(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】溶融紡糸装置
(51)【国際特許分類】
D01D 7/00 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
D01D7/00 C
(21)【出願番号】P 2019572591
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2018065489
(87)【国際公開番号】W WO2019001948
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】102017006137.8
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ライナルト フォス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ファウルシュティヒ
(72)【発明者】
【氏名】マーク-アンドレ ヘアンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】アブデラティ ハミド
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-082381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紡糸位置(1.1~1.6)と、自動操作装置(9)とを備えた、合成糸を製造するための溶融紡糸装置であって、前記紡糸位置(1.1~1.6)は、それぞれ1つの紡糸ノズルユニット(2)と、冷却ユニット(3)と、ゴデットユニット(6)と、巻取りユニット(7)とを有していて、前記自動操作装置(9)は、ガイドユニット(10)により、操作通路(21)の上方で、一列に配置された前記紡糸位置(1.1~1.6)に対して平行にガイドされており、各紡糸位置(1.1~1.6)に、糸を掛けるために引渡し可能であり、前記自動操作装置(9)が、障害物を検知するための少なくとも1つの衝突センサ(11.1)を有している、溶融紡糸装置において、
前記自動操作装置(9)が、前記衝突センサ(11.1)を収容するためにセンサコラム(9.2)を有していて、前記センサコラム(9.2)
が前記操作通路(21)内に突入して
おり、
前記センサコラム(9.2)の下側の自由端が、前記衝突センサ(11.1)を収容するための検出ヘッド(11)を有していて、前記衝突センサ(11.1)が、レーザスキャナ(11.2)により形成されることを特徴とする、溶融紡糸装置。
【請求項2】
前記センサコラム(9.2)に設けられた前記衝突センサ(11.1)が、自動制御装置(9.6)に接続されていて、前記衝突センサ(11.1)に、内側の近接場と外側の近接場が割り当てられていて、前記自動制御装置(9.6)において前記内側の近接場または前記外側の近接場での障害物の報知が種々異なる制御命令を作動させる、請求項
1記載の溶融紡糸装置。
【請求項3】
前記センサコラム(9.2)が、前記自動制御装置(9.6)に接続されている操作パネル(16)および/またはスイッチング素子を支持している、請求項
2記載の溶融紡糸装置。
【請求項4】
前記センサコラム(9.2)の自由端が、可動の緊締支持部(17)を有していて、該緊締支持部(17)が前記センサコラム(9.2)を前記ホール床(20)と選択的に緊締する、請求項1から
3までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【請求項5】
前記センサコラム(9.2)の自由端が、ガイドシュー(18)を有していて、該ガイドシュー(18)が、前記ホール床(20)内の床レール(19)内でガイド可能である、請求項1から
4までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【請求項6】
各紡糸位置(1.1~1.6)に、圧縮空気伝達のためのそれぞれ1つの圧縮空気接続部(12.1)を備えた複数の接続ステーション(12)の1つが対応配置されていて、該接続ステーション(
12)が、前記自動操作装置(9)に配置された接続アダプタ(12.3)と協働する、請求項1から
5までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【請求項7】
