(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】複合イヤクッション
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
H04R1/10 102
(21)【出願番号】P 2020517429
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(86)【国際出願番号】 US2018052608
(87)【国際公開番号】W WO2019067427
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-03-26
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・オー・イングランド
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ミーカー
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・エル・ハウス
(72)【発明者】
【氏名】デレク・ジェー・ステイシー
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3053553(JP,U)
【文献】特開2010-062733(JP,A)
【文献】特開昭63-232797(JP,A)
【文献】特表2012-510214(JP,A)
【文献】実開昭53-015301(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
H04R 5/00- 5/04
H04R 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヤフォンクッションであって、
部分的に網状のポリマー発泡体から形成され、かつユーザの耳に係合又はそれを包囲するように構成された前面と、側面と、後面とを含む本体、
前記本体に少なくとも部分的に埋め込まれ、前記本体と一体的に形成されたスナップリングであって、ヘッドフォンのイヤカップの1つ以上の保持要素と係合するように構成された周辺部を含むスナップリング、及び
前記本体の前記前面及び前記側面上の非多孔質膜であって、前記本体の前記後面は、少なくとも部分的に前記非多孔質膜を含まず、
且つ実質的に音響的に透過的である
、非多孔質膜、
を備えるイヤフォンクッション。
【請求項2】
前記本体が、前記本体の前記後面から、前記スナップリングの後面の内周及び外周のうちの1つの上まで延在する段差部を含む、請求項1に記載のイヤフォンクッション。
【請求項3】
前記スナップリングの前記後面の外周部分が、前記本体の前記段差部の下方から外向きに延出する、請求項2に記載のイヤフォンクッション。
【請求項4】
前記スナップリングの前面の最外周が、前記本体の外周と同一の広がりを持つ、請求項1に記載のイヤフォンクッション。
【請求項5】
前記スナップリングの前面及び後面が実質的に平面である、請求項1に記載のイヤフォンクッション。
【請求項6】
前記スナップリングが、1つ以上の後方に延在する突起であって、前記イヤカップ内の1つ以上のそれぞれ対応するレセプタクルと係合するように構成された突起を含む、請求項1に記載のイヤフォンクッション。
【請求項7】
前記スナップリングが、前記部分的に網状のポリマー発泡体の剛性よりも高い剛性を有する、請求項1に記載のイヤフォンクッション。
【請求項8】
前記本体内に配設された音響緩衝材を更に備える、請求項1に記載のイヤフォンクッション。
【請求項9】
前記音響緩衝材が、前記部分的に網状のポリマー発泡体の密度よりも高い密度を有する材料を含む、請求項8に記載のイヤフォンクッション。
【請求項10】
前記音響緩衝材がリング形状又は楕円形のうちの一方である、請求項9に記載のイヤフォンクッション。
【請求項11】
前記本体の前記後面の内側部分は、実質的に平面である、請求項1に記載のイヤフォンクッション。
【請求項12】
前記本体の前記後面が、前記本体の前記後面の内周と外周との間に画定された少なくとも1つの空洞を含む、請求項1に記載のイヤフォンクッション。
