(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】エレベータの群管理システム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/18 20060101AFI20220920BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
B66B1/18 N
B66B3/00 M
(21)【出願番号】P 2021085260
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀川 淳
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/014572(WO,A1)
【文献】特開2012-062163(JP,A)
【文献】特許第7059412(JP,B1)
【文献】特開2021-185105(JP,A)
【文献】中国実用新案第213141052(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/14- 1/20
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の乗りかごを有するエレベータの群管理システムにおいて、
監視対象とする階の乗場に設置された撮像手段と、
上記乗場で乗場呼びが登録されたときに、上記撮像手段によって撮影された画像から上記乗場にいる乗客の状態を解析し、その解析結果から感染リスクに関わる情報を抽出する解析手段と、
上記解析手段によって抽出された上記感染リスクに関わる情報に基づいて上記乗場の感染リスクを判定するリスク判定手段と、
上記リスク判定手段によって判定された上記乗場の感染リスクが一定レベル以上であった場合に、上記各乗りかごの中で乗車人数が最も少ない乗りかご、あるいは、乗客が乗車していない乗りかごを上記乗場呼びの割当かごとして優先的に選出し、上記乗場に応答させる割当制御手段とを具備し、
上記感染リスクに関わる情報は、上記乗場でマスクを着用している割合を示すマスク着用率を含み、
上記リスク判定手段は、
上記マスク着用率に基づいて、上記感染リスクのレベルを判定することを特徴とするエレベータの群管理システム。
【請求項2】
上記感染リスクに関わる情報は、上記乗場で咳またはくしゃみをしている乗客の割合を示す特定動作検出率を含み、
上記リスク判定手段は、
上記特定動作検出率に基づいて、上記感染リスクのレベルを設定することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項3】
上記感染リスクに関わる情報は、マスク着用率と、咳またはくしゃみの特定動作検出率を含み、
上記リスク判定手段は、
上記マスク着用率と上記特定動作検出率とに基づいて、上記感染リスクのレベルを設定することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項4】
上記割当制御手段は、
上記各乗りかごの中で上記感染リスクが一定レベル以上の乗場に応答した乗りかごに対して、全てのかご呼びに応答するまでの間、新たな乗場呼びの割当てを禁止することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項5】
上記乗場の感染リスクが一定レベル以上の場合に、上記乗場に応答した上記乗りかごの積載荷重に対する満員判定の閾値を定格荷重よりも下げ、上記乗りかごの乗車人数を制限する運転制御手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項6】
上記運転制御手段は、
上記乗場の感染リスクのレベルに応じて上記閾値を段階的に切り替えることを特徴とする請求項
5記載のエレベータの群管理システム。
【請求項7】
上記乗場の感染リスクが一定レベル以上の場合に、上記乗りかごが上記乗場に応答した後、所定のタイミングで換気運転に切り替え、上記乗りかごを特定の階に移動させ、一定時間戸開する運転制御手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項8】
上記運転制御手段は、
上記乗りかごが無方向待機状態になったときに、上記換気運転を実行することを特徴とする請求項
7記載のエレベータの群管理システム。
【請求項9】
上記運転制御手段は、
上記乗りかご内のすべての乗客をかご呼びとして登録された行先階に運び終えたときに、上記換気運転を実行することを特徴とする請求項
7記載のエレベータの群管理システム。
【請求項10】
上記乗りかごが上記特定の階で一定時間戸開している場合、換気中である旨を報知する報知手段を具備したことを特徴とする請求項
7記載のエレベータの群管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数台の乗りかごを有するエレベータの群管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、感染力の高いウイルスの流行に伴い、密集を避けて行動する機会が増えてきた。ここで、エレベータの乗りかご内は密閉空間になるため、できるだけ、少人数で間隔を空けて乗車することが求められる。しかしながら、乗車の判断は乗客に委ねられるため、乗りかごが到着すると、定員まで乗り込んでしまうことが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-240313号公報
