(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】サンプリング装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
C12M1/26
(21)【出願番号】P 2020531262
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2019027323
(87)【国際公開番号】W WO2020017407
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2018134169
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発/高生産性微生物創製に資する情報解析システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】虎井 彩
(72)【発明者】
【氏名】松本 好弘
(72)【発明者】
【氏名】蓮沼 誠久
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-269641(JP,A)
【文献】特開平10-019743(JP,A)
【文献】特表2016-537001(JP,A)
【文献】特開2004-357575(JP,A)
【文献】特開2011-103882(JP,A)
【文献】国際公開第2015/079534(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/020458(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の液体をサンプリングするためのサンプリング装置であって、
前記容器から循環流路内に液体を導出させるとともに、前記循環流路から前記容器内に液体を導入させることにより、前記循環流路を介して前記容器内の液体を循環させる循環機構と、
前記循環流路の途中に設けられ、当該循環流路内を循環する液体を分岐流路へと流出させてサンプリングするように流路を切替可能な流路切替部と
、
前記流路切替部で流路を切り替える時間を制御することにより、液体のサンプリング量を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、液体のサンプリング後に、前記循環流路内の液体を逆流させることにより当該液体を前記容器内に回収することを特徴とするサンプリング装置。
【請求項2】
前記循環機構は、前記循環流路の少なくとも一部を構成する可撓性のチューブを有し、当該チューブを変形させることにより、当該チューブ内の液体を送液することを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記循環流路内の液体を前記容器内に回収した後、前記循環流路の少なくとも一部に洗浄液を導入して廃液させることを特徴とする請求項
1に記載のサンプリング装置。
【請求項4】
前記容器内の液体は、細胞を含む培養液であることを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の液体をサンプリングするためのサンプリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物や植物の細胞を培養槽内の培養液中で培養し、その培養液から細胞を回収して前処理を行った上で、液体クロマトグラフ質量分析装置に供給することにより、メタボローム解析などの分析を行う技術が知られている。この種の技術では、細胞を含む培養液をサンプリングするためのサンプリング装置と、サンプリングされた培養液に含まれる細胞に対して前処理を行うための前処理装置とが用いられている。培養液のサンプリングは、無菌状態にて行われる(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
培養液をサンプリングする方法としては、送液装置を用いて培養槽に接続された流路に培養液を送り出す方法や、培養槽にニードルを挿入して必要量の培養液を吸引する方法などが知られている。送液装置を用いて培養槽内の培養液を流路に送り出す方法では、培養液が外気に晒されないため、培養液を無菌状態に保ったままサンプリングを行うことができる。一方、培養槽にニードルを挿入して培養液を吸引する方法では、培養槽の蓋が取り外された上で培養槽内にニードルが挿入される。したがって、培養槽内の培養液が外気に晒されることになるため、無菌室内にてサンプリングを行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