【請求項13】
前記スナップリングから前方に延出する、前記本体の外側表面が、しわ及び折り畳まれたセグメントを含まない、請求項1に記載のイヤフォンクッション。
【請求項14】
前記部分的に網状のポリマー発泡体が、約100~約750μmの気泡サイズを有する、請求項1に記載のイヤフォンクッション。
【請求項15】
前記非多孔質膜が、アクリル塗料を含む、請求項1に記載のイヤフォンクッション。
【請求項16】
ヘッドセットであって、
ユーザによって装着されたときに前記ユーザの耳に隣接するように構成された前側開口部を有するイヤカップ、及び
前記イヤカップの前記前側開口部に固定されるようにサイズを決められたイヤフォンクッションであって、
部分的に網状のポリマー発泡体から形成された本体であって、前記ユーザの耳に係合するか又はそれを取り囲むように構成された前面と、後面と、を含む本体と、
前記本体に少なくとも部分的に埋め込まれ、前記本体と一体的に形成されたスナップリングであって、前記イヤカップ内の1つ以上の保持要素と係合するように構成された周辺部を含むスナップリングと、
前記本体の前記前面と一体である非多孔質膜であって、前記本体の前記後面は、少なくとも部分的に前記非多孔質膜を含まず、
且つ実質的に音響的に透過的である
、非多孔質膜、
を備えるイヤフォンクッション、
を備えるヘッドセット。
【請求項17】
前記イヤカップ内の前記1つ以上の保持要素が、前記イヤカップの内壁から内側に延出する1つ以上の戻り止めを含む、請求項16に記載のヘッドセット。
【請求項18】
前記スナップリングは、前記イヤフォンクッションを前記イヤカップの前記前側開口部に固定するために、前記1つ以上の戻り止めの後面に係合するように構成されている、請求項17に記載のヘッドセット。
【請求項19】
前記イヤフォンクッションの前記本体が、前記本体の前記後面から、前記スナップリングの後面の内周上、及び前記イヤカップの内側部分の中まで延出する段差部を含む、請求項18に記載のヘッドセット。
【請求項20】
前記イヤカップ内の前記1つ以上の保持要素が1つ以上のスロットを含み、前記1つ以上のスロットが、前記スナップリングの後面から延出する1つ以上の対応するタブを受容するように構成されている、請求項16に記載のヘッドセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様及び実施態様は、概して、ヘッドフォン用の複合イヤクッション及びそれを含むヘッドフォンを対象とする。
【背景技術】
【0002】
無線及びモバイル電子デバイスの普及が進んでいる。一部の例では、無線及びモバイル電子デバイスによって生成された音は、ワイヤを介して、ユーザの耳に隣接して配置された1つ以上のスピーカに伝送される。一部の例では、生成された音は、無線送信デバイスを介してスピーカに送信され得る。ユーザの耳に隣接して配置されたスピーカシステムの一例は、ヘッドフォンセットである。
【0003】
スピーカに加えて、ヘッドフォンは、ユーザの耳に対するヘッドフォンの接触感を和らげるための材料を含むことができ(耳載せ型デザインの場合)、又はユーザの耳に隣接するユーザの頭部の部分に対するヘッドフォンの接触感を和らげるための材料を含むことができる(耳覆い型デザインの場合)。これらの材料は、ヘッドフォンが使用される際に、ユーザに快適だと感じさせることを意図しており、また、ユーザの耳に到達する外部ノイズの量を低減することができ、かつ/又は、ヘッドフォンのオーディオドライバによって提供され、ユーザの耳又は頭部の一部分から反射される音声などのノイズを、あるいは、イヤクッションプレナム内のいかなる反響音波をも、吸収することができる。これらの材料は、本明細書でイヤフォンクッション又はイヤクッションと呼ばれるものに形成され得る。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様によれば、イヤフォンクッションが提供される。イヤフォンクッションは、部分的に網状のポリマー発泡体から形成され、かつユーザの耳に係合又はそれを包囲するように構成された前面と、側面と、後面とを含む本体、本体に少なくとも部分的に埋め込まれ、本体と一体的に形成されたスナップリングであって、ヘッドフォンのイヤカップの1つ以上の保持要素と係合するように構成された周辺部を含むスナップリング、及び本体の前面及び側面上の非多孔質膜を備える。