【文献】特開2012-62163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感染リスクを低減するため、例えば定員30名の乗りかごに対し、15名で満員とするように、乗りかごに乗車可能な人数を通常よりも制限して運行する方法が考えられる。しかしながら、複数台の乗りかごを有する群管理システムにおいて、各乗りかごの乗車人数を通常よりも制限すると、運行効率が著しく低下し、逆に乗場が混雑して密状態になる可能性がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、乗場の感染リスクを考慮し、運行効率を低下させずに乗りかごを応答させ、感染リスクを抑えることのできるエレベータの群管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るエレベータの群管理システムは、撮像手段と、解析手段と、リスク判定手段と、割当制御手段とを備える。上記撮像手段は、監視対象とする階の乗場に設置される。上記解析手段は、上記乗場で乗場呼びが登録されたときに、上記撮像手段によって撮影された画像から上記乗場にいる乗客の状態を解析し、その解析結果から感染リスクに関わる情報を抽出する。上記リスク判定手段は、上記解析手段によって抽出された上記感染リスクに関わる情報に基づいて上記乗場の感染リスクを判定する。上記割当制御手段は、上記リスク判定手段によって判定された上記乗場の感染リスクが一定レベル以上であった場合に、各乗りかごの中で乗車人数が最も少ない乗りかご、あるいは、乗客が乗車していない乗りかごを上記乗場呼びの割当かごとして優先的に選出し、上記乗場に応答させる。
上記構成のエレベータの群管理システムにおいて、上記感染リスクに関わる情報は、上記乗場でマスクを着用している割合を示すマスク着用率を含み、上記リスク判定手段は、上記マスク着用率に基づいて、上記感染リスクのレベルを判定することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は第1の実施形態に係るエレベータの群管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は上記第1の実施形態における乗りかご内の出入口周辺部分の構成を示す図である。
【
図3】
図3は上記第1の実施形態における乗場の構成を示す図である。
【
図4】
図4は上記第1の実施形態におけるカメラの撮影画像上でマスク着用の有無を検出する方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は上記第1の実施形態におけるカメラの撮影画像上で咳またはくしゃみをした乗客を検出する方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は上記第1の実施形態におけるエレベータシステムの処理動作を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7は
図6のステップS103で実行される解析処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は
図6のステップS105で実行される割当処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は上記割当処理の具体例を示す図である。
【
図10】
図10は第2の実施形態における感染リスクと満員判定の閾値との関係を示す図である。
【
図11】
図11は上記第2の実施形態における乗りかごの積載荷重と満員判定の閾値との関係を示す図である。
【
図12】
図12は上記第2の実施形態におけるエレベータの群管理システムの処理動作を説明するためのフローチャートである。
【
図13】
図13は
図12のステップS403で実行される乗車制限処理を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は変形例として乗りかごの換気運転の処理を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は上記乗りかごが換気中にあるときの報知例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るエレベータの群管理システムの構成を示すブロック図であり、複数台(ここではA~C号機の3台)の乗りかごが群管理された構成が示されている。図中の11a~11cはエレベータ制御装置、12a~12cは乗りかごである。
【0010】
エレベータ制御装置11a~11cは、各号機の乗りかご12a~12c毎に設けられており、それぞれに対応した乗りかごの運転制御を行う。具体的には、エレベータ制御装置11a~11cは、それぞれに乗りかご12a~12cを昇降動作させるための図示せぬモータ(巻上機)の制御やドアの開閉制御などを行う。これらのエレベータ制御装置11a~11cは、コンピュータによって構成される。
【0011】
