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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】両回転スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20220920BHJP
   F04C 29/00 20060101ALN20220920BHJP
   F04C 27/00 20060101ALN20220920BHJP
【FI】
F04C18/02 311Q
F04C29/00 B
F04C27/00 321
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020568927
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2019003047
(87)【国際公開番号】W WO2020157841
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】平田 弘文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆英
(72)【発明者】
【氏名】北口 恵太
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-174241(JP,A)
【文献】特開2015-001177(JP,A)
【文献】特開平07-324688(JP,A)
【文献】特開平09-195958(JP,A)
【文献】特開2002-371978(JP,A)
【文献】特開平07-301101(JP,A)
【文献】特開平09-088851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 29/00
F04C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部によって回転軸線回りに回転駆動され、渦巻状の第1駆動側壁体が第1駆動側端板の両側のそれぞれに配置された第1駆動側スクロール部材と、
渦巻状の第1従動側壁体が第1従動側端板の両側のそれぞれに配置され、該第1従動側壁体の一方が前記第1駆動側壁体の一方に対して噛み合わされることによって第1圧縮空間を形成する第1従動側スクロール部材と、
前記第1駆動側スクロール部材と共に前記回転軸線回りに回転駆動され、前記第1従動側壁体の他方が噛み合わされることによって第2圧縮空間を形成する渦巻状の第2駆動側壁体が第2駆動側端板に配置された第2駆動側スクロール部材と、
渦巻状の第2従動側壁体が第2従動側端板に配置され、該第2従動側壁体が前記第1駆動側壁体の他方に対して噛み合わされることによって第3圧縮空間を形成する第2従動側スクロール部材と、
前記第1駆動側スクロール部材、前記第2駆動側スクロール部材、前記第1従動側スクロール部材及び前記第2従動側スクロール部材が同じ方向に同一角速度で自転運動するように前記駆動部側から前記第1従動側スクロール部材及び前記第2従動側スクロール部材に駆動力を伝達する同期駆動機構と、
を備え、
各前記スクロール部材に対して前記回転軸線方向側に配置された第1サイドプレートと、
前記第1サイドプレートに対して前記回転軸線方向に所定間隔を有して固定された第2サイドプレートと、
前記第1サイドプレートと前記第2サイドプレートの間に配置され、前記第1サイドプレート及び前記第2サイドプレートと共に密閉された内部空間を形成するセンタープレートと、
を備え、
前記第1サイドプレートは、前記第1従動側スクロール部材又は前記第2従動側スクロール部材に固定され、
前記センタープレートは、前記駆動部に固定され、
前記同期駆動機構は、前記内部空間に設けられている両回転スクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記駆動部を収容する駆動部側空間と、
前記第1駆動側スクロール部材、前記第2駆動側スクロール部材、前記第1従動側スクロール部材、前記第2従動側スクロール部材、及び前記同期駆動機構を収容する圧縮部側空間と、
前記圧縮部側空間に接続され、圧縮する前の気体を吸入する吸入部と、
前記駆動部側空間と前記圧縮部側空間とを仕切る仕切壁部と、
前記駆動部によって回転駆動されるとともに前記仕切壁部を貫通する駆動軸と、
前記駆動軸を前記仕切壁部に対して回転自在に支持する駆動側軸受と、
を備え、
前記仕切壁部には、前記駆動部側空間と前記圧縮部側空間とを均圧する均圧穴が形成されている請求項1に記載の両回転スクロール型圧縮機。
【請求項3】
記第1サイドプレートと前記センタープレートとの間でかつ前記回転軸線側の領域には、潤滑剤を収容する潤滑剤用空間部が設けられている請求項1に記載の両回転スクロール型圧縮機。
【請求項4】
前記第1サイドプレートと前記センタープレートとの間には、該第1サイドプレートと該センタープレートとの相対移動を利用して潤滑剤を前記潤滑剤用空間部に導く潤滑剤導入流路が設けられている請求項3に記載の両回転スクロール型圧縮機。
【請求項5】
前記壁体の高さ方向先端には対応する前記端板との間でシールを行うチップシールが設けられ、
前記壁体の高さ方向先端には、前記チップシールを収容するチップシール溝が形成され、
前記チップシール溝の前記回転軸線を中心とする半径方向外側には、該壁体の高さ方向先端側に向かって該半径方向外側に傾斜する第1傾斜壁部が設けられている請求項1に記載の両回転スクロール型圧縮機。
【請求項6】
前記チップシール溝の前記回転軸線を中心とする半径方向内側には、該壁体の高さ方向先端側に向かって該半径方向内側に前記第1傾斜壁部と対称に傾斜する第2傾斜壁部が設けられている請求項5に記載の両回転スクロール型圧縮機。
【請求項7】
前記壁体の高さ方向先端には対応する前記端板との間でシールを行うチップシールが設けられ、
前記壁体の高さ方向先端には、前記チップシールを収容するチップシール溝が形成され、
前記チップシール溝の周方向外方の先端には、前記壁体の高さ方向先端側に向かって周方向外方の先端に向かって傾斜する第3傾斜壁部が設けられている請求項1に記載の両回転スクロール型圧縮機。
【請求項8】
前記壁体の周方向における巻終わり部分に、該壁体から半径方向外側に突出するとともに前記端板の中心位置に中心を有する円弧部が設けられている請求項1に記載の両回転スクロール型圧縮機。
【請求項9】
前記巻終わり部分に、前記壁体から半径方向外側に突出するとともに位置決め用又は固定用の孔部を有する突出部が設けられ、
前記円弧部は、前記突出部の周方向外方側または周方向内方側に設けられている請求項8に記載の両回転スクロール型圧縮機。
【請求項10】
前記壁体の周方向における巻終わり位置に対して半径方向内側に位置する壁体の周方向外方部分に、該壁体から半径方向外側に突出するとともに前記端板の中心位置に中心を有する円弧部が設けられている請求項1に記載の両回転スクロール型圧縮機。
【請求項11】
前記壁体の周方向における巻終わり位置に対して半径方向内側に位置する壁体の周方向外方部分に、該壁体から半径方向外側に突出する端板延長部が設けられ、
前記端板延長部は、前記壁体の厚さよりも小さい半径方向寸法とされた小突出部分を有し、
前記小突出部分の前記壁体に対向する面または該小突出部分に対向する前記壁体の高さ方向先端に、アブレーダブルコーティングが施されている請求項1に記載の両回転スクロール型圧縮機。
【請求項12】
前記第1駆動側スクロール部材と前記第2駆動側スクロール部材とを互いの前記壁体の高さ方向先端を向かい合わせた状態で締結する締結部を、該第1駆動側スクロール部材及び該第2駆動側スクロール部材のそれぞれに設け、一方の前記駆動側スクロール部材の前記壁体の高さ方向先端と前記締結部の高さ方向先端とが同一高さとされ、
又は、
