(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20220920BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20220920BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20220920BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/16 312E
G06F1/16 312F
G06F1/16 312J
H05K5/02 V
H05K7/20 B
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2021006660
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 敦史
(72)【発明者】
【氏名】森野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
【審査官】白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-162576(JP,A)
【文献】特開2020-091723(JP,A)
【文献】特開2020-173653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16 - 1/20
H05K 7/20
H01L 23/34 - 23/46
G09F 9/00
H04M 1/02 - 1/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
発熱体を搭載した第1筐体と、
前記第1筐体と隣接する第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを、互いに面方向で重なるように積層する0度姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ180度姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、
前記第1筐体と前記第2筐体の間に亘って設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体が相対的に回動することに応じて折り曲げられる折曲領域を有するディスプレイと、
を備え、
前記ヒンジ装置は、
前記第1筐体及び前記第2筐体の隣接端部に沿って延在し、前記隣接端部を跨ぐように配置される金属製のヒンジ本体と、
前記第1筐体の内面側で前記隣接端部に沿って延在し、前記ヒンジ本体と相対回転可能に連結されると共に、前記第1筐体の内面に対して相対移動可能に設けられ、前記0度姿勢と前記180度姿勢との間で前記ディスプレイの裏面を支持する金属製の第1サポートプレートと、
前記第2筐体の内面側で前記隣接端部に沿って延在し、前記ヒンジ本体と相対回転可能に連結されると共に、前記第2筐体の内面に対して相対移動可能に設けられ、前記0度姿勢と前記180度姿勢との間で前記ディスプレイの裏面を支持する金属製の第2サポートプレートと、
を有し、
当該電子機器は、
前記発熱体からの熱を受ける受熱部材と、前記第1筐体内に
設けられ、可撓性を有する熱伝導部材
と、を備え、
前記受熱部材は、前記第1筐体又は前記第1筐体内に搭載された冷却装置の構成部品であり、
前記熱伝導部材は、前
記受熱部材と、前記第1サポートプレートとの間を熱的に接続している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記第1サポートプレートは、その表面で前記ディスプレイを支持しており、
前記熱伝導部材は、前記第1サポートプレートの裏面に接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記熱伝導部材は、グラファイトシートで構成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記グラファイトシートは、
第1端部が前記第1サポートプレートの裏面に固定され、
第2端部が前記受熱部材に固定され、
前記第1端部と前記第2端部の間の中央部が、移動自由な状態で前記第1サポートプレートの裏面と前記受熱部材との間で湾曲している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記熱伝導部材は、熱伝導性を有するゴム材料で構成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記熱伝導部材は、スポンジ材料の外周面に熱伝導シートを巻き付けた部材で構成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記第2サポートプレートは、その表面で前記ディスプレイを支持しており、