乗りかご12a~12cは、モータの駆動により昇降路内を昇降動作する。乗りかご12a~12cには、それぞれにかご室内の積載荷重を検知するための荷重センサ13a~13cが設置されている。荷重センサ13a~13cによって検知された荷重データは、エレベータ制御装置11a~11cを介して群管理制御装置20に伝送される。
【0012】
また、各階の乗場(エレベータホール)14には、乗場呼びを登録するための乗場呼び登録装置15が設置されている。
図1の例では、便宜的に任意の階に設置された乗場呼び登録装置15が示されているが、実際には各階毎に少なくとも1つの乗場呼び登録装置15が設置されている。乗場呼び登録装置15は、図示せぬ伝送ケーブルを介して群管理制御装置20に接続されている。乗場呼び登録装置15は、乗客が行先方向(上方向/下方向)を指定するための方向ボタン(乗場呼びボタンとも称す)を備えている。
【0013】
なお、「乗場呼び」とは、乗場で方向ボタンの操作により登録される呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。これに対し、「かご呼び」とは、乗りかご内で行先階ボタンの操作により登録される呼びの信号のことであり、乗りかごと行先階の情報を含む。
【0014】
ここで、本実施形態では、監視対象とする階の乗場14に、カメラ16と画像処理装置30が設置されている。監視対象とする階は、例えば基準階などの特定の階であっても良いし、全ての階であっても良い。全ての階を監視対象とした場合、各階の乗場14に少なくとも1台のカメラ16が設置される。
【0015】
カメラ16は、広角レンズもしくは魚眼レンズを有し、1秒間に数コマ(例えば30コマ/秒)の画像を連続的に撮影可能である。カメラ16は、乗場14に設置された乗場呼び登録装置15が操作されたとき、つまり、乗場呼びが登録されたときに、乗場14を広範囲に撮影する。なお、カメラ16は、常時動作中であっても良い。
【0016】
カメラ16によって連続的に撮影された各画像(映像)は、画像処理装置30によってリアルタイムに解析処理される。画像処理装置30には、記憶部31と解析部32とが備えられている。記憶部31は、例えばRAM等のメモリデバイスからなる。記憶部31は、カメラ16によって撮影された画像を逐次保存すると共に、解析部32の処理に必要なデータを一時的に保存しておくためのバッファエリアを有する。なお、記憶部31には、撮影画像に対する前処理として、歪み補正や拡大縮小、一部切り取り等の処理が施された画像が保存されるとしても良い。
【0017】
解析部32は、例えばマイクロプロセッサからなり、カメラ16によって撮影された画像から乗場14の乗客の状態を解析して、その解析結果から感染リスクに関わる情報を抽出する。ここで言う「感染リスク」とは、何らかのウイルスに感染する可能性のことである。「感染リスクに関わる情報」には、少なくとも、乗場14でマスクを着けている乗客の割合を示すマスク着用率と、乗場14で咳またはくしゃみの動作(以下、特定動作と称す)をした乗客の割合を示す特定動作検出率が含まれる。この感染リスクに関わる情報は、群管理制御装置20に送られる。なお、画像処理装置30の一部あるいは全部の機能を群管理制御装置20に持たせることでも良い。
【0018】
群管理制御装置20は、複数台の乗りかご12a~12cの運転を群管理制御するための装置であり、エレベータ制御装置11a~11cと同様にコンピュータによって構成される。本実施形態において、この群管理制御装置20には、呼び記憶部21、リスク判定部22、割当制御部23が備えられている。
【0019】
呼び記憶部21には、乗場呼び登録装置15の操作によって登録された乗場呼びを記憶する。リスク判定部22は、画像処理装置30の解析部32によって抽出された感染リスクに関わる情報に基づいて、感染リスクのレベルを判定する。
【0020】
新たな乗場呼びが登録された場合に、割当制御部23は、乗りかご12a~12cの中から当該乗場呼びを割当てる乗りかご(割当かごと称す)を選出する。その際、リスク判定部22によって判定された感染リスクが一定レベル以上であった場合、つまり、感染リスクの高い乗場14で乗場呼びが登録された場合には、割当制御部23は、乗車人数が最も少ない乗りかご、あるいは、乗客が乗車していない乗りかご(空かご)を割当かごとして優先的に選出し、乗場14に応答させる。「乗場14に応答させる」とは、詳しくは、「乗りかごを乗場呼びが登録された階の乗場14に向かわせる」ことである。
【0021】
次に、乗りかご12a~12cを便宜的に乗りかご12と称して、乗りかご12内の構成について説明する。
【0022】
図2は乗りかご12内の出入口周辺部分の構成を示す図である。乗りかご12の出入口にかごドア40が開閉自在に設けられている。
図2の例では両開きタイプのかごドア40が示されており、かごドア40を構成する2枚のドアパネル40a,40bが間口方向(水平方向)に沿って互いに逆方向に開閉動作する。なお、「間口」とは、乗りかご12の出入口と同じである。
【0023】
乗りかご12の出入口の両側に入口柱41a,41bが設けられている。「入口柱」は、正面柱とも言い、裏側にはかごドア40を収納するための戸袋が設けられているのが一般的である。