前記第1従動側スクロール部材と前記第2従動側スクロール部材とを互いの前記壁体の高さ方向先端を向かい合わせた状態で締結する締結部を、該第1従動側スクロール部材及び該第2従動側スクロール部材のそれぞれに設け、一方の前記従動側スクロール部材の前記壁体の高さ方向先端と前記締結部の高さ方向先端とが同一高さとされている請求項1に記載の両回転スクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、両回転スクロール型圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されているように、両回転スクロール型圧縮機が知られている。これは、駆動側スクロールと、駆動側スクロールと共に同期して回転する従動側スクロールとを備え、駆動側スクロールを回転させる駆動軸に対して、従動側スクロールの回転を支持する従動軸を旋回半径分だけオフセットして、駆動軸と従動軸とを同じ方向に同一角速度で回転させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5443132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、従動スクロール部の端板の両側にそれぞれラップ部を設けることによって、端板の両側に圧縮空間を形成するようになっている。これは、端板の両側に圧縮空間を形成できる点で、端板の片側にのみ圧縮空間を形成する場合に比べて2倍の流量を得ることができる。しかし、さらに大流量化を実現しようとする場合、スクロール部を径方向に拡大する必要がある。しかし、スクロール部を径方向に拡大すると、ラップ部の変形量や応力が大きくなるので、大流量化には限界がある。
そこで、本開示では、大流量化を実現することができる両回転スクロール圧縮機を提供することを目的とする。
【0005】
また、駆動部側空間と圧縮部側空間とが仕切壁部によって仕切られていると、圧縮部側空間は、圧縮前の気体を吸入する吸入部を備えているので、内部が大気圧よりも低くなる場合がある。このため、大気圧とされている駆動部側空間と圧縮部側空間との間で圧力差が生じるおそれがある。このような圧力差が生じると、仕切壁体に対して駆動軸を支持する駆動側軸受に用いられる潤滑剤が低圧側である圧縮部空間に漏れ出して潤滑不良を起こすおそれがある。
そこで、本開示では、駆動側軸受の潤滑不良を抑制することができる両回転スクロール型圧縮機を提供することを目的とする。
【0006】
また、従動側スクロール部材に接続された第1サイドプレートと、第1サイドプレートに対して離間して略平行に配置された第2サイドプレートと、駆動部に接続されたセンタープレートとの間に密閉された内部空間を形成し、この内部空間に駆動側スクロール部材と従動側スクロール部材とを同期させる同期駆動部を設置した構成が考えられる。この場合、センタープレートと第1サイドプレートとは摺動状態で接触するので、潤滑剤が供給される。しかし、センタープレートの中央部側では、遠心力によって潤滑剤が漏出して不足するおそれがある。
そこで、本開示では、第1サイドプレートとセンタープレートとの潤滑剤不足を抑制することができる両回転スクロール型圧縮機を提供することを目的とする。
【0007】
また、各スクロール部材の壁部(ラップ)の高さ方向先端には、チップシール溝内にチップシールが設けられている。チップシールは、チップシールの背面に入り込んだ流体の圧力によって端板側に浮上することによってシールしている。しかし、圧力比が低いと十分にチップシールを浮上させることができずに所望のシール性能をえることができないおそれがある。
そこで、本開示では、チップシールのシール性能を向上させることができる両回転スクロール型圧縮機を提供することを目的とする。
【0008】
また、スクロール部材を加工する際に、工作機械のチャックでスクロール部材の外周を掴む必要がある。このときにスクロール部材を掴む位置が決まらず、安定的にチャックすることができず加工性が悪くなるという問題があった。
そこで、本開示では、加工性が良好なスクロール部材を備えた両回転スクロール型圧縮機を提供することを目的とする。
【0009】
また、壁体の周方向における巻終わり位置に対して半径方向内側に位置する壁体の周方向内方側部分に、壁体から半径方向外側に突出する端板延長部が設け、可及的にスクロール部材を小さくすることが考えられる。しかし、端板延長部に壁体の厚さよりも小さい半径方向寸法とされた小突出部分が設けられていると、壁体の高さ方向先端が小突出部分からはみ出てしまうので、壁体の高さ方向先端にチップシールを設けることができない。これでは、小突出部分と壁体の高さ方向先端との隙間で所望のシール性能を得ることができない。
そこで、本開示では、小突出部分と壁体の高さ方向先端との隙間で所望のシール性能を得ることができる両回転スクロール型圧縮機を提供することを目的とする。
【0010】
また、対向する駆動側スクロール部材同士を互いの壁体の高さ方向先端を向かい合わせた状態で締結する締結部を、両駆動側スクロール部材のそれぞれに設ける構成を採用する場合がある。この場合、両駆動側スクロールの間に従動側スクロール部材を挟むことになるので、対向する締結部同士を接触させるためには、壁体の高さ方向先端に対して締結部の高さ方向に突出させる必要がある。これでは、壁体の高さ方向先端の加工と、締結部の高さ方向の端面の加工とが別工程となるため、加工時間の短縮化の妨げとなる。
そこで、本開示では、締結部を有する壁体を備えたスクロール部材の加工時間を短縮化することができる両回転スクロール型圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様に係る両回転スクロール型圧縮機は、駆動部によって回転軸線回りに回転駆動され、渦巻状の第1駆動側壁体が第1駆動側端板の両側のそれぞれに配置された第1駆動側スクロール部材と、渦巻状の第1従動側壁体が第1従動側端板の両側のそれぞれに配置され、該第1従動側壁体の一方が前記第1駆動側壁体の一方に対して噛み合わされることによって第1圧縮空間を形成する第1従動側スクロール部材と、前記第1駆動側スクロール部材と共に前記回転軸線回りに回転駆動され、前記第1従動側壁体の他方が噛み合わされることによって第2圧縮空間を形成する渦巻状の第2駆動側壁体が第2駆動側端板に配置された第2駆動側スクロール部材と、渦巻状の第2従動側壁体が第2従動側端板に配置され、該第2従動側壁体が前記第1駆動側壁体の他方に対して噛み合わされることによって第3圧縮空間を形成する第2従動側スクロール部材と、前記第1駆動側スクロール部材、前記第2駆動側スクロール部材、前記第1従動側スクロール部材及び前記第2従動側スクロール部材が同じ方向に同一角速度で自転運動するように前記駆動部側から前記第1従動側スクロール部材及び前記第2従動側スクロール部材に駆動力を伝達する同期駆動機構と、を備え、各前記スクロール部材に対して前記回転軸線方向側に配置された第1サイドプレートと、前記第1サイドプレートに対して前記回転軸線方向に所定間隔を有して固定された第2サイドプレートと、前記第1サイドプレートと前記第2サイドプレートの間に配置され、前記第1サイドプレート及び前記第2サイドプレートと共に密閉された内部空間を形成するセンタープレートと、を備え、前記第1サイドプレートは、前記第1従動側スクロール部材又は前記第2従動側スクロール部材に固定され、前記センタープレートは、前記駆動部に固定され、前記同期駆動機構は、前記内部空間に設けられている
【0012】
第1駆動側スクロール部材は、第1駆動側端板の両側に第1駆動側壁体を備えたいわゆる両歯のスクロール部材とされている。第1従動側スクロール部材も、第1従動側端板の両側に第1従動側壁体を備えた両歯のスクロール部材とされている。そして、両歯とされた第1駆動側スクロール部材の一方の第1駆動側壁体と両歯とされた第1従動側スクロール部材の一方の第1従動側壁体が噛み合わされることによって第1圧縮空間が形成される。
両歯とされた第1従動側スクロール部材の他方の第1従動側壁体は、第2駆動側スクロール部材の第2駆動側壁体と噛み合わされることによって第2圧縮空間が形成される。
両歯とされた第1駆動側スクロール部材の他方の第1駆動側壁体は、第2従動側スクロール部材の第2従動側壁体と噛み合わされることによって第3圧縮空間が形成される。
このように、2つの両歯のスクロール部材を用いることによって、それぞれの端板の両側に3つの圧縮空間を形成することができる。これにより、大流量化を実現することができる。