【0005】
本体の後面は、非多孔質膜を含まなくてもよく、実質的に音響的に透過的であってもよい。
【0006】
本体が、本体の後面から、スナップリングの後面の内周及び外周のうちの1つの上まで延在する段差部を含み得る。スナップリングの後面の外周部分が、本体の段差部の下方から外向きに延出し得る。
【0007】
スナップリングの前面の最外周が、本体の外周と同一の広がりを持ち得る。
【0008】
スナップリングの前面及び後面は、実質的に平面であり得る。
【0009】
スナップリングが、1つ以上の後方に延在する突起であって、イヤカップ内の1つ以上のそれぞれ対応するレセプタクルと係合するように構成された突起を含み得る。
【0010】
スナップリングは、部分的に網状のポリマー発泡体の剛性よりも高い剛性を有し得る。
【0011】
イヤフォンクッションは、本体内に配設された音響緩衝材を更に含み得る。音響緩衝材は、部分的に網状のポリマー発泡体の密度よりも高い密度を有する材料を含み得る。音響緩衝材は、リング形状又は楕円形であり得る。
【0012】
本体の後面の内側部分が、実質的に平面であり得る。
【0013】
本体の後部が、本体の後部の内周と外周との間に画定された少なくとも1つの空洞を含み得る。
【0014】
スナップリングから前方に延出する、本体の外側表面は、しわ及び折り畳まれたセグメントを含まなくてよい。
【0015】
部分的に網状のポリマー発泡体は、約100~約750μmの気泡サイズを有し得る。
【0016】
非多孔質膜は、アクリル材料、又はポリマー発泡体とは異なる組成を有する任意の他の薄膜非多孔質材料を含み得る。
【0017】
本開示の一態様によれば、ヘッドセットが提供される。ヘッドセットは、ユーザによって装着されたときにユーザの耳に隣接するように構成された前側開口部を有するイヤカップと、イヤカップの前側開口部に固定されるようにサイズを決められたイヤフォンクッションとを備える。イヤフォンクッションは、部分的に網状のポリマー発泡体から形成され、かつユーザの耳に係合又はそれを包囲するように構成された前面と、後面とを含む本体、本体に少なくとも部分的に埋め込まれ、本体と一体的に形成されたスナップリングであって、イヤカップの1つ以上の保持要素と係合するように構成された周辺部を含むスナップリング、及び本体の前面と一体になっている非多孔質膜、を備える。
【0018】
イヤカップ内の1つ以上の保持要素は、イヤカップの内壁から内側に延出する1つ以上の戻り止めを含み得る。
【0019】
スナップリングは、イヤフォンクッションをイヤカップの前側開口部に固定するために、1つ以上の戻り止めの後面に係合するように構成され得る。
【0020】
イヤフォンクッションの本体は、本体の後面からスナップリングの後面の内周上、及びイヤカップの内側部分の中まで延出する段差部を含み得る。
【0021】
イヤカップ内の1つ以上の保持要素は、1つ以上のスロットを含み得、その1つ以上のスロットが、スナップリングの後面から延出する1つ以上の対応するタブを受容するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
添付の図面は、縮尺どおりに描画されることを意図していない。図面において、様々な図で図示される各同一の、又は略同一の構成要素は、同様の数字で表記される。説明を明瞭にするために、全ての図において、構成要素全てが、必ずしも符号付けされていない場合がある。図面において、
【
図2A】ユーザの耳に接して配設された、耳載せ型ヘッドフォンのイヤクッションの一例を示す。
【
図2B】ユーザの頭部に接して配設された、耳覆い型ヘッドフォンのイヤクッションの一例を示す。
【
図3A】ヘッドフォンのイヤクッションの一実装形態の等角図である。
【
図3B】
図3Aのヘッドフォンのイヤクッションの、上から見た平面図である。
【
図3C】
図3Aのヘッドフォンのイヤクッションの、下から見た平面図である。
【
