(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/08 20060101AFI20220920BHJP
A23L 3/26 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
A61L2/08 108
A23L3/26
(21)【出願番号】P 2020543994
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2019054243
(87)【国際公開番号】W WO2019162343
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-10-19
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501003320
【氏名又は名称】ビューラー・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Buehler AG
【住所又は居所原語表記】Gupfenstrasse 5, CH-9240 Uzwil, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】アラスデアー キュリー
【審査官】河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0216106(US,A1)
【文献】特開2007-010450(JP,A)
【文献】特表2011-516836(JP,A)
【文献】特開昭50-046803(JP,A)
【文献】特開2001-321139(JP,A)
【文献】特開2002-085029(JP,A)
【文献】特開2003-156599(JP,A)
【文献】特開2004-337192(JP,A)
【文献】特開平11-133193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00-2/28
A23L 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置(10)であって、
-電子線を発生させる少なくとも2つの電子源(20)、
-自由落下中の物品を、前記電子線により低温殺菌可能かつ/または滅菌可能な処理ゾーン(19)、
-物品を、前記電子線により低温殺菌可能かつ/または滅菌可能な、前記処理ゾーン(19)の領域内に配置された物品通路(21)であって、前記自由落下中の物品に対して互いに反対の側に前記少なくとも2つの電子源(20)が配置されている、物品通路(21)、
-前記電子源(20)と前記物品通路(21)との間に配置されており、前記電子線に対して少なくとも部分的に透過性でありかつ金属から成る、面状の防護部材(23)
を有する装置(10)において、
当該装置(10)は、前記防護部材(23)を保持しかつ冷却流体が通流可能な中空室(121)を備えた保持フレーム(120)を有しており、
前記防護部材(23)は、防護フィルム(23)として形成されており、
前記装置(10)は、前記防護部材(23)をさらに冷却するために該防護部材(23)に向けられた、少なくとも1つのファン(123)を有して
おり、
当該装置(10)は、カセット収容部(37)と、2つの前記保持フレーム(120)を備えたカセット(24)とを有しており、前記カセット(24)は、前記処理ゾーン(19)の領域において、前記カセット収容部(37)内に挿入されるように構成されている、
ことを特徴とする、装置(10)。
【請求項2】
前記中空室(121)は、閉じられた管として形成されている、請求項1記載の装置(10)。
【請求項3】
当該装置(10)は、流体が通流可能な少なくとも1つの副通路(22)を有しており、該副通路(22)は、前記電子源(20)と前記物品通路(21)との間に少なくとも部分的に延在しておりかつ該物品通路(21)から流体密に分離されている、請求項1または2記載の装置(10)。
【請求項4】
前記防護部材(23)は、前記物品通路(21)を前記副通路(22)から隔離している、請求項3記載の装置(10)。
【請求項5】
前記副通路(22)は、前記電子源(20)と前記防護部材(23)との間に少なくとも部分的に配置されている、請求項3または4記載の装置(10)。
【請求項6】
前記防護部材(23)、すなわち、前記防護フィルム(23)は、少なくとも1つの厚肉部(122)を有しており、該厚肉部(122)は、前記防護部材(23)の主平面に沿って、物品流れ方向(R)に対して実質的に垂直に延在している、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項7】
当該装置(10)は、互いに接続された2つの冷却回路(131,132)を備えた1つの冷却装置(130)を有しており、冷却流体は、第1の冷却回路(131)を介して前記保持フレーム(120)に供給可能でありかつ第2の冷却回路(132)を介して前記電子源(20)に供給可能である、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項8】
前
記保持フレーム(120)は、前記カセット(24)に統合された構成部材である、請求項
1から7までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項9】
前記カセット(24)には、前記物品通路(21)の全体が含まれている、請求項
1から8までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項10】
前記保持フレーム(120)は、前記カセット(24)に取外し可能に取り付けられているまたは取付け可能である、請求項
1から9までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項11】