図2の例では、かごドア40が戸開したときに、一方のドアパネル40aが入口柱41aの裏側に設けられた戸袋42aに収納され、他方のドアパネル40bが入口柱41bの裏側に設けられた戸袋42bに収納される。入口柱41a,41bの一方あるいは両方に表示器43や、行先階ボタン44などが配設された操作盤45、スピーカ46が設置されている。
【0024】
図2の例では、入口柱41aにスピーカ46、入口柱41bに表示器43、操作盤45が設置されている。乗りかご12内に乗車した乗客が操作盤45上の行先階ボタン44を押下操作すると、当該行先階ボタン44によって指定された行先階がかご呼びとして登録される。乗りかご12内で登録されたかご呼びは、乗りかご12に対応したエレベータ制御装置(エレベータ制御装置11と称す)を介して群管理制御装置20に送られる。
【0025】
図3は乗場14の構成を示す図である。
各階の乗場14において、乗りかご12a~12cの到着口に、乗場ドア17a~17cが開閉自在に設置されている。また、乗場ドア17a~17cの近傍に、方向ボタンを有する乗場呼び登録装置15が設けられている。乗場ドア17aは、A号機の乗りかご12aの到着時に、
図2に示したかごドア40に係合して開閉動作する。なお、動力源(ドアモータ)は乗りかご12a側にあり、乗場ドア17aはかごドア40に追従して開閉するだけである。乗場ドア17b,17cについても同様であり、それぞれに対応した乗りかご12b,12cの到着時にかごドア40と共に開閉動作する。
【0026】
ここで、カメラ16は、例えば乗場ドア17a~17cの上部付近に乗場14に向けて設置されている。カメラ16の撮影範囲E1は、乗りかご12a~12cの到着口前で待機している複数の乗客を撮影可能な範囲に調整されている。乗客の誰かが乗場呼び登録装置15を操作して、上方向または下方向の乗場呼びを登録したときに、カメラ16の撮影画像が
図1に示した画像処理装置30に送られる。
図3の例では、乗場14に4人の乗客が待機しており、その4人の乗客を含んだ撮影画像が画像処理装置30に送られることになる。
【0027】
図4はカメラ16の撮影画像上でマスク着用の有無を検出する方法を説明するための図である。
監視対象とする階において、乗場呼び登録装置15の操作によって乗場呼びが登録されると、カメラ16によって乗場14に乗客が撮影される。この撮影画像から乗客の顔部分の画像を抽出し、予め用意された各種マスクのパターン画像を照合すれば、当該乗客がマスク51を着けているか否かを判定することができる。
【0028】
図5はカメラ16の撮影画像上で咳またはくしゃみをした乗客を検出する方法を説明するための図である。
監視対象とする階において、乗場呼び登録装置15の操作によって乗場呼びが登録されると、カメラ16によって乗場14に乗客が撮影される。この撮影画像から乗場14にいる乗客の顔部分の画像を抽出し、目の位置52の動きを検出する。この場合、目の位置52が上下方向に所定量D以上動いた場合に、咳またはくしゃみをしたときの動き(特定動作)として検出することができる。
【0029】
次に、本システムの動作について説明する。
図6は第1の実施形態におけるエレベータの群管理システムの処理動作を説明するためのフローチャートである。このフローチャートで示される処理は、主として画像処理装置30と群管理制御装置20によって実行される。
【0030】
いま、監視対象とする階において、乗客が乗場呼び登録装置15の操作によって上方向または下方向の乗場呼びを登録した場合を想定する。上述したように、監視対象とする階は、例えば基準階などの特定の階であっても良いし、全ての階であっても良い。
【0031】
乗場呼びが登録されると(ステップS101のYes)、その乗場呼びの情報(行先方向と登録階)が群管理制御装置20に送られて、呼び記憶部21に記憶される。このとき、乗場14に設置されたカメラ16によって乗場の所定範囲(L1)が所定のフレームレート(例えば30コマ/秒)で撮影される。
【0032】
画像処理装置30は、カメラ16で撮影された画像を時系列で取得し、これらの画像を記憶部31に逐次保存しながら(ステップS102)、以下のような解析処理をリアルタイムで実行する(ステップS103)。なお、解析処理は、乗場呼びの登録時に解析部32が記憶部31に記憶された撮影画像を読み込むことにより実行される。その際、撮影画像に対する前処理として、歪み補正や、拡大縮小、画像の一部の切り取りなどを行っても良い。
【0033】
図7に上記ステップS104で実行される解析処理を示す。
解析部32は、カメラ16の撮影画像を解析処理し、乗場14でマスクを着用している乗客を検出すると共に、該当する乗客の割合を示すマスク着用率を求める(ステップS201-S202)。
図4で説明したように、マスク着用の有無は、撮影画像から抽出された乗客の顔部分の画像と予め用意された各種マスクのパターン画像との照合によって判定される。ここで、例えば10人の乗客が検出され、その中でマスク51を着けている乗客が9人いた場合には、マスク着用率=90%として求められる。
【0034】
また、解析部32は、カメラ16の撮影画像を解析処理し、乗場14で咳またはくしゃみした乗客を検出すると共に、該当する乗客の割合を示す特定動作検出率を求める(ステップS203-S204)。
図5で説明したように、咳またはくしゃみの動作は、撮影画像から抽出された乗客の顔部分の目の位置の動きから判定できる。ここで、例えば10人の乗客が検出され、その中で咳またはくしゃみの動作をしている乗客が1人いた場合には、特定動作検出率=10%として求められる。
