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特許7143346半導体検出器、および、半導体検出器の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】半導体検出器、および、半導体検出器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/24 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
G01T1/24
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019572449
(86)(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-03
(86)【国際出願番号】 GB2018051850
(87)【国際公開番号】W WO2019008333
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】1710642.8
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513066122
【氏名又は名称】クロメック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KROMEK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213333
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿山 昌代
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー チャーリン
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0099127(US,A1)
【文献】国際公開第2016/135106(WO,A1)
【文献】特開2015-160135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエネルギー範囲における入射放射線に対して目標感度を示す半導体検出器の製造方法であって、
半導体検出器を提供するステップと、
前記半導体検出器における検出器の表面に多数のピクセルを定義するステップと、
クラスタサイズに基づいて、単一の相互作用事象の深度依存補正を決定するステップと、
を含み、
前記検出器は、
前記所定のエネルギー範囲における前記単一の相互作用事象が、少なくとも3つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、前記ピクセルのサイズを参照して制御される形状であり、それぞれの前記クラスタが前記クラスタサイズを有する、
方法。
【請求項2】
各ピクセルは、
相互作用事象により生成された検出可能な信号を測定できるように、適切な検出器の電子回路により、分離され且つ個別にアドレス指定可能な半導体検出器における前記検出器の表面の領域として定義される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
入射放射線との相互作用事象に対する前記検出器の応答を検出する信号検出システムを提供するステップと、
前記半導体検出器における検出器の表面に、相互作用事象によりピクセルで生成された検出可能な信号を検出するために前記検出システムによりそれぞれ分離されてアドレス指定可能な多数のピクセルを定義するステップと、
単一の相互作用事象から隣接ピクセルにより生成された検出可能な信号を一緒に処理するために、前記検出システムをさらに配置するステップと、
を含み、
前記検出器は、
前記所定のエネルギー範囲における単一の相互作用事象が、少なくとも3つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、前記ピクセルのサイズを参照して制御される形状である、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
検出器で入射放射線に関するスペクトル情報を取得する方法であって、
半導体検出器を提供するステップと、
半導体検出器における前記検出器の表面に多数のピクセルを定義するステップと、
クラスタサイズに基づいて、単一の相互作用事象の深度依存補正を決定するステップと、
前記検出器での入射放射線により引き起こされる相互作用事象ごとに、前記検出器に放射線を入射させるステップと、
クラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで、相互作用事象を検出可能な信号として検出するステップと、
クラスタサイズを決定するステップと、
連続的な相互作用事象に対して連続的に測定されたクラスタサイズから、入射放射に関するスペクトル情報を推測するステップと、
を含み、
前記検出器は、
所定のエネルギー範囲における前記単一の相互作用事象が、少なくとも3つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、前記ピクセルのサイズを参照して制御される形状であり、それぞれの前記クラスタが前記クラスタサイズを有する、
