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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/08 20100101AFI20220920BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20220920BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20220920BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20220920BHJP
   F01N 13/20 20100101ALI20220920BHJP
【FI】
F01N13/08 Z
B60K13/04 B
B60K13/04 Z
F01N3/08 B
F01N3/28 301V
F01N13/20 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020088104
(22)【出願日】2020-05-20
(62)【分割の表示】P 2017069277の分割
【原出願日】2017-03-30
(65)【公開番号】P2020148203
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2020-05-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】野村 和生
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】河端 賢
【審判官】鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-203753号(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0331658(US,A1)
【文献】特開2002-096763(JP,A)
【文献】特開2016-185128(JP,A)
【文献】特開2013-151185(JP,A)
【文献】国際公開第2010/069806(WO,A1)
【文献】特開2014-190321(JP,A)
【文献】実開昭58-102707(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00-13/20
B60K 13/04
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に搭載したエンジンと、前記エンジンの排気ガスを浄化する後処理装置とを備え、前記後処理装置を経由した排気ガスを外部に放出するとともに、前記走行機体上の操縦部前方に、排気ガスが下から上に向かうように、前記後処理装置を縦向きに配置したトラクタにおいて、
前記後処理装置の外側を覆う外カバー体を、少なくとも一部は前輪側かつ前車輪のフェンダー側である一方側に膨らんだ状態で設け、
前記外カバー体の前記膨らんだ側は、少なくとも排気センサを覆っているとともに、
前記後処理装置が縦向きに配置されている側とは機体の反対側の位置において、キャビンのステップと前車輪フェンダーの間に、尿素水タンクが配置されているとともに、
前記反対側の位置において、
燃料タンク部に前記尿素水タンクを収容するタンク用凹所を形成するとともに、前記燃料タンク部の燃料給油と前記尿素水タンクの尿素水補給を前記ステップと前記前車輪フェンダーとの間に設け
前記尿素水タンクの前面には、前記前車輪フェンダーの外周形状に沿うように湾曲する凹み部が形成されている、ことを特徴とする、トラクタ。
【請求項2】
前記燃料給油は、前記尿素水補給よりも高い位置で、かつ、前記前車輪フェンダー側の位置に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
前記排気センサから延びるハーネスを前記外カバー体の内面側に支持させているとともに、