当該電子機器は、さらに、熱伝導性を有し、前記第1サポートプレートの裏面から前記ヒンジ本体を通過して前記第2サポートプレートの裏面まで延在するシート状部材を備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項7に記載の電子機器であって、
さらに、可撓性を有する第2の熱伝導部材を前記第2筐体内に備え、
前記第2の熱伝導部材は、前記第2サポートプレートと前記第2筐体との間を熱的に接続している
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の筐体をヒンジ装置で連結した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル式の液晶ディスプレイを有し、物理的なキーボードを持たないタブレット型PCやスマートフォン等の電子機器が急速に普及している。この種の電子機器のディスプレイは、使用時には大きい方が望ましい反面、非使用時には小型化できることが望まれている。そこで、有機EL(Electro Luminescence)等のフレキシブルディスプレイを用いることで、筐体だけでなくディスプレイまでも折り曲げ可能に構成した電子機器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器は、筐体の小型薄型化に対する要望が大きい。また、筐体内には、円弧状に折り曲げられるディスプレイの収納スペースを確保する必要もある。このため、この種の電子機器は、CPU等の発熱体の冷却に必要な高い冷却能力を持った冷却装置の設置スペースを確保することが難しい場合がある。その結果、電子機器は、CPU等の能力低下を生じたり、筐体外面に局所的な高温部(ホットスポット)を生じたりする懸念がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、十分な冷却能力を確保することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、発熱体を搭載した第1筐体と、前記第1筐体と隣接する第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを、互いに面方向で重なるように積層する0度姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ180度姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、前記第1筐体と前記第2筐体の間に亘って設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体が相対的に回動することに応じて折り曲げられる折曲領域を有するディスプレイと、を備え、前記ヒンジ装置は、前記第1筐体及び前記第2筐体の隣接端部に沿って延在し、前記隣接端部を跨ぐように配置される金属製のヒンジ本体と、前記第1筐体の内面側で前記隣接端部に沿って延在し、前記ヒンジ本体と相対回転可能に連結されると共に、前記第1筐体の内面に対して相対移動可能に設けられ、前記0度姿勢と前記180度姿勢との間で前記ディスプレイの裏面を支持する金属製の第1サポートプレートと、前記第2筐体の内面側で前記隣接端部に沿って延在し、前記ヒンジ本体と相対回転可能に連結されると共に、前記第2筐体の内面に対して相対移動可能に設けられ、前記0度姿勢と前記180度姿勢との間で前記ディスプレイの裏面を支持する金属製の第2サポートプレートと、を有し、当該電子機器は、前記発熱体からの熱を受ける受熱部材と、前記第1筐体内に設けられ、可撓性を有する熱伝導部材と、を備え、前記受熱部材は、前記第1筐体又は前記第1筐体内に搭載された冷却装置の構成部品であり、前記熱伝導部材は、前記受熱部材と、前記第1サポートプレートとの間を熱的に接続している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、十分な冷却能力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を閉じて0度姿勢とした状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子機器を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す電子機器の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図4A】