送液装置を用いて培養槽内の培養液を流路に送り出す方法では、例えばチュービングポンプが送液装置として用いられる。この種の送液装置は、可撓性のチューブを変形(圧縮及び弛緩)させることにより、簡単な構成で送液を行うことができるが、培養液を正確な量でサンプリングすることが難しいという問題がある。
【0006】
一方、培養槽にニードルを挿入して培養液を吸引する方法では、ニードル内に培養液を正確な量で吸引してサンプリングすることができる。しかしながら、無菌室を設ける必要があるため、設備が大型化するとともに、ニードルを動作させるための構成が複雑になるという問題がある。
【0007】
上記のような問題は、培養液をサンプリングする場合だけでなく、培養液以外の各種液体を容器内からサンプリングする際にも生じる場合がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で正確な量の液体をサンプリングすることができるサンプリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るサンプリング装置は、容器内の液体をサンプリングするためのサンプリング装置であって、循環機構と、流路切替部とを備える。前記循環機構は、前記容器から循環流路内に液体を導出させるとともに、前記循環流路から前記容器内に液体を導入させることにより、前記循環流路を介して前記容器内の液体を循環させる。前記流路切替部は、前記循環流路の途中に設けられ、当該循環流路内を循環する液体を分岐流路へと流出させてサンプリングするように流路を切替可能である。
【0010】
このような構成によれば、容器内の液体を循環流路内に循環させながら、流路切替部を用いて流路を切り替えるだけの簡単な構成で、循環流路内を循環する液体を分岐流路へと流出させてサンプリングすることができる。循環流路内に液体を安定して循環させた状態で、流路切替部により所定時間だけ流路を切り替えれば、その時間に応じた正確な量の液体をサンプリングすることができる。また、流路切替部による流路の切り替えを短時間で繰り返せば、高速でサンプリングを行うことも可能である。
【0011】
(2)前記循環機構は、前記循環流路の少なくとも一部を構成する可撓性のチューブを有していてもよい。この場合、前記循環機構は、前記チューブを変形させることにより、当該チューブ内の液体を送液してもよい。
【0012】
このような構成によれば、可撓性のチューブを変形させて送液を行う簡単な構成を用いて、液体のサンプリングを行うことができる。また、チューブ内が汚れたときなどには、チューブを交換するだけで容易かつ安価にメンテナンスを行うことができる。
【0013】
(3)前記サンプリング装置は、制御部をさらに備えていてもよい。前記制御部は、前記流路切替部で流路を切り替える時間を制御することにより、液体のサンプリング量を制御する。
【0014】
このような構成によれば、制御部を用いて、流路切替部で流路を切り替える時間を正確に制御することにより、液体のサンプリング量を正確に制御することができる。
【0015】
(4)前記制御部は、液体のサンプリング後に、前記循環流路内の液体を逆流させることにより当該液体を前記容器内に回収してもよい。
【0016】
このような構成によれば、液体のサンプリング後に、循環流路内の液体を逆流させることにより、循環流路内に残っている液体を容器内に回収することができる。したがって、循環流路内に残っている液体をそのまま廃液する場合と比べて、容器内の液体の使用量を抑制することができる。
【0017】
(5)前記制御部は、前記循環流路内の液体を前記容器内に回収した後、前記循環流路の少なくとも一部に洗浄液を導入して廃液させてもよい。
【0018】
このような構成によれば、液体のサンプリング後に、循環流路内に残っている液体を容器内に回収した上で、循環流路内を洗浄液で洗浄することができる。これにより、循環流路内に液体が残った状態のまま次のサンプリングが行われるのを確実に防止することができる。
【0019】
(6)前記容器内の液体は、細胞を含む培養液であってもよい。
【0020】