前記ガイドユニット(10)が、懸架軌道(10.1)により形成されていて、該懸架軌道(10.1)において前記自動操作装置(9)がガイドされていて、前記自動操作装置(9)が搬送手段(9.4)を有していて、該搬送手段(9.4)により前記自動操作装置(9)が前記懸架軌道(10.1)において走行可能である、請求項1から
4までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【請求項8】
前記自動操作装置(9)が、制御可能なロボットアーム(9.3)を有していて、該ロボットアーム(9.3)が前記センサコラム(9.2)と一緒に、前記懸架軌道(10.1)に保持されたキャリアフレーム(9.1)に配置されている、請求項
7記載の溶融紡糸装置。
【請求項9】
前記自動操作装置(9)が可動のサクションインジェクタ(9.8)を有していて、該サクションインジェクタ(9.8)が前記ロボットアーム(9.3)により、前記紡糸位置(1.1~1.6)の1つの前記ゴデットユニット(6)および前記巻取りユニット(7)に糸群を掛けるためにガイド可能である、請求項
8記載の溶融紡糸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の形式の、合成糸を製造するための溶融紡糸装置に関する。
【0002】
合成糸の製造は、多数の紡糸位置を有している溶融紡糸装置により行われる。複数の紡糸位置は、相並んで設置されて、機械ホールにおいて機械の長手方向正面を形成する。各紡糸位置は、複数の糸を押し出すための複数の紡糸ノズルを備えた紡糸ノズルユニットを有している。1つの紡糸位置の糸は、糸群として一緒に紡糸ノズルから引き出され、プロセスの最後に巻取りユニットの複数の巻取り箇所において平行に巻き取られてパッケージを形成する。紡糸位置の巻取りユニットは、1つの巻取りリボルバに保持された2つの巻取りスピンドルをそれぞれ備えているので、糸は紡糸位置において連続的に製造することができる。プロセス開始時またはプロセス中断時にのみ、紡糸位置の糸群を補助ユニットによりガイドし、たとえばゴデットユニットおよび巻取りユニットに掛けることが必要となる。このような補助ユニットは、好適には自動操作装置により形成される。自動操作装置は、機械の長手方向正面に沿って可動にガイドされていて、紡糸位置のうちの1つに糸を掛けるために選択的に供給可能である。このような溶融紡糸装置はたとえば欧州特許出願公開第3162748号明細書に開示されている。
【0003】
公知の溶融紡糸装置では、自動操作装置が走行可能に形成されていて、操作通路の上方の懸架軌道においてガイドされている。ゴデットユニットおよび巻取りユニットに糸群を掛けることは、自動操作装置のロボットアームにより行われる。自動操作装置とパッケージ回収ユニットまたはオペレータとの間の望ましくない衝突を回避するために、自動操作装置は複数の衝突センサを有している。これらの衝突センサは、生じ得る障害物を検知し、したがって衝突が回避されることが望ましい。
【0004】
公知の溶融紡糸装置では、衝突センサが2000mm以上の高さに配置されている。その限りでは、たとえばロボットアームと操作通路にいるオペレータとの衝突を回避するために、高感度の衝突センサが必要とされる。溶融紡糸装置の、揮発性の成分により極めて強く負荷される周辺環境に関して、このような光学的なセンサ感度を長い運転期間にわたって保証することには大きな問題が生じる。
【0005】
したがって、本発明の課題は、冒頭で述べた種類の、合成糸を製造するための溶融紡糸装置を改良して、糸を掛けるための自動操作装置が高い安全性で自動化されて運転され得るようにすることである。
【0006】
この課題は、本発明によれば、自動操作装置が、衝突センサを収容するためにセンサコラムを有していて、センサコラムがホール床に対して短い間隔で操作通路に突入することにより解決される。
【0007】
本発明の有利な変化形は、従属請求項に記載の特徴および特徴の組み合わせにより定義されている。
【0008】
