(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】改善された反応性ポリウレタン系
(51)【国際特許分類】
C08G 18/08 20060101AFI20220920BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20220920BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20220920BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20220920BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20220920BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20220920BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20220920BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20220920BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20220920BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20220920BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
C08G18/08 042
C08K5/103
C08L75/04
C08G18/76 057
C08G18/48
C08G18/42
C08G18/32 006
C08G18/66 007
C09J175/06
C09J175/08
C09K3/10 Z
(21)【出願番号】P 2020572655
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 US2019039918
(87)【国際公開番号】W WO2020006473
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-02-25
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512116941
【氏名又は名称】エメラルド・カラマ・ケミカル・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Emerald Kalama Chemical,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクブライド、エミリー
(72)【発明者】
【氏名】ボーン-ビージ、ジュリー・オー
(72)【発明者】
【氏名】バット、ジェイソン・アール
(72)【発明者】
【氏名】ポセルト、カイル・ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】アレント、ウィリアム・ディー
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-251445(JP,A)
【文献】特開平08-319414(JP,A)
【文献】国際公開第2015/079728(WO,A1)
【文献】特開昭60-026056(JP,A)
【文献】特開2008-144166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0014830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/08
C08K 5/103
C08L 75/04
C08G 18/76
C08G 18/48
C08G 18/42
C08G 18/32
C08G 18/66
C09J 175/06
C09J 175/08
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネートとポリオールの反応から調製された反応性ポリウレタン組成物中のジベンゾエート可塑剤の使用であって、
前記ジベンゾエート可塑剤は、ASTM E22
2法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなり、
および
前記ジベンゾ
エート可塑剤は、前記イソシアネートと前記ポリオールがポリウレタンポリマーを生成するために一緒に混合されるのと同時に、またはそれに近い時点でポリウレタン組成物に添加さ
れる、該使用。
【請求項2】
前記1,2-プロピレングリコールジベンゾエートが、0.1%未満の低酸度、0.1%未満の含水率、および1%未満のハーフエステル含量を有する、請求項1に記載のジベンゾエート可塑剤の使用。
【請求項3】
前記1,2-プロピレングリコールジベンゾエートが、ASTM E222の方法で測定したときに1mg/KOH/g未満のヒドロキシル価を有する、請求項1に記載のジベンゾエート可塑剤の使用。
【請求項4】
前記1,2-プロピレングリコールジベンゾエートが、ASTM E189
9の方法で測定したときのヒドロキシル価が3mg/KOH/g以下のヒドロキシル価を有する、請求項1に記載のジベンゾエート可塑剤の使用。
【請求項5】
a.熱可塑性ポリウレタンと
b
.低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤と、
を含
み、
前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤は、ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなる反応性熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項6】
前記ジベンゾエート可塑剤が、前記熱可塑性ポリウレタン組成物の重量に基づいて
、5wt%か
ら50wt%までの範囲の量で存在する、請求項5に記載の反応性熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項7】
低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を含
み、
前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤は、ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなる反応性ポリウレタン接着剤。
【請求項8】
低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を含
み、
前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤は、ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなる反応性ポリウレタンシーラント。
【請求項9】
低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を含
み、
前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤は、ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなる熱硬化性ポリウレタン物品。
【請求項10】
ジベンゾエート可塑剤を反応性ポリウレタン配合物
に製造
中に添加する工程を含
み、
前記ジベンゾエート可塑剤は、ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなるポリウレタン組成物の黄変防止方法。
【請求項11】
a.イソシアネート;
b.ポリオール;
c.ジオール;
d.
ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなる低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤;および
e.安定剤
を含む熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項12】
前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤が、前記熱可塑性ポリウレタン組成物の総重量に基づいて
、5wt%か
ら80wt%までの範囲の量で存在する、請求項11に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項13】