前記外カバー体の上下中途部に、前記ハーネスを挿通させる挿通穴を形成していることを特徴とする、請求項1に記載のトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、農作業用のトラクタに係り、より詳しくは、エンジンの排気ガス中に含まれる粒子状物質や窒素酸化物等を除去する後処理装置を備えたトラクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンの排気経路中に、後処理装置(排気ガス浄化装置と言ってもよい)として、ディーゼルパティキュレートフィルタを内蔵したケース(以下、DPFケースという)と、選択還元型触媒を内蔵したケース(以下、SCRケースという)とを設け、ディーゼルエンジンから排出した排気ガスを両ケースに導入して浄化処理する技術が知られている(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
先行技術の構成では、走行機体上の操縦部前方に、排気ガスが下から上に向かうように、SCRケースを縦向きに配置している。そして、SCRケースの上面側に縦長のテールパイプを連結している。テールパイプ上端側の排気出口から、SCRケースを経由した排気ガスが外部に放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-203753号公報
【文献】米国特許出願公開第2011/283687号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、後処理装置に設けたセンサに雨水や圃場からの泥水等が付着するのを防止することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、走行機体に搭載したエンジンと、前記エンジンの排気ガスを浄化する後処理装置とを備え、前記後処理装置を経由した排気ガスを外部に放出するとともに、前記走行機体上の操縦部前方に、排気ガスが下から上に向かうように、前記後処理装置を縦向きに配置したトラクタにおいて、前記後処理装置の外側を覆う外カバー体を、一方側に膨らんだ状態で設けたというものである。
【0008】
本願発明のトラクタにおいて、前記後処理装置の上方には、テールパイプと、前記テールパイプの外周を覆う遮熱用のテール外カバーを設けたようにしてもよい。
【0009】
本願発明のトラクタにおいて、前記外カバー体の前記膨らんだ側は、少なくとも排気センサを覆っているようにしてもよい。
【0010】
本願発明のトラクタにおいて、前記排気センサから延びるハーネスを前記外カバー体の内面側に支持させているようにしてもよい。
【0011】
本願発明のトラクタにおいて、前記外カバー体の上下中途部に、前記ハーネスを挿通させる挿通穴を形成しているようにしてもよい。
【0012】
本願発明のトラクタにおいて、前記後処理装置が縦向きに配置されている側とは機体の反対側において、キャビンのステップと前車輪のフェンダーの間に、尿素水タンクが配置されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によると、走行機体に搭載したエンジンと、前記エンジンの排気ガスを浄化する後処理装置とを備え、前記後処理装置を経由した排気ガスを外部に放出するとともに、前記走行機体上の操縦部前方に、排気ガスが下から上に向かうように、前記後処理装置を縦向きに配置したトラクタにおいて、前記後処理装置の外側を覆う外カバー体を、一方側に膨らんだ状態で設けたから、雨水や圃場からの泥水等がNOxセンサ及び温度センサの基部に付着するのを確実に防止できる。雨水や圃場からの泥水等に起因してNOxセンサ及び温度センサが誤作動するおそれを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】トラクタの左側面図である。
図2】トラクタの右側面図である。
図3】トラクタの平面図である。
図4】トラクタの底面図である。
図5】トラクタにおける走行機体の平面図である。
図6】トラクタの内部構造を示す正面図である。
図7】尿素水配管系統を示す斜視図である。
図8】キャビンの支持構造を示す背面図である。
図9】左側タンク及び尿素水タンクの配置構造を示す正面図である。
図10】左側タンクの配置構造を示す左側面図である。
図11】尿素水タンクの配置構造を示す平面図である。
図12】尿素水タンクの取付け構造を左斜め後方から見た斜視図である。
図13】尿素水タンクの前面形状を示す左斜め前方から見た斜視図である。
図14】第2ケースと外カバー体との関係を示す側面断面図である。
図15】トラクタの内部構造を示す拡大正面図である。
図16】外カバー体の内部構造の第1別例を示す側面断面図である。
