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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】人工的に活性化した毒性ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/435 20060101AFI20220920BHJP
   C07K 1/02 20060101ALI20220920BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20220920BHJP
   A01N 37/46 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
C07K14/435 ZNA
C07K1/02
A01P7/04
A01N37/46
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020128556
(22)【出願日】2020-07-29
(62)【分割の表示】P 2016560804の分割
【原出願日】2015-04-03
(65)【公開番号】P2020180160
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】61/975,147
(32)【優先日】2014-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511082126
【氏名又は名称】ベスタロン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケネディー ロバート エム
(72)【発明者】
【氏名】バオ リン
(72)【発明者】
【氏名】カールソン アルバー アール
(72)【発明者】
【氏名】フォウン キャサリン エル
(72)【発明者】
【氏名】ハーゼ アレキサンドラ エム
(72)【発明者】
【氏名】ステインバーグ ブルース エイ
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-504623(JP,A)
【文献】特表2008-518624(JP,A)
【文献】特表平11-505517(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102038006(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~171のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する毒性ペプチドのペプチドラクトン形態をヒドラジンと混合することを含む、ペプチドヒドラジドの作製方法であって、
前記ペプチドラクトン形態は、前記ペプチドラクトン形態からペプチドヒドラジド形態に変換される、ペプチドヒドラジドの作製方法。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドヒドラジドの作製方法であって、
以下の
a)前記ペプチドラクトン形態を水と混合して、ペプチドラクトン水溶液を形成すること;
b)ヒドラジン一水和物を前記ペプチドラクトン水溶液に加えること;および
c)前記ヒドラジン一水和物と前記ペプチドラクトン水溶液を撹拌して、ペプチドヒドラジンを形成すること
の工程に従って、前記ペプチドラクトン形態が前記ペプチドヒドラジド形態に変換される、ペプチドヒドラジドの作製方法。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチドヒドラジドの作製方法であって、
前記ペプチドラクトン形態が、以下のプロセスを介してペプチド酸形態から変換される、
a)約10%未満の水を含む水溶液または水性エマルション中で前記ペプチド酸形態を調製すること;および
b)圧力ありもしくは圧力なしで、または蒸気ありもしくは蒸気なしで、所望の量の前記ペプチド酸形態が前記ペプチドラクトン形態に変換されるまで前記ペプチド酸形態を所望の温度に加熱すること;を含み、
ここで、前記所望の温度は、約10℃から約500℃であり、前記圧力は、ほぼ大気圧であるか、または大気圧より約10psiから約40psi高い、
ペプチドヒドラジドの作製方法。
【請求項4】
請求項に記載のペプチドヒドラジドの作製方法であって、
前記ペプチド酸形態を前記ペプチドラクトン形態に変換するプロセスは、共有結合している2H+O分子の前記ペプチドラクトン形態からの除去をもたらす、ペプチドヒドラジドの作製方法。
【請求項5】
請求項4に記載のペプチドヒドラジドの作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号1~102、または117~140に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラジドの作製方法。
【請求項6】
請求項5に記載のペプチドヒドラジドの作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号119または配列番号37に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラジドの作製方法。
【請求項7】
請求項6に記載のペプチドヒドラジドの作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号119または配列番号37に示されるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラジドの作製方法。
【請求項8】
配列番号1~171のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する毒性ペプチドのペプチドヒドラジド形態のペプチドヒドラゾン(II)への以下の
a)前記ペプチドヒドラジド形態を水とエタノール中のヘキサナールと混合して、ヒドラゾン(II)混合物を作製すること;
b)前記ヒドラゾン(II)混合物をヘキサナール、酢酸、およびエタノールの溶液で処理すること;および
c)前記ヒドラゾン(II)混合物を、加熱してまたは加熱せずにインキュベートすること
の工程を含む変換を含む、ペプチドヒドラゾン(II)の作製方法。
【請求項9】
請求項8に記載のペプチドヒドラゾン(II)の作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号1~102、または117~140に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラゾン(II)の作製方法。
【請求項10】
請求項9に記載のペプチドヒドラゾン(II)の作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号119または配列番号37に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラゾン(II)の作製方法。
【請求項11】
請求項10に記載のペプチドヒドラゾン(II)の作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号119または配列番号37に示されるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラゾン(II)の作製方法。
【請求項12】
配列番号1~171のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する毒性ペプチドのペプチドヒドラジド形態のペプチドヒドラゾン(III)への以下の
a)ペプチドヒドラジド形態の昆虫捕食者のペプチドを複合グリコール溶液と水中の酸と混合して、ヒドラゾン(III)混合物を作製すること;および
b)前記ヒドラゾン(III)混合物を、加熱してまたは加熱せずにインキュベートすること
の工程を含む変換を含む、ペプチドヒドラゾン(III)の作製方法。
【請求項13】
請求項12に記載のペプチドヒドラゾン(III)の作製方法であって、
前記複合グリコール溶液は、エタノール中のO-[2-(6-オキソカプロイルアミノ)エチル]-O’-メチルポリエチレングリコール(IV)であり、前記酸は、酢酸である、ペプチドヒドラゾン(III)の作製方法。
【請求項14】
請求項13に記載のペプチドヒドラゾン(III)の作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号1~102、または117~140に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラゾン(III)の作製方法。
【請求項15】
請求項14に記載のペプチドヒドラゾン(III)の作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号119または配列番号37に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラゾン(III)の作製方法。
【請求項16】
請求項15に記載のペプチドヒドラゾン(III)の作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号119または配列番号37に示されるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラゾン(III)の作製方法。
【請求項17】
配列番号1~171のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する毒性ペプチドのペプチドヒドラジド形態のペプチドヒドラゾン(VI)への以下の
前記ペプチドヒドラジド形態をアクリルケトンのエタノール溶液、および水と混合する工程
を含む変換を含む、ペプチドヒドラゾン(VI)の作製方法。
【請求項18】
請求項17に記載のペプチドヒドラゾン(VI)の作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号1~102、または117~140に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラゾン(VI)の作製方法。
【請求項19】
請求項18に記載のペプチドヒドラゾン(VI)の作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号119または配列番号37に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラゾン(VI)の作製方法。
【請求項20】
請求項19に記載のペプチドヒドラゾン(VI)の作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号119または配列番号37に示されるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラゾン(VI)の作製方法。
【請求項21】
配列番号1~171のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する毒性ペプチドのペプチドヒドラジド形態のペプチドヒドラゾン(IX)への以下の
前記ペプチドヒドラジド形態をPEG4ケトンの水溶液と混合する工程
を含む変換を含む、ペプチドヒドラゾン(IX)の作製方法。
【請求項22】
請求項21に記載のペプチドヒドラゾン(IX)の作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号1~102、または117~140に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラゾン(IX)の作製方法。
【請求項23】
請求項22に記載のペプチドヒドラゾン(IX)の作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号119または配列番号37に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラゾン(IX)の作製方法。
【請求項24】
請求項23に記載のペプチドヒドラゾン(IX)の作製方法であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号119または配列番号37に示されるアミノ酸配列を有する、ペプチドヒドラゾン(IX)の作製方法。
【請求項25】
以下の形態の1つ以上を有する少なくとも1つの毒性ペプチドを含む殺虫性混合物であって、
(a)ペプチドラクトン;
(b)ペプチドヒドラジド;
(c)ペプチドヒドラゾン(II);
(d)ペプチドヒドラゾン(III);または
(e)ペプチドヒドラゾン(IX)
ここで、前記毒性ペプチドは、配列番号1~171のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有し、前記毒性ペプチドは、昆虫の生息場所への適用に適した製剤と組み合わされる、殺虫性混合物。
【請求項26】
請求項25に記載の殺虫性混合物であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号1~102、または117~140に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、殺虫性混合物。
【請求項27】
請求項26に記載の殺虫性混合物であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号119または配列番号37に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、殺虫性混合物。
【請求項28】
請求項27に記載の殺虫性混合物であって、
前記毒性ペプチドは、配列番号119または配列番号37に示されるアミノ酸配列を有する、殺虫性混合物。
【請求項29】
請求項25~28のいずれか1項に記載の殺虫性混合物であって、
さらに、製剤を含む、殺虫性混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2014年4月4日に出願された米国特許出願No.61/975,147の優先権を主張するものであり、その内容全体は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、毒グモ、巻貝、軟体動物、及び他の動物中で見出される毒に関連する、またはそれらの毒を起源とするペプチド毒などの、天然型及びハイブリッド型の生理学的に活性なペプチドの活性を増加させるための化学的方法及び機械的方法に関する。
【0003】
(配列表)
本出願は、2015年4月3日に作成され、本明細書と共に電子的に提出されている「FAM_N_PRV_SEQ_LISTING_2015_04_03_ST25.txt」(106,014バイト)というタイトルの配列表全体を包含する。
【背景技術】
【0004】
オートクレーブによって作り出されて殺菌のために使用される条件のような高熱高圧は、典型的には、真菌、細菌、及びウイルスのような生物学的試料を中性化及び不活性化するために使用される。多くの場合、タンパク質はそのような方法によって変性され、更には破壊される。生物が高温高圧に曝されると、通常、それらのタンパク質が変性し、その結果生物は不活性になり死ぬことから、それらは成長できず、あるいは生き残ることさえできない。その後に続く生物学的プロセスは腐敗のみである。酸性条件単独でも同様な結果を生じさせる場合がある。毒性タンパク質のような非常に活性なペプチドを低pH条件すなわち酸性条件に曝すと、ペプチドが変性し、もはやネイティブなペプチドまたはタンパク質のようには機能しない。オートクレーブは、機器や装置を再利用のために安全にする目的及び滅菌する目的でこれらを処理するために、医療機関で多くの場合使用されており、また、これらは、生物的に汚染された廃棄物を処理することで廃棄しても安全で中性の無害な廃棄物に変換するためにも益々使用されてきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書においては、我々は、それら自体が有用であり、また新規な化合物として及び他の重要な化合物を製造するのに有用な新規な安定中間体としても有用である、それらのペプチドの異なる形態及び元のペプチドの新規かつ有用な誘導体の両方を形成するための、特定の毒性ペプチドの人工的に誘起した変換を報告する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は2つのパートを有している。パート1では、我々は、毒性ペプチドを含むペプチドの活性及び毒性を増加させるための、人工的に誘起した化学的及び機械的方法の使用方法であって、a)前記ペプチドを水と混合して、液体中にある前記ペプチドまたは半液体中にある前記ペプチドの形態の、水溶液または水性エマルションを形成する工程であって、水溶液または水性エマルションが少なくとも10%の水からなる工程;b)前記ペプチドの前記水溶液または水性エマルションのpHを測定する工程;c)前記溶液またはエマルションのpHをpH7.0未満に調整する工程;を含み、任意選択的にはこれらの工程を文字順で含む、方法について述べる。pHは、約1.0~約6.5、約2.0~約6.0、約2.5~約5.5、約3.0~約5.0、約3.0~約4.0、約3.2、3.4、3.5、3.6、または3.8であってもよい。