【0035】
このようにして、撮影画像から得られた乗場14における乗客のマスク着用率と咳またはくしゃみの特定動作検出率は、感染リスクに関わる情報として群管理制御装置20に送られる。群管理制御装置20のリスク判定部22は、この感染リスクに関わる情報に基づいて、当該乗場14に対する感染リスクを判定する(ステップS104)。
【0036】
詳しくは、リスク判定部22は、乗場14の画像から感染リスクに関わる情報として得られるマスク着用率と特定動作検出率とに基づいて、乗場14に対する感染リスクのレベルを例えばR1~R3の間で設定する(R1<R2<R3)。具体的には、乗場14の乗客のマスク着用率が100%に近い場合(例えば80~100%)には、感染リスクが低いと考えられるので、第1のレベルR1に設定される。一方、マスク着用率が0%に近い場合(例えば0~20%)には、感染リスクが高いと考えられるので、第3のレベルR3に設定される。マスク着用率が上記以外の場合には第2のレベルR2に設定される。
【0037】
また、乗場14の乗客が咳またはくしゃみをしたときの特定動作検出率が100%に近い場合(例えば80~100%)には、感染リスクが高いと考えられるので、第3のレベルR3に設定される。一方、特定動作検出率が0%に近い場合(例えば0~20%)には、感染リスクが低いと考えられるので、第1のレベルR1に設定される。特定動作検出率が上記以外の場合には第2のレベルR2に設定される。
【0038】
同じ乗場14でマスク着用率によって求められる感染リスクのレベルと、特定動作検出率によって求められる感染リスクのレベルが違っていた場合には、レベルの高い方が優先的に設定される。例えば、マスク着用率によって求められる感染リスクが第3のレベルR3、特定動作検出率によって求められるレベルが第1のレベルR1であった場合には、マスク着用率が優先され、感染リスクは第3のレベルR3に設定される。
【0039】
なお、マスク着用率によって求められる感染リスクと、特定動作検出率によって求められるレベルが両方とも中間レベルである第2のレベルR2であった場合には、1段階上げて第3のレベルR3に設定することでも良い。要するに、乗場14における乗客のマスク着用率と特定動作検出率を総合的に分析して、乗場14にいる乗客の状態に対応したレベルを設定すれば良い。
【0040】
このようにして、乗場14に対する感染リスクのレベルがR1~R3のいずれかに設定されると、割当制御部23は、その設定されたレベルに応じて、以下のような割当処理を実行する(ステップS105)。
【0041】
図8に上記ステップS105で実行される割当処理を示す。
まず、割当制御部23は、乗場14の感染リスクが一定レベル(例えばレベルR2)以上であるか否かを判断する(ステップS301)。乗場14の感染リスクが一定レベル未満であった場合には(ステップS301のNo)、割当制御部23は、通常の割当処理によって割当かごを選出する(ステップS302)。詳しくは、割当制御部23、エレベータ制御装置11a~11cから得られる乗りかご12a~12cの運転状態(かご位置、運転方向、戸開閉状態など)や、乗場呼び・かご呼びの発生状況などの情報に基づいて、乗りかご12a~12cの中で最適な乗りかごを割当かごとして選出する。この場合、登録された乗場呼びの行先方向と同じ方向に運転中であって、当該乗場呼びの登録階に最も早く到着可能な乗りかごが割当かごとして選出される。
【0042】
一方、乗場14の感染リスクが一定レベル以上であった場合には(ステップS301のYes)、割当制御部23は、乗りかご12a~12cの中で乗車人数が最も少ない乗りかご、または、乗客が乗っていない乗りかご(空かご)を割当かごとして優先的に選出する(ステップS303)。
【0043】
この場合、乗客の行先方向と同じ方向に運転中にあることを条件として、乗車人数が最も少ない乗りかごを選出することが好ましい。また、乗客が乗っていない乗りかご(空かご)が存在すれば、乗車人数が最も少ない乗りかごよりも優先される。乗車人数は、荷重センサ13a~13cによって検知される積載荷重から判断される。例えば、乗客1人の平均荷重を65kgとすると、積載荷重が180kg前後であれば、乗車人数は4人と判断される。
【0044】
このようにして、割当かごとして最適な乗りかごが選出されると、割当制御部23は、その乗りかごに乗場呼びを割当て、当該乗場呼びが登録された階の乗場14に向かわせる(ステップS304)。詳しくは、例えばA号機の乗りかご12aが割当かごとして選出された場合には、割当制御部23は、エレベータ制御装置11aに当該乗場呼びの割当信号を出力して、乗りかご12aを乗場呼びの登録階に向かわせる。
【0045】
図9に具体例を示す。
いま、10階床の建物において、中間階の5階の乗場14で上方向の乗場呼びが登録されたとする。乗場呼びが登録されたときに、カメラ16で撮影された画像から乗場14にいる乗客の状態が解析され、感染リスクのレベルが判定される。
【0046】
ここで、5階の乗場14の感染リスクが高かった場合(R2またはR3)には、乗車人数が最も少ない乗りかご、または、乗客が乗っていない乗りかご(空かご)が応答する。