図17】外カバー体の内部構造の第2別例を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1図6を参照しながら、実施形態におけるトラクタ1の構造について説明する。実施形態におけるトラクタ1の走行機体2は、走行部としての左右一対の前車輪3と同じく左右一対の後車輪4とで支持されている。走行機体2の前部に搭載した動力源としてのコモンレール式のディーゼルエンジン5(以下、単にエンジンという)で後車輪4及び前車輪3を駆動することによって、トラクタ1が前後進走行するように構成されている。エンジン5はボンネット6にて覆われている。走行機体2の上面にはキャビン7(操縦部ともいえる)が設置され、該キャビン7の内部には、操縦座席8と、かじ取りによって前車輪3の操向方向を左右に動かすようにした操縦ハンドル9とが配置されている。キャビン7の左右下部には、オペレータが乗降するステップ10が左右に振り分けて設けられている。キャビン7の底部より下側には、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11が設けられている。
【0016】
走行機体2は、前バンパ12と、前車軸ケース13を有するエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部に着脱自在に固定した左右の機体フレーム15とを備えている。前車軸ケース13の左右両端側から外向きに、前車軸16を回転可能に突出させている。前車軸ケース13の左右両端側に前車軸16を介して前車輪3を取り付けている。機体フレーム15の後部には、エンジン5からの回転動力を適宜変速して前後四輪3,3,4,4に伝達するためのミッションケース17を連結している。左右の前車輪3の上方は左右のフロントフェンダー26によって覆われている。前車軸ケース13上面のうち左右各端部に左右のフロントフェンダー26を支持している。
【0017】
左右の機体フレーム15及びミッションケース17の下面側には、左右外向きに張り出した底面視矩形枠板状のタンクフレーム18をボルト締結している。実施形態の燃料タンク11は左右2つに分かれている。タンクフレーム18の左右張り出し部の上面側に、左右の燃料タンク11を振り分けて搭載している。すなわち、左右一対の燃料タンク11を走行機体2の前後中途部の左右に振り分けて配置している。タンクフレーム18は右側に延長しており、タンクフレーム18右側の延長部分にはバッテリ50を配置している。また、タンクフレーム18右側の延長部分に、ステップ10の1つを固定させている。ミッションケース17の左右外側面には、左右の後車軸ケース19を左右外向きに突出するように装着している。左右の後車軸ケース19には左右の後車軸20を回転可能に内挿している。ミッションケース17に後車軸20を介して後車輪4を取り付けている。左右の後車輪4の上方は左右のリヤフェンダー21によって覆われている。
【0018】
ミッションケース17の後部上面には、ロータリ耕耘機等の作業機(図示省略)を昇降動させる油圧式昇降機構22を着脱可能に取り付けている。作業機は、左右一対のロワーリンク23及びトップリンク24からなる3点リンク機構を介してミッションケース17の後部に連結される。ミッションケース17の後側面には、作業機にPTO駆動力を伝達するPTO軸25を後ろ向きに突設している。
【0019】
図5図8に示すように、エンジン5の排気経路中には、後処理装置として、第1ケース31(DPFケースと言ってもよい)と、第2ケース32(SCRケースと言ってもよい)とを備えている。後処理装置は、エンジン5の排気ガス中に含まれる粒子状物質(すす等)や窒素酸化物(NOx)等を除去し、浄化後の排気ガスを外部へ排出するものである。実施形態において、第1ケース31内には、酸化触媒及びスートフィルタ(図示省略)を収容している。第2ケース32内には、尿素選択触媒還元用のSCR触媒及び酸化触媒(図示省略)を収容している。第1ケース31は、クランク軸方向(実施形態では前後方向)に沿う姿勢でエンジン5上部に搭載している。第2ケース32は、排気ガスが下から上に向かう縦向き姿勢でキャビン7前部の右下側に配置している。
【0020】
