IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロジャーズ ジャーマニー ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7143426金属セラミック基板および金属セラミック基板の製造方法
<>
  • 特許-金属セラミック基板および金属セラミック基板の製造方法 図1
  • 特許-金属セラミック基板および金属セラミック基板の製造方法 図2
  • 特許-金属セラミック基板および金属セラミック基板の製造方法 図3
  • 特許-金属セラミック基板および金属セラミック基板の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】金属セラミック基板および金属セラミック基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/13 20060101AFI20220920BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20220920BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20220920BHJP
   C04B 37/02 20060101ALN20220920BHJP
【FI】
H01L23/12 C
H01L23/14 M
H01L23/12 F
H01L23/12 D
C04B37/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020542736
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2019054787
(87)【国際公開番号】W WO2019166454
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】102018104532.8
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515063390
【氏名又は名称】ロジャーズ ジャーマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Rogers Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Am Stadtwald 2, D-92676 Eschenbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】タン、シンヘ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ブリッティング、シュテファン
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-145748(JP,A)
【文献】特開2002-076197(JP,A)
【文献】特開2000-091472(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188273(WO,A1)
【文献】特開平10-084059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/13
H01L 23/14
H01L 23/12
C04B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属セラミック基板(1)であって、
-主延在面(HSE)に沿って延在し、かつセラミックを含む絶縁層(11)と、
-接合領域(A)の上で前記絶縁層(11)に接合された金属被覆層(12)と
を備え、前記接合領域(A)は、前記主延在面(HSE)に平行な面において少なくとも1つのエッジ(K)によって画定されており、
前記エッジ(K)は、少なくとも部分的に充填材料(2)で覆われ、前記エッジ(K)に隣接する前記金属被覆層(12)のエッジ領域(RB)は、材料の弱化を有しており、前記材料の弱化は、凹部(13)として形成され、前記主延在面(HSE)に平行でない前記金属被覆層(12)の側面(SF)は、少なくとも部分的に斜めおよび/または弓状に延びており、
-前記充填材料(2)は、さらなるエッジ(K’)と重なっており、前記金属被覆層の上側の凹部(13)を充填し、および/または
-前記金属被覆層の厚さ(MD)と前記充填材料の高さ(FH)との間の比は、0.5~0.9の値をとり、および/または
-前記充填材料(2)は、前記主延在面(HSE)に垂直な方向において前記さらなるエッジ(K’)と同一平面で終端している
ことを特徴とする、金属セラミック基板(1)。
【請求項2】
前記材料の弱化は、ドーム形の凹部(13)として形成されている、請求項1に記載の金属セラミック基板(1)。
【請求項3】
前記充填材料(2)は、上側の前記主延在面(HSE)に平行な面において前記金属被覆層(12)の終端領域(AF)を画定するさらなるエッジ(K’)まで延在している、請求項1または2に記載の金属セラミック基板(1)。
【請求項4】
前記充填材料(2)は、300℃を超える短期耐熱性を有する有機グラウトを含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の金属セラミック基板(1)。
【請求項5】
前記充填材料(2)は、その最も厚い点において、少なくとも20μmの充填材料厚さ(FD)を有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の金属セラミック基板(1)。
【請求項6】
前記充填材料(2)は、前記金属被覆層(12)と、隣接する金属被覆層(12”)との間におけるその最も薄い点において、30μm未満の充填材料厚さ(FD)を有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の金属セラミック基板(1)。
【請求項7】