図4Aは、180度姿勢での電子機器の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
【
図4B】
図4Bは、
図4Aに示す状態から筐体間を0度姿勢に向かって回動させている途中の状態を示す側面断面図である。
【
図5A】
図5Aは、第1変形例に係る熱伝導部材であるサーマルラバーを備えた電子機器の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aに示す電子機器を90度姿勢とした状態での模式的に示す側面断面図である。
【
図5C】
図5Cは、
図5Aに示す電子機器を0度姿勢とした状態での模式的に示す側面断面図である。
【
図6】
図6は、第2変形例に係る熱伝導部材であるサーマルスポンジを備えた電子機器の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を閉じて0度姿勢とした状態を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す電子機器10を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す平面図である。
図3は、
図2に示す電子機器10の内部構造を模式的に示す平面図である。
【0011】
図1~
図3に示すように、電子機器10は、第1筐体12A及び第2筐体12Bと、ヒンジ装置14と、ディスプレイ16とを備える。本実施形態の電子機器10は、本のように折り畳み可能なタブレット型PC或いはノート型PCを例示する。電子機器10は、携帯電話、スマートフォン、携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0012】
各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。各筐体12A,12Bは、例えば、それぞれヒンジ装置14で連結される辺(隣接端部12Aa,12Ba)以外の3辺に側壁を起立形成した矩形の板状部材で形成されている。各筐体12A,12Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属板、或いは炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板等で構成される。ヒンジ装置14は、筐体12A,12B間を相対的に回動可能に連結している。ヒンジ装置14は、
図1に示す0度姿勢で形成される隣接端部12Aa,12Ba間の隙間を隠す背表紙部材としても機能納する。ディスプレイ16は、筐体12A,12B間に亘って延在している。
【0013】
図3に示すように、第1筐体12Aは、例えばCPU(Central Processing Unit)17a、通信モジュール17b、及びSSD(Solid State Drive)17c等の各種半導体チップを実装したマザーボード17を搭載している。CPU17aは、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う。CPU17aは、電子機器10に搭載された電子部品の中で最大級の発熱体である。通信モジュール17bは、筐体12A,12B内に搭載されたアンテナを介して送受信される無線通信の情報処理を行うデバイスであり、例えばワイヤレスWANや第5世代移動通信システムに対応する。SSD17cは、半導体メモリを用いた記憶装置である。これら通信モジュール17bやSSD17cはCPU17aに次ぐ発熱量の発熱体である。
【0014】
第2筐体12Bは、例えばバッテリ装置18を搭載している。バッテリ装置18の発熱量は、CPU17a等に比べて小さい。従って、電子機器10は、第1筐体12A内での発熱量が第2筐体12B内の発熱量に比べて大きい。
【0015】
以下、電子機器10について、筐体12A,12Bの並び方向をX方向、これと直交する隣接端部12Aa,12Baに沿った方向をY方向、筐体12A,12Bの厚み方向をY方向、と呼んで説明する。また、筐体12A,12B間の回動角度姿勢について、両者が積層された状態を0度姿勢(
図1及び
図4C参照)と呼び、両者が左右に並んだ状態を180度姿勢(
図4A参照)と呼んで説明する。なお、0度と180度の間の姿勢は適宜角度を刻んで呼び、例えば
図4Bに示す姿勢を45度姿勢と呼ぶ。
【0016】