第1ケース31の排気出口側には前後長手の浄化出口管33の排気入口側を連結している。浄化出口管33の長手中途部には振動吸収用の蛇腹管部34を設けている。浄化出口管33の排気出口側には尿素混合管35の排気入口側(上端側)を連結している。尿素混合管35は、キャビン7の前方右側において、下方から上方に向けて延び且つキャビン7の下側でエンジン5から遠ざかる方向に屈曲した略L字形状になっている。尿素混合管35の排気出口側(下端側)は第2ケース32の左側部下側に連結している。浄化出口管33の排気出口側と尿素混合管35の排気入口側との連結箇所が、フランジを介してエンジン5に連結している。浄化出口管33の排気出口側と尿素混合管35の排気入口側とをエンジン5で支持している。第2ケース32の下面側は、ケース支持バー48を介して後述する右前部支持台96に連結している。第1ケース31を経由した排気ガスは、浄化出口管33及び尿素混合管35を介して第2ケース32内に導入される。
【0021】
尿素混合管35の上端側には、尿素水噴射部36を取り付けている。後述する尿素水タンク51(還元剤タンク)の尿素水(還元剤)が尿素水噴射部36から尿素混合管35内に供給され、第1ケース31から第2ケース32に至る排気ガス中に、尿素水が加水分解してアンモニアとして混合されるように構成している。なお、尿素水に代えて、他の還元剤、例えば無水のアンモニアやアンモニア水を用いることも可能である。
【0022】
さて、キャビン7を構成する箱枠状のキャビンフレーム37の前部右側にはアシストバー38を設けている。アシストバー38には、排気ガスを外部に放出する縦長のテールパイプ39の複数箇所を連結している。アシストバー38によってテールパイプ39を支持している。第2ケース32の排気出口側(上面側)には、テールパイプ39の排気入口側を連通接続している。第1ケース31と第2ケース32によってエンジン5の排気ガスが浄化され、テールパイプ39から機外に放出される。
【0023】
上記の構成において、まず、第1ケース31内の酸化触媒及びスートフィルタによって、エンジン5からの排気ガス中にある粒子状物質(PM)、一酸化炭素(CO)並びに炭化水素(HC)が低減される。次いで、尿素混合管35の内部では、第1ケース31経由の排気ガスに尿素水噴射部36からの尿素水が混合され、第2ケース32内のSCR触媒及び酸化触媒によって、尿素水がアンモニアとして混合された排気ガス中の窒素酸化物(NOx)が低減される。そして、第2ケース32を経由した排気ガスがテールパイプ39から機外に排出される。
【0024】
図4及び図5に示すように、燃料タンク11は、キャビン7下側で左右一対のステップ10及び後車輪4よりも内側(機体フレーム15側)に配置した左側タンク11L及び右側タンク11Rを備えている。左側タンク11L及び右側タンク11Rは、一対の機体フレーム15を挟むように左右に振り分けて配置されている。すなわち、左側タンク11Lは、前方部分が左側機体フレーム15と左側ステップ10の間に配置される一方、後方部分が左側機体フレーム15と左側後車輪4の間に配置される。同様に、右側タンク11Rは、前方部分が右側機体フレーム15と右側ステップ10の間に配置される一方、後方部分が右側機体フレーム15と右側後車輪4の間に配置される。左側タンク11L及び右側タンク11Rは互いに容量が異なるものである。左右のタンク11L,11R同士は互いの左右内向きの側面下部を燃料連通管(図示省略)で連通させている。容量の大きい左側タンク11Lは、キャビン7前方で左側ステップ10よりも前方に突出した形状をなしている。すなわち、左側タンク11Lは、左側ステップ10の右側及び前側を取り囲むような形状になっている。
【0025】
燃料タンク11は、機体フレーム15下側で左右外向きに張り出したタンクフレーム18上に載置されており、バンド40で固定されている。タンクフレーム18は、左右の機体フレーム15に吊り下げ固定されている前側横桟フレーム41と、ミッションケース17下面に固定された後側横桟フレーム42と、横桟フレーム41,42それぞれの両端側で固定される左右のタンク搭載用プレート43とによって、底面視矩形枠板状に形成されている。左右のタンク搭載用プレート43はそれぞれ、左側タンク11L及び右側タンク11Rそれぞれの底面形状と略同一形状を有していて、その上面に載置した左側タンク11L及び右側タンク11Rそれぞれの前後2カ所をバンド40で結束固定している。
【0026】