本発明は、自動操作装置の周辺環境が、ひょっとしたらオペレータまたはパッケージ回収ユニットが存在する領域において直接に観察されるという特別な利点を有している。したがって、満管のパッケージを回収するために好適には走行可能なドッファが使用される。ドッファは、操作通路に沿ってガイドされている。さらに操作通路は、たとえば紡糸位置の個別の巻取りユニットを保守のために交換するために、オペレータにより利用される。操作通路の領域における自動操作装置のすぐ周囲の床近くでの監視は、障害物とのあらゆる衝突を回避する。したがってプロセス中断後または再開時の紡糸位置における個別の糸掛け工程は、高い安全性で自動操作装置により実施することができる。
【0009】
衝突センサを収容するために、センサコラムは好適には、下側の自由端において検出ヘッドを有しているので、監視領域は比較的小さな空間的な寸法を占めている。衝突センサは、好適には、レーザスキャナにより形成される。レーザスキャナは、二次元の周囲検知を送受信システムの回転による360°にわたるカバー範囲で可能にする。
【0010】
しかし好適には、検出ヘッドの周縁上に分配されて配置された2つのレーザスキャナが保持される。これらのレーザスキャナはそれぞれ、270°の監視領域を有している。したがって、自動操作装置の全体的な周辺環境が操作通路の範囲において検出されることが保証されている。
【0011】
特に、たとえばオペレータのような可動の障害物の場合、衝突センサに内側の近接場と外側の近接場が割り当てられている、本発明に係る溶融紡糸装置の変化形が有利に構成されている。自動制御装置における内側の近接場または外側の近接場での障害物の報知は種々異なる制御命令を作動させる。したがって、たとえば自動操作装置の作業工程は、障害物が内側の近接場において検知された場合に初めて中断される。これに対して、外側の近接場における障害物の場合、まず自動操作装置の作業速度が緩慢にされる。これにより、可動の障害物では自動操作装置の突然の中断を阻止することができる。
【0012】
自動化にもかかわらず自動操作装置の制御への手動の介入を可能にするために、さらに、操作パネルおよび/またはスイッチング素子、たとえば緊急停止スイッチをセンサコラムに配置する可能性が生じる。操作パネルもしくはスイッチング素子は直接に自動制御装置に接続されている。したがって、操作パネルおよび/またはスイッチング素子はオペレータの作業高さに取り付けられる。
【0013】
個別の紡糸位置において、自動操作装置による糸掛けのためのそれぞれの作業順序を実施することができるように、この自動操作装置はそれぞれ予め規定された紡糸位置に位置決めされる。この場合、自動操作装置の位置固定および位置決めは、センサコラムの自由端が可動の緊締支持部を有していることによってさらに改善することができる。この緊締支持部は、センサコラムをホール床に選択的に緊締することができる。したがって、各紡糸位置に対してセンサコラムを介した付加的な位置固定を達成することができる。
【0014】
しかしさらに、センサコラムの自由端がガイドシューを有していることによって自動操作装置のガイドを安定化する可能性も生じる。ガイドシューは、ホール床における床レール内でガイド可能である。特に自動操作装置の位置決めおよび調整のために、できるだけ誤差の少ないガイドが有利である。
【0015】
紡糸位置のうちの1つに糸群を糸掛けするために、糸群を自動操作装置により短時間に収容し、糸屑容器へと排出することが必要である。このために必要となる補助ユニットを自動操作装置において運転するために、各紡糸位置に圧縮空気伝達のためのそれぞれ1つの圧縮空気接続部を備えた複数の接続ステーションの1つが対応配置されている本発明の変化形が特に有利である。この圧縮空気接続部は、自動操作装置に配置された接続アダプタと協働する。これにより、自動操作装置は、有利には各紡糸位置において自動的に圧縮空気供給部に接続することができる。
【0016】
自動操作装置が各紡糸位置にできるだけ迅速に到達するように、ガイドユニットが懸架軌道により形成されている。この懸架軌道において自動操作装置は、搬送手段により走行可能に保持されている。
【0017】
自動操作装置が、センサコラムと一緒に、懸架軌道に保持されたキャリアに配置されている制御可能なロボットアームを有している溶融紡糸装置の有利な変化形により、ゴデットユニットのゴデットおよび巻取りユニットの巻取り箇所に糸を掛け、挿通することを高いフレキシビリティで実施することができる。ロボットアームの自由な可動性により、糸掛け時の糸群をガイドするための極めて高い自由度が達成される。
【0018】