図4Aは、180度姿勢での電子機器10の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
図4Bは、
図4Aに示す状態から筐体12A,12B間を0度姿勢に向かって回動させている途中の状態を示す側面断面図である。
図4Cは、
図4Aに示す電子機器10を0度姿勢とした状態での側面断面図である。
【0017】
図4A~
図4Cに示すように、筐体12A,12B間は、ヒンジ装置14により、0度姿勢(
図1も参照)と180度姿勢(
図2も参照)との間で相対的に回動可能に連結されている。
【0018】
図4Cに示す0度姿勢において、筐体12A,12Bは、互いに面方向で重なるように積層される。この際、ディスプレイ16は、第1筐体12A側の領域RAと、第2筐体12B側の領域RBとが対向するように配置され、領域RA,RB間の境界領域である折曲領域R1が円弧状に折り曲げられた状態となる。
図4Aに示す180度姿勢において、筐体12A,12Bは、互いに面方向と垂直する方向に並んで配置される。この際、ディスプレイ16は、領域RA,RB及び折曲領域R1がXY平面上に並んで配置され、全体として1枚の平板形状を成す。
【0019】
図4A~
図4Cに示すように、ディスプレイ16は、例えばディスプレイパネル20の裏面にシート状部材22を貼り付けた構造である。ディスプレイ16は、領域RAが第1筐体12Aに対して相対的に固定され、領域RBが第2筐体12Bに対して相対的に固定される。
【0020】
具体的には、領域RAの裏面16aは、第1プレート24A及び第1サポートプレート27Aで支持され、第1プレート24Aを介して第1筐体12Aと固定される。領域RBの裏面16aは、第2プレート24B及び第2サポートプレート27Bで支持され、第2プレート24Bを介して第2筐体12Bと固定される。プレート24A,24Bは、繊維強化樹脂や金属で形成されたプレートであり、ヒンジ装置14の両側でディスプレイ16の大部分を支持する(
図3参照)。プレート24A,24Bは、筐体12A,12Bに対してねじ等で固定される。サポートプレート27A,27Bは、ヒンジ装置14の構成部品である。
【0021】
折曲領域R1は、筐体12A,12Bに対して相対的に移動可能な状態となっている。180度姿勢時、折曲領域R1の裏面16aは、ヒンジ本体26及びサポートプレート27A,27Bで支持される(
図4A参照)。0度姿勢時、折曲領域R1は、円弧状に折り曲げられ、裏面16aの一部がサポートプレート27A,27Bで支持され、大部分はヒンジ装置14から離間する(
図4C参照)。
【0022】
図3~
図4Cに示すように、本実施形態のヒンジ装置14は、ヒンジ本体26と、第1サポートプレート27Aと、第2サポートプレート27Bと、を有する。
【0023】
ヒンジ本体26は、筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Baを跨ぐ位置に設けられ(
図4A参照)、隣接端部12Aa,12Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している(
図1及び
図3参照)。ヒンジ本体26は、アルミニウム等の金属製のブロック状部品である。ヒンジ本体26には、180度姿勢でX方向に並ぶ2本のヒンジ軸14A,14Bが支持されている。ヒンジ軸18Aは、リンク部材等を介して第1筐体12Aと連結されている。ヒンジ軸18Bは、リンク部材等を介して第2筐体12Bと連結されている。ヒンジ本体26内には、筐体12A,12B間の回動動作を同期させるギヤ機構や、筐体12A,12B間の回動動作に所定の回動トルクを付与するトルク機構等が収納されている。ヒンジ本体26の外面は、カバー材26aで覆われている。
【0024】
図4Aに示す180度姿勢時、ヒンジ本体26は、筐体12A,12B内に収納され、互いに近接又は当接した隣接端部12Aa,12BaをX方向に跨ぐ。
図4Cに示す0度姿勢時、ヒンジ本体26は、大きく離間した隣接端部12Aa,12Ba間の隙間を塞ぐように配置され、本のように折り畳まれた電子機器10の背表紙となる。この際、カバー材26aが最外面に露出することで、折り畳まれた電子機器10の外観意匠が低下することを防止している(
図1参照)。
【0025】