このように、タンクフレーム18は、左右の機体フレーム15下側で左右に延設させた前後一対の横桟フレーム41,42と、前後横桟フレーム41,42に左右両側で前後に架設させた左右一対のタンク搭載用プレート43とで構成している。そして、左右タンク搭載用プレート43上に、それぞれ対応する左右の燃料タンク11L,11Rを載置固定させている。
【0027】
図1図5に示すように、キャビン7の左右下部にはオペレータが乗降するステップ10を設けている。図8に示すように、左側ステップ10は前側横桟フレーム41の左端側に立設している。左側ステップ10の上端側には左前部支持台96を取り付けている。実施形態の左側ステップ10は、上下二段の踏板部材44,45と、これら踏板部材44,45に連結した前後の側板部材46とで構成している。下段の踏板部材45を前側横桟フレーム41の左端側に締結している。前後の側板部材46の上端側に左前部支持台96を締結している。左前部支持台96と左側ステップ10と前側横桟フレーム41とで囲まれた空間内に、左側タンク11Lの前寄り部位が嵌っている。一方、前側横桟フレーム41の右端側には、右側ステップ10を構成する下段の踏板部材45を締結している。右側ステップ10は、前述した下段の踏板部材45と、キャビンフレーム37の右下部に連結した上段の踏板部材44とからなっている。
【0028】
前側横桟フレーム41の右寄り部位には縦支柱47を立設している。縦支柱47の上端側には右前部支持台96を取り付けている。右前部支持台96と縦支柱47と前側横桟フレーム41とで囲まれた空間内に、右側タンク11Rの前部側が嵌っている。左右の前部支持台96の上面側には、防振ゴム体98を介してキャビン7の前底部を防振支持している。右前部支持台96の前面側には、左右横長のケース支持バー48を締結している。ケース支持バー48右外側上面に、第2ケース32の下面側を締結している。従って、第2ケース32は、ケース支持バー48を介して右前部支持台96で支持している。なお、左右方向に水平に延設させる左右の後車軸ケース19上面のうち左右幅中間部に後部支持台97を締結している。左右の後部支持台97の上面側に、防振ゴム体99を介してキャビン7の後底部を防振支持している。従って、走行機体2は複数の防振ゴム体98,99を介してキャビン7を防振支持している。
【0029】
縦支柱47の上下中途部にはバッテリ台座49を取り付けている。バッテリ台座49上にバッテリ50を搭載している。実施形態では、第2ケース32の下方にバッテリ50が位置し、バッテリ50よりも右外側に、右側ステップ10における下段の踏板部材45が位置している。
【0030】
図9図11に示すように、左側タンク11Lの前下部に、尿素水タンク51(還元剤タンク)を収容するタンク用凹所52を形成している。尿素水タンク51は尿素水(選択触媒還元用尿素水溶液)を収容する箱状のものである。タンク用凹所52に尿素水タンク51を収容した状態では、左側タンク11Lの前上部11LFと尿素水タンク51とが上下に並ぶ位置関係になっている。このため、トラクタ1前後長を長くしたりキャビン7(操縦部)やステップ10の大きさ等を犠牲にしたりしなくても、尿素水タンク51の配置スペースの確保と、左側タンク11L容量、ひいては燃料タンク11全体の容量確保とを両立できる。
【0031】
タンク用凹所52付きの左側タンク11Lの方に延びる補助フレーム53を走行機体2に設けている。この場合、左側エンジンフレーム14に補助フレーム53の一端側を締結している。補助フレーム53の他端側には平板状のタンク台座54を固定している。タンクフレーム18を構成する前側横桟フレーム41の左端側にタンク台座54を締結している。
【0032】
尿素水タンク51の底面と後面とには、インサートナット(図示省略)を埋め込んでいる。タンク用凹所52に尿素水タンク51を収容した状態で、尿素水タンク51の底面とタンク台座54とをボルト及びインサートナットで締結し、尿素水タンク51の後面と左側ステップ10の前側板部材46とをボルト及びインサートナットで締結している(図4及び図12参照)。左側ステップ10と補助フレーム53とによって、尿素水タンク51を安定的に固定支持している。
【0033】
左側タンク11Lの前上部11LFの上面には給油筒55を上向きに突設している。尿素水タンク51の左外側面には補給筒56を斜め上方外向きに突設している。このように、給油筒55と補給筒56との突出方向を互いに異ならせているので、燃料の補給と尿素水の補給とを走行機体2の同じ側(左側)から行えるものでありながら、燃料と尿素水との入り間違いをし難くなる。特に実施形態では、補給頻度の高い燃料の給油筒55を尿素水の補給筒56よりも上側に位置させるから、尿素水タンク51の補給筒56に間違って燃料を供給するおそれが格段に少なくなる。