方法。
【請求項5】
入射放射線との相互作用事象に対する前記検出器の応答を検出する信号検出システムを提供するステップと、
前記半導体検出器における前記検出器の表面に、相互作用事象によりピクセルで生成された検出可能な信号を検出するために前記検出システムによりそれぞれ分離されてアドレス指定可能な多数のピクセルを定義し、定義するステップと、
単一の相互作用事象から隣接ピクセルにより生成された検出可能な信号を一緒に処理するために、前記検出システムをさらに配置するステップと、
前記検出器での入射放射線により引き起こされる相互作用事象ごとに、前記検出器に放射線を入射させるステップと、
クラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで、相互作用事象を検出可能な信号として検出するステップと、
クラスタサイズを決定するステップと、
連続的な相互作用事象に対して連続的に測定されたクラスタサイズから、入射放射に関するスペクトル情報を推測するステップと、を含み、
前記検出器は、
前記所定のエネルギー範囲における単一の相互作用事象が、少なくとも3つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、前記ピクセルのサイズを参照して制御される形状である、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
表面に多数のピクセルが定義された半導体検出器における検出器を備え、
クラスタサイズに基づいて、単一の相互作用事象の深度依存補正を決定し、
前記検出器は、
所定のエネルギー範囲における前記単一の相互作用事象が、少なくとも3つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、前記ピクセルのサイズを参照して制御される形状であり、それぞれの前記クラスタが前記クラスタサイズを有する、
半導体検出器。
【請求項7】
入射放射線との相互作用事象に対する検出器の応答を検出する信号検出システムをさらに備え、
前記信号検出システムは、
前記半導体検出器における前記検出器の表面に、相互作用事象によりピクセルで生成された検出可能な信号を検出するために、それぞれ分離されてアドレス指定可能な多数のピクセルを定義し
前記単一の相互作用事象から隣接ピクセルにより生成された検出可能な信号を一緒に処理するために、配置され、
前記検出器は、
前記所定のエネルギー範囲における単一の相互作用事象が、少なくとも3つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、前記ピクセルのサイズを参照して制御される形状である、
請求項6に記載の半導体検出器。
【請求項8】
前記検出器は、
X線又はガンマ線などの電離放射線、若しくは、素粒子放射線の検出器である、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記検出器は、
高エネルギー電磁放射用の検出器である、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所定のエネルギー範囲は、
数keVから数千keVのエネルギーを有する光子に対する範囲である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記検出器は、
前記所定のエネルギー範囲における単一の相互作用事象が、少なくとも4つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、前記ピクセルのサイズを参照して制御される形状である、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記検出器は、
前記所定のエネルギー範囲における単一の相互作用事象が、9~15の間のピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、前記ピクセルのサイズを参照して制御される形状である、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記検出器は、
ワイドバンドギャップ半導体である、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記検出器は、
テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛、テルル化カドミウムマンガン、および、これらの合金から選択される半導体である、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記検出器は、
テルル化亜鉛カドミウム検出器である、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記検出器は、
入射光子の所定のエネルギー範囲が、50keVから1000keV、
厚さが、2mmから10mm
ピクセルサイズが、50μmから200μmである、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記検出器は、
