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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】溶融紡糸装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 13/02 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
D01D13/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020527075
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2018080275
(87)【国際公開番号】W WO2019096625
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】102017010684.3
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マティアス シュテュンドル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン カリエス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン フーベアト
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヴェストファール
(72)【発明者】
【氏名】アイケ ホレ
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-248575(JP,A)
【文献】特開昭61-263567(JP,A)
【文献】特開平02-043180(JP,A)
【文献】特開2017-082376(JP,A)
【文献】特開2017-082381(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0068394(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101016656(CN,A)
【文献】特表2009-536270(JP,A)
【文献】特開2016-055370(JP,A)
【文献】米国特許第4604787(US,A)
【文献】特開2016-175153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00 - 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの紡糸ノズル装置(1)と、少なくとも1つの冷却装置(2)と、少なくとも1つの処理装置(3)と、少なくとも1つの巻取り装置(4)と、少なくとも1つのオペレータ作業を実施するための少なくとも1つの自動操作装置(5)とを備えた、合成糸を製造する溶融紡糸装置であって、
前記自動操作装置(5)が、少なくとも1つの可動のロボットアーム(5.1)を有していて、該ロボットアーム(5.1)が、運転開始時に、かつ/またはメンテナンス期間中に、かつ/または糸製造中に、複数のオペレータ作業を選択的に実施するために、選択可能な複数の工具(7.1~7.3)のうちの1つの工具と選択的に連結可能であることを特徴とする、溶融紡糸装置。
【請求項2】
前記工具(7.1~7.3)が、工具マガジン(7)内に保管され、前記ロボットアーム(5.1)が、前記工具(7.1~7.3)を取り出し、かつ格納するために前記工具マガジン(7)と協働する、請求項1記載の溶融紡糸装置。
【請求項3】
前記工具マガジン(7)が、前記自動操作装置(5)に配置されている、請求項2記載の溶融紡糸装置。
【請求項4】
前記工具マガジン(7)が、前記自動操作装置(5)が待機している保持ステーション(16)に配置されている、請求項2記載の溶融紡糸装置。
【請求項5】
前記工具のうちの1つの工具が、サクションインジェクタ装置(7.1)であり、該サクションインジェクタ装置(7.1)により、1本または複数本の糸が糸屑容器(13)へと導入可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【請求項6】
前記工具のうちの1つの工具が、グリッパ装置(7.3)であり、該グリッパ装置(7.3)により、1つまたは複数のパッケージ(9)および/または1つまたは複数の巻管を移送可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【請求項7】
