動かすように可動である、複数の対のワイヤを含み、それにより、ハンドル及びワイヤの操作によって、第2のカテーテルの遠位端部は、第1及び第2の方向に動かされながら、腔内で回転され得る。
【0009】
一実施形態では、拡張可能ケージの第1の部材は、第1の平面を規定する全体的に円環状の部材を含み、及び拡張可能ケージの第2の部材は、第1の平面に対してほぼ直角な第2の平面を規定する全体的に半円環状の部材を含む。一実施形態では、ハンドルは、第1の静止部分及び第2の可動部分を含み、第2の可動部分は、第1及び第2の方向における、第2のカテーテルのハブ及び遠位端部の横方向運動を引き起こすように、複数の対のワイヤを操作するように構成される。一実施形態では、拡張可能ケージの複数の部材は、形状記憶材料を含む。一実施形態では、第2のカテーテルのルーメンは、第2のカテーテルのハブ及び遠位端部が方向付けられた標的領域へ送達するために、治療又は診断機器の通過を可能にするように構成される。
【0010】
一適用例では、方法が、体の腔内の標的領域へ機器を方向付けるために提供され、方法は、(A)体腔へナビゲーションシステムを送達することであって、システムは:(1)(a)近接端部にハンドル、遠位端部に拡張可能ケージ、及びそれらの間にルーメン、及び(b)拡張可能ケージを、潰れた送達モードから拡張した展開モードへ動かすように、拡張可能ケージを交互に覆ったり露出させたりするように軸方向に可動な外側シースであって、拡張可能ケージが、所望の通り腔内で回転可能でありながら、腔内でケージを安定させるために、体腔の壁を係合するように拡張される複数の部材を含む、外側シースを含む、第1のカテーテル、及び(2)第1のカテーテルのルーメン内に位置決めされた第2のカテーテルであって、第2のカテーテルは、第1のカテーテルのハンドルを通過する近位端部、及びハブを通過する遠位端部を有し、第2のカテーテルは、そこを貫通するルーメンを含み、第2のカテーテルは、拡張可能ケージの軸方向及び回転運動に関連して、第1のカテーテルのルーメン内で軸方向に及び回転式に可動である、第2のカテーテルを含むこと;及び(B)第2のカテーテルのハブ及び遠位端部を標的領域に直接配置するために、複数の対のワイヤを操作することであって、複数のワイヤは、第1の端部において第1のカテーテルのハンドル内で固定され、及び第2の端部において第2のカテーテルのハブに固定され、各対のワイヤは、ハブ、及びそれにより第2のカテーテルの遠位端部を動かすようなハンドルの操作によって、互いに一緒に可動であり、第1の対のワイヤは、ハブを第1の方向に動かすように可動であり、及び第2の対のワイヤは、ハブを第2の方向に動かすように可動であることを含み、それにより、ハンドル及びワイヤの操作によって、第2のカテーテルの遠位端部は、第1及び第2の方向に動かされながら、腔内で回転され得る。
【0011】
一適用例では、拡張可能ケージの第1の部材は、第1の平面を規定する全体的に円環状の部材を含み、及び拡張可能ケージの第2の部材は、第1の平面に対してほぼ直角の第2の平面を規定する全体的に半円環状の部材を含む。一適用例では、ハンドルは、第1の静止部分及び第2の可動部分を含み、第2の可動部分は、第1及び第2の方向における、第2のカテーテルのハブ及び遠位端部の横方向運動を引き起こすように、複数の対のワイヤを操作するように構成される。一適用例では、拡張可能ケージの複数の部材は、形状記憶材料を含む。一適用例では、方法は、さらに、第2のカテーテルのルーメンを通して、第2のカテーテルのハブ及び遠位端部が方向付けられた標的領域へ送達するために、治療又は診断機器を方向付けることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の上述の目的及び利点、並びにその追加的な目的及び利点は、以下、好ましい実施形態の詳細な説明の結果として、以下の図面と併せて、より十分に理解される。
【0013】
図1】従来技術の操向性カテーテルの斜視図を示す。
【0014】
図2A】本発明の一実施形態の斜視図を示す。
【0015】