X線又はガンマ線などの電離放射線、若しくは、素粒子放射線の検出器である、
請求項6に記載の半導体検出器。
【請求項18】
前記検出器は、
前記所定のエネルギー範囲における単一の相互作用事象が、少なくとも4つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、前記ピクセルのサイズを参照して制御される形状である、
請求項6に記載の半導体検出器。
【請求項19】
前記検出器は、
ワイドバンドギャップ半導体である、
請求項6に記載の半導体検出器。
【請求項20】
前記検出器は、
テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛、テルル化カドミウムマンガン、および、これらの合金から選択される半導体である、
請求項6に記載の半導体検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のデバイス特性を提供するように制御される検出器の形状を有する半導体検出器を準備する方法、そのような制御された形状を有する半導体検出器、および、そのような検出器を使用して入射放射線に関するスペクトル情報を取得する方法に関する。本発明は、特に、高度にピクセル化された検出器の製造方法、および、高度にピクセル化された形状で製造され、それらの形状を使用する検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体検出器は、電離放射線検出測定のさまざまなアプリケーションで使用されている。電離放射線は、検出媒体(Si、Ge、GaAs、CdTe、CZTなど)と相互作用し、蓄積されたエネルギーに比例して多数の電子-正孔対を生成する。検出器の内部に生成された電界の影響下で、電子および正孔は、集電極に向かってドリフトし、そこで電子および正孔の初期値で定義された振幅を有する信号を誘導する。したがって、電離放射線と検出媒体との間の相互作用で蓄積されたエネルギーを測定することが可能となる。
【0003】
電子および正孔は、非常に小さな体積内で生成され、電子および正孔は、電荷雲として電界線に沿ってドリフトし、クーロン力、特定の検出器における材料欠陥によるアインシュタインの拡散および相互作用にしたがって拡大する。
【0004】
検出器の電極に誘導される信号と電子-正孔対の初期値との間の関係は、検出器の材料、検出器の形状、検出器の電界強度などの多くの変数の関数となる。特定の測定又はアプリケーションにとって、最適な検出器の形状を選択するための設計ルールがある。例えば、CdTe、CZT、又はGaASなどの高抵抗材料の場合、集電極の少なくとも1つを、例えば、ピクセル又はストリップのような小さな要素に分割することには利点がある。
【0005】
これらの種類の検出器の材料を使用するアプリケーションの大部分において、検出器は、特徴的な電極の要素のサイズが、検出器の厚さよりも数倍小さい構成を有することで、最良の結果が得られる。非常に大きなピクセル又は非常に小さなピクセルを有する極端な構成の検出器を使用することで、検出器の応答における非常に特殊なタイプが生成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】クラスタサイズに従ってプロットされた241Amスペクトル(59.5keV)の一例を示す図である。
図2】クラスタサイズに従ってプロットされた137Csスペクトル(662keV)の一例を示す図である。
図3】データ処理が施された後のスペクトルデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、使用中に特定の検出器の応答を生成し、それによって特定のデバイス特性を提供する半導体検出器の幾何学的形状の設計に関する。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、所定のエネルギー範囲における入射放射線に対して目標感度を示す半導体検出器の製造方法は、半導体検出器を提供するステップと、半導体検出器における検出器の表面に多数のピクセルを定義するステップと、を含み、検出器は、所定のエネルギー範囲における単一の相互作用事象が、少なくとも3つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、ピクセルのサイズを参照して制御される形状である。
【0009】
典型的には、各ピクセルは、相互作用事象により生成された検出可能な信号を測定できるように、適切な検出器の電子回路により、分離され且つ個別にアドレス指定可能な半導体検出器の検出器の表面の領域として定義される。
【0010】
したがって、より完全には、本発明は、所定のエネルギー範囲における入射放射線に対して目標感度を示す半導体検出器の製造方法であって、半導体検出器を提供するステップと、入射放射線との相互作用事象に対する検出器の応答を検出する信号検出システムを提供するステップと、半導体検出器における検出器の表面に、相互作用事象によりピクセルで生成された検出可能な信号を検出するために検出システムによりそれぞれ分離されてアドレス指定可能な多数のピクセルを定義するステップと、単一の相互作用事象から隣接ピクセルにより生成された検出可能な信号を一緒に処理するために、検出システムをさらに配置するステップと、を含んでいてよく、検出器は、所定のエネルギー範囲における単一の相互作用事象が、少なくとも3つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、ピクセルのサイズを参照して制御される形状である。