第1サポートプレート27Aは、第1筐体12Aの内面12Ab側に設けられ、隣接端部12Aaに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。第1サポートプレート27Aは、アルミニウム等の金属製のプレート状部材である。第1サポートプレート27Aは、例えば例えば0.5~3mm程度の板厚を有し、全長(Y方向)が150~300mm程度、全幅(X方向)が20~100mm程度である。第1サポートプレート27Aは、幅方向(X方向)の一端部が回転軸28Aを用いてヒンジ本体26と回転可能に連結されている。第1サポートプレート27Aは、幅方向の他端部が第1筐体12Aに対して相対移動可能に連結されている。具体的には、サポートプレート27Aの他端部は、第1筐体12Aに固定された第1プレート24Aに対して、リンク30Aを介して連結されている。リンク30Aは、X方向に延びた棒状部材である。リンク30Aは、例えば一端部が第1サポートプレート27Aと回転軸で相対回転可能に連結され、他端部が第1プレート24Aと相対回転可能且つX方向に相対移動可能に連結されている。リンク30Aは、例えばY方向で4個設置される(
図3参照)。
【0026】
第2サポートプレート27Bは、第2筐体12Bの内面12Bb側に設けられ、隣接端部12Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。第2サポートプレート27Bは、アルミニウム等の金属製のプレート状部材である。第2サポートプレート27Bの大きさは第1サポートプレート27Aと同一でよい。第2サポートプレート27Bは、第1サポートプレート27Aと左右対称となる取付状態で第2筐体12B側に支持されているため、詳細な説明は省略する。すなわち第2サポートプレート27Bには、回転軸28Aと同様な回転軸28Bと、リンク30Aと同様なリンク30Bとが連結されている。
【0027】
サポートプレート27A,27Bは、その表面27Aa,27Baによってディスプレイ16の裏面16aを0度姿勢から180度姿勢の間で支持する。サポートプレート27A,27Bは、筐体12A,12B間の回動動作に応じて筐体12A,12Bの内面12Ab,12Bbに対してX方向及びZ方向に相対移動する。これによりサポートプレート27A,27Bは、ディスプレイ16の折曲領域R1を回動角度に応じた適切な形状(直線形状や湾曲形状)に矯正する。
【0028】
図4A~
図4Cに示すように、電子機器10は、第1筐体12A内に可撓性を有する熱伝導部材としてグラファイトシート32を備える。グラファイトシート32は、炭素の同素体であるグラファイト(黒鉛)をシート状に加工したものであり、高い熱伝導率を有する。グラファイトシート32は、例えば10μm~1mm程度の板厚を有し、薄く柔軟なシートである。
【0029】
図4Aに示すように、グラファイトシート32は、第1サポートプレート27Aと第1筐体12Aとの間に湾曲した姿勢で配置され、両者間を熱的に接続する。
図3に示すように、グラファイトシート32は、第1サポートプレート27AのY方向で略全長に亘って延在している。
図4Aに示す側面視において、グラファイトシート32は、上側の第1端部32aが第1サポートプレート27Aの裏面27Abに固定され、下側の第2端部32bが第1筐体12Aの内面12Abに固定されている。端部32a,32bは、例えば熱伝導性を有する両面テープや接着剤を用いて面27Ab,12Abに固定される。端部32a,32bの間の中央部32cは、裏面27Abと内面12Abの間で湾曲しており、移動自由な状態となっている。
【0030】
次に、筐体12A,12Bを180度姿勢から0度姿勢に回動させる動作と、その際の作用効果を説明する。
【0031】
先ず、
図4Aに示す180度姿勢時、プレート24A,24B、ヒンジ本体26、及びサポートプレート27A,27Bは、それぞれ同一のXY平面上に並び、それぞれの表面が面一に配置されて全体として平板を形成する。ディスプレイ16は、この平板上で裏面16a全体が支持され、1枚の平板状の大画面を形成する(
図2も参照)。
図2中の参照符号34は、ベゼル部材であり、ディスプレイ16の表面16bの周縁部にある非アクティブ領域を枠状にカバー部材である。
【0032】
このように、180度姿勢時、電子機器10は大画面のタブレット型PCとして機能する。この際、CPU17aは、電子機器10の使用状態によっては大きな発熱を伴う。そうすると、CPU17a自体が能力低下を生じ、或いは第1筐体12Aの外面12Acにホットスポットを生じる懸念がある。
【0033】
そこで、当該電子機器10では、第1サポートプレート27Aと第1筐体12Aとの間を熱的に接続するグラファイトシート32を備える(
図4A参照)。このため、CPU17aからの熱は、第1筐体12Aに伝達されると、グラファイトシート32を介して第1サポートプレート27Aに伝達される。
図4A中に1点鎖線で示す矢印は、熱の移動を模式的に示したものである。
【0034】