図3D】
図3Aのヘッドフォンのイヤクッションの立面図である。
【
図4A】ヘッドフォンのイヤクッションの例の本体のバルク内の発泡体のセルを示す。
【
図4B】ヘッドフォンのイヤクッションの例の本体の表面内の発泡体のセルを示す。
【
図5】
図3Aのヘッドフォンのイヤクッションを保持するように構成されたイヤフォンイヤカップの一例を示す。
【
図6A】ヘッドフォンのイヤクッションの別の実装形態の等角図である。
【
図6B】
図6Aのヘッドフォンのイヤクッションの、上から見た平面図である。
【
図6C】
図6Aのヘッドフォンのイヤクッションの、下から見た平面図である。
【
図6D】
図6Aのヘッドフォンのイヤクッションの立面図である。
【
図6F】後面に画定された空洞を含む、
図6Aのヘッドフォンのイヤクッションの一例である。
【
図6G】中空化部分を含む、
図6Aのヘッドフォンのイヤクッションの一例である。
【
図6H】中空化部分を含む、
図6Aのヘッドフォンのイヤクッションの別の例である。
【
図7】
図6Aのヘッドフォンのイヤクッションを保持する、イヤフォンイヤカップの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書に開示される態様及び実施態様は、以下の説明に記載されるか又は図示される構成の詳細及び構成要素の配置に限定されない。本明細書に開示される態様及び実施態様は、様々な方法で実践又は実行することができる。
【0024】
図1を参照すると、ヘッドフォン10の一例が示されている。ヘッドフォン10は、ヘッドバンドによって接続された2つのイヤフォン12を含む。各イヤフォン12は、カップ形状のシェル又はイヤカップ14と、イヤクッション16とを含む。ヘッドバンドは、矢印19によって表されるように、内側方向に力を及ぼす。一部の実施態様では、ヘッドフォン10は、耳載せ型ヘッドフォンである。ユーザによって着用される際には、イヤクッション16は、ユーザの耳18に接して置かれ、
図2Aに示されるように、わずかに変形して、ユーザの耳18に対してシールを形成し得る。他の実施態様では、ヘッドフォン10は、耳覆い型ヘッドフォンであり、ユーザによって着用される際には、ユーザの耳18を取り囲むようにイヤクッション16がユーザの頭部17の部分に当てられ、
図2Bに示されるように、ユーザの頭部の各部に対してシールを形成するように、わずかに変形し得る。ユーザの耳に対する、又はユーザの頭部の、ユーザの耳の周りの部分に対するイヤクッション16のシールは、ユーザの外耳道に到達する外部音響エネルギーの総量を低減し得る。
【0025】
イヤクッション20の一実装形態が、
図3Aの等角図、
図3Bの上(ユーザが接触する側)からの平面図、
図3Cの下(ヘッドフォンイヤカップが接触する側)からの平面図、
図3Dの立面図、及び
図3Eの断面図に示されている。イヤクッション20は、略楕円形であってよく、ユーザの耳18に接するか、又はユーザの耳18を取り囲むように、そのサイズが決められてよい。
【0026】
イヤクッション20は、上面21と、側面23と、下面32とを有する発泡性本体22を含む。発泡性本体22は、バルク又は内側部分と、外側表面とを含んでいてもよく、又はこれらからなっていてもよい。両方とも、ポリウレタン発泡体及び/又は別の種類の柔軟材料を含んでもよく、又はこれらからなってもよい。発泡性本体22のバルクの材料は、例えば、
図4Aに示されるように、発泡性本体22のバルク内の気泡サイズが、直径約100~約750μmである、部分的に網状のポリマー発泡体であってもよい。発泡性本体22の外側表面における気泡サイズは、
図4Bに示されるように、例えば、直径約25~約100μmであり、発泡性本体22のバルク内の気泡サイズよりも小さいという場合があり得る。別の材料によって覆われていないとき、発泡性本体22の外側表面は、音波がその外側表面を通過して発泡性本体22のバルク内に入ることを可能にするために、少なくとも部分的に、音響的に透過的であり得る。発泡性本体22は、空気が約10cm
3/cm
3・秒以下の速度で流れることを可能にし、約1~約2.5kHzの音響減衰ピークを有し得る。
【0027】