なお、両歯とされたスクロール部材の数は2つに限定されるものではなく、3つ以上であっても良い。すなわち、第2駆動側スクロール部材や第2従動側スクロール部材を片歯ではなく両歯としても良い。
【0014】
さらに、本開示の一態様に係る両回転スクロール型圧縮機では、各前記圧縮空間にて圧縮された流体が合流して吐出される最終吐出口を備え、前記第1駆動側端板の中央部には、圧縮後の流体が吐出される第1駆動側吐出口が形成され、前記第1従動側端板の中央部には、圧縮後の流体が吐出される第1従動側吐出口が形成され、前記第1駆動側吐出口及び前記第1従動側吐出口の流路断面積は、前記最終吐出口に対して上流側の方が下流側よりも小さい。
各圧縮空間で圧縮された流体は、合流した後に最終吐出口から両回転スクロール圧縮機の外部へと吐出される。上流側の吐出口は、流体が合流した後の下流側の吐出口よりも流量が少ないので、チョークが生じる可能性が低いため、下流側よりも上流側の吐出口の流路断面積を小さくすることができる。そこで、第1駆動側吐出口と第1従動側吐出口のうち、最終吐出口に対して上流側の方を下流側よりも流路断面積を小さくした。
また、上流側の吐出口の流路断面積を小さくすることで、流路断面積が大きい場合に比べて壁体を吐出口に近づけて形成できるので、圧力比を増加させることができる。
【0015】
さらに、本開示の一態様に係る両回転スクロール型圧縮機では、前記駆動部を収容する駆動部側空間と、前記第1駆動側スクロール部材、前記第2駆動側スクロール部材、前記第1従動側スクロール部材、前記第2従動側スクロール部材、及び前記同期駆動機構を収容する圧縮部側空間と、前記圧縮部空間に接続され、圧縮する前の気体を吸入する吸入部と、前記駆動部側空間と前記圧縮側空間とを仕切る仕切壁部と、前記駆動部によって回転駆動されるとともに前記仕切壁部を貫通する駆動軸と、前記駆動軸を前記仕切壁部に対して回転自在に支持する駆動側軸受と、を備え、前記仕切壁部には、前記駆動部側空間と前記圧縮部側空間とを均圧する均圧穴が形成されている。
【0016】
駆動部側空間と圧縮部側空間とは仕切壁部によって仕切られている。圧縮部側空間は、圧縮前の気体を吸入する吸入部を備えているので、内部が周囲圧力(例えば大気圧)よりも低くなる場合がある。このため、周囲圧力とされている駆動部側空間と圧縮部側空間との間で圧力差が生じるおそれがある。このような圧力差が生じると、駆動軸を支持する駆動側軸受に用いられる潤滑剤が低圧側である圧縮部空間に漏れ出して潤滑不良を起こすおそれがある。そこで、仕切壁部に、駆動側空間と圧縮部側空間とを均圧する均圧穴を形成することとした。これにより、駆動部側空間と圧縮部側空間との間で圧力差を低減し、駆動側軸受の潤滑不良を抑制することができる。
【0017】
さらに、本開示の一態様に係る両回転スクロール型圧縮機では、前記第1サイドプレートと前記センタープレートとの間でかつ前記回転軸線側の領域には、潤滑剤を収容する潤滑剤用空間部が設けられている。
【0018】
第1サイドプレート、第2サイドプレート及びセンタープレートによって密閉された内部空間が形成され、この内部空間内に同期駆動部が設けられる。センタープレートは、密閉空間を形成するために第1サイドプレートに対して摺動状態で接触するので、潤滑剤が供給される。第1サイドプレートとセンタープレートとの間でかつ回転軸線側の領域に、潤滑剤を収容する潤滑剤用空間部が設けられている。これにより、センタープレートが回転軸線回りに回転して遠心力によって潤滑剤が半径方向外側に流動したとしても、潤滑剤不足となることを抑制することができる。
【0019】
さらに、本開示の一態様に係る両回転スクロール型圧縮機では、前記第1サイドプレートと前記センタープレートとの間には、該第1サイドプレートと該センタープレートとの相対移動を利用して潤滑剤を前記潤滑剤用空間部に導く潤滑剤導入流路が設けられている。
【0020】
潤滑剤導入流路によって第1サイドプレートとセンタープレートとの間に存在する潤滑剤を潤滑剤用空間部に導くこととしたので、潤滑剤不足となることを更に抑制することができる。潤滑剤導入流路は、例えば、第1サイドプレート又はセンタープレートに溝部として形成される。
【0021】
さらに、本開示の一態様に係る両回転スクロール型圧縮機では、前記壁体の高さ方向先端には対応する前記端板との間でシールを行うチップシールが設けられ、前記壁体の高さ方向先端には、前記チップシールを収容するチップシール溝が形成され、前記チップシール溝の前記回転軸線を中心とする半径方向外側には、該壁体の高さ方向先端側に向かって該半径方向外側に傾斜する第1傾斜壁部が設けられている。
【0022】
第1傾斜壁部を設けることによって、遠心力を受けたチップシールは第1傾斜壁部に沿って対向する端板側に移動することになる。これにより、チップシールのシール性能を向上させることができる。
【0023】
さらに、本開示の一態様に係る両回転スクロール型圧縮機では、前記チップシール溝の前記回転軸線を中心とする半径方向内側には、該壁体の高さ方向先端側に向かって該半径方向内側に前記第1傾斜壁部と対称に傾斜する第2傾斜壁部が設けられている。
【0024】
第1傾斜壁部と対称に第2傾斜壁部を設けることとしたので、チップシール溝の加工性が向上する。
【0025】
さらに、本開示の一態様に係る両回転スクロール型圧縮機では、前記壁体の高さ方向先端には対応する前記端板との間でシールを行うチップシールが設けられ、前記壁体の高さ方向先端には、前記チップシールを収容するチップシール溝が形成され、前記チップシール溝の周方向外方の先端には、前記壁体の高さ方向先端側に向かって周方向外方の先端に向かって傾斜する第3傾斜部が設けられている。
【0026】
スクロール部材が回転すると、チップシールは周方向外方に向かって移動する。この動きを利用して、第3傾斜部に沿ってチップシールを端板側に移動させることができる。これにより、チップシールのシール性能を向上させることができる。
【0027】
さらに、本開示の一態様に係る両回転スクロール型圧縮機では、前記壁体の周方向における巻終わり部分に、該壁体から半径方向外側に突出するとともに前記端板の中心位置に中心を有する円弧部が設けられている。
【0028】
壁体の周方向における巻終わり部分に、壁体から半径方向外側に突出する円弧部を設けた。円弧部は、端板の中心位置に中心を有する円弧形状とされているので、スクロール部材を加工する際に工作機械のチャックで掴んだ場合に容易にかつ正確に位置決めすることができ、加工性を向上させることができる。
【0029】
さらに、本開示の一態様に係る両回転スクロール型圧縮機では、前記巻終わり部分に、前記壁体から半径方向外側に突出するとともに位置決め用又は固定用の孔部を有する突出部が設けられ、前記円弧部は、前記突出部の周方向外方側または周方向内方側に設けられている。
【0030】
突出部には、位置決め用又は固定用の孔部が設けられている。この孔部を用いて、対向するスクロール部材同士を位置決めしたり固定したりする。この突出部の周方向外方側に円弧部を設けることで、可及的に周方向外側に突出部を設けることができ、工作機械のチャックで容易に掴むことができる。また、突出部の周方向内方側に円弧部を設けることで、スクロール部材が回転したときの慣性力を可及的に低減することができる。
【0031】
さらに、本開示の一態様に係る両回転スクロール型圧縮機では、前記壁体の周方向における巻終わり位置に対して半径方向内側に位置する壁体の周方向外方側部分に、該壁体から半径方向外側に突出するとともに前記端板の中心位置に中心を有する円弧部が設けられている。
【0032】
円弧部を壁体の周方向における巻終わり位置に対して半径方向内側に位置する壁体の周方向外方側部分に設けることとした。これにより、円弧部の端板中心からの距離を小さくできるので、円弧部の回転慣性力を小さくすることができる。
【0033】
さらに、本開示の一態様に係る両回転スクロール型圧縮機では、前記壁体の周方向における巻終わり位置に対して半径方向内側に位置する壁体の周方向外方側部分に、該壁体から半径方向外側に突出する端板延長部が設けられ、前記端板延長部は、前記壁体の厚さよりも小さい半径方向寸法とされた小突出部分を有し、前記小突出部分の前記壁体に対向する面または該小突出部分に対向する前記壁体の高さ方向先端に、アブレーダブルコーティングが施されている。