【0034】
図13に示すように、尿素水タンク51の前面には、左側前車輪3(左側フロントフェンダー26を含む)との干渉を回避する凹み部57を形成している。実施形態の凹み部57は、左側前車輪3(左側フロントフェンダー26を含む)の外周形状に沿うような前向き凹状に凹んでいる。尿素水タンク51前面の凹み部57の存在によって、前車輪3,3を左右に操舵したときに左側前車輪3が尿素水タンク51に干渉するおそれがない。尿素水タンク51を左側前車輪3にできるだけ近接させて配置することが可能になり、トラクタ1前後長等のコンパクト化を図れる。
【0035】
図7及び図8に示すように、エンジン5(冷却水ポンプ)と尿素水噴射部36とは、冷却水送り管101及び冷却水戻し管102によって連通している。エンジン5(冷却水ポンプ)には冷却水送り管101及び冷却水戻し管102の一端側を接続し、尿素水噴射部36には冷却水送り管101及び冷却水戻し管102の他端側を接続している。冷却水送り管101と冷却水戻し管102とは尿素水噴射部36内でつながっている。エンジン5で加熱された冷却水が冷却水送り管101から冷却水戻し管102に送られて尿素水噴射部36内を通過することによって、尿素水噴射部36内での尿素水の凍結が防止される。尿素水噴射部36内を通過した冷却水は、冷却水戻し管102を介してエンジン5(冷却水ポンプ)に戻される。
【0036】
冷却水送り管101の中途部からは冷却水供給管103を分岐させている。冷却水供給管103は、尿素水タンク51に装着したタンクセンサ部58に接続している。この場合、尿素水タンク51の上面側に上向き凹状の窪み部51aを形成している。尿素水タンク51上面側の上向き突部51bは、L字状の緩衝材59を介して、左側タンク11Lにおける前上部11LFの底面に当接している。尿素水タンク51の窪み部51aに形成した上面開口に、前述したタンクセンサ部58を着脱可能に装着している。タンクセンサ部58は上面開口の蓋としても機能している。タンクセンサ部58には、冷却水供給管103、冷却水回収管104、尿素水送り管105及び尿素水戻し管106等を接続している。
【0037】
冷却水供給管103と冷却水回収管104とは尿素水タンク51内でつながっている。冷却水回収管104はエンジン5(冷却水ポンプ)に接続している。エンジン5で加熱された冷却水が冷却水供給管103から冷却水回収管104に送られて尿素水タンク51内を通過することによって、尿素水タンク51内での尿素水の凍結が防止される。尿素水タンク51内を通過した冷却水は、冷却水回収管104を介してエンジン5(冷却水ポンプ)に戻される。
【0038】
一端側をタンクセンサ部58に接続した尿素水送り管105及び尿素水戻し管106の他端側は、尿素水タンク51中の尿素水を尿素混合管35の尿素水噴射部36に供給する尿素水供給装置107(サプライモジュール、還元剤供給装置)に接続している。尿素水供給装置107は、尿素水噴射管108を介して尿素水噴射部36に接続している。尿素水供給装置107は、尿素水送り管105を通じて尿素水タンク51内の尿素水を吸い上げ、尿素水噴射管108を通じて尿素水噴射部36に尿素水を供給して、尿素混合管35内に尿素水を噴霧する。余剰の尿素水は、尿素水戻り管106を通じて尿素水タンク51内に戻される。
【0039】
図9図11に示すように、走行機体2と尿素水タンク51との間に、尿素水供給装置107を配置している。詳細な図示は省略するが、尿素水供給装置107は、尿素水タンク51内の尿素水を圧送する尿素水ポンプと、尿素水ポンプを駆動する駆動モータとを備えている。尿素水供給装置107が尿素水タンク51内の尿素水を尿素混合管35の尿素水噴射部36に供給することによって、尿素水噴射部36から尿素混合管35内に尿素水が噴霧される。この場合、左側機体フレーム15と尿素水タンク51との間で且つタンク台座54上に、尿素水供給装置107を配置している。走行機体2(左側機体フレーム15)と尿素水タンク51との間というデッドスペースを尿素水供給装置107の配置空間として有効利用できる。尿素水タンク51から尿素水供給装置107を介して尿素混合管35の尿素水噴射部36に、尿素水配管系統を短い距離で接続できる。