前記イソシアネートがメチレンジフェニルジイソシアネートであるジイソシアネートであり、および
前記ジオールがブタンジオールであり;および
前記ポリオールがポリエステルまたはポリエーテルである請求項11に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項14】
a.ポリウレタンポリマー;および
b
.低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤
を含
み、前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤は、ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなる接着剤。
【請求項15】
a.ポリウレタンポリマー;および
b
.低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤
を含
み、前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤は、ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなるシーラント。
【請求項16】
a.ポリウレタンポリマー;および
b
.低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤
を含
み、前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤は、ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなる反応性熱硬化性ポリウレタン。
【請求項17】
請求項5、6、11、12、および13のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物を含む製品であって、前記製品が履物、ハンドバッグ、または荷物である、該製品。
【請求項18】
低ヒドロキシルジベンゾエー
ト可塑剤を含
み、
前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤は、ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなる1Kポリウレタン接着剤またはシーラント。
【請求項19】
低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を含
み、
前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤は、ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなる2Kポリウレタン接着剤またはシーラント。
【請求項20】
a.ポリウレタン組成物中において従来の可塑剤の代わりに
、低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を用いる工程
であって、前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤は、ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなる工程、および
b.前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤をイソシアネートとポリオールがポリウレタンポリマーを生成するために混合されるのと同時に、またはそれに近い時点で含み入れる工程
を含む、ポリウレタン組成物における従来の可塑剤の使用に関連した黄変を低減または除去する方法。
【請求項21】
a.ポリウレタン組成物
中において従来の可塑剤の代わりに
、低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を使用する工程
であって、前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤は、ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなる工程、および
b.前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を、イソシアネートとポリオールがポリウレタンポリマーを生成するために混合されるのと同時に、またはそれに近い時点で含み入れる工程
を含む、ポリウレタン組成物から作られた製品の特性を改善する方法。
【請求項22】
a.イソシアネート;
b.ジオール;
c.ポリオール;
d.安定剤;および
e.前記イソシアネートと前記ポリオールとの反応により生成したポリウレタンポリマー100部に基づいて、20phrから60phrまでの範囲の量で存在す
る低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤
を含み、
前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤は、ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなり、
各成分は、ポリマー生成工程において、前記イソシアネート成分と前記ポリオール成分が反応してポリウレタンポリマーを生成する時点と同時に、またはそれ
に近い時点で配合す
る反応性ポリウレタン組成物。
【請求項23】
a.イソシアネート;
b.ジオール;
c.ポリオール;
d.安定剤;および
e
.低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤
を含み、
前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤は、ASTM E222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなり、
各成分は、ポリマー生成工程において、前記イソシアネート成分と前記ポリオール成分が反応してポリウレタンポリマーを生成する時点と同時に、またはそれ
に近い時点で配合す
る反応性ポリウレタン系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性ポリウレタン系において一般的に使用されているさまざまな他の可塑剤よりも改善された、または同等の相溶性、加工性、色および光学的透明度を達成する可塑剤を含む反応性ポリウレタン配合物を対象とする。特に、本発明は、反応性熱可塑性ポリウレタンおよび熱硬化性ポリウレタン系に使用されている従来の可塑剤と比較して、より低いヒドロキシル価を有する特定のジベンゾエート可塑剤の使用を対象とする
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、構造中にウレタン基を含む有機ポリマーである。典型的には、ポリウレタン組成物は、イソシアネート(-NCO基)とポリオール(2以上の数の-OH基を有するアルコール)との反応によって製造される。ポリウレタンを調製する際には、過剰のイソシアネートが使用されることがあり、その結果、反応性イソシアネート基を有するポリウレタンが得られる。このように、ポリウレタンはまた、過剰のイソシアネート基とアミンおよび水との反応の結果として生じる尿素基を含み得る。ポリウレタンを生成するために利用できる原料の種類が豊富であるため、ポリウレタンは特定の個々の用途に十分に適しており、またそれに合わせて調整することができる。このように、ポリウレタンは、多くの用途に有用な汎用性の高いポリマー組成物としてよく知られている。
【0003】
ポリウレタンは熱可塑性または熱硬化性であり得る。熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、完全に熱可塑性であるポリウレタンエラストマーの一種である。それらは、弾性であり、溶融加工可能である。TPUの構造は、使用中に柔軟性を提供し、かつTPUが硬質ゴムおよび軟質エンジニアリング熱可塑性樹脂の両方として使用されることを可能にする独特な特性をもたらす。TPUは熱されたときに柔らかく、冷却されたときに、硬く、構造的な完全性を失わずに再処理し得る。TPUは、プラスチックとして、および他のポリマー組成物におけるゴム添加物の代替としてそれ自身で使用される。TPUは、限定されないが、特に、射出、ブローおよび圧縮成形、押出し、カレンダー加工、注型、ラミネート加工並びに混合を含む広い範囲の加工技術に使用することができる。それらは殺菌され、溶接され、着色され、塗られ、印刷され、型抜きされ、そしてスリットされ得る。
【0004】