【0007】
前記pH調整後、前記ペプチドが乾燥粉末または顆粒の形態へと乾燥される方法。pH調整は強酸または弱酸を使用して行うことができる。強酸の例は、塩素酸(HClO)、塩酸(HCl)、臭化水素酸、(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、リン酸(HPO)、硫酸(HSO)、過塩素酸(HClO)、及び硝酸(HNO)のうちのいずれかである。弱酸の例は酢酸及び/またはシュウ酸である。pH調整時、水溶液または水性エマルションは乾いた熱、すなわち、蒸気もしくは圧力なしの温度上昇、または熱、圧力及び蒸気に曝される。本明細書に記載の熱条件、及び熱・圧力条件は、本明細書に記載の乾燥粉末手順を含む任意の手順と併用することもできる。
【0008】
前記ペプチドが水溶液またはエマルションの状態の間に、溶液またはエマルションのpHを7.0未満に下げることによる、共有結合している2H+Oまたは分子のうちのいずれか1つ以上のペプチドからの除去方法。この方法が特によく作用するペプチドは、本明細書に記載されているペプチド、または配列表に記載されているペプチド、特には配列番号119及び配列番号37のペプチドである。
【0009】
方法に加えて、我々は、ペプチドで処理されるべき昆虫の生息場所への適用に適した、ペプチドの殺虫性組成物及び製剤についても述べる。方法及び組成物に加えて、我々は、水溶液またはエマルションの状態のペプチドのpHが7.0未満に下げられ、共有結合している2H+Oまたは分子のうちのいずれか1つ以上が除去された、毒性ぺプチド自体についても述べる。
【0010】
我々は、ペプチドの毒性及び/または活性を増加するための方法であって、a)純粋な形態1のペプチドすなわちペプチド酸、または約10%未満の水を含む組成物として前記ペプチドを準備する工程;b)前記形態1のペプチドを制御可能なチャンバーまたは加熱台の中に置く工程;c)前記ペプチドを圧力ありまたは圧力なしで、蒸気ありまたは蒸気なしで、望ましい温度まで加熱する工程;d)ペプチド酸と呼ばれる形態1のペプチドのうちの望ましい量が、ペプチドラクトンと呼ばれる形態2のペプチドに「変換」されるまで、加熱したペプチドを、望ましい温度、圧力、及び蒸気の状態に保持する工程;を含む方法について述べる。制御可能なチャンバーは、0~500℃の温度と大気圧~500psiの圧力を維持することができる。ペプチドは、おおよそ次の温度、すなわち少なくとも約10℃以上であり、約200℃、300℃、または最大でも400℃から選択される最大温度以下まで加熱することができる。
【0011】
我々は、10℃~20℃、20℃~30℃、30℃~40℃、40℃~50℃、50℃~60℃、60℃~70℃、70℃~80℃、80℃~90℃、90℃~100℃、100℃~110℃、110℃~120℃、120℃~130℃、130℃~140℃、140℃~150℃、150℃~160℃、160℃~170℃、170℃~180℃、180℃~190℃、190℃~200℃、200℃~210℃、210℃~220℃、220℃~230℃、230℃~240℃、240℃~250℃、250℃~260℃、260℃~270℃、270℃~280℃、280℃~290℃、290℃~300℃、300℃~400℃、及び400℃~500℃のうちのいずれかから選択される温度、温度範囲、または温度範囲の組み合わせ、のうちのおおよそいずれかから選択される温度までペプチドが少なくとも加熱される方法について述べる。
【0012】
我々は、a)約10psi~約40psi、b)約15psi~約35psi、c)約18psi~約25psi、d)約21psi、のいずれかの圧力または圧力範囲にペプチドすなわちペプチド酸が曝露される方法について述べる。選択される温度及び圧力に応じて、選択される温度範囲及び圧力は、a)約5分~約40分、b)約10分~約30分、c)約15分~約25分、d)約21分、の時間の範囲である。
【0013】
次の条件を使用することができ、ペプチドは、次の温度、及び圧力、及び時間保持される必要がある:a)約100℃~約140℃、約10psi~約40psiの圧力、約5分間~約40分間;b)約110℃~約130℃、約15psi~約35psiの圧力、約10分間~約30分間;c)約115℃~約125℃、約18psi~約25psiの圧力、約15分間~約25分間;d)約121℃、約21psiの圧力、約20分間。複数の事例では、圧力は大気圧以下であり、温度は少なくとも50℃~60℃またはそれ以上の温度から選択される。いくつかの事例では、50℃~60℃、60℃~70℃、70℃~80℃、80℃~90℃、90℃~100℃、100℃~110℃、110℃~120℃、120℃~130℃、130℃~140℃、140℃~150℃、150℃~160℃、160℃~170℃、170℃~180℃、180℃~190℃、190℃~200℃、200℃~210℃、210℃~220℃、220℃~230℃、230℃~240℃、240℃~250℃、250℃~260℃、260℃~270℃、270℃~280℃、280℃~290℃、290℃~300℃、300℃~400℃、及び400℃~500℃の温度、温度範囲、または温度範囲の組み合わせが使用される。
【0014】
方法では、ペプチドがa)加熱されて約100℃より高い温度で少なくとも約1時間保持される;b)加熱されて約80℃~約120℃の温度で少なくとも約2時間保持される;c)加熱されて約50℃~約80℃の温度で少なくとも約3時間保持される;温度及び時間が使用されてもよい。あるいは、ペプチドは、a)加熱されて約180℃より高い温度及び少なくとも約5psiの圧力で少なくとも約5分間保持されてもよいし、b)加熱されて約100℃より高い温度及び少なくとも約10psiの圧力で少なくとも約10分間保持されてもよいし、c)加熱されて約80℃~約120℃の温度及び少なくとも約10psiの圧力で少なくとも約30分間保持されてもよいし、またはd)加熱されて約50℃~約80℃の温度で少なくとも1時間保持されてもよい。
【0015】
ペプチドは、次の条件、すなわちa)加熱されて約200℃~約300℃の温度及び約5~約10psiの圧力で約5~約10分間保持される;b)加熱されて約150℃~約200℃の温度及び約10~約30psiの圧力で約5~約30分間保持される;c)加熱されて約80℃~約150℃の温度及び約10~約20psiの圧力で約20~約60分間保持される;またはd)加熱されて約50℃~約80℃の温度及び約10~約40psiの圧力で約30~約60分間保持される;を使用して変換することができる。
【0016】
あるいは、条件は、ペプチドがa)加熱されて約110℃~約130℃の温度及び約10~約20psiの圧力で約10~約20分間保持されるか、b)加熱されて約121℃の温度及び約21psiの圧力で約20分間保持される条件である。
【0017】
概して、我々は本明細書に記載の条件、温度、及び圧力のいずれかの下で前記ペプチドを加熱することによって、ペプチドから共有結合している2H+O、またはHO、または分子のいずれか1つ以上を除去する方法について述べる。本明細書に記載の条件、温度、圧力のいずれかの下で、配列表にある前記ペプチドを加熱することによって、いずれかのペプチドから共有結合している2H+O、またはHO、または分子のいずれか1つ以上を除去する方法。我々は、「変換」後の、配列表中のいずれかのペプチドについて述べる。我々は、本明細書または請求項に記載のいずれかの手順によって製造されるペプチドについて述べる。我々は、ペプチドで処理されるべき昆虫の生息場所への適用に好適な、請求項の方法のいずれかによって製造されるペプチドの製剤状態の殺虫性組成物について述べる。我々は毒性ペプチドについて述べ、また本明細書に記載の条件、温度、圧力のいずれかの下で前記ペプチドを加熱した際に共有結合している2H+Oまたは分子のうちのいずれか1つ以上が除去される場合に、これをペプチドラクトンと呼ぶ。我々は、1つ以上の共有結合している2H+OもしくはHO分子が除去される本明細書の手順のいずれかによって製造される毒性ペプチドについて述べ、これは本明細書及びパート2でペプチドラクトンと呼ばれる。
【0018】
変換のために特に適切な条件は、ペプチドを加熱し、これを約121℃の温度、約21psiの圧力で約20分間保持することである。
【0019】
本出願のパート2では、我々はペプチドラクトンをペプチドヒドラジドへと変換し、ペプチドヒドラジドをペプチドヒドラゾンへと変換し得る方法について述べる。我々は、昆虫捕食者のペプチドラクトンをヒドラジンと混合し、精製することでペプチドヒドラジドを得ることを含む、昆虫捕食者のペプチドをペプチドラクトンの形態からペプチドヒドラジドの形態へと変換する方法によって製造される、ペプチドヒドラジド製品の製造方法及びペプチドヒドラジド製品について述べる。我々は、ペプチドラクトンを水中で調製し、ヒドラジン一水和物を添加し、混合物を撹拌してペプチドヒドラジドを形成し、任意選択的には凍結、融解、及び精製して精製されたペプチドヒドラジドを得る方法について述べる。必要に応じて、昆虫捕食者のペプチドは、約20個のアミノ酸から約50個のアミノ酸まで大きさが様々であってもよく、これは2個、3個、または4個のシスチン結合を有する。あるいは、これは3個もしくは4個、または2個もしくは3個のシスチン結合を有する。ペプチドラクトンは、配列表にある任意のペプチド、及び配列表にある任意のペプチドと80%超の相同性を有する配列表にある任意のペプチドもしくは任意のペプチド、または85%、90%、95%、または99%以上の相同性があり3個もしくは4個のシスチン結合を有する任意の配列、から調製することができる。
【0020】
我々は、方法aまたは方法bのいずれかを使用することが可能な、ハイブリッド+2ペプチドと名付けられたペプチドを用いたこれらの方法の使用方法であって、方法a;a)100mgの精製した形態2のペプチド、すなわちハイブリッド+2ペプチドラクトンが1mLの水に入っている溶液から出発する、b)100mgのペプチドラクトン1mLを100μLのヒドラジン一水和物で処理し、室温で撹拌して、任意選択的には2時間撹拌して、ペプチドヒドラジドを形成する、c)分取HPLC(アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸のグラジエントで溶出)でペプチドヒドラジドの溶液を精製する、d)適切なペプチドヒドラジドのフラクションを選ぶ、e)適切なペプチドヒドラジドのフラクションを合わせて減圧下で濃縮して体積を減らす、f)減らした体積のペプチドヒドラジドを0℃未満で、任意選択的には-80℃で、凍結する、g)ハイブリッド+2ペプチドヒドラジドを、任意選択的には凍結乾燥機で、凍結乾燥してハイブリッド+2ペプチドヒドラジド(I)を得る;または、以下を含む方法b;a)ペプチド酸である形態1、及び形態2の混合物であるスーパーリキッド濃縮物(Super Liquid Concentrate)25mLの溶液を、任意選択的には約50℃~90℃で、任意選択的には75℃で、撹拌する、b)溶液を冷ます、c)溶液を、任意選択的には2mLである、ヒドラジン一水和物で処理して、任意選択的には室温で2時間、撹拌する、d)任意選択的には(アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸)のグラジエントで溶出する、分取HPLCで一部を精製する、e)フラクションを集めて濃縮し、任意選択的には減圧で、体積を減らす、f)残っている液体を、任意選択的には-80℃で及び凍結乾燥機で凍結して、ハイブリッド+2ペプチドヒドラジドを得る;を含む方法を示した。
【0021】
我々は、ペプチドヒドラジドの使用方法、及び、これをカルボニルと反応させて有用なペプチドヒドラゾンを作る方法も示す。これは、a)ヒドラジド水溶液を混合し、ヘキサナールのエタノール溶液を添加し、撹拌すること、b)ヘキサナール、酢酸、及びエタノールからなるストック溶液で処理して撹拌すること、c)ヘキサナール、酢酸、及びエタノールから作られたストック溶液を添加すること、d)混合し、放置し、その後任意選択的に加熱してヒドラゾンを生成すること、を含む、昆虫捕食者のペプチドをペプチドヒドラジドからペプチドヒドラゾンへと変換することにより行われる。我々は、この方法を、ヒドラゾン(II)を作るために使用した。これは、a)ヒドラジド(I)水溶液をヘキサナールのエタノール溶液と混合して撹拌すること、b)請求項16に記載のストック溶液を少量添加すること、d)混合し、放置し、その後任意選択的に加熱してヒドラゾン(II)を生成すること、によって行われる。
【0022】
ヒドラゾンは、極めて重要な安定中間体であると同時に、最終製品にもなり得る。ペグ化ペプチドつまりPEGペプチドである製品。ヒドラゾンは他のものでもあってもよいが、我々はペグ化された際に最も有用であると考えている。我々はアルキル化ヒドラゾンも示す。ペグ化ペプチドは、実際にはヒドラゾンの形態をとる。実施例9とヒドラゾン(III)、及び実施例11と(IX)を参照のこと。このような化合物はこれまで全く存在しておらず、これらを作るための化学はこれまで全く教示されていなかった。これらのペプチドヒドラゾンは新規であり、ヒドラゾン(IX)のようなペグ化ペプチドヒドラゾンは2つの観点から新規である。第1に、実施例10(b)及び11(b)で示されている不飽和カルボニル結合は、PEGとペプチドを連結するためにはこれまで全く使用されていなかった。第2に、アルデヒドまたはケトンがPEGに結合し、その後これがペプチドヒドラジドを反応する、「ペグ化側」でのアルデヒドまたはケトンとのこの反応の開始は、これまで全く示されていなかった。通常は、アルデヒドまたはケトンがペプチド上に配置されてからペプチドケトンまたはペプチドアルデヒドがPEGと反応あるいは結合する。この反応で不飽和カルボニルを使用すると、このイミン窒素はより塩基性が低いことから結合がより安定になり、結合を破壊することがより困難になる。そのため、PEGが飽和カルボニルを有するペプチドに連結している実施例9のカルボニルと、PEGが不飽和カルボニルを有するペプチドに連結している実施例11とを比較することができる。実施例11の不飽和カルボニル結合は、より強い結合を形成してペプチドとPEGとの間をより頑丈に連結することから、特に重要である。このより強い結合は、不飽和カルボニルがより低塩基性であり容易にはプロトン化しない(プロトン化はヒドラゾン結合の加水分解の第1段階である)イミン窒素を形成する結果である。これらのタイプの結合は、ペプチドとPEGまたはアルキル基とを連結するためにはこれまで全く使用されていなかった。
【0023】
ペグ化ペプチドは周知であるが、ヒドラジドへと変換されるペプチドラクトンから作られたペグ化ヒドラゾンから、これらを製造するこの方法は新規であり、これまで知られていない。ペグ化された毒性のある殺虫性ペプチドは、これらの殺虫剤が植物の摂取によって昆虫に届けられる場合に経口バイオアベイラビリティが非常に重要になるため、極めて重要である。ある意味では、これは経口でヒトに摂取される薬に関して、経口バイオアベイラビリティがいかに重要であるかに非常によく似ている。両方の状況において、薬がいかに「作用」するかを制御する因子はその経口バイオアベイラビリティである。タンパク質をペグ化すると、分子の大きさ及び分子量が増加する。ペグ化は、細網内皮系からの排出を減らすことによって、または特異的な細胞-タンパク質相互作用によって、細胞のタンパク質クリアランスを減少させる。更に、ペグ化はタンパク質の周りに保護的な「シェル」を形成する。このシェル及びそれに関連した水和水は、免疫原性認識からタンパク質を守り、トリプシン、キモトリプシン、及びStreptomyces griseusプロテアーゼなどのタンパク質分解酵素による分解に対する耐性を向上させる。Pegylation A Novel Process of Modifying Pharmacokinetics. J. Milton Harris,Nancy E. Martin and Marlene Modi,Clin Pharmacolomry 2001; 40(7):539-551の543ページを参照のこと。ペグ化は、ペプチドの半減期を長くすることによってバイオアベイラビリティを向上させる。例えば、ペグ化はトリプシンによるアスパラギナーゼの分解を減少させた:50分間のインキュベーションの後、ネイティブのアスパラギナーゼ、PEG-アスパラギナーゼ、及び分岐-PEG-アスパラギナーゼの残存活性はそれぞれ独立に5、25、及び98%であった。