前記エッジ(K)の上の充填材料厚さ(FD)は、極大であり、かつ/または前記主延在面(HSE)に平行な方向において減少する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の金属セラミック基板(1)。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の金属セラミック基板(1)を製造する方法であって、
-主延在面(HSE)に沿って延在し、かつセラミックを含む絶縁層(11)を提供すること、
-金属被覆層(12)を接合し、前記主延在面(HSE)に平行な面において少なくとも1つのエッジ(K)により画定された接合領域(A)を形成すること、
-前記エッジ(K)に隣接するエッジ領域(RB)の金属被覆層(12)に材料の弱化を形成すること
を含み、前記エッジ(K)は、充填材料(2)で覆われている、方法。
【請求項9】
前記金属被覆層(12)は、DCBプロセスによって前記絶縁層(11)に接合されている、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気、特に電子コンポーネントのための金属セラミック基板、および金属セラミック基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属セラミック基板は、例えば、プリント回路基板または回路基板として、最先端の技術から十分によく知られている。典型的には、金属セラミック基板の一方のコンポーネント側に、電気コンポーネントおよび導体トラックのための接続領域が配置され、電気コンポーネントおよび導体トラックは、相互接続されて電気回路を形成することができる。金属セラミック基板の必須の構成要素は、絶縁層、および絶縁層に接合された金属被覆層である。絶縁強度が比較的高く、環境の影響に対する安定性があるため、セラミック製の絶縁層が特に有利であることが証明されている。金属被覆層を構造化することにより、電気コンポーネントのための導体トラックおよび/または接続領域を実現することができる。
【0003】
所望の、または必要とされる耐熱衝撃性に関する弱点は、金属被覆層に接するエッジに沿った、金属被覆層と絶縁層との間の境界領域であることが繰り返し見出されている。熱膨張係数が異なるため、すなわち、通常は金属被覆層の熱膨張係数と比較して絶縁層の熱膨張係数が低いため、金属被覆層が絶縁層に接合している接合領域に沿ってせん断応力が発生する。これらのせん断応力は、接合領域を制限するエッジで極大となり、この領域でのクラック形成を促進する。
【0004】
耐熱衝撃性を改善するために、特許文献1は、金属被覆層、特にそのエッジ領域での材料の弱化を提示している。他方、特許文献2は、金属被覆層のトレンチを充填材料で覆って、クラックを埋めることを教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第0632681号明細書
【文献】独国特許出願公開第102010024520号明細書
【発明の概要】
【0006】
この背景に基づいて、本発明は、耐熱衝撃性がさらに改善され、特にクラック形成の傾向が低減された金属セラミック基板を提供することを目的とする。
この目的は、請求項1に記載の金属セラミック基板および請求項9に記載の方法によって達成される。本発明のさらなる利点および特徴は、従属請求項、ならびに説明および添付の図から得られる。
【0007】
本発明は、金属セラミック基板を提供し、金属セラミック基板は、
・主延在面に沿って延在し、かつセラミックを含む絶縁層と、
・接合領域の上で絶縁層に接合された金属被覆層と
を備え、接合領域は、主延在面に平行な面において少なくとも1つのエッジにより画定されている。
【0008】
耐熱衝撃性を高めるために、エッジが、少なくとも部分的に充填材料で覆われ、エッジの隣の、またはエッジに隣接する金属被覆層のエッジ領域は、材料の弱化を有することが意図されている。
【0009】
従来技術と比較して、本発明によれば、充填材料によるエッジの被覆を、金属被覆層のエッジ領域の材料の弱化と組み合わせることが意図されている。驚くべきことに、これら2つの手段を組み合わせることで、相乗的に耐熱衝撃性が改善されることが判明した。これは、両方の手段を組み合わせることで、それぞれの手段の合計により予想される改善よりも、金属セラミック基板の耐熱衝撃性が改善されることを意味する。
【0010】
材料の弱化は、金属被覆層の厚さが減少すると熱機械的応力も減少するという事実を利用する。エッジを充填材料で被覆することは、せん断応力が発生する領域の体積を増加させるという効果を有する。マイクロクラックをシールすることもできる。マイクロクラックをシールすることは、例えば毛細管凝縮によって吸湿を打ち消し、したがって応力腐食割れを最小限に抑える。エッジの少なくとも部分的な被覆および材料の弱化の組み合わせから生じる相乗効果に加えて、この組み合わせにより、(エッジ領域において材料の弱化のみが提供される金属セラミック基板と比較して)同じ耐熱衝撃性を維持しながら、材料の弱化を伴うエッジ領域を短くすることができる。これは、材料の弱化を伴う領域では、電気または電子コンポーネントの接続が意味を成さないため、電子または電気コンポーネントが金属セラミック基板に接続されるコンポーネント側において、より大きな接続領域が利用可能であることを意味する。言い換えると、本発明による組み合わせは、金属被覆層の使用可能な接続領域または終端領域を増加または最適化することを追加的に可能にする。
【0011】
好ましくは、絶縁層は、セラミックの材料として、Al、Si、AlN、ZTA(ジルコニア強化アルミナ)、MgO、BeO、SiCまたは高密度MgO(理論密度の>90%)、TSZ(正方晶安定化ジルコニア)またはZTAを有する。絶縁層は、さまざまな望ましい特性を組み合わせるために、材料組成が各々異なる複数のセラミック層が上下に配置され、互いに接合されて絶縁層を形成する複合セラミックまたはハイブリッドセラミックとして設計されることも考えられる。金属被覆層の材料として考えられる材料は、銅、アルミニウム、モリブデン、および/またはそれらの合金、ならびにCuW、CuMo、CuAl、AlCu、および/またはCuCuなどのラミネート、特に第1の銅層および第2の銅層を備えた銅サンドイッチ構造であり、第1の銅層の粒径は、第2の銅層とは異なっている。
【0012】