【0034】
端板延長部は、対向する壁体の高さ方向先端に対向する。このとき、端板延長部に壁体の厚さよりも小さい半径方向寸法とされた小突出部分が設けられていると、壁体の高さ方向先端が小突出部分からはみ出てしまうので、壁体の高さ方向先端にチップシールを設けることができない。そこで、小突出部分の壁体に対向する面または小突出部分に対向する壁体の高さ方向先端に、アブレーダブルコーティングを施すこととした。これにより、小突出部分と壁体の高さ方向先端との隙間寸法を可及的に小さくすることができ、シール性能を向上させることができる。
【0035】
さらに、本開示の一態様に係る両回転スクロール型圧縮機では、前記第1駆動側スクロール部材と前記第2駆動側スクロール部材とを互いの前記壁体の高さ方向先端を向かい合わせた状態で締結する締結部を、該第1駆動側スクロール部材及び該第2駆動側スクロール部材のそれぞれに設け、一方の前記駆動側スクロール部材の前記壁体の高さ方向先端と前記締結部の高さ方向先端とが同一高さとされ、又は、前記第1従動側スクロール部材と前記第2従動側スクロール部材とを互いの前記壁体の高さ方向先端を向かい合わせた状態で締結する締結部を、該第1従動側スクロール部材及び該第2従動側スクロール部材のそれぞれに設け、一方の前記従動側スクロール部材の前記壁体の高さ方向先端と前記締結部の高さ方向先端とが同一高さとされている。
【0036】
壁体の高さ方向先端と締結部の高さ方向先端とが同一高さとされているので、加工の際に高さ方向の位置を変化させる必要がないので、加工時間を短縮化することができる。
なお、他方のスクロール部材の締結部は、一方のスクロール部材の締結部材に接触するように高さを壁体と異ならせる形状となる。
【発明の効果】
【0037】
本開示の両回転スクロール圧縮機によれば、大流量化を実現することができる。
【0038】
本開示の両回転スクロール圧縮機によれば、駆動側軸受の潤滑不良を抑制することができる。
【0039】
本開示の両回転スクロール圧縮機によれば、第1サイドプレートとセンタープレートとの潤滑剤不足を抑制することができる。
【0040】
本開示の両回転スクロール圧縮機によれば、チップシールのシール性能を向上させることができる。
【0041】
本開示の両回転スクロール圧縮機によれば、スクロール部材の加工性を向上させることができる。
【0042】
本開示の両回転スクロール圧縮機によれば、小突出部分と壁体の高さ方向先端との隙間で所望のシール性能を得ることができる。
【0043】
本開示の両回転スクロール圧縮機によれば、締結部を有する壁体を備えたスクロール部材の加工時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本開示の第1実施形態に係る両回転スクロール型圧縮機を示した縦断面図である。
図2図1の第1駆動側壁体を示した平面図である。
図3図1の第1従動側壁体を示した平面図である。
図4図1の変形例を示した縦断面図である。
図5】本開示の第2実施形態に係る両回転スクロール型圧縮機を示した縦断面図である。
図6】本開示の第3実施形態に係る両回転スクロール型圧縮機を示した縦断面図である。
図7図6のセンタープレートの変形例を示した平面図である。
図8】本開示の第4実施形態を示し、図2の切断線A-Aにおける断面図である。
図9】本開示の第4実施形態を示し、図2の切断線B-Bにおける断面図である。
図10】本開示の第5実施形態に係る第1駆動側スクロール部材を示した平面図である。
図11図10の変形例を示した平面図である。
図12図10の変形例を示した平面図である。
図13】本開示の第6実施形態に係る第1駆動側スクロール部材を示した平面図である。
図14図13の切断線C-Cにおける断面図である。
図15】本開示の第7実施形態に係る駆動側スクロール部材の接続部の要部を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態について説明する。
図1には、両回転スクロール型圧縮機1が示されている。両回転スクロール型圧縮機1は、例えば車両用エンジン等の内燃機関に供給する燃焼用空気(流体)を圧縮する過給機や、燃料電池の電極に圧縮空気を供給するための圧縮機、鉄道等の車両の制動装置に用いる圧縮空気を供給するための圧縮機、空調機械において使用される冷媒圧縮機として用いることができる。
【0046】
両回転スクロール型圧縮機1は、ハウジング3と、ハウジング3の一端側に収容されたモータ(駆動部)5と、ハウジング3の他端側に収容された駆動側スクロール部材70及び従動側スクロール部材90とを備えている。
【0047】
ハウジング3は、略円筒形状とされており、モータ5を収容する駆動部側空間を形成するモータ収容部3aと、スクロール部材70,90等を収容する圧縮部側空間を形成するスクロール収容部3bとを備えている。モータ収容部3aとスクロール収容部3bとは、仕切壁部3eによって仕切られている。
スクロール収容部3bの端部(図1において左端)には、圧縮後の空気を外部に吐出するための外部吐出口3dが形成されている。なお、図1では示されていないが、スクロール収容部3bには空気を吸入する空気吸入口(吸入部)が設けられている。
【0048】
モータ5は、図示しない電力供給源から電力が供給されることによって駆動される。モータ5の回転制御は、図示しない制御部からの指令によって行われる。モータ5のステータ5aはハウジング3の内周側に固定されている。モータ5のロータ5bは、駆動側回転軸線CL1回りに回転する。ロータ5bには、駆動側回転軸線CL1上に延在する駆動軸6が接続されている。駆動軸6は、駆動側スクロール部材70の第1駆動側スクロール部材71に固定された駆動軸部72dと接続されている。
【0049】
駆動軸6の前端(図1において左端)には、駆動軸6を回転可能に支持する駆動側軸受11が設けられている。駆動軸6の後端(図1において右端)、すなわち駆動側スクロール部材70に対して反対側の駆動軸6の端部には、ハウジング3との間で駆動軸6を回動可能に支持する後端軸受17が設けられている。
【0050】
駆動側スクロール部材70は、3つの駆動側スクロール部材71,72,73を備えている。これら駆動側スクロール部材71,72,73は、駆動側回転軸線CL1方向に並べられて連結されている。
【0051】
<第1駆動側スクロール部材71>
第1駆動側スクロール部材71は、第1駆動側端板71aと第1駆動側壁体71bを備えている。第1駆動側端板71aは、駆動側回転軸線CL1に対して直交する方向に延在している。第1駆動側端板71aは、平面視した場合に略円板形状とされている。第1駆動側端板71aの中央には、駆動側回転軸線CL1に沿って第1駆動側吐出口71dが形成されている。
【0052】
図2に示すように、第1駆動側端板71a上に、渦巻状とされた第1駆動側壁体71bが3つ、すなわち3条設けられている。3条とされた第1駆動側壁体71bは、駆動側回転軸線CL1回りに等間隔にて配置されている。なお、第1駆動側壁体71bの条数は、1条や2条でも良く、あるいは4条以上であっても良い。
【0053】
図1に示すように、第1駆動側壁体71bは、第1駆動側端板71aの両側に設けられている。したがって、第1駆動側スクロール部材71は、いわゆる両歯とされている。
【0054】
<第2駆動側スクロール部材72>
第1駆動側スクロール部材71のモータ5側(図1において右側)には、第2駆動側スクロール部材72が設けられている。第2駆動側スクロール部材72は、第2駆動側端板72aと第2駆動側壁体72bを備えている。第2駆動側壁体72bは、上述した第1駆動側壁体71b(図2参照)と同様に、3条とされている。なお、第2駆動側壁体72bの条数は、1条や2条でも良く、あるいは4条以上であっても良い。
【0055】
図1に示すように、第2駆動側壁体72bは、第2駆動側端板72aの片側のみに設けられている。すなわち、第2駆動側壁体72bは、第1駆動側スクロール部材71側に向けて設けられている。したがって、第2駆動側スクロール部材72は、いわゆる片歯とされている。