TPUは、強度、弾性、および油、グリース、溶剤、化学物質、摩耗に抵抗する能力で知られている。TPUの特性は、配合物中に他の添加物を含むことによって調節することができる。TPUは、低温柔軟性を示し、等級によって、生体適合性、加水分解安定性、光学的透明度、難燃性および帯電防止特性を示し得る。
【0005】
対照的に、熱硬化性ポリウレタンは、溶融して再形成することができず、一般的にTPUよりも強く、かつ耐久性に優れる。熱硬化性ポリウレタンは、TPUでは達成できない特性を生み出すために、様々な方法で配合され、適用され、処理され得る。熱硬化性ポリウレタンは、不溶性ポリマー網目構造に不可逆的に硬化される。熱硬化性ポリウレタンの用途は、保護コーティング、シームレスフローリング、エンジニアリングコンパウンド、モルタル、接着剤、シーラント、注型物、ポッティング、電気絶縁、カプセル化、固体発泡体、ラミネートなどを含む。熱硬化性樹脂の具体的な成形方法は、反応性射出成形、押出成形、圧縮成形、回転注型などを含む。
【0006】
熱可塑性ポリウレタンおよび熱硬化性ポリウレタンの両方を反応性ポリウレタン系に使用することができる。本発明で使用される「反応性」ポリウレタン系とは、添加成分をポリウレタンポリマーが完全に生成したときに添加するのとは対照的に、イソシアネート成分およびポリオール成分が反応する時点と同時に、または非常に近い時点で、ポリマー生成工程に含めるか、または配合する系を意味する。
【0007】
上述したように、熱可塑性ポリウレタンも熱硬化性ポリウレタンも、イソシアネートと1種以上のポリオールとの反応によって生成されるプラスチック化合物である。TPUはハードセグメントとソフトセグメントからなる直鎖状のブロック共重合体であり、熱硬化性ポリウレタンと同様に様々な化学分野に利用可能である。用途や達成すべき特性に応じて、製造の基本成分であるイソシアネートおよび/またはポリオールの種類や量を変えることで、各セグメントの化学的性質を変化させ得る。ハードおよびソフトセグメントの割合は、広い範囲の硬度を生成するために操作することができる。一般に、ソフトセグメントに対するハードセグメントの比率が大きいほど、ポリウレタンの硬度が高くなる。ポリウレタン系はまた、配合物および最終製品の特性を改善するために可塑剤を含むことができる。
【0008】
ポリウレタン組成物に使用するために、当技術分野で知られている多くの可塑剤がある。可塑剤は、その性質上、ポリマー組成物を軟化させる。ポリウレタンコンパウンドにおいて、可塑剤は、硬度を低下させることができ、結果としてより低い引張強度、より低いモジュラス値、低下した引き裂き強度、および改善された伸びをもたらす。可塑剤を選択的に添加することで、単一のポリウレタン組成物に様々な用途を可能にする。
【0009】
ポリウレタン配合物に使用するために選択される可塑剤は、ポリウレタンと相溶性があり、製品内に残存し、加工中に揮発したり、滲み出したり移行したりして失われてはならない。典型的には、軟化により耐摩耗性が低下する可能性があるが、理想的には、とりわけ耐摩耗性およびエラストマー特性などのポリウレタンの機械的特性は、可塑剤の使用によって負に変化してはならない。また、使用するために選択された可塑剤は、熱曝露や紫外線劣化によるポリウレタン製品の黄変を助長してはならない。TPUおよびSG(センシティブグレード)可塑剤を含むが、これらに限定されない様々なポリウレタン可塑剤が利用可能である。
【0010】
ポリウレタンに使用するための多くの相溶性のある可塑剤の化学物質が、当技術分野に存在する。ポリウレタンに使用するための従来の可塑剤には、フタレート、リン酸エステル、フェノールのアルキルスルホン酸エステル、ベンゾエートなどがある。他の多くのジベンゾエートが長年にわたって利用可能であるが、ベンゾエートのうち、ジプロピレングリコールジベンゾエート(DPGDB)は、当業界では長い間好まれてきた。これらの従来の可塑剤には欠点がないわけではない。例えば、ある種のフタレートは、現在、規制当局の監視下に置かれている。用途によっては、これらの従来の可塑剤は必要な柔らかさを得られなかったり、加工中に揮発したり、および/または最終製品から滲み出たり、または移行したりすることがある。また、フォギングや変色も問題となっている。そのため、従来の可塑剤で発生していた変色や滲み出しなどの問題を回避しつつ、同等または改善された性能と相溶性を提供するポリウレタン組成物に使用するための可塑剤を特定するための努力がなされてきた。
【0011】
米国特許第6,652,774号;第6,740,254号;および第6,811,722号は、特にポリウレタンを含む樹脂性ポリマー中で使用するためのフタレートを含まない可塑剤としてのグリセロールの混合エステルの使用を開示している。
【0012】
米国特許第8,034,873号は、フタレート可塑剤、脂肪族エステル可塑剤、トリメリテート可塑剤、ホスフェート可塑剤、エポキシ可塑剤、およびポリエステルポリマー可塑剤を使用して、改善された冷温加工性を有するTPU組成物を調製するための現場プロセスを開示している。具体的には、可塑剤としては、フタル酸ブチルベンジル、およびジイソノニルシクロヘキサンジカルボキシレートが好ましい。
【0013】
米国特許第9,181,382号は、熱可塑性ポリウレタン中の可塑剤として、少なくとも1種の脂肪族カルボン酸でエステル化されたグリセロールの使用を開示している。
【0014】
米国特許第9,890,243号は、芳香族酸、グリコールおよびC4-C36モノカルボン酸またはエステルまたは無水物から調製されたポリマー可塑剤をTPU組成物中に使用することを開示している。
【0015】
米国公開第20070049685号は、脂肪族酸および芳香族酸の両方を使用して、トリメチロールアルカンエステル可塑剤で可塑化されたTPUを対象とする。可塑剤は、ヒドロキシル価が1未満であり、有効性のために一定の粘度を有していなければならない。それらは、ジプロピレングリコールジベンゾエートの従来の使用で見られるものよりも、少ない可塑剤の移行でより柔らかいTPUを達成するために記載されている。
【0016】
米国公開第2009/0176917号は、組み込みが容易で、劣化せず、滲み出さず、蒸発によって失われないと記載されているポリテトラヒドロフランエステル可塑剤を開示しており、同時に、加工性、耐熱性、耐紫外線性などのTPUの特性を向上させている。
【0017】
ドイツ特許10248878号は、他のプラスチックの中でも熱可塑性ポリウレタンでの使用のためのポリエステル可塑剤を開示している。
【0018】
EP出願3099725号は、TPU組成物中の可塑剤として使用するための、クエン酸エステル、フタレート、ベンゾエート、アジペート、リン酸エステルおよび水添フタル酸エステルから選択される少なくとも1種のエステルと少なくとも1種のカルボジイミドとの混合物を開示している。
【0019】
EP出願第3037465号は、エポキシ化された大豆油、モノグリセリドの酢酸エステル、グリセロールトリプロピオネート(GTP)イソソルビドジエステル、およびそれらの混合物である可塑剤と組み合わせた加硫植物油を含む熱可塑性ポリウレタンを開示している。
【0020】
特定のTPU用途で使用される場合、同等の特性を達成しつつ、従来の可塑剤に関連する問題を回避する可塑剤が、引き続き必要とされている。理想的には、そのような可塑剤は、従来のTPUおよびSGグレードの可塑剤が必要とされる用途で容易に代替できるものであるべきである。
【0021】
これまでポリウレタン用途には利用されていなかったジベンゾエートである1,2-プロピレングリコールジベンゾエート(PGDB)の特別なグレードが、最終製品への加工方法にかかわらず、相溶性、色、滲出量、光学特性および水蒸気透過率(MVTR)を含むがこれらに制限されない、熱可塑性および熱硬化性の両方のポリウレタン配合物に使用される従来の可塑剤と比較した場合に、改善された特性を達成することが発見された。本発明のPGDBはまた、従来のポリウレタン可塑剤で達成されたものと比較して、改善された相溶性、硬度、引張強度、モジュラス(100%および300%)、反発、圧縮永久ひずみ、および引き裂き強度を提供する。
【0022】
本発明のPGDBのいくつかの特定の用途には、反応性熱可塑性ポリウレタン、1K(1成分)あるいは2K(2成分)接着剤またはシーラントを含むポリウレタン接着剤またはシーラント、または注型ポリウレタン物品が含まれるが、これらに限定されない。本発明の反応性ポリウレタン系の様々な最終用途が本明細書で論じられ、また当業者には明らかであろう。ポリウレタン配合物の従来の用途のいずれも、本発明の範囲内である。この特別なグレードのPGDBが、最終用途にかかわらず、本発明に従った反応性ポリウレタン系において使用されてもよいことが企図される。
【0023】