前記カセット(24)は圧力測定装置を有している、請求項
1から10までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項12】
前記電子源(20)は、前記カセット(24)から離反する方向に可動であるように、前記カセット収容部(37)に対して相対的に可動である、請求項
1から11までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項13】
前記カセット(24)は、中空室(121)を有しており、該中空室(121)は、連続する管として形成されておりかつ2つの前記防護部材(23)および前記カセット(24)の冷却に用いられる、請求項
1から12までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項14】
請求項1から
13までのいずれか1項記載の装置(10)を用いて粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する方法であって、以下のステップ、すなわち:
a)前記電子源(20)により電子線を発生させるステップ、
b)前記処理ゾーン(19)内で前記電子線により、物品を低温殺菌および/または滅菌するステップ、
c)前記保持フレーム(120)の前記中空室(121)に冷却流体を通して案内し、前記防護部材(23)を冷却するステップ
を含む、方法。
【請求項15】
前記冷却流体は、前記中空室(121)内への流入時に、15℃~43℃の範囲内の温度を有している、請求項
14記載の方法。
【請求項16】
前記冷却流体は、3l/min~5l/minの範囲内の体積流量でもって前記中空室(121)内を通されて案内される、請求項
14または15記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線を用いて粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置および方法に関する。
【0002】
ここおよび以下では、とりわけ粒体および/または薄片から成る物品を粒子状と呼び、この場合、粒子は例えば球状、板状の形状または角張った形状を有していてよい。粉砕された粒子であってもよい。低温殺菌および/または滅菌により、例えば微生物を少なくとも大部分は死滅させるか、または無害化することができる。特に、有害な微生物の削減が少なくとも1オーダ、好適には少なくとも5オーダ、特に好適には少なくとも7オーダだけ達成され得る。
【0003】
請求項1の上位概念に記載の装置は、例えば欧州特許第1080623号明細書から公知である。この装置は、種物を個別化して透明カーテンを形成することができる振動コンベヤを有している。次いでこのカーテンは、電子加速器により形成された、例えば種物を滅菌することができる電子場を通される。種物を電子加速器の出射窓から遮断するためには、格子が使用される。
【0004】
米国特許第5801387号明細書からは、請求項1の上位概念に記載の別の装置が公知である。この発明による構成では、粒子状の物品が振動コンベヤにより水平空気流中に供給され、次いで電子線に晒される。処理ゾーンは、窓を備えた電子線源に対向して隔離されている。
【0005】
欧州特許第0705531号明細書から公知の別の装置は、種物を調量装置(詳述せず)により処理室内へ導入し、種物は処理室内で垂直に電子線を通り落下する。線出射窓の冷却には、流入部および流出部を備えたノズルシステムを介して線出射窓の傍らを通過案内される冷却ガスが用いられる。
【0006】
粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する別の装置および方法が、本出願人のPCT国際特許出願である欧州特許出願第2017070842号明細書に開示されている。この装置は、電子線を発生させる少なくとも1つの電子源および物品を電子線により低温殺菌可能かつ/または滅菌可能な処理ゾーンを有している。
【0007】
PCT国際特許出願である欧州特許出願第2017070842号明細書に開示された装置は、処理ゾーンの領域に物品通路を有しており、物品通路内で物品は電子線により低温殺菌可能かつ/または滅菌可能である。この装置は、流体が通流可能な少なくとも1つの副通路を有しており、副通路は、電子源と物品通路との間に少なくとも部分的に延在しておりかつ物品通路から流体密に分離されている。副通路を通流する流体は、電子源および特に電子源の出射窓を冷却するために使用され得る。
【0008】
電子源の出射窓の傍らに冷却流体が通過案内されると、とりわけ窓を包囲する空気ひいては出射窓も間接的に冷却される。つまり冷却は間接的に行われ、出射窓の周囲の流れ特性に左右される。
【0009】
PCT国際特許出願である欧州特許出願第2017070842号明細書にはさらに、電子源と物品通路との間に配置されており、電子線に対し少なくとも部分的に透過性の防護シートが記載されている。好適には、この防護シートは物品通路を副通路から隔離する。同様に好適には、副通路は、電子源と防護シートとの間に少なくとも部分的に配置されている。
【0010】
つまり、副通路内の流体は防護シートの冷却に用いられるが、装置の運転に際して電子線に晒され、これにより加熱される場合がある。
【0011】
さらに、粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置に挿入するカセットが開示されている。
【0012】
本発明の課題は、従来技術から周知の欠点を克服することにある。特に、出射窓の確実で直接的かつ/または可能な限り均一な冷却を可能にする装置および方法を提供しようとするものである。
【0013】