【0040】
図10及び図11に示すように、尿素水タンク51のタンクセンサ部58には、尿素水タンク51内の圧抜きのためのブリーザパイプ109の一端側を接続している。ブリーザパイプ109の他端側は二股に分岐している。分岐した一方のパイプ部分109aは、上向きに延びて開口している。分岐した他方のパイプ部分109bは、走行機体2の左右中央側(前後車輪3,4よりも左右内側)で且つ下向きに延びて開口している。このため、尿素水供給時にはブリーザパイプ109の上向きのパイプ部分109aから外気を導入して、尿素水タンク51内の圧力が一定に保持される。例えばエンジン5振動や圃場の凹凸で尿素水タンク51が揺れる等して、尿素水がブリーザパイプ109内に入り込んだとしても、尿素水はブリーザパイプ109の下向きのパイプ部分109bから零れ落ちることになり、尿素の付着析出等で上向きのパイプ部分109aを閉塞するおそれを回避できる。ブリーザパイプ109を介しての外気の円滑な導入を確実に行える。
【0041】
なお、タンク用凹所52、尿素水タンク51及び第2ケース32の位置関係が実施形態の例に限らず、左右逆に入れ替わってもよいことは言うまでもない。この場合、バッテリ50、左右の燃料タンク11、ステップ10等の位置関係も左右逆に入れ替わることになる。
【0042】
図2図6及び図8等に示すように、後処理装置の一例である第2ケース32は前述した通り、排気ガスが下から上に向かう縦向き姿勢でキャビン7前部の右下側に配置している。第2ケース32の左側部下側に尿素混合管35の排気出口側(下端側)を接続している。詳細な図示は省略するが、第2ケース32内には、尿素選択触媒還元用のSCR触媒及び酸化触媒を収容している。図14に示すように、第2ケース32の排気出口側である上面側にはSCR出口管111を上向きに突設している。
【0043】
第2ケース32の上方には縦長のテールパイプ39を配置している。テールパイプ39の排気入口側の内径をSCR出口管111の外径よりも大きく設定している。テールパイプ39の排気入口側にSCR出口管111を差し込んで連通させている。すなわち、テールパイプ39とSCR出口管111との連通箇所は二重管構造になっている。このため、SCR出口管111からテールパイプ39に第2ケース32経由後の排気ガスを流入させると共に、SCR出口管111とテールパイプ39との間の隙間から外気を取り込んで、テールパイプ39内を通過する排気ガスを冷却することが可能になっている。
【0044】
テールパイプ39の外周側には遮熱用のテール外カバー112を取り付けている。テールパイプ39の外周側をテール外カバー112で覆っている。第2ケース32の外周側には略筒状の外カバー体113を取り付けている。第2ケース32の外周側を外カバー体113で覆っている。外カバー体113の左側部下側には、尿素混合管35の排気出口側(下端側)を挿通させる側面開口穴114を形成している。外カバー体113の上面側には、テールパイプ39の排気入口側の外径よりも大きい上面開口穴115を形成している。
【0045】
このように、テールパイプ39とSCR出口管111との連通箇所を二重管構造にして、第2ケース32の外周側を外カバー体113で覆うようにすると、テールパイプ39内で排気ガスが冷えた場合に生ずる水分やテールパイプ39内に入り込んだ雨水等は、テールパイプ39の内側を伝い落ちてから、外カバー体113内にある第2ケース32外面側を伝い落ちることになり、第2ケース32内部に流れ込むおそれがなくなる。従って、水分や雨水等に起因して第2ケース32の排気ガス浄化性能が低下するのを防止できる。
【0046】
第2ケース32には、第2ケース32の内部状態を検出する排気センサとして、第2ケース32内のSCR触媒及び酸化触媒を通過した排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を検出するNOxセンサ116と、第2ケース32の内部温度を検出する温度センサ117とを装着している。NOxセンサ116は第2ケース32の前側上部に取り付けている。NOxセンサ116の検出部は第2ケース32内に差し込んでいる。NOxセンサ116の基部は第2ケース32の前上部外側に露出させている。温度センサ117は第2ケース32の前側下部に取り付けている。温度センサ117の検出部は第2ケース32内に差し込んでいる。温度センサ117の基部は第2ケース32の前下部外側に露出させている。