糸群のガイドは、好適には、可動のサクションインジェクタにより行われる。このサクションインジェクタは、ロボットアームにより紡糸位置の1つのゴデットユニットおよび巻取りユニットに糸群を掛けるためにガイド可能である。サクションインジェクタを介して引き込まれた糸群は、自動操作装置の保存容器内に直接に収容されるか、または糸屑管路を介して中央の糸屑容器内に直接に供給され得る。
【0019】
本発明に係る溶融紡糸装置は、高い安全性で合成糸を全自動で製造するために特に適している。オペレータのための操作手間は、著しく減じられ、実質的に、オペレータが衝突の危険なしに実施することができるコントロール機能により規定される。
【0020】
本発明に係る溶融紡糸装置を以下に実施例につき添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る溶融紡糸装置の複数の紡糸位置の概略的な正面図である。
【
図2】
図1に示した本発明に係る溶融紡糸装置の自動操作装置の概略的な正面図である。
【
図3】
図1に示した本発明に係る溶融紡糸装置の紡糸位置の1つの概略的な側面図である。
【
図4】
図1に示した本発明に係る溶融紡糸装置の自動操作装置の概略的な側面図である。
【
図5】糸を掛けるときの紡糸位置の1つの概略的な側面図である。
【
図6】紡糸位置の1つに糸を掛けるときの本発明に係る溶融紡糸装置の別の実施例の概略的な側面図である。
【
図7】紡糸位置の1つに糸を掛けるときの本発明に係る溶融紡糸装置の別の実施例の概略図である。
【0022】
図1および
図3には、複数の紡糸位置を備えた本発明に係る溶融紡糸装置の実施例が正面図と、側面図とで図示されている。両図面のうちの一方に明確に関連付けられない限り、以下の説明は両方の図面に該当する。
【0023】
本発明に係る溶融紡糸装置の実施例は、複数の紡糸位置1.1~1.6を有している。これらの紡糸位置1.1~1.6は、相並んで列状の配置で並べられており、機械長手方向側を形成する。
図1に図示された紡糸位置の個数は単に例示的である。基本的には、このような種類の溶融紡糸装置は、同じ種類の多数の紡糸位置を含んでいる。
【0024】
図1および
図3に図示された紡糸位置1.1~1.6の構造は同一に形成されている。
図3において側面図で図示された紡糸位置1.1の例において、ユニットを下記で詳しく説明する。
【0025】
各紡糸位置1.1~1.6は、紡糸ノズルユニット2を有している。紡糸ノズルユニット2は、紡糸ビーム2.2を含んでいて、この紡糸ビーム2.2の下面は複数の紡糸ノズル2.1を支持している。これらの紡糸ノズル2.1は、紡糸ポンプ2.3に連結されている。この紡糸ポンプ2.3は、好適にはマルチポンプとして形成されていて、各紡糸ノズル2.1のために個別の溶融物流を形成する。紡糸ポンプ2.3は、溶融物流入通路2.4を介して溶融物源(詳細に図示せず)、たとえば押出し機に接続されている。
【0026】
紡糸ノズルユニット2の下側には、冷却ユニット3が配置されている。この冷却ユニット3は、この実施例では気体透過性の壁部を備えた冷却筒3.1をブローチャンバ3.3内に有している。各紡績ノズル2.1に対して、フィラメントを収容し冷却するための冷却筒3.1が設けられている。冷却筒3.1には、それぞれ糸走行方向で降下筒3.2が続いている。
【0027】
降下筒3.2の下方には、集合ユニット4が配置されている。この集合ユニット4は、紡績ノズル2.1毎に押し出されたフィラメントを1本の糸に纏めるために、複数の糸ガイド4.1を有している。この実施例では、紡糸ノズルユニット2が4本の糸を形成する。糸の本数は例示的である。したがって、このような紡糸ノズルユニット2は、紡糸位置1.1~1.6毎に32本までの糸を同時に形成することができる。
【0028】
集合ユニット4には、油剤供給ユニット5が対応配置されている。この油剤供給ユニット5により、1つの糸群8の個別の糸が湿らせられる。糸は、糸群8としてゴデットユニット6により引き出され、巻取りユニット7に供給される。この実施例では、ゴデットユニット6は駆動された2つのゴデッド6.1により構成されている。ゴデット6.1の間には、交絡ユニット6.2が配置されていて、これにより糸群8の糸を別個に交絡させることができる。
【0029】