前記工具のうちの1つの工具が、測定装置(7.5)であり、該測定装置(7.5)により1つまた複数の製品パラメータを測定することができる、請求項1から6までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【請求項8】
前記工具のうちの1つの工具が、カメラ装置(7.6)であり、該カメラ装置(7.6)により、前記装置(3,4)内の1つまたは複数の糸走路を検査することができる、請求項1から7までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【請求項9】
前記自動操作装置(5)が、懸架軌道(12)において自走式に構成されていて、該懸架軌道(12)が、複数の処理装置(3)および巻取り装置(4)に沿って延びている、請求項1から8までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【請求項10】
前記自動操作装置(5)が、オペレータ作業を実施するために、ロボット制御装置(5.4)を有していて、前記ロボット制御装置(5.4)が、機械制御装置(11)に接続されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【請求項11】
前記ロボット制御装置(5.4)および前記機械制御装置(11)が、ワイヤレス接続部(15)により互いに接続されている、請求項10記載の溶融紡糸装置。
【請求項12】
1本または複数本の合成糸を製造するための溶融紡糸装置を運転する方法であって、前記合成糸を紡糸ノズル装置により押し出し、冷却装置により冷却し、処理装置により処理し、かつ巻取り装置によりパッケージに巻成し、少なくとも1つのオペレータ作業を自動操作装置により実施する、溶融紡糸装置を運転する方法において、
前記自動操作装置が、交換可能な工具により、運転開始時かつ/またはメンテナンス期間中かつ/または糸製造中に、複数のオペレータ作業を選択的に実施することを特徴とする、1本または複数本の合成糸を製造するための溶融紡糸装置を運転する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式の合成糸を製造するための溶融紡糸装置に関する。
【0002】
合成糸を製造するための冒頭で述べた溶融紡糸装置は、たとえば欧州特許出願公開第1300496号明細書から公知である。
【0003】
公知の溶融紡糸装置は、複数本の合成糸を製造するために、紡糸ノズル装置と、冷却装置と、処理装置と、巻取り装置とを有している。これらの装置は、機械フレーム内で1つの糸走路に対して保持されている。紡糸ノズル装置は、処理装置および巻取り装置の上側の上層階に配置されている。プロセス開始時に紡糸ノズル装置から生じる糸群を処理装置および巻取り装置の機器に敷設するために、ロボットが設けられている。このロボットは、ガイド装置を介して鉛直方向および水平方向で運動させられる。巻取り装置においてパッケージを交換するために、付加的なドッファが設けられている。ドッファは、同様に、鉛直方向および水平方向で可動に構成されている。その限りでは、公知の溶融紡糸装置では、ロボットおよびドッファの運動経過を、特定のオペレータ作業を実施するために互いに適合させなければならない。特に、パッケージ交換および新たな糸敷設が必要であるプロセス障害時には、ロボットとドッファとの衝突の恐れが生じる。さらに、たとえば品質検査のようなオペレータにより実施される幾つかの作業は自動化されずに実施されるので、オペレータと、ロボットまたはドッファとの間の衝突を阻止するための付加的な安全策を講じることが必要である。
【0004】
本発明の課題は、冒頭で述べた形式の溶融紡糸装置を改良して、処理装置および巻取り装置の発生したオペレータ作業ができるだけ迅速かつ合理的に実施可能であるようにすることである。
【0005】
本発明の別の課題は、オペレータにより実施すべき作業が最小限に減じられた、冒頭で述べた形式の溶融紡糸装置を提供することにある。
【0006】
この課題は、本発明によれば、自動操作装置が、少なくとも1つの可動のロボットアームを有していて、該ロボットアームが、運転開始時に、かつ/またはメンテナンス期間中に、かつ/または糸製造中に、複数のオペレータ作業を選択的に実施するために、選択可能な複数の工具のうちの1つの工具と選択的に連結可能であることにより解決される。
【0007】