この特別なグレードのPGDBは、そのメカニズムは完全には理解されていないが、TPUおよびSGグレードの可塑剤と比較して、強化された性能を提供することが示されている。ほとんどのポリウレタングレードの可塑剤と同様に、本発明で有用なPGDBは、低酸度(<0.1%)および含水率レベル(<0.1%、通常は<0.07%)を有する。また、ポリウレタン系で使用される現在利用可能なベンゾエート可塑剤よりも低いヒドロキシル含量を有する。従来のTPUおよびSGグレードのジベンゾエート、特に市場で唯一の商業グレードであるジプロピレングリコールジベンゾエートのヒドロキシレベルは約4~6OHであると報告されている。本発明のPGDBはまた、1%未満の非常に低いハーフエステル含有量を特徴としている。
【0024】
本発明の目的は、ポリウレタン配合物において使用されるベンゾエートエステルを含む従来の可塑剤と比較して、同等または改善された相溶性、色、滲出性、光学特性、MVTR、硬度、引張強度、引き裂き強度、モジュラス、反発性、圧縮性、および溶媒膨潤を達成する、反応性ポリウレタン配合物において使用するための代替可塑剤を提供することであり、該可塑剤は低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を含む。
【0025】
本発明の別の目的は、特性修飾のための低ヒドロキシル非フタレート可塑剤を含む反応性ポリウレタン配合物を提供することであり、ここで、該ヒドロキシル価は、他のベンゾエートエステルを含むポリウレタン系において現在利用可能で利用されている可塑剤よりも低い。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、ポリウレタン配合物に使用される従来の可塑剤の使用で引き起こされた特性のうちでもとりわけ、黄変を改善する方法を提供することである。
【0027】
本発明のさらに別の目的は、当技術分野で知られている従来のポリウレタンTPU可塑剤の代わりとなり得る、ポリウレタン中で使用するための低ヒドロキシル可塑剤を提供することである。
【0028】
本発明の他の目的は、当業者には明らかであろう。
【発明の概要】
【0029】
本発明は、非フタレート可塑剤と組み合わされたイソシアネートおよびポリオールを含む反応性ポリウレタン系を対象とする。特に、本発明は、1,2-プロピレングリコールジベンゾエート(可塑剤)が、ポリウレタンポリマーが生成された後ではなく、イソシアネートとポリオールが反応してその結果得られるポリウレタンポリマーを生成するために混合される時点またはその近傍で添加される、改良されたポリウレタン配合物を対象とする。本発明は、現在ポリウレタン系で使用されているジベンゾエート可塑剤よりも低いヒドロキシル含量を有する特別なグレードの低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤、すなわち1,2-プロピレングリコールジベンゾエート(PGDB)の使用を対象とする。また、本発明のPGDBは、ポリウレタン系で使用されている典型的なジベンゾエート可塑剤よりも低いハーフエステル含量を有する。
【0030】
一実施形態では、本発明は、可塑剤として本発明のPGDBを含む反応性ポリウレタン系である。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、可塑剤としてPGDBを含むポリウレタンベースの接着剤またはシーラントである。
【0032】
さらに別の実施形態では、本発明は、PGDBを含む熱硬化性ポリウレタンまたは熱可塑性ポリウレタンを利用して製造された物品または部品である。
【0033】
本発明のPGDB可塑剤は、現在および過去にポリウレタン配合物に使用されている従来のジベンゾエート可塑剤、具体的にはDPGDBと比較して、ヒドロキシル含有量が低いことを特徴とする。
【0034】
本発明の反応性配合物の潜在的な用途としては、高級履物および高級アクセサリー、反応性床用接着剤および建設用シーラント、ならびにホイール、ローラー、およびコンベヤベルトなどの注型部品などが挙げられる。他の用途は、当業者には明らかであろう。本発明の改良された反応性ポリウレタン配合物は、ポリウレタンが適している任意の用途で使用され得ることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1(a)は、非可塑化コントロールに対して評価された、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルの90℃でのポットライフの結果を示す。
【0036】
図1(b)は、非可塑化コントロールに対して、異なる可塑剤を使用したTPUの例について150℃でのポットライフの結果を示す。
【0037】
図2(a)および
図2(b)は、非可塑化コントロールと比較して評価された、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルについて、初期硬度および10秒硬度をそれぞれ示す。
【0038】
図2(c)および
図2(d)は、非可塑化コントロールと比較して評価した、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルについて、7日間で達成された初期硬度と10秒硬度を示す。
【0039】
図3(a)および
図3(b)は、非可塑化コントロールと比較して評価した異なる可塑剤を使用したTPUサンプルの黄変を示す。
【0040】
図4(a)および
図4(b)は、非可塑化コントロールと比較して評価した、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルの(600%公称ひずみでの)引張強度を示す。
【0041】
図5(a)および
図5(b)は、非可塑化コントロールと比較して評価された、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルで達成された100%モジュラスを示す。
【0042】
図5(c)は、非可塑化コントロールに対して評価された、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルで達成された300%比率を示す。
【0043】
図6は、非可塑化コントロールに対して評価された、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルのロール試験結果を示す。
【0044】
図7は、非可塑化コントロールに対して評価された、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルのロール試験結果を示す。
【0045】
図8は、非可塑化コントロールに対して評価された、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルで達成された反発の結果を示す。
【0046】
図9は、非可塑化コントロールに対して評価された、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルについて達成された22時間の圧縮永久ひずみ試験の結果を示す。
【0047】
図10は、非可塑化コントロールに対して評価された、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルについて達成された70時間の圧縮永久ひずみ試験の結果を示す。
【0048】
図11は、非可塑化コントロールと比較して評価された、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルについて得られた引き裂き強度の結果を示す。
【0049】
図12は、非可塑化コントロールに対して評価された、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルの溶媒-膨潤水試験で得られた結果を示す。
【0050】
図13は、非可塑化コントロールに対して評価された、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルの溶媒-膨潤-ASTM オイル#1試験で得られた結果を示す。
【0051】
図14は、非可塑化コントロールと比較して評価した。異なる可塑剤を用いたTPUサンプルの溶媒-膨潤-IPA試験で得られた結果を示す。
【0052】