巻取りユニット7は、糸群8の糸毎にそれぞれ1つの巻取り箇所7.5を有している。全部で4つの巻取り箇所7.5は、巻取りスピンドル7.1に沿って延びている。巻取りスピンドル7.1は、巻取りリボルバ7.2に突出するように保持されている。巻取りリボルバ7.2は、2つの巻取りスピンドル7.1を支持している。これらの巻取りスピンドル7.1は、交互に巻取り領域と交換領域とにガイドされる。各巻取り箇所7.5には、糸群8を分割しかつ分離するために、複数の変向小型ローラ7.6のうちそれぞれ1つが対応配置されている。これらの変向小型ローラ7.6は、ゴデットユニット6に直接に後置されている。糸を巻き取り、敷設してパッケージを形成するために、各巻取り箇所7.5は綾振りユニット7.3を有している。この綾振りユニット7.3は、押圧ローラ7.4と協働し、この押圧ローラ7.4は、巻取りスピンドル7.1に対して平行に配置されていて、複数のパッケージ22の表面における糸の巻取り部に接触する。
【0030】
図1および
図3には、紡糸位置1.1~1.6がその通常の運転状態で図示されている。通常の運転状態では、各紡糸位置1.1~1.6において、複数の糸から成る糸群8が押し出され、引き出され、連続的に巻き取られてパッケージ22を形成する。
【0031】
巻取りユニット7において最後まで巻き取られたパッケージ22は、好適には自動的にドッファユニットにより収容され搬出される。このような走行可能なドッファユニットは、操作通路21内で運動する。操作通路は、紡糸位置1.1~1.6の機械長手方向側に沿って平行に延びている。回収のために使用されるドッファユニットは、十分に公知であり、したがってここでは図示および説明しない。
【0032】
紡糸位置1.1~1.6をプロセス開始時およびプロセス中断時に操作することができるようにするために、紡糸位置1.1~1.6には、自動操作装置9が対応配置されている。
図1および
図3において、自動操作装置9は待機位置で図示されている。自動操作装置9は、操作通路21の上方のガイドユニット10に保持されている。ガイドユニット10は、この実施例では、懸架軌道10.1により形成されている。この懸架軌道10.1は、紡糸位置1.1~1.6の機械長手方向側に対して平行に、操作通路21の上方に延びている。したがって、自動操作装置9は、各紡糸位置1.1~1.6へと供給可能である。
【0033】
自動操作装置9を説明するために、以下では付加的に
図2および
図4を参照する。
図2には、
図1に示した紡糸ユニットにおいて図示されているような自動操作装置の正面図が拡大されて示されており、
図4には、
図3に図示されているような自動操作装置の側面図が同様に拡大されて示されている。複数の図面の1つに明確に関連付けがなされない限り、以下の説明は全ての図面に該当する。
【0034】
自動操作装置9は、1つのキャリアフレーム9.1を有している。このキャリアフレーム9.1は、懸架軌道10.1に保持されている。キャリアフレーム9.1は、走行フレーム9.5に結合されている。走行フレーム9.5は、懸架軌道10.1内でガイドされている。走行フレーム9.5には、搬送手段9.4が対応配置されている。この搬送手段9.4により、自動操作装置9は、懸架軌道10.1内で走行可能である。懸架軌道10.1は、このためには2つのガイドレール10.2および10.3を有している。このためには、搬送手段9.4は、自動制御装置9.6に連結されている。キャリアフレーム9.1の上面において概略的に図示された自動制御装置9.6は、機械制御装置(詳細に図示せず)に接続されている。
【0035】
キャリアフレーム9.1の反対の側に位置する端部には、センサコラム9.2が保持されている。このセンサコラム9.2は、操作通路21のホール床20に至るまで短い間隔で突出している。センサコラム9.2の下側の領域には、衝突センサ11.1を収容するための検出ヘッド11が形成されている。検出ヘッド11は、この実施例では丸い横断面で形成されている。衝突センサ11.1は、1つの周縁線上に分配されて配置された2つのレーザスキャナ11.2,11.3により構成されている。センサコラム9.2は、キャリアフレーム9.1に取り付けられていて、これにより操作通路21内で自動操作装置の位置に応じて往復ガイドされる。
【0036】