特に、接合領域は、主延在面に沿って絶縁層の全長にわたって延在しないことが意図されている。換言すれば、絶縁層は、金属被覆層の逆、特にエッジとは逆の主延在面の方向に突出している。好ましくは、金属被覆層は、構造化され、エッジは、構造化手段、例えば絶縁トレンチのエッチングまたは表面ミリングの結果として作成される。材料の弱化は、特に、金属被覆層の厚さの変化または変調である。好ましくは、同じ方向で測定された金属被覆層の全長に対するエッジ領域の伸長の比は、0.25未満、好ましくは0.15未満、最も好ましくは0.1未満の値である。伸長または全長は、特にエッジのコースに垂直な方向で測定される。特に、伸長の測定は、エッジから始まり、金属被覆層の中央領域の方に向けられる。
【0013】
さらに、好ましくは、エッジ領域に関連する外面、すなわち、絶縁層とは反対を向いている金属被覆層の面が、絶縁層とは反対を向いている金属被覆層の全外面の0.15倍よりも小さく、より好ましくは0.1倍よりも小さく、最も好ましくは0.05倍よりも小さいものとされている。好ましくは、主延在面におけるエッジのコースに垂直な面のエッジから始まるエッジ領域は、金属被覆層の中央領域の方向に、1000μmまで、より好ましくは800μmまで、最も好ましくは600μmまで延びることが意図される。エッジ領域は、材料の弱化の程度によって定義され、例えば、金属被覆層がその最大厚さまたは一定の厚さを有し、さらなる凹部が設けられていない金属被覆層の領域まで中央領域の方向に延びているとも考えられる。
【0014】
エッジは、少なくともいくつかの領域において、湾曲していても、直線であっても、角度を有していてもよい接合の直線状の境界を形成する。特に、エッジは、エッジ領域の一部であり、または接合領域の端部または中央領域とは反対を向いているエッジ領域を形成する。エッジは、接合面を完全に囲んでいるか、または包囲しており、すなわち、主延在面におけるその伸長の各側にある。
【0015】
さらに、エッジは、充填材料で全体にわたって、特に完全に覆われていることが好ましい。充填材料は、エッジでのクラックの形成を抑制する、すなわちクラックの拡大を抑制または完全に防止するのに適している。充填材料は、好ましくは、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ、またはポリエーテルエーテルケトンなどのプラスチック材料を含む。セラミック成分がプラスチック材料に添加されることも考えられる。そのような添加剤の例は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、またはガラスである。
【0016】
炭素繊維、ガラス繊維、および/またはナノ繊維がプラスチック材料に添加されることも考えられる。好ましくは、充填材料は耐熱性であり、すなわち、充填材料が、充填材料の適用後の金属セラミック基板の製造中、および/または、はんだ付け中に発生する温度で溶融しないことが意図されている。さらに、好ましくは、充填材料は、絶縁層、好ましくは選択されたセラミック材料、および金属被覆層、好ましくは選択された銅などの金属とのしっかりした良好な接合を形成するのに適するものとされている。さらに、充填材料の熱膨張係数は、絶縁層および/または金属被覆層の熱膨張係数以上であるとされている。例えば、充填材料の熱膨張係数は、金属被覆層の熱膨張係数よりも3倍を超えて大きい。
【0017】
充填材料が、ハウジングの一部を形成することも考えられる。例えば、金属セラミック基板は、オーバーモールディング中に実現され、オーバーモールディング中にエッジを充填材料で覆うことによってハウジングを形成することができる。金属被覆層とは反対の絶縁層の側に接合されているさらなる金属被覆層が設けられることも考えられる。好ましくは、さらなる金属被覆層は、さらなる接合領域を介して絶縁層に接続される。特に、さらなる接合領域のエッジは、少なくともいくつかの領域において充填材料で覆われている。
【0018】
さらに、充填材料は、主延在面において絶縁層を区切る絶縁層の側面を少なくとも部分的に被覆することが考えられる。好ましくは、充填材料は、側面を完全に覆うかまたは被覆する。そうすることで、充填材料は、例えば、接合領域のエッジから、主延在面に最も近い絶縁層の側面まで延在する。側面は、好ましくは、接合領域に対して垂直に延びる。好ましくは、充填材料は、絶縁トレンチを完全に、すなわち、上側の主延在面に平行な面において金属被覆の終端領域を画定するさらなるエッジの高さまで埋め込む。
【0019】
特に、エッジを覆うために、充填材料、特に液体充填材料が、絶縁トレンチ領域に導入され、例えば底から上までそれを充填することが意図されている。特に、絶縁トレンチ領域は、主延在面に平行な面において金属被覆層の端面を画定するさらなるエッジまで充填される。充填材料が、スプレーまたはスパッタリングプロセスによって塗布されることも考えられる。
【0020】
充填材料の、特に絶縁層への接合を促進するために、好ましくは、絶縁層および/または金属被覆層は、表面改質されている。例えば、絶縁層は、充填材料が接合される前にプラズマ処理にさらされるか、または金属被覆層は、酸化される。これは、充填材料の接合を強化するという利点を有し、これは、製造された金属セラミック基板の耐用年数に対してプラスの効果がある。
【0021】
充填材料が、複数の層でエッジを被覆することも考えられる。異なる充填材料の異なる層が、上下に配置されることも考えられる。これは、エッジの被覆を予想される負荷に対してさらによく適合させることができるという利点を有する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、材料の弱化は、凹部、特にドーム型の凹部として形成されることが意図されている。特に、凹部は、金属被覆面の終端領域内で凹んでおり、終端領域は、接合領域の反対側にあり、接合領域と平行に延びている。終端領域は、好ましくは、さらなるエッジによって画定され、凹部は、特に、さらなるエッジに対して、主延在面に平行に延びる方向にオフセットされる。例えば、凹部は、さらなるエッジに隣接しておらず、またはさらなるエッジの一部を形成することが意図されている。好ましくは、凹部は、さらなるエッジに平行に走る1つまたは複数の行に沿って互いにオフセットして配置されている。しかしながら、凹部がエッジ領域に統計的に分布していること、および/または金属被覆層の中央領域の方向における密度(すなわち、単位面積あたりの凹部の数)が変化すること、例えば減少することも考えられる。