図2B】システムの運動の自由度を示すために、ハンドルの第2の部分が操作されている状態の、図2Aの実施形態を示す。
図2C】システムの運動の自由度を示すために、ハンドルの第2の部分が操作されている状態の、図2Aの実施形態を示す。
図2D】システムの運動の自由度を示すために、ハンドルの第2の部分が操作されている状態の、図2Aの実施形態を示す。
図2E】システムの運動の自由度を示すために、ハンドルの第2の部分が操作されている状態の、図2Aの実施形態を示す。
【0016】
図3図2Aの実施形態の、左側は、立面図、及び右側は、線A-Aに沿って取った断面図を示す。
【0017】
図4図3の実施形態の拡大断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
例として、及び図1を参照して説明すると、従来技術の操向性カテーテルの一実施形態は、ハンドルH及びルーメンLを備えたカテーテルCを含み、ここで、ルーメンの遠位チップDTは、(a)ハンドルを時計回り又は反時計回りに回すことによって、角度シータΘでカテーテルの遠位チップを動かすこと、(b)ハンドルを遠位に又は近位に押すことによって、遠位チップをz軸に沿って軸方向に動かすこと、(c)ハンドル上の制御ノブを所望の標的領域に到達するように動かすことによって、角度ローで遠位チップを横方向に操向することを含む、3運動度(three degrees of movement)で操向可能である。
【0019】
本システムの実施形態は、治療又は診断機器によって標的領域に到達するための、より良好なシステムを提供する。図2Aを参照して、本システムの一実施形態が説明され得る。その関連で、実施形態10は、一例では、カテーテル11と、外側シース12と、ハンドル14と、拡張可能ケージ16と、拡張可能ケージ16をそれぞれ覆ったり露出させたりするために外側シース12を遠位に前進させ又は近位に引き戻すための部材18とを含む。拡張可能ケージ16は、Nitinolなどの形状記憶材料で作製され得、及び実施形態10の外側シース12内で送達するために潰され得るか、又は外側シース12の遠位端部において図示の通り拡張され得る。一実施形態では、ハンドル14は、固定されたままである第1の部分22と、下記で説明するように、幾分ジョイスティックのように操作され得る第2の部分24とを含む。外側シース12内には、第2の内側シース26がカテーテル11内に提供され、この第2の内側シース26は、下記でさらに説明するように、近位端部からハンドルを通って延在し、且つ遠位端部から拡張可能ケージ16を通って延在する。
【0020】
一実施形態では、拡張可能ケージ16は、第1の部材32及び第2の部材34を含み、それぞれ、平面を規定し、一方の平面は、他方の平面に対してほぼ直角である。一実施形態では、第1の部材32は、形状が全体的に半円環状である一方、第2の部材34は、形状が全体的に円環状であり、この構成は、体内の腔を占有するように拡張することを目的としている(図示せず)。しかしながら、拡張可能ケージは、遠位方向の安定をもたらすために、体腔を占有するように拡張することを目的とする任意の数の構成を含み得る。
【0021】
図示の例示的な実施形態では、好ましくはケージの第1の部材32に対向する拡張可能ケージ16の一方の側では、遠位端部28を有する第2の内側カテーテル26の遠位部分が、複数の対のワイヤによってケージ16に接続されたハブ35を突き抜けている。具体的には、一実施形態では、ハブ35は、第1の対のワイヤ36及び第2の対のワイヤ38に接続される。下記でより十分に説明するように、各対の各ワイヤ(36a、36b、38a、38b)の第1の端部は、ハブ35に接続される一方、各ワイヤの対向する第2の端部は、ハンドル14の第2の部分24に接続される。ワイヤ38a、38b及び36aは、それぞれリング42c、42a及び42bを通され、そこでは、リング42a~cは、ケージ16の第2の部材34に装着されている。その後、それら3本のワイヤは、外側シース12及びカテーテル11内に設けられたシース44を通るように方向付けられる。第4のワイヤ36bは、カテーテル11に直接提供され、及びハンドル14の第2の部分24へと方向付けられる。