ここで、第1サポートプレート27Aは、ある程度の厚みを有し、Y方向に長尺な金属板(アルミニウム板)で構成されているため、高い熱伝導率と大きな熱容量を有する。このため、第1サポートプレート27Aは、グラファイトシート32から伝達された熱を貯留するサーマルストレージとして機能し、同時にこの熱を拡散しつつ放熱するヒートスプレッダとしても機能する。しかも第1サポートプレート27Aは、同じく金属製のヒンジ本体26や第2サポートプレート27Bと機械的に接続されている。このため、第1サポートプレート27Aが受けた熱は、さらにヒンジ本体26や第2サポートプレート27Bにも伝達され、ここでも貯留され、同時に拡散し放熱される。この際、本実施形態の電子機器10は、第2筐体12B内は第1筐体12A内に比べて低温であるため、効率よい放熱が可能である。このため、左右の筐体12A,12間で温度がバランスし、ホットスポットの発生が一層確実に抑制される。
【0035】
このように本実施形態の電子機器10は、大きな熱容量を有する金属部品で構成されたヒンジ装置14と、CPU17aからの熱を受ける受熱部材(第1筐体12A)とヒンジ装置14とを熱的に接続する熱伝導部材(グラファイトシート32)と、を備える。このため、当該電子機器10は、ヒンジ装置14全体がサーマルストレージやヒートスプレッダとして機能し、筐体12A,12B内に別途冷却装置を搭載しなくても十分な冷却能力が得られる。グラファイトシート32に代えて、銅やアルミニウム等の金属シートを用いてもよい。
【0036】
電子機器10は、CPU17aを冷却するための冷却装置36を別途搭載してもよい(
図4A中に2点鎖線で示す冷却装置36参照)。冷却装置36としては、銅板やアルミニウム板等のヒートスプレッダやベーパーチャンバ等、さらにこれらと接続される冷却フィンや送風ファン等を例示できる。冷却装置36を備えた構成とした場合、グラファイトシート32の第2端部32bは、冷却装置36を構成する受熱部材(例えばヒートスプレッダやベーパーチャンバ)に対して接続してもよい。そうすると、冷却装置36の冷却能力をヒンジ装置14によって補強することができる。
【0037】
本実施形態の電子機器10は、さらに、
図4A中に2点鎖線で示すシート状部材38やグラファイトシート40を備えてもよい。
【0038】
シート状部材38は、高い熱伝導率を有する材質で形成された薄いシートである。シート状部材38は、例えばグラファイトシートや、銅或いはアルミニウム等の金属シートである。シート状部材38は、第1サポートプレート27Aの裏面27Abからヒンジ本体26とカバー材26aとの間を通過し、第2サポートプレート27Bの裏面27Bbまで延在している。シート状部材38もY方向でヒンジ装置14の略全長に亘って延在しているとよい。これによりグラファイトシート32から第1サポートプレート27Aに伝達された熱は、シート状部材38によってヒンジ本体26や第2サポートプレート27Bへと一層効率よく伝達される。
【0039】
グラファイトシート40は、グラファイトシート32と同様な性質を有し、グラファイトシート32と同様な取付状態で第2サポートプレート27Bと第2筐体12Bとの間に接続されている。電子機器10は、グラファイトシート40を備えることで、第2サポートプレート27Bに伝達された熱を第2筐体12Bへと放熱することができる。
【0040】
次に、筐体12A,12B間が180度姿勢から0度姿勢に向かって回動される場合について説明する。
【0041】
この場合、
図4B及び
図4Cに示すように、サポートプレート27A,27Bは、筐体12A,12Bに対して相対的に揺動し、筐体12A,12Bに対して相対的にX方向及びZ方向へと移動する。ディスプレイ16の折曲領域R1は、このように移動するサポートプレート27A,27Bから適度に押圧されつつ折り曲げられる。その結果、折曲領域R1は、0度姿勢では
図4Cに示すような略ベル形状を成す。つまり本実施形態の電子機器10は、
図1及び
図4Cに示すように、0度姿勢時に筐体12A,12Bが略平行した意匠性の高い折り畳み状態となる。その一方、ディスプレイ16の折曲領域R1は屈曲されることなく、所望の曲率で湾曲したベル形状となるため、ディスプレイ16が破損することが抑制されている。
【0042】
上記の通り、グラファイトシート32は、可撓性を有し、さらに中央部32cが湾曲形状を成している。このため、0度姿勢に向かう動作時、グラファイトシート32は、第1サポートプレート27Aと第1筐体12Aとの間の相対移動に対して円滑に追従する(
図4B及び