発泡性本体22の上面21及び側面23は、実質的に又は全体的に非多孔質の材料28によって覆われてもよいが、その非多孔質材料28は、外部ノイズが、発泡性本体22の上面21及び側面23を通って発泡性本体22内に入り、イヤクッション20が取り付けられたヘッドフォン10を装着しているユーザの耳に移動するのをより難しくするものである。一部の実施態様では、実質的に又は全体的に非多孔質の材料28は、例えば約1μmの厚さを有するアクリル塗膜であってもよい。アクリル塗膜は、イヤクッションの一部の従来例で使用されるポリウレタン皮革(ポリウレタン製人工皮革=Pレザー)などの材料よりも耐久性が高いため、より長い寿命を有してもよく、一部の皮革材料がそうであるようには、粒子状の物質を落すことがないという場合があり得る。アクリル塗膜の色は、製造業者が所望する色を選択し得る。発泡性本体22の上面21及び側面23は、実質的に平滑であってもよく、ひだ、折り目、又はしわを含まなくてよい。他の実施態様では、発泡性本体22の上面21及び/又は側面23は、例えば天然皮革に似た表面パターンを含むように成形されてもよい。
【0028】
図3Aに示すように、イヤクッション20は、発泡性本体22の下面32に隣接した場所の発泡性本体22に少なくとも部分的に埋め込まれたスナップリング24を含む。スナップリング24は、スナップリング24の下面から下方に延在する1つ以上の突起26を含む。6つの突起26が、イヤクッション20のスナップリング24に例として示されているが、他の実施例では、より少数又はより多数の突起26が含まれていてよい。突起26の下端、すなわちスナップリング24に接続された突起26の端部とは反対側に位置する端部は、フック様構造体26A(
図3Dを参照)を含んでもよい。突起26及びそれらのフック様構造体26Aは、
図5に示される例に示されるように、相補的な凹部36を有するヘッドフォン10のイヤカップ14内に、突起26を、かつそこから転じて、イヤクッション20全体を保持するために使用される。一部の例では、スナップリングは、イヤクッション20の発泡性本体22と共にインサート成形され得る。
【0029】
スナップリング24及び突起26は、イヤクッション20の本体22の材料の剛性よりも高い剛性を有する材料で形成され得る。スナップリング24及び突起26は、実質的に剛性のポリマー、例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリルガラス、又はポリ(メチルメタクリレート)を含んでもよく、又はそれらからなっていてもよい。
【0030】
段差部30が、イヤクッション20の本体22の後面32からスナップリング24の後面の外周上まで延在していてもよい。段差部30は、イヤクッション20の本体22内にスナップリング24を保持するのを容易にし、それによって、シール性を改善することができる。
【0031】
スナップリング24の内周部の内側にある、イヤクッション20の本体22の後面32の少なくとも一部分(
図3Cを参照)は、実質的に又は完全に非多孔質な材料28を含まなくてもよく、したがって、イヤクッション20の本体22の後面32上に孔が露出していてもよい。したがって、イヤクッション20の本体22の後面32は、少なくとも部分的に音響的に透過的であってもよく、音響エネルギーがイヤクッション20の本体22の後面32を通過して、イヤクッション20の本体22のバルク内へと入り込むことを可能にし得る。したがって、イヤクッション20は、ヘッドフォン10のイヤカップ14とユーザの頭部又は耳との間に画定された空間内に存在する望ましくない音響エネルギーを吸収することができる。例えば、ヘッドフォン10の音響ドライバによって提供され、ユーザの耳若しくは頭部で反射される音、又はイヤカッププレナム内に存在する任意の他の反響音響エネルギーを吸収することができる。このような音響エネルギーの吸収によって、イヤクッション20を取り付けられたヘッドフォン10を装着しているユーザによって知覚される音声の品質を、向上させることができる。
【0032】