【0024】
我々は、昆虫捕食者のペプチドを、ペプチドラクトンからペプチドヒドラジドへ、そして最終的にはペグ化ペプチドであるペプチドヒドラゾンへと変換する方法を示す。我々は、ペプチドヒドラジド(I)をアルデヒド(IV)と混合してペグ化タンパク質であるぺプチドヒドラゾン(III)を製造する実施例を示す。方法には、複合グリコールを強酸または弱酸で酸性化することと、ヒドラジドを添加することと、よく混合してペプチドヒドラゾンを製造することとを含む。ペプチドヒドラゾンは、ヒドラゾンを製造するために使用されるカルボニルに応じたペグ化ペプチドとすることができる。我々は、a)O-[2-(6-オキソカプロイルアミノ)エチル]-O’-メチルポリエチレングリコール(IV)と呼ばれる化合物のエタノール混合物のストック溶液に酢酸を1滴添加すること、b)工程aからの、酢酸で処理されたO-[2-(6-オキソカプロイルアミノ)エチル]-O’-メチルポリエチレングリコール(IV)(分子量約2’000)のストック溶液を使用し、これをヒドラジド(I)の水溶液に添加すること、c)混合し、室温に放置すること、d)O-[2-(6-オキソカプロイルアミノ)エチル]-O’-メチルポリエチレングリコール(IV)(分子量約2’000)のストック溶液の残部を分割して添加し、混合後終夜放置しておくことでペプチドヒドラゾン(III)を生成すること、によるペプチドヒドラゾン(III)を製造するための方法を示す。我々は、アクリルケトンをヒドラジドに添加してヒドラゾンを製造することを含む、昆虫捕食者のペプチドヒドラジドをペプチドヒドラゾンへと変換し得る方法を示す。後者の方法は、エタノールに入ったアクリルケトン(V)をヒドラジド(I)の水溶液に添加して混合することを含む、ペプチドヒドラゾン(VI)の製造方法で示される。我々は、PEG4ケトン(VIII)をヒドラジド(I)の水溶液に添加して混合することでヒドラゾン(IX)を製造することを含む、ペプチドヒドラゾン(IX)も製造する。かくして、ペプチドヒドラジドは、我々の方法にかかるペグ化ペプチドを製造するために必要な、極めて重要な中間体であることが示される。
【0025】
我々は、共有結合している2H+OまたはHOまたは分子のうちのいずれか1つ以上をペプチドから除去することとして記述される方法であって、本明細書に記載されているまたは明細書もしくは請求項中に見出されるような単独または組み合わせでの、いずれかの条件、温度、圧力、及びpHまたは酸性条件の下で、共有結合している2H+Oまたは分子のうちのいずれか1つ以上が取り除かれた任意の毒性ペプチドを含み、本明細書及び請求項に記載の手順のいずれかによって製造されたいずれかのペプチド、ヒドラジド、またはヒドラゾンを含む方法、により製造されるペプチドの調製方法及びまたはペプチド、及びまたはこの方法によって製造される殺虫性組成物、または、本明細書及び請求項に記載の方法のいずれかによって製造され、その後昆虫の生息場所への適用に好適な製剤中で使用される、ペプチドの殺虫性組成物としてのこれらのペプチドのいずれかの使用について述べる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】配列番号119のマススペクトルであり、矢印はピーク1が11.84の数字であることを示す。
図2図1に示されているピーク1のデコンボリューションされたスペクトルでの、配列番号119のマススペクトルであり、デコンボリューションされた図1のピーク1は4562.8896の値を有する。
図3】配列番号119のマススペクトルであり、矢印はピーク2が12.82の数字であることを示す。
図4図3に示されているピーク2のデコンボリューションされたスペクトルでの、配列番号119のマススペクトルであり、4544.8838の質量値を有する。
図5】処理後の新たな形態、すなわちピーク2のペプチドの毒性と比べた、元の形態であるピーク1のペプチドの毒性の比較を示す棒グラフである。両方の形態は対照とも比較されている。
図6】液体クロマトグラフィーによって別々に用意された、ピーク1とピーク2のバイオアッセイの比較である。ピーク1の結果が示されている。
図7】液体クロマトグラフィーによって別々に用意された、ピーク1とピーク2のバイオアッセイの比較である。ピーク2の結果が示されている。
図8】安定性pH試験でのpH5.6における配列番号119のマススペクトルである。
図9】安定性pH試験でのpH3.9における配列番号119のマススペクトルである。
図10】安定性pH試験でのpH8.3における配列番号119のマススペクトルである。
図11】HPLCからのピーク1、2、及び3を示し、これは加熱によって配列番号37から、すなわちネイティブハイブリッドから、HO及びNHが別個に失われ得ることを示している。温度でUV吸光度が変化する3つのHPLCピークは、4.2分、5.4分、6.9分の保持時間にあると同定された。
図12】ネイティブハイブリッドペプチドのアイソフォームのTOF MS評価の結果を示す。
図13】ヒドラジド(I)のマススペクトルである。
図14】デコンボリューションされたスペクトルでの、ヒドラジド(I)のマススペクトルである。
図15】ヒドラゾン(II)のマススペクトルである。
図16】デコンボリューションされたスペクトルでの、ヒドラゾン(II)のマススペクトルである。
図17】ヒドラゾン(III)のマススペクトルである。
図18】分布を示す分子イオンが見られる、ヒドラゾン(III)のマススペクトルである。
図19】UVで追跡した、アクリルケトン(V)のマススペクトルである。
図20】アクリルケトン(V)のマススペクトルである。
図21】ヒドラゾン(VI)のマススペクトルである。
図22】デコンボリューションされたスペクトルでの、ヒドラゾン(VI)のマススペクトルである。
図23】UVで追跡した、PEG4ケトン(VIII)のマススペクトルである。
図24】PEG4ケトン(VIII)のマススペクトルである。
図25】ヒドラゾン(IX)のマススペクトルである。
図26】デコンボリューションされたスペクトルでの、ヒドラゾン(IX)のマススペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[定義]
定義は、その記載、実施例、及び請求項の出願全体を考慮して解釈及び理解すべきである。
【0028】
「AI」は活性成分を意味する。
【0029】
「オートクレーブ」は、密閉または鍵をかけることが可能な圧力容器を有する、蒸気及びまたは加熱した水を添加することが可能な装置を意味し、蒸気での、時には真空ポンプでの、乾燥空気の除去が典型的には可能であり、任意選択的には、必要に応じて、乾燥した熱及び/または高圧及び任意選択的には蒸気を用いてより高温にするために、蒸気のパルス添加または循環が可能である。これは、通常は装置によって作られる熱及び圧力に電源を与えるために壁の出口から装置まで電流を運ぶ、付属の電気コード、電源コードによって動くが、これはストーブの上で加熱することができる単純な圧力容器を指してもよい。
【0030】
「カルボニル」はアルデヒドまたはケトンを意味する。
【0031】
「チャンバー」は密閉された容器または空間を意味する。
【0032】
「摂氏」は、通常は度としての温度の単位であり、これは40Cの中のCあるいは40℃の中の℃のように短縮される場合がある。
【0033】
「変換する」及び「変換」は、熱、熱と蒸気、及び/または圧力または酸性条件の本明細書に記載の方法を、単独でまたは他の要素と組み合わせて使用することによる、形態1として記述されるペプチドの形態の、形態2への変形を意味する。「変換」については、本明細書でより詳しく記載及び例示する。
【0034】
「DI」は脱イオン水を意味する。
【0035】
「形態1または形態1のペプチド」とはペプチドの形態を意味し、「形態」はその折り畳まれ方、またはその活性部位の存在及びその数、または内部結合の程度を示唆しており、特には形態Iあるいは形態1は、これが最初に形成されたときのまま、その分子量から2HプラスOつまり18ダルトンを失うことなしに存在するペプチドを意味する。形態1はペプチドの酸の形態としても知られており、本明細書ではペプチド酸と呼ぶ場合がある。
【0036】
「形態2または形態2のペプチド」とはペプチドの形態を意味し、「形態」はその折り畳まれ方、またはその活性部位の存在及びその数、または内部結合の程度を示唆しており、特には形態IIあるいは形態2は、形態1のペプチドとして始まったが、本明細書に記載の処理(熱、温度、圧力、蒸気、酸、低pH条件など)の組み合わせのいずれか1つを適用することによって変形され、これが形態1から形態2に「変換」される前と後に測定した場合に水分子に等しい18ダルトン失われているペプチドを意味する。ペプチドが1つの形態から始まり、その後にその分子量から2HプラスOつまり18ダルトンを失った場合、これは形態2のペプチドとして存在する。形態2は、ペプチドのラクトン形態またはペプチドラクトンとしても知られている。本明細書中で使用されているラクトンの定義についてのパート2の最初の段落を参照のこと。
【0037】
「製剤」は、通常は活性成分を含む成分の混合物を意味し、本明細書では典型的には毒性ペプチドと、溶解性、安定性、展延性、有効性、安全性、または活性成分の保存もしくは送達に通常は関連する他の望ましい特性を向上させるための他の成分との混合物である。
【0038】
「昆虫」及び「処理されるべき昆虫」とは、これが食料や資源を消費もしくは破壊するとみなされていることから、またはその本質及びその存在自体が望ましくないことから、その昆虫の知識を有している者がその摂餌量の制限、その成長の制限、またはその寿命の短縮などの何らかの方法で昆虫を抑制したいと望む昆虫を意味する。
【0039】
昆虫の「生息場所」とは、昆虫が普段生活する、餌をとる、眠る、またはそこへもしくはそこから移動する、場所を意味する。
【0040】
「生理学的に活性なペプチド」は生物学的に活性な毒性ペプチドを意味する。
【0041】
「圧力容器」は、水を添加することで加熱蒸気及び高温の生成が可能な乾式加圧または湿式加圧された装置を有する、高圧を保持することができる密閉容器を意味する。圧力容器は、ストーブ上部の加熱リングから、またはオートクレーブ装置の一部としてなどにより、外部供給源から動力を受け取る必要がある。
【0042】
「強酸」は水溶液中で完全にイオン化する酸を意味する。これは、通常は1~3である低いpHを有する。例としては塩酸-HCl、臭化水素酸-HBr、ヨウ化水素酸-HI、硫酸-HSO、リン酸(HPO)、過塩素酸HClO、硝酸HNO、及び塩素酸HClOが挙げられる。
【0043】
「毒性ペプチド」とは、昆虫がそのペプチドに曝された場合に昆虫に有害な影響を生じさせる、天然または人工のアミノ酸から構成される、天然、人工、または合成のペプチドを意味する。毒性ペプチドには、クモ、ヘビ、軟体動物、及び巻貝などの有毒生物由来のまたはこれらに関連するペプチドである有毒ペプチドが含まれる。毒性ペプチドには、US8,217,003及びUS8,501,684で同定及び記載されているペプチドが含まれる。
【0044】
「約10%、または少なくとも約10%、または10%前後の水」とは、その総重量または総量の少なくとも約10%の利用可能な水、すなわち大きな分子の一部として共有結合しているものではなくHO分子のイオン化が可能な(すなわちpHを維持することが可能な)水分子、を有している任意の製剤または混合物を意味する。
【0045】
弱酸とは、水溶液中にある場合に完全には解離しない酸を意味する。これらは通常3~6のpHを有する。例として酢酸及びシュウ酸が挙げられる。弱酸は、イオン化されている分子とされていない分子が平衡状態で存在する。
【0046】
[概要及び手順]
本明細書では、熱単独、温水、蒸気と組み合わせた熱、熱と圧力、及び/または独立した酸処理を含む様々な処理が述べられ、これらの処理によっていくつかのペプチドの活性を処理される前よりも約5倍大きい活性に増加させることができる。高温及び高圧の下でこれらの活性が失われず、これらのペプチドの活性は飛躍的な活性の増加を示した。我々は、この変化の特性、並びに、我々が生理学的に活性なペプチド及びまたは毒性ペプチドと称するペプチドを含む、いくつかのペプチドの活性を低下させるのではなく向上させるために使用することができる条件と、温度、圧力、及びpHの範囲について示す。
【0047】
これらのペプチドは、本質的に転位プロセスによる脱水を受ける。我々はこの変形を「変換」と呼ぶ。「変換」は、通常は毒性ペプチドが、高温、または蒸気及び圧力ありもしくはなしでの熱、または酸、または熱と酸、または酸と熱プラス蒸気及び/もしくは圧力、または、温度、熱、熱と圧力、熱と蒸気及び圧力、酸性あるいは低pH、酸あるいは低pHと熱、酸あるいは低pHと熱及び圧力、酸あるいは低pHと熱、蒸気及び圧力、の様々な組み合わせ、を使用して一層活性で一層毒性のペプチドに変化する場合に生じる。「変換」は、ペプチドに熱がかけられる場合、またはペプチドが水中にありペプチドの水溶液が低pHにされる場合には、比較的迅速に生じさせることができる。温度の上昇、すなわち圧力の上昇ありもしくはなしの加熱、蒸気ありもしくはなしの加熱、またはpHの低下、すなわち液体製剤に酸または酸性条件を与えることによるpHの低下、または温度と酸の両方の組み合わせは、本明細書に記載の特定の毒性ペプチドの活性を飛躍的に増加させる。この発見に関する様々な実施形態の更なる所見、測定、及び分析は開示され、特許請求される。
【0048】
いくつかの実施形態では、昆虫に対して毒であるペプチドは、約100℃~150℃で稼働する典型的なオートクレーブの中などで、熱単独、または蒸気及び圧力と組み合わせた熱、の条件で処理される。温度、圧力、及び酸性の変数に応じた3、5、10、20、30、40、50、60、70、75、80、または90分のいずれかの時間、約100kPaすなわち15psiの圧力で蒸気及び圧力が使用される場合には、「変換」は比較的短時間になるであろう。変換のための適切な条件は、ペプチドを加熱してこれを約121℃の温度、約21psiの圧力で約20分保持することである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の手順のいくつかでは、再使用または安全な廃棄のための生体試料のオートクレーブ処理の際に使用される標準的な手順と同様である。
【0049】
上述したよりも低い温度及び圧力が使用される場合、「変換」には上で提示されている時間よりも長い時間がかかる。方法は、ペプチドの乾燥粉末または結晶の形態に対して使用してもよいし、あるいはペプチドを溶液にしてから「変換」してもよい。ペプチドが水溶液にされる場合、pHが監視、調整、及び制御のための重要な因子となる。通常、pHが低い溶液ほどpHが高い溶液よりも「変換」が速く、pH7.0を超えると「変換」がほぼ停止する。
【0050】
本明細書に記載の方法に好適な典型的なオートクレーブ運転条件は、約100kPaすなわち15psiまたは約10~20psiの圧力で、約15分または約10~20分間、約120℃~135℃に加熱された蒸気、であり、これは合理的な時間で変換を行わせるのに十分であろう。当業者は、本明細書に記載の測定及び分析を使用することにより、「変換」の速度を監視及び制御するために条件を変更または変化させることができるであろう。
【0051】
ペプチドの活性を増加させる方法は、室温より高いいくらかの熱を必要とする。熱単独、または蒸気存在下の熱、または圧力の存在下での熱を使用することができる。「変換」にかかる時間は、熱、及びまたは蒸気、及び圧力、及び関係する場合にはペプチドが入っている溶液の酸性度がどのくらいの量かに依存する。熱プラス時間は、変化すなわち本明細書で特定される「変換」をするのに十分にされる。どのくらい時間が必要とされるかは、どのくらいの熱が使用されるか、及び熱と共に蒸気及び圧力が使用されるかどうかに依存する。同様に、どのくらいの熱が必要とされるかは、どのくらいの時間ペプチドが加熱されるか、並びに蒸気及び圧力が使用されるかどうかに依存する。