【0023】
好ましくは、充填材料は、上側の主延在面に平行な面において金属被覆の終端領域を画定するさらなるエッジまで延在するとされている。さらに、好ましくは、充填材料は、主延在面に垂直な方向においてさらなるエッジと同一平面で終端しているか、またはエッジとさらなるエッジとの間で終端していることが意図されている。
【0024】
さらなる実施形態では、充填材料が、さらなるエッジと重なり、金属被覆の上側の凹部を充填するとされている。このようにして、エッジ領域は、有利な方法で、凹部まで充填材料で覆われ、シールされる。
【0025】
さらに、好ましくは、金属被覆の厚さと充填材料の高さとの間の比は、0.5~0.9、より好ましくは0.6~0.8、最も好ましくは本質的に0.75の値をとるとされている。
【0026】
さらに、好ましくは、充填材料は、2つの金属被覆の間の領域、すなわちアイソトレンチ領域を完全に、すなわち大量には、充填しないとされている。代わりに、充填材料は、2つの金属被覆間に少なくとも1つの凹部または凹んだコースを有している。
【0027】
さらに、好ましくは、充填材料がコーティングを形成するとされている。この場合、特にコーティングの形態の充填材料は、絶縁層からさらなるエッジまで延在し、または絶縁層からエッジとさらなるエッジとの間の点まで延在している。
【0028】
特に、充填材料は、主延在面に平行でない側面に沿って延在しないことが意図されている。
凹部が、金属被覆層またはさらなる金属被覆層の終端領域および/または接合領域に形成されることも考えられる。
【0029】
例えば、複数行の凹部を、金属被覆層のさらなるエッジから開始して中央領域に向かって互いに背後に配置することができる。凹部は、金属被覆層の厚さ全体にわたって延在することができ、すなわち、連続的であるか、または金属被覆層が特定の箇所で、好ましくは直接さらなるエッジでのみ局所的に弱化されるように、部分的にのみエッチングされる。凹部は、金属被覆層を貫通するか、または好ましくは金属被覆層の内部でドームまたはキューポラの形状で開口または終端する。また、金属被覆層は、穴状の凹部および止まり穴状のボアを有するように設計され、穴状の凹部の数は、止まりの穴状の凹部の数より少ないことも考えられる。有利には、複数の凹部、特に互いに隣接して配置された複数の凹部は、さらなるエッジの蛇行形状、スタンプエッジ形状、および/または鋸歯形状のコースを形成し、蛇行形状、スタンプエッジ形状、および/または鋸歯形状のコースは、特に、金属被覆層のエッジコース全体またはさらなるエッジにわたって延びている。金属被覆層の蛇行形状、スタンプエッジ形状、および/または鋸歯形状のコースが、金属被覆層のエッジコース全体の一部のエリアにのみ延在するか、またはいくつかの部分的なエリアが、回転方向から見たときに互いに距離を置いて隣接することも考えられる。さらなるエッジの構造化されたコースを形成することにより、その表面拡大は、機械的応力の発生場所とは本質的に無関係に有利に分散され得るように設計されている。しかしながら、エッジのコースは、不規則な凹部、すなわち、例えば互いに混合または交互に配置された、または波状、長方形、平行四辺形またはギザギザの、小さな凹部、およびより大きな凹部を有することもできる。
【0030】
好ましくは、特に主延在面に平行ではない金属被覆層の側面が、少なくとも部分的に、斜めに、および/または弓状に延びるものとされている。特に、側面は、接合領域および終端領域、好ましくはエッジおよびさらなるエッジを相互に接続する。側面の斜めおよび/または弓状のコースのために、エッジ領域における材料の弱化は、比較的簡単な方法で達成することができる。斜めのコースでは、側面は、好ましくは、接合領域に対して45°~85°、より好ましくは60°~85°、より好ましくは75°~85°だけ傾斜している。これは、主延在面に平行な方向における材料の弱化を比較的短い寸法にすることができ、その結果、金属被覆層の可能な最大の終端領域を電子コンポーネントの接続に利用できるようにすることができるという利点を有する。階段状のコースも考えられる。特に、異なるステップの高さを有する階段状のコースが考えられる。
【0031】
本発明のさらなる実施形態では、充填材料は、好ましくは300℃を超える短期耐熱性を有する有機グラウトを含むとされている。短時間、充填材料に作用する300℃を超える温度に充填材料が耐えられるようにすることにより、有利に、チップはんだ付けや銀焼結など、後の熱プロセスで充填材料が弱くならないようにすることが可能である。
【0032】
好ましくは、充填材料は、特にその最も厚い点において、少なくとも20μm、より好ましくは少なくとも30μm、最も好ましくは少なくとも40μmの充填材料厚さを有する。充填材料は、エッジとは反対を向いている側に外面を形成し、充填材料の厚さは、外面のコースに垂直に(すなわち、外面の接線方向の直線に垂直に)延びる測定方向に沿って外面から開始して決定される。そのような小さい充填材料の厚さは、エッジを効果的に被覆するのにすでに十分であることが有利であることが分かっている。これにより、エッジが充填材料で覆われている場合に、終端領域が汚れるリスクが軽減される。
【0033】
好ましくは、主延在面において隣接する金属被覆層とさらなる金属被覆層との間の絶縁トレンチ領域が充填材料を有するか、または絶縁トレンチ領域の絶縁層が、特に、充填材料の厚さが絶縁トレンチ領域内において変化する場合に、充填材料によって完全に覆われるか、またはぬらされているものとされている。このような絶縁トレンチのぬれは、後処理ステップなしでエッジが覆われた後に発生する。したがって、後処理は、そのような金属セラミック基板を製造するために必要とされない。後処理ステップによって、特にレーザー処理によって、少なくともいくつかの領域で絶縁トレンチ領域から充填材料を取り除くことができることも考えられる。
【0034】