【0011】
相互作用事象により生成された検出可能な信号が、それぞれから測定できるように、適切な検出器の電子回路により、それぞれ分離され且つ個別にアドレス指定可能なピクセルのグループとして、任意の相互作用事象に対して、クラスタを構成し得る。しかし、その後、集合的な方法で一緒に処理される。これにより、単一の相互作用事象が、クラスタを構成する複数のピクセルとの相互作用事象により検出可能な信号を生成し、クラスタを構成する各ピクセルからの結果の信号が、一緒に処理されて相互作用事象に関する追加情報が生成される。
【0012】
本発明は、検出器における単一の相互作用事象に起因する単一の検出事象から複数のピクセルにわたって電荷雲プロファイルを生成するための検出器の形状の設計、および、このデータを活用して収集される情報内容を改善する方法に関する。
【0013】
従来のピクセル化された検出器と比較して、ピクセルサイズは、入射放射線エネルギーを考慮すると、非常に小さくなる。これにより、単一の放射線の入射量子との単一の相互作用事象は、クラスタを構成する多数のピクセルへ広がる。多くの検出アプリケーションでは、このような特徴は、好ましくない場合がある。このような効果を避けることが、通常は、好ましい場合がある。
【0014】
しかしながら、本発明により具現化される検出器の設計原理に関しては、それは新規の機能性を与えるために使用される。エネルギーは、クラスタサイズに相関する場合がある。スペクトル情報は、入射放射線を複数のスペクトル分解エネルギーごとに、分ける必要なく、複数の相互作用事象のそれぞれについてクラスタサイズを測定するのみで取得され得る。信号処理を行う電子機器および信号処理の原理は、大幅に簡素化され得る。
【0015】
したがって、本発明の第2の態様によれば、検出器で入射放射線に関するスペクトル情報を取得する方法は、半導体検出器を提供するステップと、半導体検出器における検出器の表面に多数のピクセルを定義するステップと、検出器での入射放射線により引き起こされる相互作用事象ごとに、検出器に放射線を入射させるステップと、クラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで、相互作用事象を検出可能な信号として検出するステップと、クラスタサイズを決定するステップと、連続的な相互作用事象に対して連続的に測定されたクラスタサイズから、入射放射に関するスペクトル情報を推測するステップと、を含み、検出器は、所定のエネルギー範囲における単一の相互作用事象が、少なくとも3つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、ピクセルのサイズを参照して制御される形状である。
【0016】
さらに、より完全には、本発明は、半導体検出器を提供するステップと、入射放射線との相互作用事象に対する検出器の応答を検出する信号検出システムを提供するステップと、半導体検出器における検出器の表面に、相互作用事象によりピクセルで生成された検出可能な信号を検出するために検出システムによりそれぞれ分離されてアドレス指定可能な多数のピクセルを定義し、定義するステップと、単一の相互作用事象から隣接ピクセルにより生成された検出可能な信号を一緒に処理するために、検出システムをさらに配置するステップと、検出器での入射放射線により引き起こされる相互作用事象ごとに、検出器に放射線を入射させるステップと、クラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで、相互作用事象を検出可能な信号として検出するステップと、クラスタサイズを決定するステップと、連続的な相互作用事象に対して連続的に測定されたクラスタサイズから、入射放射に関するスペクトル情報を推測するステップと、を含み、検出器は、所定のエネルギー範囲における単一の相互作用事象が、少なくとも3つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、ピクセルのサイズを参照して制御される形状である。
【0017】
したがって、本発明の第3の態様によれば、半導体検出器は、表面に多数のピクセルが定義された半導体検出器における検出器を備え、検出器は、所定のエネルギー範囲における単一の相互作用事象が、少なくとも3つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、ピクセルのサイズを参照して制御される形状である。
【0018】