図15は、非可塑化コントロールに対して評価された、異なる可塑剤を使用したTPUサンプルの溶媒-膨潤-トルエン試験で得られた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、現在および過去にポリウレタン配合物において知られ、使用されている従来の可塑剤の代替としての特別なグレードのジベンゾエート可塑剤を含む反応性ポリウレタン配合物/系を対象とする。特に、本発明は、フタレート可塑剤、スルホン酸エステル可塑剤、およびポリウレタン配合物に使用されているジプロピレングリコールジベンゾエート(DPGDB)のような従来のジベンゾエート可塑剤の代替品としての低ヒドロキシル1,2-プロピレングリコールジベンゾエート(PGDB)の使用を対象とする。
【0054】
イソシアネートとポリオールを一緒に混合すると同時に(またはそれに近い時点で)系に可塑剤を配合する場合、反応性ポリウレタンプロセスでは、低ヒドロキシルの特殊グレードPGDBの使用が非常に重要である。イソシアネート(または他の成分)は、ポリオールよりも可塑剤の水酸基と優先的に反応し、結果として得られる物理的特性に悪影響を及ぼすことが知られている。それゆえ、本発明の低ヒドロキシル含有量である特別グレードのPGDBは、その低ヒドロキシル含有量による物性への悪影響を制限することができる。
【0055】
特別なグレードのPGDBは、ポリウレタン系の特性の予想外の改善を提供し、これには、相溶性、加工性、色、滲出量、MVTR、硬度、引張強度、引き裂き強度、モジュラス、反発、圧縮永久ひずみを含むが、これらに限定されない。
【0056】
本発明の目的上、以下の定義が適用される。
【0057】
「配合物」とは、ポリウレタンポリマーを生成するために一緒に組み合わされる特定の成分および量を意味する。本発明の目的のために、ポリウレタン「組成物」、「系」および「配合物」は、互換的に使用される。
【0058】
「TPU」は、熱可塑性ポリウレタン組成物を意味する。
【0059】
「PU」はポリウレタン組成物を意味し、熱可塑性組成物および熱硬化性組成物を限定なく含む。
【0060】
「ヒドロキシル価」は、一般にmg KOH/gサンプルで表される数として当技術分野で知られている。ヒドロキシル価は、しばしば製品仕様書に報告されている。ヒドロキシル価を決定するための様々な方法論が当技術分野で知られている。使用される方法に応じて、ヒドロキシル価は、真の値よりも高くても低くてもよい。単一の製品は、異なる方法論を用いて分析した場合、異なるヒドロキシル価を有することがある。実施例の目的のために、ヒドロキシル価は、TSI法を用いて実験室ですべての可塑剤について決定された。そのため、ヒドロキシル価は、比較サンプルのために製造業者によって報告されたもの、指定されたもの、または記載されたものとは異なっていてもよい。
【0061】
「従来の可塑剤」とは、過去にポリウレタン系で使用された可塑剤を意味し、フタレート、リン酸エステル、フェノールのアルキルスルホン酸エステル、およびベンゾエート、特に最良の性能のジプロピレングリコールジベンゾエート(DPGDB)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本発明のPGDBは、現在および過去にポリウレタン系で使用されているTPUおよびSGグレードについて報告されているヒドロキシル含有量よりも低ヒドロキシル含有量を有する低ヒドロキシルジベンゾエートである。本発明の目的のために、「低ヒドロキシル価」とは、ASTM E2222(滴定またはアセチル化)法を用いて分析した場合に2mg KOH/g以下の価、またはASTM E1899(TSI)法を用いて分析した場合に4mg KOH/g以下の価を意味する。好ましくは、本発明のPGDBのヒドロキシル価は、最大で約2mg KOH/g、より好ましくは約1.8mg KOH/g未満、最も好ましくは約0.7mg KOH/g(滴定法による)を有する。滴定法により測定される0.7mg KOH/gを含むがこれに限定されない約1mg KOH/g未満のヒドロキシル価は、本発明の範囲内である。
【0063】
また、ヒドロキシル価はハーフエステル含有量と相関がある。ハーフエステル含有量(ジベンゾエートの場合、モノベンゾエート含有量)を増加させると、ヒドロキシル価が増加することが知られている(例えば、米国特許第5,676,742号を参照のこと)。本発明のPGDBは、最大約2mg KOH/gのヒドロキシル価に相当する1%未満のハーフエステル含量を有する。低いハーフエステル含量は、本発明のPGDBを特徴付ける低いヒドロキシル価を裏付ける。
【0064】
比較のために、Eastman Chemical CompanyのBenzoflex(商標)TPU-405(DPGDBを含む特殊グレードのベンゾエートエステル可塑剤)は、OHの最大値が5であると報告されているが、EastmanのBenzoflex(商標)9-88 SG(DPBDBを含む別の特殊グレードのベンゾエートエステル可塑剤)、Velsiflex(商標) 342SおよびEcodのECOD-FLEX 342Sは、OHの最大値が6であると報告されている。しかし、実施例に示すように、TSI法による測定値は、これらの可塑剤のいくつかについて、本発明のDPBDBよりもはるかに高い値であった。
【0065】
本発明のPGDBはまた、ポリウレタン系で使用される可塑剤の典型的なイソシアネートとの望ましくない副反応を防止するために、低酸度(<0.1%)および低含水率(<0.1%、通常は<0.07%)を有する。
【0066】
本発明において、当業者が理解するとおり使用するPGDBの量は用途および所望の軟らかさに応じて変化するであろうが、PGDBは、ポリウレタン組成物の総重量に基づいて、約5wt.%から約80wt.%までの範囲の量で使用することができる。本明細書で使用されるように、使用されるPGDBの量はまた、ポリウレタンポリマー100部に基づいて、「PHR」値として表現されてもよい。例示に過ぎないが、20、40および60PHRの可塑剤添加量は、ポリウレタン組成物の総重量に基づいて、それぞれ約17、29および38%に相当するであろう。当業者であれば、本明細書の開示に基づいて、特定の用途で使用するためのPGDBの好ましい量を決定することができるであろう。
【0067】
本発明のPGDB可塑剤は、合成されていてもよいし、生物源であってもよい。本発明のPGDB可塑剤は、当業者に知られている多種多様な反応性ポリウレタン系および用途に使用することができる。
【0068】
本発明の反応性ポリウレタン配合物には、イソシアネート、ポリオール、可塑剤に加えて、連鎖延長剤、連鎖停止剤、安定剤、難燃剤等の他の添加剤を添加してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0069】
例
【0070】
以下、本発明を反応性TPU配合物の観点から説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0071】
初期スクリーンプロトコル
【0072】
下記の表Iに示すように、様々な可塑剤を試験するために、一般的なTPU配合物を調製した。すべての実施例は、可塑剤の添加量にばらつきがあるものの、別段の指示がない限り、TPU配合物の同じ基本成分を使用した。
【表1】
【0073】
配合物は、90℃および150℃でのポットライフ、経時硬度、色(黄変)、600%公称ひずみでの引張強度、100%モジュラス、300%モジュラス、相溶性(ロールテスト)、引き裂き強度、圧縮永久ひずみ(22時間および70時間)、反発および溶媒膨潤について評価した。多数の可塑剤を、以下に記載するように評価した。実施例の目的のために、ジベンゾエートのヒドロキシル価は、TSI(ASTM E 1899)法を用いて試料中で試験する前に、実験室で決定した。
【0074】
Comp DB:TPU用の競合ジベンゾエートエステル、後述のBenzoflex(商標)TPU 405としても知られている。
【0075】
ASEP:アルキルスルホン酸フェニルエステル、Lanxess社からMesamoll(商標)として市販されている。
【0076】
BBP:フタル酸ブチルベンジル、歴史的にポリウレタンに使用されており、多くの供給元から市販されている。
【0077】
X-9101:ASTM E 222によって測定した場合のヒドロキシル価が0.7mg KOH/g、TSI法(ASTM E 1899)により測定した場合のヒドロキシル価が3mg KOH/g特別グレードの低水ヒドロキシル含有PGDBである。
【0078】
X-9702:ASTM E222法で測定した場合のヒドロキシル価が2mg KOH/g、TSI法で測定した場合のヒドロキシル価が4.7mg KOH/gである実験用のジプロピレングリコールジベンゾエート。
【0079】
X-9706:ASTM E222法で測定した場合のヒドロキシル価が6mg KOH/g、TSI法で測定した場合のヒドロキシル価が6.3 mg KOH/gである実験用のジプロピレングリコールジベンゾエート。
【0080】