【0022】
各対のワイヤ36、38は、一致した動きをして、各対の一方のワイヤが近位に引っ張ると、各対の他方のワイヤが遠位に引かれ、第2のカテーテル26のハブ35及び遠位端部28を、X軸又はZ軸のいずれかで、前後に動かすことができるようにする。第1の対のワイヤ36は、ハブ35及び遠位端部28をZ軸で前後に動かすように操作され得る一方、第2の対のワイヤ38は、ハブ35及び遠位端部28をX軸で前後に動かすように操作され得る。この類似形態(analogy)は、ハブ35を一方の方向に南北に、及び他方の方向に東西に動かすことである。ケージ16が任意の角度シータΘで体腔内で回転され得るという事実を加えて、結果として、ハブ35及び遠位端部28が、複数自由度、この例では3自由度で、制御式に動かされ得、腔の標的領域への到達においてより高い精度を可能にする。複数自由度を追加するためにそのように望まれる場合には、追加的な対のワイヤが提供されてもよいことに留意すべきである。
【0023】
図2B~2Eを参照すると、本発明の一実施形態が、4つの異なる位置のうちの1つにおいて示され得、ここで、ハンドル16の第2の部分24は、4つの異なる方向で操作され、応答するハブ35及び遠位端部28の随伴運動を生じる。図2Bでは、図示の方向でのハンドル14の第2の部分24の動きは、図2Bの拡大図に示すような、X軸に沿った第1の方向におけるハブ35及び遠位端部28の動きにつながる。図2Cでは、図示の方向でのハンドル14の第2の部分24の動きは、図2Bの拡大図に示すような、Z軸に沿った第1の方向におけるハブ35及び遠位端部28の動きにつながる。図2Dでは、図示の方向でのハンドル14の第2の部分24の動きは、Z軸に沿った対向する方向におけるハブ35及び遠位端部28の動きにつながる。図2Eでは、図示の方向でのハンドル14の第2の部分24の動きは、X軸に沿った対向する方向におけるハブ35及び遠位端部28の動きにつながる。
【0024】
図3及び図4を参照すると、第1の対すなわちワイヤ36a、36bが、外側シース12及びカテーテル11を通って、ハンドル16の第1の部分22を通って移動してから、ハンドル16の第2の部分24内に固定され、そこで、第1の対のワイヤの近位端部が、それぞれ固定手段46a及び46bにおいて第2の部分24に接続されていることが示されている。固定手段46a、46bは、ワイヤの端部をハンドルに固定するのに十分な、任意のタイプの機器のいずれか1つとし得る。第2の対のワイヤも、固定手段46a、46bに対して直角の第2の組の固定手段(図示せず)において第2の部分24に接続される。
【0025】
図3の左側の図から理解されるように、ハンドル16の第2の部分24が、左側及び右側に動かされるとき(紙面の垂直平面において)、ハブ35及び遠位端部28は、応答して、第1の軸において前後に動く。ハンドル16の第2の部分24が外側及び内側に動くとき(紙面の垂直平面において)、対のワイヤ38a、38b(図3の断面図には図示せず)を操作することによって、ハブ35及び遠位端部28は、応答して、第2の方向において前後に動く。
【0026】
本システムの実施形態では、治療又は診断機器は、内側シース26に挿入され得るため、機器の遠位端部は、内側シース26のハブ35及び遠位端部28の動きによって、標的領域へ方向付けられ得る。本発明の実施形態は、治療又は診断機器が到達することを目的としている所望の領域を、より的確且つ直感的に標的とすることを可能にする。
【0027】
当業者は、本発明のシステムの機能的利益を享受するために、多数の設計構成が可能とし得ることを理解し得る。それゆえ、本発明の実施形態の広範な構成及び配置構成を考慮すると、本発明の範囲は、上述の実施形態によって狭められるのではなく、下記の特許請求の範囲の広さによって反映される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4