本発明のさらなる実施形態において、充填材料は、特にその最も薄い点で、好ましくは金属被覆層と、隣接するさらなる金属被覆層との間において、30μm未満、好ましくは20μm未満、最も好ましくは10μm未満の充填材料厚さを有するとされている。好ましくは、充填材料厚さは、主延在面に平行な方向に沿って変化するようにされている。したがって、充填材料厚さを、エッジの領域で予想されるせん断応力に対して有利に調整することができる。同時に、特に主延在面に平行な方向において互いに隣接する2つの金属被覆層、すなわち金属被覆層とさらなる金属被覆層との間の余分な充填が回避される。
【0035】
好ましくは、エッジ上の充填材料厚さは、極大であり、かつ/または主延在面に平行でかつエッチングトレンチの方向のエッジのコースに垂直な方向において減少する。これは、特に影響を受けやすい領域、すなわちエッジの上の充填材料を用いて体積を増加させるという利点を有する。これは、充填材料で覆うことによる耐熱衝撃性の改善に大きく貢献する。上という用語は、好ましくは測定方向において理解されるべきである。さらに、特にエッジの領域または絶縁層上に直接ある充填材料の領域における充填材料の厚さが、機械的応力をさらに低減するために、できるだけ平坦であると特に有利であることが証明されている。好ましくは、平坦なコースは、25°未満、より好ましくは15°未満、最も好ましくは10°未満の接合領域に対する充填材料の外面の傾斜として画定されている。好ましくは、充填材料の外面のコースは、金属被覆層の側面のコースによって決定されるものとされている。好ましくは、充填材料の厚さは、連続的および/または着実に減少する。
【0036】
本発明のさらなる実施形態によれば、充填材料高さは、金属被覆層の厚さよりも小さいものとされている。好ましくは、充填材料高さFHの金属被覆層の厚さMDに対する比は、0.5~0.9、より好ましくは0.6~0.85の値をとる。言い換えると、側面は、特に終端領域に面する領域において、充填材料が少なくとも部分的にないままである。そこでは、より少ない層厚は、もはや機械的に関連しないと想定されるので、充填材料の厚さは10μmより大きくあるべきであるとされている。充填材料高さの低減は、例えば、絶縁トレンチ領域を部分的にのみ充填することによって実現することができる。充填材料高さを低減することは、被覆中、充填材料による終端領域の汚染の可能性を回避できるという利点を有する。しかしながら、充填材料高さが、終端領域のさらなるエッジまで延びていることも考えられる。
【0037】
金属セラミック基板が、第1の厚さを有するセラミック絶縁層と、第2の厚さを有する、絶縁層に接合された金属被覆層とを含み、第2の厚さが200μmより大きく、第1の厚さが300μmより小さく、第1の厚さおよび第2の厚さは、
・セラミック基板の熱膨張係数に対する、
・金属被覆層の熱膨張係数と金属セラミック基板の熱膨張係数との間の差の量
の比が、0.25未満、好ましくは0.2未満、最も好ましくは0.15未満、またはさらには0.1未満の値を取るように寸法設定されている。
【0038】
従来技術と比較して、第1の厚さおよび第2の厚さの前述の設計または寸法設定により、特に、比較的薄い絶縁層、すなわち250μm未満、好ましくは200μm未満、最も好ましくは150μm未満の第1の厚さを有する絶縁層により、熱抵抗が低減されたそのような金属セラミック基板についても、改善された耐熱衝撃性を実現することが有利である。好ましくは、金属セラミック基板の熱膨張係数(すなわち、すべての層、特に絶縁層および金属被覆層を考慮に入れた総熱膨張係数)および金属被覆層の熱膨張係数は、第1および/または第2の厚さの寸法を決めるために使用される。驚くべきことに、絶縁層の第1の厚さが比較的小さいにもかかわらず、第2の厚さまたは第1の厚さが要件に従って寸法設定されている場合、耐熱衝撃性を改善できることが分かった。特に、金属被覆層の熱膨張係数と金属セラミック基板の熱膨張係数との間の差が小さいほど、熱衝撃下での金属セラミック基板の故障が少なくなることが示されている。
【0039】
比較的薄い絶縁層の熱抵抗の減少とは別に、さらなる利点は、層の厚さが減少するにつれて構造的欠陥の数およびサイズが減少することである。したがって、セラミック絶縁層の故障の確率が低下する。第1の厚さおよび第2の厚さは、主延在面に垂直な方向に沿って測定され、主延在面は絶縁層に平行である。金属被覆層は、接合領域を介して絶縁層に直接取り付けられている。
【0040】
耐熱衝撃性は、好ましくは、金属被覆層との境界の領域における絶縁層のテアリングに対するものであると理解される。このテアリングは、サイクル数が増えるにつれて層間剥離を引き起こす。温度変化の下で観察できる金属セラミック基板の耐用年数は、US顕微鏡でクラックを検出できるようになった時点で終了し、熱源の下または熱源の周囲の銅の厚さの半分の領域での放熱を妨げ、または基板の絶縁強度を制限する。金属セラミック基板が厳しい要件に従って寸法決めされている場合、温度変化の下で観察される寿命を延長できることが分かっている。
【0041】
好ましくは、絶縁層は、セラミックの材料として、Al、Si、AlN、HPSXセラミック(すなわち、ZrOのxパーセント部分を含むAlマトリックスを有するセラミック、例えば、9%ZrOを有するAl=HPS9、または25%ZrOを有するAl=HPS25)、SiC、BeO、MgO、または高密度MgO(理論密度の>90%)、TSZ(正方晶安定化酸化ジルコニウム)を含む。絶縁層は、さまざまな望ましい特性を組み合わせるために、材料組成が各々異なる複数のセラミック層が上下に配置され、互いに接合されて絶縁層を形成する複合セラミックまたはハイブリッドセラミックとして設計されることも考えられる。金属被覆層の材料として考えられる材料は、銅、アルミニウム、モリブデン、および/またはそれらの合金、ならびにCuW、CuMo、CuAl、AlCu、および/またはCuCuなどのラミネート、特に第1の銅層および第2の銅層を備えた銅サンドイッチ構造であり、第1の銅層の粒径は、第2の銅層とは異なっている。
【0042】
さらに、絶縁層は、例えば、ジルコニウム強化アルミナで形成することができ、これは、絶縁層の安定性を高めるという利点を有し、一方、例えば、Alの絶縁層は、比較的低いコストで製造することができる。
【0043】