図3Eに示すように、音響緩衝材34が、イヤクッション20の本体22内に埋め込まれてもよい。音響緩衝材34は、イヤクッション20の本体22を形成する部分的に網状のポリマー発泡体の密度よりも高い密度を有する材料を含んでもよく、又はこれらからなっていてもよい。音響緩衝材34の材料は、例えば、イヤクッション20の本体22を形成する部分的に網状のポリマー発泡体の密度よりも高い密度を有する、シリコーン又は別のポリマー材料を含んでもよい。音響緩衝材34は、実質的に楕円形又は円形の形状を有するリング又はロープであってもよい。音響緩衝材34は、イヤクッション20の本体22の有効密度を増加させて、音響緩衝材34なしの同様のイヤクッション20と比較して、イヤクッション20の外側から、イヤクッション20を通過してユーザの耳へ到達する音響ノイズの量を低減し得る。
【0033】
イヤクッション40の別の一実装形態が、
図6Aの等角図、
図6Bの上(ユーザが接触する側)からの平面図、
図6Cの下(ヘッドフォンイヤカップが接触する側)からの平面図、
図6Dの立面図、及び
図6Eの断面図に示されている。イヤクッション40は、略楕円形であってよく、ユーザの耳18に接するか、又はユーザの耳18を取り囲むように、そのサイズが決められてよい。
【0034】
イヤクッション40は、上面41と、側面43と、下面52とを有する発泡性本体42を含む。発泡体42は、バルク又は内側部分と、外側表面とを含んでいてもよく、又はこれらからなっていてもよい。両方とも、ポリウレタン発泡体及び/又は別の種類の柔軟材料を含んでもよく、又はこれらからなってもよい。発泡性本体42のバルクの材料は、例えば、
図4Aに示されるように、発泡性本体42のバルク内の気泡サイズが、直径約100~約750μmである、部分的に網状のポリマー発泡体であってもよい。発泡性本体42の外側表面における気泡サイズは、
図4Bに示されるように、例えば、直径約25~約100μmであり、発泡性本体42のバルク内の気泡サイズよりも小さいという場合があり得る。別の材料によって覆われていないとき、発泡性本体42の外側表面は、音波がその外側表面を通過して発泡性本体42のバルク内に入ることを可能にするために、少なくとも部分的に、音響的に透過的であり得る。発泡性本体42は、空気が約10cm
3/cm
3・秒以下の速度で流れることを可能にし、約1~約2.5kHzの音響減衰ピークを有し得る。
【0035】
発泡性本体42の上面41及び側面43は、実質的に又は全体的に非多孔質の材料48によって覆われてもよいが、その非多孔質材料48は、外部ノイズが、発泡性本体42の上面41及び側面を通って発泡性本体42内に入り、イヤクッション40が取り付けられたヘッドフォン10を装着しているユーザの耳に移動するのをより難しくするものである。一部の実施態様では、実質的に又は全体的に非多孔質の材料48は、例えば約1μmの厚さを有するアクリル塗膜であってもよい。アクリル塗膜の色は、製造業者によって所望されるように選択され得る。アクリル塗膜は、イヤクッションの一部の従来例で使用されるポリウレタン製人工皮革などの材料より耐久性が高いため、より長い寿命を有してもよく、また、一部のポリウレタン製人工皮革材料があるようには、粒子状の物質を落すことがないという場合があり得る。発泡性本体42の上面41及び側面43は、実質的に平滑であってもよく、ひだ、折り目、又はしわを含まなくてよい。他の実施態様では、発泡性本体42の上面41及び/又は側面43は、例えば天然皮革に似た表面パターンを含むように成形されてもよい。
【0036】
イヤクッション40は、発泡性本体42の下面52に隣接した場所の発泡性本体42に少なくとも部分的に埋め込まれたスナップリング44を含む。スナップリング44の前面の最外周は、イヤクッション40の発泡性本体42の外周と実質的に同一の広がりを持ち得る。スナップリング44の前面及び後面は、実質的に平面であってもよい。他の実施例では、スナップリング44は、機械的強度を高めるため、T字形断面を有し得る。スナップリング44の外周は、ヘッドフォン10のイヤカップ14の内面内のタブ又は戻り止め62と係合して、イヤクッション40をイヤカップ14内に保持するように構成されている(
図7参照)。
【0037】