【0056】
第2駆動側端板72aの回転中心には、駆動側回転軸線CL1上に沿って延在する駆動軸部72dが固定されている。駆動軸部72dには、センタープレート20が一体的に設けられている。センタープレート20は、第2駆動側端板72aと平行に延在している。
【0057】
第1駆動側スクロール部材71の外部吐出口3d側(図1において左側)には、第3駆動側スクロール部材73が設けられている。第3駆動側スクロール部材73は、第3駆動側端板73aと第3駆動側壁体73bを備えている。第3駆動側壁体73bは、上述した第1駆動側壁体71b(図2参照)と同様に、3条とされている。なお、第3駆動側壁体73bの条数は、1条や2条でも良く、あるいは4条以上であっても良い。
【0058】
図1に示すように、第3駆動側壁体73bは、第3駆動側端板73aの片側のみに設けられている。すなわち、第3駆動側壁体73bは、第1駆動側スクロール部材71側に向けて設けられている。したがって、第3駆動側スクロール部材73は、いわゆる片歯とされている。
【0059】
第3駆動側端板73aには、駆動側回転軸線CL1方向に延在する第3駆動側軸部73cが接続されている。第3駆動側軸部73cは、玉軸受とされた第3駆動側軸受14を介して、ハウジング3に対して回転自在に設けられている。第3駆動側端板73aには、駆動側回転軸線CL1に沿って第3駆動側吐出口73dが形成されている。
【0060】
第3駆動側軸部73cとハウジング3との間には、第3駆動側軸受14よりも第3駆動側軸部73cの先端側(図1において左側)に、2つのシール部材26が設けられている。2つのシール部材26と第3駆動側軸受14とは駆動側回転軸線CL1方向に所定間隔を有して配置されている。2つのシール部材26の間には、例えば半固体潤滑剤であるグリースとされた潤滑剤が封入されている。なお、シール部材26は1つとしても良い。この場合、潤滑剤は、シール部材26と第3駆動側軸受14との間に封入される。
【0061】
第1駆動側スクロール部材71と第2駆動側スクロール部材72、及び、第1駆動側スクロール部材71と第3駆動側スクロール部材73とは、壁体71b,72b,73bの先端(自由端)同士が向かい合った状態で固定されている。第1駆動側スクロール部材71と第2駆動側スクロール部材72、及び、第1駆動側スクロール部材71と第3駆動側スクロール部材73との固定は、半径方向外側に突出するように円周方向において複数箇所設けたフランジ部74に対して締結されたボルト31によって行われる。
【0062】
<第1従動側スクロール部材91>
従動側スクロール部材90は、2つの従動側スクロール部材91,92を備えている。
第1従動側スクロール部材91は、第2従動側スクロール部材92に対してモータ5側(図1において右側)に配置されている。第1従動側スクロール部材は、軸方向(図において水平方向)における略中央に、第1従動側端板91aが位置している。従動側端板90aの中央には第1従動側吐出口91dが形成されており、圧縮後の空気が第1駆動側吐出口71dへ流れるようになっている。
【0063】
第1従動側端板91aの両側には、それぞれ、第1従動側壁体91bが設けられている。したがって、第1従動側スクロール部材91は、いわゆる両歯とされている。
第1従動側端板91aからモータ5側に設置された第1従動側壁体91bは、第2駆動側スクロール部材72の第2駆動側壁体72bと噛み合わされ、第1従動側端板91aから外部吐出口3d側に設置された第1従動側壁体91bは、第1駆動側スクロール部材71の第1駆動側壁体71bと噛み合わされる。
【0064】
図3に示すように、第1従動側壁体91bは、3つ、すなわち3条設けられている。3条とされた第1従動側壁体91bは、従動側回転軸線CL2回りに等間隔にて配置されている。なお、第1従動側壁体91bの条数は、1条や2条でも良く、あるいは4条以上であっても良い。
【0065】
<同期駆動機構>
第1従動側スクロール部材91のモータ5側(図1において右側)には、第1サイドプレート27が設けられている。第1サイドプレート27は、ボルト28によって第1従動側壁体91bの先端(自由端)に対して固定されている。第1サイドプレート27の回転中心には、駆動軸部72dを貫通させるための第1サイドプレート用孔部27hが形成されている。
【0066】
第1サイドプレート27のモータ5側には、所定間隔を有して、第2サイドプレート30が設けられている。第2サイドプレート30は、ボルト34によって第1サイドプレート27に対して固定されている。第2サイドプレート30の回転中心には、駆動軸部72dを貫通させるための第2サイドプレート用孔部30hが形成されている。
【0067】
第2サイドプレート30の中心軸側には、第2サイドプレート用軸部30aが設けられており、この第2サイドプレート用軸部30aがアンギュラ玉軸受とされた第2サイドプレート用軸受32を介してハウジング3に対して固定されている。これにより、第2サイドプレート30及び第1サイドプレート27を介して、従動側スクロール部材90が従動側回転軸線CL2回りに回転するようになっている。
【0068】
第1サイドプレート27と第2サイドプレート30とセンタープレート20とによって、液密とされた密閉空間が形成されている。この密閉空間内にピン15とピン用軸受18とが収容されるようになっている。
【0069】
ピン15の両端は、第1サイドプレート27及び第2サイドプレート30に対して固定されている。ピン15は、センタープレート20に設けられた転がり軸受(例えばニードル軸受)とされたピン用軸受18の内周側に挿通されている。ピン用軸受18には、グリース等の潤滑剤が封入されている。なお、ピン用軸受18を省略し、センタープレート20に形成された貫通孔にピン15を挿通させる構成としても良い。
【0070】
ピン15及びピン用軸受18は、駆動側スクロール部材70と従動側スクロール部材90が同期して公転旋回運動するように駆動軸部72dから従動側スクロール部材90に駆動力を伝達する同期駆動機構として用いられる。
ピン15を備えた同期駆動機構は、好ましくは複数設けられ、例えば、駆動側回転軸線CL1回りに等角度間隔で3つ設けられる。
【0071】
<第2従動側スクロール部材92>
第2従動側スクロール部材92は、第1従動側スクロール部材91に対して外部吐出口3d側(図1において左側)に配置されている。第1従動側スクロール部材91と第2従動側スクロール部材92とは、従動側回転軸線CL2方向に向かい合わせた状態で、図示しないボルト等によって互いに固定されている。
【0072】
第2従動側スクロール部材92は、軸方向(図において水平方向)における略中央に、第2従動側端板92aが位置している。第2従動側端板92aの中央には第2従動側吐出口92dが形成されており、圧縮後の空気が第3駆動側吐出口73dへ流れるようになっている。
【0073】
第2従動側端板92aの両側には、それぞれ、第2従動側壁体92bが設けられている。したがって、第2従動側スクロール部材92は、いわゆる両歯とされている。
第2従動側端板92aからモータ5側に設置された第2従動側壁体92bは、第1駆動側スクロール部材71の第1駆動側壁体71bと噛み合わされ、第2従動側端板92aから外部吐出口3d側に設置された第2従動側壁体92bは、第3駆動側スクロール部材73の第3駆動側壁体73bと噛み合わされる。
【0074】
第2従動側壁体92bは、第1従動側壁体91bと同様に、3つ、すなわち3条設けられている(図3参照)。3条とされた第2従動側壁体92bは、従動側回転軸線CL2回りに等間隔にて配置されている。なお、第2従動側壁体92bの条数は、1条や2条でも良く、あるいは4条以上であっても良い。
【0075】
第2従動側スクロール部材92の外部吐出口3d側(図1において左側)には、サポート部材33が設けられている。サポート部材33は、ボルト25によって第2従動側壁体92bの先端に対して固定されている。
【0076】