例えば、銅で形成された金属被覆層の第2の厚さが本質的に0.6mmである場合、HPS9セラミックで形成された絶縁層は、0.26mmまたは0.32mmの第1の厚さを有する。
【0044】
本発明のさらなる実施形態によれば、第1の厚さは、30μmよりも大きく、好ましくは60μmよりも大きく、最も好ましくは90μmよりも大きいとされている。そのような第1の厚さは、金属セラミック基板の対応する絶縁強度および安定性を確保できることが見出された。加えて、90μmを超える第1の厚さを有する絶縁層の製造コストは、より薄い絶縁層の製造コストよりも低い。
【0045】
好ましくは、金属被覆層とは反対の側において、第3の厚さを有するさらなる金属被覆層が、絶縁層に接合され、第1の厚さ、第2の厚さ、および/または第3の厚さは、
・セラミック基板の熱膨張係数に対する、
・さらなる金属被覆層および/または金属被覆層の熱膨張係数と金属セラミック基板の熱膨張係数との間の差の量
の比が、
・0.25未満、より好ましくは0.2未満、最も好ましくは0.15未満、またはさらには0.1未満の値を取るように寸法設定されている。
【0046】
金属セラミック基板は、好ましくは、熱機械的に対称である。特に、金属被覆層、絶縁層、およびさらなる金属被覆層は、主延在面に垂直な積層方向に沿って上下に配置されている。第3の厚さは、主延在面に垂直な方向で寸法設定されている。好ましくは、さらなる金属被覆層または金属被覆層の熱膨張係数は、金属セラミック基板の熱膨張係数により近いものが選択される。定式化された条件が、3つを超える層で構成された金属セラミック基板に転写可能であることは、当業者には明らかである。好ましくは、3つを超える層を有するそのような多層金属セラミック基板は、絶縁層、金属被覆層、および別の金属被覆層を有する金属セラミック基板、すなわち3層金属セラミック基板に転写することができる。好ましくは、第2の金属被覆層の材料は、金属セラミック基板全体の剛性を増加させるように選択される。これにより、金属セラミック基板全体の機械的耐荷重能力を具体的に調整することが可能となる。第1の金属被覆層の材料は、第2の金属被覆層の金属とは異なると考えられる。例えば、さらなる金属被覆層の材料はモリブデンである。さらなる金属被覆層の材料として、銅、アルミニウム、タングステン、および/またはそれらの合金、ならびにCuW、CuMo、CuAl、AlCu、および/またはCuCuなどのラミネート、特に、第1の銅層および第2の銅層を備えた銅サンドイッチ構造も考えられ、これにより、第1の銅層の粒径が第2の銅層とは異なっている。さらに、CuSiC、CuC、AlSiC、またはMgSiCなどのMMCに基づく裏側金属被覆も考えられ、そのCTEは、特に基板の組み合わされたCTEに適合させることができる。さらなる金属被覆層は、金属被覆層の1.1~10倍、好ましくは1.5~8倍、最も好ましくは2~6倍の厚さであることが特に好ましい。
【0047】
好ましくは、安定化のために、さらなる金属被覆層には、中断がなく、特に絶縁トレンチがない。これにより、絶縁トレンチの領域における金属セラミック基板が、薄い絶縁層のみによって形成され、それに応じてこの領域で破損しやすくなることが防止される。言い換えると、さらなる金属被覆層は、比較的薄い絶縁層の安定化層として機能する。積層方向に沿って、金属被覆層の絶縁トレンチおよびさらなる金属被覆層の絶縁トレンチが上下に配置されないように、金属被覆およびさらなる金属被覆が設計されることも考えられる。さらなる金属被覆層および金属被覆層の非対称設計にもかかわらず、比較的長い耐用年数を実現できることも判明している。好ましくは、さらなる金属被覆層は、主延在面に平行な方向に、金属被覆層よりもさらに延びている。これは、さらなる金属被覆層が、主延在面に平行な方向に金属被覆層から突出していることを意味する。金属セラミック基板の十分な安定性を確保するために、さらなる金属被覆層が、金属被覆層よりも厚いことも考えられる。言い換えれば、より厚いさらなる金属被覆層は、絶縁層の減少した厚さを少なくとも部分的に補償する。
【0048】
本発明のさらなる実施形態では、第2の厚さおよび/または第3の厚さは、350μmより大きく、最も好ましくは500μmより大きいものとされている。金属被覆層の第2の厚さは、第1の厚さよりも大きく、電流伝導のオーミック損失による導体トラックの加熱を制限し、熱源の下に熱を拡散させ、金属セラミック基板の曲げを最小限に抑えるのに役立つ。これは、特に、異なる金属被覆層の大部分について500μmを超える厚さに対し保証することができる。
【0049】
好ましくは、熱膨張係数は、弾性率、ポアソン数および/または材料固有の熱膨張係数に依存する。特に、次の関係
【0050】
【数1】
【0051】
が適用され、ここで、Dは、それぞれのCTEを有するn層のうちのi番目の厚さを示す。加えて、それぞれの層の形状およびその弾性率Eは、ポアソン数ηを介して考慮される。この相関関係により、それぞれの熱膨張係数は、材料固有のサイズおよび寸法データに基づいて決定でき、これにより、それぞれの熱膨張係数間の比較が可能となる。
【0052】
第2の厚さおよび第3の厚さは、本質的に同じであることが推奨される。好ましくは、金属被覆層および他の金属被覆層は、同じ材料でできている。金属被覆層および絶縁層の所望のサイズ寸法を実現するために、第3の厚さおよび/または材料の選択が、さらなる金属被覆層に適合されることも考えられる。
【0053】
本発明のさらなる態様は、主延在面に沿って延在し、かつセラミックを含む絶縁層と、接合領域の上で絶縁層に接合された金属被覆層とを備えるさらなる金属セラミック基板であり、接合領域は、主延在面に平行な面において少なくとも1つのエッジにより画定されており、エッジの上の充填材料厚さが、極大であり、かつ/または主延在面に平行な方向において減少することを特徴とする。特に充填材料の厚さに関して、前述の金属セラミック基板について説明されたすべての特徴、およびそれらの利点は、同様に、このさらなる金属セラミック基板に移すことができ、その逆も可能である。
【0054】
本発明の別の態様は、特に、本発明による金属セラミック基板による、金属セラミック基板の製造方法であって、
・主延在面に沿って延在し、かつセラミックを含む絶縁層を提供すること、