スナップリング44は、イヤクッション40の本体42の材料の剛性よりも高い剛性を有する材料で形成され得る。スナップリング44は、実質的に剛性のポリマー、例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリルガラス、又はポリ(メチルメタクリレート)を含んでもよく、又はそれらからなっていてもよい。
【0038】
段差部50が、イヤクッション40の本体42の後面52からスナップリング44の後面の内周上まで延在していてもよい。段差部50は、スナップリング44とイヤクッション40の本体42とが接続されるのを容易にし、それによって、シール性を改善することができる。スナップリング44の後面の外周部分46が、イヤクッション40の本体42の段差部50の下方から外向きに延出していてもよい。スナップリング44の後面の外周部分46は、スナップリング44の露出した材料を含んでもよく、あるいは、イヤクッション40の本体42の材料の、例えば約10μmなどの厚さの薄層によって被覆されていてもよい。
【0039】
段差部50の内周部の内側にある、イヤクッション40の本体42の後面52の少なくとも一部分(
図6Cを参照)は、実質的に又は完全に非多孔質な材料48を含まなくてもよく、したがって、イヤクッション40の本体42の後面52上に孔が露出していてもよい。したがって、イヤクッション40の本体42の後面52は、少なくとも部分的に音響的に透過的であってもよく、音響エネルギーがイヤクッション40の本体42の後面52を通過して、イヤクッション40の本体42のバルク内へと入り込むことを可能にし得る。したがって、イヤクッション40は、ヘッドフォン10のイヤカップ14とユーザの頭部又は耳との間に画定された空間内に生成された音響エネルギーを吸収することができる。例えば、ヘッドフォンの音響ドライバによって提供され、ユーザの耳若しくは頭部で反射される音、又はイヤカッププレナム内に存在する任意の他の反響音響エネルギーを吸収することができる。このような音響エネルギーの吸収によって、イヤクッション40を取り付けられたヘッドフォン10を装着しているユーザによって知覚される音声の品質を、向上させることができる。一部の例では、
図6Fに示すように、イヤクッション40の本体42の後面52は、本体42の後面52から本体42のバルク内へと延在する1つ以上の空洞又は窪み56を含み得る。1つ以上の空洞又は窪み56は、円形、楕円形、正方形、矩形、又はランダムな形状であってもよい。1つ以上の空洞又は窪み56は、イヤクッションの本体42の後面52を通じて吸収され得る音響エネルギーの量を増加させ得る。また、1つ以上の空洞又は窪み56は、イヤクッションの外部側壁を、イヤクッションの内部側壁から、いくらか分離するようにも機能し得る。したがって、そのような1つ以上の空洞又は窪み56を欠く同様のイヤクッション40と比較して、外部側壁で加えられた力が内部側壁40に直接、機械的に伝達されることが低減される。同様の空洞又は窪み56が、イヤクッション20内に画定されてもよい。
【0040】
図6Eに示すように、音響緩衝材54が、イヤクッション40の本体42内に埋め込まれてもよい。音響緩衝材54は、図示されるように、イヤクッション40の本体42内の実質的に中央の位置に埋め込まれてもよい。代替的な実施形態では、音響緩衝材54が、上記の中央の位置に換えて、又はそこに加えて、イヤクッション40の本体42の上面、下面、内側表面、又は外側表面に近接して、あるいはスナップリング44に近接若しくは接触して配置されてもよい。音響緩衝材54は、イヤクッション40の本体42を形成する部分的に網状のポリマー発泡体の密度よりも高い密度を有する材料を含んでもよく、又はこれらからなっていてもよい。音響緩衝材54の材料は、例えば、イヤクッション40の本体42を形成する部分的に網状のポリマー発泡体の密度よりも高い密度を有する、シリコーン、金属、セラミックス、又は別の材料を含んでもよい。音響緩衝材54は、実質的に楕円形又は円形の形状を有するリング又はロープであってもよい。音響緩衝材54は、イヤクッション40の本体42の有効密度を増加させて、音響緩衝材54なしの同様のイヤクッション40と比較して、イヤクッション40の外側から、イヤクッション40を通過してユーザの耳へ到達する音響信号を実質的に減衰させ得る。