さらに、より完全には、本発明は、検出面を有する半導体検出器であって、入射放射線との相互作用事象に対する検出器の応答を検出する信号検出システムをさらに備え、信号検出システムは、半導体検出器における検出器の表面に、相互作用事象によりピクセルで生成された検出可能な信号を検出するために、それぞれ分離されてアドレス指定可能な多数のピクセルを定義し単一の相互作用事象から隣接ピクセルにより生成された検出可能な信号を一緒に処理するために、配置され、検出器は、所定のエネルギー範囲における単一の相互作用事象が、少なくとも3つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、ピクセルのサイズを参照して制御される形状である。
【0019】
検出器は、特に、X線又はガンマ線などの電離放射線、若しくは、素粒子放射線の検出器であり、所定のエネルギー範囲は、標的電離放射線の予想エネルギーを含む。単一の相互作用事象は、検出器内の複数の隣接ピクセルと、例えば、X線、ガンマ光子、又は素粒子などの放射線の入射量子と、の相互作用事象を構成する。特に、適用可能な場合、検出器は、高エネルギー電磁放射線検出器、例えば、ガンマ検出器であり、所定のエネルギー範囲は、高エネルギー電磁放射線、例えば、数keVから数千keV、特に、数十keVから数百keVのエネルギーを有する光子のようなエネルギー範囲を含む。
【0020】
入射放射線は、相互作用事象ごとに、検出器材料と反応し、蓄積されたエネルギーに比例する多数の電子-正孔対が、良く知られた方法で、相互作用事象の全体に生成される。本発明は、ピクセルサイズが、入射放射線の標的エネルギー範囲、および、所定エネルギー範囲における単一相互作用事象が、複数のピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルにおけるそれぞれに、検出可能な信号を生成するような他の制御パラメーターに関して定義されることを特徴とする。そのようなデバイスによって提供される追加的な効用は、クラスタのサイズ自体が入射放射線のエネルギーに依存しているため、入射放射線のエネルギーに関する情報を否定するために使用されるという認識から得られる。
【0021】
本発明によれば、所定エネルギー範囲における単一の相互作用事象が、少なくとも3つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、標的入射放射エネルギー範囲および他の制御パラメーターを参照して、ピクセルサイズが定義される。
【0022】
より好ましくは、ピクセルサイズは、所定エネルギー範囲における単一の相互作用事象が、少なくとも4つのピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、標的入射放射エネルギー範囲および他の制御パラメーターを参照して定義される。
【0023】
最適化されたクラスタサイズは、アプリケーションおよび目的のデバイスプロパティによって異なる場合がある。実施可能な一例では、ピクセルサイズは、所定エネルギー範囲における単一の相互作用事象が、9~15の間のピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成するように、標的入射放射エネルギー範囲および他の制御パラメーターを参照して定義される。しかし、これは、実施可能な実施形態の一例にすぎない。
【0024】
最適化されたピクセルサイズは、材料固有であり、最初の例として、標的入射放射エネルギーを参照して決定される。検出器の厚さおよび検出器の動作バイアス電圧は、限定されることなく、他の動作制御パラメーターおよび要因が、クラスタサイズに影響する場合がある。当業者は、これらのパラメーターの効果に精通しており、設計パラメーターを調整して、所望のクラスタ効果を生成するピクセルサイズを定義し、これにより、標的入射放射エネルギー範囲の全体にわたって、相互作用事象が、上記のようなピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成可能な能力があることを認識している。したがって、当業者は、任意の適切な検出器材料および標的入射放射エネルギー範囲に対して材料固有の最適化されたピクセルサイズを、過度の努力なしに決定し、標的入射放射エネルギー範囲にわたって、本発明の原理を具体化する検出器を生成することができ得る。相互作用事象は、上記のようにピクセルのクラスタを構成する複数の隣接ピクセルのそれぞれで検出可能な信号を生成し得る。検出器は、半導体検出器である。半導体は、ワイドバンドギャップ半導体であることが好ましい。
【0025】
好ましい実施形態では、半導体材料は、II-VI族半導体から選択でき、特に、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)、および、それらの合金から選択できる。偶発的な不純物は、本質的には、結晶Cd1-(a+b)MnZnTe、a+b<1、並びに、aおよび/又はbはゼロ、で構成される。複合デバイスは、追加機能のために、他の材料の他の検出器の要素を備えていてもよい。テルル化亜鉛カドミウム(CZT)が特に好ましい。
【0026】
上述のように、最適化されたピクセルサイズは、材料固有であり、第1の例として、標的入射放射エネルギーを参照して決定される。
【0027】
カドミウムテルル化亜鉛(CZT)検出器の一例では、適切なパラメーターは、例えば、入射光子の所定エネルギー範囲が、50keVから1000keV、厚さが、数mm、特に、2mmから10mm、ピクセルサイズが、数十μmから数百μm、特に、50μmから200μmである。