【0047】
外カバー体113は、NOxセンサ116及び温度センサ117の基部ごと第2ケース32の外周側を覆っている。実施形態では、外カバー体113の前部に、前向きに突き出た縦長の膨出部118を形成している。膨出部118の内部側に、NOxセンサ116及び温度センサ117の基部を位置させている。膨出部118付きの外カバー体113の存在によって、雨水や圃場からの泥水等がNOxセンサ116及び温度センサ117の基部に付着するのを確実に防止できる。雨水や圃場からの泥水等に起因してNOxセンサ116及び温度センサ117が誤作動するおそれを防止できる。
【0048】
なお、膨出部118は、外カバー体113の上端側から上下中途部まで縦長に延びていて、外カバー体113の下端側までは延長していない。膨出部118は、外カバー体113の縦方向長さに対して下部側を切り欠いて短くしたような形状になっている。このように切り欠いた部分があるため、前車輪3,3を左右に操舵したときに、右側前車輪3(右側フロントフェンダー26を含む)が外カバー体113(膨出部118)の干渉するのを回避している。
【0049】
外カバー体113の内面側には、排気センサとしてのNOxセンサ116の基部から延びるNOxセンサハーネス119を支持させている。実施形態では、膨出部118の内面側に複数のハーネスクリップ120を縦並びに設け、各ハーネスクリップ120の環状部にNOxセンサハーネス119を挿通させている。このため、外カバー体113内にある第2ケース32外面側を伝い落ちる水分や雨水等がNOxセンサハーネス119に直接付着するおそれを抑制でき、NOxセンサハーネス119を保護できる。
【0050】
外カバー体113の上下中途部には、NOxセンサハーネス119及び温度センサ117の基部から延びる温度センサハーネス121を挿通させる挿通穴122を形成している。実施形態では、外カバー体113の前部下寄り箇所に挿通穴122を形成している。挿通穴122は、キャビンフレーム37の前部下側や右前部支持台96の近傍に位置している。このため、挿通穴122から引き出したNOxセンサハーネス119及び温度センサハーネス121を、キャビンフレーム37の前部下側や右前部支持台96に沿わせて取り回すことができ、NOxセンサハーネス119及び温度センサハーネス121を取り回しし易く、美感的にも良好である。
【0051】
図14に示すように、第2ケース32の下面側は、右前部支持台96に連結したケース支持バー48で支持している。第2ケース32の外周下部側には複数の取付け板32aを溶接等で固定している。各取付け板32aとケース支持バー48とは側部支持プレート48aを介して連結している。側部支持プレート48aの上端側を第2ケース32側の取付け板32aにボルト締結すると共に、側部支持プレート48aの下端側をケース支持バー48にボルト締結している。
【0052】
なお、図16に示す別例のように、第2ケース32と外カバー体113との間で且つNOxセンサ116の上方に、上部遮蔽板123を設けたりしてもよいし、これに合わせて、図17に示す別例のように、第2ケース32と外カバー体113との間で且つNOxセンサ116及び温度センサ117の側方に、側部遮蔽板124を設けたりしてもよい。これらのように構成すると、上部遮蔽板123や側部遮蔽板124の存在によって、NOxセンサ116、温度センサ117並びにこれらのハーネス119,121まで取り囲むことができ、外カバー体113内にある第2ケース32外面側を伝い落ちる水分や雨水等がNOxセンサ116、温度センサ117並びにこれらのハーネス119,121に付着するおそれを確実に防止できる。
【0053】
本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 トラクタ
2 走行機体
5 ディーゼルエンジン
7 キャビン
10 ステップ
11 燃料タンク
11L 左側タンク
11LF 左側タンクの前上部
11R 右側タンク
18 タンクフレーム
31 第1ケース
32 第2ケース
35 尿素混合管
36 尿素水噴射部
39 テールパイプ
51 尿素水タンク
52 タンク用凹所
55 給油筒
56 補給筒
57 凹み部
58 タンクセンサ部
107 尿素水供給装置
111 SCR出口管
113 外カバー体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17