【0052】
ペプチドの毒性を増加させるために使用することができる、蒸気あり及びなしでの可能な熱の選択肢及び様々な圧力のいくつかの例が開示される。当業者は、他の多くの可能な温度、圧力、pH条件、及びこれらの組み合わせを決定するために、これらの教示及び例を使用することができるであろう。
【0053】
蒸気あり及びなしでの温度、時間、及び圧力の例。
蒸気あり:a)110C、30psi、20分;b)120C、15psi、15分;c)130C、30psi、容器及び「変換」がされたか否かに応じて3分、8分、10分~15分。
蒸気なし(乾燥した常圧):a)120C、0psi、12時間;b)130C、0psi、6時間;c)140C、0psi、3時間;d)150C、0psi、2.5時間;e)160C、0psi、2時間;f)170C、0psi、1時間。
【0054】
反応の進行に十分な時間が与えられるのであれば、温度を極端に高く上昇させなくてもペプチドに望ましい変化を生じさせられることに留意し、また理解するべきである。例えば、室温は典型的には約20~25Cの範囲である。調製温度を40Cにしか上げない場合には、数時間または数日かけて反応を生じさせることができる。しかし、蒸気なし圧力なしでの40Cでの反応は非常に遅く進行し、完結までに2年もの長い期間を要するであろう。蒸気なし圧力なしでの100Cでの反応は、完結に6か月もの長い期間を要するであろう。しかし、反応を120C、15psiで行う場合には、「変換」は15分以内に完結するであろう。
【0055】
上で示されている熱、時間、蒸気、及び圧力の例は、湿式製剤または乾式製剤で使用することができる。ペプチド毒の市販の製剤においては、測定、輸送、販売、及び使用には乾式製剤が容易なことから、乾式製剤の活性が重要である。蒸気熱は、毒性ペプチドの製造からの望ましくない汚染物として残り得る酵母ハイブリッドなどの生体物質のほとんどを不能にし、不活性化するために使用することもできるため、乾燥粉末を蒸気熱に曝露する方法が特に好ましい。
【0056】
熱、蒸気、及び圧力に加えて、ペプチドの活性を増加させるために使用可能なもう1つの独立因子は、pHすなわち酸性度である。低pH、すなわち7未満、すなわち酸性は、ペプチドが溶液中にある場合に、室温で、あるいは上述の時間、温度、圧力、及び蒸気の因子と組み合わせて、使用することができる。
【0057】
酸性および酸性条件は、「変換」の速度に影響を与え得る重要な因子であると考えられる。第1に、上述のプロセスはペプチドが水なしの乾燥形態にある場合でも生じうるが、水と混合される場合にも、あるいは十分な水と水和して測定可能なpHを生じさせる場合にも、これらのより活性な形態へとこれらを変換できることが理解されるべきである。低pHすなわち酸性条件、7.0未満が、「変換」率及び「変換」速度を増加させるために使用できる独立因子であることが見出された。最適なpHは約1.5~約6、好ましくは約2~約5、より好ましくは約3~約4、より好ましくは約3.5のようであるが、7.0以下のいずれの酸性条件も、ペプチドが溶液状態にある場合に反応速度を向上させるであろう。これは、本質的にはpHによって生じる平衡反応である。水性反応条件を用いた場合、7.0より大きいpHでは反応は遅く、pHが高いほど遅くなり、本質的に不活性になるまで遅くなるであろう。pHが7.0のわずかに上から約7.5まではいくらかの変換が生じるであろう。高いpH条件では、「変換」は効果的なほどに遅く、通常、商業的価値はほとんどないとみなされる。
【0058】
ある実施形態では、ペプチドは水と混合され、pH6.0以下の溶液にされ、約10分未満での迅速な「変換」のために、蒸気及び圧力の下で、約120℃~約150℃の温度で「変換」される。
【0059】
反応。理論に拘束されることを望むものではないが、そして記載されている手順がそれを必要とするものではないが、本発見の開示を更に前進させるため、及び本明細書の教示を改善するため、我々は「変換」時に次の反応が生じている可能性があると考えている。特定のペプチドが本明細書に記載の熱、圧力、蒸気、及び酸の状態に従って処理された場合に、これらは水分子相当を失っているようであり、そのため我々はこのプロセスを脱水と呼ぶことがある。
【0060】
例示の目的で、我々は配列番号119(ハイブリッド+2とも呼ばれる)及び配列番号37の2つの配列についてのデータを示す。両者共に実施例及び配列表に示されている。これらは、N-末端のアミノ酸のみが異なる2つの毒性ペプチドである。配列番号119はN-末端のGSを有しており、配列番号37はN-末端のGSを有していない。配列番号37は39個のアミノ酸を有し、これらは配列番号119にある39個の「C」末端側アミノ酸と同じである。これらの毒性ペプチドは、「変換」を実証及び説明するのに有用である。
【0061】
我々は、「変換」しないものを説明することから始める。配列番号37のような、グルタミンすなわちQなどのアミノ酸を有するN末端のペプチドの場合は「変換」せず、ピログルタミン酸のような環状化合物を自然に形成する。例えば、配列番号37のN-末端グルタミン酸はピログルタミン酸を形成する場合がある。ここでは、我々はN-末端またはフリーのNH基を有する内部アミノ酸のいずれかの自然環化を「NH反応」と呼ぶ。NH反応は「変換」ではなく、「変換」と並べられるものではない。我々は、「変換」を「2H+O反応」または「HO反応」または「脱水反応」と呼び、これはNH反応とは完全に異なる。我々が実施例5で示したように、両方とも同じペプチドで生じ得る。単一のペプチドの2つの形態の存在、及び、1つの形態から他の形態へと、あるいは少なくとも2H+Oを持つものから持たない形態へと変えるための制御された能力については、以降の実施例でこれらの2つのペプチドを用いて示され、また特性評価及び説明がなされる。
【0062】
[「変換」のための最適なペプチド]
我々は、以降で詳細に述べるものを含む、数多くのペプチドが「変換」に好適であると考えている。毒性昆虫ペプチドすなわち昆虫捕食者ペプチドは、2個、3個、または4個のシスチン結合を有しており、これはそれらが4個、6個、または8個のシステインを有していることを意味する。これらは約10個超のアミノ酸残基かつ約300個未満のアミノ酸残基のペプチドである。より好ましくは、これらはアミノ酸すなわちaaサイズが約20aa~約50アミノ酸の範囲である。これらは約550Da~約350,000Daの分子量の範囲である。これらは高い熱及び低いpHに曝された場合に、驚異的な安定性を示す。毒性昆虫ペプチドは、いくつかのタイプの殺虫活性を有する。典型的には、これらは昆虫に注入された場合に活性を示すが、多くは昆虫に局所的に適用する場合にはほとんど活性を示さない。毒性昆虫ペプチドの殺虫活性は、様々な方法で測定される。測定の一般的な方法は当業者に周知である。そのような方法としては、麻痺、死亡率、体重増加不良などの様々なパラメーターの評価に基づく用量-反応プロットのフィッティングによる反応用量の中央値(例えばLD50、PD50、LC50、ED50)の決定が挙げられるが、これらに限定されない。測定は、当該の殺虫性製剤の様々な用量に曝露される昆虫のコホートに対して行うことができる。データの分析は、プロビット分析及び/またはヒルの式等によって規定される曲線を形成することによって行うことができる。そのような場合、用量は皮下注射によって、高圧注入によって、食料または餌の試料の一部としての殺虫性製剤の提示によって、等で投与されるであろう。
【0063】
毒性昆虫ペプチドは、本明細書では、皮下注射、高圧注入、または経口による昆虫への送達(すなわち、昆虫に与えられる食料の試料の一部としての摂取による)のいずれかによって昆虫へ送達した際に殺虫性を示すすべてのペプチドとして定義される。したがって、この分類のペプチドには、クモ、ダニ、サソリ、ヘビ、巻貝等の毒液の成分として天然に生成する多くのペプチドが含まれるが、これらに限定されない。この分類には、これらに限定されないが、植物により製造される様々なペプチド(様々なレクチン、リボソーム不活性化タンパク質、及びシスチンプロテアーゼ等)、及び昆虫病原性細菌により生成される様々なペプチド(例えば様々なBacillus種によって生成されるタンパク質のCryl/デルタエンドトキシンファミリー)も含まれる。
【0064】
次の文献は、米国において、許可されるその他の国及び地域において、その全体が参照により包含され、これらはその公開によって示される周知の事実である。更に、特に配列表については、これらにペプチド配列が記載されている範囲内で参照により包含され、公知である。2008年4月8日に発行されたUS特許7,354,993B2、特には配列表に列挙されているペプチド配列、及び1~39番の番号が付けられたもの、及びU-ACTXポリペプチドと名付けられたもの、2~4個の鎖内ジスルフィド架橋を形成することが可能な毒、及びそれらの変異体、並びに明細書のカラム4~9と図1に登場するペプチドを参照のこと。2008年10月8日に公報2008/41に公開され、特許されたEP特許1812464B1、特には配列表に列挙されているペプチド配列、2~4個の鎖内ジスルフィド架橋を形成することが可能な毒、及び1~39番の番号が付けられたもの、及びU-ACTXポリペプチドと名付けられたもの、及びそれらの変異体、及びこれらの特許の0023段落~0055段落と図1に登場するペプチド。
【0065】
本明細書で特定されているペプチドへの参照により記載され包含されるものは、述べられている配列の相同変異体であり、これらはそのような配列に対する相同性を有するか、本明細書で言及されており、これらは本明細書に記載の方法にかかる「変換」に好適であるとして特定もされ、特許請求もされている。これらには、本明細書に開示のいずれかの配列または参照により包含されるいずれかの配列と、少なくとも次の割合のいずれかの相同性を有する相同配列を含む全ての相同配列が含まれるが、これらに限定されない:上で記載した特許中で同定されているいずれか及びすべての配列、並びに本出願の配列表にあるそれぞれ及び全ての配列を含む本明細書で同定されている全てのその他の配列に対して、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上の相同性。本明細書で相同の、または相同性という用語が30%以上などの数字と共に使用される場合は、これは2つのペプチド間のパーセント同一性あるいはパーセント類似性のことを意味する。相同の、または相同性が数字割合なしで使用される場合には、これは、局所的毒性及び100%大きい長さもしくは50%短い長さの範囲内の類似した大きさまたはペプチドなどの、共通の物理的側面及び機能的側面を共有している点で進化及び発生の観点で密接な関係がある2つのペプチド配列のことをいう。
【0066】
上で言及したUS及びEPの特許文献で述べられているいずれかの供給源由来の、本明細書で特定されているペプチドへの参照により記載され、包含されているものには、次のものが含まれるが、これらに限定されない。植物及び昆虫から単離された毒、ジョウゴグモ特にはオーストラリアジョウゴグモなどの、特にはクモ由来の毒、サソリ由来の毒、及び昆虫を捕食するもしくは昆虫からそれら自身を護る植物由来の毒であり、Atrax属またはHadronyche属中に見出される、これらから単離される、またはこれらから誘導される毒が含まれ、これらにはHadronyche versutaあるいはブルーマウンテンジョウゴグモ、Atrax robustus、Atrax formidabilis、Atrax infensus属種が含まれ、これらには「アトラコトキシン」、「コアトラコトキシン」、「カッパ」アトラコトキシン、ω-アトラコトキシンとしても知られる「オメガ」アトラコトキシン、U-ACTXポリペプチド、U-ACTX-Hvla、rU-ACTX-Hvla、rU-ACTX-Hvlb、または変異体もしくはバリアントとして知られている毒が含まれ、特にはこれらの種類のいずれかのペプチド及び特には約200個未満のアミノ酸であるが約10個超のアミノ酸であるもの、及び特には約150個未満のアミノ酸であるが約20個超のアミノ酸であるペプチド、特には約100個未満のアミノ酸であるが約25個超のアミノ酸であるペプチド、特には約65個未満のアミノ酸であるが約25個超のアミノ酸であるペプチド、特には約55個未満のアミノ酸であるが約25個超のアミノ酸であるペプチド、特には約37個、39個もしくは約36から42個のアミノ酸のペプチド、特には約55個未満のアミノ酸であるが約25個超のアミノ酸であるペプチド、特には約45個未満のアミノ酸であるが約35個超のアミノ酸であるペプチド、特には約115個未満のアミノ酸であるが約75個超のアミノ酸であるペプチド、特には約105個未満のアミノ酸であるが約85個超のアミノ酸であるペプチド、特には約100個未満のアミノ酸であるが約90個超のアミノ酸であるペプチドが含まれ、これには2個、3個、及びまたは4個以上の鎖内ジスルフィド架橋を形成可能な本明細書で記載のあらゆる長さのペプチド毒が含まれ、カルシウムチャネルの電流を乱す毒が含まれ、カリウムチャネルの電流を乱す毒が含まれ、特には昆虫カルシウムチャネルまたはそのハイブリッドであり、特にはこれらの種類のいずれかの毒またはそのバリアント、並びに局所的な殺虫活性を有する本明細書に記載の毒のいずれかの種類の任意の組み合わせ、が含まれ、これらは本明細書に記載の方法によって「変換」することができる。
【0067】
同じまたは異なるペプチドは本明細書に記載のペプチドと結合できることが理解されるべきである。形態1から形態への変換は内部変換であり、N及びC末端ペプチドは影響を受けず、そのためN及びC末端アミノ酸は、長い短いを問わず共有結合相手を有することができる。我々は、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50、またはそれより少ないアミノ酸のペプチド結合体が述べられるのに加えて、最大1000個のアミノ酸の大きさの結合相手も詳細に述べる。
【0068】
オーストラリアジョウゴグモ、Atrax属、及びHadronyche属由来の毒性ペプチドが特に好適であり、本発明によって述べられる方法、手順、またはプロセスによって処理された場合によく機能する。これらのクモペプチドは、特には毒サソリペプチド及び毒性植物ペプチドなどの他の多くの毒ペプチドのように、本発明により述べられるプロセスによって処理された場合に局所的に活性または毒性になる。試験される好適なペプチドの例は、データと共に本明細書に示されている。上述の生物に加え、次の種も本発明のプロセスによる「変換」に好適な毒を有している場合がある。次の種は、Agelenopsis aperta、Androctonus australis Hector、Antrax formidabillis、Antrax infensus、Atrax robustus、Bacillus thuringiensis、Bothus martensii Karsch、Bothus occitanus tunetanus、Buthacus arenicola、Buthotus judaicus、Buthus occitanus mardochei、Centruroides noxius、Centruroides suffusus suffusus、Hadronyche infensa、Hadronyche versuta、Hadronyche versutus、Hololena curta、Hottentotta judaica、Leiurus quinquestriatus、Leiurus quinquestriatus hebraeus、Leiurus quinquestriatus quinquestriatus、Oldenlandia affinis、Scorpio maurus palmatus、Tityus serrulatus、Tityus zulianuと命名されている。上に列挙した属のいずれか由来のあらゆるペプチド毒はいずれも、本方法の方法にかかる「変換」用であるとみなされるであろう。
【0069】
本明細書における実施例は、本発明を限定することを意図しておらず、またそのために使用されるべきではない。これらは本発明を例示するためのみに示されている。
【0070】
上で述べたように、多くのペプチドが変換に適した候補である。上、以降、及び配列表に記載されている配列は、変換することができる特に適したペプチドである。これらのペプチドのいくつかは、以下の実施例に記載されているような本明細書に記載の手順に従って「変換」された。