この課題は、粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置により解決される。この場合、「低温殺菌」もしくは「低温殺菌する」とは特に、5log、好適には6log、特に好適には7log以上の細菌数の減少を意味する。「滅菌」もしくは「滅菌する」とは特に、完全な除菌を意味する。
【0014】
当該装置は、電子線を発生させる少なくとも1つの電子源を有している。
【0015】
少なくとも1つの電子源は、自体公知であってよい。当該装置は、1つまたは複数の電子源を有していてよい。複数の電子源が存在する場合、これらの電子源は互いに対向して位置しているか、または物品の流れ方向に対して相前後して配置されていてよい。
【0016】
当該装置はさらに、電子線により物品を低温殺菌可能かつ/または滅菌可能な処理ゾーンを有している。
【0017】
物品は、特に自由落下中に低温殺菌可能かつ/または滅菌可能である。物品の個々の粒子の飛行軌道が粒子の速度、粒子に作用する重力および場合により物品を包囲しているプロセスガスのみにより決定される場合に、物品は「自由落下中」であると言う。特に、物品の粒子は、所定の面上を滑って処理ゾーンを通るわけではない。プロセスガスは、例えば空気であってよい。ただしプロセスガスとして、オゾン形成を防ぐ、例えば窒素等のガスを使用することも考えられる。
【0018】
さらに、当該装置が複数の処理ゾーンを有していることも、本発明の枠内で考えられる。このようにして、より効率的な低温殺菌および/または滅菌が達成され得る。択一的に、物品は同一の処理ゾーンを複数回通り、案内されてもよい。
【0019】
当該装置は、処理ゾーンの領域内に配置された物品通路を有しており、物品通路内では、電子線により物品を低温殺菌可能かつ/または滅菌可能である。
【0020】
電子線により、物品自体を処理するだけではなく、場合により物品を包囲し得るプロセスガスおよび/または物品と共に流動する、例えば埃等の別の粒子も処理することができる。
【0021】
当該装置は、電子源と物品通路との間に配置された面状の防護部材を有している。防護部材は、電子線に対して少なくとも部分的に透過性になっている。防護部材は、特に金属、好適にはチタンを含んでおり、好適には金属から成っている。
【0022】
防護部材は、物品が電子源に流入することを防ぎ、電子源、特にそれ自体は薄い、相応に傷付きやすいシートにより被覆された、電子源の出射窓を防護する。
【0023】
本発明に基づき、当該装置は、防護部材を保持しかつ冷却流体が通流可能な中空室を備えた保持フレームを有している。
【0024】
保持部は、防護部材と保持フレームとの間に、良好な熱伝導率を可能にする結合部が生じるように形成されている。防護部材は保持フレームと、特に直接に接触している。
【0025】
防護部材は、保持フレーム内に締め込まれていてよいか、保持フレーム内に緊締されていてよいか、保持フレームに接着または溶接されていてよい。
【0026】
好適には、保持フレームは当該装置に取外し可能に取り付けられており、これにより、防護部材を交換するために保持フレームを取り出すことができると共に、場合により、同様に交換することもできるようになっている。
【0027】
特に防護部材が防護シートである場合には、圧力測定により、防護部材が損傷されていないかどうかを確認することができる。
【0028】
保持フレームは、防護部材を少なくとも部分的に包囲している。好適には、保持フレームは防護部材の周の大部分を包囲しており、これにより、可能な限り均一に分散された熱交換が周にわたって可能になる。
【0029】
中空室は、保持フレームに接してまたは保持フレームを通して冷却流体、つまり冷却ガスまたは冷却液を案内するために用いられる。中空室は、冷却流体と保持フレームとの間に良好な熱接触を生ぜしめることができるように配置されている。
【0030】
保持フレームは、電子線内に位置しないように配置されていてよい。つまり、冷却流体は電子線の傍らを通過案内されるようになっており、これにより電子線に直接に晒されることはなく、直接に加熱されることもない。
【0031】
好適には、保持フレームは、電子線に対して全くまたは極僅かにしか透過性でない材料から成っている。
【0032】
冷却流体としては、プロセスガスを用いることができる。
【0033】
中空室は、好適には処理ゾーンから流体密に分離されている。この場合、流体密に分離とは、流体が中空室から物品通路内へ流入する恐れも、物品および場合により物品を包囲し得るプロセスガスが物品通路から中空室内へ流入する恐れもない、ということを意味する。この場合、冷却流体は自由に選択可能であり、物品に合わせる必要はない。
【0034】
中空室は、好適には少なくとも1つの流入部および少なくとも1つの流出部を除き、例えば管として、つまり保持フレームにより完全に包囲されていてよい実質的に筒状の中空体として、閉じられて形成されている。
【0035】
中空室は、保持フレームに接触している管内に形成されていてもよい。
【0036】
保持フレームを通流する冷却流体は、好適には防護部材と接触することはない。つまり、防護部材が振動させられる危険は生じないため、防護部材は、液体と、高速搬送される冷却流体とにより冷却され得る。高速搬送される冷却流体は、熱を素早く導出することができる。
【0037】
好適には、中空室は、冷却流体が通流する冷却回路の一部であり、冷却回路内で、冷却流体は特に再冷却される。
【0038】
当該装置は、冷却流体を防護部材および/または電子源に向かって圧送する少なくとも1つのポンプを有していてよい。
【0039】
中空室は、周辺環境に対して部分的に開放されていてよい。中空室は、保持フレーム内に溝として形成されていてよい。
【0040】
中空室は、例えば冷却流体を、各保持フレームおよび/または保持フレームの傍らを通過させて案内する、複数の案内薄板から形成されていてもよい。
【0041】
冷却流体により、保持フレームは温度調整される。これにより、防護部材が冷却される。冷却は、流れ特性とは無関係に行われる。保持フレームと防護部材との間に良好な熱接触が保証されていると、冷却流体は中空室内で短い距離を進んでよく、ひいては冷却が迅速かつ効率的に行われる。