・金属被覆層を接合し、主延在面に平行な面においてエッジで画定された接合領域を形成すること、
・エッジに隣接するエッジ領域の金属被覆層に材料の弱化を形成すること
を含み、エッジは、充填材料で覆われている。本発明による金属セラミック基板について説明されたすべての特徴およびそれらの利点は、同様に、本発明による方法に移すことができ、その逆も可能である。
【0055】
エッジ被覆を、エッジ領域における材料の弱化と組み合わせる場合、AMBプロセスおよびDCBによる接合が同じ耐熱衝撃性をもたらす、すなわち、その組み合わせによって、使用するプロセスに関係なく、同じ耐熱衝撃性が得られることが有利であることが示されている。これらの手段を組み合わせずに行うAMB接合は、3倍の耐熱衝撃性を与えるので、これは驚くべきことである。したがって、本発明によるエッジ被覆および材料の弱化の組み合わせは、耐熱衝撃性の低下を恐れることなく、利用可能な方法間のより柔軟な選択を可能にするため、特に有利であることがわかる。
【0056】
「DCBプロセス」(直接銅接合技術)または「DABプロセス」(直接アルミニウム接合技術)は、例えば、表面に層またはコーティング(可溶層)を有する金属または銅のシートまたは金属または銅のホイルを使用して、金属層またはシート(例えば、銅シートまたはホイル、またはアルミニウムのシートまたはホイル)を互いに接合し、および/またはセラミックまたはセラミック層に接合するために機能するプロセスであると当業者には理解される。このプロセスでは、例えば米国特許第3744120号明細書または独国特許発明第2319854号明細書に記載されているように、この層またはコーティング(可溶層)は、金属(例えば銅)の溶融温度より低い溶融温度を有する共晶を形成し、その結果、セラミック上にホイルを配置し、すべての層を加熱することによって、本質的に可溶層または酸化物層の領域でのみ金属または銅を溶融させることにより、それらを互いに接合することができる。
【0057】
特に、DCBプロセスは、例えば以下のプロセスステップ、
・均一な酸化銅層が得られるように銅ホイルを酸化すること、
・セラミック層の上に銅ホイルを配置すること、
・複合材料を約1025~1083℃のプロセス温度、例えば、約1071℃まで加熱すること、
・室温まで冷却すること
を有する。
【0058】
例えば金属層または金属ホイル、特にセラミック材料を有する銅層または銅ホイルを接合するための活性はんだプロセスは、特に金属セラミック基板の製造にも使用されるプロセスであり、金属ホイル、例えば銅ホイルと、セラミック基板、例えば、窒化アルミニウムセラミックの間に、銅、銀、および/または金などの主成分に加えて、活性金属を含むろう付けはんだを使用して、約650~1000℃の温度で接合が形成される。この活性金属は、例えば、Hf、Ti、Zr、Nb、Ce族のうちの少なくとも1つの元素であり、化学反応によってはんだとセラミックとの間に接続を形成し、はんだと金属との間の接続は、金属ろう付け接続である。代替的に、接合のために厚膜プロセスを想定することもできる。
【0059】
好ましくは、金属被覆層は、DCBプロセスまたはDABプロセスによって絶縁層に接合されるものとされている。驚くべきことに、金属被覆層がDCBプロセスによって絶縁層に接合されている場合、耐熱衝撃性の特に大きな改善を達成できることが見出された。
【0060】
本発明の意味において、本質的にという用語は、各場合の正確な値からの+/-15%、好ましくは+/-10%、最も好ましくは+/-5%の偏差、および/または機能にとって重要ではない変化の形での偏差を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
さらなる利点および特徴は、添付の図面を参照して、本発明の主題の好ましい実施形態の以下の説明から得られる。
図1】本発明の第1の好ましい実施形態による金属セラミック基板を示す図である。
図2】本発明の第2の好ましい実施形態による金属セラミック基板を示す図である。
図3】DCBプロセスで製造された金属セラミック基板についての試験結果を示す図である。
図4】AMBプロセスで製造された金属セラミック基板についての試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、本発明の第1の好ましい実施形態による金属セラミック基板1を示す。そのような金属セラミック基板1は、好ましくは、金属セラミック基板1に取り付けることができる電子または電気コンポーネントのキャリアとして機能する。このような金属セラミック基板1の必須の構成要素は、主延在面に沿って延びる絶縁層11、および絶縁層11に接合された金属被覆層12である。この絶縁層11は、セラミックを含む少なくとも1つの材料から形成されている。絶縁層11が、複合セラミック、すなわち、いくつかのセラミック層から構成される絶縁層1を含むことも考えられる。金属被覆層12は、接合領域Aを介して絶縁層11に接合されている。例えば、絶縁層は、100~1000μmの絶縁層厚さIDまたは第1の厚さを有し、金属被覆層は、基本的に0.6mmの金属被覆層厚さMDまたは第2の厚さを有する。
【0063】
さらに、金属被覆層12は、接合領域Aの反対側に終端領域AFを有し、これを介して電気または電子コンポーネントを金属被覆層12に接続することができる。接合領域A、および主延在面HSEに垂直な方向の対向する終端領域AFは、側面SFを介して互いに接続されている。好ましくは、終端領域AFは、主延在面HSEに平行な面内のさらなるエッジK’によって限られている。
【0064】
特に、接合領域Aは、主延在面に平行なエッジKによって限られている。これは、エッジKが、金属セラミック基板1の可視面側において金属被覆層12と絶縁層11との間に線形遷移を形成することを意味する。金属被覆層のエッジ領域RBは、主延在面HSEに平行な方向でエッジKに隣接している。同じ方向に寸法決めされた金属被覆層11の全長M1に対して主延在面HSEに平行に延びるエッジ領域RBの長さLは、好ましくは0.25未満、より好ましくは0.15未満、最も好ましくは0.1未満である。
【0065】