このような構成によれば、細胞を含む培養液をサンプリングする際に、簡単な構成で正確な量の培養液をサンプリングすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、容器内の液体を循環流路内に循環させながら、流路切替部を用いて流路を切り替えるだけの簡単な構成であり、循環流路内に液体を安定して循環させた状態で、流路切替部により所定時間だけ流路を切り替えれば、その時間に応じた正確な量の液体をサンプリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係るサンプリング装置を備えた自動前処理システムの概略構成を示したブロック図である。
【
図2】サンプリング装置の流路構成を示した流路図である。
【
図3】サンプリング装置の電気的構成を示したブロック図である。
【
図4A】サンプリング装置の動作について説明するための流路図である。
【
図4B】サンプリング装置の動作について説明するための流路図である。
【
図4C】サンプリング装置の動作について説明するための流路図である。
【
図4D】サンプリング装置の動作について説明するための流路図である。
【
図4E】サンプリング装置の動作について説明するための流路図である。
【
図4F】サンプリング装置の動作について説明するための流路図である。
【
図4G】サンプリング装置の動作について説明するための流路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.自動前処理システムの概略構成
図1は、本発明の一実施形態に係るサンプリング装置1を備えた自動前処理システム10の概略構成を示したブロック図である。この自動前処理システム10は、分析対象物に対する前処理を自動で行うための装置である。本実施形態において、分析対象物は、例えば培養された細胞であり、より具体的には菌体である。
【0024】
自動前処理システム10には、サンプリング装置1及び前処理装置2が備えられている。自動前処理システム10により前処理が行われた後の細胞からは、その細胞の代謝産物が抽出されて、液体クロマトグラフ質量分析装置3に供給される。液体クロマトグラフ質量分析装置3は、分析対象物を分析するための分析装置の一例に過ぎず、他の分析装置を用いて分析を行うことも可能である。
【0025】
サンプリング装置1は、容器(培養容器)から液体をサンプリングするための装置である。例えば、微生物や植物の細胞は、バイオリアクタと呼ばれる容器内において培養液中で培養され、バイオリアクタ内の細胞を含む培養液がサンプリング装置1によりサンプリングされる。バイオリアクタ内には、例えば磁力を用いて回転される攪拌部材や、溶存酸素の濃度を検知するための酸素濃度センサなどが設けられており、バイオリアクタ内において培養液を攪拌しながら溶存酸素濃度を調整することにより、サンプリング装置1内において細胞が培養される。
【0026】
前処理装置2は、バイオリアクタ内からサンプリングされた培養液に含まれる細胞に対して前処理を行う。サンプリング装置1では、細胞を含む培養液が、容器(サンプリング容器)としての試験管に収容される。前処理装置2には、遠心分離機構4、液体除去機構5、試薬供給機構6、攪拌機構7及び抽出機構8などが備えられており、これらの各機構により、試験管内の培養液に含まれる細胞に対して前処理が順次行われる。
【0027】
遠心分離機構4は、細胞を含む培養液が収容された試験管に対して遠心分離を行う。これにより、試験管内の培養液に遠心力が付与され、細胞(固体)と細胞以外の液体とに分離される。そして、遠心分離機構4により試験管内で遠心分離された細胞以外の液体が、液体除去機構5を用いて除去されることにより、細胞が回収される。
【0028】
液体除去機構5により液体が除去された後の試験管内には、試薬供給機構6により試薬が供給される。これにより、試験管内の細胞に試薬が混合され、混合液が生成される。そして、試薬供給機構6により生成された混合液が、攪拌機構7により攪拌される。
【0029】
本実施形態において使用される試薬は、細胞中の代謝産物を抽出するための試薬であり、細胞に試薬が混合された混合液を攪拌することにより、細胞中から代謝産物が抽出された懸濁液が得られる。このようにして得られた懸濁液の一部が、抽出液として抽出機構8により抽出され、液体クロマトグラフ質量分析装置3に供給される。
【0030】
2.サンプリング装置の流路構成
図2は、サンプリング装置1の流路構成を示した流路図である。このサンプリング装置1では、バイオリアクタ11内の細胞を含む培養液をサンプリングする。バイオリアクタ11内には、磁力を用いて回転される攪拌部材111が備えられている。