X-9735(またはK-FLEX(商標)DP):TSI法で測定した場合の約35mg KOH/gのヒドロキシル価を有するジプロピレングリコールジベンゾエートで、Emerald Kalama Chemical LLCからK-FLEX(商標)DPとして市販されている。
【0081】
Benzoflex(商標)TPU 405:ポリウレタンに使用されるジプロピレングリコールジベンゾエートの特別グレードで、Eastman Chemical Companyから市販されている。
【0082】
Benzoflex(商標)9-88 SG:Eastman Chemical Company から市販されているジプロピレングリコールジベンゾエートの特別グレードで、2Kポリウレタン系および注型ポリウレタンでの使用が明記されており、最大ヒドロキシル価が6mg KOH/g、TSI 法による試験値が~5mg KOH/g であることが明記されている。
Benzoflex(商標)9-88:Eastman Chemical Company から市販されているジプロピレングリコールジベンゾエートの標準グレードで、最大ヒドロキシル価が15mg KOH/g、TSI法による試験値が~11.5 mg KOH/g であることが明記されている。
【0083】
例1-ポットライフ
【0084】
ポットライフとは、初期の混合粘度が2倍(低粘度製品(1000cPs未満)では4倍)になるまでの時間(分)と定義されている。この例では、ポットライフは、ガードナーチューブ内の粘度が2倍になった時点で決定した。サンプルを90℃に加熱し、サンプルが再平衡化するように10分ごとに観察した。90℃での結果を非可塑化コントロール、ASEP、競合ジベンゾエート(Comp DB)、X-9702、X-9101、およびDPGDB(X-9735とも呼ばれる)について
図1(a)に示す。
図1(b)は、非可塑化コントロール、X-9101、X-9702、Benzoflex 9-88 SG、X-9706、Benzoflex TPU 405、およびBenzoflex 9-88 の150℃でのポットライフの結果を示す。すべてのサンプルは互いに同等の性能を示した。可塑剤の添加と可塑剤添加量の増加はポットライフを増加させたが、可塑剤の種類とヒドロキシル価の間には有意な差は見られなかった。
【0085】
例2-硬度
【0086】
硬度(ASTM D2240-ショアA)は、非可塑化コントロールのASEP、競合ジベンゾエート(Comp DB)、X-9702、X-9101、およびDPGDB(X-9735またはK-FLEX(商標) DP)について測定した。適切に機能する可塑剤のうち、初期硬度(ショアA)については、すべての可塑化サンプルが同等の性能を示した。ASEPは相溶性が悪いために著しい滲み出しを示し、これが硬度の増加をもたらした。10秒硬度については、X-9101は他の可塑剤よりも硬いと決定された。この軟化効率の低下と優れた相溶性の組み合わせは、より多くの可塑剤を製品に配合して所望の軟化を達成することができるという点で有利であると同時に、価格の高いTPU成分を相殺することができる。高ヒドロキシルのX-9735可塑剤は、高い残存ヒドロキシル含有量によりTPUが完全に硬化するのを妨げているので、他の可塑剤と比較して低い硬度値を有した。初期硬度および10秒硬度(ショアA)の結果を
図2(a)および2(b)に示す。
【0087】
可塑剤添加量の増加(20PHR、40PHR、60PHR)が硬度に及ぼす影響を評価した。予想通り、可塑剤の添加量を増加させると硬度が低下した。
図2(c)と2(d)に、無可塑化コントロール、X-9101、X-9702、Benzoflex 9-88 SG、X-9706、Benzoflex TPU 405、およびBenzoflex 9-88の7日での初期硬度と10秒間の硬度が示されている。ここでも、X-9101は、他の可塑剤よりも有利に低い軟化効率を有することが決定された。40PHRで開始して、より低いヒドロキシル価可塑剤によって、より高いヒドロキシル価を有する可塑剤と比較してより硬い産物をもたらした。10秒硬度(7日での)については、20PHRで開始すると、より低いヒドロキシル価の可塑剤X-9101は、より高いヒドロキシル価を有する可塑剤と比較して、より硬い産物をもたらした。
【0088】
例3-色-黄変
【0089】
Color i7で7日後のb*(黄変)を測定し、処理後の色(黄変)について評価したサンプルは、非可塑化コントロール、ASEP、競合ジベンゾジエート(Comp DB)、X-9702、X-9101、およびDPGDB(X-9735)を含んでいた。低い値(b*)は、黄変がより少ないことに相当する。予期せぬことに、X-9101は黄変の値(b*)が最も低く、非可塑化サンプルよりも改善されていた。他の可塑剤は、非可塑化サンプルよりも若干黄変が進んでいた。X-9735サンプルは黄変が増加したが、競合ジベンゾエート(Comp DB)サンプルほどではなかった。結果を
図3(a)に示す。
【0090】
可塑剤の添加量を増加させた場合の黄変に対する効果を、無可塑化コントロール、X-9101、X-9702、Benzoflex 9-88 SG、X-9706、Benzoflex TPU 405、およびBenzoflex 9-88について評価した。結果を
図3(b)に示す。試験した他の可塑剤が黄変する強い傾向を示したが、約40PHRまで、X-9101は非可塑化コントロールと比較して、色の変化をもたらさなかった。
【0091】
例4-引張強度--600%公称ひずみでの引張強度
【0092】
ASTM D412の方法論を用いて、非可塑化コントロール、ASEP、競合ジベンゾエート(Comp DB)、X-9702、X-9101、およびDPGDB(X-9735)について、600%公称ひずみでの引張強度(psi)を評価した。試験片は、約600%伸びまで引っ張った。ASEPの増加した引張強度の結果は、1週間のポストキュアで滲み出た多量の可塑剤によるものであり、これはこのPU系の限られた相溶性に関連する。X-9702とX-9101は、可塑化されたサンプルの中で最も高い引張強度の結果を示した。結果を
図4(a)に示す。
【0093】
可塑剤の添加量を増加させた場合の引張強度への影響を、非可塑化コントロール、X-9101、X-9702、Benzoflex 9-88 SG、X-9706、Benzoflex TPU 405、およびBenzoflex 9-88について評価した。一般に、可塑剤の添加量を増やすと引張強度が低下する。しかし、ヒドロキシル価の低い可塑剤は、他の可塑剤に比べて引張強度が向上し、X-9101は、高い60PHR添加量でも、最大の引張強度を示す。結果を
図4(b)に示す。
【0094】
例5-100%と300%モジュラス
【0095】
ASTM D412の方法論を用いて、非可塑化コントロールであるASEP、競合ジベンゾエート(Comp DB)、X-9702、および X-9101について100%モジュラスを測定した。引張強度(psi)についても同様の結果が得られ、最も効率的な可塑剤は強度の逆順であった。ジベンゾエートはASEPよりも全体的な軟化において効率的であったが、これもまた移行によるASEP可塑剤の損失によるものであった。X-9702とX-9101は同様であったが、サンプルの軟化効率がやや低い一方、競合DB(Comp DB)は軟化効率が最も高かった。このように軟化効率が低下したことと優れた相溶性を組み合わせることで、配合物は、より多くの可塑剤を配合して、より高価なTPU成分を相殺しながら、所望の軟化を達成することができる可能性がある。X-9735サンプルは完全に硬化していなかったため、試験できなかった。この可塑剤の高いOHレベルが、イソシアネートと反応することにより、イソシアネートとポリオールの所望の反応を妨害したと予想される。結果を
図5(a)に示す。
【0096】
可塑剤の添加量を増加させた場合の100%モジュラスへの影響を、非可塑化コントロール、X-9101、X-9702、Benzoflex 9-88 SG、X-9706、Benzoflex TPU 405、およびBenzoflex 9-88について評価した。一般に、可塑剤の添加量を増やすと100%モジュラスが低下した。ヒドロキシル価を低くすると、100%モジュラスが改善された。興味深いことに、40から60PHRに移るとき、X-9101サンプルのためのモジュラスにはほとんど変化がなく、TPUを過度に軟化させることなく、より高い添加量を利用してさらなる原料コストを相殺することができることを示している。結果を
図5(b)に示す。
【0097】
300%モジュラス
【0098】