【0042】
防護部材は、格子として形成されていてよく、好適には、防護部材は電子源に安全性をもたらすと共に比較的クリーニングし易い防護シートとして形成されている。
【0043】
防護シートは、好適には例えばチタン、アルミニウム、金、銀または銅等の金属から成っている。金属は、合金であってもよい。いくつかの用途では、防護シートがコーティングされていてもよい。択一的に、防護シートはプラスチックから成ることも、本発明の枠内で考えられる。
【0044】
保持フレームの冷却は、一方では防護部材の冷却を生ぜしめる。同時に、防護部材が他の方法で、例えば副通路を介して冷却される場合には、保持フレームが防護部材に熱を再供給する蓄熱体として働く、ということが防止される。
【0045】
保持フレームの冷却は、好適には200℃未満に保たれるべき保持フレームの表面冷却に役立ち、これにより、埃の自己発火のリスクを回避すると共に、埃の堆積を減少させることができる。
【0046】
良好に冷却可能な防護部材は、防護部材を包囲する空間も共に冷却することができる。防護部材の耐用年数は、冷却により延長される。
【0047】
本発明の1つの有利な改良では、当該装置は、流体が通流可能な少なくとも1つの副通路を有しており、副通路は、電子源と物品通路との間に少なくとも部分的に延在しておりかつ物品通路から流体密に分離されている。
【0048】
副通路を通流する流体は、電子源および特に電子源の出射窓を冷却するために使用され得る。
【0049】
択一的または追加的に、流体は、電子線に基づき生じるオゾンを導出するために使用され得る。前記冷却も、副通路からのオゾンの前記導出も、物品通路内の流体流に影響を及ぼすことはない。
【0050】
この場合、流体密に分離とは、流体が副通路から物品通路内へ流入する恐れも、物品および場合により物品を包囲し得るプロセスガスが物品通路から副通路内へ流入する恐れもない、ということを意味する。これにより、物品による電子源、特に電子源の出射窓の損傷または汚染が防止される。流体は、液体または例えば空気等の気体であってよい。
【0051】
中空室と副通路も、流体密に分離されていてよい。ただし、流体接続が生じていてもよく、これにより、副通路を通流する冷却流体は、中空室をも通流することになる。
【0052】
特に、防護部材は物品通路を副通路から隔離する。この場合、副通路を通流する流体は、防護部材と接触することになり、防護部材の追加的な冷却に役立つことができる。
【0053】
択一的または追加的に、副通路は、電子源と防護部材との間に少なくとも部分的に配置されていてよい。この場合、副通路を通流する流体は、一方では電子源の周囲ひいては電子源を冷却することができ、他方では防護部材の冷却に寄与することができる。
【0054】
当該装置の1つの有利な改良では、防護部材、特に防護シートは、少なくとも1つの厚肉部を有している。好適には、防護部材は複数の厚肉部を有している。
【0055】
厚肉部は、防護部材の主平面に沿って、物品流れ方向に対して実質的に垂直に延在している。
【0056】
厚肉部は、防護部材が角の尖った物品の衝突にも耐えるように、防護部材を安定させる。
【0057】
厚肉部はさらに、処理窓を規定するため、つまりより正確には、物品が電子線により低温殺菌および/または滅菌される処理ゾーンの領域を確定するために用いられてよい。
【0058】
厚肉部を備えた防護シートは、シートおよび格子の利点を統合したものである。
【0059】
当該装置は、電子源用および防護部材用の別個の冷却回路を有していてよく、冷却回路はそれぞれ、冷却流体を冷却するための冷却装置を有している。
【0060】
有利には、当該装置は、互いに接続された2つの冷却回路を備えた1つの冷却装置を有しており、この場合、冷却流体は、第1の冷却回路を介して保持フレームに供給可能でありかつ第2の冷却回路を介して電子源に供給可能である。
【0061】
特に良好な冷却は、当該装置が、防護部材をさらに冷却するために防護部材に向けられた少なくとも1つのファンを有している場合に達成され得る。
【0062】
ファンにより移動させられる冷却ガスは、ファンから防護部材へ直接に案内されるか、または例えば副通路を介して防護部材へ案内されてよい。
【0063】
特に有利には、当該装置は、カセットを収容するためのカセット収容部を有しており、この場合、カセットは少なくとも部分的に、物品通路および特に少なくとも1つの副通路を画定している。カセットには、保持フレームまたは保持フレーム用の取付け部が含まれていてよい。保持フレームは、カセットに取外し可能に取り付けられてよいかまたは取付け可能であってよい。
【0064】
好適には、2つの防護部材用の保持フレームは、カセットに統合された構成部材でありかつ/またはカセットと一体に形成されている。
【0065】
特に有利には、カセットには、物品通路全体が含まれており、カセットは特に、対向して位置する2つの防護部材用の保持フレームを有している。処理ゾーンは全体が、例えば保守または洗浄目的で取外し可能および/または交換可能である。
【0066】
カセットは、好適には中空室を有しており、中空室は、連続する管として形成されておりかつ2つの防護部材およびカセットの冷却に用いられる。
【0067】
カセット内には、防護部材がまだ損傷されていないかどうかを確認することができる圧力測定装置が配置されていてよい。
【0068】
さらに有利には、電子源は、カセットから離反する方向に可動であるように、カセット収容部に対して相対的に可動に、特に旋回可能かつ/または移動可能に配置されている。このことは、カセットへのアプローチひいては防護部材へのアプローチをも簡単にする。その結果、防護部材が物品により汚染または損傷された場合には、防護部材をより容易に交換することができる。このためには、防護部材を例えば保持フレームと共にカセットから取り外す。