【0031】
バイオリアクタ11は、サンプリング装置1内に設けられた保持部12により保持される。本実施形態では、1つの保持部12に3つのバイオリアクタ11を保持することができるようになっており、このような保持部12が複数設けられている。ただし、保持部12は、1つだけ設けられた構成であってもよいし、2つ以下又は4つ以上のバイオリアクタ11を保持することができるような構成であってもよい。
【0032】
バイオリアクタ11は、保持部12に設けられたヒータ(図示せず)により加熱された状態で培養を行うことができる。また、保持部12には、磁石(図示せず)を回転させるためのモータ13が連結されている。このモータ13を回転させることにより磁石を回転させ、その磁力によって各バイオリアクタ11内の攪拌部材111を回転させることができる。
【0033】
このように、本実施形態では、バイオリアクタ11内の培養液の温度を制御しながら、攪拌部材111により培養液を攪拌して培養を行うことができる。そして、サンプリング装置1内において、培養された細胞を含む培養液を任意のタイミングで試験管14にサンプリングすることができる。
【0034】
このサンプリング装置1には、試験管14内に培養液をサンプリングするための培養液サンプリング機構20と、試験管14内に試薬をサンプリングするための試薬サンプリング機構30とが備えられている。試験管14には、培養液と試薬とが混合された混合液が収容され、キャップ(図示せず)により密閉された上で、前処理装置2へと搬送される。
【0035】
培養液サンプリング機構20には、ポンプ21及び複数のバルブ22,23が備えられている。バルブ23は、例えば1対の共通ポートと、5対(計10個)の選択ポートとを有しており、いずれか1対の選択ポートを任意に選択して1対の共通ポートに接続することにより、流路を切り替えることができる。
【0036】
ポンプ21及びバルブ22は、1対の共通ポート間を接続する流路41に設けられている。バルブ22は、流路41内の液体を、流路41に対して分岐する分岐流路42に導くか否かを切り替えるための流路切替部(第1流路切替部)を構成している。すなわち、バルブ22により、流路41を介して1対の共通ポート間で液体を流通させる状態、又は、流路41内の液体を分岐流路42に導く状態のいずれかに切り替えることができる。
【0037】
5対の選択ポートのうち、1対の選択ポートは、1つのバイオリアクタ11に連通する導出路43及び導入路44にそれぞれ接続されている。導出路43は、バイオリアクタ11内の培養液を導出するための流路である。一方、導入路44は、バイオリアクタ11から導出路43を介して導出され、流路41を介して循環する培養液を、再びバイオリアクタ11内に導入させるための流路である。また、別の1対の選択ポートは、別のバイオリアクタ11に連通する導出路45及び導入路46にそれぞれ接続されている。さらに別の1対の選択ポートは、さらに別のバイオリアクタ11に連通する導出路47及び導入路48に接続されている。
【0038】
このように、本実施形態では、いずれかの導出路43,45,47と、それに対応する導入路44,46,48とを、流路41を介して連通させ、その状態でポンプ21を駆動させることにより、各バイオリアクタ11内の培養液を循環させることができる。すなわち、流路41、各導出路43,45,47及び各導入路44,46,48は、各バイオリアクタ11内の培養液を循環させるための循環流路(第1循環流路)を構成している。また、ポンプ21は、各バイオリアクタ11から第1循環流路内に培養液を導出させるとともに、第1循環流路から各バイオリアクタ11内に培養液を導入させることにより、第1循環流路を介して各バイオリアクタ11内の培養液を循環させる循環機構(第1循環機構)を構成している。
【0039】
各導出路43,45,47は、対応するバイオリアクタ11内の培養液中に、その先端が浸漬されている。一方、各導入路44,46,48は、対応するバイオリアクタ11内の培養液に対して上方に離間した位置に、その先端が位置している。したがって、各導出路43,45,47を介してバイオリアクタ11から導出され、流路41を介して循環する培養液は、各導入路44,46,48の先端から落下してバイオリアクタ11内に導入されるようになっている。
【0040】