サポート部材33の中心軸側には、サポート部材用軸部35aが設けられており、このサポート部材用軸部35aが玉軸受とされた第2サポート部材用軸受38を介してハウジング3に対して固定されている。これにより、サポート部材33を介して、従動側スクロール部材90が従動側回転軸線CL2回りに回転するようになっている。
【0077】
上記構成の両回転スクロール型圧縮機1は、以下のように動作する。
モータ5によって駆動軸6が駆動側回転軸線CL1回りに回転させられると、駆動軸6に接続された駆動軸部72dを介して駆動側スクロール部材70と共にセンタープレート20も駆動側軸線CL1回りに回転する。センタープレート20の回転によって、センタープレート20に伝達された駆動力は、同期駆動機構としてのピン15を介して第1サイドプレート27及び第2サイドプレート30から従動側スクロール部材90へと伝達され、従動側スクロール部材90が従動側回転軸線CL2回りに回転する。これにより、両スクロール部材70,90が相対的に公転旋回運動を行う。
【0078】
両スクロール部材70,90が公転旋回運動を行うと、ハウジング3の吸入口から吸い込まれた空気が両スクロール部材70,90の外周側から吸入され、両スクロール部材70,90によって形成された圧縮室に取り込まれる。そして、第1従動側スクロール部材91の両側に形成された圧縮室と、第2従動側スクロール部材92の両側に形成された圧縮室とで別々に圧縮される。それぞれの圧縮室は中心側に移動するにしたがって容積が減少し、これに伴い空気が圧縮される。第1従動側壁体91bと第2駆動側壁体72bとによって圧縮された空気は、第1従動側吐出口91dを通り、第1従動側壁体91bと第1駆動側壁体71bとによって圧縮された空気と合流し、合流後の空気が第1駆動側吐出口71dへ向かう。その後、第1駆動側壁体71bと第2従動側壁体92bとによって圧縮された空気と合流し、第2従動側吐出口92dへと向かい、第2従動側壁体92bと第3駆動側壁体73bとによって圧縮された空気と合流し、第3駆動側吐出口73dへと流れて最終的に外部吐出口3dから両回転スクロール型圧縮機1の外部へと吐出される。
【0079】
<第1実施形態の作用効果>
2つ以上(本実施形態では3つ)の両歯のスクロール部材71,91,92を用いることによって、それぞれの端板71a,91a,92aの両側に3つ以上(本実施形態では4つ)の圧縮空間を形成することができる。これにより、大流量化を実現することができる。
なお、両歯とされたスクロール部材の数は2つであってもよく、また4つ以上であっても良い。
【0080】
<第1実施形態の変形例>
図4に示すように、第1従動側吐出口91dと、第1駆動側吐出口71dと、第2従動側吐出口92dの流路断面積を変化させても良い。具体的には、最終吐出口である外部吐出口3dに対して上流側の方が下流側よりも小さい断面積を有するように構成する。例えば、各吐出口の形状が円形とされ、第1従動側吐出口91dの直径をd3、第1駆動側吐出口71dの直径をd2、第2従動側吐出口92dの直径をd1とした場合、
d3<d<d1
の関係を有するように流路断面積を決定する。
【0081】
本変形例の作用効果は以下の通りである。
各圧縮室で圧縮された空気は、合流した後に外部吐出口3dから両回転スクロール型圧縮機1の外部へと吐出される。上流側の吐出口は、空気が合流した後の下流側の吐出口よりも流量が少ないので、チョークが生じる可能性が低いため、下流側よりも上流側の吐出口の流路断面積を小さくすることができる。そこで、d3<d<d1の関係として、外部吐出口3dに対して上流側の方を下流側よりも流路断面積を小さくした。
また、上流側の吐出口の流路断面積を小さくすることで、流路断面積が大きい場合に比べて壁体91bを第1従動側吐出口91dに近づけて内周側まで形成できるので、圧力比を増加させることができる。
【0082】
[第2実施形態]
本開示の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付しその説明を省略する。
図5に示すように、ハウジング3の仕切壁部3eには、貫通穴とされた均圧穴3hが形成されている。均圧穴3hは、1つでも2つ以上でも良い。均圧穴3hは、モータ収容部3a内の駆動部側空間と、スクロール収容部3b内の圧縮部側空間とを均圧する。仕切壁部3eには、駆動側軸受11を設置する穴以外に貫通孔は形成されていない。
【0083】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
駆動部側空間と圧縮部側空間とは仕切壁部3eによって仕切られている。圧縮部側空間を形成するスクロール収容部3bは、圧縮前の気体を吸入する吸入部(図示せず)を備えているので、内部が周囲圧力(例えば大気圧)よりも低くなる場合がある。このため、周囲圧力とされているスクロール収容部3b内の駆動部側空間と圧縮部側空間との間で圧力差が生じるおそれがある。このような圧力差が生じると、駆動軸部72dを支持する駆動側軸受11に用いられる潤滑剤が低圧側である圧縮部空間に漏れ出して潤滑不良を起こすおそれがある。本実施形態では、仕切壁部3eに均圧穴3hを形成することとしたので、駆動部側空間と圧縮部側空間との間で圧力差を低減し、駆動側軸受11の潤滑不良を抑制することができる。
【0084】
なお、仕切壁部3eに均圧穴3hを形成する構成は、本実施形態のような両歯のスクロール部材71,91,92が3つとされた両回転スクロール型圧縮機1に用いることができるだけでなく、片歯のスクロール部材のみで構成された両回転スクロール型圧縮機でも、1つの両歯のスクロール部材と2つの片歯のスクロール部材とを組み合わせた両回転スクロール型圧縮機でも適用することができる。すなわち、駆動側スクロール部材と従動側スクロール部材とを備えた両回転スクロール型圧縮機に適用できるものである。
【0085】
[第3実施形態]
本開示の第3実施形態について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態では両歯のスクロール部材71,91,92が3つだったのに対して両歯のスクロール部材が1つである点で相違する。また、駆動軸部72dから動力を各スクロール部材に伝達する機構が相違する。その他の点は同様なので、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付しその説明を省略する。
また、本実施形態は、図1に示した両回転スクロール型圧縮機1にも適用できるものである。
【0086】
図6に示すように、本実施形態の両回転スクロール型圧縮機1Aは、第1実施形態の第1駆動側スクロール部材71が省略され、片歯の第2駆動側スクロール部材72と片歯の第3駆動側スクロール部材73によって駆動側スクロール部材70が構成されている。また、従動側スクロール部材90は、両歯とされた1つの第1従動側スクロール部材91のみで構成されている。
【0087】
第2駆動側端板72aには、駆動側プレート37が接続されている。駆動側プレート37は、第2駆動側端板72aと平行に延在している。駆動側プレート37は、外周端に設けられた固定部37aによって、第3駆動側端板73aの外周部に接続されている。固定部37aは、駆動側回転軸線CL1と平行に延在する筒形状とされている。固定部37aには、貫通穴が形成されており、この貫通穴にボルト37bを挿入することによって第2駆動側端板72aに対して固定されている。
【0088】
駆動側プレート37の中央には、軸部37cが設けられている。軸部37cは、円筒形状とされており、内周側がセンタープレート20の駆動軸部72dの外周側に対して固定されている。軸部37cの中心軸線は、駆動側回転軸線CL1とされている。これにより、駆動側プレート37の軸部37cが駆動軸部72dに対して固定されることになる。軸部37cと駆動軸部72dとの接続は、セレーションや焼きばめ、ボルト、キー等によって行われる。
【0089】
第1サイドプレート27と第2サイドプレート30とによって囲まれた空間に、センタープレート20が収納されている。
【0090】
第2サイドプレート30の中央側には、シール部材としてOリング36が設けられている。Oリング36は、センタープレート20の端面との間でシールするように設けられている。Oリング36によって、第1サイドプレート27と第2サイドプレート30との間に形成された収容空間内でピン用軸受18の潤滑剤を封入するようになっている。