図4C参照)。従って、グラファイトシート32は、筐体12A,12B間の回動動作時に破損し、或いは端部32a,32bの固定が剥がれることが抑制される。その結果、グラファイトシート32は、第1サポートプレート27Aと第1筐体12Aとの間の熱的な接続状態を常時確保できる。このため、例えば筐体12A,12B間を130度から90度程度に設定し、当該電子機器10を通常のノート型PCと同様に使用する際にもヒンジ装置14が冷却装置として機能する。また、例えば0度姿勢とした電子機器10から外部ディスプレイに映像出力している際にもヒンジ装置14が冷却装置として機能する。
【0043】
図5A、
図5B及び
図5Cは、第1変形例に係る熱伝導部材であるサーマルラバー42を備えた電子機器10の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
図5A、
図5B、
図5Cは、それぞれ180度姿勢、90度姿勢、0度姿勢を示す。
【0044】
図5A~
図5Cに示すように、サーマルラバー42は、
図4A~
図4Cに示すグラファイトシート32の代替部品である。サーマルラバー42は、可撓性を有し、高い熱伝導率を有するゴム材料である。サーマルラバー42は、上面42aが第1サポートプレート27Aの裏面27Abに両面テープ等で固定され、下面42bが第1筐体12Aの内面12Abに両面テープ等で固定されている。
【0045】
サーマルラバー42は、第1サポートプレート27Aの第1筐体12Aに対する相対移動に応じて柔軟に潰れ、或いは膨らむ。従って、このようなサーマルラバー42を用いた構成においても、グラファイトシート32を用いた構成と同様に、筐体12A,12B間の回動動作に柔軟に追従しつつ、第1サポートプレート27Aと第1筐体12A等の受熱部材との間の熱的な接続状態を維持することができる。
【0046】
図6は、第2変形例に係る熱伝導部材であるサーマルスポンジ44を備えた電子機器10の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
図6は、180度姿勢を示す。
【0047】
図6に示すように、サーマルスポンジ44は、
図4A~
図4Cに示すグラファイトシート32や
図5A~
図5Cに示すサーマルラバー42の代替部品である。サーマルスポンジ44は、柔軟なスポンジ材料44aの外周面に薄く柔軟な熱伝導シート44bを巻き付けた構造の部材である。これによりサーマルスポンジ44は、全体として可撓性を有する。サーマルスポンジ44は、上面44cが第1サポートプレート27Aの裏面27Abに両面テープ等で固定され、下面44dが第1筐体12Aの内面12Abに両面テープ等で固定されている。熱伝導シート44bは、例えばグラファイトシートや、銅或いはアルミニウム等の金属シートである。熱伝導シート44bは、高い熱伝導率を有する。このため、サーマルスポンジ44は、内部のスポンジ材料44aの熱伝導率に関わらず外面的には高い熱伝導率を有する。
【0048】
サーマルスポンジ44は、第1サポートプレート27Aの第1筐体12Aに対する相対移動に応じて柔軟に潰れ、或いは膨らむ。従って、このようなサーマルスポンジ44を用いた構成においても、サーマルラバー42等を用いた構成と同様に、筐体12A,12B間の回動動作に柔軟に追従しつつ、第1サポートプレート27Aと第1筐体12A等の受熱部材との間の熱的な接続状態を維持することができる。
【0049】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0050】
上記では、第1筐体12Aに発熱体(CPU17a等)を搭載した構成を例示した。しかしながら、第2筐体12Bにも大きな発熱量の発熱体を搭載してもよい。この場合、グラファイトシート32等の熱伝導部材は、筐体12A,12Bの両方に設けるか、又は発熱量の大きな筐体側に設けるとよい。
【0051】
上記では、本のように二つ折りに折り畳み可能な電子機器10を例示したが、本発明は、同形の筐体同士を二つ折りに折り畳む構成以外、例えば大形の筐体の左右縁部にそれぞれ小形の筐体を折り畳み可能に連結した観音開きの構成、1つの筐体の左右縁部にそれぞれ折り畳み方向の異なる筐体を連結したS型の折り畳み構成、大形の筐体の左右一方の縁部に小形の筐体を折り畳み可能に連結したJ型の折り畳み構成等、各種構成に適用可能であり、筐体の連結数は4以上としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 電子機器
12A 第1筐体
12B 第2筐体
16 ディスプレイ
17a CPU
18 バッテリ装置
26 ヒンジ本体
27A 第1サポートプレート
27B 第2サポートプレート
32,40 グラファイトシート
36 冷却装置
38 シート状部材
42 サーマルラバー
44 サーマルスポンジ