ASTM D412の方法論を用いて、可塑剤の添加量を増加させることによる300%モジュラスへの影響を、無可塑化コントロール、X-9101、X-9702、Benzoflex9-88 SG、X-9706、BenzoflexTPU 405、およびBenzoflex9-88についても評価した。一般に、可塑剤の添加は、300%のモジュラスを減少させた。60PHRの添加量では、最も低いヒドロキシルサンプルだけがまだ任意の構造を有しており、そして再びX-9101サンプルは、可塑剤の添加量を40から60PHRに増加させたときには、ほとんどモジュラス変化を示さなかった。結果を
図5(c)に示す。
【0099】
例6-相溶性-ロールテスト
【0100】
方法論:硬化したTPUの3”×1/2”の試験片を切り出し、各試験片につき3個ずつ用意した。各試験片を紙でしっかりと巻き、ゴムバンドを用いて固定した。試料を60℃に予熱したBlue Mオーブンに入れた。試験片を展開し、24時間後、48時間後、72時間後に表面紙を検査し、評価した。試験の追加日ごとに新しい紙を使用した。評価が0の場合は滲出物がないことを示し、評価が3の場合は滲出物が多いことを示した。
【0101】
相溶性のロール試験は、非可塑化コントロール、ASEP、競合ジベンゾジエート(Comp DB)、X-9702、およびX-9101について実施された。非可塑化サンプルは、何も滲出しないはずであるため、値が1以下の場合は滲出がないとみなされる(評価が1の場合は離型剤による染色が原因である)。X-9702およびX-9101は滲出物がなかったため、配合物との相溶性が非常に高い。競合DB(Comp DB)サンプルは、この用途での使用が一般的であったため、予想外の滲出物が見られた。予想通り、配合および状態調整後の目視観察から、ASEPサンプルはかなりの量の可塑剤を滲出していた。結果を
図6に示す。
【0102】
可塑剤の添加量を増加させた場合の相溶性への影響は、非可塑化コントロール、X-9101、X-9702、Benzoflex 9-88 SG、X-9706、Benzoflex TPU 405、およびBenzoflex 9-88のロールテストを使用して決定された。一般的に、可塑剤のレベルが高いほど、各可塑剤が相溶性の限界に達すると滲出量が多くなる。6の評価では、サンプルは作業不可能になった。それでも、低ヒドロキシル価の可塑剤は、他の可塑化されたサンプルと比較して相溶性を改善し、X-9101とX-9702の両方が、試験した可塑剤の中で最も少ない滲出量を示した。結果を
図7に示す。
【0103】
例7-反発
【0104】
反発については、ASTM D2632の方法論を用いて評価した。また、可塑剤の添加量を増加させた場合の反発に対する効果を、非可塑化コントロール、X-9101、X-9702、Benzoflex 9-88 SG、X-9706、Benzoflex TPU 405、およびBenzoflex 9-88について評価した。一般に、可塑剤の添加量を増加させると、反発が増加した。低ヒドロキシル価の可塑剤は、X-9101サンプルを筆頭に、他の可塑化サンプルよりも大きな反発をもたらした。結果を
図8に示す。
【0105】
例8-圧縮永久ひずみ(22時間および70時間)
【0106】
圧縮永久ひずみ-ASTM D395-16、試験方法B。圧縮永久ひずみ(22時間および70時間)(%)を、非可塑化コントロール、X-9101、X-9702、Benzoflex 9-88 SG、X-9706、Benzoflex TPU 405、およびBenzoflex 9-88について評価した。一般的に、高添加量時の可塑剤の添加は、圧縮永久ひずみに影響を与え始める。ヒドロキシル価の高い可塑剤は性能の低下をもたらしたが、20、40、および60PHRでのX-9101サンプルは、可塑化されていないサンプルと比較して、同様の、または(22時間の試験時間では)より良好な圧縮永久ひずみを有した。22時間の圧縮永久ひずみについては
図9に、70時間の圧縮永久ひずみについては、
図10に結果を示す。
【0107】
例9-引き裂き強度
【0108】
引き裂き強度(N/mm)は、非可塑化コントロール、X-9101、X-9702、Benzoflex 9-88 SG、X-9706、Benzoflex TPU 405、およびBenzoflex 9-88について評価した。一般的に、可塑剤のレベルが高いと引裂強度が低下した。それでも、より低いヒドロキシル価の可塑剤は、改善された引き裂き強度をもたらし、X-9101は、60 PHRで他の可塑剤よりも顕著に強かった。結果を
図11に示す。
【0109】
例10-溶媒膨潤試験
【0110】
溶媒膨潤試験 ASTM D543-14、実施例A-浸漬試験。非可塑化コントロール、X-9101、X-9702、Benzoflex 9-88 SG、X-9706、Benzoflex TPU 405、およびBenzoflex 9-88について、様々な溶媒を使用して溶媒膨潤試験(%Δ)を実施した。
【0111】
水:結果を
図12に示す。可塑剤の添加と添加量の増加は、水溶媒膨潤にほとんど影響を与えなかった。
【0112】
ASTMオイル#1:結果を
図13に示す。可塑剤の添加量を増加させると、ASTMオイル#1溶媒膨潤が減少した。可塑剤の種類とヒドロキシル価との間に差はなかった。
【0113】
IPA(イソプロピルアルコール):結果を
図14に示す。可塑剤添加量の増加は、IPA溶媒膨潤を減少させた。可塑剤の種類とヒドロキシル価との間に差はなかった。
【0114】
トルエン:結果を
図15に示す。添加量の増加により、トルエン溶媒膨潤が減少した。可塑剤の種類とヒドロキシル価に差はなかった。
【0115】
例11 透湿度(MVTR)
【0116】
いずれも汎用可塑剤であるMesamoll(商標)(アルキルスルホン酸フェニルエステル)とフタル酸ブチルベンジル(BBP)、およびX-9702とX-9101の使用により、2種類のポリウレタンシーラントの透湿度(MVTR、または水蒸気透過率(WVT))に及ぼす影響を評価した。下記の表2および表3は、1つはM280(Desmoseal M280、Covestro社提供)、もう1つは特別に調製されたプレポリマー1020Uからなる2つのポリウレタンシーラントについてのWVT性能データを示す。試験した配合を以下に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0117】
結果は、1020UではX-9702とX-9101の方がBBPよりもMVTRが低いことを示す。M280では、X-9702はX-9101よりも優れた性能を示したが、両方のジベンゾエートはMesamoll(商標)と比較して高いMVTRを示した。MVTRが高いということは、より多くの水蒸気が接着剤/コーティングを透過できることを意味する。全体的に、X-9702とX-9101は、透湿性が重要視される用途でポリウレタン系に使用するための実行可能な代替品であることが実証された。
【表2】
【表3】
結果の概要
【0118】
上記の結果は、本発明の低ヒドロキシルPGDBが、ポリウレタン用途、特に優れた相溶性、強度、および最小の黄変を必要とする用途で使用するための実行可能な非フタレート代替可塑剤であることを示している。その結果、PGDBは、TPUグレードの可塑剤の現在の業界標準よりも優れていることが示された。PGDBはDPGDBに匹敵するが、特に相溶性、強度、黄変に関しては予想外の価値があった。全体的に、PGDBはまた、DPGDBのような他の伝統的に使用されている可塑剤と同等の硬度に配合されたときに、系内のより多くのPGDB(可塑剤)があるにもかかわらず、予想外に強いPU製品を提供するという点で斬新である。この強いPUはまた、より大きな伸張を受けることができ、耐摩耗性の改善を提供することが期待されている。
【0119】
PGDBは、従来の可塑剤によって達成された硬度/柔らかさと同等になるように配合されているにもかかわらず、DPGDBのような従来の可塑剤よりも強いポリウレタン系を提供した。PGDBは、DPGDBによって達成された硬度に等しくなるように配合された場合に、より優れた強度、伸び、およびおそらくより優れた耐摩耗性を提供する、ポリウレタン用途に有用な別のジベンゾエート可塑剤をさらに提供する。本発明の特別なグレードのPGDBは、典型的なTPUグレードのDPGDBおよびより高いヒドロキシルレベルを有する他の商業的なジベンゾエートグレードと比較して、その低いOHおよび非滲出性のために、より低いヒドロキシル材料を有すると記載されている競合可塑剤よりも優れた性能を示した。
【0120】
一般的にOH数が低いとポットライフ、反発が改善された。圧縮永久ひずみは中立的であった。硬度、引張強度、引裂強度は改善された。特にX-9101は、硬度、色、反発、圧縮永久ひずみ、相溶性、引張強度、引裂き強さ、モジュラスの特性が改善された。中立的な特性としては、ポットライフ、溶媒膨潤が挙げられた。
【0121】