図9の例では、1階にA号機の乗りかご12aが無人で待機しているので、乗りかご12aが応答する。一方、5階の乗場14の感染リスクが低かった場合(R1)には、上方向に運転中で5階に近いB号機の乗りかご12bが応答することになる。
【0047】
このように第1の実施形態によれば、乗場にいる乗客の状態から当該乗場の感染リスクが判定され、感染リスクが高い場合には、当該乗場で登録された乗場呼びに対し、乗車人数が少ない乗りかご(空かごを含む)が割当てられる。これにより、乗りかご内が密状態になることを回避して、感染リスクを抑えることができる。この場合、同じ乗場であっても、次に来る乗客の状態によって感染リスクが低いと判定されれば、通常の割当処理によって乗りかごが割当てられるので、常に乗車人数を制限する方法と違って、運行効率の低下を抑えることができる。
【0048】
なお、上記第1の実施形態では、マスク着用率と、咳またはくしゃみの特定動作検出率の2つの情報から感染リスクのレベルを判定したが、どちらか一方の情報だけで感染リスクのレベルを判定する構成としても良い。また、マスク着用率、咳またはくしゃみの特定動作検出率以外にも、感染リスクに関連した情報があれば、その情報を考慮して感染リスクのレベルを判定することでも良い。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
感染リスクが高い乗場に、乗車人数が少ない乗りかご(空かごを含む)を割当てたとしても、当該乗場から乗車する乗客が多いと、乗りかご内が密状態になる可能性がある。そこで、第2の実施形態は、上記第1の実施形態の構成に加え、感染リスクが高い乗場に応答した乗りかごの乗車人数を制限するものである。なお、「感染リスクが高い乗場」とは、「感染リスクが一定レベル以上の乗場」のことであり、具体的には感染リスクのレベルがR2またはR3として判定された乗場のことである。乗車人数の制限は、乗りかごの積載荷重に対する閾値を変更することで実現する。
【0050】
以下に、乗りかご12a~12cを便宜的に乗りかご12と称して、第2の実施形態における乗車制限について詳しく説明する。
図10は感染リスクと満員判定の閾値との関係を示す図である。
上記第1の実施形態で説明したように、乗場14の画像から感染リスクに関わる情報として得られるマスク着用率と特定動作検出率とに基づいて、感染リスクのレベルがR1~R3の間で設定される(R1<R2<R3)。
【0051】
感染リスクのレベルが設定されると、その設定されたレベルに応じて乗りかご12の積載荷重に対する満員判定の閾値がTH1~TH3の間で段階的に変更される。
図10の例では、感染リスクが第1のレベルR1のときに第1の閾値TH1、第2のレベルR2のときに第2の閾値TH2、第3のレベルR3のときに第3の閾値TH3に変更されることを示している(TH1>TH2>TH3)。
【0052】
図11は乗りかご12の積載荷重と満員判定の閾値との関係を示す図である。
第1の閾値TH1は、満員判定の標準値として、乗りかご12の定格荷重に合わせて設定されている。例えば、乗りかご12の定格荷重が650kgであるとすると、閾値TH1=650kgである。第2の閾値TH2は、第1の閾値TH1よりも低く設定されている。第3の閾値TH3は、第1の閾値TH1,第2の閾値TH2よりも低く設定されている。
図11の例では、閾値TH2=定格荷重の1/2(325kg)、閾値TH3=定格荷重の1/5(130kg)である。
【0053】
例えば、乗客1人の平均荷重を65kgとすると、感染リスクが第1のレベルR1の場合には、10人を超えたときに満員と判定されることになる。また、感染リスクが第2のレベルR2の場合には、5人を超えたときに満員と判定される。感染リスクが第3のレベルR3の場合には、2人を超えたときに満員と判定される。つまり、感染リスクのレベルが上がるに従って、乗りかご12に乗車可能な人数が制限されることになる。なお、実際には乗客によって重量が異なり、荷物などの重量も加わるため、レベルR1~R3に対応した乗車可能人数には多少の誤差が含まれる。
【0054】
図12は第2の実施形態におけるエレベータの群管理システムの処理動作を説明するためのフローチャートである。このフローチャートで示される処理は、主として群管理制御装置20とエレベータ制御装置11a~11cによって実行される。エレベータ制御装置11a~11cは、群管理制御装置20の制御の下で、乗りかご12a~12cの運転を制御する運転制御手段として機能する。
【0055】
いま、上記第1の実施形態で説明した割当処理によって、例えば乗りかご12aが割当かごとして選出されたとする。乗りかご12aが乗場14に到着すると(ステップS401のYes)、エレベータ制御装置11aは、乗りかご12aを戸開して、乗場14にいる乗客を乗車させる(ステップS402)。その際、エレベータ制御装置11aは、以下のような乗車制限処理を実行する(ステップS403)。
【0056】
図13に上記ステップS403で実行される乗車制限処理を示す。
エレベータ制御装置11aは、群管理制御装置20から当該乗場14に設定された感染リスクのレベルを取得する(ステップS501)。