本発明の有利な変化形は、従属請求項の特徴および特徴の組み合わせにより定義されている。
【0008】
本発明は、少なくとも処理装置および巻取り装置において発生するオペレータ作業が自動化されて実施可能であるという特別な利点を有している。したがって、たとえば、プロセス開始時における処理装置への糸の敷設および糸製造中の巻取り装置における満管の取出しを、それぞれ必要となる工具を備えた自動操作装置により、実施することができる。したがって、工具を、各オペレータ作業に合わせて設計し、オペレータ作業を実施するためのロボットアームにより選択的にガイドすることができる。
【0009】
オペレータ作業を実施するために必要となる工具を提供するために、本発明の有利な変化形によれば、工具は工具マガジン内に配置されている。ロボットアームは、工具を取り出し、かつ格納するために、工具マガジンと協働する。したがって、工具は、たとえば連結システムを介してロボットアームに着脱可能に結合されていてよい。
【0010】
通常は機械設備において相並んで複数で配置されている複数の処理装置および巻取り装置を操作することができるように、工具マガジンが自動操作装置に配置されている本発明の変化形が好適に実施されている。したがって、ロボットアームは直接に各紡績位置において各工具を有している。
【0011】
しかし基本的には、マガジンを、自動操作装置が待機している保持ステーションに配置することも可能である。
【0012】
プロセス開始時またはプロセス中断時に糸をガイドしかつ敷設するために、工具のうちの1つの工具は、サクションインジェクタ装置であり、このサクションインジェクタ装置により、1本または複数本の糸が糸屑容器へと導入可能である。ロボットアームにより引受け可能かつガイド可能なサクションインジェクタ装置は、固定的な接続部を介して、または着脱可能な差込み接続部を介して糸屑容器に連結されていてよい。
【0013】
特に、満管を取り出し、かつ空管を巻取り装置に被せ嵌めるためには、工具のうちの1つの工具が、グリッパ装置であり、このグリッパ装置により、1つまたは複数のパッケージおよび/または1つまたは複数の巻管を移送可能である本発明の変化形が特に有利である。
【0014】
糸製造時の定期的な品質検査を自動的に実施することができるように、工具のうちの1つの工具は、測定装置であり、この測定装置により、1つまたは複数の製品パラメータを測定することができる。したがって、好適には、糸の糸走路における糸張力が、ロボットアームによりガイドされるこのような測定装置により検査される。
【0015】
特にプロセス障害を診断するか、またはプロセス機器における摩耗現象を評価するために、工具のうちの1つの工具がカメラ装置であり、このカメラ装置により、装置内の1つまたは複数の糸走路を検査できることがさらに規定されている。したがって、予防的なメンテナンス作業を意図的に実施することができる。
【0016】
満管の搬送のために使用することができる操作通路を空けておくために、本発明の有利な変化形による自動操作装置は、懸架軌道において自走式に構成されていて、懸架軌道が、複数の処理装置および巻取り装置に沿って延びている。したがって、自動操作装置の使用を、複数の処理装置および巻取り装置へと拡大することができる。さらに、操作通路におけるオペレータまたは装置とロボットアームとの衝突を阻止することができる。
【0017】
通信およびデータ転送のために、自動操作装置は、ロボット制御装置を有している。このロボット制御装置は、機械制御ユニットに接続されている。したがって、自動操作装置のそれぞれ必要となる制御プログラムを簡単な形式で機械制御ユニットの操作命令を介して作動することができる。
【0018】
機械制御ユニットとロボット制御装置との間の接続は、好適には、ワイヤレス接続部を介して行われるので、自動操作装置の、複数の位置におけるフレキシブルな使用が可能である。
【0019】
自動操作装置により実施されるオペレータ作業は、各運転状況とは関係なしに、かつ運転開始時またはメンテナンス中または糸製造中に実施される。その限りでは、溶融紡糸装置を運転するための本発明に係る方法は、溶融紡糸装置における多数のオペレータ作業を自動的に実施するために特に有利である。ロボットアームの比較的高い運動性および種々異なる工具の結合により、自動操作装置により引き受けるべきオペレータ作業の範囲は制限されていない。その限りでは、1本の合成糸が製造されるか、複数の合成糸が製造されるかにかかわらず、高い自動化度が実現される。
【0020】