【0091】
第2サイドプレート30の中央には、モータ5側に向かって従動側回転軸線CL2と平行に突出する分割軸部30eが設けられている。分割軸部30eの先端は、ハウジング3に設けられたサイドプレート軸受39に軸支されている。これにより、第2サイドプレート30及び第1サイドプレート27を介して、従動側スクロール部材90が従動側回転軸線CL2回りに回転するようになっている。分割軸部30eは、周方向に分割された軸部となっており、周方向に等間隔に離間して例えば3つ設けられている。
【0092】
第1サイドプレート27とセンタープレート20との間でかつ回転軸線CL1,CL2が位置する中央側の領域には、潤滑剤を収容する潤滑剤用空間部が設けられている。具体的には、第1サイドプレート27の中央部に凹所となるように第1サイドプレート溝部27cが形成されている。また、センタープレート20の中央部に凹所となるようにセンタープレート溝部20cが形成されている。これら溝部27c,20cは開口側が向かい合うように形成されている。なお、一方の溝部27c,20cのみを採用しても良い。
【0093】
本実施形態による作用効果は以下の通りである。
第1サイドプレート27、第2サイドプレート30及びセンタープレート20によって密閉された内部空間が形成され、この内部空間内にピン15及びピン用軸受18の同期駆動部が設けられている。センタープレート20は、密閉空間を形成するために第1サイドプレート27に対して摺動状態で接触するので、潤滑剤が供給される。第1サイドプレート27とセンタープレート20との間でかつ回転軸線CL1,CL2側の領域に、潤滑剤を収容する潤滑剤用空間部として溝部27c、20cが設けられている。これにより、センタープレート20が駆動側回転軸線CL1回りに回転して遠心力によって潤滑剤が半径方向外側に流動したとしても、潤滑剤不足となることを抑制することができる。
【0094】
[第3実施形態の変形例]
図7に示すように、本実施形態は以下のように変形することができる。
図7は、センタープレート20をセンタープレート溝部20c側から平面視したものである。同図に示されているように、中央に形成されたセンタープレート溝部20cから半径方向外側に向かって放射状溝部(潤滑剤導入流路)20dが複数形成されている。各放射状溝部20dは、回転方向に対して迎え角を有するように傾斜して設けられている。これにより、回転を利用して潤滑剤が外周側から中央側へと導かれるようになっている。
【0095】
放射状溝部20dによって第1サイドプレート27とセンタープレート20との間に存在する潤滑剤を中央のセンタープレート溝部20cに導くこととしたので、中央側で潤滑剤不足となることを更に抑制することができる。
なお、放射状溝部20dと同様の構成を第1サイドプレート27に設け、両側のプレート27,20に放射状溝部を設けても良い。あるいは、一方のプレート27,20のみに放射状溝部を設けても良い。
【0096】
[第4実施形態]
本開示の第実施形態について説明する。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付しその説明を省略する。
図8には、図2の切断線A-Aにおける断面が示されている。図8は、第1駆動側壁体71bの高さ方向先端における拡大図である。第1駆動側壁体71bの高さ方向先端には、チップシール(図示せず)を収容するためのチップシール溝72cが形成されている。図8に示されているように、チップシール溝72cの横断面は、底部が狭くかつ開口側が広くなる形状となっている。具体的には、駆動側回転軸線CL1を中心とした半径方向外側壁面が先端側に向けて半径方向外側に傾斜するように第1傾斜壁部71c1が設けられ、半径方向内側壁面が先端側に向けて半径方向内側に傾斜するように第2傾斜壁部71c2が設けられている。第1傾斜壁部71c1と第2傾斜壁部71c2の傾斜角度は対称となる角度とされている。
【0097】
第1傾斜壁部71c1を設けることによって、遠心力を受けたチップシールは第1傾斜壁部71c1に沿って先端側すなわち対向する端板側に移動することになる。これにより、チップシールのシール性能を向上させることができる。特に、両回転スクロール型圧縮機1の圧力比が小さい場合には、チップシールを浮上させる力が十分に得られないので有効である。
【0098】
また、第1傾斜壁部71c1と対称に第2傾斜壁部71c2を設けることとしたので、チップシール溝の加工性が向上する。
なお、第2傾斜壁部71c2を傾斜させずに略垂直に立設する壁部としても良い。
【0099】
図9には、図2の切断線B-Bにおける断面が示されている。図9は、第1駆動側壁体71bの高さ方向先端における拡大図である。図9に示すように、チップシール溝71cの周方向外方の先端には、第1駆動側壁体71bの高さ方向先端側に向かって周方向外方側の先端に向かって傾斜する第3傾斜壁部71c3が設けられている。
【0100】
第1駆動側スクロール部材71が回転すると、チップシールは周方向外方に向かって移動する。この動きを利用して、第3傾斜壁部71c3に沿ってチップシールを端板側に移動させることができる。これにより、チップシールのシール性能を向上させることができる。
【0101】
なお、本実施形態は、傾斜壁部71c1,71c2,71c3について、第1駆動側壁体71bに設けることとしたが、他の駆動側スクロール部材72,73や従動側スクロール部材91,92の壁体に設けても良い。
また、傾斜壁部71c1,71c2,71c3は、本実施形態のような両歯のスクロール部材71,91,92が3つとされた両回転スクロール型圧縮機1に用いることができるだけでなく、片歯のスクロール部材のみで構成された両回転スクロール型圧縮機でも、1つの両歯のスクロール部材と2つの片歯のスクロール部材とを組み合わせた両回転スクロール型圧縮機でも適用することができる。すなわち、駆動側スクロール部材と従動側スクロール部材とを備えた両回転スクロール型圧縮機に適用できるものである。
【0102】
[第5実施形態]
本開示の第5実施形態について説明する。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付しその説明を省略する。
図10には、第1駆動側スクロール部材71の平面図が示されている。第1駆動側壁体71bの巻終わり部分に、外周面から半径方向外側に突出するフランジ部(突出部)74が設けられている。フランジ部74は、図1に示したように、駆動側スクロール部材71,72,73同士を締結する際に用いられる。そのため、ボルト締結用の孔部74aが設けられている。また、フランジ部74は、位置決め用の孔部を備えていても良い。
【0103】
フランジ部74の周方向外方側には、半径方向外側に突出するとともに駆動側回転軸線CL1上に中心を有する円弧部75aが設けられている。円弧部75aは、第1駆動側端板71aが外周方向に延長して形成された形状となっている。円弧部75aは、各壁体71bの巻終わり部分に設けられている。すなわち、本実施形態では120°の角度間隔を空けて3つ設けられている。
【0104】
フランジ部74よりも周方向内方には、周方向に隣り合う壁体71bまで端板71aに相当する突出部は設けられていない。したがって、この領域では壁体71bの外周面がスクロール部材71の外形を構成するようになっている。これにより、スクロール部材71の小型化が図られている。
【0105】
円弧部75aは、端板の中心位置である駆動側回転軸線CL1上に中心を有する円弧形状とされているので、第1駆動側スクロール部材71を加工する際に工作機械のチャックで掴んだ場合に容易にかつ正確に位置決めすることができ、加工性を向上させることができる。
【0106】
また、図11に示すように、フランジ部74の周方向内方側に円弧部75bを設けても良い。これにより、第1駆動側スクロール部材71が回転したときの慣性力を可及的に低減することができる。
【0107】
円弧部75bよりも周方向内方には、周方向に隣り合う壁体71bまで端板71aに相当する突出部は設けられていない。したがって、この領域では壁体71bの外周面がスクロール部材71の外形を構成するようになっている。これにより、スクロール部材71の小型化が図られている。