【0069】
カセットは、好適には当該装置のカセット収容部内へ、物品流れ方向に対して横方向に挿入可能である。このために当該装置のカセット収容部は、カセットが滑動するようになっておりかつシールが設けられたガイドを備えたフレームを有していてよい。
【0070】
カセットは、有利には中空室を冷却回路に接続するための接続管片を有している。
【0071】
カセットには、有利には冷却回路に接続するための流体コネクタが装備されている。
【0072】
本発明の別の態様は、電子線を発生させる少なくとも1つの電子源を有する、粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置のカセット収容部内に挿入するカセットに関する。特に、上述した装置のことであってもよい。カセットは、当該装置の物品通路と、特に少なくとも1つの副通路とを少なくとも部分的に画定する画定面を有している。カセットは、防護部材用の少なくとも1つの保持フレームまたは少なくとも1つの保持フレーム用の取付け部を有している。カセットは、好適には上述したように形成されている。
【0073】
カセットは、当該装置が処理ゾーンの領域に、内部で物品を電子線により低温殺菌可能および/または滅菌可能な物品通路を有しており、かつ当該装置が特に、電子源と物品通路との間に少なくとも部分的に延在しかつ物品通路から流体密に分離されている、流体が通流可能な少なくとも1つの副通路を有するように、カセット収容部に挿入可能である。この場合、カセットの画定面は、物品通路および特に少なくとも1つの副通路を少なくとも部分的に画定する。
【0074】
本発明には、カセット収容部と、カセット収容部に挿入された、上述したようなカセットとを備えた、上述したような装置も含まれる。
【0075】
この場合、物品は処理ゾーンの領域内で物品通路を通流し、物品通路内で物品は電子線により低温殺菌および/または滅菌されることになる。
【0076】
この独立的な態様では、流体が、中空室と、特に少なくとも1つの副通路とを通流するようになっており、副通路は、電子源と物品通路との間に少なくとも部分的に延在しておりかつ物品通路から流体密に分離されている。既述のように、液体または気体であってよい前記流体により、電子線に基づき生じたオゾンを導出することができる。
【0077】
択一的または追加的に、流体は、例えば接続された冷却回路内でまたは副通路の通流時に、電子源、特に出射窓を冷却するためにも使用され得る。
【0078】
流体は、物品の流れ方向に対して平行にまたは反対方向に、副通路を通流してよい。流体としては、オゾン形成を防ぐ、例えば窒素等の気体が使用される。
【0079】
副通路および/または中空室を通流する流体は、物品通路内を流れるプロセスガスと同じであってよいか、または異なっていてよい。ただし、流体の別の流れ方向も同様に、本発明の枠内で考えられる。
【0080】
本願の枠内で、「下流側」および「上流側」という用語は、当該装置を規定通りに作動させた場合の、粒子状の物品の流れ方向に関する。したがって、当該装置が規定通りに作動している場合に物品が第2のユニットの後で第1のユニットを通過する場合には、第1のユニットを第2のユニットの下流側と言う。同様に、当該装置が規定通りに作動している場合に物品が第2のユニットの前に第1のユニットを通過する場合には、第1のユニットを第2のユニットの上流側と言う。
【0081】
当該装置は、冒頭で既に述べた、本出願人のPCT国際特許出願である欧州特許出願第2017070842号明細書に開示された、以下の1つまたは複数の特徴を有していてもよい。
【0082】
I. 粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置であって、
-物品を搬送しかつ個別化するために励振可能な、好適には実質的に水平方向に向けられた第1の振動面と、
-電子線を発生させる少なくとも1つの電子源と、
-第1の振動面の下流側に配置されており、物品を特に自由落下中に電子線により低温殺菌可能かつ/または滅菌可能な処理ゾーンと
を有しており、
第1の振動面は複数の溝を有しており、溝内で物品を搬送可能でありかつ溝により物品を個別化可能である。
【0083】
II. 特徴コンビネーションI記載の装置において、当該装置は、第1の振動面の下流側および処理ゾーンの上流側に、傾斜した滑落面を有しており、滑落面は、物品が滑落面上で処理ゾーンに向かって滑落することができるように形成されかつ配置されている。
【0084】
III. 特徴コンビネーションII記載の装置において、滑落面は、少なくとも1つの溝、好適には複数の溝を有しており、溝は、物品が溝内で滑落しかつ個別化され得るように形成されかつ配置されている。
【0085】
IV. 特徴コンビネーションIIおよびIII記載の装置において、滑落面は、水平線に対して45°~85°、好適には55°~75°、特に好適には60°~70°の範囲内の角度で下方に向かって傾斜させられている。
【0086】
V. 特徴コンビネーションIからIVまでのいずれか1つに記載の装置において、当該装置は、第1の振動面の下流側および処理ゾーンの上流側、特に滑落面の上流側に、変向面を有しており、変向面は、物品が変向面上で変向され、第1の振動面から滑落面にかつ/または処理ゾーンに向かって滑落することができるように形成されかつ配置されている。
【0087】
VI. 特徴コンビネーションV記載の装置において、変向面は、少なくとも1つの溝、好適には複数の溝を有しており、溝は、物品が溝内で滑落し得るように形成されかつ配置されている。
【0088】
VII. 特徴コンビネーションIからVIまでのいずれか1つに記載の装置において、当該装置は、第1の振動面の上流側に、実質的に平らな、かつ好適には実質的に水平方向に向けられた、励振可能な第2の振動面を有している。
【0089】