図1に示す実施形態では、終端領域AFのドーム形の凹部13は、エッジ領域RBの金属被覆層12に組み込まれている。これらのドーム形の凹部13は、材料の弱化を表す。材料の弱化に加えて、少なくとも一部の領域では、エッジKは、充填材料2で覆われるものとされている。エッジ領域RBにおける材料の弱化およびエッジKを充填材料2で覆うことの組み合わせは、耐熱衝撃性を相乗的に改善する、すなわち、両方の手段の組み合わせは、耐熱衝撃性を改善する2つの手段からそれらの合計で期待される改善よりも、耐熱衝撃性を改善することが判明した。
【0066】
ここで、主延在面HSEに対して垂直に測定された充填材料の高さFHは、金属被覆層の厚さMDに対応せず、より小さいと考えられる。好ましくは、充填材料の高さFHと金属被覆層の厚さMDとの間の比は、0.5~0.9、より好ましくは0.6~0.85の値をとる。言い換えると、側面SFは、10μmを超える層の厚さを有する充填材料が少なくとも部分的にないままである。さらに、エッジ領域RBの材料を弱化させるために、側面SFは、主延在面HSEに垂直な方向に対して斜めに延びるようにしている。
【0067】
図2は、本発明の第2の好ましい実施形態による金属セラミック基板を示す。図2の実施形態は、側面SFが湾曲しているという点で図1の実施形態とは相違している。このような湾曲した側面は、例えば、制御されたエッチングによって生成され、エッジ領域RBの材料の弱体化を意味する。さらに、図2は、金属被覆層12と隣接する金属被覆層12”との間の主延在面HSEに平行な方向に配置された絶縁トレンチ領域IBを示す。さらに、一例として、さらなる金属被覆層12’が、金属被覆層12または隣接する金属被覆層12”とは反対を向いている絶縁層11の面に配置されている。特に、絶縁トレンチ領域IBは、主延在面HSEに平行な方向から見て、金属被覆層12のエッジKと、隣接する金属被覆層12”のエッジKとの間に位置する。さらに、充填材料2は、エッジKとは反対を向いている外面ASで曲げられている。好ましくは、充填材料厚さFDは、主延在面HSEに平行な方向に沿って変化するようにされている。充填材料厚さFDは、仮想直線gに垂直な方向で測定され、仮想直線gは、エッジとは反対を向いている充填材料2の外面ASに対して接線方向に延びている。
【0068】
好ましくは、充填材料厚さFDは、エッジKより上の領域(上は測定方向に平行な方向を指す)で極大であり、主延在面HSEに平行な方向のエッジKからの距離の増加と共に減少する。好ましくは、絶縁トレンチ領域IBは、少なくとも部分的に充填材料がない、すなわち、金属被覆層12と隣接する金属被覆層12”との間に、充填材料2が設けられていない領域がある。しかしながら、金属被覆層12と隣接する金属被覆層12”との間の充填材料の厚さが、10μm未満、好ましくは5μm未満、最も好ましくは1μm未満の値を有することも考えられる。
【0069】
例I:
耐熱衝撃性に関する以下の試験は、金属セラミック基板1で実施され、金属セラミック基板1は、
・0.32mmの絶縁層厚さIDを有するHPS9セラミック層からなる絶縁層11と、
・各々0.6mmの銅層からなる金属被覆層12およびさらなる金属被覆層12’と
を有する。
【0070】
この目的のために、耐熱衝撃性の調査が、-55℃~150℃で行われた。
材料を弱化させるために、ドーム型の凹部13が、金属被覆層12のエッジ領域RBに形成され、エポキシ樹脂が、充填材料2として使用された。耐熱衝撃性に関する調査は、
・材料の弱化のみがあり、充填材料2がない、タイプIの金属セラミック基板、
・エッジKが充填材料2で覆われており、エッジ領域で材料の弱化がない、タイプIIの金属セラミック基板、および
・エッジKが充填材料2で覆われており、ドーム型の凹部13の形で材料の弱化がある、タイプIIIの金属セラミック基板
に対して実施された。タイプIの金属セラミック基板、タイプIIの金属セラミック基板、およびタイプIIIの金属セラミック基板は、各々、DCBプロセスで1回、およびAMBプロセスで1回ずつ製造された。
【0071】
タイプIの金属セラミック基板は、AMBプロセスで製造された場合には耐熱衝撃性が100%改善し、DCBプロセスで製造された場合には改善されなかった。
タイプIIの金属セラミック基板の場合、DCBプロセスで製造された場合には700%の耐熱衝撃性の改善が見られ、AMBプロセスで製造された場合には改善されなかった。
【0072】
タイプIIIの金属セラミック基板は、DCBプロセスで製造された場合には耐熱衝撃性が1500%改善し、AMBプロセスで製造された場合には500%改善された。
したがって、試験から次の結果を得ることができる。
【0073】
・材料を弱化させること、およびエッジKを充填材料で覆うことの組み合わせは、耐熱衝撃性に相乗効果をもたらす。
・この相乗効果は、金属セラミック基板の製造プロセスに依存する。
【0074】
ここで示された試験結果は、図3および図4にも示されており、前述の金属セラミック基板タイプについて、絶縁層の剥離またはテアリングが検出されるまでの平均サイクル数が棒グラフで示されている。1つのサイクル内において、それぞれの金属セラミック基板は、-55°~150°の温度変動にさらされ、したがって、絶縁層の剥離またはテアリングが検出されるまでのサイクル数が記録される。したがって、平均サイクル数は、金属セラミック基板の耐熱衝撃性の指標である。試験では、エッジが完全に、すなわち、全周にわたって覆われていない場合、耐熱衝撃性が低下することも示された。タイプ0は、エッジを充填材料で覆うこと、および/またはエッジ領域の材料を弱化させることなく、DCBまたはAMBプロセスを使用して接合されただけの金属セラミック基板として定義されている。図3は、DCBプロセスで製造された金属セラミック基板について、図4は、AMBプロセスで製造された金属セラミック基板についての試験結果を示している。
【符号の説明】
【0075】
1 金属セラミック基板
2 充填材料
11 絶縁層
12 金属被覆層
12’ さらなる金属被覆層
12” 隣接する金属被覆層
13 凹部
g 直線
HSE 主延在面
K エッジ
K’ さらなるエッジ
HF 充填材料高さ
MD 金属被覆層の厚さ
RB エッジ領域
AS 外面
IB 絶縁トレンチ領域
FD 充填材料厚さ
SF 側面
A 接合領域
AF 終端領域
L 終端領域の長さ
M1 金属被覆層の全長
図1
図2
図3
図4