図10に示したように、感染リスクが第1のレベルR1であった場合(ステップS502のYes)、エレベータ制御装置11aは、乗りかご12aの積載荷重に対する満員判定の閾値を第1の閾値TH1とする(ステップS503)。つまり、例えば乗場14の乗客のマスク着用率が100%近くであり、咳・くしゃみの動作検出率が0%近くであれば、感染リスクは低いので、第1のレベルR1が設定される。この場合、乗りかご12aの定格荷重に合わせた第1の閾値TH1が満員判定条件として用いられる。
【0057】
一方、感染リスクが第2のレベルR2であった場合(ステップS503のYes)、エレベータ制御装置11aは、乗りかご12aの積載荷重に対する満員判定の閾値を第2の閾値TH2に切り替える(ステップS504)。つまり、例えば乗場14の乗客のマスク着用率が50%程度で、咳・くしゃみ咳・くしゃみの動作検出率が0%~50%の範囲であれば、感染リスクはやや高くなるので、第2のレベルR2が設定される。この場合、乗りかご12aの定格荷重よりも1段階上げた第2の閾値TH2に切り替えられる。
【0058】
また、感染リスクが第3のレベルR3であった場合(ステップS503のNo)、エレベータ制御装置11aは、乗りかご12aの積載荷重に対する満員判定の閾値を第3の閾値TH3に切り替える(ステップS505)。つまり、例えば乗場14の乗客のマスク着用率が0%近くであり、咳・くしゃみ咳・くしゃみの動作検出率が0%~100%の範囲であれば、感染リスクは高くなるので、第3のレベルR3が設定される。この場合、乗りかご12aの定格荷重よりも2段階上げた第3の閾値TH3に切り替えられる。
【0059】
図12のフローチャートに戻って、乗りかご12aの積載荷重に対する満員判定の閾値がTH1~TH3の間で切り替えられると、エレベータ制御装置11aは、現在切り替えられている閾値(THnとする)を用いて以下のような処理を実行する。
【0060】
すなわち、乗りかご12aの戸開に伴い、乗場14の乗客が乗りかご12aに乗車する。このとき、乗りかご12aの底部に設置された荷重センサ13aによって乗りかご12aの積載荷重が検知される(ステップS404)。エレベータ制御装置11aは、荷重センサ13aによって検知された積載荷重と閾値THnとを比較し、満員状態になったか否かを判定する。
図11に示したように、閾値THn=TH1であれば、乗りかご12aが通常の定格荷重(例えば650kg)まで乗車可能である。
【0061】
一方、閾値THn=TH2あるいはTH3であれば、定格荷重よりも少ない値で満員状態が判定されるので、乗客可能人数が制限されることになる。ここで、乗りかご12aの積載荷重が閾値THnを超えると(ステップS405のYes)、エレベータ制御装置11aは、満員状態と判定して、乗りかご12a内の乗客に対して警告を発する(ステップS406)。警告方法としては、例えばブザー音を鳴らす方法や、満員状態である旨を音声メッセージで伝える方法などがある。また、エレベータ制御装置11aは、満員状態が解除されるまでの間、乗りかご12aを戸開状態で停止させておく(ステップS407)。乗りかご12aの積載荷重が閾値THn以内であれば(ステップS405のNo)、エレベータ制御装置11aは、乗りかご12aを戸開してから一定時間経過後に戸閉し、乗りかご12a内でかご呼びとして登録された乗客の行先階に向けて出発する(ステップS408)。
【0062】
このように第2の実施形態によれば、感染リスクが高い乗場に応答した乗りかごの乗車人数が制限される。したがって、当該乗場に多数の乗客がいても、乗りかご内が密状態になることを回避して、感染リスクを抑えることができる。
【0063】
(変形例)
(1)上記第1および第2の実施形態において、感染リスクが高い乗場に応答した乗りかごに対して、全てのかご呼びに応答するまでの間、新たな乗場呼びの割当を禁止する構成としても良い。
【0064】
図9の例で説明すると、A号機の乗りかご12aが5階の乗場14に応答後、かご呼びとして登録された行先階に向けて出発する。その際、乗りかご12aが全てのかご呼びに応答するまでの間(つまり、乗りかご12a内の全ての乗客をそれぞれの行先階で降ろすまでの間)、割当制御部23は、乗りかご12aに対する新たな乗場呼びの割当を禁止する。これにより、乗りかご12a内が密状態になることを確実に防いで、感染リスクを抑えることができる。
【0065】
(2)上記第1および第2の実施形態において、感染リスクが高い乗場に乗りかごが応答した場合に、当該乗りかごを所定のタイミングで特定の階に移動させて、そこで一定時間戸開して換気を行う構成としても良い。その際、戸開換気中であることを表示や音声アナウンス等で報知する構成としても良い。
【0066】
図14は上記変形例(2)における換気運転の処理動作を示すフローチャートである。今、任意の階の乗場14で登録された乗場呼びに対し、例えば乗りかご12aが割当かごとして選出されたとする。
【0067】
乗りかご12aが乗場14に応答したときに、エレベータ制御装置11aは、群管理制御装置20から当該乗場14に設定された感染リスクのレベルを取得し、感染リスクが高いか否かを判断する(ステップS601)。乗場14の感染リスクが低かった場合、つまり、第1のレベルR1であった場合には(ステップS601のNo)、エレベータ制御装置11aは、通常の運転を継続する(ステップS608)。
【0068】