VIII. 粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置であって、
-電子線を発生させる少なくとも1つの電子源と、
-物品を特に自由落下中に電子線により低温殺菌可能かつ/または滅菌可能な処理ゾーンと
を有しており、
特に特徴コンビネーションIからVIIまでのいずれか1つに記載の装置は、処理ゾーンの領域に物品通路を有しており、物品通路内で物品は電子線により低温殺菌可能かつ/または滅菌可能であり、
当該装置は、流体が通流可能な少なくとも1つの副通路を有しており、副通路は、電子源と物品通路との間に少なくとも部分的に延びておりかつ物品通路から流体密に分離されている。
【0090】
IX. 特徴コンビネーションXIIIに記載の装置において、電子源と物品通路との間には、電子線に対して少なくとも部分的に透過性でありかつ特に金属から、好適にはチタンから成る防護シートが配置されている。
【0091】
X. 特徴コンビネーションIXに記載の装置において、防護シートは、物品通路を副通路から隔離している。
【0092】
XI. 特徴コンビネーションIXまたはXに記載の装置において、副通路は、電子源と防護シートとの間に少なくとも部分的に配置されている。
【0093】
XII. 特徴コンビネーションIXからXIまでのいずれか1つに記載の装置において、当該装置は、カセットを収容するためのカセット収容部を有しており、カセットは、物品通路および少なくとも1つの副通路を少なくとも部分的に画定していると共に、防護シートを収容するためのシート収容部を有しており、電子源は、カセットから離反する方向に可動であるように、カセット収容部に対して相対的に可動に、特に旋回可能かつ/または移動可能に配置されている。
【0094】
XIII. 特徴コンビネーションXIIに記載の装置において、カセットは、カセット収容部に挿入されており、カセット収容部は、物品通路および少なくとも1つの副通路を少なくとも部分的に画定しておりかつ防護シートを収容するシート収容部を有している。
【0095】
XIV. 特徴コンビネーションIからXIIIまでのいずれか1つに記載の装置において、当該装置は、処理ゾーンの下流側に、物品を包囲するプロセスガスを吸い取るための吸取り装置を有している。
【0096】
XV. 特徴コンビネーションIからXIVまでのいずれか1つに記載の装置において、当該装置は処理ゾーンの下流側に、測定ユニットおよび放出ユニットを含む選別装置を有しており、測定ユニットおよび放出ユニットは、物品の個々の粒子が測定ユニットにより測定された粒子の少なくとも1つの特性に基づき放出ユニットにより放出可能であるように形成されている。
【0097】
XVI. 特徴コンビネーションIからXVまでのいずれか1つに記載の装置において、当該装置は、物品に洗浄ガスを吹き付けるために処理ゾーンの下流側に配置された、少なくとも1つのガス出口開口を有している。
【0098】
物品は例えば、例えばダイズ等の穀物、朝食用シリアル、スナック、例えばドライココナッツ等のナッツ、アーモンド、ピーナッツバター、カカオ豆、チョコレート、チョコレート液、チョコレートパウダー、チョコレートチップ、カカオ製品、豆果、コーヒー、例えばパンプキンシード等の種子、スパイス(例えば特にスライスしたターメリック等)、ブレンド茶、ドライフルーツ、ピスタチオ、ドライプロテイン製品、ベーカリー製品、砂糖、ジャガイモ製品、麺類、ベビーフード、乾燥卵製品、例えばダイズ豆等のダイズ製品、増粘剤、酵母、酵母エキス、ゼラチンまたは酵素等の食品であってよい。
【0099】
択一的に、物品は、反芻動物、家禽、水生動物(特に魚)または家畜用の例えばペレット、飼料または混合飼料等のペットフードであってもよい。
【0100】
しかしまた同様に、物品は例えば、例えば薄片またはペレットの形態の、例えばPET等のプラスチックであることも、本発明の枠内で考えられる。
【0101】
前記課題はさらに、上述したような装置を用いて粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する方法により解決される。この方法には以下のステップが含まれる。
【0102】
電子源により電子線を発生させるステップ。特に自由落下する物品を、処理ゾーン内で電子線により低温殺菌および/または滅菌するステップ。防護部材を冷却するために、冷却流体を、保持フレームの中空室を通して案内するステップ。
【0103】
冷却流体は中空室内への流入時に、15℃~43℃の範囲内の、好適には25℃の温度を有していてよい。とりわけ防護部材における凝縮を回避するために、温度は15℃を上回っていることが望ましい。流出時の温度は、30℃~50℃の範囲内であり、好適には36℃である。
【0104】
有利には、冷却流体は2~6l/minの範囲内、好適には4l/minの体積流量でもって中空室を通されて案内される。
【0105】
冷却流体は、特に空気、窒素または水であってよい。
【0106】
当該方法はさらに、冒頭で既に述べた、本出願人のPCT国際特許出願である欧州特許出願第2017070842号明細書に開示された、以下の1つまたは複数の特徴を有していてよい。
【0107】
XVII. 粒子状の物品を、特に上で開示したような装置を用いて低温殺菌および/または滅菌する方法であって、以下のステップ、すなわち:
a)励振させられ、かつ物品が搬送されると共に個別化される複数の溝を有する、好適には実質的に水平方向に向けられた第1の振動面を介して物品を搬送しかつ個別化するステップ、
b)電子線を発生させるステップ、
c)処理ゾーン内で電子線により、特に自由落下中の物品を低温殺菌および/または滅菌するステップ
を含む。
【0108】
XVIII. 粒子状の物品を、特に上で開示したような装置を用いて低温殺菌および/または滅菌する方法であって、以下のステップ、すなわち:
b)電子線を発生させるステップ、
c)処理ゾーン内で電子線により、特に自由落下中の物品を低温殺菌および/または滅菌するステップ