【0071】
配列番号60(1文字コード)
【化1】
【0072】
配列番号60(3文字コード)
【化2】
「ω-ACTX-Hvla」という名前であり、4-18、11-12、及び17-36の位置にジスルフィド架橋を有する。分子量は4096である。
【0073】
配列番号117(1文字コード)
【化3】
【0074】
配列番号117(3文字コード)
【化4】
「ω-ACTX-Hvla+2」という名前であり、6-20、13-24、19-38の位置にジスルフィド架橋を有する。分子量は4199である。
【0075】
配列番号118(1文字コード)
【化5】
【0076】
配列番号118(3文字コード)
【化6】
「rκ-ACTX-Hvlc」という名前であり、5-19、12-24、15-16、18-34の位置にジスルフィド架橋を有する。分子量は3912.15である。
【0077】
配列番号119(1文字コード)
【化7】
【0078】
配列番号119(3文字コード)
【化8】
「rU-ACTX-Hvla(「ハイブリッド」)+2」という名前であり、5-20、12-25、19-39の位置にジスルフィド架橋を有する。分子量は4570.51である。
【0079】
以下の実施例は例示を意図するものであり、更に詳しく書かれた説明を与え、本開示をサポートする。これらは本開示または請求項の限定を意図するものではない。
【実施例
【0080】
[実施例に関する一般情報]
配列番号119は、GSQYCVPVDQPCSLNTQPCCDDATCTQERNENGHTVYYCRAである。配列番号119は41個のアミノ酸を有している。適切に折り畳まれた場合、これは3つのジスルフィド結合を有する。これは、C1852765668の元素組成を有する。配列番号119は、「+2ハイブリッド」、「ハイブリッド+2」、または「プラス2ハイブリッド」と呼ばれる場合がある。
【0081】
配列番号37は、QYCVPVDQPCSLNTQPCCDDATCTQERNENGHTVYYCRAである。配列番号37は39個のアミノ酸を有しており、これらは配列番号119にある39個の「C」末端側アミノ酸と同じである。配列番号37は「ネイティブ」または「ネイティブハイブリッド」または「ネイティブハイブリッドペプチド」と呼ばれる場合がある。
【0082】
配列番号119のN-末端アミノ酸は「G」、グリシン、すなわちGlyである。配列番号119の2つのN末端アミノ酸は「GS」であり、これらのアミノ酸は配列番号37のN-末端部分ではない。配列番号37のN-末端は「Q」、すなわちグルタミンである。
【0083】
配列番号37のように、グルタミン、QすなわちGlnで終わる配列はグルタミンからピログルタミン酸へと自然に環化することが可能である。反応は、迅速に、自然に生じることができ、熱または酸を加えることを必要としない。ペプチド中でこのアミノ基のN-末端環化が時々生じることは知られており、これによってペプチドは17質量単位、原子単位、つまりダルトンを失うことになり、これは環化によってNHの17ダルトンを失うことに対応する。我々は、この反応を「NH反応」と呼び、これは我々が「変換」と呼ぶものではない。我々はこの反応について、以下の実施例5でより詳細に説明する。
【0084】
我々は、配列番号37のような毒性ペプチドに熱をかけた場合に全く異なる反応が起こると考えており、我々はこの反応を「変換」または「2H+O反応」という。全く異なる反応である「変換」によって、ペプチドの活性は驚異的に増加し、このペプチドはNH反応を経たペプチドに生じるものと比較して異なる特性を有する。
【0085】
「変換」による活性の増加をほぼ5倍すなわち5×にすることができ、データは下に示されている。毒性ペプチドが、我々が本明細書で述べている「変換」条件のいずれか、すなわち熱、圧力、蒸気、水溶液に関しての酸条件に曝された場合、我々は「2H+O反応」によって活性が増加したペプチドが得られると考えている。
【0086】
「変換」、すなわち「2H+O反応」によって、反応が出発する前よりも水分子が1つ少ない化合物が得られる。以降で我々は、「変換」で得られたペプチドが、HO1つ分少ない、すなわち18ダルトン少ないペプチドとなり、本質的に脱水されるが、「変換」される前のペプチドよりも遥かに頑丈で毒性のペプチドでもあることを示すデータを提示する。これは、本明細書では形態1またはピーク1と呼ぶ元の形態が、「変換」された形態2のペプチドと比較して18ダルトン多くなるようなペプチド変化の形態である。
【0087】
マススペクトルによって、2H+O反応はNH反応と同じではなく、2H+O反応によってNHの17ダルトンではなくHOの18ダルトンに対応する18ダルトンが失われることが示されることが証明される。我々は実施例1において2H+O反応でHOのダルトンを失うことを示し、実施例5でNHの17ダルトンを失うことを示す。
【0088】
<実施例1>
マススペクトルグラフのピーク1/形態1及びピーク2/形態2。図1~4では、以下に示される説明文及び記載と共に配列番号119のマススペクトルグラフが示されており、これは2つの明瞭なピークを有している。この2つのピークは、太字の大きい数字と、数字を指す括弧状の矢印で特定されている。我々は、この2つのピークをピーク1及びピーク2という。これらの図中のスペクトルは、WatersのNanoAcquity UPLCシステムで、オンラインでWater/Micromass四重極-飛行時間型(Q-Tof Premier)質量分析計を使用して生成し、分析した。
【0089】
図1はピーク1が11.84にあることを示す矢印を有するマススペクトルを示す。
【0090】
図2は、図1に示されているピーク1のデコンボリューションされたスペクトルでの、配列番号119のマススペクトルであり、デコンボリューションされた図1のピーク1は4562.8896の値を有する。
【0091】
図3はピーク2が12.82の数字であることを示す矢印を有するマススペクトルを示す。
図4は、図3に示されているピーク2のデコンボリューションされたスペクトルでの、配列番号119のマススペクトルであり、4544.8838の質量値を有する。
【0092】
図1~4は、ピーク1とピーク2の差が18ダルトンあるいは2H+Oであることを示している。
【0093】
図2図4の2つの質量値をお互い差し引くと、4562.8896-4544.8838=18.00であり、その値は水分子の質量値に相当する18である。ピーク2はペプチドの「脱水形態」、またはペプチドラクトン、または形態2とも呼ばれる。ラクトンは、パート2の始まりとして定義される。ピーク2は、ピーク1を示す構造と比較した場合にペプチドがその構造から水分子が失われた形態を成したことを示した。
ペプチド並びにピーク1及びピーク2によって示されるその形態は単離され、その活性が比較された。以下の実施例に、ペプチドのピーク1、形態1、ネイティブ、酸形態、ペプチド酸、元の、「変換」前、未変換、または「変換」されてない形態、のいずれかとして呼ばれる元々の形態の活性の比較が示されている。形態1は、パート2で規定されているラクトンのような形態2あるいはラクトン形態あるいはペプチドラクトンへと変わるために熱をかけられるか酸性化される形態あるいは酸形態である。これらの実施例のいくつかでは、熱処理は21psi、約121℃で20分のオートクレーブ処理である。あるいは、ペプチドが液体の形態の場合には、これはペプチドを、ピーク2、形態2、ラクトン形態、ペプチドラクトン(ラクトンはパート2で定義される)、ペプチドの脱水形態、またはペプチドの「変換」された形態、のうちのいずれかとして呼ばれるものへと「変換」するために7.0未満のpHに下げることを意味する。
【0094】
<実施例2>
飼料混入試験。図5のグラフは、ピーク2で示されるラクトン形態のペプチドの、あるいはペプチドラクトンの、処理後の、あるいは「変換」された、ペプチドの毒性と比べた、元の形態、ピーク1、ペプチド酸、未変換、のペプチドの毒性の比較を示している。両方の形態は対照とも比較される。図5は、空腹の幼虫に対照の飼料または処理した飼料を与えた後の1日目、2日目、3日目、及び4日目の幼虫死亡率(100%は16匹すべての幼虫が死亡)を示している。この試験で使用されたペプチドは配列番号119であり、これらは粉末618または618ハイブリッド粉末(両方の語は同じ意味である)と呼ばれる噴霧乾燥粉末に製剤された。飼料中に2ppt(1000分の1)相当の用量割合で昆虫に投与した。ピーク1は「変換」または処理前の元のペプチドである。これは、「従来型618」、または単に618粉末もしくは乾燥粉末とも呼ばれる。ピーク2は、「変換」あるいは処理後の、この場合では121℃、21psi(すなわち高温、蒸気、及び圧力)で20分間のオートクレーブ処理後のペプチドである。ピーク2は、図5で「オートクレーブ処理された6-18乾燥粉末」と名付けられている。図5は、水平軸すなわちX軸上の各数字に対して3つの組のデータすなわち棒についての、棒グラフの形態でのデータを示している。この数字は試験に使用した昆虫(ジュウイチホシウリハムシ(southern corn rootworm(SCR))と呼ばれる実際の昆虫)に餌を与えた後の日数であり、試験は、幼虫期に対して行われた。各試験を始めるために16匹の昆虫の幼虫が使用された。凡例が図5に示されており、これは、4日目の上の3つ組の棒の右にある4日目の上に見られる大きい暗い棒が、形態2のペプチドラクトンを昆虫に与えた結果であることを説明している。マススペクトルのピーク2は、ペプチドの「変換」された形態2、ペプチドラクトンの形態である。図5において、4日目のピーク2である黒い棒は、ペプチドの「変換」された形態2を幼虫に摂取させたことによる死亡率を示している。この事例では、形態2は形態1をオートクレーブ処理することによって「変換」された。4日目では、形態1、ペプチド酸、またはネイティブのもしくは未変換のペプチドについては約22%の死亡率なのに対し、形態2、ペプチドラクトンは95%のレベルのウリハムシ死亡率である。4日目の対照は5%未満の死亡率である。幼虫には、未処理の昆虫飼料すなわち対照も与えられた。これは、図5の細かいグレーのクロスハッチであるそれぞれの日の1番目の棒である。より大きい白と黒のクロスハッチ模様の2番目の棒は、マススペクトルのピーク1によって示される「変換」前のペプチドである形態1のペプチドの餌が与えられた幼虫についてのデータを示している。微細な暗色の棒の3番目の棒は、マススペクトル分析のピーク2によって示される形態2の餌が与えられた幼虫についてのデータを示している。餌を与えた後の1~4日目が示されており、ほとんどの死亡が4日目に生じている。Y軸は死亡した幼虫の割合を示しており、初めに16匹の生きている幼虫が使用された。
【0095】
昆虫に餌を与えて4日後、従来型618(「変換」前)とオートクレーブ処理された618(「変換」後)の死亡率の違いは顕著になった。オートクレーブ処理することで、幼虫が処理された餌を食べた後の死亡がより素早く迅速になった。618乾燥粉末形態1、ネイティブのペプチド、あるいは「変換」されていないペプチド、形態1が約22%であるのに対し、形態2で処理されて死亡した昆虫の数は約95%である。通常のペプチドをオートクレーブ処理しても予想のようにはハイブリッドタンパク質は不活性化せず、代わりにその活性が向上した。この効能における劇的な変化には複数の理由が存在するであろう。
【0096】
方法:昆虫:SCRは、Crop Characteristics(ミシガン州ファーミントン)から購入される。昆虫は濾紙上の「孵化間近」なものとして受け取った。昆虫は室温(26C)で孵化させ、これらが出荷の際に入っていたプラスチック袋に入れたままにした。昆虫は1~2日後に孵化し、これを孵化した日に分析のために使用した。
培地:SCRの幼虫の飼料は、Bioserve(製品番号F9800B、ニュージャージー州フレンチタウン)から購入した。100mLの飼料を作るため、100mLの脱イオン水を1.44gの準備された寒天と共に沸騰させる。寒天が完全に溶解するまで溶液を沸騰させる。その後、13.28gの飼料と460μlのKOHを添加し、培地を温かい撹拌プレート上で均一になるまで混合する。その後、培地を20mLずつ分割し、水浴中で65Cまで冷却する。
【0097】
処理:618処理は、25%AIの計算を使用して準備した。260mgの粉末を6.5mLの水と混合することにより10pptの溶液(10mg/mL)を作製した。溶液を十分に混合し、必要であれば全ての粉末を完全に溶解させるために超音波をかける。200mgの618粉末を上部にスクリューがついたガラス瓶の中に入れた。その後、キャップをゆるめた状態で20分間、ドライサイクルで粉末をオートクレーブにかけた。オートクレーブサイクルの後、粉末はいくらかの液体を吸収していた。その後、5mLの水を粉末に添加し、溶解させるためによく混合した。その後、5mLの水または処理物を20mLの65Cの飼料に添加し、よく混合し、その後1mLのDIを、繰り返しピペットを使用してバグコンド(虫用マンション、Bioserveの製品番号BAW128)の各ウェルへ移し、冷ました。
【0098】
その後、培地が冷めて固まった後(20分)、SCRを移すために絵筆を用いて、1つのウェル当たり1匹の昆虫を入れた。その後、ウェルを穴の開いた蓋(Bioserveの製品番号BACV16)で密閉し、昆虫実験室の照明付カートの上に置いた。
【0099】
<実施例3>
バイオアッセイの比較。バイオアッセイ比較の結果は表6及び7に示されている。ピーク1及びピーク2は、図1~4に示されている試験を行うために使用されたものと同様に、別個に用意され、別個に液体クロマトグラフィーカラムから単離された。配列番号119のペプチドはこの比較のために使用された。「変換」前ピークであるピーク1、または「変換」後ピークであるピーク2のいずれかを取り出して測定された濃縮物を作り、その後、これを注射によってイエバエに投与した。LD50すなわちハエの50%致死量は、pmol/gの濃度として決定された。ハエは12~20mgの重さであった。各試料に10匹のハエが存在した。ピーク1の形態とピーク2の形態の分子量の差は、基準のpmol/g溶液を調製する際に考慮しなかった。LD50溶液を形成する全ての溶液は、我々が「スーパーLC」またはスーパーリキッド濃縮物と呼ぶものから、RpHPLCすなわち逆相高圧液体クロマトグラフィーを使用して製造した。
【0100】
図6は、液体クロマトグラフィーによって各ピークフラクションが別々に用意された、ピーク1とピーク2のバイオアッセイの比較である。ピーク1のバイオアッセイの結果が示されている。
【0101】
図7は、液体クロマトグラフィーによって各ピークフラクションが別々に用意された、ピーク1とピーク2のバイオアッセイの比較である。ピーク2のバイオアッセイの結果が示されている。
【0102】
致死量50としてのバイオアッセイの比較の結果は、下の表1に示されている。
【0103】
【表1】
【0104】
<実施例4>
安定性pH試験。これは、安定性とpHの試験の両方であった。これは、「変換」前すなわち形態1と、「変換」後すなわち形態2のペプチドとを比較する。この試験は配列番号119のペプチドを使用した。この試験は、熱に加えて、pHを下げると、すなわち酸またはpHを7以下にするための任意の手段によってペプチド溶液のpHを下げると、形態1から形態2へのペプチドの「変換」が増加する結果になることを示す。
安定性pH試験の結果は図8~10に示されている。
【0105】
図8は、pH5.6における配列番号119のマススペクトルである。図9はpH3.9における配列番号119のマススペクトルである。図10はpH8.3における配列番号119のマススペクトルである。図8、9、及び10はピーク1及びピーク2を示しているが、具体的に同定していない。3つすべての図で、ピーク1はピーク2の左側であり、これらは共に図の中で大きなピークである。これらの3つの図、図8、9、及び10は、この試験で得られる結果のマススペクトルの典型である。これらの図からのデータ及び他のデータが下の表2~7に示されている。ピーク1はピーク2の前に溶出する。図8では、2つのピークの高さはほぼ同じである。図9では、ピーク2の方がピーク1より高い。図10では、ピーク1の方がピーク2より高い。この試験中の全ての試料は、2mLのpH2またはpH10の緩衝液を2mLのスーパーリキッド濃縮物(54PPT)に添加することによって調製した。試料はAgilentのHPLCで分析した。
5μLの注入体積を用いた。結果は下に記載されている。
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
【表7】