一方、乗場14の感染リスクが高かった場合、つまり、第2のレベルR2または第3のレベルR3であった場合には(ステップS601のYes)、エレベータ制御装置11aは、乗場呼び・かご呼びに基づいて乗りかご12aを各階に移動させた後(ステップS602)、所定のタイミングで換気運転に切り替える。なお、乗りかご12aに対する新たな乗場呼びの割当が禁止されている場合には、かご呼びに基づいて乗りかご12aを各階に移動させることになる。
【0069】
「所定のタイミング」とは、乗りかご12が無方向待機状態になったときを含む。「無方向待機状態」とは、呼び情報(乗場呼び,かご呼び)に対する運転サービスを終了して、次の呼び登録があるまでの間、乗りかご12が上方向にも下方向にも移動せずに停止している状態である。このとき、乗りかご12内は無人である。
【0070】
乗りかご12aが無方向待機状態になったとき(ステップS603のYes)、エレベータ制御装置11aは、乗りかご12aを特定の階まで移動させ(ステップS604)、そこで一定時間Tの間、戸開して換気を行う(ステップS605)。
【0071】
ここで、「特定の階」は、例えば屋上階や運転サービス外の階など、換気に適している階に設定されている。「一定時間T」は、乗りかご12aのサイズなどを考慮して任意に設定される。戸開により換気している間、エレベータ制御装置11aは、例えば「ただいま換気中です。乗車できません」といったような音声メッセージを
図2のスピーカ46から出力して、換気中であることを報知する(ステップS606)。あるいは、
図15に示すように、特定の階の乗場14に各号機毎に設置された表示器18a~18cの中で乗りかご12aに対応した表示器18aに「換気中」を示す表示を行うようにしても良い。
【0072】
戸開による換気を行っている間、新たな呼び(乗場呼び/かご呼び)の登録は禁止されている。一定時間Tが経過すると、乗りかご12aは通常運転に復帰し、新たな呼び(乗場呼び/かご呼び)に応答して移動する(ステップS607)。
【0073】
図16に換気運転の具体例を示す。
例えば、5階の乗場14の感染リスクが高かったとする。A号機の乗りかご12aが応答したときに、二人の乗客P1,P2が乗りかご12aに乗車したとする。乗客P1が登録したかご呼びの行先階が7階、乗客P2が登録したかご呼びの行先階が8階であった場合、乗りかご12aは戸閉後に上方向に出発し、7階と8階に移動する。なお、ここでは説明を簡単にするため、他の階の乗場呼びは登録されていないものとする。
【0074】
ここで、7階で乗客P1が降車し、8階で乗客P2が降車すると、乗りかご12aが無方向待機状態で停止する。例えば10階が換気用の特定階とした場合、乗りかご12aが8階から10階に移動し、そこで一定時間Tの間、戸開による換気が行われる。
【0075】
なお、上記変形例(2)では、乗りかごが無方向待機状態、つまり、乗場呼びもかご呼びも登録されていない場合に換気運転に切り替える構成としたが、例えばかご呼びの登録状態だけで換気運転に切り替えることでも良い。
【0076】
具体的には、
図14のステップS603において、既登録済みのかご呼びに対する運転サービスを終了したか否かを判断する処理に代えれば良い。既登録済みのかご呼びに対する運転サービスが終了したとき、つまり、乗りかご12a内のすべての乗客をかご呼びとして登録された行先階には運び終えたときに、換気運転に切り替えて、特定の階で戸開による換気を行う。
【0077】
このように、感染リスクの高い乗場に乗りかごが応答した場合に、所定のタイミングで、特定の階に移動して戸開による換気を行うことで、乗りかご内をクリーンな状態にしてから通常運転に復帰させることができる。
【0078】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、乗場の感染リスクを考慮し、運行効率を低下させずに乗りかごを応答させ、感染リスクを抑えることのできるエレベータの群管理システムを提供することができる。
【0079】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
11a~11c…エレベータ制御装置、12a~12c…乗りかご、13a~13c…荷重センサ、14…乗場、15…乗場呼び登録装置、16…カメラ、17a~17c…乗場ドア、18a~18c…表示器、20…群管理制御装置、21…呼び記憶部、22…リスク判定部、23…割当制御部、30…画像処理装置、31…記憶部、32…解析部。
【要約】
【課題】乗場の感染リスクを考慮し、運行効率を低下させずに乗りかごを応答させ、感染リスクを抑える。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータの群管理システムは、撮像手段と、解析手段と、リスク判定手段と、割当制御手段とを備える。上記解析手段は、上記乗場で乗場呼びが登録されたときに、上記撮像手段によって撮影された画像から上記乗場にいる乗客の状態を解析し、その解析結果から感染リスクに関わる情報を抽出する。上記リスク判定手段は、上記解析手段によって抽出された上記感染リスクに関わる情報に基づいて上記乗場の感染リスクを判定する。上記割当制御手段は、上記リスク判定手段によって判定された上記乗場の感染リスクが一定レベル以上であった場合に、各乗りかごの中で乗車人数が最も少ない乗りかご、あるいは、乗客が乗車していない乗りかごを上記乗場呼びの割当かごとして優先的に選出し、上記乗場に応答させる。
【選択図】
図1