を含み、
特に特徴コンビネーションXVIIに記載の方法では、
物品は処理ゾーンの領域内で物品通路を通流し、物品通路内で物品は電子線により低温殺菌および/または滅菌され、
流体が、電子源と物品通路との間に少なくとも部分的に延びておりかつ物品通路から流体密に分離された少なくとも1つの副通路を通流することを特徴とする。
【0109】
XIX. 特徴コンビネーションXVIIIに記載の方法において、防護シートは、物品通路を副通路から隔離している。
【0110】
XX. 特徴コンビネーションXVIIIまたはXIXに記載の方法において、副通路は、電子源と防護シートとの間に少なくとも部分的に配置されている。
【0111】
XXI. 特徴コンビネーションXVIIからXXまでのいずれか1つに記載の方法において、物品を包囲するプロセスガスは、低温殺菌および/または滅菌後に、特に低温殺菌および/または滅菌中の物品の速度の1~3倍、好適には1~1.5倍の吸取り速度で吸い取られる。
【0112】
以下に、本発明を複数の実施例および複数の図面に基づき、より詳しく説明する。同じ機能を有する要素には、それぞれ同じ符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【
図2】本発明による装置の処理ゾーンの側面図である。
【
図3】本発明による装置の本発明によるカセットの第1の例を詳細に示す斜視断面図である。
【
図4】本発明による装置の本発明によるカセットの第2の例を詳細に示す斜視断面図である。
【
図5】本発明による装置の本発明によるカセットの第3の例を示す第1の斜視図である。
【
図6】本発明による装置の本発明によるカセットの第3の例を示す別の斜視図である。
【
図7】本発明による装置の本発明によるカセットの第3の例を示す断面図である。
【0114】
図1に示す装置10は、例えばスパイス、ゴマ、アーモンドまたは皮を剥いたピスタチオ等の粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌するために設けられている。装置10は、物品を第2の振動面14上に調量することができる調量装置13を有している。この第2の振動面14を介して、物品の処理量を制御することができ、既に事前個別化が行われてもよい。
【0115】
装置10は第2の振動面14の下流側に、水平に向けられた第1の振動面11を有している。これにより、物品をさらに下流側に運んで個別化することができるようになっている。
【0116】
装置10は第1の振動面11の下流側に、変向面15を有している。変向面15は、物品が変向面15において変向されると共に第1の振動面11から滑落面16に向かって滑落することができるように形成されかつ配置されている。変向面15は、物品の粒子が重力の作用に基づいてのみ落下する際の放物線軌道上で実質的に下流側に案内されるように、物品および第1の振動面11に合わせられている。
【0117】
装置10はさらに下流側に、処理ゾーン19を有している。そこで物品は自由落下しながら、互いに対向して位置する2つの電子源20から生ぜしめられる電子線により低温殺菌および/または滅菌される。
【0118】
装置10はさらに、物品を包囲するプロセスガスを下流側で処理ゾーン19から吸い取ることができる、吸取り装置25を有している。
【0119】
この装置10を用いて粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌するためには、以下のステップが実施される。すなわち:
第2の振動面14を介して物品の処理量を制御し、かつ事前個別化を行う。別のステップにおいて、電子源20から電子線を生ぜしめる。その場合別のステップにおいて、処理ゾーン19内で電子線により、自由落下中の物品の低温殺菌および/または滅菌を行う。
【0120】
スパイスの場合、物品は有利には1m/s~5m/s、好適には2m/s~4m/s、特に好適には2m/s~3m/sの範囲内の、例えば2.5m/sの速度で処理ゾーン19を通り、移動する。この速度は、滑落面16の長さおよび傾斜角度および長さに基づき調整可能である。
【0121】
物品の速度が高くなる程、達成可能な処理量も多くなる。自由落下の場合、速度は処理量とは無関係であり、例えば同一速度において100kg/h~1000kg/hの範囲内の処理量が達成され得る。
【0122】
処理量は、振動面11,14の振動ならびに変向面15および滑落面16の寸法および向きに左右され得る。さらに、物品の速度上昇に伴い、粒子と電子源20または防護部材23との衝突の確率が低下する。しかしまた他方では、物品が十分に長く電子線内に残留して低温殺菌および/または滅菌され得るようにするために、速度は極度に大きく選択されてはならない。
【0123】
電子線の電子は、80keV~300keV、好適には140keV~280keV、特に好適には180keV~260keVの範囲内の、例えば250keVのエネルギを有している。より低い電子エネルギは、十分な低温殺菌および/または滅菌を生ぜしめないと考えられる。より高い電子エネルギによっても、大幅に高度な低温殺菌および/または滅菌を達成することはできなかった。
【0124】
処理ゾーン19において電子線は、1015s-1・cm-2~2.77・1015s-1・cm-2の範囲内にある平均電流密度を有している。物品は、5ms~25msの範囲内にあってよい、例えば15msであってよい処理時間の間、電子線に晒(曝露)される。それというのも、十分な低温殺菌および/または滅菌のためには、ある程度の最短処理時間が必要だからである。極度に長い処理時間は、低温殺菌および/または滅菌の程度を大幅に向上させることはないということが判っており、さらに処理量も低下させてしまうと考えられる。
【0125】
これにより物品は、1kGy~45kGy、好適には8kGy~30kGy、特に好適には10kGy~16kGyの範囲内の、例えば12kGyであってよい放射線量に晒される。