【0112】
この試験は、「変換」前のペプチド形態1であるピーク1と、「変換」されたペプチド形態2であるピーク2の、これらが水溶液から取り出され、様々なpHすなわち様々な酸性レベルに調整された後のピークを示している。この試験によって、溶液中では形態1から形態2への移動は困難であり、ほとんどないか、自然には生じないことが明らかになる。ペプチドの形態は、pHが7.0以下、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0、4.5、4,0、3.5、3.0、2.5、2.0またはそれ以下にならない限りは変換されず、3.2~3.5~3.8及び3~4の間の全てのpH値が好ましい。この試験はpHが低いほど、より速く形態1が形態2へと変換されることも明らかにする。形態2はペプチドの脱水された、または2H+O少ない、または18ダルトン少ない形態である。
【0113】
<実施例5>
「変換」なしのアイソフォーム。我々は、配列番号119が高温で分子量中の18ダルトンを失ってアイソフォームを形成し得ることを示した。実施例2では、我々は粉末としての配列番号119の元々の形態、形態1を、形態2に「変換」するためにオートクレーブ処理し、これをジュウイチホシウリハムシの幼虫群の飼料に添加することによって試験した場合に、殺虫効果が約5倍に増加することを示した。しかし、ハイブリッドペプチドである配列番号119におけるこの変形は、天然型ペプチドである配列番号37のようなペプチドでは注目されていなかった。配列番号119とは対照的に、配列番号37にはN末端Glnが存在し、これはそれ自体がNHを失って、すなわち分子量中の17ダルトンを失ってN-Pyrへと環化する場合がある。これら2つの化学的変性、HOを失うこととNHを失うことは、これらの2つのプロセスで失う分子量が非常に近いことから区別することは困難である。我々は、これらの化学的変性の両方が配列番号37のような配列(我々はこれを天然型ハイブリッドペプチドとも呼ぶ)に生じ得るかどうかを評価するために、分析用HPLCと高感度TOF LC/MS法を使用した。以下のデータは、このプロセスについて我々が本明細書で記載しているような適切な条件に置いた場合に天然型ハイブリッドペプチドに「変換」が生じ得るかを示している。
【0114】
材料及び方法。配列番号37は、ハイブリッドACTX-Hvla K.ラクティス株、pLB12D-YCT-24-1から作られた。Onyx100モノリス型C18HPLCカラムを備えたAgilent HPLCシステムを使用して、配列番号37のペプチドの生成及びアイソフォームの形成を分析した。
【0115】
LC-MSシステムは、SMICのLaunch MI Labにあり、Waters NanoAcquity UPLCシステムとオンラインで結ばれた、Waters/Micromass四重極飛行時間型(Q-Tof Premier)質量分析計からなる。試料は0.1%のギ酸水溶液で1:50に希釈した。
【0116】
(方法A)
5μLの試料を、流速5μm/分でWaters BEH130 C-18 Symmetryカラム(0.3mmID×15cm)に注入した。0.1%の移動相B(0.1%のギ酸が入った水)から40%の移動相B(0.1%のギ酸が入った100%アセトニトリル)まで25分かけて直線的な濃度勾配をかけ、25.5分で85%のB、27.5分で85%のB、そして28分で0.1%のBとすることで逆相分離を行った。
【0117】
(方法B)
10~30μLμLの試料を、流速1mL/分でWaters C-18 X-Bridgeカラム(4.6mmID×50mm)に注入した。99%の移動相A(0.1%のギ酸が入った水)から95%の移動相B(0.1%のギ酸が入った100%アセトニトリル)まで6分かけて直線的な濃度勾配をかけ、11分で95%のB、11.2分で1%のBで、15分かけて逆相分離を行い、全体の実行時間は18分であった。
【0118】
カラムの溶出物は、エレクトロスプレーイオン化源による質量分析計によってサンプリングされた。装置の制御並びにMS及びMS/MSデータの取得のためにWaters Masslynx 4.1ソフトウェアを用いた。多価イオンをデコンボリューションするためにMasslynx中のMaxEnt3アルゴリズムを使用し、モノアイソトピックなM+Hの質量値を計算した。
【0119】
(方法C)
LC-MSシステムは、エレクトロスプレーイオン化源を備えたWaters/MicromassZQスペクトロメーターから構成された。試料は、流速1mL/分でZorbax SB-C18カラム(2.1×30mm)に注入した。逆相分離は、ダイオードアレイ検出器(210~300nm)を使用して、96%の移動相A(0.1%のギ酸が入った水)から98%の移動相B(0.07%のギ酸が入った100%アセトニトリル)まで直線的な濃度勾配をかけることにより3.1分かけて行った。
【0120】
結果及び考察。配列番号37、別名天然型ハイブリッドペプチドの製造、pLB24-YCT-24-1株の製造は、炭素源として2%のソルビトールが添加された合成培地で、23.5Cで6日間培養した。細胞を除去した後にならし培地を集めた時、OD600は30に到達していた。ならし培地300μLをAgilent HPLC分析システムに注入したところ、天然型ハイブリッドペプチドの収率は164mg/Lと決定された。
【0121】
天然型ハイブリッドアイソフォームのAgilent HPLC評価。それぞれ300μLのロード量で、Agilent分析用HPLCで分析する前に、集めた天然型ハイブリッドのならし培地を、4C、室温(約23C)、及び50Cで24時間処理した。異なる温度で処理された天然型ハイブリッドペプチド試料のHPLCクロマトグラフが図11に示されている。3つのHPLCピークは、温度によってそのUV吸光度が変化し、これらは4.2分、5.4分、6.9分の保持時間と同定された。我々は、ピーク1が少なくとも疎水性のアイソフォームであり、ピーク3が最も疎水性のアイソフォームであると考えている。
【0122】
形態1を示唆するピーク1は、最初は最も多く存在するアイソフォームであったが、ピーク1/形態1は時間がたつ及び高温になるにつれて、ピーク2とピーク3のアイソフォームへと転換し得る。我々は、50℃で24時間処理すると、ほとんどのピーク1が消失(わずか5.6%まで)することを示す。逆に、ピーク2とピーク3のアイソフォームは温度と共に増加し、温度が高くなるにつれその増加は早まる。
【0123】
図12は、天然型ハイブリッドペプチドのアイソフォームのTOF MS評価(飛行時間型質量分析)の結果を示している。結果は、ベースピーク強度(BPI)クロマトグラフの形態で示されている。図11のピーク1、ピーク2、及びピーク3を同定するために、RT処理をした天然型ペプチドのならし培地を用いて飛行時間型質量分析を行った。飛行時間型MSは、MS装置から生じるアイソトピックm/z比を分離することができ、そのためこのMS法はペプチドのモノアイソトピック分子量を検出することができる。天然型ハイブリッドの理論的なモノアイソトピック分子量は4417.812である。TOF MSによって、ならし培地試料中の天然型ハイブリッドペプチドの4つのアイソフォームが検出された。
【0124】
TOF MSによって検出された1つのアイソフォームは4417.6826の分子量のものであり、これは「ネイティブ」な天然型ハイブリッドペプチド、すなわち未変性の天然型ハイブリッドを表し、これは図11のピーク1及び図12のピーク1としてラベリングされる。
【0125】
検出された2つ目のアイソフォームは4399.6455の分子量を有していた。このアイソフォームは「ネイティブ」なアイソフォームから分子量を18ダルトン失っており、これは水分子を失ったことを示唆している。このHOを失ったアイソフォームは、図11ではラベリングされず、図12のピーク4としてラベリングされる。
【0126】
検出された3つ目のアイソフォームは4400.6660の分子量を有していた。このアイソフォームは「ネイティブ」なアイソフォームから分子量を17ダルトン失っており、これはNHを失ったようである。このNHを失ったアイソフォームは、図11のピーク2、及び図12のピーク2としてラベリングされる。TEP融合ハイブリッド+2の以前の研究から、N-GlnペプチドはNHを失いつつN-ピログルタミン酸へと自然に環化するであろう。したがって、天然型ハイブリッドペプチドはN-Glnを有していることから、3番目のアイソフォームはN-GlnがN-Pyrへと環化したペプチドを表し、これは図12のピーク2として示されている。
【0127】
4つ目のアイソフォームは、HOとNHの両方の分子を失うことの組み合わせであり、その結果4382.6313の分子量のアイソフォームとなる。このHOとNHの両方を失ったアイソフォームは、図11のピーク3、及び図12のピーク3としてラベリングされる。
【0128】
これらの結果は、N-末端グルタミンのピログルタミン酸への環化と、脱水反応の、天然型ハイブリッドペプチド分子中で可能な少なくとも2つの化学的変性が存在することを示している。TOF MSベースピーク強度クロマトグラフからは、HOだけ失われたアイソフォームはほとんど検出されなかった。これは、3つのピークしか検出されなかったHPLC評価と一致する。HO分子を失うことによってペプチドをより疎水性にすることができ、NHを更に失うことにより、ペプチドを一層疎水性にすることができる。我々は、HOが失われると、HPLCクロマトグラフにおいて天然型ハイブリッドのピークがより遅い保持時間にシフトすると予測することができる。HOとNHyの両方を失われると、ピークが更に遅い保持時間へと一層シフトするであろう。
【0129】
「パート2」
パート1では、我々は、そのネイティブな状態すなわち我々が形態1と呼ぶペプチドから、我々が形態2と呼ぶ有用な状態へと変換するために、温度、圧力、強い及び/または弱い酸などの機械的または化学的手段で毒性ペプチドを人工的に操ることが可能な方法を述べている。形態2の構成は、本明細書では「カルボニル」、「活性化カルボニル」、「ラクトン」、「ラクトン状」、及び/または「ラクトン状形態」と呼ばれる場合がある。この文書では、我々は通常この形態2の構成を単にラクトンまたはペプチドラクトンと呼ぶ。この文書中ではこれらの化合物の構造は辞書的定義を有しておらず、ここで我々が述べる特性によってこれらは定義される。ここで、「ラクトン」は、われわれが形態2の化合物に起因すると考える特性を有する。これらの化合物はラクトンのように反応することから、我々は、「ラクトン」及びペプチド「ラクトン」という語を使用する。我々はこれらの製造方法、これらの同定方法、これらの単離方法、及びこれらの使用方法を述べる。我々は、これらのペプチドラクトンがネイティブなペプチドよりも生物学的に活性であり、これらが非常に有用かつ多用途であることを示すためのデータを提示する。これらは他の有益な化合物の製造に使用可能な安定な中間体である。パート2では、我々はペプチドラクトンを、様々な他の化合物を製造するための安定な中間体として有用な2つの異なる安定な活性化合物にする方法を示す。
【0130】
パート2では我々はペプチドヒドラジド、ペプチドヒドラゾンについて述べ、我々はこれらの製造方法及び使用方法を教示する。ヒドラジドあるいはペプチドヒドラジドは、パートIのペプチドラクトンとヒドラジンとの反応によって生じる。我々が述べる他の安定な中間化合物は、我々がヒドラゾンまたはペプチドヒドラゾンと呼ぶものである。ペプチドヒドラゾンは、ペプチドヒドラジドとカルボニル化合物との反応により生じる。ペプチドヒドラゾンについて特に有用なことは、これらがアルキル鎖及びまたはペグ化生成物などの他の有用な部位と共有結合することができ、その結果、様々な目的のために使用できることである。これら目的のいくつかについては我々がここで述べる。我々が述べるような方法でアルキル化タンパク質を形成する能力は非常に有用である。我々が述べるような方法でペグ化タンパク質を容易に製造する能力は、おそらく更に有用である。ペグ化タンパク質は、タンパク質の免疫原性を低下させるため、タンパク質の代謝を減らすため、及びタンパク質のバイオアベイラビリティを増加させるために使用されてきた。我々は、最初にここで開示する我々の技術が、非常に高い価値を有するペグ化タンパク質を作るために使用できると考えている。これらの技術は、以前に可能だったものよりも、より容易に、迅速に、且つ低コストで、アルキル化及びペグ化タンパク質並びに他の種類のタンパク質を製造するために使用することができる。ペグ化により強化される1つのタンパク質はインシュリンである。
【0131】
我々は、ペプチドラクトン、ペプチドヒドラジド、及びペプチドヒドラゾンを実証することができ、これらは「ペプチド中間体」、新規な、化学的に安定な、実施例11のPEG4ケトン(VIII)のように他の化合物と反応させるために使用される化学的に有用な化合物でもあり得るし、またこれらはペグ化ペプチドまたは実施例11のペグ化ペプチドヒドラゾン(実施例11ではペグ化されていない同様の毒性ペプチドよりも大きい活性を有する新規なペグ化毒性ペプチドヒドラゾンが示されている)のように最終製品でもあり得る。ペプチドラクトン及びペプチドヒドラジドは、これらのペプチドまたはペプチド酸に官能基が付加される部位である単一の別個の部位を与える。ペプチド及び毒性ペプチド製品及び中間体は、特徴的な化学を有する単一の別個の結合手を付与して合成分子もしくは生体分子をより有用かつ機能性にする。例えば、この化学によって、ポリペプチドの1つの部位でペグ化鎖によって一官能化することが可能である。もう1つの例は、これによって過ヨード化消化グリコシル化ペプチドまたは他の炭化水素などのペプチドまたはペプチド酸上の1つの別個の部位で分子と1つの連結が可能なことである。これらのペプチド中間体は、幅広い製品の製造に使用することができる。我々はこれらの毒性ペプチド中間体が有用であり、良好な活性を有し、典型的な毒性ペプチドよりも多くの反応の選択肢を与えることを示す。我々は、ペグ化毒性ペプチドは、ペグ化されていないペプチドよりもずっと活性であることを理解している。
【0132】
PEG化すなわちペグ化は、ペプチドのポリエチレングリコール及び/またはポリプロピレングリコールすなわち(PEG)への連結である。ペプチドに連結すると、各PEGサブユニットは2個または3個の水分子と固く会合するようになり、これは、ペプチドの水への溶解度を上げることと、その分子構造をより大きくすることの2つの機能を有する。タンパク質ペグ化の最初の生成では、PEGはタンパク質上のリシンやN末端アミンなどの複数の可能な部位のうちの1つ以上と結合する。この手法での問題は、変性されたペプチドの集団が、異なる数の連結したPEGを有する分子のみならず、異なるリシンに結合したPEGを有する分子の混合物も含み得ることである。この変性の多様性は最終製品の純度を下げ、また再現性を低くする。
【0133】
より制御された方法でタンパク質にPEGを付加するために使用される、2つの他のより最新の手法が基本的に存在し、これは、A)より反応性が高くなるようにPEGを改造する、またはB)PEGとの連結のための特別な部位が設けられるようにタンパク質を改造する、のいずれかである。
【0134】
PEGを改造する、PEG法タイプA)は、1979年12月18日に発行されたDavisらのUS4,179,337に記載されており、これは参照により本明細書に包含され、特にはペグ化に好適なポリマーの記載に関して包含される。この特許には、末端基を変更すること、またはペプチドへの活性を有する連結基をペプチドに付加すること、のいずれかによってポリマーの一端を修正し、その活性化したポリマーとペプチドとを反応させることが記載されている。この方法は、ペグ化インシュリン及びその他のホルモンに使用された。US4,179,337参照のこと。
【0135】
PEGではなくペプチドを改造する、タイプB)のPEG法は、ペプチドの免疫原性を減らしながらもペプチドの生物学的機能への干渉を最小限にするように選択された位置で位置特異的PEG化を生じさせるのに望ましい場所にシステインを付加することである。PEG-マレイミド、PEG-ビニルスルホン、PEG-ヨードアセトアミド、及びPEG-オルトピリジルジスルフィドは、PEG化なしのシステイン残基のために作られたチオール反応性PEGである。この手法は、モノペグ化されたヒト成長ホルモン類似物の製造などの数多くの方法で使用されてきた。Pharmaceutical Technology、35巻のBaosheng LiuによるPeptide PEGylation:The Next Generationを参照のこと。
【0136】