【0028】
ここで、本発明は、添付の図面の図1から図3を参照して、本発明の原理を具体化する検出器の一例として説明される。検出器の厚さよりも、はるかに小さいピクセルサイズのCZT検出器の構成の特定の実施形態では、集電極に到達するまでの電荷雲の特徴的なサイズも、個々のピクセルよりもかなり大きい。このような構成により、特定の検出器の応答が生成され、専用アプリケーションでの検出器の利用に新しいアプローチを適用できる。
【0029】
例えば、110μmピクセルの厚さ5mmのCZT検出器の場合、約100keVのエネルギーを有する入射光子は、複数のピクセルで構成されるクラスタの形でピクセル化されたアノードに信号を誘導する。クラスタ当たりの特徴的なピクセル数は、入射する光子エネルギーの関数として急速に増加する。60keVで2~4ピクセル、122keVで3~5ピクセル、662keVで9~15ピクセルに達する。
【0030】
特定のサイズのクラスタを使用して、プロットされた結果であるエネルギースペクトルは、クラスタサイズによって大きく異なるため、特定のアプリケーション又は複数の組み合わせに対して検出器の構成を最適化する新しいツールを提供する。
【0031】
図1は、複数のクラスタサイズの一例について、クラスタサイズに従ってプロットされた241Amスペクトル(59.5keV)の一例を示し、右下のプロットは、全てのクラスタサイズを示している。図2は、別の範囲の複数のクラスタサイズの一例について、クラスタサイズに従ってプロットされた137Csスペクトル(662keV)の一例を示し、右下のプロットは、全てのクラスタサイズを示している。
【0032】
例えば、137Csスペクトルからわかるように、スペクトルのコンプトン連続体部分に関連して強化された光電ピーク(662keV)を有するデータのサブサンプルを選択することができる。本発明を利用する機会の範囲がある。例えば、強化された光電ピークを利用する4つの異なる実施形態は次のとおりである。
1.特定のクラスタサイズに対応する各スペクトルのエネルギー分解能は、それらの合計よりも優れている。加算スペクトルのエネルギー分解能をさらに改善するために、加重加算手順を実装できる。このような処理の一例を図3に示す。エラー!参照元が見つかりません。図3は、次のとおりである。図3-1の上図は、各クラスタサイズのスペクトルを個別に較正して得られたエネルギー較正済み137Csスペクトルである。図3-1の下図は、同じ範囲のクラスタサイズでの合計を有し、エネルギーキャリブレーションなしで得られた合計スペクトルである。エネルギーキャリブレーションされたスペクトルは、より良いエネルギー分解能(半値全幅)を持っていることがわかる。図3-2は、特定のクラスタサイズに対応するスペクトルの複数の例である。一部のスペクトルのエネルギー分解能は、合計スペクトルのエネルギー分解能よりも優れていることがわかる。それに加えて、一部のスペクトルには、コンプトン散乱による寄与がほとんど含まれておらず、光電効果に対応する1つのメインピークがあることがわかる。
2.検出器媒体で、多量のコンプトン散乱を行うのに十分高い光子エネルギーを有するイメージングアプリケーションでは、入射放射線の主な相互作用が、光源の真の画像に寄与する(つまり、そうでない光子により得られた画像発光点と検出器での吸収点の間に相互作用がある)、そして、二次相互作用は、物理的背景ノイズを画像に導入する。クラスタサイズごとのスペクトルの重み付けされた組み合わせを使用して、2次相互作用からの寄与を最小化し、除外することもできるため、画質およびコントラストが向上する。さらに、特定のクラスタサイズスペクトルのそれぞれを個別に処理して、最も顕著な特定の機能を改善することができる。例えば、主成分分析を各スペクトルに適用し、結合画像を構築する前に、画像の主成分にフィルターを適用できる。これにより、トータルスペクトルの特定の機能を強調し、特定のアプリケーション向けに画像を最適化できる。
3.厚いCZT検出器(数mm以上)は、測定された信号の深さ依存性を示すことが知られている。すなわち、同じエネルギーの光子は、検出器の厚さに沿って吸収された場所に応じて、ピクセル化されたアノードで異なる信号を生成する。検出器のバルク内部の相互作用の位置を測定できた場合、その影響を修正できる。非常に小さいピクセルサイズの場合、これは異なるサイズのクラスタを生成することも意味する。クラスタサイズの選択基準を使用すると、検出器の内部の相互作用の位置を測定することなく、画像分析に深度依存性補正を組み込むことができる。
4.1セットのデータを分析しながら上記の技術を組み合わせることにより、さまざまなアプリケーションに最適な結果を得ることができるが、1回の測定で済む。例えば、スキャンされた領域の全体的なガンマ線画像を配信し、1つ以上の関心領域(ROI)を選択するために、日付セット全体を使用できる。特定の機能を強化し、これらのROIで分光法を実行するために、より小さい処理が施されたデータのサブセットを使用できる。


図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図3-1】
図3-2】