【0126】
物品を包囲するプロセスガスは、処理ゾーン19内での低温殺菌および/または滅菌後に吸取り装置25により、低温殺菌および/または滅菌中の物品の速度の1~1.5倍の好適な吸取り速度で吸い取られる。
【0127】
装置10はさらに冷却装置130を有しており、冷却装置130は2つの冷却回路に冷却流体を供給する。一方の冷却回路132は、電子源20に冷却流体を供給し、別の冷却回路131は、電子源20から処理ゾーン19を隔てる防護部材23に冷却流体を供給する。
【0128】
図2には、処理ゾーン19が詳細図で示されている。処理ゾーン19の領域において、装置10は各電子源20の出射窓32の間に配置されたカセット24を有している。カセット24は、カセット収容部37内に挿入されている。カセット24は、電子線に対して部分的に透過性になっている、チタン製の各1つの防護部材23のための、2つの保持フレーム120(
図3参照)を有している。カセット24は、防護フィルム23と共に物品通路21を画定する、複数の画定面38(
図3参照)を有しており、物品通路21内で電子線により、物品を低温殺菌および/または滅菌することができる。
【0129】
さらに、装置10は処理ゾーン19の領域に2つの副通路22を有している。これらの副通路22は運転位置において、
図3に示すカセット24の画定面38、防護フィルム23および電子源20の出射窓32により画定されひいては物品通路21と電子源20との間に延在している。
【0130】
物品通路21は、とりわけ防護部材により副通路22から流体密に分離されている。
【0131】
流入開口30を介して、物品の流れ方向に対して平行な副通路22を通流可能な空気が導入され得る。下流側において、空気は流出開口31から再び流出することができるようになっている。この空気流は、一方では電子線により生ぜしめられるオゾンの導出を可能にし、かつ他方では電子源20および特に電子源20の出射窓32の冷却を可能にする。
【0132】
図3に示す、カセット24の第1の例のさらに詳細な斜視断面図では、物品通路21、2つの副通路22および2つの防護部材23が認められる。
【0133】
物品通路21は、2つの防護部材23により副通路22から流体密に分離されている。
【0134】
防護部材23は、保持フレーム120内に締め込まれている。
【0135】
カセット24の、物品通路21とは反対の側にはそれぞれ凹部34が形成されており、凹部34は、装置10の運転位置では電子源20の出射窓32により閉じられるようになっており、かつ電子線を通すことができるようになっている。
【0136】
保持フレーム120は、冷却流体が通流可能な中空室121を有している。中空室121は、完全に保持フレーム120の内部に位置している。
【0137】
中空室121は、冷却流体が通流する別個の冷却回路131(
図1参照)の一部である。冷却回路131は、電子源20をも冷却する同一の冷却装置130に属していてよい(
図1参照)。
【0138】
中空室121は、例えば液体の冷却流体を案内することができるのに対し、副通路22を通流するのは気体である。
【0139】
図4に示す、カセット24の第2の例の斜視図にもやはり、物品通路21、2つの副通路22および2つの防護部材23が認められる。
【0140】
中空室121は、副通路22に対して開いている。これにより、副通路22を通流する冷却流体が、保持フレーム120を特に効果的に冷却するようになっている。副通路22および中空室121は、冷却回路131(
図1参照)の一部であってよい。
【0141】
本例では、防護部材23は複数の厚肉部122を有しており、厚肉部122は、防護部材23の主平面に沿って、物品流れ方向Rに対して実質的に垂直に延在している。厚肉部122は、防護部材23を変形に対して安定させる。
【0142】
図5には、本発明による装置10の本発明によるカセット124の第3の例を示す第1の斜視図が示されている。
【0143】
カセット124は、物品流れ方向Rに対して横方向の方向Sに沿って、装置10(
図1参照)のカセット収容部(詳細には図示せず)内へ挿入可能であり、このために、把持板127に取り付けられた把持部126を有している。
【0144】
カセット124には、物品通路21および2つの副通路22が形成されている。
【0145】
カセット124は、一体の構成部材としてさらに、2つの防護部材(詳細には図示せず)を保持する2つの保持フレーム120を有している。
【0146】
カセット124ひいては保持フレーム120は、冷却液を案内するための中空室121(
図2参照)を有している。中空室121は、連続する管の形態で形成されており、液体を導入しかつ導出するために、それぞれ接続管片125に接続している。接続管片125は、冷却回路131(
図1参照)に対する接続部を形成することができる流体コネクタとして形成されている。
【0147】
図6には、本発明による装置の本発明によるカセット124の第3の例を示す、同じ斜視図が示されている。この図には、把持板127(
図5参照)は図示されていない。これにより、中空室121が見えている。防護部材(詳細には図示せず)用の保持フレーム120を同時に形成するカセット124を、中空室121が溝として蛇行して通っている。
【0148】
把持板127(
図5参照)がねじ締結または溶接されると、中空室121は閉じられた管の状態になる。
【0149】
図7には、本発明による装置の本発明によるカセット124の第3の例が断面図で示されている。
【0150】
中空室121は閉じられた管として、接続管片125からカセット124の下部領域128を通り、把持板127の傍らを通過して再び戻る。接続管片125と把持板127との間の経路において第1の保持フレーム120が冷却され、把持板127から接続管片125に戻る経路において、中空室121は第2の保持フレーム120を貫通して延びている。