本明細書に記載の方法は、これまでに使用されていたいずれの方法と比較しても新規で異なる方法であり、これによってタンパク質の特異的な位置にPEGを特異的に連結することが可能になる。我々が述べる新規な方法によって、PEGカルボニルのペプチドヒドラジドへの反応を利用したペプチドへのPEGの連結が与えられ、これは以下で詳細に述べる。これは、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとからなる群から選択される約500~約20,000ダルトンの分子量を有する任意の直鎖または分岐のポリマーと共に使用することができる。ポリマーは、未置換のものであってもよいし、置換基が5個未満の炭素原子を有するアルコキシ基またはアルキル基によって置換されていてもよい。PEG毒性昆虫ペプチドを製造できることの利点は数多く存在し、上の「発明の概要」で述べられている。
【0137】
[一般的反応]
I)ペプチドヒドラジド
ペプチドヒドラジドは、ペプチドラクトン(パート1参照)とヒドラジンから作られ、ペプチドヒドラジドを形成する。ペプチドヒドラジドは、本質的に3段階の手順で作られる。ペプチドラクトンをヒドラジン一水和物と混合する。混合物を溶液になるまで撹拌してペプチドヒドラジドを形成する、そしてペプチドヒドラジドを精製する。
【0138】
当業者であれば、この手順の多くのバージョンを生み出すことができるであろう。例えば、ペプチドラクトンとヒドラジンの混合物は溶液を形成するためによく撹拌する必要がある。この溶液中で形成されたペプチドヒドラジンはその後分取HPLCなどの様々な方法によって精製することができる。
【0139】
我々は、ペプチドラクトンの水溶液と、ヒドラジン一水和物として添加されるヒドラジン溶液との混合、及びその後の室温での十分な撹拌の両方を教示する。ペプチドヒドラジドはその後精製することができる。我々は、精製のためにHPLCを使用したが、当業者に公知の他の選択肢も利用可能である。このタイプの手順は通常の化学者に周知であり、また本明細書に概説されている手順は当業者によって大きく変更されてもよい。回収及び精製のために他の選択肢を用いてもよい。下の実施例では、比較的純粋な試料のラクトンと純粋ではない試料のラクトンの両方が出発物質として用いられており、これらの両方で高純度のペプチドヒドラジド(I)が得られる結果となった。これらは実施例6に記載されている。他の手順を使用することもできるであろう。実施例6a及び6(b)では、ペプチドラクトンとヒドラジドは共に混合され撹拌される。精製工程は様々に変更することができ、様々な選択肢が利用可能であり、また当業者に知られている。
【0140】
II)ペプチドヒドラゾン
ペプチドヒドラゾンとペプチドヒドラジドは重要な中間体である。ペプチドに望まれる官能基が何であるかに応じて、様々な種類のペプチドヒドラゾンを製造することができる。ここでは我々は異なるペプチドヒドラゾンの様々な実施例を示す。ヒドラゾンの例は実施例8~11に示されている。当業者はこれらが実施例を限定しない代表的で例示的なものに過ぎず、他の試薬や条件も使用できることを理解するであろう。
【0141】
これらの実施例では、1種またはもう1つの種類のカルボニルと共に、ペプチドヒドラジドを使用して、式、(II)、(III)、(VI)、及び(IX)の実施例のような新規なペプチドヒドラゾンを形成する。新規なペグ化タンパク質を生成する反応性カルボニル化合物のいくつかの例が示される。
【0142】
ヘキサナールがヒドラジドに添加されるとヒドラゾン(II)を生成する。
【0143】
上で論じた反応は、以下の説明で示されている詳細と共に、以下の構造に示されており、裏付け資料は図13~26中で見ることができる。
【0144】
実施例6には、ペプチドヒドラジド(I)またはヒドラジド(I)と呼ばれるペプチドヒドラジドが示されており、これはペプチドラクトンから作ることができる。質量分析データは図13及び14に示されている。
【0145】
実施例7には、通常の酸の形態のペプチドがそのヒドラジド形態にされた場合、ペプチドヒドラジドがより迅速に機能することを示すデータが提示されている。両方の化合物のために使用された毒性ペプチドはハイブリッド+2を出発物質とした。ハイブリッド+2がヒドラジドに変換された後は、2つの化合物(ペプチド酸形態及びペプチドヒドラジド形態)は異なる化合物であるが、これらは非常によく似ており同じペプチド骨格を有する。正味の本質的な違いは、一方のペプチドにはハイブリッド+2のヒドラジド(I)を形成するためにヒドラジンが添加されたことである。これらの2つの試料はその後、ハエに対して試験された。試料のうちの1つ、ペプチドの通常の酸形態またはペプチドのヒドラジド形態(すなわちヒドラジド(I))のいずれかを、2つのハエのグループの一方に曝露した。ハエの1つのグループはヒドラジド形態の毒性ペプチド、すなわちヒドラジド(I)に曝露し、ハエの他方のグループはそのネイティブな酸形態の毒性ペプチドに曝露した。実施例7中で下に示されているデータは、ヒドラジドが同じペプチドのネイティブな酸形態よりも早く昆虫を殺すことを示している。
【0146】
実施例8は、ペプチドのヒドラゾン形態を作るためにヘキサナールをどのように使用できるかを示している。実施例8では、ヒドラジド(I)から出発し、ヘキサナールが添加され、その結果、ここで式(II)またはヒドラゾン(II)と呼ばれるヒドラゾンとなる。質量分析データは図15及び16に示されている。
【0147】
実施例9は、実施例8とは異なるヒドラゾンの合成を示している。実施例9では、ペプチドヒドラゾンを作るために、化合物「O-[2-(6-オキソカプロイルアミノ)エチル]-O’-メチルポリエチレングリコール(IV)(分子量約2’000)」が使用される。質量分析データは図17及び18に示されている。
【0148】
実施例10は、ヒドラゾンを作るための別の方法を示している。ここでは、これはヒドラジドとアクリルケトンから作られるヒドラゾンである。これは、アクリルケトン(V)を使用した、ヒドラジド(I)からのヒドラゾン(VI)の合成である。質量分析データは図19~22に示されている。
【0149】
実施例11は、PEG4ケトン(VIII)を用いたヒドラゾン(IX)の合成を述べている。この実施例は、3-アセチルアクリル酸とカルボジイミドを使用してPEG4ケトン(VIII)を製造する実施例11(a)から始まる。その後、実施例11(b)でPEG4ケトン(VIII)とヒドラジドIが使用されてヒドラゾン(IX)が製造される。質量分析データは図23~26に示されている。
【0150】
[実施例6~11:詳細及びデータ]
そのネイティブな酸形態のペプチド、パート1で述べられたペプチドラクトン、及びパート2のペプチドヒドラジドを表す典型的な式が示される。他のヒドラジド及びヒドラゾンは実施例8~11で述べる。
【0151】
【化9】
【0152】
<実施例6:ペプチドヒドラジド(I)の合成>
この実施例では、ペプチドヒドラジド(I)を合成するための2つの方法を示す。最初の方法の実施例6(a)では、ペプチドラクトンの出発溶液は比較的純度の高い、HPLC分取したものである。2つ目の方法の実施例6(b)では、ペプチドラクトンの出発溶液は純度が低く、形態1と形態2の両方を含んでいる。すなわち、ペプチドラクトンと混ざったペプチドが存在する。両方の手順でも、ペプチドヒドラジドの同じマススペクトルが得られる。
【0153】
実施例6(a)。1mLの水に入った100mgの純粋な形態2のペプチド、ペプチドラクトンを100μLのヒドラジン一水和物で処理し、室温で2時間撹拌した。この材料を分取HPLC(アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸のグラジエントで溶出)で少しずつ精製した。適切なフラクションを合わせ、減圧で濃縮して体積を減らした。液体を-80℃の冷凍庫で冷凍し、その後凍結乾燥機で凍結乾燥することによって36.94mgのペプチドヒドラジド(I)を白色固体として得た。
【0154】
実施例6(b)。スーパーリキッド濃縮物(形態1と形態2(別名ペプチドラクトン)のペプチド混合物、14mg/mL)の溶液(25mL)を75℃で終夜撹拌した。冷却後、HPLCはほぼ形態2ペプチド、ペプチドラクトンを示した。溶液を2mLのヒドラジン一水和物で処理し、室温で2時間撹拌した。この材料を少しずつ分取HPLC(アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸のグラジエントで溶出)で精製した。適切なフラクションを合わせ、減圧で濃縮して体積を減らした。液体を-80℃の冷凍庫で冷凍し、その後凍結乾燥機で凍結乾燥することによって252.2mgのペプチドヒドラジド(I)を白色固体として得た。方法Bによるヒドラジド(I)のLCMS ESI/MS 4578.00(M+H)、保持時間3.6~4.1分。図13及び14参照。
【0155】
<実施例7:ハイブリッド+2と比較したヒドラジド(I)のハエへの注射>
実施例7では我々はその典型的な酸の形態、形態1すなわちペプチドの形態の毒性ペプチドと、ここで示される式でラベリングされるようなペプチドヒドラジド、すなわちペプチドヒドラジド(I)へと変換された後の同じ毒性ペプチドとを比較する。注射のために次の試料が準備される:
1.100ng/μLのヒドラジド(I)水溶液。この溶液を水で希釈して50ng/μLと5ng/μLの溶液を作製する。
2.100ng/μLのハイブリッド+2水溶液。この溶液を水で希釈して50ng/μLと5ng/μLの溶液を作製する。
適切な標識をした、注射されるハエの容器を用意し、18ゲージの針で容器の蓋に空気穴を開ける。ハエを選択する。完全に孵化して1日目及び2日目のハエを使用する。1日目とは完全に孵化した日である。COガスラインを開き、針でCOガスを入れることにより箱の中でハエを動かなくする。ハエが動かなくなった後、ハエをCOプレートに移し、これらを眠らせたままにする。ハエの重さを量り、12~18mgの質量を有するものを注射の生物学的分析に使用する。
【0156】
注射を行う。30ゲージの針がついた1mlのシリンジに100~200μlの溶液を装填し、装填したシリンジをマイクロアプリケーターに取り付ける。マイクロアプリケーターの押し棒を回転させてシリンジから気泡を抜く。その後、マイクロアプリケーターの注入体積を0.5μlに設定する。押し棒を回転させて背面の胸部から上で調製した溶液0.5μlをイエバエに注射する。上で調製したそれぞれの溶液につき10匹のハエに注射する。空気穴付きの蓋を有する、準備しておいたカップに注射したハエを入れる。2つのWhatman♯4 4.2cmろ紙ディスクを入れる。殺菌した1mLのnanopure水を添加する。全ての注射したハエを室温におく。注射3時間後、5時間後、21時間後、及び24時間後に注射したハエを記録する。陰性対照群が20%超の死亡率だった場合、上述したようなハエの注射をやり直す。4つすべての記録時点で、水と麻酔の対照群は0%の死亡率であった。
【0157】
5時間の時点では、同じ濃度のハイブリッド+2が10%の死亡率だったのに対し、100ng/μLの濃度のヒドラジドは80%の死亡率であった。
【0158】
<実施例8:ヘキサナールからのヒドラゾン(II)>
【化10】
【0159】
5mg(0.00109mmol)のヒドラジド(I)が100μLの水に入っている溶液を、0.16μL(0.00133mmol)のヘキサナールが10μLの無水エタノールに入っている溶液で処理した。混合物を1時間撹拌した。490μLの無水エタノールの中に5mgのヘキサナールと2.86μLの酢酸が入ったストック溶液を作製した。反応を10.9μLのストック溶液で処理し、混合後2時間放置した。混合物を約60℃で1時間加熱した。方法BによるLCMS ESI/MS 4661.60(M+H、ヒドラゾン)、保持時間6.8~7.1分。図15及び16参照。
【0160】
<実施例9:O-[2-(6-オキソカプロイルアミノ)エチル]-O’-メチルポリエチレングリコール(IV)(分子量約2’000)からのヒドラゾン(III)>
【化11】
【0161】
O-[2-(6-オキソカプロイルアミノ)エチル]-O’-メチルポリエチレングリコール(分子量約2’000)(IV)(10.9mg)が100μLの無水エタノールに入っているストック溶液を、1滴の酢酸で処理した。注:O-[2-(6-オキソカプロイルアミノ)エチル]-O’-メチルポリエチレングリコール(分子量約2’000)は、分子量2000前後に分布している化合物の混合物であり、単一の化合物ではない。5mg(0.00109mmol)のヒドラジド(I)が100μLの水に入っている溶液を、O-[2-(6-オキソカプロイルアミノ)エチル]-O’-メチルポリエチレングリコール(IV)(分子量約2’000)のストック溶液22μL(0.0012mmol)で処理した。混合後、混合物を室温で放置した。O-[2-(6-オキソカプロイルアミノ)エチル]-O’-メチルポリエチレングリコール(IV)(分子量約2’000)のストック溶液の残部を小分けして添加し、混合物を混合後終夜放置した。方法BによるLCMS ESI/MS保持時間7.2~7.6分。図17及び18参照。
【0162】
<実施例10:アクリルケトン(V)を用いたヒドラジド(I)からのヒドラゾン(VI)>
(実施例10(a):アクリルケトン(V)の合成)
【化12】
【0163】
4mLのジクロロメタンと4mLのテトラヒドロフランの中に、0.5g(4.38mmol)の3-アセチルアクリル酸、0.924g(4.82mmol)のN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、及び0.651g(4.82mmol)の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt)が入った混合物を、窒素下室温で10分間撹拌した。反応を氷浴で冷却し、8mLのジクロロメタンの中に0.443g(4.38mmol)のヘキシルアミンが入った溶液で処理した。反応を冷やして1時間、そして室温で終夜撹拌した。反応をジクロロメタンで希釈し、有機物を飽和炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、次いで水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮することによって黄色固体を得た。固体を取り出してジクロロメタンに入れ、シリカゲルのカラムで精製した(50%酢酸エチル/ヘキサンで溶出)。適切なフラクションを合わせ、減圧下で濃縮することによって537.06mgのアクリルケトン(V)を白色固体として得た。方法CによるLCMS ESI/MS 198.1(M+H)、196.02(M-H)。図19及び20参照。
【0164】
(実施例10(b):アクリルケトン(V)からのヒドラゾン(VI))
【化13】
【0165】
150μLの水に5mg(0.00109mmol)のヒドラジド(I)が入った溶液を、48μLの無水エタノールに入った0.96mg(0.0048mmol)のアクリルケトン(V)で少しずつ処理した。各添加後に混合物を30分間撹拌し、その後終夜撹拌した。方法BによるLCMS ESI/MS 198.24(M+H、アクリルケトン);4760.60(M+H、ヒドラゾン)、保持時間5.1~5.8分。図21及び22参照。
【0166】
<実施例11:3-アセチルアクリル酸から合成されたPEG4ケトン(VIII)を用いたヒドラゾン(IX)>
(実施例11(a):PEG4ケトン(VIII)の合成)
【化14】
【0167】
1mLのジクロロメタンと1mLのテトラヒドロフランの中に、137.6mg(1.21mmol)の3-アセチルアクリル酸、254.3mg(1.327mmol)のN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、及び179.25mg(1.327mmol)の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt)が入った混合物を、窒素下室温で10分間撹拌した。反応を氷浴で冷却し、2mLのジクロロメタンの中に250mg(1.21mmol)のm-PEG4-アミン(VII)が入った溶液で処理した。反応を冷やして1時間、そして室温で終夜撹拌した。反応をジクロロメタンで希釈し、有機物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、次いで水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮することによって302.29mgのPEG4ケトン(VIII)をオイルとして得た。方法CによるLCMS ESI/MS 304.1(M+H)、302.1(M-H)。図23及び24参照。