任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、PGDB対DPGDBの製造のための異なるプロセス条件(例えば、PGDBのためのより低い温度対DPGDBのためのより高い温度)は、より少ない不純物、つまり、改善された色性能を含むがこれらに限定されない異なる性能特性を導くと考えられている。
【0122】
特許法に従って、最良の態様および好ましい実施形態が示されているが、本発明の範囲はそれらに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって示されている。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
イソシアネートとポリオールの反応から調製された反応性ポリウレタン組成物中のジベンゾエート可塑剤の使用であって、
前記ジベンゾエート可塑剤は、ASTM E2222法で測定したときに2mgKOH/g未満の、かつASTM E1899法で測定したときに4mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有する低ヒドロキシルの1,2-プロピレングリコールジベンゾエートからなり、
前記ジベンゾジアート系可塑剤は、前記イソシアネートと前記ポリオールがポリウレタンポリマーを生成するために一緒に混合されるのと同時に、またはそれに近い時点でポリウレタン組成物に添加され、および
前記ジベンゾエート可塑剤は、ポリウレタンでの使用で知られている従来の可塑剤で達成されたものと比較して、相溶性、色、滲出、光学特性、MVTR、硬度、引張強度、引裂強度、反発、圧縮永久ひずみ、および溶媒膨潤の同等または改善された特性を達成する、該使用。
[2]
前記1,2-プロピレングリコールジベンゾエートが、0.1%未満の低酸度、0.1%未満の含水率、および1%未満のハーフエステル含量を有する、[1]に記載のジベンゾエート可塑剤の使用。
[3]
前記1,2-プロピレングリコールジベンゾエートが、ASTM E222の方法で測定したときに1mg/KOH/g未満のヒドロキシル価を有する、[1]に記載のジベンゾエート可塑剤の使用。
[4]
前記1,2-プロピレングリコールジベンゾエートが、ASTM E18999の方法で測定したときのヒドロキシル価が3mg/KOH/g以下のヒドロキシル価を有する、[1]に記載のジベンゾエート可塑剤の使用。
[5]
a.熱可塑性ポリウレタンと
b.[1]、[2]、[3]および[4]のいずれか1つに記載の低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤と、
を含む反応性熱可塑性ポリウレタン組成物。
[6]
前記ジベンゾエート可塑剤が、前記熱可塑性ポリウレタン組成物の重量に基づいて、約5wt%から約50wt%までの範囲の量で存在する、[5]に記載の反応性熱可塑性ポリウレタン組成物。
[7]
[1]、[2]、[3]または[4]のいずれか1つに記載の低級ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を含む反応性ポリウレタン接着剤。
[8]
[1]、[2]、[3]または[4]のいずれか1つに記載の低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を含む反応性ポリウレタンシーラント。
[9]
[1]、[2]、[3]または[4]のいずれか1つに記載の低ヒドロキシルジベンゾエート系可塑剤を含む熱硬化性ポリウレタン物品。
[10]
[1]、[2]、[3]または[4]のいずれか1つに記載のジベンゾエート可塑剤を反応性ポリウレタン配合物の製造時に添加する工程を含む、ポリウレタン組成物の黄変防止方法。
[11]
a.イソシアネート;
b.ポリオール;
c.ジオール;
d.[1]、[2]、[3]または[4]の低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤;および
e.安定剤
を含む熱可塑性ポリウレタン組成物。
[12]
前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤が、前記熱可塑性ポリウレタン組成物の総重量に基づいて、約5wt%から約80wt%までの範囲の量で存在する、[11]に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
[13]
前記イソシアネートがメチレンジフェニルジイソシアネートであるジイソシアネートであり、および
前記ジオールがブタンジオールであり;および
前記ポリオールがポリエステルまたはポリエーテルである[11]に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
[14]
a.ポリウレタンポリマー;および
b.[1]、[2]、[3]または[4]のいずれか1つに記載の低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を含む接着剤。
[15]
a.ポリウレタンポリマー;および
b.[1]、[2]、[3]または[4]のいずれか1つに記載の低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を含むシーラント。
[16]
a.ポリウレタンポリマー;および
b.[1]、[2]、[3]または[4]のいずれか1つに記載の低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を含む反応性熱硬化性ポリウレタン。
[17]
[5]、[6]、[11]、[12]、および[13]のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリウレタン組成物を含む製品であって、前記製品が履物、ハンドバッグ、または荷物である、該製品。
[18]
[1]、[2]、[3]または[4]のいずれか1つに記載の低ヒドロキシルジベンゾエート系可塑剤を含む1Kポリウレタン接着剤またはシーラント。
[19]
[1]、[2]、[3]または[4]のいずれか1つに記載の低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を含む2Kポリウレタン接着剤またはシーラント。
[20]
a.ポリウレタン組成物中において従来の可塑剤の代わりに、[1]、[2]、[3]または[4]のいずれか1つに記載の低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を用いる工程、およびb.前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤をイソシアネートとポリオールがポリウレタンポリマーを生成するために混合されるのと同時に、またはそれに近い時点で含み入れる工程を含む、ポリウレタン組成物における従来の可塑剤の使用に関連した黄変を低減または除去する方法。
[21]
a.ポリウレタン組成物において従来の可塑剤の代わりに、[1]、[2]、[3]または[4]のいずれか1つに記載の低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を使用する工程、およびb.前記低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を、イソシアネートとポリオールがポリウレタンポリマーを生成するために混合されるのと同時に、またはそれに近い時点で含み入れる工程を含む、ポリウレタン組成物から作られた製品の特性を改善する方法。
[22]
a.イソシアネート;
b.ジオール;
c.ポリオール;
d.安定剤;および
e.前記イソシアネートと前記ポリオールとの反応により生成したポリウレタンポリマー100部に基づいて、20phrから60phrまでの範囲の量で存在する、[1]、[2]、[3]または[4]のいずれか1つに記載の低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を含み、
各成分は、ポリマー生成工程において、前記イソシアネート成分と前記ポリオール成分が反応してポリウレタンポリマーを生成する時点と同時に、またはそれに非常に近い時点で配合するが、ポリウレタンポリマーが完全に生成した時点で配合するのではない、反応性ポリウレタン組成物。
[23]
a.イソシアネート;
b.ジオール;
c.ポリオール;
d.安定剤;および
e.[1]、[2]、[3]または[4]のいずれか1つに記載の低ヒドロキシルジベンゾエート可塑剤を含み、
各成分は、ポリマー生成工程において、前記イソシアネート成分と前記ポリオール成分が反応してポリウレタンポリマーを生成する時点と同時に、またはそれに非常に近い時点で配合するが、ポリウレタンポリマーが完全に生成した時点で配合するのではない、反応性ポリウレタン系。