【0041】
更なる実施態様では、イヤクッション40の本体42は、
図6Gに示すように、中空化部分又は成形されたキャビティ58を含んでもよい。中空化部分又は成形されたキャビティ58は、イヤクッション40の本体42を実質的にU字形にし得る。中空化部分又は成形されたキャビティ58は、中空化部分又は成形されたキャビティ58を有しない同様のイヤクッション40と比較して、イヤクッション40の柔軟性を高め、イヤクッション40を、ユーザがより快適に着用できるものとしている。このような中空化部分又は成形されたキャビティはまた、イヤクッション20の代替的な例においても存在してよい。中空化部分又は成形されたキャビティは、例えば、
図6Hに示されるように、異なる形状、例えば星状形状、又は更には、例えばランダム形状を有するように形成されていてもよい。これらのランダム形状は、ユーザのリスニング体験を更に良いものとするように設計されてもよい。
【0042】
少なくとも1つの実施態様に関するいくつかの態様について述べてきたが、当業者であれば、様々な変更、修正、並びに、改良が容易に思い付くことは、理解されているであろう。こうした変更、修正、及び改善は、本開示の一部であり、本開示の範囲内であることが意図される。本明細書に開示される方法の行為は、例示されるものと代替的な順序で実施されてもよく、1つ以上の行為は省略、置換、又は追加されてもよい。本明細書に開示される任意の1つの例の1つ以上の特徴は、開示される任意の他の例の1つ以上の特徴と組み合わされるか、又は置換されてもよい。したがって、前述の説明及び図面は、単なる例にすぎない。
【0043】
また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明目的のみを目的としており、限定的であると見なされるべきではない。本明細書で使用される場合、「複数(plurality)」という用語は、2つ以上の項目又は構成要素を指す。本明細書で使用される場合、「実質的に同様」と記載される寸法は、互いの約25%以内にあると見なされるべきである。明細書におけるか、又は請求項におけるかに関わりなく、「備える(Comprising)」、「含む(including)」、「保持する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、及び「伴う(involving)」などの用語は、制限のないものと解釈されるべきであり、即ち、「含むが、これらに限定されない」を意味する。したがって、このような用語の使用は、その後に列挙される項目及びその等価物、並びに追加の項目を包含することを意味する。「~からなる(Consisting of)」及び「本質的に~からなる(Consisting Essentially of)」という移行句に限っては、請求項に関して、それぞれ限定的又は半限定的な移行句である。請求項において請求項要素を修飾するための「第1の(first)」、「第2の(second)」、「第3の(third)」などの序数詞の使用は、それ自体は、ある1つの請求項要素が別の請求項要素に対する何らかの優先度、優先順位、若しくは順序、又は方法の動作が実施される時間的順序、を含意するものではなく、ある特定の名称を有する1つの請求項要素を、請求項要素の区別のために序数詞を使用しなければ)同じ名称を有する別の要素と区別するための単なるラベルとして使用されるものである。
【符号の説明】
【0044】
10 ヘッドフォン
12 イヤフォン
14 イヤカップ
16 イヤクッション
17 ユーザの頭部
18 ユーザの耳
20 イヤクッション
21 上面
22 発泡性本体
23 側面
24 スナップリング
26 突起
26A フック様構造体
28 非多孔質材料
30 段差部
32 下面、後面
34 音響緩衝材
36 相補的な凹部
40 イヤクッション
41 上面
42 発泡性本体
43 側面
44 スナップリング
46 外周部分
48 非多孔質材料
50 段差部
52 下面、後面
54 音響緩衝材
56 空洞又は窪み
58 中空化部分又は成形されたキャビティ
62 タブ又は戻り止め