センサコラム9.2の自由端に設けられたレーザスキャナ11.2,11.3は、自動制御装置9.6に接続されている。各レーザスキャナ11.1,11.2は、少なくとも200°、有利には少なくとも250°の監視領域を有しているので、センサコラム9.2を取り囲む全体的な周囲が監視される。好適には連続的なレーザ信号により、周辺環境が二次元で検出される。これにより、たとえば操作通路21内のオペレータまたはドッファユニットのような障害物を早期に検出し、自動操作装置9の制御時に相応して考慮することができる。検出ヘッド11を取り囲んだ、内側の近接場と外側の近接場との間の分割が特に有利である。これにより、外側の近接場の領域において発生した障害物と、内側の近接場において発生した障害物とはそれぞれ、自動操作装置9の互いに異なる制御命令のために使用され得る。したがって、自動操作装置9に接近する可動の障害物の場合、たとえば自動操作装置9の作業工程の突然の制動・停止を回避することができる。したがって、まず、外側の近接場における障害物の検知時に、自動操作装置の作業速度を減速することができる。同時に、警告信号を形成することができ、これによりオペレータに切迫している衝突を示すことができる。障害物が内側の近接場に侵入した場合に初めて、自動操作装置9の作業工程の中断が生じる。したがって、たとえばパッケージの回収、糸掛け、紡糸ノズル保守および巻取りユニットの交換のような、紡糸位置において生じる全ての作業を起こり得る衝突の危険なしに安全に実施することができる。センサ機器が、紡糸位置の、糸ガイドの揮発性の成分による環境負荷が最小となっている領域に配置されていると特に有利である。
【0037】
センサコラム9.2の他に、キャリアフレーム9.1には、ロボットアーム9.3が保持されている。ロボットアーム9.3は、自由に突出するガイド端部を有している。このガイド端部には、サクションインジェクタ9.8がガイドされている。突出した多関節のロボットアーム9.3は、アクチュエータおよびセンサ(図示せず)により自由に運動可能であり、ロボットアーム9.3の運動行程は、自動制御装置9.6により制御される。自動操作装置9へのエネルギ供給は、好適には電流レールまたはエネルギチェーンにより行われる。
【0038】
サクションインジェクタ9.8を運転するためには、自動操作装置9は、各紡糸位置1.1~1.6において接続ステーション12と協働する。
図4には、紡糸位置1.1の接続ステーション12が図示されている。接続ステーション12の説明のために、付加的に
図5が参照される。
図5には、自動操作装置9が接続アダプタ12.3を介して接続ステーション12に接続されている状態が図示されている。
【0039】
図4および
図5から判るように、接続アダプタ12.3は、自動操作装置9のキャリアフレーム9.1に配置されている。接続アダプタ12.3は、アクチュエータ12.4に連結されている。アクチュエータ12.4は、接続アダプタ12.3を複数の接続ステーション12の1つに連結するために往復ガイドする。
図4には、自動操作装置9が待機位置に保持されていて、したがって接続ステーション12に接続していない状態が図示されている。
【0040】
図5には、接続アダプタ12.3が接続ステーション12に連結されている状態が図示されている。このためには、接続ステーション12は、圧縮空気接続部12.1を有している。この圧縮空気接続部12.1は、中央の圧縮空気管路15を介して、中央の圧縮空気源(図示せず)に接続されている。接続アダプタ12.3は、接続ステーション12に、自動操作装置に配置された圧縮空気管路13が圧縮空気接続部12.1にたとえば差込み連結部により接続されているように、連結されている。圧縮空気管路13は、サクションインジェクタ9.8に連結されているので、このサクションインジェクタ9.8は糸群を収容するために準備されている。
【0041】
サクションインジェクタ9.8に接続された糸屑管路14は、糸屑容器9.7に開口している。この糸屑容器9.7はキャリアフレーム9.1に形成されている。したがって、サクションインジェクタ9.8を介して糸掛け工程中に収容された糸群は、自動操作装置9の糸屑容器9.7内に収容される。
【0042】
しかし、基本的には、糸屑管路14が糸屑接続部を介して中央の糸屑管路に接続されるように、接続ステーション12を拡張する可能性もあり得る。
【0043】
図1の図面から判るように、各紡糸位置1.1~1.6は、複数の接続ステーション12のそれぞれ1つを有している。したがって、自動操作装置9が各紡糸位置1.1~1.6において自動的に接続アダプタ12.3を介して接続ステーション12のそれぞれ1つに接続される可能性が生じる。