オペレータ作業の範囲に応じて、基本的に、自動操作装置が、交換可能な工具を収容するための複数のロボットアームを有している可能性も生じる。工具の変位時に、この工具は1つのオペレータ作業に合わせて設計されているのではなく、複数のオペレータ作業を引き受けることができる可能性も生じる。したがって、たとえばサクションインジェクタ装置は、このサクションインジェクタ装置が同時に満管を収容するために適しているように実施される。
【0021】
複数のオペレータ作業が自動操作装置により同時に実施されなければならない場合のために、機械制御装置により、かつロボット制御装置により、作業順序が好適には出来るだけ短い停止時間に応じて決定される。
【0022】
合成糸を製造するための本発明に係る溶融紡糸装置を以下に幾つかの実施例につき添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る溶融紡糸装置の実施例を概略的に示す正面図である。
図2図1に示した本発明に係る溶融紡糸装置の実施例を概略的に示す側面図である。
図3図1に示した実施例をプロセス開始時に示す概略図である。
図4図2に示した実施例をプロセス開始時に示す概略図である。
図5】自動操作装置の別の実施例を示す概略図である。
図6図5に示した実施例を概略的に示す平面図である。
【0024】
図1および図2には、合成糸を製造するための本発明に係る溶融紡糸装置の第1の実施例が複数の視点で図示されている。図1は、この実施例を正面図で示していて、図2には側面図が概略的に示されている。両図面のうちの一方に明確に関連付けが成されない限り、以下の説明は両図面に適用される。
【0025】
図1および図2に示した実施例は、相並んで配置された合計3つの紡糸ノズル1.3を備えた紡糸ノズル装置1を有している。紡糸ノズル装置1における紡糸ノズルの個数は、例示的であり、紡糸位置毎に3本よりも著しく多い糸を含んでいてもよい。紡糸ノズル1.3は、加熱された紡糸ビーム1.2の下面に保持されている。紡糸ビーム1.2は、溶融物源の、溶融物供給部1.1を介して供給される熱可塑性の溶融物を紡糸ノズル1.3に供給するために、溶融物をガイドする別の部材(図示せず)を含んでいる。その限りでは、少なくとも1つまたは複数の紡糸ポンプならびに分配管路が紡糸ビーム1.2内に配置されている。紡糸ノズル1.3は、その下面に複数のノズル開口を有している。このノズル開口からそれぞれ束状の複数のフィラメントが押し出される。
【0026】
紡糸ノズル装置1の下側には、冷却装置2が配置されている。この冷却装置2の冷却筒2.1は、紡糸ノズル1.3の近傍に延びている。冷却装置2は、この実施例では、横方向流の吹出し部として構成されている。この横方向流の吹出し部では、冷却空気流が側方に配置されたブローチャンバ2.2により形成され、ブロー壁2.3を通って糸のフィラメント束へと向けられている。
【0027】
紡糸ノズル装置1および冷却装置2は、上層階に配置されている。冷却装置2の下側には、処理装置3および巻取り装置4が下層階に配置されている。処理装置3を収容するためには、組付け壁6が役立つ。組付け壁6は、冷却装置2の直ぐ下で油剤塗布装置3.2を有している。この油剤塗布装置3.2は、糸毎にそれぞれ1つの集合糸ガイドおよび湿潤手段を有している。油剤塗布装置3.2には、組付け壁において引出し装置3.3、延伸装置3.4、巻縮装置3.5および交絡装置3.6が続いている。引出し装置3.3、延伸装置3.4、巻縮装置3.5および交絡装置3.6の、糸をガイドしかつ糸を処理する構成部材は、組付け壁6の正面に保持されている。組付け壁6の背面には、複数の駆動装置を備えた駆動装置10が設けられていて、各処理装置3.3,3.4,3.5および3.6に対応配置されている。
【0028】
このような処理装置3は十分に公知であり、欧州特許第2567008号明細書から明らかであるので、以下では詳細な説明は省略し、引用された上記特許文献が参照される。
【0029】
処理装置3に対応配置された巻取り装置4は、この実施例では機械フレーム4.5において回転可能に支承された巻取りリボルバ4.2により形成されている。巻取りリボルバ4.2には、互いに間隔を置いた2つの巻取りスピンドル4.1が回転可能に支承されて配置されている。巻取り装置4は、この実施例では、3つの巻取り箇所を有しているので、巻取りスピンドル4.1においてそれぞれ3つのパッケージ9が同時に巻成される。巻取り領域では、巻取りスピンドル4.1が押圧ローラ4.3および綾振り装置4.4と協働する。
【0030】