【0168】
(実施例11(b):PEG4ケトン(VIII)を用いたヒドラゾン(IX))
【化15】
【0169】
150uLの水に5mg(0.00109mmol)のヒドラジド(I)が入った溶液を、2.0mg(0.0066mmol)のPEG4ケトン(VIII)で少しずつ処理した。各添加後に混合物を30分間撹拌した。方法BによるLCMS ESI/MS 304.28(M+H、PEG4ケトン);4867.70(M+H、ヒドラゾン)、保持時間4.7~5.1分。図25及び26参照。
【0170】
実施例は例示を意図しており、請求項及び請求項に係る発明を限定するものではない。ここに示されているものの数多くの変形及び様々な改造を当業者が行えることは当然であろう。
(1)次の工程を含み、任意選択的にはこれらの工程を文字順で含む、毒性ペプチドを含むペプチドの活性または毒性の増加方法。
a)水と前記ペプチドを混合して、液体中にある前記ペプチドまたは半液体中にある前記ペプチドの形態の、水溶液または水性エマルションを形成する工程であって、前記水溶液または水性エマルションが少なくとも10%の水からなる工程;
b)前記ペプチドの前記水溶液または水性エマルションのpHを測定する工程;
c)前記溶液またはエマルションのpHをpH7.0未満に調整する工程
(2)前記水溶液または水性エマルションが、約1.0~約6.5、約2.0~約6.0、約2.5~約5.5、約3.0~約5.0、約3.0~約4.0のpHに調整される、または約3.2、3.4、3.5、3.6、または3.8のpHに調整される、(1)に記載の方法。
(3)前記pHの調整が強酸または弱酸を使用して行われ;前記強酸が使用される場合には、前記強酸によるpH調整が、塩素酸(HClO )、塩酸(HCl)、臭化水素酸、(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、リン酸(H PO )、硫酸(H SO )、過塩素酸(HClO )、及び硝酸(HNO )のいずれか、またはこれらの酸の組み合わせから選択され、リン酸、硫酸、または硝酸から選択される強酸を使用することが注目され;前記弱酸が使用される場合には、前記弱酸によるpH調整が酢酸及び/またはシュウ酸から選択される弱酸を独立に、または組み合わせて使用して行われる、(1)に記載の方法。
(4)前記pHの調整時、前記水溶液または水性エマルションは乾いた熱、すなわち蒸気もしくは圧力なしの温度上昇、または蒸気及びもしくは蒸気ありの温度上昇、またはこれらのいずれかの組み合わせ、を含む熱に曝露され、任意選択的には前記pHの調整の後にペプチドが乾燥粉末または顆粒の形態へと乾燥される、(1)~(3)のいずれか1つに記載の方法。
(5)前記ペプチドの水溶液またはエマルションの状態時に前記溶液またはエマルションの前記pHを7.0未満に下げることによる、共有結合している2H+Oまたは分子のうちのいずれか1つ以上のペプチドからの除去方法。
(6)任意のペプチド、任意の毒性ペプチド、配列表にある任意のペプチド;配列番号119のペプチド;配列番号37のペプチド;本明細書及び請求項に記載されているいずれかのペプチド、を使用する、(1)~(5)のいずれか1つに記載の方法。
(7)前記ペプチドまたは毒性ペプチドで処理されるべき昆虫の生息場所への適用に適した、(1)~(6)のいずれか1つに記載の方法からの毒性ペプチドの前記ペプチドの、製剤状態の殺虫性組成物。
(8)前記ペプチドが入った水溶液またはエマルションのpHが7.0未満に下げられ、ペプチドの共有結合している2H+Oまたは分子のうちのいずれか1つ以上が除去される、毒性ペプチド。
(9)ペプチドの毒性及び/または活性を増加させるための方法であって、
a)純粋な形態1のペプチドすなわちペプチド酸として、または約10%未満の水を含む組成物として、前記ペプチドを準備する工程;
b)前記形態1のペプチドすなわちペプチド酸を制御可能なチャンバーまたは加熱台の中に置く工程;
c)前記ペプチドを圧力ありまたは圧力なしで、蒸気ありまたは蒸気なしで、望ましい温度まで加熱する工程;
d)形態1のペプチドすなわちペプチド酸のうちの望ましい量が、形態2のペプチドすなわちペプチドラクトンに変換されるまで、前記加熱したペプチドを、望ましい温度、圧力、及び蒸気の状態に保持する工程;
を含み、
任意選択的かつ独立的には、工程a)~d)は次の条件、すなわち
任意選択的かつ独立的に、制御可能なチャンバーを0~500℃の温度と大気圧~500psiの圧力を維持可能である;
任意選択的かつ独立的に、前記ペプチドをおおよそ次の温度まで加熱すること、すなわち少なくとも約10℃以上であり、約200℃、300℃、または最大でも400℃から選択される最大温度以下まで加熱する;
任意選択的かつ独立的に、前記ペプチドを10℃~20℃、20℃~30℃、30℃~40℃、40℃~50℃、50℃~60℃、60℃~70℃、70℃~80℃、80℃~90℃、90℃~100℃、100℃~110℃、110℃~120℃、120℃~130℃、130℃~140℃、140℃~150℃、150℃~160℃、160℃~170℃、170℃~180℃、180℃~190℃、190℃~200℃、200℃~210℃、210℃~220℃、220℃~230℃、230℃~240℃、240℃~250℃、250℃~260℃、260℃~270℃、270℃~280℃、280℃~290℃、290℃~300℃、300℃~400℃、及び400℃~500℃のうちの温度、温度範囲、または温度範囲の組み合わせのうちのおおよそいずれかから選択される温度に少なくとも加熱する;
任意選択的かつ独立的に、前記圧力をa)約10psi~約40psi、b)約15psi~約35psi、c)約18psi~約25psi、d)約21psi、の圧力または圧力範囲のうちのいずれかから選択する;
任意選択的かつ独立的に、選択される温度及び圧力に応じて、a)約5分~約40分、b)約10分~約30分、c)約15分~約25分、d)約21分、の時間の範囲で、前記ペプチドを選択される前記温度及び圧力に維持する;
任意選択的かつ独立的に、前記ペプチドを、a)約100℃~約140℃、約10psi~約40psiの圧力、約5分間~約40分間;b)約110℃~約130℃、約15psi~約35psiの圧力、約10分間~約30分間;c)約115℃~約125℃、約18psi~約25psiの圧力、約15分間~約25分間;d)約121℃、約21psiの圧力、約20分間;の温度、圧力、及び時間まで加熱及びそこで保持する;
任意選択的かつ独立的に、前記圧力が大気圧以下であり、前記温度を少なくとも50℃~60℃またはそれ以上の温度から選択する;
任意選択的かつ独立的に、50℃~60℃、60℃~70℃、70℃~80℃、80℃~90℃、90℃~100℃、100℃~110℃、110℃~120℃、120℃~130℃、130℃~140℃、140℃~150℃、150℃~160℃、160℃~170℃、170℃~180℃、180℃~190℃、190℃~200℃、200℃~210℃、210℃~220℃、220℃~230℃、230℃~240℃、240℃~250℃、250℃~260℃、260℃~270℃、270℃~280℃、280℃~290℃、290℃~300℃、300℃~400℃、及び400℃~500℃の温度、温度範囲、または温度範囲の組み合わせを使用する;
条件で行われる、方法。
(10)前記ペプチドが、
a)加熱されて約100℃より高い温度で少なくとも約1時間保持される;
b)加熱されて約80℃~約120℃の温度で少なくとも約2時間保持される;
c)加熱されて約50℃~約80℃の温度で少なくとも約3時間保持される;
または前記ペプチドが、
a)加熱されて約180℃より高い温度及び少なくとも約5psiの圧力で少なくとも約5分間保持される;
b)加熱されて約100℃より高い温度及び少なくとも約10psiの圧力で少なくとも約10分間保持される;
c)加熱されて約80℃~約120℃の温度及び少なくとも約10psiの圧力で少なくとも約30分間保持される;もしくは
d)加熱されて約50℃~約80℃の温度で少なくとも1時間保持される;
または前記ペプチドが、
a)加熱されて約200℃~約300℃の温度及び約5~約10psiの圧力で約5~約10分間保持される;
b)加熱されて約150℃~約200℃の温度及び約10~約30psiの圧力で約5~約30分間保持される;
c)加熱されて約80℃~約150℃の温度及び約10~約20psiの圧力で約20~約60分間保持される;もしくは
d)加熱されて約50℃~約80℃の温度及び約10~約40psiの圧力で約30~約60分間保持される;
または前記ペプチドが、
a)加熱されて約110℃~約130℃の温度及び約10~約20psiの圧力で約10~約20分間保持される;もしくは
b)加熱されて約121℃の温度及び約21psiの圧力で約20分間保持される、
ことを含む多段階手順のいずれかに従って処理される、(9)に記載の方法。
(11)昆虫捕食者のペプチドラクトンをヒドラジンと混合し、精製することでペプチドヒドラジドを得ることを含む、昆虫捕食者ペプチドをペプチドラクトンの形態からペプチドヒドラジドの形態へと変換する方法によって製造される、ペプチドヒドラジド製品の製造方法及び前記ペプチドヒドラジド製品。
(12)前記ペプチドラクトンを水中に用意し、ヒドラジン一水和物を添加し、混合物を撹拌してペプチドヒドラジドを形成し、これを任意選択的には凍結、解凍、及び精製することで精製されたペプチドヒドラジドを得る、(11)に記載の方法及び製品。
(13)前記昆虫捕食者ペプチドが、約20個のアミノ酸から約50個のアミノ酸まで大きさが多様であり、2個、3個、もしくは4個のシスチン結合、または、3個もしくは4個のシスチン結合を有する、(12)に記載の方法及び製品。
(14)前記ペプチドラクトンが、配列表にある任意のペプチド、並びに、配列表にある任意のペプチドと80%超の相同性を有する配列表にある任意のペプチド及び任意のペプチド、または85%、90%、95%、もしくは99%以上の相同性があり3個もしくは4個のシスチン結合を有する任意の配列、から調製される、(13)に記載の方法及び製品。
(15)方法aまたは方法bのいずれかを使用することが可能な、(14)に記載のハイブリッド+2ペプチドと名付けられた、(14)に記載の方法及び製品であって、
方法a;a)100mgの精製した形態2のペプチド、ハイブリッド+2ペプチドラクトンが1mLの水に入っている溶液から出発する、
b)100mgの前記ペプチドラクトンの1mLを100μLのヒドラジン一水和物で処理し、室温で撹拌して、任意選択的には2時間撹拌して、ペプチドヒドラジドを形成する、
c)分取HPLC(アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸のグラジエントで溶出)で前記ペプチドヒドラジドの溶液を精製する、
d)適切なペプチドヒドラジドのフラクションを選ぶ、
e)適切なペプチドヒドラジドのフラクションを合わせて減圧下で濃縮して体積を減らす、
f)前記減らした体積のペプチドヒドラジドを0℃未満で、任意選択的には-80℃で、凍結する、
g)前記ハイブリッド+2ペプチドヒドラジドを、任意選択的には凍結乾燥機で、凍結乾燥してハイブリッド+2ペプチドヒドラジド(I)を得る、
または、
以下を含む方法b;
a)ペプチド酸である形態1と形態2との混合物であるスーパーリキッド濃縮物(Super Liquid Concentrate)25mLの溶液を、任意選択的には約50℃~90℃で、任意選択的には75℃で、撹拌する、
b)溶液を冷ます、
c)溶液を、任意選択的には2mLである、ヒドラジン一水和物で処理して、任意選択的には室温で2時間、撹拌する、
d)任意選択的にはアセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸)のグラジエントで溶出する、分取HPLCで一部を精製する、
e)フラクションを集めて濃縮し、任意選択的には減圧下で、体積を減らす、
f)残っている液体を凍結して、任意選択的には-80℃及び凍結乾燥機で凍結乾燥してハイブリッド+2ペプチドヒドラジドを得る、
を含む、方法及び製品。
(16)a)ヒドラジド水溶液を混合し、ヘキサナールのエタノール溶液を添加し、撹拌すること、
b)ヘキサナール、酢酸、及びエタノールからなるストック溶液で処理して撹拌すること、
c)ヘキサナール、酢酸、及びエタノールからなるストック溶液を添加すること、
d)混合し、放置し、その後任意選択的に加熱してヒドラゾンを生成すること、
を含む、昆虫捕食者のペプチドをペプチドヒドラジドからペプチドヒドラゾンへと変換するプロセスによって作られる、ペプチドヒドラジド製品の製造方法及び前記ペプチドヒドラジド製品。
(17)a)ヒドラジド(I)水溶液をヘキサナールのエタノール溶液と混合して撹拌すること、
b)(16)に記載のストック溶液を少量添加すること、
d)混合し、放置し、その後任意選択的に加熱してヒドラゾン(II)を生成すること、
を含む、前記製品がペプチドヒドラゾン(II)である(16)に記載の方法及び製品。
(18)複合グリコールを強酸または弱酸で酸性化することと、ヒドラジドを添加してよく混ぜてペプチドグリコールヒドラゾンを製造することとを含む、昆虫捕食者のペプチドをペプチドヒドラジドからペプチドヒドラゾンへと変換するプロセスによって作られる、ペプチドヒドラジド製品の製造方法及び前記ペプチドヒドラジド製品。
(19)a)O-[2-(6-オキソカプロイルアミノ)エチル]-O’-メチルポリエチレングリコール(IV)と呼ばれる化合物のエタノール混合物のストック溶液に酢酸を1滴添加すること、
b)工程aからの、酢酸で処理されたO-[2-(6-オキソカプロイルアミノ)エチル]-O’-メチルポリエチレングリコール(IV)(分子量約2’000)のストック溶液を使用し、ヒドラジド(I)の水溶液にこれを添加すること、
c)混合し、室温で放置すること、
d)O-[2-(6-オキソカプロイルアミノ)エチル]-O’-メチルポリエチレングリコール(IV)(分子量約2’000)のストック溶液の残部を分割して添加し、混合後終夜放置しておくことでペプチドヒドラゾン(III)を生成すること、
を含む、前記製品がペプチドヒドラゾン(III)である(18)に記載の方法及び製品。
(20)アクリルケトンをヒドラジドに添加してヒドラゾンを形成することを含む、昆虫捕食者ペプチドをペプチドヒドラジドからペプチドヒドラゾンへと変換するプロセスによって製造される、ペプチドヒドラジドケトン製品の製造方法及び前記ペプチドヒドラジドケトン製品。
(21)エタノールに入ったアクリルケトン(V)をヒドラジド(I)水溶液に添加して混合することを含む、前記製品がペプチドヒドラゾン(VI)である(20)に記載の方法及び製品。
(22)PEG4ケトン(VIII)をヒドラジド(I)の水溶液に添加して混合することでヒドラゾン(IX)を形成することを含む、前記製品がペプチドヒドラゾン(IX)である(20)に記載の方法及び製品。
(23)共有結合している2H+OまたはH Oまたは分子のうちのいずれか1つ以上をペプチドから除去することとして記述される方法であって、本明細書に記載されているまたは明細書もしくは請求項中に見出されるような単独または組み合わせでの、いずれかの条件、温度、圧力、及びpHまたは酸性条件の下で、共有結合している2H+Oまたは分子のうちのいずれか1つ以上が取り除かれた任意の毒性ペプチドを含み、本明細書及び請求項に記載の手順のいずれかによって製造されたいずれかの前記ペプチド、ヒドラジド、またはヒドラゾンを含む方法、により製造されるペプチドの調製方法及びまたはペプチド、及びまたは前記方法によって製造される殺虫性組成物、または、本明細書及び請求項に記載の方法のいずれかによって製造され、その後昆虫の生息場所への適用に好適な製剤中で使用される、前記ペプチドの殺虫性組成物としてのこれらのペプチドのいずれかの使用。
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
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図10
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図12
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【配列表】
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