本実施形態では、1対の共通ポート間を接続する流路41のうち、少なくともポンプ21が設けられている部分は、可撓性のチューブにより構成されている。ポンプ21は、例えばチュービングポンプであり、可撓性のチューブを変形(圧縮及び弛緩)させることにより、当該チューブ内の液体を送液することができる。
【0041】
流路41の途中に設けられた第1流路切替部としてのバルブ22を切り替えれば、流路41を介して各バイオリアクタ11内へと循環する培養液を分岐流路42へと流出させることができる。このとき、分岐流路42の先端は試験管14内に配置されており、当該分岐流路42を介して試験管14内に培養液がサンプリングされる。
【0042】
各導出路43,45,47及び各導入路44,46,48が接続された3対の選択ポート以外の2対の選択ポートのうち、1対の選択ポートは、洗浄液タンク26及び廃液タンク27にそれぞれ接続されている。また、残りの1対の選択ポートは、フィルタ25及び廃液タンク27にそれぞれ接続されている。洗浄液タンク26内には、培養液の流路を洗浄するための洗浄液が収容されている。
【0043】
いずれかのバイオリアクタ11内から試験管14に培養液をサンプリングした後、バルブ23を切り替えて洗浄液タンク26及び廃液タンク27を流路41に接続し、その状態でポンプ21を駆動させれば、洗浄液タンク26内の洗浄液が、流路41を介して廃液タンク27に廃液される。これにより、流路41や、流路41に設けられているバルブ22などを洗浄液で洗浄することができる。
【0044】
また、洗浄液による洗浄後、バルブ23を切り替えてフィルタ25及び廃液タンク27を流路41に接続し、その状態でポンプ21を駆動させれば、フィルタ25を介して流路41内に空気が導入され、流路41内に残った水分とともに廃液タンク27へと排出される。これにより、流路41や、流路41に設けられているバルブ22などから水分を除去することができる。
【0045】
試薬サンプリング機構30には、ポンプ31及び複数のバルブ32,33が備えられている。バルブ33は、例えば1つの共通ポートと、複数の選択ポートとを有しており、いずれかの選択ポートを任意に選択して共通ポートに接続することにより、流路を切り替えることができる。
【0046】
ポンプ31及びバルブ32は、試薬タンク34に両端が連通する流路49に設けられている。試薬タンク34には、試験管14内にサンプリングされた培養液に混合させるための試薬が収容されている。流路49は、試薬タンク34内の試薬を循環させるための循環流路(第2循環流路)を構成している。また、ポンプ31は、試薬タンク34から第2循環流路内に試薬を導出させるとともに、第2循環流路から試薬タンク34内に試薬を導入させることにより、第2循環流路を介して試薬タンク34内の試薬を循環させるための循環機構(第2循環機構)を構成している。
【0047】
本実施形態では、試薬タンク34に両端が接続された流路49のうち、少なくともポンプ31が設けられている部分は、可撓性のチューブにより構成されている。ポンプ31は、例えばチュービングポンプであり、可撓性のチューブを変形(圧縮及び弛緩)させることにより、当該チューブ内の試薬を送液することができる。
【0048】
バルブ32は、流路49内の液体を、流路49に対して分岐する分岐流路50に導くか否かを切り替えるための流路切替部(第2流路切替部)を構成している。すなわち、バルブ32により、流路49を介して試薬タンク34内の試薬を循環させる状態、又は、流路49内の試薬を分岐流路50に導く状態のいずれかに切り替えることができる。
【0049】
このように、流路49の途中に設けられた第2流路切替部としてのバルブ32を切り替えれば、流路49を介して試薬タンク34内へと循環する試薬を分岐流路50へと流出させることができる。分岐流路50は、バルブ33の共通ポートに接続されており、バルブ33のいずれかの選択ポートが試験管14内に接続される。したがって、試験管14内に接続された選択ポートを共通ポートに連通させれば、流路49から分岐流路50へと流出する試薬を試験管14内にサンプリングすることができる。
【0050】
3.サンプリング装置の電気的構成
図3は、サンプリング装置1の電気的構成を示したブロック図である。このサンプリング装置1には、上述したモータ13、ポンプ21,31及びバルブ22,23,32,33以外に、制御部60及び記憶部70などが備えられている。
【0051】