機械フレーム4.5は、組付け壁6に統合されていて、背面側で駆動装置10に組み合わせられている。したがって、巻取りスピンドル4.1および巻取りリボルバ4.2ならびに綾振り装置4.4は、別個の駆動装置により駆動される。
【0031】
駆動装置10は、機械制御ユニット11に接続されている。
【0032】
処理装置3の側方で隣に、自動操作装置5が配置されている。この自動操作装置5は、長く突出するロボットアーム5.1を有している。このロボットアーム5.1は、多軸式に構成されていて、自由端に工具アダプタ5.2を有している。自動操作装置5は、自走装置5.3を介して、懸架軌道12においてガイドされている。懸架軌道12は、処理装置3およびドッファ通路14の上側に延びている。このドッファ通路14は、機械長手方向に沿って巻取り装置4の端面の手前に延びている。自動操作装置5は、ロボットアーム5.1のガイドのために保存された制御プログラムを実施することができるように、ロボット制御装置5.4を含んでいる。ロボット制御装置5.4は、機械制御ユニット11にワイヤレス接続部15を介して接続されている。
【0033】
組付け壁6の上側領域には、工具マガジン7が配置されている。工具マガジン7は、複数の工具を収容するための保持装置7.7を有している。工具として、たとえばサクションインジェクタ装置7.1、グリッパ装置7.3およびパッケージ除去器7.2が図示されている。サクションインジェクタ装置7.1は、糸屑管路17を介して糸屑容器13に接続されている。圧縮空気管路(図示せず)が、サクションインジェクタ3.1を圧縮空気源に接続する。糸屑管路17および圧縮空気管路は、フレキシブルに形成されているので、サクションインジェクタ7.1は、引渡し時にロボットアーム5.1によりフレキシブルに走行可能である。各工具7.1、7.2および7.3には、連結アダプタ7.4が対応して配置されている。連結アダプタ7.4は、ロボットアーム5.1の工具アダプタ5.2に選択的に連結可能である。したがって、工具7.1、7.2、7.3を、別個にロボットアーム5.1により工具マガジン7から取り出し、工具に割り当てられたオペレーション作業の実施後に戻すことができる。連結アダプタ7.4のうちの1つと、ロボットアーム5.1に設けられた工具アダプタ5.2との間の純粋に機械的な結合部の他に、信号伝達のための電気的なコネクタも両アダプタ7.4,5.2間で接続することができる。したがって、たとえばロボット制御装置5.4を介して、サクションインジェクタ装置7.1は作動されかつ非作動にされる。
【0034】
本発明に係る溶融紡糸装置の実施例が図1および図2に通常の運転状況で図示されている。この運転状況では、合計3本の合成糸が製造される。このためには、紡糸ノズル装置1にポリマ溶融物が供給される。紡糸ノズル装置1は、紡糸ノズル1.3により複数のフィラメントをポリマ溶融物から押し出して各糸を形成する。フィラメントは、冷却装置2により冷却され、糸8は、引出し装置3.3によりそれぞれ個別に紡糸ノズル装置1から引き出される。冷却後にフィラメント束は、油剤塗布装置3.2により処理され、それぞれ糸8に纏められて次いで一緒に延伸装置3.4へと供給される。延伸後に、糸は巻縮装置3.5内で巻縮加工され、パッケージへの巻取り前に交絡装置3.6により交絡される。
【0035】
図1および図2の図面から判るように、自動操作装置5は、保持ステーション16に停められている。この保持ステーション16では、ロボットアーム5.1は工具マガジン7への直接的なアクセスが可能である。保持ステーション16において、自動操作装置5は、機械制御ユニット11の制御命令を待っていて、これにより発生したオペレーション作業を実施することができる。糸製造中に、巻取り装置4内で最後まで巻成されたパッケージ9は取り出され、たとえば搬送システムに引き渡されなければならない。巻取りスピンドル4.1のうちの1つから取り出されたパッケージ9は、次いで空管に交換されなければならない。オペレーション作業を実施することができるように、ロボットアーム5.1は、まず工具マガジン7からパッケージ除去器7.2を取り出す。自走装置5.3により、自動操作装置5は、保持ステーション16から巻取り装置4へと走行させられる。次いで、ロボットアーム5.1が、予め規定された制御プログラムに対応して制御され、これにより、パッケージ除去器7.2によりパッケージ9を巻取りスピンドル4.1から搬送システム(図示せず)へと引き渡すことができる。パッケージが巻取りスピンドル4.1から除去されるや否や、ロボットアーム5.1の工具が交換され、ロボットアーム5.1には、グリッパ装置7.3を装備される。グリッパ装置7.3により、巻管マガジン(詳細に図示せず)から巻管が取り出され、巻取りスピンドル4.1に被せ嵌められる。この工程は、必要な個数の巻管を巻取りスピンドル4.1上に位置決めするために、繰り返される。