【0108】
また、図12に示すように、第1駆動側壁体71bの周方向における巻終わり位置に対して半径方向内側に位置する第1駆動側壁体71bの周方向外方側部分に、円弧部75cを設けても良い。円弧部75cよりも周方向外方側には、端板71aに相当する突出部は存在しておらず、第1駆動側壁体71bの外周面がスクロール部材71の外形を構成している。図12の位置に円弧部75cを設けたことにより、円弧部75cの端板中心からの距離を図10の円弧部75aや図11の円弧部75bよりも小さくできるので、円弧部75の回転慣性力を小さくすることができる。
【0109】
なお、上述した円弧部75a,75b,75cは、第1駆動側スクロール部材71に適用するだけでなく、他のスクロール部材72,73,91,92に適用しても良い。
また、円弧部75a,75b,75cは、本実施形態のような両歯のスクロール部材71,91,92が3つとされた両回転スクロール型圧縮機1に用いることができるだけでなく、片歯のスクロール部材のみで構成された両回転スクロール型圧縮機でも、1つの両歯のスクロール部材と2つの片歯のスクロール部材とを組み合わせた両回転スクロール型圧縮機でも適用することができる。すなわち、駆動側スクロール部材と従動側スクロール部材とを備えた両回転スクロール型圧縮機に適用できるものである。
【0110】
[第6実施形態]
本開示の第6実施形態について説明する。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付しその説明を省略する。
図13には、第1駆動側スクロール部材71が示されている。第1駆動側壁体71bの周方向における巻終わり位置に対して半径方向内側に位置する第1駆動側壁体71bの周方向外方側部分に、半径方向外側に突出する端板延長部76が設けられている。端板延長部76は、吸入締切り時に最外周の端板部分として用いられる。端板延長部76は、対向する壁体72b,73bの厚さよりも小さい半径方向寸法とされた小突出部分76aを有している。
【0111】
端板延長部76とフランジ部74との間には、端板71aに相当する突出部は設けられていない。したがって、この領域では壁体71bの外周面がスクロール部材71の外形を構成するようになっている。
【0112】
図14に示すように、壁体72b,73bの高さ方向先端に対向する小突出部分76aの対向面76bには、アブレーダブルコーティングが施されている。アブレーダブルコーティングとしては、エポキシ系やテフロン(登録商標)等の樹脂が用いられる。
【0113】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
端板延長部76は、壁体72b,73bの高さ方向先端に対向する。このとき、端板延長部76に対向する壁体72b,73bの厚さよりも小さい半径方向寸法とされた小突出部分76aが設けられていると、対向する壁体72b,73bの高さ方向先端が小突出部分76aからはみ出てしまう(図14参照)ので、対向する壁体72b,73bの高さ方向先端にチップシールを設けることができない。そこで、壁体72b,73bに対向する小突出部分76aの対向面76bにアブレーダブルコーティングを施すこととした。これにより、小突出部分76aと壁体72b,73bの高さ方向先端との隙間寸法を可及的に小さくすることができ、シール性能を向上させることができる。
【0114】
なお、小突出部分76aに対向する第1駆動側壁体71bの高さ方向先端の面にアブレーダブルコーティングを施すこととしても良い。
また、上述したアブレーダブルコーティングは、第1駆動側スクロール部材71に適用するだけでなく、他のスクロール部材72,73,91,92に適用しても良い。
また、アブレーダブルコーティングは、本実施形態のような両歯のスクロール部材71,91,92が3つとされた両回転スクロール型圧縮機1に用いることができるだけでなく、片歯のスクロール部材のみで構成された両回転スクロール型圧縮機でも、1つの両歯のスクロール部材と2つの片歯のスクロール部材とを組み合わせた両回転スクロール型圧縮機でも適用することができる。すなわち、駆動側スクロール部材と従動側スクロール部材とを備えた両回転スクロール型圧縮機に適用できるものである。
【0115】
[第7実施形態]
本開示の第7実施形態について説明する。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付しその説明を省略する。
図1を用いて説明したように、第1駆動側スクロール部材71と第2駆動側スクロール部材72には、互いの壁体71b,72bの高さ方向先端を向かい合わせた状態で締結するフランジ部(締結部)74が設けられている。
【0116】
図15には、第1駆動側スクロール部材71と第2駆動側スクロール部材72との接続構造が拡大して示されている。同図から分かるように、第1駆動側スクロール部材71の第1駆動側壁体71bの高さ方向先端とフランジ部74の高さ方向先端とが同一高さHとされている。
【0117】
一方、第2駆動側スクロール部材72のフランジ部74は、第1駆動側スクロール部材71のフランジ部74に接触するように高さが第2駆動側壁体72bよりも高さが高い形状となっている。
【0118】
第1駆動側スクロール部材71は、両歯とされているので、第3駆動側スクロール部材73(図1参照)に対向するフランジ部74(図15において左側のフランジ部74)についても、第1駆動側壁体71bの高さと同一とすることが好ましい。
【0119】
第1駆動側壁体71bの高さ方向先端とフランジ部74の高さ方向先端とが同一高さHとされているので、加工の際に高さ方向の位置を変化させる必要がないので、加工時間を短縮化することができる。
【0120】
なお、本実施形態では、駆動側スクロール部材71,72,73の締結構造について説明したが、従動側スクロール部材91,92を締結するフランジ部にも用いることができる。
【符号の説明】
【0121】
1,1A 両回転スクロール型圧縮機
3 ハウジング
3a モータ収容部
3b スクロール収容部
3d 外部吐出口
3e 仕切壁部
3h 均圧穴
5 モータ(駆動部)
5a ステータ
5b ロータ
6 駆動軸
11 駆動側軸受
14 第3駆動側軸受
15 ピン(同期駆動機構)
18 ピン用軸受(同期駆動機構)
20 センタープレート
20c センタープレート溝部(潤滑剤用空間部)
20d 放射状溝部(潤滑剤導入流路)
25 ボルト
26 シール部材
27 第1サイドプレート
27c 第1サイドプレート溝部(潤滑剤用空間部)
27h 第1サイドプレート用孔部
28 ボルト
30 第2サイドプレート
30a 第2サイドプレート用軸部
30e 分割軸部
30h 第2サイドプレート用孔部
31 ボルト
32 第2サイドプレート用軸受
33 サポート部材
36 Oリング
37 駆動側プレート
37a 固定部
37b ボルト
37c 軸部
38 第2サポート部材用軸受
39 サイドプレート軸受
70 駆動側スクロール部材
71 第1駆動側スクロール部材
71a 第1駆動側端板
71b 第1駆動側壁体
71c チップシール溝
71c1 第1傾斜壁部
71c2 第2傾斜壁部
71c3 第3傾斜壁部
71d 第1駆動側吐出口
72 第2駆動側スクロール部材
72a 第2駆動側端板
72b 第2駆動側壁体
72d 駆動軸部
73 第3駆動側スクロール部材
73a 第3駆動側端板
73b 第3駆動側壁体
73c 第3駆動側軸部
73d 第3駆動側吐出口
74 フランジ部(突出部,締結部)
74a 孔部
75a,75b,75c 円弧部
76 端板延長部
76a 小突出部分
76b 対向面
90 従動側スクロール部材
91 第1従動側スクロール部材
91a 第1従動側端板
91b 第1従動側壁体
92 第2従動側スクロール部材
92a 第2従動側端板
92b 第2従動側壁体
CL1 駆動側回転軸線
CL2 従動側回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15