【0044】
紡績位置1.1~1.6の1つにおいて糸を掛けるための操作が必要とされた場合のために、自動操作装置9は、待機位置からそれぞれの紡糸位置の保持位置へとガイドされる。このためには、自動操作装置9の自動制御装置9.6が、相応する制御命令を受け取る。センサ(図示せず)による位置決め後にアクチュエータ12.4が作動されるので、接続アダプタ12.3は、該当する紡糸位置の該当する接続ステーション12に連結される。今、自動操作装置9は、紡糸位置における糸群8の引き渡しのために準備されている。
【0045】
図5には、紡糸位置1.1の糸群8が自動操作装置9によりガイドされている状態が図示されている。糸群8は、サクションインジェクタ9.8を介して収容され、糸屑管路14を介して糸屑容器9.7内に導出される。サクションインジェクタ9.8は、ロボットアーム9.3により糸群の糸をゴデット装置6および巻取りユニット7に糸掛けし、挿通するために、操作される。この時間中に、自動操作装置の周囲が、操作通路内に突入しているセンサコラム9.2により監視される。このためには、周辺が検出ヘッド11に設けられたレーザスキャナ11.2,11.3により走査される。走査経路21内に障害物が発生するや否や、自動操作装置9において対応する変更が実施される。
【0046】
複数のレーザスキャナによる衝突センサ11.1の構成は、例示的である。基本的には、たとえば赤外線距離センサ、レーザ距離センサまたは3Dカメラシステムのような代替的なセンサシステムも、衝突を阻止するために、可能である。
【0047】
図6には、本発明に係る溶融紡糸装置の別の実施例が自動操作装置9の使用時の側面図で概略的に図示されている。この実施例は、
図1および
図3に示した上述の実施例とほぼ同一であるので、ここでは差異のみを説明し、その他の点については上述の説明が参照される。
【0048】
図6に図示された実施例では、自動操作装置9のセンサコラム9.2の自由端に、緊締支持部17が形成されている。緊締支持部17は、可動のプランジャ17.1と、緊締アクチュエータ17.2を有している。このプランジャ17.1は、センサコラム9.2の端部に配置されていて、緊締アクチュエータ17.2により走出させられて、ホール床20に対して緊締させられる。したがって、自動操作装置9を付加的にセンサコラム9.2により紡糸位置1.1に位置固定する可能性が生じる。センサコラム9.2は、緊締支持部17によりキャリアフレーム9.1とホール床20との間で緊締されている。
【0049】
オペレータの作業高さにおいて、センサコラム9.2は、操作パネル16を有している。この操作パネル16は、自動操作装置9の自動制御装置9.6に接続されている。操作パネル16は、1つまたは複数の制御ボタンを含んでいるので、オペレータは、自動操作装置の作業順序に介入することができる。
【0050】
代替的には、センサコラム9.2に緊急停止スイッチのみが設置されている可能性も生じる。したがって、自動制御装置9.6に接続されている緊急停止スイッチは、たとえばサクションインジェクタからの糸の損失時のような問題の発生時にのみ操作される。
【0051】
図7には、本発明に係る溶融紡糸装置の別の代替的な構成が図示されている。この代替的な構成も、自動操作装置9のセンサコラム9.2の構成によってのみ異なっている。
図7に図示した実施例では、自動操作装置9のセンサコラム9.2は、自由端において、ガイドシュー18を有している。ガイドシュー18は、検出ヘッド11の下側に形成されていて、ホール床20内に導入された床レール19内に突入している。床レール19は、懸架軌道10に対して平行に延びているので、自動操作装置9はセンサコラム9.2を介した付加的なガイドを得る。したがって、1つの紡糸位置における自動操作装置9の出来るだけ正確な位置決めおよび調整が可能である。
【0052】
図7に図示された実施例は、その他の点では上述の実施例と同一であるので、それらの箇所についてさらに説明しない。
【0053】
本発明に係る溶融紡糸装置の上述の図面に図示された実施例は、自動操作装置9の構成において、かつ溶融紡糸装置のユニットの構成において例示的である。したがって、紡糸位置において糸を処理するために別のユニットが必要とされ得る。同様に、ゴデットユニットは、糸を延伸するための複数のゴデットを有していてよい。