【0036】
したがって、自動操作装置5は、複数のオペレータ作業を実施するために各運転状況で使用される。したがって、オペレータ作業は、運転開始時にも、メンテナンス期間中にも、自動操作装置により実施することができる。図3および図4には、溶融紡糸装置の実施例が運転開始時において図示されている。この状況では、ロボットアーム5.1により、サクションインジェクタ装置7.1が工具マガジン7から取り出され、糸をガイドするために使用される。これにより、紡糸ノズル装置1から押し出される糸は、連続的にサクションインジェクタ7.1を介して収容され、糸屑容器13へとガイドされる。図3および図4には、ロボットアーム5.1が糸群を延伸装置3.4に巻き付ける状況が示されている。ロボットアーム5.1は制御プログラムに対応して制御され、これにより糸の巻き付けを実施することができる。
【0037】
溶融紡糸装置の、図1図4に図示された実施例は、自動操作装置5の構成においても、オペレータ作業の実施においても単に例示的に示されている。基本的には、図示されていない別の工具が、特定のオペレータ作業を実施することができるように、使用される。したがって、自動操作装置5は、規則的な間隔でたとえばプロセス中の糸張力を検査することができる。測定された値は、直接にデータバンクに伝送される。
【0038】
したがって、自動操作装置5が、ロボットアーム5.1においてガイドされたカメラシステムにより、プロセスの詳細領域、たとえば油剤塗布装置3.2における糸走行または延伸装置3.4における糸走行または巻縮装置3.5における糸詰まり発生の記録を作成することも可能である。次いで機械制御ユニット11において、実際-目標-比較が実施され、これにより場合によっては先を見通したメンテナンス作業を開始することができる。さらに、自動操作装置5は、メンテナンス期間中にクリーニング作業を実施するためにも使用される。したがって、糸の残りおよび埃がたとえばサクションインジェクタ装置7.1を介して収容され、導出される。特に巻取り装置4の領域において、このような糸の残りおよび糸屑は、パッケージ9に巻き取られた糸品質に不都合に影響を与えてしまうので、巻取り装置4の清掃のための自動操作装置5の規則的な使用は特に有利である。
【0039】
図1および図2に図示された実施例では、自動操作装置5が、処理装置3および巻取り装置4に対応配置されている。基本的には、自動操作装置5が、紡糸ノズル装置1の領域における別のオペレータ作業を引き受ける可能性も生じる。さらに、自動操作装置5は、有利には複数の処理装置3および巻取り装置4のためにも使用される。したがって、いわゆる相並んだ紡糸位置としての複数の溶融紡糸装置が、糸を製造するための工場全体において使用されることは一般的である。このためには、懸架軌道12が、処理装置3が相並んで設置されている機械長手側に対して平行に延びている。所望のオペレータ作業を高い融通性をもって実施することができるようにするために、自動操作装置5は、統合された工具マガジン7を有している。これについて、図5および図6には、自動操作装置5に設けられた工具マガジン7の実施例が複数の視点で図示されている。図5は、自動操作装置5の側面図を概略的に示していて、図6には、自動操作装置5の平面図が図示されている。したがって、以下の説明は両図面に適用される。
【0040】
自動操作装置5には、相並んだ複数の工具ホルダ7.7を備えた工具マガジン7が配置されている。各工具ホルダ7.7には、複数の工具のうちの1つが保持されている。この実施例では、工具マガジン7は、合計5つの種々異なる工具7.1~7.6を有している。サクションインジェクタ装置7.1の他に、グリッパ装置7.3、パッケージ心棒7.2、測定装置7.5およびカメラ装置7.6が示されている。各工具7.1~7.6には、工具アダプタ5.2を介してロボットアーム5.1に結合させるために、連結アダプタ7.4が対応配置されている。したがって、ロボットアーム5.1は、各任意の位置で所望のオペレータ作業を対応する工具で実施することができる。
【0041】
図1および図2による実施例では、自動操作装置が懸架軌道においてガイドされる。代替的には、自動操作装置が自走式のフロア車両として移動する可能性も生じる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6