制御部60は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含み、当該CPUが制御プログラムを実行することにより、モータ13、ポンプ21,31及びバルブ22,23,32,33などの動作を制御することができる。記憶部70は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成されており、上記制御プログラムの他、各種データを記憶することができる。
【0052】
制御部60は、いずれかの導出路43,45,47と、対応する導入路44,46,48とが、流路41を介して連通した状態で、ポンプ21を一定の送液速度で駆動させることにより、いずれかのバイオリアクタ11内の培養液を循環させることができる。そして、制御部60は、制御プログラムに基づいて所定時間だけバルブ22を切り替え、流路41と分岐流路42とを連通させることにより、流路41内の培養液を試験管14にサンプリングすることができる。
【0053】
このとき、制御部60は、バルブ22で流路を切り替える時間を制御することにより、培養液のサンプリング量を制御することができる。すなわち、ポンプ21の送液速度が予め分かっていれば、流路41と分岐流路42とを連通させる時間を調整することにより、所望の量の培養液を試験管14に対して正確にサンプリングすることができる。
【0054】
また、制御部60は、流路49が一端から他端まで連通した状態で、ポンプ31を一定の送液速度で駆動させることにより、試薬タンク34内の試薬を循環させることができる。そして、制御部60は、制御プログラムに基づいて所定時間だけバルブ32を切り替え、流路49と分岐流路50とを連通させるとともに、バルブ33を切り替えて分岐流路50を試験管14に連通させることにより、流路49内の試薬を試験管14にサンプリングすることができる。
【0055】
このとき、制御部60は、バルブ32で流路を切り替える時間を制御することにより、試薬のサンプリング量を制御することができる。すなわち、ポンプ31の送液速度が予め分かっていれば、流路49と分岐流路50とを連通させる時間を調整することにより、所望の量の試薬を試験管14に対して正確にサンプリングすることができる。
【0056】
4.サンプリング装置の動作
図4A~
図4Gは、サンプリング装置1の動作について説明するための流路図である。
図4A~
図4Gにおいて、実線で示した流路は液体(培養液、洗浄液又は試薬)やガス(空気)などが流れている状態を示し、破線で示した流路は液体やガスが流れていない状態を示している。
【0057】
図4Aに示した状態では、1つのバイオリアクタ11に連通する導出路43及び導入路44が、流路41を介して連通している。この状態でポンプ21を駆動させることにより、バイオリアクタ11内の培養液が循環される。このとき、試薬の流路49は、一端から他端まで連通しており、ポンプ31が駆動されることにより、試薬タンク34内の試薬が循環される。
【0058】
図4Bに示すようにバルブ23を切り替えた場合には、別のバイオリアクタ11に連通する導出路45及び導入路46が流路41を介して連通し、この状態でポンプ21を駆動させることにより、当該バイオリアクタ11内の培養液が循環される。また、
図4Cに示すようにバルブ23を切り替えた場合には、さらに別のバイオリアクタ11に連通する導出路47及び導入路48が流路41を介して連通し、この状態でポンプ21を駆動させることにより、当該バイオリアクタ11内の培養液が循環される。
【0059】
図4A~
図4Cのいずれかの状態からバルブ22を切り替え、流路41を分岐流路42に接続すれば、流路41内を循環する培養液を分岐流路42へと流出させ、試験管14内にサンプリングすることができる。例えば、
図4Dのように、
図4Aの状態からバルブ22を切り替えれば、導出路43、流路41及び導入路44を介して循環する培養液が、分岐流路42を介して試験管14内にサンプリングされる。
【0060】
このとき、
図4Dに示すように、バルブ32,33も切り替えられ、流路49が分岐流路50を介して試験管14に連通する。これにより、流路49内を循環する試薬を、培養液がサンプリングされた試験管14内にサンプリングすることができる。
【0061】
培養液及び試薬のサンプリングが完了すると、
図4Eに示すように、バルブ22が切り替えられて、導出路43及び導入路44が流路41を介して連通した状態に戻される。また、バルブ32が切り替えられて、試薬の流路49が一端から他端まで連通した状態に戻される。この状態で、ポンプ21は、流路41内の液体を逆流させるように駆動される。これにより、流路41、導出路43及び導入路44に残っている培養液が、逆流してバイオリアクタ11に回収される。
【0062】
その後、
図4Fに示すように、バルブ23が切り替えられ、流路41を介して洗浄液タンク26と廃液タンク27とが連通する。この状態でポンプ21が駆動されることにより、洗浄液タンク26内の洗浄液が流路41に導入され、廃液タンク27へと廃液される。
【0063】
その後さらに、
図4Gに示すように、バルブ23が切り替えられ、流路41を介してフィルタ25と廃液タンク27とが連通する。この状態でポンプ21が駆動されることにより、フィルタ25を介して流路41内に空気が導入され、流路41内に残った水分とともに廃液タンク27へと排出される。
【0064】
5.作用効果
(1)本実施形態では、バイオリアクタ11内の培養液や試薬タンク34内の試薬を流路41,49内に循環させながら、バルブ22,32を用いて流路を切り替えるだけの簡単な構成で、流路41,49内を循環する液体(培養液又は試薬)を分岐流路42,50へと流出させてサンプリングすることができる。流路41,49内に液体を安定して循環させた状態で、バルブ22,32により所定時間だけ流路を切り替えれば、その時間に応じた正確な量の液体をサンプリングすることができる。また、バルブ22,32による流路の切り替えを短時間で繰り返せば、高速でサンプリングを行うことも可能である。
【0065】
(2)本実施形態では、流路41,49の少なくとも一部を構成する可撓性のチューブを変形させて送液を行う簡単な構成のポンプ21,31を用いて、液体(培養液又は試薬)のサンプリングを行うことができる。また、チューブ内が汚れたときなどには、チューブを交換するだけで容易かつ安価にメンテナンスを行うことができる。
【0066】
(3)本実施形態では、制御部60を用いて、バルブ22,32で流路を切り替える時間を正確に制御することにより、液体(培養液又は試薬)のサンプリング量を正確に制御することができる。
【0067】
(4)本実施形態では、
図4Eに示すように、培養液のサンプリング後に、流路41内の培養液を逆流させることにより、流路41内に残っている培養液をバイオリアクタ11内に回収することができる。したがって、流路41内に残っている培養液をそのまま廃液する場合と比べて、バイオリアクタ11内の培養液の使用量を抑制することができる。
【0068】
(5)本実施形態では、培養液のサンプリング後に、流路41内に残っている培養液をバイオリアクタ11内に回収した上で、
図4Fに示すように、流路41内を洗浄液で洗浄することができる。これにより、流路41内に培養液が残った状態のまま次のサンプリングが行われるのを確実に防止することができる。
【0069】
6.変形例
以上の実施形態では、サンプリング装置1によりサンプリングされる液体が、培養液や試薬である場合について説明した。しかし、このような構成に限らず、他の任意の液体をサンプリングする際に、本発明に係るサンプリング装置1を適用することができる。
【0070】
また、バルブ22,23,32,33は、制御部60により自動で切り替えられるような構成に限らず、作業者が手動で切り替えるような構成であってもよい。同様に、ポンプ21,31についても、制御部60により自動で動作が開始されるような構成に限らず、作業者の操作に基づいて動作が開始されるような構成であってもよい。
【0071】
液体を循環させるための循環機構は、本実施形態におけるポンプ21,31のようなチュービングポンプに限らず、他の任意のポンプを用いて液体を循環させることができる。また、連続的に安定して液体を循環させることができれば、ポンプを用いた構成に限らず、他の部材を用いた構成であってもよい。
【0072】
サンプリング装置1は、その内部に設置されたバイオリアクタ11内で細胞を培養するような構成に限らず、外部で培養した細胞がサンプリング装置1にセットされるような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 サンプリング装置
2 前処理装置
3 液体クロマトグラフ質量分析装置
4 遠心分離機構
5 液体除去機構
6 試薬供給機構
7 攪拌機構
8 抽出機構
10 自動前処理システム
11 バイオリアクタ
14 試験管
20 培養液サンプリング機構
21 ポンプ
22 バルブ
23 バルブ
25 フィルタ
30 試薬サンプリング機構
31 ポンプ
32 バルブ
33 バルブ
34 試薬タンク
41 流路
42 分岐流路
49 流路
50 分岐流路